知れば知るほど奥深い?ネジについて掘り下げてみた

目次
1.■ネジにはさまざまな規格と種類がある 2.■曲者のインチネジ 3.■ユニファイネジを格安で入手する方法 4.■しかしメートルネジにも思わぬ落とし穴があった 5.■同一サイズのネジにも実は種類がある 6.■ステンレス製のネジは極力使わない 7.■ボルト締結時は必ずワッシャー(座金を)使うべし! 8.■締め付けは適切なトルク(回転力)で

旧車のレストアに限らず、DIYで何かをするとしたらまず基本となるのがネジ類だと思います。

とはいっても、日常生活でもドライバーとビスと呼ばれる小ネジを締めたり、緩めたり、という行為は特にDIYを趣味としてない人でも当たり前のように行っていると思います。

今回は、ネジについて掘り下げてみようと思います。

■ネジにはさまざまな規格と種類がある

ある程度、機械関係に関わっている人ほどご存じのことだとは思いますが、ネジの種類と規格をすべて網羅している人はなかなかいないのではないかと思います。

原稿を書いておいておかしな話ですが、機械のスペシャリストになるほど、ネジの専門商社にこういうときにはどんなネジを使えばいいのかとか、現物についていたネジを持ち込んで同じものを探して欲しいと任せるかもしれません。

それくらい、使用用途に合わせた専用のネジが存在します。なので今回は主に自動車でDIY程度で弄ることが可能な範囲内に使われているネジを中心にお話しします。

慣例的には頭の部分に、+や-の切れ込みがあり、ドライバーで回すタイプのネジを「ビス」「小ネジ」と呼び、頭の形状によって「鍋小ネジ」「トラス小ネジ」「皿小ネジ」と呼ばれます。もっとも安価でよく使われるのが鍋ビスです。 

▲左から鍋ネジ、トラスネジ、皿ネジ、タッピングネジ

頭の形が六角形でスパナで回すタイプで主に鉄の棒にネジ山が切ってあるネジ(雄ネジ)を「ボルト」と呼び、六角形の主に鉄の輪の内側にネジ山が切っているネジ(雌ネジ)を「ナット」と呼ぶことが一般的です。

ナットはビスと組み合わせて使うこともあります。

ネジのピッチ部分が大きく先がとがっているものは、木ネジ、タッピングネジと呼ばれているもので、雌ネジを切っていない木製部品や樹脂部品、鉄板に直接ネジ山を切りながら締めていくという使い方をします。

ネジ山の形状はISO規格に基づいた世界共通の規格が採用されており、「メートルネジ」と呼ばれています。

一般にホームセンターや金物屋で販売されているネジはもちろん、現在世界中の自動車をはじめとする工業製品に使われているネジがこちらのネジです。

サイズはネジを切った部分の山の先端部分を計った径をmmで表し、主にクルマで使うのはM4、M5、M6、M8、M10、M12となります。 

ただ、なかにはネジの径ではなくスパナのサイズで呼ぶ人もいます。

たとえば「10mmのボルト」が欲しいといわれたときにスパナサイズが10mmのボルトなのかネジ径が10mm(M10)のボルトなのか戸惑ったことがあります。

ネジの山と山の距離を「ピッチ」と呼び、同じボルト径でもピッチの数値が大きい並目と数値が小さい細目があります。

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■曲者のインチネジ

旧車王の読者の方の中にはご存じの方も多いと思いますが、イギリスやアメリカのようにメートル法ではなくインチを使っていた国のクルマの中には「インチネジ」というメートルネジとは違った規格のネジを採用している車両も存在します。

インチサイズでは1/4、3/4、1/2等の分数がネジ径やスパナサイズの数値単位に使われます。

国産車の中にも、1970年代初頭までのモデルの中には、アメリカ車やイギリス車のノックダウン生産やライセンス生産で技術習得していた時代の名残で一部インチネジが使われていることがあります。

