去る4月8日の早朝、相模原市にあるアリオ橋本の駐車場の一角がにわかにざわめきだした。 エアを送り込まれて作り出された出走ゲート、出発の準備に余念のないクラシックカーとそのオーナーたち。 2日間に渡って行われるルート・ディ・相模原の始まりである。 ルート・ディ・相模原はトロフェオ・タツィオ・ヌボラーリの相模原ステージとして今回2回目の開催を迎えるクラシックカーラリーだ。 会場である相模原の名所、相模湖や津久井湖といった桜の咲く観光地や富士山麓周辺のワインディングロードを楽しみながらドライブを行う。 ルートはコマ地図と呼ばれる図の指示に従い各所ッチェックポイントを通過していく。 初日は橋本のショッピングモール「アリオ橋本」を出発して、富士急ハイランド内にあるハイランドリゾート&スパを目指し、2日目はそこからゴールである相模湖公園を目指す。 今回は初日の様子をお届けする。 ■出走唯一の国産車1/2222台の戦い 初日の出走は15台。メルセデスやポルシェフェラーリといったクルマが準備を始めるなか、今回唯一国産車でエントリーしていたクルマがあった。 それがトヨタコロナ1600GTだ。 後期型のボディに足回りやブレーキを強化、他の車体との特徴的な違いはフロントフェンダーにエアアウトレットが付き、Cピラーの根元にはトヨタ2000GTのフロントフェンダーと同様の1600GTのエンブレムが付いている。 コロナ1600GTの生産台数は2222台と、トヨタ2000GTの337台と比べれば決して少なくないように思えるが、3代目コロナの総生産台数は57万8534台ということを考えれば、いかにその数がわずかかわかると思う。 実は2日目にはさらにエントリー数が増えてトータルで30台以上になるということで、国産車もさらに数台参加予定であったが、初日は唯一の参加車両であった。 オーナーはこのほかにももう1台コロナを所有している。 そのことからもわかるようにオーナーのコロナに対する思い入れは強いようだ。 それを証明するかのように、ボンネットを開けると、その裏側にはレーシングドライバー高橋晴邦氏のサインがしっかりと書かれていた。 高橋氏といえば、日本グランプリでコロナを駆り総合3位クラス1位になったレジェンドドライバーである。 参加車両は1.6Lの9Rエンジンに5速MTを搭載、リアにあるエンブレムはそのことをしっかりと主張していた。 車体はリペイントされたものだが純正の塗装を再度吹きなおしたもので当時と同じカラーリングになっている。 ■それは復興から始まる街おこし ルート・ディ・相模原の始まりは災害復興支援ともいえる。 令和元年に起きた台風19号により相模原や道志周辺にも大変な被害をもたらした。 このときの土砂崩れで419号線が全面通行止めになり、しばらく通ることができなかったことを筆者も覚えている。 主催者の野呂氏も自身のキャンプ場が壊滅するなど、苦境に立たされていた。 それを復興するにあたり考えたことが、自身のキャンプ場だけを復旧させても何ら意味がない。 地域全体を盛り上げてこの地に観光客を呼び戻さなくてはならないと考え、一般社団法人を立ち上げたという。 そのときに野呂氏の過去にあったレース経験や伝手をを生かして、北海道で20年以上開催されているクラシックカーイベント「トロフェオ・タツィオ・ヌボラーリ」の相模原ステージとして同イベントを立ち上げた。 クラシックカーが走ることにより、相模原の観光資源を多くの方に知ってもらい、また沿道に多くの人が足を運んでもらえるようにと考えたのだ。 スタート会場には相模原を盛り上げるということからも、相模原観光親善大使の女性2名が華を添え、開催の挨拶を市長が行う盛り上げぶりだ。 ■富士急ハイランドを目指して駆ける スタート地点から各車コマ地図に従い、途中の中継地点を目指す。 1日目、2日目と両方で必ず中継地点になるのが協賛会社のひとつである(株)ASISTの駐車場だ。 ここでは両日にわたって昼食を取る休憩地点となっている。 全車両快音を響かせながら相模原の名所や峠道を走り抜けていく。 順位は問題ではない。 彼らが走ることで注目をしてもらい沿道の人に関心を持ってもらう。 多くの方々に走るクルマたちを見てもらい、その歴史的背景や時代、文化といったことに思いを巡らせてもらう。 そしてそれらを次世代へ引き継いでいく。 クラシックカーラリーの趣旨のひとつはそこにあるのではないかと思う。 ■地域の良さを見つめなおすために 富士急ハイランドをゴールに初日のスケジュールが完了する。 翌日には再びワインディングや市街地を駆け抜け相模湖公園にゴールする。 ゴール地点では衣装メーカーによるクルマたちの周囲を彩る異色のコラボレーションやハンドクラフトはじめ、ケータリング等の出店も行われていた。 地域の企業とうまくタイアップを行い、参加者や観客、地域住民にも観光地として素晴らしさや楽しさをあらためて知ってもらう。 それこそがルート・ディ・相模原というイベントの責務であり醍醐味だといえる。 相模湖公園に整列する車両たちはそのことを静かに語っているように思えた。 ■クラシックカー・ツーリング・ラリーイベント「2nd. Route di SAGAMIHARA」https://routedisagamihara.jp [ライター・撮影/きもだ こよし]
去る4月9日(日) 、広島県の複合レジャー施設神石高原ティアガルテンでクルマとバイクのイベント「2023車輪村」が開催された。 今年で開催16年目を迎えたこちらのイベントは、神石高原町の有志によって発足した「TEAM車輪村」によって運営されている。 毎年4000人以上の来場者があるという超人気イベントだ。 今年は5000人を上回ったという。 地域活性とモータースポーツの普及を目的とし、エンターテイメント、モータースポーツ、グルメなどの多彩なコンテンツを展開する。 今回はイベント当日の様子を紹介しながら、車輪村の魅力をお伝えしていこう。 ▲メイン会場はイベント広場と多目的駐車場 早朝から多くの来場者が集まり、列を作っていた。 並んでいると、会場で行われているドリフトパフォーマンスのリハーサルの音が聞こえてきた。 エンジン音とスキール音に気持ちが高揚する。 8時50分に開場した途端、リハーサルを見ようと多目的駐車場へ直行する人も多く、大勢のギャラリーがリハーサルの様子を見守っていた。 ■ステージ、グルメ、名車集結で大盛況 ▲ヒストリックカーミーティング、展示、飲食販売、ステージイベントが行われる広場 9時には開会宣言が行われ、2023車輪村がスタート。 当日は、特設ステージと多目的駐車場で行われるイベントをすべて楽しめるようにスケジュールが組まれていた。 この日行われた催しを順に紹介していこう。 ▲開会宣言、軽快なオープニングMCで盛り上げる主催代表の中野達也さん(右)とラジオパーソナリティの佐原智代子さん(左) ▲神石高原町入江嘉則町長より広島県神石高原町ふるさと大使の任命式も行われた。任命された芸人・画家の福本ヒデさんは2期にわたってふるさと大使を務める ●地元グルメを満喫! 地元広島のご当地グルメが大集結したフードマーケットが賑わっていた。当日は汗ばむほどの陽気で、冷たいスイーツやドリンクにも長い列ができていた。 ●自衛隊による車両展示 今年は自衛隊の車両展示コーナーも登場。 高機動車や野外炊飯専用トレーラーなどが展示され、じっくりと見学できる貴重な機会。 記念撮影のコーナーは幅広い世代に人気だった。 ●メーカー、ショップ、カーグッズブース クルマ、バイクのディーラーやショップが出店。 カーグッズの販売もあり、お気に入りの1点を探しもとめるクルマ好きの姿が多く見られた。 ●イメージガール水着撮影会 車輪村イメージガール「La La Sweetガール」による水着撮影会。 イメージガールの皆さんが、華やかに会場を盛り上げた。 ●舞乃空(まのあ)ライブ 今年2月にメジャーデビューしたばかりの舞乃空さん。 NHKのど自慢グランドチャンピオン大会に出場するなど歌唱力抜群。 みずみずしい歌声を響かせて来場者を魅了していた。 ●ストリートドラマー・リエイ パフォーマンス Youtubeなどで活躍中のストリートドラマー、リエイさんが車輪村初登場。 「初めてドリフトを見ました。すごい迫力!」 と話すリエイさん。 ドリフトパフォーマンスに刺激を受けたように疲れ知らずのパワフルなドラミングを披露。 アウェイなステージから一体感をつくり出すのもプロの技!特設ステージにはいつのまにか人だかりができ、1曲ごとに歓声が起こっていた。 ●安芸戦士メープルカイザーショー 広島県公認児童虐待防止ヒーロー「安芸戦士メープルカイザー」のヒーローショーが開催されていた。メープルカイザーは、悪の心だけを斬る優しいご当地ヒーローだ。 子どもたちは大喜び。 ショーに熱中して声援を送る様子が印象的だった。 ●エクストリーム&ダートトラックバイクショー エクストリームバイクの人気選手が集結。 海外でも活躍するダートトラックの大森雅俊選手、スタントライディングのトップライダー木下真輔選手、沖縄県出身で新進気鋭の屋比久大選手、国際大会に参戦するなど活躍中の照屋則斗選手。 そして今年はポーランドよりRafal Pasierbek選手を迎え、超ド迫力のエクストリームバイクパフォーマンスで会場を沸かせた。 なかでも、火花が飛ぶほどギリギリに車体を倒してスライドさせる大森雅俊選手による「リンボーダンス」のパフォーマンスには大歓声があがっていた。 ●D1ドライバーパフォーマンス エクストリームバイクとともに、毎年観客を熱狂の渦に巻き込むのがドリフトマシンパフォーマンス。 今回参加したのは、D1グランプリに参戦する川畑真人選手、フォーミュラ・ドリフト ジャパンにも参戦する日比野哲也選手、松川和也選手、石川隼也選手。 そして“のむけん”ことレジェンド野村謙選手と、若手としても注目される息子の野村圭市選手が親子で参加。人気選手のそろい踏みとなった。 華麗なドリフトを披露するマシンたち。 単走、追走、全員でパフォーマンスというプログラムで、フィナーレはエクストリームバイクとの競演。 観客のボルテージも最高潮で、声援に応えようとドライバーやライダーの走りもヒートアップ。 大歓声と拍手のなか、MCを含めた出演者全員が集合し“煙幕のカーテンコール”となった。 ■【VOICE1】来場者の声 来場していた方に声を掛け、車輪村の魅力を尋ねてみた。 NSXを見ていた50代の男性はこう話す。 「4月になるとこのイベントだなと思います。相変わらずのんびりした雰囲気が良いですね。空ぶかしなどする人もいなくて、お客さんのマナーも良いと思います。展示しているクルマも年代的に“ドストライク”です。今の旧車ブームも関係あるんでしょうか、こうして見ていると綺麗な個体が増えましたよね。当時モノにこだわっていて印象的です。車種も多様になり、テンションが上がります。子どもたちが見ると新鮮に見えるようです。家族連れでも楽しめる良いイベントですよね。ぜひともずっと続けていってほしいです」 知人の誘いで初めて来たと話す若い女性に出会った。 旧車に興味を持ち始めてまもないという。 