加藤久美子&博人の見識

最高32馬力!日本最古の自動車年鑑で昭和初期の東京を走ったクルマを調べてみた
加藤久美子&博人の見識 23.01.10

最高32馬力!日本最古の自動車年鑑で昭和初期の東京を走ったクルマを調べてみた

■1.戦前から出ている創刊91年!!!「自動車年鑑」って何? ▲最古の自動車年鑑。1931年の創刊で戦時中を除き90年以上発行され続けてきた 自動車年鑑という一般向けの自動車関連定期刊行物としては、日本最古(1931年創刊)の書物があるのをご存じだろうか? 創刊から90年以上という、とてつもなく長い歴史を持っている。 ▲2022年11月30日に刊行された自動車年鑑2022~2023(日刊自動車新聞社,日本自動車会議所共編) 筆者は日刊自動車新聞社出版局に在籍していた90年代前半の数年間、編集に携わっていた時期があった。 また、2022年11月には最新号となる自動車年鑑2022~2023が刊行されている。 ニューモデル、自動車産業日誌、日本の自動車産業、諸外国の自動車産業をはじめ、各種の統計やデータなど自動車業界のすべてが844ページの中に詰まっているといっていいだろう。 そこで気になったのが、果たして創刊号はどんな内容だったのか?今も残っているのか?ということだ。 調べてみたところ、日本自動車図書館(日本自動車工業会が運営)に、なんと創刊号からすべてそろっているという。 一般利用者向けには閉館しているなか、特別に開けてもらい、創刊号ほか、昭和時代の自動車年鑑を何冊か見せてもらうことができた。 ▲歴史を刻む自動車年鑑(日本自動車工業会・自動車図書館収蔵) 創刊号の表紙広告は「ダンロップタイヤ」である。 ダンロップタイヤは1888年、イギリスで創業した企業で1905年から自動車用タイヤを生産している。 ▲自動車年鑑創刊号(1931年12月23日創刊) そして、1932年自動車年鑑が創刊した翌年に国産初のタイヤメーカー「ブリヂストン」が誕生している。 当時の社名は「ブリッヂストン」。 創業者石橋氏の「石」「橋」を英語にした社名であることは有名だが、創業時は英語の発音に近い「ブリッヂ」だった。 ▲「純国産」「超舶来」の文字が誇らしい。当時は「タイヤ」ではなく「タイヤ―」と表記していた。 そして1932年は「ダットサン」が誕生した年でもある。 前年に戸畑鋳物の傘下となった「ダット自動車製造」が排気量495ccの小型乗用車生産1号車を完成。 「ダットソン」と名付けられたが、その後「ダットサン」と車名を変えている。 理由は「ソン」は「損」のイメージなので、「サン」(sun英語で太陽)に変更した。 ちなみに、DATSUNのDATとは、創業メンバーである田、青山、竹内氏の頭文字を合わせたものだ。 翌1933年から戸畑鋳物(株)自動車部を設立し、本格的な自動車生産に向けて動き出している。 日産自動車(株)に社名変更したのは1934年である。 日本産業の100%出資となり、社名も日産自動車株式会社と変更された。 ▲当時、まだごく少数だった国産車。ダットソン号以降、本格的な国産車生産がはじまる ▲当時、ディーラーを整備して販売をしていたのは米国車が中心だった ■2.当時、『東京府』には2万台強の自動車が保有されていた ▲昭和6年の東京には約2万台のクルマが保有されていた。意外と多い? 90年前の日本にはどんなクルマが、どれくらい保有されていたのだろうか? 自動車年鑑には日本国内東京府内に存在する自動車の台数が馬力別ブランド別に紹介されている。 馬力の低さにもびっくり。 最低10馬力から最高でも32馬力だ。 資料によると乗用車+貨物車で21,948台のクルマが東京で保有されている。 大蔵省による調査で昭和6年8月末現在の数字だ。 馬力は警視庁課税馬力(当時、「警視庁馬力」という測定方法があった)に基づいている。 【乗用車】・10馬力:フィアット 203台・11馬力:モリス 139台・12馬力:フィアット、モリス 126台・14馬力:アームストロング、アサノ 96台・15馬力:ホイペット多数を占む 893台・17馬力:エセックス 291台・18馬力:スター、アースキン 892台・19馬力:ムーン、オークランド、オールヅモビル 214台・20馬力:ウイリスナイト 240台・21馬力:殆ど舊(旧)シボレー 1602台・22馬力:T型フォード 294台・23馬力:ビウイク、クライスラー、グラハムベージ 783台・24馬力:殆ど新フォード 3702台・25馬力:クライスラー、ダッジブラザース、ナッシュ 559台・26馬力:殆ど新シボレー 3126台・27馬力:ポンテアク、ダッジブラザース、スチュードベーカー 432台・28馬力:ムーン、ナッシュ、ハップモビル・29馬力:ビウイク、クライスラー、ハドスン、ナッシュ・31馬力:クライスラー 101台・32馬力:パッカード 110台・調査もれ 363台〇合計:14,717台 【貨物車】・21馬力:全部舊(旧)シボレー 721台・22馬力:全部T型フォード 2272台・24馬力:全部新フォード 2299台・25馬力:ジーエムシー、フェデラル、レパブリック 311台・26馬力:全部新シボレー 646台・27馬力:ダッジブラザース、フェデラル、ガーフォード 374台・28馬力:マツク 120台・29馬力:パッカード 71台・調査もれ 417台〇合計:7,231台 こうしてみると、フォードやシボレーの台数がとても多いと感じるが、これらは当時、日本国内で製造(KDノックダウン生産)されていたからである。 1925年に日本フォード、1927年に日本GMがそれぞれ設立されたことにはじまる。 日本で製造といっても当時の日本に自動車を製造できる技術はなく、ボディもエンジンも各種部品もすべてアメリカから輸入したものを日本国内で組み立てていた。 GMは大阪鶴町の工場にて組み立て生産をスタートさせており、月産2,000〜2,500台で、アジアの生産拠点としてもアジア諸国へも多数輸出されていた。 一方、日本フォードは横浜市新子安の工場にて1日の稼働時間8時間で約80台のT型フォードをはじめとする乗用車や貨物車を組み立てていた。 いずれも太平洋戦争の始まりとともに操業を終了している。 フォードを生産していた新子安の工場は現在のマツダR&Dになっている。 フォードやGM以外、ダッジ、クライスラーなどの米国車に加え、シトロエンも組み立て生産されていた。 90年前の自動車年鑑1932年版をはじめ、これまで世に出た自動車のカタログや自動車雑誌、各種の自動車に関する資料は「自動車図書館」で見ることができる。※現在はコロナ感染拡大防止の観点から休館中だが資料検索などは可能だ。 ●自動車図書館(現在は休館中)https://www.jama.or.jp/library/car_library/index.html 旧車ファンにとっても聖地のような場所だ。 再開されたらぜひ訪れてみて欲しい。

