イベントレポート

第15回ノスタルジック2デイズ2024を取材してみて思うこと
イベントレポート 2024.02.26

第15回ノスタルジック2デイズ2024を取材してみて思うこと

去る2024年2月17日~18日、パシフィコ横浜 展示ホールB.C.Dにて「第15回ノスタルジック2デイズ2024」が開催された。 この時期らしい気温だったものの、天候にも恵まれた。新型コロナウイルスの影響で中止になったのが2021年。あのときは関係者も涙を飲んだことだろう。しかし、5類に移行して日常生活が戻ってきたこともあり、そして旧車の人気の勢いがプラスされ、コロナ禍以前よりも勢いを増している感がある。 ■メディアも一般来場者もイコールコンディション(に近い) ノスタルジック2デイズのようなイベントを取材する場合、たいていは運営元に「取材申請」を行い、受理されると晴れてメディアパスが発行される仕組み。 かつての東京モーターショー、現在のジャパンモビリティショーのような巨大イベントでは、報道関係者向けの「プレスデー」があり、取材に集中できる。また、東京オートサロンでも、開催期間の初日はビジネスデイ(業界&報道関係者向け)となっていて、14時以降は特別料金を払えば入場可能。つまり、14時までにあらかたの取材を終わらせていないと、撮れ高を押さえるのがさらに困難となる。 いずれのイベントも、報道関係者用の出入口やプレスルームが用意されており、ここで原稿を書いて速報記事を公開している。ノスタルジック2デイズはというと、チケットを購入した一般の方と同じように列に並び、プレス用の受付でパスをもらって入場という流れ。午前10時を過ぎないとプレスルームにも入れない。 午前10時開場前に現地に到着し、パシフィコ横浜の外まで列が続く大渋滞に加わることに…。入場までどれくらい待たされるのか…と思いきや、スムーズな誘導であれよあれよといううちに会場内へ。このあたりの段取りも、主催者ごとに異なるので興味深いポイントのひとつだ。 ■会場で販売される旧車の多くが「応談/ASK」に ノスタルジック2デイズを取材するたびに感じる、旧車の販売価格の上昇。はじめて取材で訪れた2016年には。価格を明示する個体が多く「これなら思い切って買えるかも」と期待を抱かせるクルマも少なくなかった。 今年のノスタルジック2デイズに出展・販売されている旧車の多くが「応談またはASK」。価格が明示されている個体に関していうと目玉が飛び出そうなクルマも少なくなかった。 まるで精肉店のコロッケの価格表示に使われていそうなPOPに書かれていた「GT-R 3300万」のプライスタグ。POPのほのぼの感と、場所によっては新築の戸建てだって買えそうな金額で売られているハコスカGT-Rとのギャップに思わず撮影せずにはいられなかった。果たして売れたのだろうか…。 ■いよいよメーカー系が本気を出してきた? 自動車メーカーや関連会社、販社などが本格的に旧車の部品再販に動きはじめてまだ10年は経っていないと思われるが、年々、その気合いの入れ具合が増してきている気がする。 KINTOブースに展示してあったAE86 BEV Conceptや、NISMOブースではL型6気筒エンジンベースのDOHC化されたエンジンが展示されており、会場でも注目を集めていた。 まさかL型のDOHCエンジンがメーカー系のブースで観られる日が来るとは思わなかった(これまで独自に部品を開発してきたチューニングショップもいろいろな意味で驚いただろう)。 部品が復刻したり再販されるモデルは限られるが、これで少しでも延命できる個体も増えるのではないかと思う。 ■毎回取材するたびに実感する「ノスタルジック2デイズの客層の良さ」 ノスタルジック2デイズを取材していて毎回感じることがある。それは「客層の良さ」だ。こちらがカメラを構えていると、わざわざ歩みを止めて撮影が終わるのを待ってくれたりと、画角に入らないよう何かと気を遣ってくれる方が本当に多い。あえてイベント名は伏せるが、撮影するのが一苦労というケースも実際にある。 例えばこちらのカット。人が映らない「クリアラップ」になるまでひたすら待つことになるのだが、腰を下ろして撮影待ちの状態で待機していると、ギャラリーの皆さんがそれに気づいてくれて一瞬待ってくれるのだ。これは本当に助かりました。この場を借りて改めてお礼申し上げます。 ■まとめ:日本人ならではの「モノを大切にする」という美意識が光る いつだったか「日本には自動車文化は根付かない」と主張する人がいた。 さまざまな考え方や意見があると思うので一概にはいえないが、個人的には日本独自の自動車文化が確実に根付きつつあるように思う。 その根底にあるのは「モノを大切にする」という、多くの日本人に刻まれているであろうDNAがうまく作用していると感じる機会が増えているからだ。 もちろん、商売になると踏んで参入してくる企業もあるだろう。しかし、ハッキリいってしまうと、邪な考えで首を突っ込んでくる連中は遅かれ早かれ淘汰される。ユーザー側も1度はだまされてしまうかもしれないが、2度、3度と同じ轍は踏まない(はずだ)。それに、いまならSNSや口コミなどで悪評はまたたく間に拡散されてしまう。 旧車本体や部品の価格が上昇しているという弊害があるのが辛いところだが、メーカー、ショップ、ユーザー、そしてイベント主催者が一体となって後世に残していこうという足並みは揃った感がある。あとは、古いクルマをきちんとメンテナンスできる主治医の後継者をどう育てていくかが今後の課題かもしれない。 [ライター・撮影/松村透]