来場したばかりということで、これからじっくりとイベントを楽しむそうだ。 「今回が初参加です。旧車が好きになってまもなく、ミーティングにも行ったことがなかったので、ドキドキワクワクしています!私の父がシャレード デ・トマソに乗っていたこともあり、スクエアなディティールを持つクルマや、丸目ライトのかわいいクルマが好みです。いろんな車種のオーナーさんとも話せそうなので、テンションが上がっています」 ■【VOICE2】ヒストリックカーミーティング参加者の声 ヒストリックカーミーティングで愛車を展示していたオーナーにもインタビュー。 愛車へのこだわりと、車輪村に参加した感想を伺った。 ●スズキ ジムニーJC(SJ30型) オーナー:古谷啓通さん 1984年式のジムニーを所有する古谷さん。このジムニーのほかにもマツダ ポーターバンやスズキ ワゴンR、アルト ラパンも所有しているという。こちらのジムニーとの出会いが印象的だ。 徳島県にあった個体をポーター繋がりの友人が入手。その友人が古谷さんの住む岡山に引っ越して来た際に保管場所の関係で、古谷さん宅の敷地にてジムニーを保管していたが、友人が遠方へ引っ越すタイミングで古谷さんの愛車となったという経緯をもつ。 「クルマの方から這い寄って来たようなものですね(笑)。2スト3気筒のサウンドが気に入ってます。友人との約束で、定番のオフロード性能を上げるようなカスタムはあえてせずに、サイドのデカールも含めて今のノーマル風のスタイルを維持していきたいですね」 続いて、今回の車輪村への思いを伺った。 「毎年さまざまな趣向を凝らしての開催は大変だと思いますが、このような色々なジャンルの詰まったイベントは全国的に見てもなかなかないと思います。企画運営は大変と思いますが来年も楽しみにしております」 ▲もともと4MTだったが5MTに換装。ステッカーも「5SPEED」を追加した ●スズキ アルト(SS40V型) オーナー:三宅翔磨さん 1984年式の三宅さんのアルトは、自らレストアを手掛けた個体だ。ボディカラーのサンジェルマンレッドは少し朱色がかった原色の赤で、大変美しい。 分かる方は気がついたかもしれないが、最終型だが初期型のフロントに仕上げてある。サイドミラーもドアミラーからフェンダーミラーにしたという。 そしてボンネットの裏には、かつてスズキを牽引した鈴木修氏(現 相談役)の直筆サインが入っている。当時のことを思い出してもらった。 「肩にやさしく手を置いて握手してくださったのを覚えています。力強い握手に気持ちがこもっているのがわかり、すごくうれしかったですね」 ▲2021年2月16日に記された鈴木修氏の直筆サイン ●マツダ シャンテ GL2 オーナー:西栄一さん 1972年式の愛車は、西さんの知人から譲り受けたという。手に入れた当時は不動となっていたが、整備士の西さんの手によってよみがえった。 「シャンテのエンジン音はロータリーと同じで吸入ポートと排気ポートにバルブがないので、ロータリーの音によく似ていますね。6500rpmまで回るので心地良いです」 シャンテは、水冷2気筒2サイクルエンジン(AA型)を搭載。ロータリーエンジンの搭載が計画されていたといわれるそのエンジンは、ロータリーバルブ仕様のブリヂストンのオートバイ、 350GTR(北米向け)の空冷2ストロークエンジンを基本設計に水冷化したものだ。 「ホイールベースが長く、シート位置が車体のセンターに近いのでカート感覚。レーシーなフィーリングも気に入っています」 レーシングドライバーとメカニックの経歴を持つ西さんは、シャンテのそうしたスポーティな部分も気に入っているそうだ。車輪村には知人の展示車両サポートを含めて初期から参加しているという西さんに、今年の観想を伺ってみた。 「イベント内容もどんどん良くなっていると思います。今年はドラムの演奏が良かったですし、楽しい思い出がたくさんできました。来年は友人も誘って2台のホンダT360で参加したいと思っています」 ▲フロントスポイラーは自作!一見木製と思えない仕上がりだ ●マツダ シャンテ GL2 オーナー:冨田康弘さん 1972年式のシャンテを所有する冨田さん。他にもマツダ ポーターバンやロータス エリーゼも所有するクルマ好きだ。 シャンテは中学生の頃に冨田さんの父が乗っていたこともあり、思い出の1台。冨田さんの同僚がスバル 360を購入したことに触発されて7年前に購入した。 「クルマを通じて仲間と交流できたり、トラブルのときは助けてもらったりと仲間の存在がうれしいです。良き相棒としてずっと乗っていきたい」 と語った。続いて、車輪村への感想も伺った。 「すごく楽しい。クルマやバイクはもちろん音楽も楽しみながら1日が過ごせるイベントですね。地元のなかでも大きなイベントだと思います。ぜひ継続してほしいですね」 ▲冨田さんのお気に入りはリアビュー ●ホンダ Z GL オーナー:多児直宏さん 1974年式のZはネットオークションで入手したという多児さん。多児さんの父がボディ補修の技術を持っているので一緒に修復したそうだ。 3年掛けて修復し、公道復帰して2年。元気に走るZと今後どう過ごしていきたいかを尋ねてみた。 「現状維持しながら、ところどころにさりげなく個性を出していけたらと思います。今のクルマと違って止まらないし曲がらないですが、そういう不便さがおもしろいクルマだと思います」 今年の車輪村に参加した感想を伺ってみた。 「車好きにはたまらない、楽しいイベントを毎年ありがとうございます。次回も是非参加させてください!」 ▲「レトロで可愛らしい外観がお気に入り」という多児さん ●ホンダ 1300クーペ7 オーナー:石井さんご一家 1970年式の個体を所有する石井さんご一家。 ご主人は珍しい空冷エンジンがお気に入りとのこと。 息子さんからは「バナナ車」と呼ばれて家族全員に愛されている幸せな1台だ。 車輪村は2回目の参加だそうだ。 「さまざまな旧車とふれあえたりバイクパフォーマンスを見られたりとても楽しいです。こういうイベントは大切だと思います。ぜひ長く続けてください」 ▲「自衛隊の車がかっこよかった!」と喜ぶ息子さん ●ホンダ NSX オーナー:福島章さん 1992年式で、NSX-GT仕様という個体。オーナーの福島さんは車輪村に初期から参加しているというベテランオーナーだ。 「雰囲気の良いイベントです。スタッフさんやボランティアの皆さんの地元愛がすごい。いつも楽しみにしています」 愛車のボンネットにはレジェンドドライバーのサインが書かれている。まさに「お宝」マシンだ。 ▲左から篠塚建次郎氏、中嶋悟氏、中嶋一貴氏のサインが並んでいる ●ランボルギーニ カウンタック5000QVクワトロバルボーレ オーナー:古谷野治男さん 古谷野さんは世界各国の名車を多数所有しているが、このカウンタックは34年間乗り続ける「相棒」のような特別な1台だという。 現在の走行距離は7万6000キロとのこと。 「40年前のデザインとは思えないですね。ヨーロッパのデザイナーの凄さを感じます」 ▲愛車に乗り込む古谷野さん ●スバル R2 SuperDELUXE オーナー:長谷川泰さん 1971年式のR2は5年前に購入。かわいらしいスタイル、2サイクル360ccのエンジン音がお気に入りだという。 お子さんと一緒にさまざまな場所にドライブして楽しんでいるそうだ。 車輪村へはここ近年参加するようになったそうで、毎年楽しみにしているという。イベントの魅力を聞いてみた。 「バイクのショーやドリフトパフォーマンスの迫力がすごいですね。毎年楽しみにしています。地元のイベントとして定着していると思います」 ▲気に入っているというリアビュー ■スタッフ全員がお見送り!心温まるフィナーレ ▲会場を後にするクルマのオーナーも笑顔で手を振り返す 16:00にすべてのプログラムが終了。 フィナーレはヒストリックカーミーティングに参加したクルマたちがパレードという形で会場を後にした。 会場の出口では、スタッフの皆さんが帰路に着くクルマを1台ずつ誘導しつつ送り出していた。 1台ずつにスタッフが「ありがとうございました!」と感謝の言葉を掛けて見送るという、最後まで心のこもったおもてなしが胸に響いた。 来場者、スタッフ、パフォーマーが醸す一体感。 読者の皆さんもぜひ「皆で作るイベント、車輪村」の魅力を体感いただきたい。 ■取材後記 今年の車輪村は、4月6日から9日まで開催されたゴルフトーナメント「マスターズ」と開催日が重なっていたことを思い出した。 マスターズが開催されているアメリカのオーガスタ市といえば、街全体でトーナメントを支援。知名度が高まるにつれて人が人を呼び、世界中が注目するゴルフトーナメントの開催地として知られるようになった。 そんなオーガスタの取り組みが「車輪村」と重なる。 地域が一丸となって継続することで人が人を呼び、神石高原町の地域活性化につながっている唯一無二のイベントだと思わずにはいられない。 携わる皆さんの郷土愛が注がれながら継続されてきた車輪村は、クルマとバイクを軸とした総合エンターテイメントとして、このさきも進化を続けていくだろう。 ▲チケットとなっているリストバンドには1個ずつ手書きメッセージにジーン…! 最後に、神石高原町は、自然豊かで魅力的な高原リゾートでもある。 近隣には名勝「帝釈峡」などの絶景スポットやパワースポットも点在。 ブランド和牛「神石牛」や豊かな自然の恵みも魅力だ。 車輪村に訪れる際はぜひ、神石高原町の魅力も堪能したい。 取材させていただきありがとうございました。 [取材協力] TEAM車輪村https://syarinmura.com/ 吉備旧車倶楽部 [ライター・撮影/野鶴美和]