V12搭載のFDや40年ぶり発掘のジムニー!SEMA2022に登場した驚きの旧車5選
加藤久美子&博人の見識 22.12.27

V12搭載のFDや40年ぶり発掘のジムニー!SEMA2022に登場した驚きの旧車5選

■「SEMAショー」とは? SEMA(Specialty Equipment Market Association、米国自動車用品工業会)が1967年より年に一回開催している自動車アフターマーケットの見本市である。 日本ではカスタムカーイベントのイメージが強いかもしれないが、チューニングパーツだけでなく、タイヤやオフロード用品、板金塗装、補修、カーケア用品など、自動車アフターマーケットに関わるすべての商品がお披露目されている。 出展各社のブースには自社や協力会社の製品を装着したデモカーが展示されており、これもSEMA SHOWの大きな魅力の一つ。 近年は北米での人気に合わせて日本の旧車カスタムカーの出展が急増。こちらではそれらのなかでも特に注目を集めた5台を紹介してみたい。 ■1.40年の眠りから覚めたスズキ ジムニー LJ20 ▲40年の眠りから覚めたジムニーを1年かけてレストア パウダーコート塗料を扱うプリズマティックパウダーズ社のブースに出展された金色に輝くスズキ ジムニーは、1972年に日本で発売された LJ20である。 わずか600kgの車重で登坂能力は27.5度。最小回転半径4.4mの小さなボディもあいまって圧巻のオフロード走破性能で大人気となった。 出展されたLJ20はみた目にも美しい仕上げが施されているが、実はこのジムニー、遠い昔になだれに巻き込まれ、シエラネバダの山奥に40年以上も放置されていたのである。 なお初代ジムニーLJ10は1971年ごろ「ブルート」として約2000台が北米に輸出されたが、その後LJ20の輸出はなく、こちらの個体は並行輸入でアメリカに持ち込まれたと思われる。 山奥に長年放置されたジムニーを引き上げたのはYouTubeチャンネル「Matt's Off Road Recovery」のスタッフだ。 同チャンネルはどんな悪路も走破するために改造されたジープ チェロキーでさまざまなレスキュー活動を展開しており、このLJ20もオーナーであるエドに許可をもらってサルベージに挑んだ。 山奥から引き上げたあとは、川に浸したり、巨大な落石を乗り越えたり難儀を極めながらもなんとか自社のガレージまで運んでくることができたとのこと。 激しく損傷したボディは完璧な姿に修復し、エンジンとトランスミッションはスズキ サイドキック(エスクードの北米仕様)用に換装。 歴史に残る圧巻のレストモッドプロジェクトとなった。 ■2.1000馬力の四輪駆動 RX-7(FD3S) ▲1200馬力発生の4ローターを搭載したAWD仕様のFD ヴァルヴォリンのブースに展示されたRX-7は、ギャレット社が取り揃えている最大容量106mmのターボを搭載し、1200馬力超えまでチューニングされた4ローターを搭載。 さらに駆動方式は全輪駆動という信じられない仕様となっている。 大量の燃料を必要とするため50ガロンの燃料電池を装備していることも注目を集めた。 なお、フルスロットルで走行するとわずかな時間で1.5ガロン以上(約5.7L)の燃料を消費するという。 世界が電動化に向かうなか、今や希少な究極のガス・ガズラーである。 全輪駆動部分には日産スカイラインGT-R用のトランスミッションを採用しており、リアのディファレンシャルはBMW 3シリーズ(E36)用を流用して、この唯一無二のマシンを作り上げたとのこと。 制作期間は6年!とのことなので、オーナーであるロブ・ダーム氏の苦労や思い入れの強さがひしひしと伝わってくる。 ■3.1200馬力のドラッグマシンへと変化したトヨタ4ランナー ▲2JZ-GTE搭載で出力は1200馬力 日本の旧車を中心に、自動車用アフターマーケットパーツのディストリビューターとしてアメリカで急速にその存在感を高めつつある「TURN14」は、今回のSEMA SHOWに多数のカスタムカーを出展している。 そのなかでももっともアグレッシブで、多くの注目を集めていたのが、こちらの1993年型トヨタ 4ランナー(日本名ハイラックスサーフ)である。 一見、車高を落として綺麗にまとめられた普通の4ランナーに見るが、実はフレームをすべてパイプフレームにし、エンジンには3.4リッターまでボアアップした2JZ-GTEを搭載。 出力は1200馬力超えというとんでもないマシンに仕上がっている。 また、注目すべきは今はなき「TAKATA」のフルハーネスベルトを採用していること。 日本ではエアバッグ関連の大規模不祥事などもあって、すっかり「終わった企業」というイメージが強いが、アメリカでは今も根強い人気がある。 レーシーなJDMにTAKATAのフルハーネスを装着することは旧車オーナーにとってステイタスでもあるようだ。 ▲SEMA SHOWのデモカーにもTAKATAのフルハーネスが多数見られた ■4.パガーニ ゾンダのエンジンを積んだ RX-7 マツダ RX-7はその美しいルックスとカスタム用ベースカーとしての魅力にあふれることから日本はもちろん、世界多くのクルマ好きを虜にしてきた。 トーヨータイヤの屋外ブース「トーヨータイヤ トレッドパス」に展示されたRX-7はその外装色から「ピスタチオFD」との愛称がつけられているが、人気の理由はそこにとどまらない。 驚くことに心臓部にはデフォルトのツインターボ 13B-REW エンジンではなく、パフォーマンス ワークショップである Gooichi Motors によって組み込まれたメルセデス・ベンツ製 V12エンジンにシフトされている。 同エンジンはイタリア製スーパーカー「パガーニ ゾンダ」などに搭載されるV12エンジンでノーマルの状態でも、720bhp と 780Nmのパワーを吐き出すハイパワーで知られる。 ホイールはBergmeister fifteen52 アロイ ホイールに、トーヨータイヤのハイパフォーマンスタイヤ「Toyo Proxes RR 345」を装着。 ボンネットが取り払われた状態で展示され、興味津々にエンジンルームをのぞく来場者たちが多く見られた。 ■5.ENEOS ダットサン521ピックアップトラック  アメリカで人気のドリフトメディア「DSPORTマガジン」のマネージャーと、その息子によって作られた1台はENEOS USAからの出展となる。 ダットサントラックはアメリカにおいて長く愛されてきたライトトラックだが、こちらは6代目となる1971年型 ダットサン 521 ピックアップをベースに世界中からレストアパーツを集め、5年間かけてレストアされたもの。 50年前の車両から摩耗したガスケットとシールをすべて取り外し、元の L16 1.6Lエンジンと 4速トランスミッションはキープ。 サスペンションは QA1ショックと エナジーサスペンションのウレタンブッシングでアップグレードされている。 エクステリアはPandem製ボディキットをベースにハコスカ フェンダーミラー、Eimer Engineering 製テールゲート パネルとロール バーなどを装備。 シートはバーバリー チェック パターンのカスタム シートに張り替えられ、クイック リリース ハブ付きの NRG ステアリング ホイール、騒音と熱を抑えるためのDEI サウンド コントロール、Lokar シフター ブーツと CNC トリムに交換されている。 [撮影・加藤ヒロト/ライター・自動車生活ジャーナリスト加藤久美子]