2日間で4万人以上が来場!第15回ノスタルジック2デイズ2024イベントレポート
イベントレポート 2024.02.26

2日間で4万人以上が来場!第15回ノスタルジック2デイズ2024イベントレポート

去る2024年2月17日~18日、パシフィコ横浜 展示ホールB.C.Dにて「第15回ノスタルジック2デイズ2024」が開催され、旧車王ヒストリアでもその模様を取材した。 当日はクルマではなく、公共交通機関でパシフィコ横浜に向かった。駐車場探しに手間取る可能性があるので、ノスタルジック2デイズの取材のときはいつもそうしている。最寄りのみなとみらい駅を降りた時点で、それっぽい人たちが足早に会場へと向かっていく。それだけこの日が来るのを待ちわびた人が多かったのだろう。 ■過去最高の来場者者数を記録。初の4万人を突破! 2日間とも雨に降られることもなく、開催期間中の来場者者数も過去最高の40,514人を記録。同イベントとしては初の4万人超えとなった。 ・2月17日(土):19,739人(晴れ)・2月18日(日):20,775人(晴れ)●合計:40,514人 初回(2009年)開催時には1万人前後、第9回(2017年)あたりまでは2万人前後だったが、2018年以降は順調に来場者者数が増えてきている(新型コロナウイルスの影響で2021年は中止に)。なお、入場者数に再入場、プレスは含まないということなので、筆者もカウントされていない。 出展社数164社、4輪車の出展台数が238台(2輪車なども加えると合計290台)とのことで、じっくり観ていたら1日では足りない規模といえる。 ■会場には手作りの6輪F1タイレルP34も展示されていた! 第15回ノスタルジック2デイズ2024には、旧車王ヒストリアでも取材を続けている、カスタムビルド&レストア WATAHIKIによって手作りで造られた「6輪F1タイレルP34」も展示されていた。 国内外の名車が集結するノスタルジック2デイズの会場内でも高い注目度であった。なお、この模様は別記事にてご紹介する予定だ。 ■国産車編 ノスタルジック2デイズというと、1970年代〜80年代あたりの国産車編が主役という勝手な先入観を抱いていた。しかし、確実に1990年代の「ネオクラシックカー」などと呼ばれる時代のクルマの数が増えてきていることを実感する。 ユーノスコスモやアルシオーネSVX、初代インプレッサ、「VR-4」が懐かしいギャラン、私をスキーに連れてってでおなじみのセリカ(ST165)、あぶない刑事シリーズで活躍したレパードなど、アラフィフ世代以上のお父さんたちにとっては懐かしいクルマが会場内に所狭しと並んでいるのだ。 この年代のクルマをリアルタイムで観てきた世代にとっては隔世の感すらあるのだが、こうしてどこかの誰か(あるいはショップ)が救いの手を差し伸べていかないとあっという間に絶滅してしまう時期に差し掛かっているのだろう。 なお、AUTO BASE Garage Funブースに展示されていたブルーメタリックの70スープラじゃ、実走行51万キロ(!)を突破したワンオーナーカー。手前味噌で恐縮だが、昨年、筆者が2016年から担当している「トヨタ GAZOO愛車広場」で取材した個体そのものだ。1年振りの再会となったが、フロントバンパーの「走り屋の勲章」は会場内でも目を引いていた。 そして、トヨタ・日産・マツダといったメーカー系のブースでも「ただ単に当時のクルマを並べて展示」ではなく、部品の再販やレストア、現代の技術を活かしたチューニング部品などが展示されていた。 メーカー自身が当時のクルマの価値や保存の必要性を理解し、リスクはあるにせよビジネスベースに乗せようとしていることが伝わってきた。 ■輸入車編 そして、ノスタルジック2デイズというと、国産旧車のイメージが強いイベントというのが個人的な印象だが、最近は輸入車の比率が少しずつ高くなってきていることを実感する。結果的に、輸入車が好きなユーザーがノスタルジック2デイズにも足を運ぶようになり、客層が広がる二次的効果も見込めそうだ。 そのなかでも空冷ポルシェ911の台数が多いのは、それだけ人気が高いことの証であり、目を引きやすいというものあるだろう。 ヴィンテージ湘南のブースで展示されていたのは、いわゆる「ナローポルシェ」の3台。来場者がグレーの1968年式911Sの価格を聞いていたのをたまたま耳にしたのだが、もはやおいそれと手が出せる額ではない。かつてグレードを問わなければ200万円台でナローポルシェが買えた時代にはもう戻ら(戻れ)ないのかもしれない。 そして、ワクイミュージアムのブースでは、1979年式 ロールスロイス カマルグと19889年式ロールスロイス コーニッシュ IIが展示されていた。この2台が展示されているだけで会場が一気に華やぐのだから不思議だ。「ロールスロイスなんて縁遠い」と思っている方こそ、間近で実車が観られるまたとない機会でもある。 縁遠いと決めつけず、とにかく間近で実車を眺めるだけでもいい。各部のその繊細な造り込みに感動を覚えるはずだ。これが原体験となり、ロールスロイスの魅力に取り付かれた人がいてもなんら不思議ではない。 NEXCAのキャッチコピー「オトナのセカンドカー&バイク専門店」という、キャッチーなコピーとともに1990年前後の日本でよく見掛けたメルセデス・ベンツとBMWが展示されていた。 かつてはメインカーとして使われていたこの時代の輸入車も、気づけばどれも30年選手。普段はガレージに置いて、休日の早朝などのドライブの相棒として走らせるくらいが「動体保存」としていい塩梅なのかもしれない。 そして余談だが、会場にはジアッロモデナのボディカラーが眩しいエンツォフェラーリが展示されており、注目を集めていた。 ノスタルジックカーとくくるにはまだ早い気がすると思いきや、このモデルがデビューしたのが2002年。気づけばもう22年も前のクルマなのだと改めて実感した。給油口にはこのクルマのデザインを手掛けた奥山清行氏のサインが記されていた。 ■掘り出しモノが見つかるかも!? しれないグッズ販売 時間帯によってはもっとも人口密度が高かったのでは?というほど混雑していたグッズ販売コーナー。筆者が細々とコレクションしている1/43サイズのミニカーのエリアに突入したときは、思わず仕事(取材中)であることを忘れそうになった。 実店舗をハシゴすると1日ではとてもまわり切れないし、ネットショッピングでは実物が届くまでは当たりかハズレか分からないこともある。しかし、ノスタルジック2デイズ会場の空間にこれだけのグッズや部品販売があるなら「このエリアが目的」という人がいても不思議ではないように感じる。 ■まとめ: イベントの主催は「Nostalgic Hero」、「ハチマルヒーロー」、「Nostalgic SPEED」の各誌を出版する芸文社。東京オートサロンやオートモビルカウンシルなどを取材していても感じるのだが、媒体や出版社ごとのカラーがイベントにも反映されているように思う。 そのなかでも「ノスタルジック2デイズ」は手堅い、正統派なイメージ。コンパニオンのお姉さんが少ない分、派手さは控えめ。これに比例してカメラ小僧がほとんどいない。いわゆるクルマ好きのなかでも「ヘンタイ(褒め言葉)」率が高いように思える。 取材中に周囲から聞こえてくる会話の内容がとにかく濃いのだ。あえて伏せるが「●●のブースにあった★★★はフルオリジナルって書いてあったけど、あのステアリングは後期モデルだな」とか、とにかくツッコミが鋭い。 この種のマニアというか、正統派のヘンタイ(繰り返しますが、褒め言葉)を刺激する大規模はイベントは意外少ないように思う。最近は20代の正統派ヘンタイクルマ好きも増えつつあることを、別の取材を通じて実感している。来年以降のさらなる盛り上がりにも期待したい。 [ライター・撮影/松村透]

3日間で23万人が来場!初開催から42回目となる「東京オートサロン2024」
イベントレポート 2024.01.27

3日間で23万人が来場!初開催から42回目となる「東京オートサロン2024」

去る1月12日〜1月14日まで、幕張メッセにて「東京オートサロン2024」が開催された。初開催から42回目となる今回のイベント、驚くべきことに、幕張メッセ全館を使用するほどの巨大なイベントになった。 そして現地に行かれた方は誰もが「今年のオートサロン、混んでない?」。そう感じたと思う。新型コロナウイルスが少しずつ落ち着きを取り戻し、ある程度の耐性ができつつあるという安心からか、今年は本当に人が多かった。 あふれんばかりの熱気、そして人出。東京オートサロン本来の活気がようやく戻ってきたことは確かなようだ。ベビーカーを押して家族連れで会場を練り歩く家族もあちこちで見かけたし、子育て世代のいち父親としては(お子さんが飽きたり体調を崩さないか)ちょっと心配になってしまったほどだ。 旧車王ヒストリア的に、少し(かなり?)古めのクルマを軸に気になるクルマをピックアップしてみた。 ■日本車 もはやひとくくりすることが困難なほど多彩なジャンルのクルマが出展された日本車。なかでも印象的だったのが「ヴェイルサイド」に展示されていたこちらの1台。 古くは80スープラのコンバットエアロなど、斬新かつ大胆な発想でユーザーを驚かせてきた「ヴェイルサイド」、今回は1974年式日産セドリック(K230型)を持ち込んだ。しかもエンジンはL型2.8Lをベースにした3.2L仕様。さりげなくもセンスよくカスタマイズされたこのクルマはレストモッドのお手本ともいえるアプローチだ。 また、スカイライン&日産GT-R専門店である「CRAFT SPORTS」は第2世代スカイラインGT-Rのスペシャルモデルを中心に構成されたブース。R32 GT-R NISMO、R33 LM リミテッド、R34GT-R Mスペック ニュル、そしてニスモ400Rなど、いまとなってはお宝級のモデルが一同に介する光景は今後なかなか観られないかもしれない。 いつの間にか、第2世代スカイラインGT-Rがおいそれとチューニングベースにできなくなったことを強く実感したことは確かだ。 東京オートサロンといえばRE雨宮ブースの存在は欠かせないだろう。 今回もSAからFDまでの歴代RX-7をはじめ、RX-8、ロードスター、ファミリアバンロータリー、ロータリーシャンテなど、さまざまなモデルを出展。 これだけ多く(もはや無数といってもいいかもしれない)クルマが出展されているなかで存在感を放っていた。外国人の人たちの注目が高かったことも印象的だ。 ■輸入車 日本車よりも出展台数は少なめながら、それでもメルセデス・ベンツ日本やBMWジャパン、ヒョンデモビリティジャパン、BYDオートジャパン、ケータハム、ロータスなど、インポーターとして出展。中国および韓国のメーカーがいよいよ本腰を入れて日本市場に進出してきているのを実感する。 また、ギャルソンD.A.Dブースに出展されていた2台のメルセデス・ベンツSLは、初出展から10数年は経っているはずだが、その存在感はいまも健在。たしか、スワロフスキーだけで4000万円と聞いた記憶がある。このメルセデスを間近で観て「あぁ、今年もオートサロンに来たんだ」と実感する来場者も少なくないだろう。 個人的に目を引いたのは、カムフラージュ柄のラッピングが施され、カンガルーバーが装着され、70mmほどリフトアップされた初代ボクスター。これはオフロードマシンの製作を得意とする「プロスタッフ」の手によるもの。見た目だけでなく、専用のアンダーガードやリフトアップキットが用意されるなど本格的。しかも、この個体は売り物。2001年式で走行距離138,000キロ、198万円であれば、思い切って手に入れてみようと思ってしまう価格だ。 ■オートサロン会場の華であるコンパニオン オートサロンのもうひとつの顔といえばコンパニオンの存在は欠かせない。ジャパンモビリティショーではコンパニオンの数が少ないと感じたが、オートサロンもコロナ前よりも減った印象がある。と同時に、過激な衣装を身に纏ったコンパニオンを立たせるブースが減ったかもしれない。 筆者のかつての仕事仲間にコンパニオン経験のある女性がいて、イベント時の苦労話を聞かせてもらったことがある。常に大勢の来場者からカメラを向けられているので、一瞬たりとも気が抜けないとのことだった。 なかには偶然の変顔を狙うようなマニアもいるらしく、かといって常に笑顔であることが求められるだけに、イベントが終わる頃にはぐったりするそうだ(盗撮目的とか、怪しい動きをする人は直感的に分かるらしい)。 重いカメラをかついで幕張メッセ全館を何周もするこちらも体力勝負だが、精神的な負担はそれほどでもない。常にカメラが向けられ、笑顔で対応が求められるコンパニオンの皆さんはそれ以上に大変なんだと思う。 ■まとめ 今回も大盛況のうちに幕を閉じた「TOKYO AUTO SALON 2024」。参考までに、東京オートサロン事務局がイベント閉会後にリリースした情報の一部を転記するので、ぜひ目を通してみて欲しい。 ■参加人数(※出展者、関係者を含む)・1月12日(金):51,014人(前回43,963人)・1月13日(土):95,081人(前回73,343人)・1月14日(日):83,978人(前回62,128人)●累計230,073人(前回179,434人) ■出展者数・出展者数:378社(前回実績341社)・出展車両台数:893台(前回実績789台)・ブース総数:4,329小間(前回実績3,904小間) 東京モーターショーがジャパンモビリティショーに一新したのが昨年。まだまだ模索の時期が続くだろう。いっぽうで、東京オートサロンの勢いは留まることを知らない。何より日本発・日本独自のカスタムカー文化が世界から注目され、もはや羨望の的となっていることに時代の流れを感じさせる。 自宅の本棚に1990年代前半〜中盤頃の東京オートサロン公式パンフレットがあった。どれもずっしりと重い。当時もいまも賑わいは変わらないが、国際色豊かになったことは確かだ。 イベント初日ということもあるが、海外のメディアの数が非常に多かった。オートサロンに出展されているクルマから何かを得ようと取材している姿が印象的だ。何かの真似やパクリではなく、自分たちがカッコイイと思ったものが世界から注目され、支持されていることは確かだ。 もともとアンダーグラウンドなイベントだったかもしれない東京オートサロン(とその前身の東京エキサイティングカーショー)だが、その規模と勢い、そして影響力は世界でもトップクラスになったことは間違いないなさそうだ。 [ライター・撮影/松村透]