去る4月14日〜16日にかけて、幕張メッセで開催された「オートモビルカウンシル2023」を取材した。 早いもので、今回が8回目の開催となるオートモビルカウンシル。 今回より「Classic Meets Modern」から「Classic Meets Modern and Future」にテーマが改められ、新たなステージを目指したという。 日本車メーカー、インポーター、新世代の自動車メーカーが9社、ヘリテージカー販売店は過去最高となる41社が出展。 トータル166台もの名車が一堂に会することとなった。 ■クルマを「観る」というより「鑑賞」する感覚に近い モータショーでもなければチューニング系のイベントでもない。 国内外の名車が一堂に会するクルマのイベントは意外と少ない。 そしてこれが重要なのだが、オートモビルカウンシルの魅力のひとつに「じっくりと観られる」ことが挙げられる。 「鑑賞」という表現が適切かもしれない。 気になるクルマ、普段なかなか目にする機会がないクルマを心ゆくまで「鑑賞」できるのだ。 もし、目に留まったクルマが販売車輌であれば購入することもできる。 ……かといって「早い者勝ちのバーゲンセール」というわけではない(実際には早い者勝ちなんだけれど)。 また、クルマにまつわるアート作品が数多く展示されており、ギャラリーで美術品を鑑賞している感覚に近いかもしれない。 それだけに、会場内の空気感は独得だ。 また、来場者の年齢層が比較的高めなので、会場内の雰囲気もどこか落ち着いている。 会場内の時間がゆっくりと流れているのが取材をしていても分かる。 もちろん、それなりに来場者がいる……ことはいるのだが、東京モーターショーのようにお目当てのクルマに近づけないということは稀だ。 気になるクルマを撮影したければ、少し待てば「オールクリア」のチャンスがめぐってくる。 撮影したい人がいることを他の来場者も気がついて、自然と「間」を作ってくれるからだ。 そしてある種の慎みというか、マナーの良い方が多い印象だ。 この空気感がしっかりと醸成できている時点で、このイベントは大成功だと思う。 先述のように「ギャラリーで鑑賞している」雰囲気に近いので、この空気感を好む人たちにとっては非常に居心地がいいだと断言できる。 ■国内外の名車を間近で観られる幸せ 最新のモデルであれば、メーカーの広報車を集めて並べばいい(それはそれで大変だけれど)。 メーカーとしても秘蔵コレクションを出品するまたとない機会でもある。 マツダブースに展示されていた「マツダMX-81アリア(レストア済み)」が間近で観られるだけでも、このイベントに足を運んで良かったと思えたほどだ。 しかし、メーカーが保有しているケースは日本車が主で、輸入車ともなればは基本的にはオーナーカー。 つまり、オーナーに声を掛け、車輌を貸し出してもらえないか交渉する必要がある。 喜んで貸してくれるオーナーがいる一方で、難色を示す方も少なからずいる。 それが希少車であればあるほど大変だ。 筆者自身もさまざまなオーナーを取材させていただく機会に恵まれたが「人目に触れず、ひっそりとクルマ趣味を楽しみたい」という方も少なからずいらっしゃることは承知しているつもりだ。 正面突破ではまず断られるけれど「○○さんの紹介なら断れない」と、人のつながりで大切な愛車を貸してくれることも多い。 実際に裏でどのようなやりとりがあったのかは分からないが、テーマ展示でズラリと並べられた 〜ポルシェ 911 60 周年記念企画〜 「初期ナローからカレラ GTまで」および〜エンツォ・フェラーリ生誕125周年企画〜「フェラーリ・スペチャーレ」の展示車をそろえるのはそれなりのご苦労があったのではないかと推察する(まさに眼福でした。関係者の皆さま、ありがとうございました)。 ■日産ブース、攻める 今回、個人的に驚いたのが日産自動車のブースだった。現行モデルはSAKURAのみ。 このクルマを取り囲むようにして、日産シーマ(Y31)、フェアレディZ(Z32)、PAO、そしてハコスカが展示されていたのだ。 日産シーマのオーナーは女優の伊藤かずえさん。 新車ワンオーナーで乗りつづけ、昨年、フルレストアされた個体そのものが展示されていた。 レストア完了後、銀座の日産ギャラリーに展示され、その後は以前と同じように乗りつづけているという。 メーカーに手によってフルレストアされたのだから、そのままガレージにしまいこむこともできたはずだが、これまでと変わらず乗りつづけている姿勢は本当に素敵だと思う。 フェアレディZ(Z32)とPAOのオーナーは日産の若き社員の方の愛車で、伊藤かずえさんとともにトークショーを繰り広げていた。 何を隠そう、純白のZ32は、旧車王ヒストリアの執筆陣のひとりである、Z32専門店「Z-one」代表小村氏のショップ出身の個体だ。 キュートな女性オーナー、丹呉いづみさんを別媒体で取材させていただいたことがあるのだが、この方のZ32愛は半端ではない。 ■国産ネオクラシックカーが近くて遠い存在になったことを実感 かつて、東京モーターショーの会場でお立ち台に載っていたクルマがやがて路上で見掛けるようになり、そしてひっそりと姿を消していく……。 そしてこのように旧車、ヴィンテージカーとしてふたたびスポットライトを浴び、表舞台に姿を見せてくれる。 1980年代、そして1990年代の現代では「ネオクラシックカー」といわれている時代のクルマも、ハコスカやホンダSシリーズのような旧車と呼ばれるカテゴリーに近づきつつあることを実感した。 それはつまり、チューニングやドレスアップのベース車輌ではなく、オリジナルの状態に戻すレストアベースの立ち位置に変わってきていることを意味する。 廃車寸前の個体をタダ同然で引き取ってきて、自宅の駐車場でウマを掛けて空き時間に修理する……なんて存在ではなくなりつつあるのかもしれない。 ■会場内を何周もすることで気づくこともきっとある 昨年「追いトップガン」というキーワードが話題になった。 映画トップガンの続編である「トップガンマーヴェリック」を観るために何度も何度も映画館に足を運ぶ熱心なファンのことを指す表現だ。 ちなみに、筆者も地元の映画館まで3回足を運んだ。 1回目、2回目、3回目……と、何度も繰り返して観るうちに新しい発見があるのだ。 「オートモビルカウンシル」は、東京モーターショーや東京オートサロンなどの大型イベントと比較したら会場はグッとコンパクトだ。 それでいて、入場料は先述のイベントよりも高価……ではある。 フロアマップを見る限りでは「すぐに見終わってしまうのではないか?」と懸念しても仕方がない。 しかし、会場全体が見渡せる分、東京モーターショーや東京オートサロンのように駆け足で観る必要もないし、見逃す可能性も低い。 そして「追いトップガン」のごとく、会場内を何周もすることで全体を把握でき、細部にいたるまでじっくり観られるようになる。 これこそが「オートモビルカウンシル」の醍醐味のひとつであるような気がした。 気の合う友人とクルマ談義しながら会場を練り歩けば充実した1日を過ごせるだろう。 もちろん1人でも楽しめる。 自分のペースで、誰に気兼ねすることもなく、文字通り「鑑賞したい」のならおひとりさまの方がいいかもしれない。 すでに来年の開催が決定しているので(2024年4月12日〜4月14日開催)、迷っているうちに行きそびれてしまった方はぜひ会場に足を運んでみてほしい。 そうそう。ひとつ、気をつけた方がいいことがある。 自動車関連グッズの販売が充実しているので、散財する可能性が高い方はクレジットカードを自宅に置いて、財布の中身は現金のみにした方がいいかもしれない。 [ライター・撮影/松村透]
■パシフィコ横浜で開催されたクラシックカーの祭典 去る2月18日、19日の2日間にわたってみなとみらいのパシフィコ横浜でノスタルジック2デイズが開催された。 主催はノスタルジックヒーローやハチマルヒーローでおなじみ文芸社、後援として横浜市の文化観光局がついている。 カーイベントとしても既に定番のひとつに数えられるほど、規模の大きなイベントだ。 国産だけでなく欧米、欧州車も展示されるイベントではあるが、今回は訪れた初日である土曜日の国産車を中心に話を進めていきたいと思う。 ■レストア全盛の時代を迎えたノスタルジック2デイズ 筆者も足繫く通う同イベントだが、かつては各ショップが腕を競うように一押しの車両を仕上げて出店していることが多かった。 しかし世の中が変わったのか、以前とは少し違って見えた。 少し前にMAZDAが初代ロードスターのレストア事業を立ち上げたり、日産が芸能人の所有するシーマを再生したりと国産車もいよいよレストアに力を入れ始めた。 そのこともあってか各ブースにはショップのデモカーだけでなく、レストア工程を見せる展示やリプロダクトパーツの販売がずいぶんと目につくようになった気がした。 かつてはデッドストックや中古パーツを多く見ていたものが、現在は出店ブースによっては、リプロダクトパーツ等に置き換わっていた。 実際に話をうかがったショップでもすべて専門の業者に委託、作成したものでそれらはすべて動作確認をおこない、不具合のないように入念にチェックもされているという。 また、かつては専門の治具を駆使して実質ワンオフ状態で作成していたボディパーツなども現在は元パーツからの型取りや、3Dスキャナーなどにより金型を起こしての制作をおこなって対応しているという。 そんなことをして採算が取れるのだろうか?そう思って話を聞くと、現在では国内には少数でも海外も含めれば十分に採算が取れるだけの需要が見込めるので、そこをクリアすれば問題はないのだそうだ。 ■夢のクルマを走らせる こうした半ばメーカーのようなパーツを作り上げるリプロダクト企業もあれば、イチから制作して組み上げていくところもある。 この黄色い制作途中の車両、ご存じの方もいると思われるが、日産のレーシングカーのR380であり、そのレプリカだ。 制作したのはノーチラススポーツカーズ。 サーキットの狼ミュージアムのディノレーシングスペシャルを制作したコーチビルダーといえば、ご存じの方もいるかもしれない。 桜井眞一郎氏の会社S&Sがオリジナルから復刻した際に、ゼッケン等はパテ修正をして譲ってもらったとのこと。 プリンスのロゴのレリーフだけはそのままになっていたことから、あえて残すことにしたのだとか。 実はこの車両は筆者がまだひな形しかないときから周知していた車両だけに、今回の初お目見えには注目していた1台だった。 現段階でもフレームまで組まれていたのだが、これでも若干フレームとボディでズレがあるので、フレーム側は制作しなおすという。 このR380はまた機会があれば完成までを別途取材で追いたいと思う。 ■舞台裏から見るノスタルジック2デイズ 開場して最初にステージでおこなわれる催しに、選ばれし10台というプログラムがある。 今回も選りすぐりの車両たちがステージ前に現れたのだが、この選ばれし10台をきっかけに数奇なめぐりあわせをした人物がいた。 昨年「アルミ弁当箱協会会長」として外車王SOKENで紹介されていた「マツドデラックスこと山本圭亮氏」である。 奇しくも第1回の選ばれし10台の最後のひとりとしてオペル・レコルトで登場したのが山本氏であった。 このことが縁で、これ以降このノスタルジック2デイズの音響担当として裏方で活躍することとなる。 この日も氏のチョイスによる絶妙な70~80年代歌謡やポップスが会場内をBGMとして流れて、会場内にいるおじさん世代の甘酸っぱい思い出や、ほろ苦い記憶をよみがえらせていたかもしれない。 ■イベントの横道を行く 巨大地下駐車場に見たクラシックアメリカン イベント会場には参加ができなくとも隠れた名車や、お宝なクルマがきっとある。 そう信じて疑わない筆者が、毎回お届けするイベントの横道。 今回はパシフィコ横浜の巨大地下駐車場を訪ねてみた。 しかし、筆者が降り立ったのは諸事情で地下2階、見渡せば最新のランボルギーニのSUVやロールスロイスといった超高級車が目白押し。 しかし、よくよく見れば、これ等はすべて月極めに止まっている。 残念だがこれは筆者の望む車両ではない。 あくまでのイベントに訪れた車両でなければならないからだ。 そこでさらに見渡すとキレイな「R」ではないハコスカや、SW20こと2代目MR2などなんとなくそれらしい車両がちらちらと見受けられる。 それでも、もうひとつパンチがほしい。 さすがに今日は難しのか?あきらめて出口へ向かおうとしたときに見つけたこちら。スチュードベーカー・チャンピオンそのカブリオレモデルだ。 1950年代のスチュードベーカーの代表的モデルとして、インダストリアルデザイナーのレイモンド・ロウイの手によりデザインされた。 ジェット機を思わせるフロントグリルは時代を象徴するようなデザインでもあった。 ■煌びやかな見た目か、歴史を感じさせる重みか? 会場では制作途中も含めて、レストア技術を見せる展示が本当に多かった。 こうして一通り見て回って感じたのは、どれも非常にキレイにまた丁寧に仕上げられているということだ。 同時にそれ故にまるで新車のように仕上げられているという見方もできてしまう。 人によってはそれを年式相応に見えないと考える人もいる。 しかし、この場合どちらも正解だと筆者は考えている。 もちろんキレイに仕上がったクルマはいい。 しかし、歴史を重んじて当時の雰囲気を残すことも、また「良い味」として魅力的なのだ。 これはオリジナルにこだわって仕上げるのと、普段から使えるように現代パーツに置き換えて、日々の足にも使えるようにすることにも似ている。 果たしてどちらがいいのか? その悩みはこの会場を訪れた方だけが見出せるのではないかと思う。 [ライター・撮影/きもだ こよし]