旧車をEVカーに改造?アメリカでじわじわ人気のコンバージョンEV
加藤久美子&博人の見識 22.11.27

旧車をEVカーに改造?アメリカでじわじわ人気のコンバージョンEV

■世界最大の改造車ショーで旧車EVが続々登場 ▲シボレーブースに展示された1957年型ベル・エア アメリカでは今、「コンバージョンEV」がアツい。 昨今の環境意識の高まりによるEVブームは新車のみならず、「旧車」を未来へのこしていく手段としても注目されている。 今回は毎年11月上旬に開催される世界最大級のアフターマーケット・カスタムカー見本市「SEMAショー」にて見つけたコンバージョンEVたちを簡単に紹介してみたい。 SEMAショーではアフターマーケットのメーカーやチューニングショップのみならず、自動車メーカーも積極的に出展している。 なかでも目をひいたのが、シボレーブースに展示された1957年型ベル・エアだ。 派手なイエローのボディカラーに、「ジェット時代」の流行を反映させたスタイルは典型的なアメリカ車のイメージをまとう。 だが、V型8気筒のLSエンジンを搭載するために広く設けられたエンジンルームの中にはエンジンが見当たらない。 その代わりに鎮座するのが、シボレーが開発した実験用の電動モーターとバッテリーである。 このユニットはモジュール化も行われており、シボレーは使用者の要望に応えて、より大型のバッテリーを搭載することも可能としている。 とりあえず搭載されているプロトタイプのスペックは400Vのユニットで、容量は30kWhとなる。 元々搭載されていたエンジンほどのパワーは出ないし、シボレー自身も街乗りぐらいにしか使えないと紹介しているが、これも今後の開発でより「パフォーマンス寄り」に進化していくことが期待される。 ■自動車メーカーが旧車の電動化を提案  ▲初代ランドクルーザーもEV化で半永久的に乗れる? メーカーによる電動化の提案は、シボレーとともに「ビッグ3」を形成するフォードでも見られた。 毎年お馴染みの巨大なフォードブースの目玉の一つが、フォードのパフォーマンス部門「フォード・パフォーマンス」が開発した電動ユニット「イルミネーター(Eluminator)だ。 出力210kW(281hp)、ピークトルクは430 N・mを誇るイルミネーターは重さたったの93kgの電動ユニットで、元々はフォードの純電動SUV「マスタング マッハE」に搭載されていたものをベースに開発されている。 今回の展示にはユニット本体とともに、実際にそれを1978年型F-100に搭載させた「F-100 イルミネーター」をお披露目。 イルミネーターのユニットは3900ドルで実際に販売されたが、販売開始後わずか一週間で完売したとのこと。 SEMAショーでは例年、電動化に特化した「SEMA Electrified」のブースが設けられるが、そのスペースは年々拡大されている。 なかでも印象深かったのがパステルブルーをまとった初代フォード ブロンコだ。 1966年から1977年まで生産された「アーリー・ブロンコ」と呼ばれるこのブロンコも電動モーターとバッテリーを搭載するコンバージョンEVとなる。 製作はフォードより正式にライセンスを取得し、初代ブロンコのフレームを生産している「Kincer Chassis」が担当。 サイドのドアを除去したり、エンジンルームは目隠し用の木目調パネルで綺麗に埋められていたりと、ミニマリスティックなカスタムが非常に特徴的である。 ここまではどれもアメリカ車のコンバージョンEVを紹介してきたが、この流行はなにもアメリカ車に限るものではない。 同じ「SEMA Electrified」のブースにはトヨタの伝説的な四輪駆動車「初代ランドクルーザー(J40型)」や、フォルクスワーゲン タイプ181のコンバージョンEVなども展示されていた。 また、外のブースにはまだ新しめのクルマであるホンダ S2000をEV化した個体も来場者の注目を集めていた。 ■デロリアンをEV化したオーナーが日本にもいた! ▲デロリアンの美しいシルエットそのままにEV化 ▲2年の歳月をかけて仲間たちとデロリアンのEV化に成功 ところで、日本にも旧車をEVにコンバートして乗り続けているパイオニア的存在のEVオーナーがいるのをご存じだろうか? 日本EVクラブ広島支部の藤井智康さんがDMCデロリアンのEV化をスタートしたのはなんと2007年!2年の歳月をかけて完成したのが2009年だった。  「当時、デロリアンに乗りたいという気持ちが強かったのですが、80年代前半のクルマですし壊れやすく、修理するのも大変という話を耳にしていました。維持していくのが大変だろうなと。そんななか、環境問題を勉強しているときにEVのことを知りました。そこでデロリアンをEVにしてみるのはどうだろうかと考え始めたのです。 旧車はオリジナルの状態で維持することがクルマにとっても最高であることは間違いないのですが、長く乗り続けていくうちに部品が入手できなくて直せない…、また完璧に直せる人もどんどん減っていく…という状況になってきます。 クルマを直さず放置しておくのか?それとも廃車にして捨ててしまうのか?これまではそのような選択肢しかなかったわけですが、“パワーユニットを電気にかえればEVとして長く乗り続けられるのでは?“という考えに到達したのです」 クルマを買い替えることがエコではなく、ずっと乗り続けることが一番のエコであること。EVにコンバートすることでそれが実現できることを藤井さんは自らのデロリアンで証明している。 しかし、藤井さんいわく、なんでもかんでも「EV化」するのが良いわけではないとのことだ。 「クルマにはデザインは素晴らしいけどエンジンがいま一つの『ボディエンゲル係数』が高いクルマと、逆に、デザインは今一つだけどエンジンが素晴らしい『エンジンエンゲル係数』が高いクルマが存在します。そのあたりを見極めていくのがポイントかもしれないですね」 ■今後「旧車のEV化はあり」なのか? 急進的なEVシフトが進む昨今の情勢を鑑みれば、いつかはガソリン車に乗れなくなる時代が来るのかもしれない。 旧車という技術的にも文化的にも貴重な存在を、未来永劫のこしていく一つの手段として「旧車のEV化」は「あり得る」選択肢の一つかもしれない。 また、ガソリン車として残していくためのパーツの供給も同様に盛んなアメリカのアフターマーケット事情にはどことなく羨ましさも感じる。 旧車の保存に関しては数歩先を進んでいるアメリカでのノウハウを、数多くの名車を生み出している日本でもメジャーになっていくことに期待したい。 [ライター・カメラ/加藤ヒロト]  

540台が参加!アメリカ屈指の日本の旧車イベント「第17回JCCS」
加藤久美子&博人の見識 22.10.31

540台が参加!アメリカ屈指の日本の旧車イベント「第17回JCCS」

■1.ロングビーチで17年前に開催された誇り高き旧車イベント「JCCS日本旧車集会」とは? 空前の旧車ブームに沸くアメリカ西海岸で17年前から開催されているJCCS(Japanese Classic Car Show日本旧車集会)というカーショウをご存じだろうか? 例年10月末にカリフォルニア州ロングビーチで開催されてきたJCCSだが、筆者が取材に足を運んだ2021年は諸々の事情でロングビーチではなく、大谷翔平選手が所属するロサンゼルス・エンゼルスのホームである「エンジェルスタジアム」の途方もなく広い駐車場で開催された。 来場者は約1万人。 入場時には数百メートルに及ぶ長い列ができており、日本の旧車を見るためだけにこんなにたくさんのアメリカ人が我慢強く並んでいるのか!と、驚くとともに感動した次第である。 そして今年は9月10日に、いつものロングビーチ(マリーナ・グリーン・パーク)で17回目となるJCCSが開催された。 来場者数は史上最高の1万1千人。 展示された日本の旧車はこちらも過去最高の540台! ■主催者であるテリー&コウジ山口さんに今年のJCCSを振り返っていただいた 「今年は南カリフォルニア過去最大規模の台風が来ると予報が出ていて、実際最後の最後まで問い合わせが絶えませんでした。 私たち運営側も最後まで気が気じゃなかったのですが、開催前日の夜までの雨でなんとか切り抜け当日は朝から無事に雨無しで決行!  ギリギリまで心配の声の嵐でしたが事前登録車両もほぼ全車参加となり、すばらしい結果を残すことができました。 そのような意味も含め、開催側や参加者全員が、ハラハラした印象の強いイベントとなりました。 今年はとくに、アメリカでの日本車の歴史に欠かせないレーシングレジェンド『BRE』のピーター ブロック氏のご参加いただいたので、これはファンにとっては非常に喜ばしいことだったと思います。 ロングビーチの公園が小さく思えてしまうほどの旧車ファンが集まり、ピーターさんはどこに行っても大忙しという盛況ぶりでした。 今年の出展車両の傾向としては80年代後半~90年代のクルマが多かったように思います。 今年初めて参加という方が全体の4分の1を占めていました。 コロナ感染拡大の中にあって十分な準備時間を使ってレストアを完成させたオーナー達もたくさんいらっしゃったでしょう。 かなり事前から参加計画しバッチリ実行したという感じが伝わりました。 また、アメリカ国内はもちろん、まだコロナによる規制などもギリギリあった時期にもかかわらず、日本からの出店を含め、合計80社を超える出店者数も史上最高でした」 ▲JCCSを主催するテリー&コウジ山口さん夫妻。自動車メーカーやパーツメーカーからの信頼も厚い ■2.アメリカにもこんなすごい旧車があるの?気合入りまくりの10台を紹介 第17回JCCSにはどんな旧車が出展されたのだろうか? どれも美しく丁寧に仕上げられた車両ばかりだが、中でもえりすぐりの10台を紹介してみたい。 なお、第17回JCCSでは合計35部門にわたって、アワードが設定されており、厳格な審査のもとそれぞれの部門で「BEST OF 〇〇〇」が選ばれている。 1『ベストダットサン240Z』部門の1位を獲得した Jay Atakaさんの1971年型日産フェアレディZ(S30 RHD/L20)。圧巻の完成度に会場の注目を集めていた。アメリカの有名自動車雑誌や有名TV番組でも紹介されている。 2『ベストダットサン80's』部門1位を獲得したGustavo Sanchezさんの1985年式日産200sx(S12/VG34E)。1985年式日産 200sx with a VG34E. JDMテイストとヨーロピアンテイストを合わせたS13コンバージョンだ。 3『ベストマツダ OLD SCHOOL』部門1位。Mike & Barbara Malamutさんの1964年式マツダR360(360cc)と、牽引するT2000 (マツダ初の空冷2気筒16馬力)は希少な左ハンドル仕様 4『ベストダットサン510』部門1位のErick Águilarさんの1971年式ダットサン510は、なんとホンダS2000のF22Cエンジンに換装。今年JCCSデビューさせる為に仕上げてきたレストモッドだ。 5『ベストトヨタカローラAE86 AE92』部門1位。Abraham Phanさんの1985年式トヨタカローラ(AE86)はこちらがJCCSデビュー作だ。 6『ベストホンダインテグラ』部門2位。Matt Garciaさんの1990年式ACURAインテグラ(DA9/B20)は、20年以上所有している「サバイバー」JCCS 初参加! 7『ベスト三菱』部門1位のAlejandro Serranoさんの1993年式三菱3000GT VR4 2ドア。こちらもJCCSデビュー作。 8『ベストマツダRX7』部門1位。Matt Craibさんの 1989年式マツダRX-7(FC3S/13-B Turbo)。なんとレストアなし!オールオリジナルの奇跡の1台。 9『ベストトヨタカローラOLDSCHOOL』部門1位。Dennis Aquinoさんの1975年式トヨタCorolla(TE31)は2TGエンジンを搭載。  10『ベストトヨタOld School』部門1位。Rob Tsuyukiさんの1973年式トヨタクラウンスーパーサルーン  ▲ワイスピ超人気俳優、サン・カン氏(写真中央)とダニエル.ウー氏(写真左端)もDoc Zとともにプライベート参加!▲こちらがサン・カン氏のDoc Z(Erick’s racing booth) ▲JCCSの運営スタッフの皆さんお疲れさまでした! [撮影・写真:Kit, Johnny, Toshi & Riki / ライター・自動車生活ジャーナリスト加藤久美子]