塚本ナナミ現地レポ!SEMAショーで見たアメリカ西海岸とJDM文化
イベントレポート 2023.12.21

塚本ナナミ現地レポ!SEMAショーで見たアメリカ西海岸とJDM文化

旧車王ヒストリアの読者の皆様。 はじめまして。 三刀流プロドライバーの塚本ナナミです。 ご縁があって記事を書かせていただくことになりました。 実は先日、アメリカのラスベガスで毎年11月に開催される、世界最大の超巨大見本市「SEMAショー」に初めて参加してきましたので、塚本ナナミ視点で見た2023年のSEMAショーについて書いていきたいと思います。 ■塚本ナナミ「はじめてのSEMAショー」 SEMAショーというのは「Specialty Equipment Market Association」の略で、自動車用品・部品メーカーとユーザーを繋げるプラットフォームとして、56年の長い歴史をもっています。 私のスポンサー企業であるTONE tool様が出展されるということで、今回参加することができました。 出展社用のパスは150ドルという価格。 当日身分証明書を提示して、窓口で直接パスをもらわなければ会場内に入ることはできません。 屈強なセキュリティーたちが入り口を厳しくチェックしていました。 SEMAショーは業界関係者のみがコンベンションセンター内に入ることができるのですが、2023年の出展社数は世界中から集まった2,200社以上、その中の400社は新規の出展企業だとアナウンスがありました。 来場者数は推定16万人とのことで、間違いなく世界最大級のイベントです。 東京ドーム7個分ほどという会場スペースに、オフロードカスタム、ハイリフトカスタムトラック、ローライダー、ホットロッド&カスタム、クラシックカー、スーパーカー、ハイパーカーなど… あらゆるカテゴリーのクルマ、アフターパーツ、タイヤ、工具、電装部品などがブースを連ねています。 また、驚いたのが会場で利用できるテスラ社協賛の無料シャトルです。 会場内にステーションを設けて地下のトンネルを運行し、行きたいホールへと送迎してくれます。 初めてテスラに乗る方にとっては素晴らしい体験になると感じました。 ■アメリカ西海岸とJDM文化 旧車王ヒストリアをお読みであれば、やはり一番興味があるのはデビューから10年以上経った「日本の旧車」ですよね。 今、アメリカでは西海岸を中心に日本車が非常に人気となっています。 アメリカのクラシックカー登録制度として有名な「25年ルール」の影響もあって、昨今、日本の旧車が急騰しているのはご存知のことだと思います。 私は2023年、アメリカのドリフトシリーズに参戦し、1年の半分近くをアメリカのロサンゼルス周辺で過ごしてきました。 私が所有する180sxも、2JZに載せ替えられたJDM車輌を現地在住の個人から購入していますし、毎週末のCar MeetではJDM車輌のみが参加できるイベントも数多く開催されています。 もちろんSEMAショーの会場内でも、アメリカの若者はカスタムトラックやローライダー、スーパーカーよりも、カスタムされたJDM車輌に目を輝かせていました。 GReddy、HKSをはじめ、日本のチューンナップショップのブースには若者を中心に人だかりが絶えず、西海岸でJDM文化がこれほどまでに浸透しているのかと驚きました。 ワイルド・スピードがロサンゼルスを舞台にしているので、大きな影響があることは情報として知ってはいましたが、実際に現地でドリフトシリーズに参戦しイベントに参加することで、どれだけ根付いているのかを体感することができました。 ■世界的ブランド「Hoonigan(フーニガン)」からの招待 SEMAショーで私は世界的なメディア、アパレルも手がけるHoonigan(フーニガン)からオファーをいただき、SEMAショーの一般客も入ることができる野外エリアでドリフトイベントに参加してきました。 今年1月、私も尊敬するケン・ブロック氏が不慮の事故で亡くなり、ショックを受けた方は多いはずです。 ジムカーナの動画で見せてくれた神業ドライブ、ラスベガスやロンドンの街中を縦横無尽に駆け抜けるエキサイティングなコンテンツなどを届けてくれたドライバーでした。 そんな彼が創設したブランド「Hoonigan(フーニガン)」からご招待いただき、ドリフトのデモランをできたことは大きな意味を持ちます。 会場は開始前から満員の観客で大盛り上がりでした。 イベント開始後は周りが見えなくなるほどの白煙、そして、飛び散るタイヤカス、さらには後輪から火を噴き上げる、とても荒々しいイベントでした。 エンターテイメント、観客を楽しませることにおいてプライドを持っているアメリカの盛り上げ方は、やはり凄まじかったです。 イベントのあと、会場内を歩いていると、 「日本でトヨタ80スープラ、アメリカでは2JZエンジンの日産180SXでドリフト競技をしているなんて、羨ましすぎるよ!」 「君はピンクの80スープラに乗ってるドライバーだよね」 「240じゃなくて180ってところが最高だよ」 と、ドリフトのデモランを見てくれていた方から声をかけていただくこともできました。 ドリフトの世界では今、旧車が全盛期です。 ■まとめ 「一度として、同じSEMAショーはない!毎年常に新しいコンセプト、製品、進歩で満ちている。」とSEMAショーの関係者が口にしていましたが、その言葉には世界最大のトレードショーとしてのプライドが感じられました。 毎年、全ての出展社が各々の120%全力を出して、カスタムカー、パーツでブースを彩り、世界140以上の国と地域から集まった業界関係者と関係性を築き、交流できる場所は他にないと思います。 野外のイベントには一般のお客様も参加できます。 また、別でチケットを購入する必要はありますが、ラスベガス・フェスティバル・グラウンドで開催された、クルマ文化、ミュージックを融合した「SEMA FEST」には、イマジン・ドラゴンズ、インキュバス、ウィズ・カリファ、AJR、サード・アイ・ブラインド、ブッシュ、ウォーク・ザ・ムーン、リュダクリスなど世界のトップアーティストが出演し、非常に魅力的なイベントとして人気を博していました。 来年のSEMAショーはぜひ、ご自身で足を運んでみてはいかがでしょうか? [ライター・画像 / 塚本ナナミ]

旧きから現行まで、憧れの対象スーパーカー、ハイパーカーが芦ノ湖スカイラインに集結!GOGOmtgレポート<後編・個性的な旧車特集>
イベントレポート 2023.12.20