去る12月11日、西東京は国道20号線沿いにある谷保天満宮にて、クラシックカーが集結し、谷保天満宮旧車祭が開催された。 境内のそこかしこに往年の名車や希少車、スーパーカーが立ち並ぶ。 実に3年ぶりに開催された同イベントに参加した車両は115台に及んだ。 主催はオートモービルクラブジャパン(以下ACJ)。 谷保天満宮は日本のカーイベント発祥地であり、その始まりは明治41年に発足されたオートモービル・クラブ・ジャパンによる国内最初の遠乗会にある。 現在のACJは2011年8月1日このクラブの103周年の記念の日に再結成され、以来20年以上にわたり様々なカーイベントを催してきた。 その意味では、谷保天満宮旧車祭はクラブの中でも本命イベントといえるものだ。 神社を中心に所狭しと並んだ旧車たちに大人は懐かしさや羨望のまなざしを、子供は見たことのないスタイルのクルマ達に目を輝かせていた。 ■象徴たるタクリー号 日本初のツーリングである遠乗会、このイベントに有栖川殿下が自らハンドルを握って参加したのがタクリー号であった。 初の国内産ガソリン自動車、明治40年に国産吉田式自動車としてタクリー号は生まれた。 人力車や馬車、荷車が走る未舗装路をガタクリ、ガタクリと走る様からタクリー号と愛称が付いている。 しかし、残念ながら本物のタクリー号は現存しておらず、画像の車両は2012年4月に発足した実働レプリカ制作プロジェクトにより復刻された車体だ。 こちらは谷保天満宮旧車祭世話人会が中心になり、1930年製のオースチン・セブンをベースに制作された車両になる。 同年8月1日に谷保天満宮本殿にて完成披露が行われ、第1回の熱海ヒストリカGPのひと月まえには天満宮から熱海の梅園まで実際に走っている。ACJの象徴ともいえる車両だ。 ■谷保天満宮とACJ 谷保天満宮は東日本最古の天満宮であり、亀戸天神、湯島天満宮と並び関東産大天神と呼ばれている。 学業の神様である菅原道真を祀っていることからも学業成就や合格祈願、厄除けはじめ、もちろん上記の経緯からもわかるように交通安全祈願の祈祷もおこなっている。 当日も参加車両が神主に祈祷を受けることができるようになっていた。 この後、午後からはパレードランとして国立まで沿道の人々に見送られながら走ることもあり、 多くの参加者が愛車とともに祈祷を受けていた。 ■横道を行く 毎回本会場以外で止まっているイベントに来た車両を見て回るイベントの横道。 今回はイベント会場であるが、第2会場となったことで本殿に直接行ってしまった方が見過ごしたかもしれない車両群としてスポットを当ててみたい。 第2会場はイタリアンカーを中心に90年代の軽スポーツが並んでいた。 その中で、入って正面の中心にいたのがスバル360ヤングSSだ。 スバル360は1958年、まだまだ庶民にはクルマは高嶺の花として考えられていた時代にサラリーマンでも手に入れられるクルマとしてデビューした。 小さくても大人4人が快適に乗ることができる性能を実現するためのパッケージングや軽量化に挑戦。 当時スバルの持っていた元航空機メーカーとしての技術を余すことなくつぎ込んだモデルだ(スバルオンラインミュージアムより)。 デビューより10年の年月を経て競合他社に対抗するべく送り出したスポーツモデルがヤングSSだ。 その性能はデビュー当時の358㏄16馬力から排気量は変わらずに、36馬力と実に2倍以上のパワー、マニュアル3速から4速モデルへの変更を持って登場した。 外装には専用のボディカラーやボンネットのヤングSSを示すストライプ、タコメーターや革巻きステアリングを装備するなど、スバルのスポーツモデルの原点ともいうべきモデルだ。 会場では同じくRRのフィアット500に挟まれながら、その小さなテントウ虫はしっかりと存在を主張していた。 ■Back to 20世紀 実は今回ほど横道が目移りしたイベントもなかったのではないか?と思えるほどに街のそこかしこに旧車が止まっているイベントであった。 会場である谷保天満宮が基本、参加車両で手いっぱいであったこともあり、当然のことながら見物に来た車両はそうした周辺駐車場にまわる。 そうして会場を中心に見渡すと、コンビニや路地を走るクルマの多くが旧車という事態になっていた。 谷保の町並みは最近改装が目覚しい南部線沿線としては、駅舎も含め昔の雰囲気を比較的に残している。 それも相まってまるで町全体が過去に戻ったかのような気分になれた。 それが良いか悪いかは筆者には答えられない。 しかし、わずか数時間のタイムスリップはとても心地のよい時間をもたらしてくれたと思う。 ■オートモービルクラブジャパンHPhttps://acj1908.com/ ■谷保天満宮HPhttp://www.yabotenmangu.or.jp/ [ライター・撮影/きもだ こよし]
去る2022年11月13日。チューニングカーの祭典「チューニングフェスタ」が、23年の歴史に幕を下ろした。 イベントが岡山国際サーキットでスタートしたのは2000年。多様なショップのチューニングカーが“ガチンコバトル”を展開するという、これまでにないスタイルのカーイベントとして始まり、西日本最大級のイベントに成長した。 しかし、時の移ろいでチューニングカーを取り巻く環境も変化。 チューニングベースとなるクルマの高騰や電子化など、クルマを手に入れにくい時代になりつつあるという背景があり、イベントも変革の時ということで一度ピリオドを打つということになったという。 ■決して終焉ではない 今後は「チューニングカーを次代へ残す」をテーマとし、車両価値を伝え、動態保存につながるイベントにリニューアルするとのこと。新イベントの開催が期待される。 今回は、23年間もの継続に感謝を込めながらクルマ好きに愛されてきたイベントのフィナーレを振り返る。 ■2000年から続いたチューニングカーの祭典 このイベントは、開催当時から続く伝統のレース「マイスターカップ」をはじめ、数々のレースや走行会、体験走行で構成される。 そして今回、西日本初開催となった「OKAYAMA HISTORIC CAR RACE」にも注目したい。この競技はJAF公認の公式なレースであり、日本クラシックカー協会の認定を受けている格式あるレース。1960年代後半からのヒストリックカーが出場する。 まさに集大成といえるラインナップでの開催となった。 ■出走していた憧れ、懐かしのマシンたち 当日は、イベントがスタートしてまもなく雨に。コースコンディションはウェットで始まった。赤旗が相次いだが、上級者ならではの迫力あるバトルは圧巻だ。 ▲チューニングフェスタにおいてR32 GT-Rは“シンボル的存在”といえるだろう ▲午前中のコースは激しい降雨でヘビーウェットに。水飛沫をあげながら走る80スープラ ▲シビック(EG6)の勇姿 ▲アルトワークス、コペン、トゥディなど長年人気を誇る軽自動車のチューニングマシンたちの姿も ▲会場内に立ち並ぶ、パーツメーカーやショップの展示、飲食ブースも見逃せない ■【リザルト】マイスターカップ 「マイスターカップ」への出場は、岡山国際サーキットのラップタイム1分45秒未満を保持していることが出場条件。出場マシンは国産モデルに限られ「4WD」「2WDターボ」「2WD-NA」の3クラスに分かれる。 *以下、ドライバー/ 車両名(エントリー名)/型式 ●マイスター4WDクラス 1位:トトロ / トトロ33GT-R / BCNR33 2位:eijiのおホモ達つよぽん?? / 天龍ガス欠BNR32 / BNR32 3位:koto / AS koto 34R / BNR34 ●マイスター2WDターボクラス 1位:道堂晃 / ☆WORKS 道堂☆ /AE86 2位:コマッチャン / D2☆180SX / RPS13 3位:ゆうちゃん/ フルステージまっくろくろすけFD /FD3S ●マイスター2WD NAクラス 1位:林幸男 / D2☆EK9/ EK9 2位:山根正和 / ガレージヤマネ☆レビン/ AE86 3位:田中均樹 / ドミネーションペトロナスEK9/ EK9 ▲ マイスター2WD NAクラスで優勝を飾ったD2☆EK9号 ■【リザルト】チャレンジクラス マイスターカップへのステップアップ部門「チャレンジクラス」。「4WD」「FR」「FF」と駆動方式でクラス分けされている。1分46秒001以上のタイムを保持していることが出場条件だ。 ●チャレンジ4WDクラス 1位:藺牟田竜 / D2☆エボ8 /CT9A 2位:レスポール高埜 / Team FullStage / VAB 3位:重田幸男 / - / GDB ●チャレンジFRクラス 1位:嘉納健二 / RH坂井・V-coatレビン / AE86 2位:堀井琢己 / D2・S15 / S15 3位:カズ / 黒いS2000 / AP2 ●チャレンジFFクラス 1位:大久保凌 / 田辺レーシング / EF8 2位:亥野好史 / - / DC5 3位:ひでやん / ひでやんDC5@RSファクター / DC5 ■【リザルト】インポートクラス 輸入車向けの「インポートマイスタークラス」と「インポートチャレンジクラス」。1分55秒のタイムを基準に、速いドライバーは「マイスター」へ。入門向けとして「チャレンジ」の2クラスが設けられている。 ●インポートチャレンジクラス 1位:JC PEPINO / チーム名/ 車両名(型式)/ 220 2位:ピカチュウどS / PFCJどノーマル鶏饅987どS/ 98721 ●インポートマイスタークラス 1位:ヨシミューラ/ Beck JAPAN ヨシムラ / - 2位:gucci_racer/ サ狼 AUDI TTS310 / 8J 3位:ヨッシー/ アックスレーシングプロジェクト / 993 ▲インポートマイスタークラスで優勝を飾ったBeck JAPAN ヨシムラ号(Beck GTS) ●86・BRZマイスタークラス トヨタ86とスバルBRZによるワンメイクレース。エアロバンパーやGTウイングなどのダウンフォースをはじめ、エンジンチューン、過給機装着まで改造範囲を拡大して開催。 