アメリカ唯一!日本旧車メディア「ジャパニーズ・ノスタルジック・カー」編集長にインタビュー
加藤久美子&博人の見識 22.09.26

アメリカ唯一!日本旧車メディア「ジャパニーズ・ノスタルジック・カー」編集長にインタビュー

台湾系アメリカ人のBenさんは2006年に「ジャパニーズ・ノスタルジック・カー」を設立。 アットホームな雰囲気のウェブサイトには全米で開催される日本製旧車のイベントレポートや、日本車の歴史、日本人でも知らない興味深いトリビアなど、日本製旧車のあれこれが網羅されています。 日本には数多くの旧車メディアが存在しており、この「旧車王ヒストリア」もその一つです。 日本には日本の旧車、ドイツの旧車、アメリカの旧車、フランスの旧車など、それぞれに特化した専門メディアもありますが、実はアメリカで日本の旧車に特化したメディアはただ一つだけ。 「ジャパニーズ・ノスタルジック・カー」(https://japanesenostalgiccar.com/)を運営するBen Hsu(ベン・シュー)氏にお話を伺いました。 Benさんご自身も古いランクル(ランドクルーザーFJ60)を所有しています。 ちなみに、Benさんのランクル60は、2021年秋にホットウィール「カーカルチャーシリーズ」でミニカーとして発売されました。 ▲赤枠で囲んだホットウィールがBenさんのランクル60 ホットウィールでも日本の旧車が大人気! ▲米国唯一の日本旧車メディア編集長のBenさんにインタビュー中の筆者(加藤博人) ■ジャパニーズ・ノスタルジック・カーを立ち上げた経緯を教えてください 私が2006年にこのサイトを立ち上げた当時は、日本の旧車に関する情報を発信しているウェブサイトはもちろん、紙の雑誌においてもゼロでした。 メディアが存在しないどころか、当時のアメリカにおいては日本の古いクルマは『価値のある存在』として見られていませんでした。 ちょうど、その頃、カリフォルニア州ロングビーチでは「Japanese Classic Car Show(JCCS)」(日本旧車集会)の第1回が開催されていました。 当時の私は東海岸に住んでいたのでJCCSの存在を知りませんでしたが開催2年目以降は毎年参加しています。 ■japanesenostalgiccar.comというサイト名に「クラシック」ではなく「ノスタルジック」が使われているのはなぜでしょうか? これも日本製の古いクルマは当時「旧車」(クラシックカー)とみなされていなかったことに関係しています。 アメリカの有名な旧車クラブに「Classic Car Club of America」がありますが、彼らの「クラシック」の定義ではアメリカ製やドイツ製、フランス製、イギリス製の旧車しか「クラシックカー」として認められず、日本製の旧車は彼らの眼中にありませんでした。 またこれとは別に、日本では「レトロな物」を「ノスタルジック」と形容することが割と一般的です。 そのような経緯からサイトの名前には「クラシック」ではなく、「ノスタルジック」とつけました。 ■Benさんがサイトを立ち上げて16年が経過しましたが、アメリカにおいて日本の旧車を取り巻く環境、日本の旧車の価値はどう変わったと思いますか? 本当に大きく変わったと思います。 例えば、少し前のバレット・ジャクソン(アメリカでもっとも権威があるコレクター用カーオークション)で印象に残っているのが、司会が「我々のオークションでホンダ・シビックを見ることはあり得ないでしょう」といっていたことです。 それだけ日本の古いクルマはコレクション価値のあるものと認識されていなかったわけです。 日本車は「集めるほど価値のあるクルマ」というより、「実用的で道具のように使えるクルマ」と考えている人がとても多かったんだと感じています。 それが近年はスカイラインR32GT-Rや80スープラ、シビックタイプR、ランドクルーザーFJ40シリーズなどがバレット・ジャクソンに出品されて高額な価格で落札されることも増えました。 ■Benさんが日本の旧車に興味を持つようになったきっかけは? 初めて知った日本のクラシックカーはグランツーリスモに出てくるトヨタ2000GTやハコスカで、高校生のときに欲しかったクルマはホンダ NSXやマツダRX-7(FD)、トヨタ スープラなどの日本製スポーツカーでした。 1992年、家族で台湾に行ったのですが(初めて自分がアジアを訪れたとき)、当時はアメリカから台北への直行便がなく、トランジットのために成田で一泊しました。 当時はインターネットもなく、日本で走っているクルマの情報はほとんど把握していませんでした。 日本で走っているクルマはアメリカと同じなのだろうと勝手に想像していました。 しかし成田に着いて日本の街中を見るとまったく知らないクルマたちがたくさん走っていることに気づきました。 トヨタクラウンや日産セドリック、アメリカで見ないクルマばかりでとても興奮しました。 それ以降、初めて見る日本車にも興味を持つようになりました。 ■Benさんがいま、手に入れたい日本車はありますか? あります!日産スカイラインGT-R(R32/R33)です。 でもとんでもない金額になっていますけどね。 もし、GT-Rを手に入れても大切なコレクションにしてまともに走らせもしないでしょう(笑)。 運転するならマツダ・ロードスターなどのライトウェイトスポーツカーも好きですね。 でもロードスターを買うにしても、まったく同じクルマがアメリカで左ハンドルでも手に入るのなら、右ハンドルにこだわりません。 アメリカでは手に入らないクルマを日本から輸入して乗りたいですね。 先週、カリフォルニア州ロングビーチでは、Benさんも出展した第17回JCCS(日本旧車集会)が華々しく開催されました。 回を追うごとに参加台数が増え、来場者も1万人超となりました。 [ライター・カメラ/加藤ヒロト]  