旧きから現行まで、憧れの対象スーパーカー、ハイパーカーが芦ノ湖スカイラインに集結!GOGOmtgレポート<後編・個性的な旧車特集>

去る11月19日に、芦ノ湖スカイラインの中程にある「芦ノ湖スカイラインレストハウス フジビュー」の駐車場を借り切って、ポルシェやフェラーリ、ランボルギーニetcという蒼々たる顔ぶれの華やかなクルマたちを集めたミーティングが行なわれました。 「GOGOmtg(ゴーゴーミーティング)」と銘打って開催されたこの集まりは、今回で2回目となります。  大のクルマ好きで、HOC(平成オーナーズクラブ)というクルマ好きグループの代表を務める「やまけん」さんが、自身のコネクションを通して交流の場を設けようと開催されました。 集まってきたクルマ達は、そのHOCのメンバーが中心になっているので、オーナーさんの多くが30代と年齢が若いというのもこのミーティングの特色です。 ミーティングに集まった車輌はどれも素通りできないものばかりでしたが、そのなかでも気になった車種をピックアップして紹介していきたいと思います。 前回は旧車ジャンルの前編としてポルシェを中心に紹介しましたが、今回はその後編として、ポルシェ以外の個性的な国内外の旧車を紹介していきましょう! ● GOGOmtgレポート<前編・ポルシェ特集>https://www.qsha-oh.com/historia/article/gogomtg-2023-vol1-porsche/ ■2008年式 フェラーリ 430スクーデリア 1台目に紹介するのは、F430の公道レース仕様と言える「430スクーデリア」です。 オーナーは「やーまん」さん。 高校性のときに雑誌でこの430スクーデリアの記事を見て一目惚れ。 それ依頼、ずっと憧れていてた影響もあってフェラーリの整備を請け負う専門店に勤めるようになり、2年前にようやく念願のオーナーになれたそうです。 仕事上多くのフェラーリを扱いますが、やはりこの430スクーデリアがいちばんだと思えるので「一生このクルマは持ち続けていきたいと思っています」と愛車への情熱を話してくれました。 それでも、あえて欲しいクルマを伺うと「F40にはやっぱり憧れますね」とのことでした。 外観のデザインはベースのF430と同じですが、フロントバンパーのサイドにエアアウトレットが新設されていたり、リヤセクションではマフラーが両サイドの4本出しなのに対して、位置がナンバー脇まで引き上げられ2本出しになっているのも特徴です。 塗装がされているので分かりづらいのですが、外装のパネルのほとんどはカーボンに置き換えられていて、その結果、車重はノーマル比200キロの軽量化を実現しているそうです。 やーまんさんはそれをさらに際立たせるため、サイドスカート部のディフューザーなどに市販のカーボンパーツを使ってカスタムしています。 また、ノーマルはイエロー地に跳ね馬のエンブレムですが、ここも(純正で)カーボン地になっていて、仕上げが徹底しているなと思いました。 フェラーリのエンジンルームを見たときに真っ先に飛び込んでくるのが赤い結晶塗装のサージタンクですが、この430スクーデリアの場合はそれがカーボンブラックに変わっています。 オーナーのやーまんさんもそこがお気に入りのポイントだということです。 心臓部であるエンジンのいちばん目立つサージタンクに赤を使うというのは、ある種アイデンティティの表現と言える部分なのですが、それを無骨なカーボン素材むき出しの仕上げとすることが「本気」の現れに感じますね。 動力性能のカナメであるエンジンにも、もちろんモディファイが加えられています。 排気量はベースと同じですが、ピストン形状を変更し、ノッキング制御デバイスを追加して11.88という高圧縮を実現。 それに加えて吸排気の効率を見直すことで、ノーマル比20psアップの510psを発揮します。 エンジンルーム内に見えているほとんどの部分にカーボンが使われていて、スパルタンな印象が引き上げられていますね。 内装にもカーボンがふんだんに使われ、通常はツヤのあるレザー使いな部分もバックスキンで仕上げてあり、運転しているときもレーシーな雰囲気で包んでくれます。 それでいて、エアコンやパワーウインドウ、オーディオなどの快適装備はほとんど省かれていないので、ふだん乗りとしても不満無く使えるという部分は「さすがフェラーリ」というポイントです。 ■1992年式 メルセデスベンツ 500E 続いてはメルセデスベンツの「500E」です。 どんなクルマかを知っている人なら「おっ!500Eか」となる、マニアにもファンが多い車種ですね。 オーナーは「JUN」さん。 当時の「W124型」Eクラスのラインナップの中で最もホットなグレードであるこの「500E」ですが、JUNさんのご家庭では「ファミリーカーです(笑)」なんだそうで、驚きです。 JUNさんは元々ポルシェの「カレラ3.2」に乗っていたそうなんですが、結婚してお子さんが誕生したため、「さすがにポルシェにベビーカーは……」とのことで、家族3人で出掛けられるファミリーカーとしてこの「500E」を購入したそうです。 そういいつつも、購入してから2ヶ月で3000キロも乗っているということから、かなりドライビングを楽しんでいることが窺えますね。 「500E」のいちばんのポイントであるV8・4,973ccの高性能エンジン。 それなりのサイズがあるEクラスですが、エンジンルームにみっちり収まるこのエンジンの姿を見ると、ベースのEクラスとは違う存在なんだなと思い知らされます。 このV8エンジンは元々500SL(R129型)に搭載されていたもの。 ベースの「W124型」は最大で直6の3.2リットルエンジンを搭載するための設計だたっため、二回り大きいV8エンジンの搭載にあたってポルシェにその設計変更を依頼しました。 大きなエンジンとミッションを収めるためにセンタートンネルを拡大、足まわりには500SLのパーツを流用し、その動力性能を受け止めるためにワイドなタイヤを設定。 そのため前後フェンダーが拡大されています。 知らない人が見れば普通の「W124型」Eクラスですが、ワイドフェンダーや専用バンパーの存在感によって「なんか違う?」という印象を受けるでしょう。 ファミリーカーの証、「ベビーシート」が装着されています。 もちろんこのイベントに参加する際にも大いに活用されていましたが、インタビュー中に「ファミリーカー(笑)」と仲間ウチから茶化されるシーンもありました。 ■1989年式 フェラーリ テスタロッサ 「ロッソ・コルサ」の鮮烈な赤いボディ色が見事にハマっている「フェラーリ・テスタロッサ」。 オーナーは「白米」さんです。 実はこの車輌、このイベントの主催者「やまけん」さんがCSOを務める「RENDEZ-VOUS(ランデブー)」が行なっている共同所有サービスの対象車で、白米さんはその共同オーナーとなる8人のうちの1人とのこと。 ザックリいうと、車輌の価格を最大8人で分配して共同オーナーになり、その人数で自由に乗り回せるというサービス。 決められた期間が経過すると車輌は売却され、販売利益から権利分の金額が分配されるので、個人で購入するよりはるかに安価な費用で特別なモデルが乗り回せるのだそうです。 「テスタロッサ」というのは「赤い頭」という意味。 この頭というのはエンジンのヘッド(カム)カバーのことで、かつてのフェラーリの歴史的レーシングモデルの「250テスタロッサ」や「500テスタロッサ」などをオマージュして名付けられました。 この写真ではチラリとしか見えませんが、エンジン両バンクの先が赤く塗られているのがその「赤い頭」の証です。 エンジンのタイプは名車「512BB」から受け継いだ、フェラーリ車のフラッグシップの証でもあるV型12気筒です。 排気量は自然吸気の4,943ccで、1気筒あたり4つのバルブを持つDOHCが導入され、390psを発揮します。 今ではそれほど驚く数値ではありませんが、やはりV型12気筒でしか味わえない回転フィールや、回すほどに高音が響き渡る官能的なエンジンサウンドは数値では表せない魅力でしょう。 ちなみに1980年代のイタリア車というと「壊れるから長距離はちょっと……」と思われる人も多いと思いますが、この車輌は「ランデブー」にてレストアされ、常に良い状態を維持するための整備が行なわれているので、こういったイベントくらいなら不安無く出掛けられるそう。 きっと複数のオーナーで間を開けずに乗られているということも、良い状態が維持できている要因でしょう。 室内もフルオリジナルで良いコンディションが保たれています。 現代のクルマの内装が過剰な装飾に思えるほど質素な仕上げですが、骨太な存在感を放つデザインはこの時代のスポーツ車ならではのものですね。 シート高がかなり低くて乗り降りには苦労がありそうですが、いったん乗り込んでしまえばこの低い視点が気分を盛り上げてくれるでしょう。 オーナーの白米さんも気に入っているというこのリヤフェンダー周りのデザインは、テスタロッサの外観で最大の見せ所でもあります。 幅広なV12エンジンを中心に置き、280サイズのワイドタイヤを収めるフェンダーが広がるボディは全幅で1970mmとかなりの数値ですが、実車を見るとデザイン処理のせいか意外とコンパクトに感じるのが不思議です。 ■1976年式 トヨタ セリカLB 2000GT こちらは国産の旧車で人気の高い「トヨタ セリカLB」です。 オーナーは国産旧車が好きで、バイクも含めてハマっているという山崎さん。 この「セリカLB」は購入して5年ほど乗っているとのこと。 これに乗る以前は「日産 フェアレディ240Z」に乗っていたそうです。 なんとなく「他の旧車にも乗ってみたいな……」と思っていたところに、この「セリカLB」のオーナーから交換の申し入れがあり、他に良い条件を加えてくれたのでトレードを実行したのだとか。 この個体は、TOPYの刻印のある純正の鉄チンホイールをワイド加工していたり、フェンダーミラーをナポレオンバッカミラーに交換していたり、ロングタイプのチンスポを装着していたりと、旧車いじりの流儀をしっかり踏まえたカスタムがされているので、「とりあえずこれでほぼ完成という感じですね」という状態に仕上がっています。 エンジンはトヨタの名機「18R-G」を搭載しています。 「1600GT」に搭載の「2T-G」は1600ccですが、こちらは2000ccと排気量に余裕がある設定です。  