また、シートベルトの固定用ボルトは世界共通規格としてユニファイ7/16-20(ユニファイについては後述)というインチ規格のネジが使われています。
 

▲シートベルト固定用ボルト、実はユニファイという特殊な規格のネジです

また厄介なことにこのインチネジにも二種類あり、イギリスの古い規格のウィットワースとアメリカのユニファイがあります。

第二次大戦時に連合国同士だったアメリカとイギリスで軍用車を融通する際に、両国のネジの規格の違いが問題となり、1940年代以降米英の車両はユニファイネジを使用しています。

ユニファイネジはボルトの六角形の頭部分にメルセデス・ベンツのエンブレムのような3本線の打刻が入っているので識別は容易です。

他にもアメリカ製のバイクや楽器、パソコンにもユニファイネジが使われています。
 

▲古い輸入車等で3本線の打刻のボルトが使われていたら要注意です

しかし、それでも古いイギリス車の中にはユニファイのネジの中に、稀にイギリス古来のウィットワースが使われているケースもあります。

ちなみにウィットワースは、現在でも日本では建築関係や配管関係で一般的に使われています。

水道管のジョイント部分に1/4や3/4等の分数が刻印されているのを目にした経験が一度はあるのではないでしょうか?

そのため、ウィットワース規格のネジは比較的入手も容易です。

ところが、「ユニファイ規格のネジ」となると入手の難易度が急に上がります。

アメリカとイギリスで採用された規格のため、「部品の供給が安定している」という理由でアメリカ車とイギリス車のクラシックカーに手を出したところ、ネジがユニファイで苦労するというケースも……。

近年は大型のホームセンターでも輸入バイク用ネジとしてユニファイ規格のネジを店頭で見かけることもあるのですが、ユニファイ1/4-28が2本セットで400~500円です。

ミリネジで似たようなサイズでM6サイズのネジが1本10円前後と考えると、10倍~20倍です。

古いジャガーのレストアで目についたネジを一新しようとすると、ネジだけで何千円、場合によっては1万円を越えてギョッとすることもあります。

アメリカ車やイギリス車を直すときはネジはなるべくなくさないようにしてください。

■ユニファイネジを格安で入手する方法

そんな高価なユニファイネジですが、筆者が見つけた格安で入手する方法があります。

あくまでも筆者が暮らす中京圏での話になりますが、某有名中古カー用品・バイク用品店チェーン店の名古屋の某店舗では、バイクコーナーのジャンク部品の棚にバケツに中古のネジを入れて1本10円で販売しています。

そのバケツの中のネジを辛抱強く探してみると「輸入バイク」から外したと思われる、3本線の打刻入りのボルトが何本か混じっていることがあり、1本数百円のネジを10円で手に入れることができます。

ユニファイネジのクルマのオーナーの方は、輸入バイクを扱っている店舗で中古ネジの量り売りをしているのを見かけたら、定期的に漁ってみることをお勧めします。

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■しかしメートルネジにも思わぬ落とし穴があった

我々のご先祖様は厄介なことをしてくれたもので、メートルネジにも「旧JISネジ」と呼ばれるJIS規格による日本独自の規格のネジが存在します。

ネジの径はISOネジと同様なのですが、ネジ山の「ピッチ」がISOの並目より僅かに大きくなっています。

無理にISO規格のネジに旧JISのネジを嵌めてしまうとネジ山を潰してしまうことになります。

日本では1960年代初頭からISOネジが導入されているものの、国産車でも1960年代前半までのクルマには旧JISネジが使われています。

おおむね1960年代末ごろにISOに完全移行するのですが、1960年代半ばまでのモデルにはJISネジとISOネジが混在していることがあります。

そればかりか、前述のようにインチネジが混在しているモデルもあり、インチと旧JISとISOが混在したキメラ状態のクルマもあるようなので国産車といえども注意してください。