神奈川県で急増した盗難。R32GT-Rや80スープラなど旧車15台が被害
加藤久美子&博人の見識 22.09.13

神奈川県で急増した盗難。R32GT-Rや80スープラなど旧車15台が被害

旧車の盗難は相変わらず多いのだが、特に今年6月以降、目立って増えているのが神奈川県だ。 ■2022年6月以降、神奈川県内で盗難被害が急増 自動車盗難情報局(jidoushatounan.com)に登録されたものや、TwitterなどのSNSで盗難が拡散されているものをピックアップしてみた。 ※盗難に関する内容は登録時点での情報です 神奈川県においては2021年の1年間で4台(うち1台は発見)の旧車が盗まれているが、2022年は6月半ばまではゼロ。 しかしその後、急増しており6月16日から9月11日まで報告されているだけで15台(未遂1台含む)!異常な数字である。 スカイラインGT-R(10台)と80スープラ(3台)の盗難が目立っている。 ■2022年6月〜9月にかけて神奈川県内で盗難された国産車 車種やボディカラー、盗まれた日、時間帯、場所、クルマのナンバーや特徴、そしてどのような盗難対策をしていたのか?などをお伝えしておく。 ●6月16日(0時~6時15分) ・車種:平成2年式 スカイラインGT-R NISMO(ガンメタ)・場所:神奈川県 横浜市 綱島駅付近の駐車場(自宅人近い月ぎめ駐車場)・ナンバー:横浜 330 や 2632・盗難対策:ハンドルロックとタイヤロック装着。月極駐車場のフェンスと繋いでいたチェーンロック。車カバー。*車部品の散乱は無し。タイヤロック破壊。車カバーを剥がされていた。右リアから出ている牽引フックに取り付けていたチェーンロックを外されていた。隣接している工場から延長コードを使用して電源を取り、エンジンを始動させたと思われる。 ●6月24日(5時~18時頃) ・車種:BCNR33 スカイラインGT-R(白)・場所:・場所:横須賀市スカイマンション下の駐車場・ナンバー:横浜 302 ひ 8681・盗難対策:ハンドルロックバー使用*マフラーの近くに溶けたあとがあり。HKSのスーパーターボマフラー。ホイールはボルクの17インチのアルミ金色。塗装はクリアが剥げていてまだらになっています ●6月26日(時間は不明) ・車種:日産スカイライン BNR32GT-R(スパークシルバー)・場所:神奈川県 横浜市泉区下飯田付近の駐車場・ナンバー:横浜 33 ら 4219・盗難対策:なし*純正16インチ ボンネット塗装ハゲあり フロントバンパー右ライト下擦り傷あり*ADVAN FREVA装着 GT-Rエンブレムは盗まれて接着部分のみ残っている ●7月17日11時半~18日3時 ・車種:平成9年式 マツダRX-7(ホワイト系)・場所:神奈川県 横浜市戸塚区 契約していた月ぎめ駐車場・ナンバー:横浜 303 る 7005*現場にはガラスの破片などはなし。フロントとサイドにC-WESTのエアロがついており、リアはノーマルでGTウィングがついているRX-7となります。フロントのエアロ右寄りの場所が割れ始めてきております。給油口には「全財産 inside」のステッカーが貼ってあります。 ●8月10日7時10分~17時8分 ・車種:日産スカイライン BNR32 GT-R(ブラック)・場所:神奈川県 藤沢市遠藤 勤務先駐車場 勤務先社屋から2~300M離れた社員専用駐車場内です。お昼頃、不審な車が駐車場から出て行く所が目撃されています。・ナンバー:相模 33 の 6426・盗難対策:対策なし。施錠のみ*エンジンはN1用に換装。外観はニスモ仕様。リアにカーボン製の旧ロゴのニスモマークのエンブレム。HKS関西のロールバー装着。リアウィンドウにカロッェリアのテレビアンテナあり。NISMO(ベルディな)マフラー。オーリンズの車高調サスです。右側のリアホイールアーチ後方下側に錆による穴あり。ドアノブにニスモマークのついた保護パットが付けられています。後輪のみN1用穴無しディスクを装着 ●8月13日20時頃~8月14日9時50分頃 ・車種:日産スカイラインGT-R(ブラック)・場所:神奈川県 海老名市中新田 自宅駐車場・ナンバー:相模 301 た 9420・盗難対策:ハンドルロック使用*R33GT-R純正のホイール、ニスモバンパー、柿本Rのマフラー、ARCのインタークーラー付き。車の部品の散乱はなし。 ●8月16日19時~17日5時頃 ・車種:80スープラ(グレー)・場所:横浜市緑区マンション駐車場機械式上段・ナンバー:横浜 35 に 1360・盗難対策:なし*色はグレー系ですがカタログ記載はグレイッシュグリーンマイカメタリックとなっていますフロントバンパー右わきにかすれ傷あり。運転席側ドアミラーそばに『猫バンバン』のマグネットステッカー貼っています。(ただし経年劣化で真っ白に)新車購入から20年以上乗っています。人生の半分以上はこの車と一緒に過ごしてきました再塗装していないのでボンネットは一部剥げている部分ありますフロントガラス(助手席側)に傷あり。特にカスタムしていないので特徴はノーマル仕様です ●8月16日朝  ・車種:80スープラ(白)・場所:横浜市緑区・ナンバー:横浜331す8320・盗難対策:バイパーセキュリティとラフィックスを付けていたがバイパーは1年前から不調で、ラフィックスもハンドルを外していなかった。 ●9月1日  ・車種:トヨタ スープラ(赤)・場所:川崎市宮前区野川自宅前の月ぎめ駐車場・ナンバー:川崎301 す 7717・盗難対策:タイヤロック前後輪に使用 ●9月3日19時~9月6日16時 ・車種:平成14年式 レガシィB4(青)・場所:神奈川県 厚木市三田・ナンバー:春日井 500 そ 86・盗難対策:なし*アパート前露天駐車場に駐車、数日間運転しなかった間に盗まれました ●9月8日未明から朝 ・車種:日産 スカイラインGT-R(ブラック系)・場所:横浜市金沢区 集合住宅敷地内の駐車場・ナンバー:横浜 33 ぬ 9482・盗難対策:タイヤにチェーンロックを掛けていた ■旧車およびネオクラシックオーナーは早急に「本気で盗まれないための対策」を! わずか3か月弱で未遂1台含む15台が盗難されているが、気になるのは『盗難対策:なし』が目立っていることだ。 またタイヤロックやハンドルロックなどを装備していても、実際はほんの数分で切断される(時間稼ぎにはなると思われるが)。 盗む方が悪いのは当然だが、盗まれやすい旧車のオーナーは、一刻も早く「本気で盗まれないための対策」をする状況にあることは間違いない。 特にスカイラインやスープラ、RX-7など人気の旧車スポーツカーにはお金がかかっても(20-30万円前後)、誤報ゼロのカーセキュリティを装着することをお勧めしたい。 たしかに痛い出費だと思うが、必要経費と割り切り、決断するときだと思う。 取り急ぎ何かやっておきたい、という場合はアップル社のエアタグなどを応急的に取り付けておくのもよいだろう。 神奈川県が急増している理由は・盗難多発の千葉、茨城、埼玉、愛知、三重の5県で導入されている『ヤード条例』が施行されておらず、解体ヤードに関する規制がとても緩い。・これまで旧車盗難がほとんどなく、盗難対策をせず簡単に盗める旧車が豊富 等が考えられる。スカイライン、80スープラのオーナーは特に注意してほしい。 ■9月12日夜に「国産スポーツカー窃盗未遂で男二人逮捕 神奈川県」の報道 [9月12日追記]なお、この原稿を書き終わった後、9月12日夜に「国産スポーツカー窃盗未遂で男二人逮捕 神奈川県」のニュースが流れた。 報道によると暴力団関係者と無職の男2名は6月以降、スープラやスカイラインなど合計20台(被害総額は1億円超)を盗んだとのことである。 自動車窃盗における検挙率は盗難の多い関東地方の場合、平均して3割前後。 旧車はさらに低いが、よく逮捕されたものだ。 [車両写真:自動車盗難情報局(jidoushatounan.com)から引用、画像/Adobe Stock、ライター・自動車生活ジャーナリスト加藤久美子]