1位:戦闘民族 /ALTEX 戦闘民族号 / ZD8 2位:前川志郎 / キモオタブルー/ ZC6 3位:長尾奏斗 / ラウダダカンパニー86 / ZN6 ▲トヨタ86とスバルBRZによるワンメイクのマイスタークラス。優勝を飾ったALTEX 戦闘民族号 ■【リザルト】K-Carクラス 軽自動車部門「K-Car」クラスはターボとNAの2クラスに分かれて初開催。根強い人気のトゥデイ、アルトワークス、コペンの新旧モデルの競演、S660、ビートなどが熱い走りでギャラリーを魅了した。 *以下、ドライバー/ エントリー名 / 型式 ●K-Car NAクラス 1位:mistbahn /mistbahn PP1 ビート / PP1 2位:檜山貴志/ ヤハタレーシング 2号車/ PP1 3位:江角浩二/ KibiGasket 内山工業 /PP1 ▲K-Car NAクラスの優勝を飾ったmistbahn PP1 ビート号 ●K-Car ターボクラス 1位:川端昌幸 / GarageTake-Up青アルト / HA22S 2位:飯野山佑介 /プライム☆チームマッハトゥディ/JW3 3位:MORIMAX / 通勤快速GR COPEN / LA400A ▲K-Car ターボクラスの優勝を飾ったGarageTake-Up青アルト号 ▲各部門の表彰式が行われた ■【競技レポート】西日本初開催! OKAYAMA HISTORIC CAR RACE こちらのレースは、これまで筑波サーキットを中心に関東で開催されていた。 しかし以前から西日本での開催を強く望む声が多く、日本クラシックカー協会の認定を受けてチューニングフェスタで待望の初開催となった。 1960年代後半から1970年代までのクルマを中心に展開されるレースで、クラスは大きく3クラスに分かれる。 エンジンとサスペンションのみチューニングが許される「Sクラス」、1970年までに製造されたフルチューニングマシンの「Fクラス」、トヨタ KP61スターレットと日産 B310サニーのフルチューニングマシンによる「TSクラス」。 見どころのひとつは、当時のクルマ好きが憧れた名車が数多く登場する点だ。 日産 B310サニー、トヨタ KP61スターレット、日産 510ブルーバード、アルファ ロメオ ジュリアシリーズなどが出走した。 ▲シリーズ3代目として1967年にデビューした510ブルーバード ▲1978年にデビューしたKP61スターレット。シリーズとしては最後のFR車でもある。さまざまなモータースポーツで活躍した名車だ ▲各部門の表彰式が行われた ■【リザルト】OKAYAMA HISTORIC CAR RACE ●S-1クラス 1位:林誠 / ガルトサービスホンダ1300クーペ / H1300C ▲S-1クラス優勝を飾ったガルトサービスホンダ1300クーペ号 ●S-2クラス 1位:伊藤俊哉 / イトウレディース&チェック510 / N510 2位:藤原進 / チェック☆ニッサン☆ブルーバード / P510 3位:仲田好喜 / ナルトカイ.ナッツ510 /H510 ▲S-2クラス優勝を飾ったイトウレディース&チェック510号 ●F-2クラス 1位:蒲生真哉/ Nats中村自動車ブルーバード / KH510 2位:河上正治/ オカザキスピードTC16サニー / PB110 3位:坂口夏月/ DAISHINブルーバード / KP510 ▲F-2クラス優勝を飾ったNats中村自動車ブルーバード号 ●TS-1クラス 1位:大八木龍一郎/ DAISHIN Progrexxサニー / B310 2位:大八木信行 / DAISHINサニー / B310 ▲TS-1クラス優勝を飾ったDAISHIN Progrexxサニー号 ●TS-2クラス 1位:TOMISAN/ ダイワN通商恵比寿スターレット / KP61 ▲TS-2クラス優勝を飾ったダイワN通商恵比寿スターレット号 ●TS-Eクラス 1位:青木孝行/ DAISHIN Rock254サニー / B310 ▲TS-Eクラス優勝を飾ったDAISHIN Rock254サニー号 詳しいリザルトはこちらからhttp://jcca.cc/event/2022/okayama/ ■【ドラマ】地元・岡山の企業が製作したマシンが、デビュー戦を完走 OKAYAMA HISTORIC CAR RACEで、地元企業のマシンが初出場を果たした。 岡山県に本社を置く、クルマ好きにはおなじみの有名パーツメーカー「OS技研」。 2023年に創業50周年を迎えるにあたり、記念事業としてオリジナル4気筒エンジン「TC16-C1」を搭載したマシンの製作を2020年から行っている。 今回のプロジェクトは、ヒストリックカーレース参戦を目標としつつ、若手への技術継承や、エンジン量産化に向けた課題解決などの目的をもって取り組まれているという。 今回、目標としてきたレースの舞台が偶然にも地元・岡山で実現するというドラマがあった。 「TC16-C1」を搭載したPB110サニー エクセレントをベースとしたマシン「オカザキスピードTC16サニー」号は、赤旗が相次ぐウェットコンディションのなか、河上正治選手の鮮やかな走りでレース完走を果たした。 ▲OKAYAMA HISTORIC CAR RACEクラス2位という好成績でデビュー戦を飾った ▲開発中の4気筒DOHCエンジン「TC16-C1」。テスト中に9000rpmを達成しているという レースを含めた振り返りを、プロジェクトにアドバイザーとして参加しているOS技研チーフエンジニアの富松拓也さんに伺った。 富松さん:「テスト走行は何度も繰り返していたんですが、今回が本当のデビュー戦でした。 レースは富士スピードウェイだろうと思っていたんです。ところが、岡山で行われる話を聞いて驚きました。どこで開催するにしてもこのプロジェクトは続行されますが、岡山国際サーキットに合わせてセットアップしてきました。 L型4気筒のエンジンでFクラス(フルチューニング)参戦というと、車種はおのずと510ブルーバードかPB110サニー エクセレントになるんですが、あえて不利な点の多いPB110サニー エクセレントで挑戦することにしました。 これまでさまざまな問題に直面し、まともに走らせるのが本当に大変でした。現段階では『まだまだ』ですね。マシンの大きな課題は、強大なエンジンパワーをいかに路面に伝えるかです。そのほかにも煮詰めなければならない部分は多々ありますし、課題を一つひとつ解決しながら仕上げていきたいです」 今回のプロジェクトでドライバーを務めている河上正治選手は、1980年代から岡山県内で行われていたレースや全日本ジムカーナ選手権に参戦するなどのベテランドライバー。OS技研との縁などを伺いつつ今回を振り返っていただいた。 河上選手:「今回の走りは反省点が多いですが、マシンの仕上がりを感じました。期待を膨らませています。 OS技研とは学生時代から交流があります。自分がL型に乗っていたこともあり、OS技研のクラッチなどのパーツをずっと使ってきました。創業者の岡﨑さんとは名前が漢字まで一緒なので、縁があるのかなと思っています」 「TC16-C1」はすでに市販化も始まり、1基がユーザーのもとに届けられている。バックオーダーも数基ある状態だという。 プロジェクトの今後の展開にぜひ注目したい。 オーエス技研https://osgiken.co.jp/ 公式YouTubeチャンネルhttps://www.youtube.com/@osgiken1/videos ■パレードランでフィナーレ ▲パレードランしている車種のプロフィールが次々にアナウンスされていた イベントのフィナーレでは、来場しているすべてのクルマが参加。走行中の車種がMCで紹介され、卒業式のような雰囲気に。 このイベントに一度ピリオドが打たれることをあらためて感じるパレードランだった。 ■取材後記 筆者がチューニングフェスタへ初めて行ったのは2005年のこと。クルマ好きなら誰でも知るようなイベントが地元・岡山で開催されていることが、地元住民として誇らしかった。 さまざまなチューニングカー、そして大好きなS2000が目の前を駆け抜けていく姿がただただうれしく、公道では目にできない走りやエンジンサウンドに興奮したことを思い出す。本気で走るマシンを目にしたことで、クルマが一層好きになった。 憧れのクルマが全開で走っている姿を目にすると「いつかあのクルマに絶対に乗るんだ」というモチベーションもアップするのではないだろうか。実際に、筆者は憧れだったS2000を手に入れた。 23年間、多くのクルマ好きに愛されたイベントが途切れてしまうことはファンとして残念だが、チューニングカーの魅力を次代に伝える新イベントのスタートを待ちたい。 ▲筆者が2005年に行ったチューニングフェスタにて [取材協力] ●岡山国際サーキットhttp://www.okayama-international-circuit.jp/ ●オーエス技研https://osgiken.co.jp/index.php ●日本クラシックカー協会http://jcca.cc/ [ライター・撮影/野鶴美和]
去る2022年11月6日(日)、愛媛県四国中央市の川之江駅栄町商店街で「昭和レトロフェスタ」が開催された。 今回はイベント内で催された「第11回 U-550旧軽自動車ミーティング」を紹介したい。 「戦後からバブル期にかけて排気量や外寸などの規制を受けながら各メーカーが試行錯誤を繰り返してつくりあげたクルマたちから、モノを大事にする本来のエコ精神を感じてほしい」 そんな思いのもとに開催されている。 ■懐かしの名車74台が集結! 当日は好天で、汗ばむほどの陽気。 参加車輌は、朝9時半にパレードランで川之江駅栄町駐車場へ入場。74台が集まった。 10時からミーティングが開始となり、会場はすぐに盛況となった。 会場に隣接した商店街には、20店以上にもおよぶマルシェやワークショップなどのブースが立ち並んだ。 また、ステージでは地元のミュージシャンやダンス団体、地元高校の書道部がパフォーマンスし、盛り上がりを見せていた。 ▲550cc未満の軽自動車が集結した。手前のトラックはスズキ スズライト キャリイ(L20)。イベントで目にすること自体が珍しい、レアな1台 ▲レーシーな個体も(スズキ フロンテクーペ) ▲「昭和レトロ」にこだわった演出!(三菱 360バン) ▲クルマのプロフィールが書かれた暖簾は、スタッフの村上慎也さんが一つひとつ手作りしたもの ▲展示スペース内であればスワップミートもOK ▲ナンバー隠しに遊び心。「ゆっくり直そう」というステッカーにも注目 ▲コンテストも行われ、会場投票で「かっこいいで賞」「かわいいで賞」「ロングディスタンス賞」などが決まった ■【VOICE】皆さんの愛車を拝見! どの個体も貴重なのはもちろん、カスタムにもオーナーの個性が現れて見ごたえたっぷり。 今回参加していたこだわりの愛車たちをご覧あれ!※年式は個体の年式 ●ホンダ ライフ ステップバン(1974年式)オーナー高木雅彦さん ホンダが大好きというオーナーの高木さん。このクルマを含めて5台を所有しているという。