「18R-G」は「2T-G」と同様、シングルカムの大衆車用エンジンをベースに、ヤマハの手によってツインカム化された高出力エンジンです。 ノーマル状態で大型のSOLEX製40φキャブレターと、タコ足タイプのエキゾースト・パイプを装着していて、この当時の2リッタークラスでは最高レベルの出力を発揮しました。 エンジンルームを見ると、キレイに保たれていますが、しっかり乗られているのが伝わってくる雰囲気を感じますね。 この特徴的なテールのデザインが、「セリカLB」の個性を主張する部分です。 ちなみに「LB」とは「リフトバック」の略で、要はハッチバックと同じく、トランクリッドとリヤのガラスが一体型で大きく開くリヤゲートを備えた形状のことです。 そして「セリカLB」といえば、この縦長のスリットが並んだ形状から「バナナテール」と呼ばれたテールランプが特徴ですね。 1975年に後期型へマイナーチェンジが行なわれ、リヤのガーニッシュごとデザインが変更がされましたが、この個体は前期仕様のようですので、ガーニッシュ中央部のフタを開くと給油口が現れるタイプだと思われます。 ■1994年式 フェラーリ F355ベルリネッタ 会場に多く並ぶフェラーリの中でも、この渋いダークグリーンのカラーリングが目を惹いていた「F355ベルルネッタ」です。 オーナーは「SO」さん。 所有歴は1年ちょっととのこと。 他にもう1台964型の「ポルシェ911SS」も所有しているそうで、自身の誕生年に近い年代のクルマを徐々に集める計画の途中だそうです。 この個体はイベントの最後に来場者のアンケートで選ばれた賞を受けていた車輌で、その受賞のポイントとなったのが、ボディをラッピングで仕上げているという点でした。 そうです、フェラーリをよく知る人が見て「あれ?355にこんな色あったっけ?」と思われる、珍しいダークグリーンメタリックは、アメリカ製のラッピングフィルムによる仕上げなんだそうです。 元のボディ色は「ロッソ・バルケッタ」で、それ自体もそれなりにレアな赤色なのですが、「SO」さんはこの「F355」をもっと自分の物として楽しみたいということでラッピング仕上げを敢行しました。 ウインドウ越しに見えるタンレザー仕上げの内装とのマッチングもバッチリですね。 ダックテール形状のリヤエンドに収まる伝統の丸目4灯ランプと、トンネルバック形状のゲートは、トラディショナルなフェラーリのリヤデザインを継承したものです。 そのリヤハッチに収まる心臓部は、フェラーリ初となる5バルブを採用したV8・3.5リッターエンジン。 3,495ccの排気量で380psを8,200回転で発生するという超高回転型ユニットで、その高回転化のために鍛造ピストンやチタン製コンロッドなどのレーシング・クオリティのパーツが使われています。 そのフィーリングはレーシングユニットさながらの鋭いレスポンスと、フェラーリの高回転エンジンならではの官能的なもので、まさにF1を連想させる魅力をこの「F355」に与えています。 この個体は「イトーレーシング」製のマフラーに換装されていて、そのサウンドはさらに高く響くようにモディファイされています。 ■1984年式 メルセデスベンツ 500SL インタビューを行なった車輌のトリは、ピカピカに仕上げられた「メルセデスベンツ 500SL(R107型)」です。 オーナーはこのイベントの主催者「やまけん」さん。 横に並ぶ黄色の「ポルシェ911RS(964型)」も所有していて、このインタビューの際には「どっちを紹介してもらおうかな……」としばし悩んでいたほど思い入れのある車輌のようです。 それというのも、やまけんさんが20代の頃にお父さんがこの「R107型のSL」に乗っていたそうで、大切に乗っていたそのクルマの横に乗せて貰ったりした経験から「いつか自分も所有してみたい」と想い続けていたとのこと。 3年ほど前、たまたま縁があって売りに出されていたこの個体と出会い、「ちょっと乗ってみよう」と購入したところ、元々のクルマ好きの性分が出ていろいろ手直ししているうちに、「気付いたらフルレストアしていました(笑)」そうです。 そうしてレストアに掛けた期間は実に2年半。 新品パーツをかき集め、できる限りオリジナルの状態に仕上げましたが、ホイールにはこだわりがあってこのデザインが好きだったため、あえて後期のものを装着しています。 またこの代のSLは、ほとんどの車輌のリヤエンドに樹脂製のスポイラーが付いていますが、「せっかくキレイなトランクのラインは活かしたい」ということで、あえて装着しないで仕上げています。 エンジンルームも隙のない仕上がりでキレイすね。 搭載されているのは4,973ccのV型8気筒エンジン(SOHC)で、カタログ値で240psというのは今では非力に感じます。 ですが大排気量ならではの余裕のあるトルクによって、ゆったりとゆとりを感じるクルージングが楽しめるでしょう。 レストアに2年半掛けただけあって、内装もほぼ新車の状態に思えますが、オーナー目線では「乗っているといろいろ気になる部分が出てきてしまって……」と悩ましさを漏らしていました。 それでも旧車の楽しみは終わりが無いところも魅力の部分だと思います。 「500SL」のオーナーであり、この「GOGOmtg」の主催者の「やまけん」さん。 平成生まれのスーパーカー・オーナーが集まる「HOC(平成オーナーズクラブ)」の代表を務めるかたわら、前澤友作さんの「スーパーカープロジェクト」のプロジェクトマネージャーにも就いているなど、自他共に認めるクルマ好きだそうです。 ■他にも気になった旧車がいっぱい 時間内にインタビューしきれず、写真だけですが何台かピックアップして紹介します。 ランボルギーニの不滅の金字塔「カウンタックLP500」直系の後継車である「ディアブロ」です。 デザインを手掛けたのは、「カウンタック」や「ミウラ」などランボルギーニの多くの車輌を手掛けた伝説のデザイナー「マルチェロ・ガンディーニ」によるもので、ランボルギーニでは最後の作品となりました。 会えませんでしたがオーナーさんは女性だとのこと。  こちらは「マセラティ 3200GT」、いや、そのマイナーチェンジ(?)モデルの「マセラティ クーペ」ですね。  「ガンディーニ」と並ぶカーデザイン界の巨匠「ジョルジェット・ジウジアーロ」が手掛けたデザインで、「3200GT」では好々爺の眉毛を思わせる通称「ブーメランテール」がとても印象的でした。 しかしこの「クーペ」ではオーソドックスな扇形になっています。 フェラーリ傘下時代に出されたモデルゆえに、エンジンは「F430」と同じV8・4.2リットルのユニットが搭載されました。 街中でカン高いエンジン音が近付いてくるのを聞いて「お、フェラーリかな?」と思うと、実はこの「マセラッティ・クーペ(またはスパイダー)」だったということもけっこうありましたね。 これもなかなか希少な「メルセデス・ベンツ SLS AMG」です。 ガルウイングドアやサイドの格子状のエアアウトレットなど、メルセデスベンツの歴史に輝くヒストリックカーである「300SL」のモチーフがちりばめられ、ロングノーズ&ショートデッキのトラディショナルなスポーツカーを象徴するシルエットにまとめられたスタイリングは、シンプルにカッコイイという言葉が浮かんできますね。 グリル中央のスリーポインテッド・スターが収まる部分に謎の「K」マークが気になりますが…もしやモーゼルの北野武エディションでしょうか!? 「やまけん」さんの愛車と同じ「R107型」ですが、こちらは最大排気量の「560SL」のようです。 エンジンタイプは「500SL」と同じSOHCのV8ですが、排気量が5,546ccにアップされています。 この「560SL」は、北米とオーストラリアと日本でのみ発売されたモデルのようで、そのせいか、バブル景気に湧く1980年代の後期には「500SL」よりもこの「560SL」の方をよく見かけた気がします。 前出の「355ベルリネッタ」と似たダークグリーン・メタリックの「360モデナ」です。 おそらく「VERDE BRITISH(ブリティッシュ・グリーン)」という純正色だと思われますが、こちらもあまりお目にかかれないカラーだと思います。 ちなみにこの「360モデナ」は、現在に至るまでのフェラーリの歴史で最も販売台数が多い車種だそうです。 こちらは上の「360モデナ」の後継にあたる「F430スパイダー」です。 フロントバンパーの左右に分かれた特徴的な開口部は、先代よりもさらに大きくなって意匠が強調されています。 これは往年のレーシング・マシンに採用されていた「シャーク・ノーズ」と呼ばれるデザインだそうです。 おそらくこのイベントで唯一の軽自動車枠だろうと思われる「ダイハツ・コペン( L880K型)」です。 当時のパワー上限の64psを発生させる直4DOHCターボという高機能エンジンをはじめ、電動(油圧)で自動開閉できるルーフや、クリアの2度塗り塗装、職人による組み立てなどのこだわりがマニアに高く評価されていて、今でもこの初代モデルには根強いファンがいるようです。 こちらは新旧の「ロードスター」が並んでいます。 しかも初代の「NA型」(右)と、現行の「ND型」(左)という組み合わせがおもしろいですね。 こうして並べるとサイズの違いはあまり感じられませんが、「NA型」は5ナンバーで、「ND型」は3ナンバーなんです。 全長はむしろ「ND型」の方が少し短いくらいなのですが、全幅が1700mmを越えているので3ナンバー枠になっています。 現行型は安全対策の構造や電動デバイスなどの追加があるにもかかわらず、初代とほぼ変わらない車重に収めているのは企業努力が大いに感じられますね。 ■あとがき さて、前回の「ポルシェ編」に続いて「旧車編」も駆け足で紹介しましたが、こちらもキレイに乗られているなという印象が強く、オーナーさんのクルマへの愛情を大いに感じました。 ポルシェ同様にほとんどのオーナーさんは30代と若くて、インタビューに答えてくれる印象にも活気がありました。 そうしてこのイベントに集ったオーナさんたちの話を聞いていると、近年話題に上がることの多い「クルマ離れ」の風潮はどこへやら、まだまだクルマのフリーク魂はしかるべきところへきちっと受け継がれていきそうだなと思えます。 これからも気に入ったクルマたちに愛情を注ぎ続けて、充実したカーライフを送っていただきたいです。 [ライター・カメラ / 往 機人]