軽トラ・パイクカー・RV・・・アメリカで意外に人気な国産旧車たち
加藤久美子&博人の見識 22.08.12

軽トラ・パイクカー・RV・・・アメリカで意外に人気な国産旧車たち

1990年代の日本製スポーツカーが今、アメリカなどで絶大な人気を誇るのはもはやいうまでもない。 ■90年代の日本車が人気なのはアメリカにおける「25年ルール」の存在が大きい 漫画やアニメ、ゲームなどに登場する往年の名車たちの中古車価格は年々高騰を見せているが、それもアメリカにおける「25年ルール」の存在が大きい。 「25年ルール」を超簡単に解説すると、「右ハンドルのクルマであっても製造月から25年経過していればアメリカに輸入し、公道を走行すること」を可能とするもの。 詳しい解説は私が以前執筆した記事を参考にしてほしい。 ●旧車にも関わり深い米国「25年ルール」。その歴史や本来の目的は?https://www.qsha-oh.com/historia/article/ivsca/ とにかく、このルールによって日産 スカイラインやマツダ RX-7、トヨタ スープラ、ホンダ シビックなどの、多くの90年代スポーツカーがアメリカへ輸出されていっているのだ。 だが、アメリカでの日本車人気はそういったスポーツカーやスポーツコンパクトにとどまらず、今ではオールジャンルなものとなっている。 そのなかには意外な人気を誇るクルマたちも多数存在する。 いくつか見ていこう。 ■今、アメリカでは日本の軽トラが大人気! ▲軽トラだけじゃない。軽ワンボックスも人気!こちらはアクティストリート まずは、日本が世界に誇る労働者の道具、「軽トラ」だ。 軽トラは今、アメリカで絶大な人気を集めている。 日本中、特に農村部ではそこら中で見ることができる軽トラは、いまやアメリカでは「パワーがあって大きな荷物も積載可能、それでいて経済性にも優れているミニトラック」として認識されている。 学校や会社の広大な敷地を管理・清掃する際や、サーキットでの移動用、山奥での狩猟など、多種多様な需要にもマッチする最高のパートナーだ。 アメリカで人気となっている軽トラのほとんどが、製造より25年経過した古い軽トラ。 スバル サンバーやダイハツ ハイゼット、スズキ エブリィ、ホンダ アクティなど、日本では中古の軽トラといえば50万円もしないで取引されているものが多い。 だが、同じ50万円以下のモデルでも、アメリカでは100万円越えの価格が付けられて販売されている例はしばしば見る。 製造から25年以上経過した軽トラは他の日本車同様、アメリカにおける各種規制の対象外となるため、公道を走行するための登録が可能となる。 また、新車の軽トラをアメリカに輸入して使っている例もあるが、こちらは主に高速道路などを走行しない「オフロード登録」(悪路を走るクルマという意味ではない)を適用してナンバーを付けるカタチとなる(とはいえ、このケースは近年、州によっては認められなかったり、多額の税金や手数料を請求されたりすることも増えている)。 アメリカは州によってルールが違うので一概にいえないが、日本から新車の軽トラを輸入してオフロード車として登録することも可能ではある。 ■90年代のRVブームを牽引したモデルも人気急上昇中! ▲アメリカでの人気急上昇中!ハイラックスサーフ 軽トラ以外にもまだまだたくさんの意外な日本車が人気となっている。 例えば、90年代のRVブームで誕生したクルマたちもアメリカ人の注目の的だ。 2021年に2年ぶりの実地開催となったアメリカ西海岸最大の日本車集会「JCCS(日本旧車集会)」では、大半の出展車両がスポーツコンパクトのジャンルに該当するものだが、なかには三菱 デリカやトヨタ ハイラックスサーフなどの、アウトドア志向な旧車たちの出展も目立った。 コロナ禍によって後押しされた、人里離れた場所でアクティビティを楽しむ「アウトドアブーム」の需要にも、これら90年代の「レクリエーショナル・ヴィークル」はピッタリなパートナーとなるだろう。 そういった経緯もあり、今後はRVだけではなく、トヨタ カムロードや日産 アトラスキャンパーなど、アメリカでよく見るキャンピングカーよりも一回り小さい、日本製キャンピングカーが支持を集めるのもそう遠くない未来のことかもしれない。 ■今となっては懐かしい「パイクカー」も人気モデル これら以外に、パイクカーと呼ばれる部類のクルマたちもマニアからは密かな注目を集めている。 パイクカーを簡単に説明すると、1980年代の終わりから1990年代中頃まで流行っていた「レトロ調な外観を与えたクルマ」のこと。 代表格は日産のBe-1やフィガロ、パオなどが挙げられる。 これらのパイクカーも他の90年代の日本車と同様に人気が高まりつつある。 さらに意外なのは、根っからの「クルマ好き」ではないような人にもパイクカーが売れているという点。 もちろん、日本車への理解が深いクルマ好きが以前から注目していた存在ではあるが、それ以外にも、単純に「見た目が可愛らしい」という理由で、セカンドカーとしてクルマ好きではない人の所有が目立ってきている状況となっている。 コンパクトながら、どこか「国籍不明」感のあるルックスは間違いなく、日本のパイクカー独特の要素だろう。 ■まとめ:日本では不人気車種だったクルマがアメリカで花開く? ▲岩国基地で活躍する軽トラ、マツダ・スクラムトラックはスズキ・キャリイのOEM車だ このように、いまや日本の旧車はスポーツカーだけでなく、幅広いジャンルが人気となっている。 また、そういったスポーツカーから日本車の奥深い世界に興味を持ち始めたクルマ好きが突き詰めた結果、まったく別ジャンルの日本車を好きになってしまうという「興味の底なし沼」のような状態になっている人も多く見受けられる。 今後、日本では見向きもされなかったような意外な日本車が、アメリカで爆発的なブームとなる事例はますます増えていくだろう。 [ライター・カメラ/加藤ヒロト]  

AE86に400万円!?旧車に市場価格と同等の車両保険をつけられる?
加藤久美子&博人の見識 22.08.09

AE86に400万円!?旧車に市場価格と同等の車両保険をつけられる?

1.旧車を盗難から守る方法とは? 自動車盗難情報局には相変わらず旧車スポーツカーの盗難が毎日のように報告されている。 ▲旧車は盗難されるとあっという間にバラバラにされてしまう 7月だけを見ても、RX-7(FD3S)、スカイライン(R33GT-R、同R32GT-R)、シビック(EK9)、スープラ(A80)…などの貴重な国産旧車スポーツカーが盗難の被害にあっている。 これらの盗難情報には「盗難対策の有無」という欄があるのだが、そこには「なし」「ハンドルロック」「ハンドルを外していた」「周りをクルマで囲んでいた」などと書き込まれている。 逆に言えば、完璧なセキュリティ対策が施された旧車は盗まれていないことになる。 これまで筆者が取材をしてきた盗難車のオーナーさんたちに、どのような対策をしていたかを聞くと、「ドアロック」「ハンドルロックとタイヤロック」「とくに対策なし」「バッテリーとハンドルを外していた」などの回答が目立つ。 正直言って…盗む方がもちろん悪いわけだが、盗まれた方も「施錠」以外に、もう少し本気で盗難対策をするべきではないかと思う。 「まさか、自分のクルマが盗まれる対象になるとは思わず、何の盗難対策もしていなかった」 「普段は夜帰ってきたら、ハンドルを外して、バッテリーも外していたのに、その日に限って外していなかった」と、嘆く被害者の皆さん、後悔してもしきれないのではないだろうか? ではどうすればいいのか? ハンドルロックやタイヤロック、ハンドルを外すなどの対策はポピュラーではあるが、実際は数分間の時間稼ぎにしかならないのが現実だ。 旧車窃盗団は数週間前から下見をしており、ターゲットとなる旧車にどのようなセキュリティ対策が行われているのか?を入念に確認している。 時にはセキュリティが作動するのか(どのような音が出るのか)なども確認している。 ▲セキュリティアラームを付けるなら多少高くても確実な取り付けができるお店で ハンドルロックやタイヤロックをしているクルマにはそれらを簡単に切断できる道具を準備し、ステアリングがない場合はサイズの合うステアリングを、バッテリーを外している場合はバッテリーを持参して盗みにくるのだ。 理想の盗難対策はゴルゴ、パンテーラに代表される国産セキュリティを専門店にお願いして確実に取り付けることである。 これがもっとも「盗まれにくい」方法といえる。 価格にして30~40万円とかなり高額にはなるが効果は絶大である。 ▲誤報ゼロの国産セキュリティなら安心!こちらはユピテルのパンテーラ そして大事なことは高級カーセキュリティでも誤報が多いのはダメ。 例えば、地震や豪雨や台風による影響で誤報を多く出してしまうセキュリティでは、オーナー自身が「近所迷惑」だと思ってアラームを切ってしまう。 東日本大震災のあと、高級セキュリティを装着したR32スカイラインGT-Rが東北~関東各地で盗難被害にあったのもこれが理由である。 2.市場価格と同等の車両保険はつけられる? 盗まれてしまった後の対策としては、GPSで追跡する方法が有効だ。 GPSなんてすぐ外されて役に立たないと思うかもしれないが、ココセコムの「セコムくるま盗難監視」のように自動車盗難に特化したシステムであれば安心度も高い。 GPSで追跡して盗まれたクルマの居場所を特定し、オーナーに返還された例も実際にある。 また、最後の手段としては旧車に車両保険を付けることだ。 一般的な車両保険ではどれだけ価値がある旧車であっても、たとえば400万円で購入したAE86でもせいぜい保険金額は50万円以下。 さらに通販型の自動車保険では初度登録から15年~20年など一定の年数を経たクルマの車両保険は新規の場合は一律に引き受け拒否される。 新車時から継続して保険契約を行い、そのうえで15年を超えた場合などには継続して車両保険を付けられることもあるがその場合も保険金額は低額となる。 しかし、旧車に市場価格と同レベルの車両保険を付けることは不可能ではない。 同じ代理店型損保でも、「車両保険の金額は年々下がってR32GT-Rで60万円」というケースもあれば、「19歳オーナーが所有するAE86に新規で購入額とほぼ同じ360万円の車両保険がつけられた」というケースもある。 ▲ShowさんのRX-3 奥に見えるのはFDをベースにした『RX-7 Fortune』 この違いは何なのか? 筆者の友人であるRX-3オーナーShowさんは現在の市場価格と同レベルの800万円の車両保険を付けているが、どうやってつけたのか? Showさんの保険担当者である損害保険代理店の保険代理店、株式会社ソナエル(千葉県東金市)代表の泉明弘さんに聞いてみた。 「『特認』と呼ばれる制度で諸条件をクリアすれば、購入額と同程度の車両保険がつけられます。車種はもちろん年式や走行距離など同条件のクルマが中古車市場でどれくらいの価格で取引されているか?などを丹念に調べます。金額が決まると、保管状況をチェックします。かなり厳しい条件をクリアすることが必要となります。 私が旧車スポーツカーの保険を扱うときには、自宅までうかがって、・車庫にシャッターがついているか・そのシャッターは施錠できるか・クルマはきれいな状態で保管されているか?・周囲を壁に囲まれたしっかりした車庫に入っているか?・どのようなセキュリティ対策が行われているか? などを確認します。 他にも諸々の確認事項があります。 自宅から離れた露天の駐車場など、セキュリティしっかりしていない場所で保管されている場合には盗難のリスクが高いので、購入額と同レベルの車両保険を付けることはまずできないでしょう。 あとは、盗難リスクの高い千葉県や茨城県などの特定エリアも難しい場合があります」 かなり厳しい条件にはなるが旧車であってもマンションの駐車場であっても市場価格と同レベルの車両保険を付けることは不可能ではなさそう。 保険屋さんとの信頼関係を重ねていくことも重要な条件となる。 「もし盗難されて800万保険金がもらえても、同じクルマは2度と手に入りません。長い時間をともに過ごした家族同様の存在です。盗まれないように最大限の対策をしてください」 とShowさんは付け加えてくれた。 ▲解体ヤードに運び込まれると盗難車が返還される可能性は限りなくゼロになる また、保険契約の条件などがやや緩く、年間の保険料がリーズナブルなチャブ保険の「クラシックカー保険」なるものをご存じだろうか? 条件としては、・製造年から25年以上経過した国産車および輸入車(二輪自動車を含む)・年間走行距離が5,000km以内・通常走行が可能な状態にある登録車両(ナンバープレートの付いた車両)・レプリカや改造車はダメ 次回はこの「クラシックカー保険」を扱う保険会社に取材をして詳細をお伝えしてみたい。 [撮影・加藤ヒロト、Showさん/ライター・自動車生活ジャーナリスト加藤久美子]