ビート、N360(最終型)、トゥデイ(1995年式)、N-ONE。そしてモンキーも7台所有しているとか。 「愛車のすべてがこだわり」と話す高木さん。 この個体は1989年に購入し、大規模なレストアを行い、大切に乗っているそうだ。 「ホンダが大好きなんです。自分が乗れなくなったら、このクルマは息子に受け継いでもらう予定です」とのこと。 ▲スポーティーなステアリングが似合う ●スバル サンバー バン(1972年式)オーナー 佐々木英一郎さん 佐々木さんのサンバー バンは6回目の車検を受けたばかり。 美しいエンジンルームは多くの人が見入っていた。 もともとチューニングカーが好きな佐々木さん。 以前はかなり手を入れたチェイサーに乗っていたそうだ。 商用車に惹かれてこのクルマを手に入れてからは約17年になるという。 「サンバー バンはやりきった感があるので違うクルマを考え中です」と佐々木さん。 次期愛車への構想もふくらませているようだ。 ▲愛車に搭載される現在のエンジンは、R2のEK33型エンジンをモディファイしたもの。カワサキの純正キャブレターCVK32を流用 ▲チャンバーやサイレンサーは佐々木さんがワンオフで製作している ●マツダ ポーターキャブPC3A(1973年式)オーナー村上慎也さん 今回の主催&スタッフでもある村上さんのポーターキャブは、オレンジ色がとてもキュートだ。 「やんちゃ毒ガエル」をイメージしたという愛車。 「気負うことなく自然に、のんびりと付き合っていけたらいいですね」と村上さんは微笑んだ。 ▲レトロテイストを取り入れた室内も素敵 ▲「橙蛙屋工房」の屋号アート活動もしている村上さん。粋なデザインのイラストやグラフィックがちりばめられていた ●「橙蛙屋工房」の作品についてはInstagramのアカウント「 tohkayakoubou」をチェック! https://www.instagram.com/tohkayakoubou/ ●三菱 ミニカスキッパーⅣ(1973年式)オーナー五十嵐純一さん シリーズ2代目にあたるミニカ70をベースにしたモデル。「こしゃくにもクーペです」のキャッチフレーズで知られる。 五十嵐さんの愛車は、2G21型エンジン(バルカンエンジン)が換装された後期型になる。 ちなみに、前期型には2ストで金色のエアクリーナーが装備された「ゴールドエンジン」が搭載されていた。当時38馬力を誇っていたが、排ガス規制によってパワーダウンを余儀なくされ、後期型はマイルドな仕上がりとなった経緯がある。 新潟県から自走で参加したという五十嵐さん。 愛車は手に入れて約6年になるそう。 ほぼ自走で全国の軽自動車ミーティングへ遠征しているというフットワークの軽さに脱帽だ。 「誰とも被らないクルマという点が魅力で購入しました。スペース的にもちょうど良く気に入っています」 そう話す五十嵐さん。オリジナルを大切にしていきたいという。 ▲三菱の2G21型エンジン、通称「バルカンエンジン」。「バルカンS」からはサイレントシャフトが採用されている ●スズキ セルボ(1979年式)・ バモスホンダ(1973年式)オーナー中村真一さん 岡山県総社市のカーショップ「エヌ・ファクトリー」のオーナーである中村さん。 今回は2台同時に持ち込んでの参加だった。 【スズキ セルボ】 こちらの初代セルボは、中村さんの知人からの依頼で引き継いだ個体だ。この個体にまつわるエピソードを伺った。 過去に一度、同じセルボを所有していたという中村さん。 ある日、夢の中に突然そのセルボが現れたという。 それから数日後、居酒屋で飲んでいるときに知人から電話があり、「初代セルボがあるので引き継いでもらえないか」との相談があった。中村さんは酔いの勢いも手伝って購入を決めた。あの日の夢は前兆だったのだろうか?どこかシンクロニシティを感じてしまう。 ▲先代モデル・フロンテクーペのデザインとRRレイアウトを受け継ぐが、リヤガラスがハッチになるなど実用性も向上 【バモスホンダ】 バモスホンダはもともと中村さんの父親の愛車で、形見ともいえる大切な1台。「幼い頃に家族でドライブした記憶があります」と中村さん。 ▲幼少時代を思い出しつつリアシートに座っていただいた ●お問い合わせ:エヌ・ファクトリー・URL:http://www.n-factory-feel.com/・住所:岡山県総社市清音柿木461-3 ・Tel:0866-94-0670 ●ホンダ N360(1968年式)オーナー丸山浩市さん 車体は購入後すぐに塗り替えを行い「クラブマンレーサー」をイメージしたグリーンに全塗装。 「RSCレーシング仕様」の白いレーシングラインを実物の線幅にまで再現したこだわりの1台だ。 「オリジナルにこだわりすぎず、経年変化を楽しんでいきたい。70歳までは元気に乗りたいと思っています」 丸山さんは、軽自動車のみのイベントは初体験だそう。 「ホンダ好きのオーナーとも知り合えた」と笑顔を見せる丸山さん。 この日は奥さま、娘さんと一緒にイベントを楽しんでいた。 ▲N360がデビューした「1967年3月」と同じナンバーはこれからも守っていくそう ●スズキ セルボ(1989年式)オーナーPONNEWさん シリーズ3代目のセルボに乗るPONNEWさん。 こちらのモデルはシリーズ唯一のバンタイプ。現在の実動車は、10台ほどではないかと思われる。 通称「横丁小町」と呼ばれて親しまれ、世界初の電動パワステを装備したモデルでもある。 「部品調達は大変ですが、アガリの1台として大切に乗っていきたい」とのこと。 ▲空力性能を意識したルーフのラインは、低燃費を売りにしている現代の車種にも通じるものを感じる ▲グラスルーフで開放感抜群! ▲DIATONEのオーディオシステム ●スズキ キャリイL40(1969年式)オーナー竹本一城さん シリーズ4代目のキャリイ(L40/前期型)に乗る竹本さん。 このモデルはジウジアーロデザインでも知られる。 2年前にレストアが完了したそうで快調のようだ。 「不具合はないので消耗するパーツをストックしながら現状維持に努めたい」と話す。 ▲リアのホイールはなんと自作! ▲リアシートがあり、4人乗り登録なのだ。シートも自作で新調 ●東洋工業(マツダ) K360(1962年式)オーナー仲子俊輝さん 知人から譲り受けたというK360は、手に入れた当時の塗装色をそのままにしている。 経年変化を楽しんでおり、ヤレ感に飽きたら再塗装したいとのこと。 なかでも気に入っている点はエンジン音だという。 ▲友人の竹本さんと ▲工具箱や整備書、パンフなど貴重な品々をディスプレイ ▲小物入れも当時モノ ●ホンダ ライフ(1974年式)オーナー小田さん スズキ キャリイのオーナー・竹本さんと友人の小田さん。 この個体は竹本さんからの紹介で北陸から迎え入れた個体だ。 走り好きの小田さんはドリフトやオフロード走行も楽しんでいるそう。 「旧車とはいえ、ライフは速いですね」と走りにも満足している。 自然体がコンセプトで大きく手を加えるところはないという。 ▲「もし欲しい方がいたらお売りしますよ」と小田さん ●スズキ アルト ウォークスルーバン(1988年式)オーナー梅崎雄一郎さん 立ったまま作業ができる商用車として開発されたウォークスルーバンは、軽規格ではダイハツ ミラをベースにしたモデルが先行して登場し、スズキ アルト、三菱 ミニカにもウォークスルーバンがラインナップされた。 梅崎さんの愛車は、2代目アルトがベースとなっている。 前の愛車を箱替えしようと思い、中古車サイトを調べていて見つけた個体だという。 「荷物がたくさん積めてかわいいですね」と梅崎さん。 ▲車内で立ててしまうこの広さ! ▲特装車ならではの各メーカーカタログ ▲買い物からイベントまで大活躍! ●ミツビシ ミニキャブ5バン(1976年式)オーナー田辺真司さん 1976年に軽自動車規格の改定(排気量は550ccまで、車体サイズは全長×全幅×全高:3200×1400×2000mmまでアップ)が行われたが、各メーカーはすぐにフル新規格モデルを出す余裕がなく、既存モデルを一部改良して新規格に合わせた暫定的なモデルが、わずかな期間ではあるが存在している。 このミニキャブ5もエンジン排気量を471ccに拡大し、バンパーを延長してボディ全長を伸ばしたものの、全幅は360cc規格のまま。わずか11カ月しか生産されなかった。 その後はフル規格化を果たし、550ccのミニキャブワイド55となった。 田辺さんの愛車は、一度廃車になっていた時期があるという。数年の修理期間を経て公道復帰。当時のナンバーを維持している。 「良いコンディションを維持しつつ、残していきたいクルマですね」と田辺さんは話す。 ▲軽自動車規格の変遷を感じられる貴重なモデルだ ▲当時モノのステッカーを再現 ■取材後記 早朝5時半に「吉備旧車倶楽部」の皆さんと合流し、児島ICから瀬戸大橋を渡って坂出ICを下車し、国道11号を走って会場へ向かった。 「紙のまち」四国中央市は古くから紙を生産する町として栄えた。 今も市内には製紙工場が点在し、工場の煙突が印象的だ。 そして煙突の背後にそびえ、白雲をたなびかす四国山脈。そんな景色を眺めながらのパレードランから始まった。 その土地ならではの景色や雰囲気も味わえるのが、やはり県外のイベントへ出かける魅力でもある。 「昭和レトロフェスタ」のような地域活性とクルマ文化をうまくからませたイベントが、このさきも増えていけばと思う。 ▲会場となる「栄町商店街」までは、吉備旧車倶楽部の三宅さんのアルトに乗せていただいた。アルトの美しい車内。こちらのアルトの詳細を近いうちにご紹介できる…かも!? [取材協力] U-550旧軽車ミーティング事務局 吉備旧車倶楽部 [ライター・撮影/野鶴美和]