茨城の商店街に往年の名車がズラリ!昭和のくるま大集合【特別編】
イベントレポート 2023.12.15

茨城の商店街に往年の名車がズラリ!昭和のくるま大集合【特別編】

去る2023年11月19日、茨城県稲敷市江戸崎商店街の通りを使い、『昭和のくるま大集合』のイベントが4年ぶりに開催された。 同イベントは、毎年サテライト水戸という場外車券売り場で開催されていたイベントだ。 200台にもなる昭和に製造(設計)された車輌が集まる、北関東でも屈指のイベントである。 今回『特別編』と銘打って開催された同イベントに主催者から来ませんか?と打診を受けたのは、つい2ヶ月前の10月半ばのことだ。 今年は空冷ビートルのイベントである「Show your VW’S meet」と合同で開催するという。 それはどういったことなのか? 主催者であるクラシックカー愛好家クラブ「バックヤードつくば」の代表である石川氏によれば、例年行なわれてきたサテライト水戸の会場はこのコロナ禍で警備の縮小がされてしまい、会場側がとてもではないが例年通りのイベント規模では安全が確保できないとされてしまったのだそう。 そこに、Show your VW’s meet主催者(えどさきワーゲンミーティング)から、商店街全体(今回のため歩行者天国を150m延長)を使ってのイベントにしたいので、合同開催をできないかと話があったという。 石川氏は急遽有望な参加者を集い、50台限定で開催をすることを決めた。 それだけに参加車輌は粒が大きい。 スーパーカーから名車、珍車、原付バイク…はてはあまり聞かないエピソードを持った車輌など、大いに会場を沸かせてくれた。 ■展示会場としての商店街 会場となった江戸崎商店街は、協賛である「稲敷市えどさき街づくり協同組合」が、稲敷市地域おこしの一貫としてバックアップを行なっている。 商店街の中程にある「えどさき笑游館」を中心に、メインストリートでは毎回様々なイベントが開催される。 『昭和のくるま大集合』のイベントは、ケータリングやフリーマーケットが出店され、一般の見物客も多く訪れる。 子供たちが集まった旧車を興味深々で見入る姿もあった。 ■4台のゲスト車輌 多くの車輌のなかでも目玉といえるのが、やはりカウンタックだろう。 つい先日仕上がったばかりのこの個体は、オーナーがこだわった碧に塗装されて、11月の日差しに輝いていた。 元々は別の色に塗り直されていたという同車輌は、内装を含めオリジナルに戻されて今に至るという。 オリジナルを追求するオーナーは、なんとスペアタイヤ周辺にまでこだわっていた。 タイヤにはホイル内に工具バッグが収納されているのだが、まず残っていることはない。 それを手に入れるために大変な労力を費やしたとのことだ。 スカイラインGT-Rも、一見すると当時から乗られているという印象のみに思えるが、オーナーはスカイラインの世界では重鎮であり、おぎやはぎの愛車遍歴で準レギュラーのように度々出てくる方だという。 S30クラブジャパンの代表が乗られてきたのが、総生産台数が30台とも50台ともいわれるZ432R。 100kgにも及ぶ軽量化が施された競技ベースのクルマ。 また、現在のZをデザインする際にも一役買っているということだ。 自ら手掛け、エアコンまでエンジンルームに納めた2000GT。 本来つけても後方からの吹き出ししかなかった当時のエアコン(クーラー)。 それをダッシュボード内に納め、吹き出し口も前方にしたことで、大変よく冷えるとのこと。 ■バイクだって昭和のクルマ 音楽に乗って紹介で現れたのは、えらく年季の入ったバイク。 ステップではなくペダルがあるこちらのバイクはトヨモーター T6型。 60㏄等排気量で黄色の原付ナンバーを着けている。 つまり今も現役で路上を走っているバイクだ。 このトヨモーターは、まだ戦後の黎明期ともいう頃に愛知に現れたバイクメーカー。 なんと販売店はトヨタ自動車だったという経緯を持つ。 正しくは、扱っていた商社が日新通商という豊田通商の前身だった。 この力を借りて、トヨモーターは全国のトヨタディーラーから販売されたのだ(もちろんその他のチャンネルもあった)。 面白いのはこのバイク、製造方法が国内によくある自社生産スタイルではなく、アッセンブリー式の生産方法をとっていたことだろう。 ヨーロッパではありがちな生産方法だが、国内ではあまりない方法だった。 ■筆者が選んだ選考車輌 イベントでは、招待された出版社やジャーナリストが選んだ選考車輌の表彰が行なわれ、筆者もその選考者のひとりとしてランサーGLを選ばせていただいた。 決して特別なグレードではなく、ごくスタンダードなグレードのモデルだ。 塗装を含めオリジナルの状態をしっかりと維持した、というかよくぞここまで生き残ってくれた!ということを理由に選考した。 受賞者には昭和のくるま大集合のオリジナルトートバックを、筆者のサイン付きで送らせていただいた。 ■スバリスト集う 商店街の終わり付近に停まっていたスバルの一団。 レオーネやドミンゴといった、筆者でも懐かしく感じるモデルが並ぶ一角。 うっかり話を聞いたら、それはもうスバリストの集まりであった。 スバルに関してとかく熱く語ってくれた。 面白い経緯を持ったのはドミンゴ。 これまたクルマ自体をもあまり見なくなってしまったが、こちらのクルマはある劇場アニメの参考資料として使われた経緯があるという。 この夏公開された「アリスとテレスのまぼろし工場」という映画をご存じだろうか? その劇中車輌を描くために資料を集めていた監督が、どうしても資料が足りなくて、Webで見かけたオーナーにTwitter(現X)でメッセージを送り打診されたという。 オーナーも当初は危ない人からの連絡かと思ったらしい。 が、よくよく話を聞き、それならと快く応じたとのことだ。 ちなみに、しっかりとエンディングクレジットにオーナーのお名前があったそうだ。 DVDやアマゾンプライムなどで見ることがあったら、ぜひともドミンゴの活躍を見てほしい。 ■まとめ 50台という限られた台数、限られた時間内で、すべてを決め開催された『昭和のくるま大集合特別編』。 完璧なレス卜レーションが行なわれたLP400から黎明期のモペットバイクに至るまで、まさに大集合となった。 当日の天候のように、晴れやかで素晴らしいイベントだったと筆者は考える。 開催までの時間や制約を考えれば、主催者始めスタッフの努力はさぞや大変であったであろう。 それでもこのイベントの成功は次回へと繋がる道だと思える。 また来年もこの一直線の商店街に、多くの名車が整列することを願ってやまない。 [ライター・カメラ / きもだこよし]