旧車にも関わり深い米国「25年ルール」。その歴史や本来の目的は?
加藤久美子&博人の見識 22.07.07

旧車にも関わり深い米国「25年ルール」。その歴史や本来の目的は?

近年、旧車の世界においては何かと話題にあがる「25年ルール」。 多くの人がこのワードを聞いて連想するのは「国産スポーツカー」や「海外輸出」、「価格高騰」、「JDM」などだろうか。 自動車メディアが「25年ルール」について触れる機会も増えているようだが、制定された経緯や歴史、本来の目的など詳しいところまでは触れていない。 そこで今回は「25年ルール」について正確な情報をお伝えしたいと思う。 ■「25年ルール」は、規制ではなく、例外 日本では「25年ルール」と呼ばれている法律の正式名称は “Imported Vehicle Safety Compliance Act of 1988, Pub. L. 100-562, 102 Stat. 2812” となる。 前半部分は直訳すると「1988年輸入車安全適合法」となり、アメリカの法律ではよくある「一般名称」だ。 後半の “Pub. L.” とはこの法律が「公法律」、“100-562” とは「第100議会において562番目に成立した公法律」であることを指す。 最後の “102 Stat. 2812” とは、「制定順法律集(Statutes at Large)」の「第102巻2812ページ以降に掲載されている」と説明している。 だが、いちいち長ったらしい名前で引用するのは大変なので、“Imported Vehicle Safety Compliance Act (IVSCA)” と呼ばれることが一般的だ。 ▲LAで毎年秋に開催されている「日本旧車集会」は2021年10月で16回目を迎えた 実際に法律の内容を見ていこう。 内容を要約すると、「連邦自動車安全基準に適合しないクルマは輸入できない」とするもの。 アメリカ合衆国国土安全保障省(DHS)のうちの、税関や国境警備を担当する部門「アメリカ合衆国税関・国境警備局(CBP)」によれば、適合しない輸入車は適合作業、再輸出、もしくは破壊のいずれかを施さなければならないと案内している。 だが、ここで肝心なのがこの法律に規定されている「例外」だ。 ここでは「連邦自動車安全基準に適合しない外国製自動車でも、製造から25年経過していればこの法律による規制の対象外とする」と書かれており、これが俗にいわれる「25年ルール」となる。 つまり、「25年ルール」は「規制」ではなく、「例外」なのだ。 ■1988年に「25年ルール」が制定されるまでの経緯とは? 次に知っておくべきなのが、「運輸省道路交通安全局(NHTSA)」の「連邦自動車安全基準(FMVSS)」という存在で、日本でいう「道路運送車両法」で定められている「道路運送車両の保安基準」と同様、アメリカ合衆国内で登録されるクルマの技術仕様のルールだ。 ▲日本のナンバーを展示用につけたクルマも急増 これは日本で米軍関係者がプライベートで乗っていたクルマのナンバー 日本車ともっとも大きく関わるのは「アメリカ合衆国で登録するクルマは左ハンドルでなければならない」の部分。 先述の「例外」は、このFMVSSに適合しなくても良いとしているので、つまりは「右ハンドルでも輸入・登録が可能」となる。 25年ルールは1988年に制定された。それ以前のアメリカ合衆国はFMVSSに適合しないヨーロッパ製の自動車を並行輸入で登録するのがポピュラーで、1985年には約6万9000台が並行輸入車としてアメリカに入ってきていた。 並行輸入はアメリカに正規で輸入されていないモデルが手に入るだけでなく、アメリカのディーラーが販売している価格よりもはるかに安く買うことができるため人気が高かった。 たとえば、1985年モデルのメルセデス・ベンツ 500 SELを米国内の正規ディーラーで購入すると5万3000ドルであったが、並行輸入だとそこから1万1000ドルほど安く手に入るという現象がしばしばあったのだ。 だが、この事態を重く見たのがメルセデス・ベンツの米国法人だ。1988年の法律が制定される以前よりもFMVSSへの適合は必須であったが、当時は書類の提出だけで済んでおり、そのクルマが本当に必要な適合作業を行なったかはほとんど確認されなかった。 メルセデス・ベンツの米国法人が数台の並行輸入車を実際に購入して調査したところ、マフラーの触媒がまったく異なる場所に装着されていたり、側面衝突時に乗員を保護するための補強が錆びた鉄パイプであったりと、ずさんな適合作業の痕跡を目の当たりにしたのだ。 そして彼らは恐れた。 これらずさんな作業を施したクルマが事故を起こし、その責任がまったく関係のない自分たち米国法人に向けられるかもしれないということを。 もちろん適切な適合作業を行なって販売する輸入業者も存在したが、適切か適切でないかを確認するのは困難である。 そこで「並行輸入車をすべて輸入禁止にしてしまえばいい」という大胆な施策の実行を思いつく。 メルセデス・ベンツが行った「反・並行輸入車」キャンペーンは他の自動車メーカーをも巻き込んで、法律制定へのロビー活動へと発展。彼らの思惑通り、無事にこの法律が誕生したのである。 つまりは、この「25年経つまでは憧れの日本車が手に入れられない」という足枷をアメリカ人にはめたのも、「憧れの90年代スポーツカーが製造後25年経過目前で急激に高騰して手に入れられない」という状況を日本の中古市場に作り出したのも、すべてメルセデス・ベンツの米国法人であったといってもあながち間違いではない。 ■日本で「25年ルール」が話題となったのは2014年以降 並行輸入を排除するキャンペーンは「安全」という大義名分で語ることもできるが、別の見方をすれば「現地法人の収益が減るから」という理由も見えるはず。 そしてこの「25年ルール」が日本の旧車界隈で大きな話題となったのは、2014年以降である。 1989年に発売された日産 スカイライン GT-R(BNR32)が製造から25年経過した年だ。 つまり、25年ルール発動によって32GT-Rがアメリカで合法的に輸入できるようになった。 ▲アメリカへの船積みを待つ25年ルールで解禁になったクルマたち そこから、数々のゲームや映画、漫画で見た「憧れの日本製90年代スポーツカー」がグッと近くなったとアメリカの人々は実感した。 製造年月から25年経過した個体はどんどんアメリカへ輸出され、毎年、新たな日本製90年代スポーツカーが「解禁」されていくという現象になっている。 今年は2022年なので、三菱 パジェロエボリューションや2代目トヨタ センチュリー、5代目ホンダ プレリュード、初代ホンダ シビックタイプRなどの、1997年から製造が始まった日本車が解禁されている状況だ。 ちなみに、1999年から製造が始まった日産 スカイラインGT-R(BNR34)は2024年に解禁予定だが、そのあまりにも高い人気で中古市場ではすでに爆発的な値段高騰に見舞われている。 ■実は製造後25年未満でもアメリカに輸入する方法が他にもある? なお、製造後25年を待たないでアメリカに輸入する方法も実はいくつかある。なかでも最も合法的手段なのがFMVSSで定められている特例、 “Show or Display” だ。 この手法はNHTSAが認めた「歴史的もしくは技術的価値のあるクルマ」を特別に輸入し、展示や整備に必要な走行に限って年間2500マイル(4000km)まで公道を走行可能とするもの。 これなら製造後25年経過していなくても、歴史的もしくは技術的に貴重と認められたクルマなら走ることが可能となる。 NHTSAに特別に認可された自動車のリストはNHTSAのウェブサイトで公開されている。 これを見ると、アストン マーティン DB7ザガートクーペや、アストン マーティン One-77、フェラーリ J50、マクラーレン スピードテイルなどのスーパーカー以外に、日産 スカイライン GT-R M-spec Nür、日産 スカイライン GT-R V-spec ミッドナイトパープルII、スバル インプレッサ 22B-STiバージョンなどの「超レア」な限定車も含まれる。 ■アメリカには「21年ルール」も存在する ちなみに、アメリカには「25年ルール」ともう一つ、「21年ルール」というものが存在する。 この背景には1963年に制定された “Clean Air Act(大気浄化法)” なる法律が存在している。 アメリカ合衆国環境保護庁の定める基準に適合しないエンジン、そしてそれを搭載する自動車の輸入を禁じているというもの。 そして例外規定として、工場出荷時の状態と同じ仕様のエンジンを搭載しており、なおかつ「製造後21年経過」している場合は、輸入して良いというものだ。 「25年ルール」ほど知られていないのは、そもそも「自動車の登録」の時点で製造後25年経過している必要があり、25年経過しているということはEPAの21年ルールも自然と経過しているからだ。 先述の “Show or Display” の場合、たとえ製造後25年経過していなくても、EPAの21年ルールは適用されるので要注意。 ■まとめ:「25年ルール」に関わる旧車バブルによる弊害とは? 「25年ルール」に関わる旧車バブルによって、映画やゲーム、漫画でかつて憧れた90年代スポーツカーは今後も高騰が続くだろう。 比例して旧車の盗難もますます増えていくと思われる。 しかし、だからといって健全な方法で「憧れの日本車」を手に入れたアメリカのクルマ好きをバッシングして良い理由にはならない。 ここ最近の価格高騰、そして多発する盗難事件の責任をそれらアメリカ人になすりつけるような批判がよく見られるのは、とても悲しいことだと筆者は思う。 [ライター・カメラ/加藤ヒロト]

