ミゼットは、1957年から1972年まで製造・販売されていた軽自動車規格の3輪自動車です。通常のオート3輪は高価で手が出せなかったという1950年代当時の零細企業や事業主に向けて開発されました。
すべて自社一貫で生産していたために、低価格かつ大量生産を実現。「街のヘリコプター」という独特のキャッチコピーとユニークなテレビCMの効果もあって、一躍大ヒットしました。
ミゼットの登場以降、それまで通常のオート3輪をメインに手掛けていた大手メーカーも軽オート3輪に参入し、1960年頃まで軽オート3輪ブームが続きます。
DK・DS型 1957年〜1961年
ハンドルの形状から「バーハンドルミゼット」と呼ばれました。キャッチコピー通りヘリコプターを彷彿とさせる丸みを帯びたデザインとポップなカラーが大きな特徴です。屋根と背面は幌で、ドアは装着されていないというシンプルな仕様でした。
発売当初のラインナップは、ベースモデルであるDKA型とセル付き仕様のDKⅡ型の2種類のみ。1959年にはエンジンの最高出力が10psに強化されたDSA型と、箱型の荷台が特徴的なDSV型、荷台の奥行きを短くして2人乗りを可能にしたDSAP型が追加されます。ボディサイズは、全長2,540 mm、全幅1,200 mm、全高1,500 mmでした。
エンジンには249ccdのZA型を採用。サスペンションは、フロントがテレスコピックフォーク式、リアはリジッドアクスル式です。
MP型 1959年〜1972年
ハンドルがバーハンドルから丸ハンドルに変わったことにより「丸ハンドルミゼット」と名付けられました。外観から装備まで、さまざまな点において大幅に改良が施されます。
デザイン面では、鳥のクチバシのような形状のノーズ部分が特徴的で、DK・DS型よりも洗練されたデザインに進化。ドアが装着されたほか、全車にセパレートシートが装備されて2人乗りが可能になりました。
ボディサイズに関しても、全長2,970 mm、全幅1,295 mm、全高1,455 mmと全長と全幅がサイズアップ。エンジンには305ccのZD型が採用されました。
1959年4月に北米向けに左ハンドルのMPA型が先行発売され、同年10月には右ハンドルのMP2型が国内で登場します。しかし、DK・DS型に比べて車重が増加したためにユーザーからの反応はイマイチで、わずか2ヶ月ほどで生産・販売が終了しました。
同年12月には、新開発のZD型エンジンを積んだMP3型が登場し、1960年にはMP3型より全長が200mm長くなって積載量が50kgもアップしたMP4型がリリースされました。1962年には、さらに外観・室内がアップデートされたMP5型が発売されます。
空前のブームを巻き起こしたミゼットですが、軽自動車のトレンドが3輪から4輪に変わったために、1972年に販売が終了しました。