去る11月5日(土)6日(日)、岡山国際サーキットにてマツダによるモーターイベント「MAZDA FAN FESTA 2022」が開催された。 コロナ禍の影響で2020年、2021年と中止となっていたため、3年ぶりの開催となった。 「共に始めよう」とキャッチコピーを掲げた「MAZDA FAN FESTA 2022」は、レースや多彩な体験型イベント、トークショー、展示などが充実。 ファンにはたまらないポイントが満載で、世代関係なく誰もが自動車の魅力に触れることができる参加型イベントだ。その初日を取材した。 サーキットは早朝からにぎわい、大勢のファンが並んだ。 レーシングコースでは本格的に走行も始まり、徐々に会場の熱気が増していった。 展示ブースには早い時間から多くの来場者が訪れ、なかでも注目を浴びていた「FD RX-7 CLASSIC MAZDA レストア展示」は、このあと詳しく紹介する。 ■レーシングコースではさまざまな競技 サーキットのレーシングコースでは、二日間に渡って耐久レースやナンバー付き車輌のレース、ドライビングアカデミー、デモラン、マツダ各車種のパレードランなどが行われた。 今年10周年を迎えたという「マツダファン・エンデュランス(マツ耐)」は第5戦岡山ラウンド。 岡山大会では土曜に「NORMAL系クラス」が行われ、日曜に「TUNED系クラス」が行われた。 ▲走行に備える参加者 そのほかにも二日間に渡って、RX-8のワンメイクレースとしては日本最大級の「エイトリアンカップ」や、多様なマツダ車が出走する「マツダファン・サーキットトライアル(MFCT)」なども開催された。 ●熱狂!ドリフトパフォーマンス 2018年FORMULA DRIFT JAPANチャンピオンのマッド・マイク選手が来場。 レーシングコースのホームストレートにてパフォーマンスした。 ホームストレートの観客席からは歓声があがっていた。 また、2023年のパイクスピークへMAZDA3で参戦するという発表もあった。 ▲走行するロードスターの周りを旋回してドリフトに持ち込む超絶テクニックも披露 ●ハイレベルな戦い、「ロードスター・パーティレース」 ロードスターのモータースポーツベース「NR-A」による、JAF公認ナンバー付きワンメイクレース「ロードスター・パーティレース」。 西日本シリーズの覇者を決める最終戦だった。 今回、岡山でのパーティレースとしては過去最多の36台がエントリーした。 ▲NDシリーズは「ミノワファクトリーロードスター(箕輪卓也選手)」(左)が、NDクラブマンは「Shootingロードスター(中村進選手)」(右)が優勝を飾った ●レースで活躍中のマシンたちが疾走!「MAZDA SRIRIT RACING&パートナーズレースカー展示・デモラン」 レースカーのデモランも行われた。 マツダは2021年にレーシングチーム「MAZDA SPIRIT RACING」を立ち上げている。 スピードスポーツに挑戦する人、モータースポーツに憧れている人、応援する人、モータースポーツに限らず道具を操ってスピードに挑む人をつなぎ、サポートする取り組みを行っている。 そのチームマシンをはじめとしたパートナーズレースカーたちがコースを駆け抜けた。 ▲スタートしていくマシンたち ▲スーパー耐久レースへのステップアップをサポートするマシン、倶楽部 MAZDA SPIRIT RACING ROADSTER。今年はパーティレース出身のドライバーを中心に挑戦中だという ●愛車でタイムアタックに挑戦!「マツダファン・サーキットトライアル」 「マツダファン・サーキットトライアル(MFCT)」は、自分に合ったスタイルでモータースポーツを楽しめるのが魅力だ。 JAF公認サーキットで年5戦が行われている。 今回はその第4戦。 マツダのさまざまな車種が出走し、タイムアタックに挑んでいた。 ▲ランティス(ゼロウノフロンティアランティス) ▲デミオ(M8トルクディーゼルデミオ) ▲アクセラ(SKM’AXELA) ■誰もが楽しめる展示やカフェ、参加型コンテンツが盛り沢山 参加型コンテンツや展示も豊富で、どのブースも盛況だった。 eスポーツを体験できるブースや、マツダワークスで活躍したレジェンドマシンの展示、RCカー体験、子ども向けのストライダースクールまで家族で楽しめるような催しが充実していた。 さらに、飲食ブースやオーナーと愛車をテーマにした写真展、ペーパークラフト作り、雑貨販売なども行われていた。 ミニコースではドライビングアカデミーやオートテスト、CX-60の同乗体験など、最新モデルにふれたり安全運転技術を学べる催しもあった。 ▲マツダワークスで活躍したマシンを展示。なかでも787B(レプリカ)は人気で、一緒に記念撮影するファンも多かった ▲クラブハウスにはカフェスペースが開設されて憩いの場に。愛車をテーマにした写真展も催されていた。テラスでは雑貨販売も ■名車を未来へ!「FD RX-7 CLASSIC MAZDA レストア展示」 早い時間から大勢の人が訪れていた、RX-7のレストアブース。 マツダは2017年よりロードスター(NA)のレストアサービスを開始。 その第二弾としてRX-7が検討されている。 すでに復刻パーツが一部再供給されており、現時点でFC3Sのパーツは30点、FD3Sは72点のパーツが復刻されている(いずれもエアーコントロールバルブは2023年1月発売予定)。 今回は、初日にFD3Sのホワイトボディ、二日目に塗装されたボディを展示。 レストアサービスの実現に向け、前進していることをアピールした。 ▲今もロータリーエンジンの製造を継続するマツダ。ハンドメイドで製造されている ▲レストアサービス検討中のイメージとして公開されていた車体[写真提供:MAZDA] ▲ローター部品やスロットルセンサーセットなどが展示されていた 現段階では、NAロードスターに続く「第二弾」として、1台丸々できるかどうかをシミュレーション中。 再生産できない部品もあるので、リビルド品で対応するなど検討しているという。 今後の展開を、担当の西田芳伸さんに伺った。 「お客様から要望の声は大きいですが、本社で行うと台数をこなせないという問題があります。今、NAロードスターのお客様にも待っていただいている状態です。価格においてもどのくらいでスタートできるのかを検討しています。NAロードスターのときはサービス開始まで2、3年を要していますが、なるべく早く実現したいという思いはありますね」 そう話す西田さんのもとには、つねにファンやRX-7のオーナーが訪れて熱く語り合う場面も見られた。 そこで、来場者にレストア事業への要望を伺ってみた。 ▲商品開発企画部・西田芳伸さん ●【VOICE】「メーカーのイメージとしても良い取り組み。部品を出し続けてください」 最初に話を伺ったのは、藤谷敬さんと大和基宏さんのおふたり。 藤谷さんは初代デミオ、大和さんは初代アテンザが愛車で「マツダファン・サーキットトライアル」に出場。 待ち時間に見学に来たそうだ。 藤谷さん:「部品がなくてクルマを降りてしまう人もいるなかで、このようなイメージの取り組みはマツダユーザーとしてとてもうれしいです。まだ乗り続けられるという希望が湧いてきます。私は初代デミオに乗っているのですが、ゴム部品をまだ出してくれているので助かっています。これからも純正部品を使っていきたいですね」 大和さん:「他のメーカーでも部品の復刻やレストアはありますが、ここまでの規模は他にないように思います。私の初代アテンザの部品は幸いにも供給されていますが、これからも多くの車種の部品を生産し続けてほしいです」 ▲初代デミオ(Team枯山水デミオ)でサーキットトライアルに出場していた藤谷さん ▲初代アテンザ(どうでしょうアテンザ)でサーキットトライアルに出場していた大和さん ●【VOICE】「クラウドファンディングしてもいい。どうにか部品を出し続けてほしいです」 山口裕さんは、RX-7(2001年式最終型)のオーナー。 スポーツカー好きの友人、木村裕介さんと会場を訪れていた。 ホワイトボディを前に熱心に見学するおふたりに話を伺った。 ▲ホワイトボディを眺める山口さんと木村さん 山口さん:「長く乗り続けているオーナーにとっては、代わりがないかけがえのない1台です。もし部品の設計図があるならデータ化するとか、何らかの形で継続できるような体制をお願いします。特にロータリーエンジンの部品は、マツダしか作れませんから。生産し続けることが困難になったときは、クラウドファンディングしてもいいと思っています。海外とは違い、日本は旧車にいろいろと厳しいですが、そのような状況下で部品を出し続けてくれていることに感謝しています」 木村さん:「部品がなくなってしまうクルマがあるなか、乗り続けられることがすばらしい。これからも必要なときに手に入る状況であるよう願っています」 ▲個体にもよるが、実際にレストアする場合はこの状態にするまで約10日、2〜3カ月で完成という工程となるようだ ▲NAロードスターの場合は外装のみの費用が約300万円。FDはルーフもあり、個体の状態によっても価格は変わってくるため、価格決定は課題のひとつとなっているという[写真提供:MAZDA] ■取材後記 今回は初日のみの取材だったが、ユーザーとの絆をイベントの随所に感じられ、マツダユーザーでなくとも、さまざまな取り組みや先進技術を知ることができるクルマ好きにはたまらない催しだった。 特に「FD RX-7 classic MAZDAレストア展示」は、いち「ネオ・クラシック」のオーナーとしても胸が熱くなった。 メーカーとの距離が近く、直接声を届けられる場所が設けられていたことに感服した。 こうした取り組みが業界の起爆剤となり、自ずと旧車に光が差す未来を想像せずにはいられなかった。 ▲コースに虹。初日の午後は、にわか雨に見舞われた。筆者も含め、会場にいた大勢の人がスマホで撮影していた様子が印象的だった [取材協力] ●岡山国際サーキットhttp://www.okayama-international-circuit.jp/ ●MAZDAhttps://www.mazda.com/ja/innovation/MAZDA_SPIRIT_RACING/event/okayama2022 [ライター・撮影/野鶴美和]
去る11月12日、横浜赤レンガ倉庫にて横浜クラシックカーデイ2022が開催された。 良く晴れた秋空の下かつての横浜保税倉庫、通称赤レンガ倉庫に多数のクラシックカーが集結した姿はまさに圧巻であった。 今回はその模様をお届けしたい。 ■横浜クラシックカーデイとは? 今年で11回目を数える同イベント、赤レンガ倉庫という歴史ある場所で同じく文化遺産ともいえるクラシックカーの展示を行っている。 多くの方に間近で観ていただき、後世につなげていくことを目的として開催されている。 参加資格は1974年までに製造された車両だ。 それ以外は車種、生産国を問わない。 この日もこの1日限りの青空展示会に多くのクルマ達が遠方からも参加、オーナー同士の交流や訪れた一般の方への解説で華やいでいた。 また毎年恒例になりつつある旧いクルマの絵を描こうという企画では、展示されたクラシックカーを子供たちがこぞって描くイベントだ。 現在は大人も負けじと筆を取る姿もみられ、個性豊かなカーイラストが次々に描かれる様はほほえましいものがあった。 ■魅惑の参加車両たち 参加車両の一部に少し迫ってみることにしよう。 それがこちらの初代ミニキャブ。2ストのエンジンを搭載している。 現在のオーナーが手に入れてからは1年ほどとのことだが、現在は2週間に1度くらいの割合で近所をドライブしているとのこと。 2ストはどうしてもエンジンに寿命があるのため、大事に乗っていたいと話す。 そのために、エンジンオイルは高くても社外品のいいものを入れないと焼き付く恐れがあるという。 ちなみにこちらのオーナーはジムニーの初期モデル(こちらもエンジンは2スト)所有しており、筋金入りの2ストマニアといってもいいのかもしれない。 ■新しい試み 赤レンガ倉庫は以前ならショッピングモールとしてその中に店舗が入り、立ち並ぶ飲食店にて参加者も昼食を取っていた。 しかし今年は残念なことに建物の改装工事中ということもあり、仮設トイレが設けられたのみで倉庫の扉は固く閉ざされたまま。 そこで取られた策が会場の両端に配置されたケータリングカー群。 8台/8店舗のケータリングはカフェやランチのサービスはじめ、サンドイッチのように片手で食べられる手軽なものまで。 訪れた方や参加者のおなかを満たすことができたようだ。 ■横道を行く 恒例のイベントの横道を行く。 これだけのクラシックカーが居並ぶ会場、さぞやいろいろなクルマで来場する方がいるに違いないと思いつつ、やはり相応な車両が多数ひっそりと来場していた。 その中の1台が「ヨタハチ」ことトヨタスポーツ800。 大衆車トヨタパブリカのシャーシとエンジンを使い生産されたスポーツカーであり、レースの世界でもライバルであるホンダS600との激闘を繰り広げたクルマだ。 中でも圧巻だったのは船橋サーキットでの浮谷東次郎による逆転優勝だろう。 また、同車両はガスタービンとモーターによるトヨタ初のハイブリットカーのベース車でもある。 キレイに仕上げられた赤いヨタハチは、きらびやかな表舞台の参加車両を見物に来たであろうオーナーにより、ひっそりと裏手のコインパーキングに止められていた。 ■多くの訪問者を楽しませるイベント 横浜クラシックカーデイは開催ごとに参加者だけではなく、そこに訪れる観光客や一般の方々にも広く展示している。 それゆえにどこか普通のカーイベントと違い、同好の士の集まりというよりも動く博物館としての要素の方が強いように感じられる。 それはより一般の方との距離感が近い状態で・・・だ。 ここで初めてクラシックカーを見る子供たちも少なくないだろう。 だが、それでいい。 それがいつか見たあのクルマという思いにつながり、この日ここで観たクルマに対する思いにつながっていくことこそが、この赤レンガで開催されるクラシックカーイベントの意義ではないかと思うからだ。 [ライター・撮影/きもだ こよし]