■同一サイズのネジにも実は種類がある

ネジの径、ピッチが同じでも材質や強度、表面処理、頭部部分の形状に用途に合った種類やグレードがあります。

自動車の場合、高速で動いたり、大きな力がかかる部分が多く、特殊な形状の部品を固定する必要があります。

JISやISOだけでなく自動車の工業規格に基づいたネジが使われています。

ボルトの頭部分に4、6、7、8等の数字が刻印されていた場合は要注意です。

これは強度区分記号であり、強度区分の刻印のあるボルトが使われていた箇所は、同じ区分刻印、あるいはそれに相当するボルトを使ってください。

詳細は割愛しますが、自動車の工業規格では、旧JIS規格の強度規格に基づいた表記が使われています。

一般にホームセンターで流通しているボルトの強度は4.8、自動車では4の刻印がこれに相当します。

それ以上の数字の場合は、一般のホームセンターで売られているボルトでは強度不足を起こす危険性があります。

DIYでクルマを弄る人の中にはホームセンターで売られているボルトは使わず、メーカー純正のボルト、あるいはネジの専門商社に適合するボルトを調べてもらって取り寄せるという注意深い人もいるそうです。

重要な保安部品や強度を要する部品の脱着時は注意してください。

▲ボルトに数字が強度区分の打刻されていたら、必ず同等の強度のボルトを使用

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■ステンレス製のネジは極力使わない

1990年代、サビ対策でステンレスのネジを使うというのが流行った記憶があります。

ステンレス製は見た目もよく、バイクカスタムではキャップボルトと呼ばれる、六角レンチを使うタイプのステンレス製のネジに交換することも見受けられます。

ところが、近年はサビ対策でステンレスのネジを使うのは逆効果という認識が広まっています。

鉄とステンレスでは異種金属接触腐食が発生し、ステンレスと接触している鉄は酸化が進みやすくなり、ボルトの周りの鉄部分の錆がかえって促進されることになります。

鉄の部品は鉄のネジで固定するのが好ましいでしょう。

しかし、熱で酸化が進みやすくボルトがすぐに折れてしまうエキゾーストパイプ周りや、下回りの常に泥水がかかってボルトが腐食してしまうような場所はステンレスのほうが良いというケースも稀にあります。 

▲ステンレス(SUS)のボルトは見た目は良いが、錆の発生の原因にも……

■ボルト締結時は必ずワッシャー(座金を)使うべし!

ビス・ボルトで部品を固定するときは必ず、緩み止めとしてワッシャーを使ってください。

ワッシャーを使うことでボルトの摩擦面の面積が増え、緩みにくくなります。

さらにスプリングワッシャー(バネ座金)を使うとより緩み止め効果が高まります。

ネジ穴が長穴や大きくなっている場合は、木工用の大きなワッシャーを使うのも一つの手です。

頻繁に外すことが多い、手の入りにくい場所は、いっそワッシャーの必要がないフランジボルトやフランジナットを使うのもいいかもしれません。

小ネジの場合、頭部分の大きいトラスビスを使ってワッシャーを省くという方法もあります。

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■締め付けは適切なトルク(回転力)で

もちろんトルクレンチを作って厳格にトルク管理をするのが望ましいのですが、エンジン機関部やサスペンション本体ではなく、今回の記事で対象にしている外装品やアクセサリー類程度の取り付けであれば……。

例えばコンビレンチやラチェットレンチの場合、ちょうど一般的な大人が手で締めて動かなくなるくらいが適正トルクになるよう工具のサイズが作られているといわれています。

パイプで延長したり、ソケットレンチでグリップ部分が伸縮するタイプで標準より伸ばした状態で締めるようなことをしなければオーバートルクにはならないといわれています。

DIYはまずここから始めて、その後、トルクレンチやエアーラチェット、インパクトレンチなどの動力工具にステップアップしていくのが良いと思います。

[画像/AdobeStock、ライター・撮影/鈴木修一郎]

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