なぜ、旧車は盗まれやすい?盗まれたらどうなるのか?
加藤久美子&博人の見識 22.07.06

なぜ、旧車は盗まれやすい?盗まれたらどうなるのか?

窃盗団が旧車を盗む前に行う「準備」を知って対策を施そう! ■ネットオークションへの出品が急増! コロナ禍で少し、盗難台数は減少傾向にあったものの、昨年夏頃から再び、80~90年代の国産スポーツカーを中心として旧車の盗難が増えています。   ▲実際に盗まれた80スープラのパーツ。盗難された2日後には早くもヤフオクに出品 旧車は盗まれるとその多くは、即座に解体ヤードに持ち込まれ、1-2日以内に解体されてしまいます。その後は、ヤフーオークションなどのネットオークションに出品されるか? もしくは海外に「自動車部品」として違法に輸出されてしまいます。 ▲盗まれた旧車は解体ヤードに持ち込まれ即座に解体される(写真はヤードのイメージです) 以前はほぼすべてが自動車部品として違法輸出されていましたが、最近ではネットオークションを利用して国内で完結させるパターンが増えています。 その理由は簡単に言うと、「国内ネットオークションの方が素早く、ラクに換金できるから」ということなのです。 海外における日本の旧車パーツは日本より高額な値段で取引されていますが、輸出は手間と時間が掛かり、コンテナに積んで船が出るまでに発覚するリスクもゼロとは言えません。 また、たびたび日本からの不正輸出が発覚しているアメリカでは近年、日本車の輸入に対して完成車も部品もチェックが強化されている現状があります。 しかし、ネットオークションやフリマサイトでは匿名で気軽に出品ができ、またヤフオクもメルカリも、なぜか出品者を保護する傾向にあります。 住所や名前が虚偽のものでも出品や取引が可能で、さらに盗難品だと証明されるまで時間も掛かります。 運よく、警察が介入できたとしても出品者と直接連絡が取れたり、盗んだ犯人が特定されたりすることは困難で、稀に特定できたとしてもオーナーのもとにパーツが全部戻ってくる可能性は非常に低いのです。 なお、もともと日本車の中古部品を大量に輸出している会社であれば、その中に盗んだ旧車のパーツを紛れ込ませてもまずバレることはほとんどありません。 部品輸出ルートが整っている状況であれば、海外に持ち出されることも相変わらずでしょう。 盗難された旧車が行きつくところは海外なのか?日本国内の別のオーナーなのか? 確実に言えることはアシが付きにくいネットオークションで捌かれるケースが増えているということです。  ▲日本で盗まれた旧車が解体されてアメリカの専門店で販売されていたことが発覚(2020年6月) ■旧車はなぜ盗まれやすい? ではなぜ、旧車は盗まれやすいのでしょうか? ・日本の旧車は海外でも国内でも人気が高いので、高額で売ることができる・多くは盗難に対応できる車両保険に入っておらず、またセキュリティ対策も甘い・保管場所が屋外の駐車場であることが多いので盗む側にとっては好都合・解体ヤードに持ち込みさえすれば、最近の電子部品が多いクルマに比べるとごく短時間で解体できる このように、国産旧車は盗みやすく解体しやすく高く売れる…窃盗団にとって都合がよいことだらけなのです。 しかし、旧車はもう2度と生産されることがない文化遺産ともいえる存在。 何とかして盗まれることがないよう守ってあげなくてはなりません。 筆者は過去2年間で約100台以上の旧車盗について取材をしてきました。 盗難被害に遭った人々の話から、大切な旧車を盗まれないためにオーナーが知っておきたいことを以下にまとめます。 ●1.旧車は狙いを定めて盗まれる。必ず下見をしている 旧車を専門に盗んでいる窃盗団は海外で高く売れる、または国内でも高価格で流通できる80-90年代の日本製スポーツカーに狙いを定めて盗みに来ます。 では、そこに旧車がある、ということをどうやって知るのでしょうか? さまざまな手段がありますが、その一つに旧車イベントに参加して狙いを定めた旧車オーナーと親しくなって自宅の場所を聞き出して盗みに行く…という方法があります。 親しげに話しかけてくる外国人(特にパキスタン、スリランカ国籍には注意)には気を付けてください。 また、狙いを定めたクルマの近辺に似たような旧車がないか? 一緒に盗めるなら効率が良い…と周辺の様子をGoogleストリートビューを見ながら駐車場に停まっていないか?探し出してマークします。 旧車は一度購入したら長い間乗るオーナーが多いため、ストリートビューの写真が2〜3年前のものであっても、比較的今もそのまま乗り続けているというパターンが多いのです。 せめてカバーをかけるなどして車種の特定を防ぎましょう。 ●2.狙った旧車のある場所が特定できたなら、今度は下見。下見でやることは以下 ・周辺の防犯カメラの状況・逃走ルートの確保(Nシステムなどがない道を選ぶ)・対象となる旧車のセキュリティ状況をチェック(ハンドルやバッテリーを外していないか?どのようなアラームがついているか?ハンドルロックやタイヤロックの有無など)・オーナーが住む場所を探す(オーナーのアパートの部屋まで特定します)・オーナーはどれくらいの頻度で旧車に乗っているか?をチェック・オーナーの生活時間(朝何時におきて何時に出勤し、帰宅時間や就寝時間などもチェック)・周辺に他に盗めそうな旧車はないか? ・・・などなど。 まだまだありますが、盗みを決行する2-3週間前に入念に下見をして、想像をはるかに上回る細かな事前確認を行っています。 ●3.「高価買取」のチラシや名刺には要注意 「高価買取の名刺やチラシ」がワイパーに挟まれたら盗難に注意! ▲筆者宅の旧車にもこのようなチラシが挟まれていた。稀にまともな業者もいるようだが… 昔からよく、「高価買取の名刺やチラシ」がワイパーに挟まれたら盗難に注意すべし!と言われてきました。 これは現在でも同様です。 ワイパーに名刺やチラシを挟んでいき、オーナーがどれくらいの頻度でクルマに乗っているのか?などもチェックします。 また、ユピテルのパンテーラやゴルゴなどの高級カーセキュリティはクルマに乗らない期間が2週間以上続くと、電源が切れる仕組みになっていることが多く、買取チラシや名刺を挟んで2〜3週間動いていないことを確認し、さらにセキュリティが切れていることを確認してから盗むという手口もあります。 この記事では旧車盗難の現状をお伝えしました。 次回は旧車を窃盗犯から確実に守るための、より具体的な方法をご紹介します。 [撮影・加藤ヒロト/ライター・自動車生活ジャーナリスト加藤久美子]  

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