ホンダスポーツ生誕60周年を祝して!ホンダS還暦ミーティングレポート
イベントレポート 2023.12.04

ホンダスポーツ生誕60周年を祝して!ホンダS還暦ミーティングレポート

1963年11月12日にデビューしたオープンカー、ホンダスポーツの60周年イベントが開催された。 会場である「中伊豆ワイナリー」には50台以上のS600、S800のクーペやオープンが現れ、オーナーたちが交流を深めていた。 冒頭の挨拶には現ホンダ副社長でもある青山氏も登壇。 自らもホンダエスのオーナーであることを明かし、いちクルマ好きとして、その素晴らしさを語ってくれていた。 デビュー当初は4色(別冊CGより)しかなかったが、会場に現れたのはその後追加されたカラーやオリジナル塗装のものなど、さまざまなカラーリングのエスが並んだ。 また50周年の折に一般に先駆け、茂木でクラブ員だけに先行公開された復刻プロトタイプのS350も展示され、会場を彩っていた。 ■60周年を迎えるホンダスポーツ ホンダスポーツは1962年、第9回全国自動車ショーにて初めて世の中に登場する。 これは当時の通産省による自動車業界再編案に対して反発した本田宗一郎が、法案が成立する前に対応するべく開発を進めたものであった。 翌1963年、ホンダスポーツは「S500」として正式にデビューを果たす。 当時の販売価格は45万9000円であった。 翌年の1964年にはより排気量の大きいS600がデビューし、のちに輸出仕様も念頭にS800へと発展していった。 基本的にはFRレイアウトのモデルだが、面白いのはスペアタイヤの収納の関係でデファレンシャルから直接ドライブシャフトが伸びておらず、その先をチェーンにより延長しての後輪を駆動させる形態になっている。 これはのちにスペアタイヤの位置を見直すことで完全なシャフト駆動になっており、チェーンドライブとシャフトドライブとで区分けがされている。 冒頭のあいさつでも話があったのだが、既にオーナーご自身が還暦を迎えていたり、さらに年齢を重ねている方も多数いらした。 つまり、オーナーとともに歩んだ還暦祝いともいえるだろう。 ナンバーも宮城や関西のナンバーなど広範囲に及び、まるで新車のごとき仕上がりのエスもいれば、登録以来そのままの時間が経過した車体もある。 いずれもオーナーのスタンスによって形作られ同じような個体はないといっていいだろう。 ■若い2代目ドライバー 筆者が前日宿泊で知り合った若者がいた。 S800オーナーの家族で同乗者として参加していて、まだ18歳という。 彼は小さなころから現オーナーである父親とS800でドライブをして、気がつけばすっかりオープンカー好きになってしまったらしい。 父親であるオーナーの車輌も良コンディションであり、また自らインパネやシフトノブ座席の張替も行なって、すっかりオリジナル感があるクルマとなっている。 そんな若い彼の現在ほしいクルマはロードスターやビートだという。 やはりオープンカーが良いそうだが、それにしても欲しいのはS660やNDのロードスターではなく、NAやビートといった90年代の車輌というのが、どこか今どきの若者と違っているところだ。 いつかは父からステアリングを引き継ぐ日を思いながら日々精進している。 我々おじさんからみれば将来有望な若者だが、彼の目下の悩みは同年代で話が合う人間が少ないことだという。 ■イベント会場の横道を行く 会場の周辺の駐車場にいる見学車輌にスポットを当てるべく、横道を行ってみることに。 外部駐車場がない当会場では、そうしたクルマはあまり見当たらない。 しかし、展示車輌に謎のクルマが1台。 メルセデス・ベンツの名車300SLガルウィングが置いてあった。 なぜホンダのイベントに? よく見るとオリジナルよりも圧倒的に小さく、リアのグレードのロゴには600SLとある。 これはエスのシャーシをベースにして作られたカスタムカーだったのだ。 当日はこのほかに、S600ベースのモデファイドモデルのグリフォンも参加。 イベントに華を添えている。 ■70周年に向かって進むホンダスポーツ 前回の50周年で、また何かやろうということでS800の50周年を3年後に行ない、さらにまたなにかと思っていた矢先、コロナ禍でイベントそのものが難しくなってしまった。 還暦祝いのこの日、集まったメンバーと再びイベントが開催できた喜びを分かち合うことができた。 終了の挨拶では「次の70周年も」という話で締めくくられたが、次の10年新たなオーナーを向かえるエスもいるだろう。 もしかしたら交通事情も大きく変わっているのかもしれない。 それでもホンダスポーツは颯爽と走り続けることだろう。 [ライター・カメラ / きもだこよし]

旧きから現行まで、憧れの対象スーパーカー、ハイパーカーが芦ノ湖スカイラインに集結!GOGOmtgレポート<前編・ポルシェ特集>
イベントレポート 2023.11.29

旧きから現行まで、憧れの対象スーパーカー、ハイパーカーが芦ノ湖スカイラインに集結!GOGOmtgレポート<前編・ポルシェ特集>

2023年もそろそろ終盤に差し掛かってきました。 そろそろ冬支度を始めようかなという気分になりつつあった去る11月19日、芦ノ湖スカイラインの中程にある「芦ノ湖スカイラインレストハウス フジビュー」の駐車場を借り切ったミーティングが行なわれました。 「GOGOmtg(ゴーゴーミーティング)」と銘打って開催されたこの集まりは、今回で2回目となります。 大のクルマ好きで、HOC(平成オーナーズクラブ)というクルマ好きグループの代表を務める「やまけん」さんが、自身のコネクションを通して交流の場を設けようと開催されたのがこのミーティングの始まり。 集まってきたクルマ達は、ポルシェやフェラーリ、ランボルギーニetcという蒼々たる顔ぶれで、1台1台細かく話を聞いてみたくなるような車種ばかり。 しかもそのHOCのメンバーが中心になっているので、オーナーさんの多くが30代と年齢が若いというのもこのミーティングの特色です。 ミーティングに集まった車輌はどれも素通りできないものばかりでしたが、その中でも気になった車種をピックアップして紹介していきたいと思います。 今回は(旧車ジャンルの)前編として、ポルシェを中心に紹介していきましょう! ■1992年式 ポルシェ 911(964)カレラ4・RS3.8ルック   まず1台目は1992年式のカレラ4です。 オーナーは、15シルビアでドリフトを楽しんでいたというひろきさん。 このフロントビューを見て「あれ?」と思った人はけっこうポルシェ好きな人だと思います。 この個体は964型のカレラ4をベースにして、「カレラRS 3.8」の外観に仕立てられた1台です。 「カレラRS 3.8」というのは964型の911の代で最もホットなモデル。  GTレースに出場する目的で製作されたホモロゲーションモデルのため、ウワサでは130台弱しか出荷されていないといわれ、今でも憧れている人は少なくありません。 ひろきさんもその一人で、父親の影響でポルシェに憧れを持った少年時代にRS 3.8の存在を知り、「いつかは所有してみたい」と思っていたそうです さすがに本物のRS 3.8は希少すぎて入手が難しいため、憧れた迫力の外観だけでもカタチにしたいと、この個体を仕立て上げたそうです。 こだわりのポイントはホイール。 リヤが11Jという極太サイズのこのホイールは、苦労して本物を入手したんだそうです。 ■「わ」ナンバーの1991年式 ポルシェ 911(964)カレラ2カブリオレ 続いては1992年式のカレラ2カブリオレです。 キレイな状態が保たれた真っ赤なカブリオレボディは、熟年になったら奥さんとちょっとした旅行に乗っていきたいなと夢想する人もいるのではないかと思わせる雰囲気を持っています。 実はこの個体、「わ」ナンバー登録のレンタカーなんです。 大阪で「ポルシェゲート」というポルシェ専門のレンタルサービス&カフェを展開している「ドリームゲート」代表の高橋さんが自走で参加されていました。 このカブリオレの他にも、レンタル車両としては珍しい930型から現行のモデルまで、合計40台の車両を取り揃えていて、最短3時間から借りられるそうです。 代表の高橋さんは、何台も乗り継ぐくらいポルシェが大好きで、コレクションの状態を保つ設備を整えたりしていくなか、興味がある人にせひポルシェの魅力を知って欲しいと思うようになって、このサービスを立ち上げたんだそうです。 ちなみに乗り継いだ中で最も思い入れがあるモデルは、2.7リッターモデルの初期型ビッグバンパーだとか。 「ポルシェ歴が増えるごとに、どんどん旧いモデルが好きになっていくのが不思議です」と仰っていました。 エンジンルーム内もキレイな状態に保たれていて、しっかり整備されているのが伝わってきます。 この日は天気に恵まれていたので、オープン状態で芦ノ湖スカイラインを走るのは気持ちよさそうです。 ■1994年式 ポルシェ 911(993) こちらはシンプルにノーマル仕様の外観に、オールドスクールなホイールがアクセントに効いた1台。 オーナーは、ポルシェ歴4年というKEIさんです。 この個体は乗り始めて1年くらいとのことですが、初めて乗った991型からフェラーリF355などを経由してこの993型に至ったそうで、「乗り換えるごとに徐々に年式が古くなって行ってますね(笑)」と、図らずも前出の高橋さんと同じことを仰ってました。 さらには、「次に乗り換えるとしたら964のカレラRSがいいと思ってます」と、その発言を裏付けていました。 この個体のいちばんのお気に入りは、クラシカルな雰囲気が特徴の「フックス」製ホイールです。 「フックス」は初代の911に装着されていたホイールを製造していたメーカーで、それ以降ずっとポルシェやアウディなどドイツ車にホイールを提供してきたそうです。 60年も前のデザインですが、空冷最終モデルであるこの993型にも意外とマッチしていますね。 ■ポルシェのエンジニアリングの粋を集めたハイパーカー 2004年式 ポルシェ カレラGT  極めつけは、この日に訪れたポルシェオーナー達からも羨望の目を向けられていた「カレラGT」です。 2003年に発売されたこのハイパーカーは、まさに「ロードゴーイング・レースカー」と呼ぶに相応しい内容の造りとデザインで、発表当時は自動車ファンの目を釘付けにしました。 911系のラインにもレース出場を前提としたGT3などのスーパースポーツ・モデルがありますが、この「カレラGT」はそれら既存の車種をベースとしたと特別モデルはまったく異なる出発点で開発された特別、特殊なモデルです。 そもそもが市販車ベースうんぬんではなく、シャーシ、エンジン、足まわりなどすべてがこのモデルのために新たに設計されたもので構成されています。 シャーシは、カーボン製のキャビンを兼ねたメインフレームを中心に、前後のサブフレームでエンジンと足まわりを支える構造で、仮に外装が無くても問題無く走行できる強度を持たされています。 その外装もフルカーボン製で重量が抑えられていて、車両総重量は1380キロと、現行車で言うとシビックやプリウスなどのサブコンパクトカーくらいしかありません。 ポルシェの市販車では初となるV型10気筒のエンジンは、68度のバンク角を持つ専用設計。 市販エンジンではあまり採用されていないドライサンプ潤滑方式を採用していて、超ショートストロークの設計によって、5.7リットルの大きな排気量ながら、最高出力の612馬力を8000回転で発生させるモンスターユニットです。 上の写真で中央に見えるカーボンの部分はカバーではなくサブフレーム。  足まわりはまさにレーシングカー由来のインボードマウントのダンパーを備えたダブルウイッシュボーン式で、これを見るだけでも気分がアガります。 そして、そのスパルタンの極地と思えるシャーシやエンジンに対して、内装はラグジュアリー感さえ漂う上質なつくりとなっています。 ダッシュボードやドアトリム、シートなどの目に付く部分には暖かみのあるタンレザーがあしらわれ、その合間に高性能なメカニズムを感じさせるシルバーのパーツが配されていて、独特の雰囲気医に仕上がっています。 気になるオーナーはボンバヘイマツさん。 この「カレラGT」は10年ほど所有しているそうです。 これだけスペシャルなつくりなので、乗り味も特殊かと思いますが、ヘイマツさんによると「911とはまったく違うクルマだと思いますが、乗っているとどこかしらポルシェらしいなというフィーリングを感じます」とのことです。 他にも数台のポルシェやランボルギーニなどのハイパーカーを所有する羨ましい方ですが、本人は気さくなカーマニアという雰囲気の人でした。 ちなみに好きなクルマは「フェラーリ308GTB」とのことです。 ■他にも気になったポルシェがいっぱい 時間内にインタビューしきれず、写真だけですが何台かピックアップして紹介します。 993型のRS仕様。 この筋肉質な感じ、たまりませんね。 こちらは純正状態の996型GT3ですね。 スピードイエローといえばこの型というイメージが強いです。 997型のGT3RS。 スレートグレーのボディ色が戦闘機のような無骨な印象です。 こちらは991型のGT3 RSですね。 この超スパルタンな車両で近畿方面から自走で参加とは、オーナーさんも気合いが入った人なのでしょう。 ポルシェ初の完全4シーターモデル、パナメーラ。 そのもっともホットなモデルGTSです。 そこらの高級サルーンとは一線を画す運動性能を持っていて、サーキットに持ち込んでも一級の走りができるポテンシャルは、さすがポルシェのクルマというところです。 これは懐かしいポルシェ944ですね。今ではこうして現車にお目に掛かるのは希少となってしまいましたが、改めて見てもカッコイイです。 今のラインナップで言うとケイマンになるでしょうか。 この個体はさり気なくリヤハッチに可変式ウイングのリヤスポイラーを装着しています。 ■あとがき さて、ババッと一気に紹介してきましたが、会場にはまだ多くのポルシェとそのオーナーが来ていました。 総じて感じたのは、若いオーナーが多かったのですが、話を聞くとかなりの思い入れが溢れてきて、「ああ、クルマが好きなんだな」という印象でした。 オーナーさんそれぞれに、幼少の頃に出会ったり、親御さんの影響だったり、あるいはオトナになってから出会った人や車の影響だったりと、ハマるきっかけは違いますが、こういう場で集まって話す内容は、年齢に関係無く熱いんだと感じられました。 次回はイタリア車やドイツ車、国産車の紹介をしてみたいと思います。 そちらも興味深い車種がいっぱいなので、ご期待ください。 [ライター・カメラ / 往 機人  一部画像提供 / 土居 凌祐さん(X@DoiChan40)]