トヨタカローラ。 日本だけでなく世界のベーシックカーとして名を轟かせ続けている。 その名前は例えクルマに興味がない人でも耳にしたことはあるのではないだろうか? 1966年の登場以来、セダンを皮切りにさまざまなボディラインナップが登場。 時代にフィットしたさまざまな顔ぶれのなか、兄弟車としてスプリンターも追加される。 クーペ、ミニバン、ハッチバックに近年では派生車種としてSUVタイプのカローラ・クロスも加えられ、世界中のライフスタイルに合わせたクルマとして魅力を放ち続けている。 ■クーペ、SUVにライトバンまで!時代を越えたカローラのラインナップが集結! そんなカローラに愛好家は少なくなく、世界中にファンも多い。 インスタグラムを眺めれば、これまでにまったく見たことがないグレードや度肝を抜くようなカスタムが施された車両も数多く存在し、その歴史の深さと愛され方を伺うことができる。 去る2022年11月5日、日本屈指の自動車博物館としても名高い愛知県、トヨタ博物館にて第三回「COROLLA & SPRINTER DRIVERS MEETING」が開催された。 秋晴れの会場の中には美しく磨き上げられたノーマル個体から、思い思いにカスタムされた数多くのカローラとスプリンターの姿が快音を響かせ流れ込んでくる。 参加台数は総勢で68台。 遠くは九州からも参加者がおり、その熱意に感じ入るものがある。 来場者のラインナップは古くは70系のライトバンから、最新型のカローラクロスのハイブリッドまでざまざまな顔ぶれであり、会場はとても同一車種名のミーティング会場とは思えないほどだ。 会場内にはイギリスから輸入されたカローラツーリングスポーツなど、ワールドワイドに販売されている車種であることを改めて意識させられる車種もあり非常に興味深い。 ■モデルを越えた出会いの場になれば。カローラ・スプリンターの名のもとに集いしオーナーたち 主催であるKA-10さんは今回スプリンターGT(AE111)で参加。 この車両の他にも、サーキット走行用にスプリンタートレノも所有している。 新車当時にカローラレビンのBZ-Gを購入してから、兄弟車であるカローラ、スプリンター系の車種だけで5台も乗り継ぐというから驚きだ。 ▲主催のKA-10さんが所有するのはスプリンターGT(AE111)。引き締まった車高にコーナーポール、レースのシートカバーと、カスタムと往年のセダンらしさが融合する そんなKA-10さんにカローラ・スプリンターのイベントを開催するきっかけについて伺ってみることにした。 「“COROLLA & SPRINTER DRIVERS MEETING”は、2019年に初開催されたイベントです。カローラとスプリンターは長い歴史の中でざまざまなボディタイプが派生しており、それぞれの車種のオフ会は多数行われています。ただ、それらの車種や世代を越えた交流ができれば良いな、と思い、開催する運びとなりました」 新車で販売されている1998年からAE111のスプリンタートレノを所有していたKA-10さん。 インターネット黎明期だった当時、オンラインの掲示板で同車種の集まりが開催されていることを知り、イベントに参加するようになったそうだ。 しかし、時間を重ねるごとに当時のメンバーも次第に別車種に乗り換えるなど、集まる機会自体が自然消滅していってしまったのだとか。 そんな中、近年では車種を取り巻くユーザー層にも変化があり、イベントの在り方にも変化が訪れていったという。 「ここ数年で以前よりもレビンやトレノに乗る若い方々が再び増えてきたのです。しかもオーナー間で活発に交流をしていることを知りました。カローラ系の車種では共有している部品や共通の知識がカスタムやメンテナンスで活きることも多く、イベントの方向性もモデルごとに縛りをつけるのではなく、カローラ・スプリンターという広い括りのイベントとすることで幅広いオーナーさんやクルマと出会うことができる、そんなイベントとしています」 そう伺ってから会場を眺めると、ベテランオーナーさんの姿もあれば、初心者マークをつけたオーナーさんの姿も見える。 若者のクルマ離れなんて言葉が聞こえてきて久しいが、世代を超えて心を惹きつけて止まない力をこの会場からは感じることができる。 ▲まだまだ新しいと思っていた12#系も、国内での販売を終了してから既に16年が経過 ■そこにあるはずのないエンジン!?名機4A-G搭載の4WDワゴン! 会場を見回すと一台のカローラツーリングワゴン(AE104)へと妙に興味が惹かれた。 初代カローラツーリングワゴンは1991年に発売されたレジャー感溢れるステーションワゴンだ。 1997年に大幅なマイナーチェンジが施され、後期型のCMで篠原ともえとユースケサンタマリアが”カロゴン”と謳うモデルだ。 その違和感は年式不相応に綺麗なボディからではなく、そのボンネットフードの中にあった。 ▲外観はGツーリングだが、エンジンはカローラレビン。これまでサーキット走行なども楽しんできたという AE104型の前期カローラツーリングワゴンには4A-Gの設定はないはずだ。 中期型以降から搭載される4A-Gも黒ヘッドの前輪駆動。 こちらのモデルは銀ヘッドの4A-Gで車体側面にはFULLTIME4WDの文字が輝く。 この世界に存在しないはずの組み合わせだ。 すかさず近くにいたオーナーの”るるデブ”さんに話を伺った。 「こちらの車両は1996年に自分が新車で購入した車両です。ワンオーナーで26年間持っているのですが、2004年頃にエンジンのオーバーホールを行う際、AE101系レビンの解体車を丸ごと買い、エンジンやハーネス類、パワステの制御など他車流用の部品を含めて様々なものを移植して完成させました」 外観の変更はカンガルーバーとフォグランプやトムスのホイールに留められているだけに、そのエンジンスワップという行為に潔い輝きを放つ。 4A-Gと4WDとの組み合わせはトラクションも抜群で、雨の日の発進などはお手のものだという。 「排気量が同じ1600ccの4A-FEから4A-Gへと変更したのですが、最初の印象は”とにかく速い!”でした。音も違うし、アクセルの踏み方と速度感が異なることにも驚きがありました。通勤から遊びまでこれ一台でこなす万能マシンです。車体の走行距離は30万キロを越えましたが、カローラのミーティングにはさらに沢山走行している大先輩がいるのでまだまだ頑張りたいですね!」 そういえば、これまで他のカローラミーティングで50万キロ越えの個体を見せていただいたこともある。 頑丈さが都市伝説的に語られるカローラだが、日々の丁寧なメンテナンスや保守なしではここまで生き残ることはきっとできないはずだ。 ■クルマがオーナーを選んだかのような出会い!希少なスプリンターシエロと歩む 会場では普段の街並みではすれ違わないようなモデルと出会うこともある。こちらのスプリンター・シエロも歴代唯一となったモデルだ。 ▲1987年式のスプリンターシエロ、グレードはxi。これまで歴代の愛車は現行モデルなど新しめのクルマが多かったが、先輩の勧めで突如ネオクラ車に目覚めたという E80系をベースとしながら5ドアリフトバックのボディを採用した同車種。 オセアニア地域や欧州、北米ではジオ・プリズムハッチバックとして販売されていた。 いまだヨーロッパの片田舎でごく少数見かける機会があるが、本国の日本ではほぼ見かけることがないといっても過言ではないだろう。 オーナーの”見てのとおり”さんはシエロをインターネットを通じて2018年に入手。 元々クルマ好きではあったものの、旧車に属するクルマを趣味で買うつもりはなかったという。 「元々地方の旧車イベントに会社の先輩と一緒に足を運んでおり、話の流れで”古いクルマを買ってみたらどうか”となり、たまたまオークションで出品されていたシエロを購入する運びとなりました」 オークションでは当時でも驚くほどの安価な値段ながらも、長い間落札されることなく出品が繰り返されていた個体だったという。 そんな個体ながらも、出品者の方から「おおかたの整備は済んでいます。いい買い物でしたね!」といわれたそう。 実際、購入してからの4年間で交換したのはショックアブソーバーのみで現在までトラブルは皆無。 モールや樹脂類に至るまで艶やかさを失っておらず、これまで愛情が掛けられてきたことを感じる。 シエロは“見てのとおり”さんのもとに来てからというもの、各イベントに出没。 購入時からほぼそのままの状態で展示され、いくつかのアワードをも受賞している。 美しい状態で令和の時代まで生き残り、大切にしてくれるオーナーさんと出会うそのときまで待っていたのでは...。 なんて表現すると、少しファンタジックすぎるだろうか。 新旧、カローラとスプリンターに囲まれた一日。 クルマの数だけユーザーとの濃密な物語があるはずだ。 経験や知識の共有、新たな出会いも生まれるミーティングの場に感謝を感じ、これからもクルマと歴史の傍らにこんなイベントがあってくれたら嬉しいと感じてやまない。 [ライター・撮影:TUNA]
旧車王は、「自動車文化遺産を次世代へ」という信念のもと、旧車・クラシックカーに特化して23年、年間11,000台以上の査定申込をいただいております。改造車から希少車まで、適正価格を見極めて買取させていただきます。弊社所属の鑑定士が最短当日で全国無料出張査定いたします。ご契約後の買取額の減額や不当なキャンセル料を請求する二重査定は一切ありません。特別なそして価値ある希少車の買取こそ、確かなノウハウと実績を持つ旧車王にお任せください!