古き良き時代と未来を感じる「2023クラシックカーミーティング&発動機運転会」イベントレポート
イベントレポート 2023.12.01

古き良き時代と未来を感じる「2023クラシックカーミーティング&発動機運転会」イベントレポート

去る2023年11月3日(金祝)、岡山商科大学附属高校(岡山市北区)にて開催されたこちらのイベント「2023クラシックカーミーティング&発動機運転会」には、9時から13時過ぎまでの約4時間の間に、多くの見学者が訪れて賑わった。 ●イベントのなりたち イベントは、同校の創立100周年記念事業として2011年にスタート。 「自動車整備コース・工業技術コースのPR」、「自動車への興味と知識を深める」という目的をもって開催されている。 2011年の第1回には、地元の愛好家団体「倉敷旧車倶楽部」、「吉備旧車倶楽部」、「岡山石油発動機愛好会」の協力を得て、車輌60台と発動機50台が集まった。 以降2012年、2013年と開催。 新校舎建築のためブランクを経て、2017年には車輌110台、発動機60台と盛大に開催された。 ◆5年ぶりの開催 コロナ禍を乗り越え、5年ぶりに開催された今回は、車輌140台と発動機30台が参加。 工業系列の生徒、教員、ビジネス系列の生徒の皆さんが「販売実習」として出店で参加するなど、過去最大の規模となった。 来年も継続させていく予定だという。 今回は、そんなイベントの魅力をレポートする。 ■玄関前駐車場:国産&輸入スポーツカーがずらり 正門をくぐった玄関前駐車場には、1960年代から1990年代に生まれた国内外のクルマたちが通路の両脇に並んでいた。 「青空の下の自動車博物館」といった雰囲気。 ホンダ NSXやマツダ RX-7などの国産スポーツカーを、熱心に眺める来場者の姿が印象的だった。 ▲玄関前駐車場に並ぶ名車たち ▲手前のマツダ RX-7(FD3S)は二桁ナンバー。大切に乗られているのがわかる ▲途中から徳島工業短期大学が所有する燃料電池車(FCEV)トヨタ MIRAIも展示され、来場者から熱視線 ■自動車実習室:「国産車第一号・山羽式蒸気自動車」のレプリカや貴重なクラシックカー 自動車科の自動車実習室には、科の皆さんが製作した「国産車第一号・山羽式蒸気自動車」のレプリカをはじめ、フォード モデルT(T型フォード)やフィアット 509、トヨタ MIRAIが展示された。 ▲徳島工業短期大学が所有する1912年式のT型フォードと並ぶ山羽式蒸気自動車レプリカ ▲こちらのフィアット 509は1929年式。大澤利久さんが所有する個体で、国内で現存する3台のうち唯一の実働車だという ●国産車第1号・山羽式蒸気自動車レプリカ製作プロジェクトに注目 ▲山羽式蒸気自動車レプリカ(2022年お披露目当時) 旧車王ヒストリアでは、同校の自動車科の生徒の皆さんが取り組む「国産車第1号・山羽式蒸気自動車」レプリカ製作を取材してきた。 イベント来場者の中にはレプリカ展示を見て、岡山県が「国産自動車発祥の地」であることを知った方もいたそうだ。 レプリカは今後、2024年1月「岡山県高校生テクノフォーラム」、 3月2日「本州四国連絡橋公団バス祭り」で展示予定。その後RSK山陽放送に納められる。 ◆これまでの取材記事 ●国産自動車第一号は岡山生まれ!「山羽式蒸気自動車」を後世に伝えるレプリカ製作プロジェクトhttps://www.qsha-oh.com/historia/article/yamaba/ ●国産自動車第一号「山羽式蒸気自動車」レプリカ製作プロジェクト最新レポートhttps://www.qsha-oh.com/historia/article/yamaba-vol2/ ■【VOICE】生徒さんに聞く イベントでは、生徒の皆さんがスタッフとして活動していた。同校の2年生で自動車科の藤本晃生さんに、イベント開催までの気持ちや参加した感想を尋ねてみた。 ●「イベントが決まったときからうれしくて楽しみにしていました」自動車科2年 藤本晃生さん ▲2年藤本晃生さん。好きなクルマはER34(日産 スカイライン) 藤本さん: 「このイベントが決まったときはすごくうれしかったです。皆さんのクルマを傷つけないように気をつけて、しっかりやりきろうと思いながらワクワクしていました。 今日は色々なクルマを見ることができ、新たな知識も得られて、好きなクルマもできました。TC24-B1を搭載したトミタクさんのZとハコスカがすごかったですし、パープルの塗装でガルウィングのセリカもかっこよかったです!」 5年ぶりに開催されるイベントを楽しみにしていた気持ちが伝わってきた。続いて、将来の目標も伺った。 藤本さん: 「旧車からEVまで整備できるよう、知識と経験を積んでいきたいと思います」 と、頼もしいコメントで締めくくる藤本さん。 藤本さんが学ぶ自動車科(自動車整備研究部)は、12月24日(日)に開催される全日本高等学校ゼロハンカー大会への出場を控えている。 予選を通過し、24分耐久レースへの出場を目指す。 ■グラウンド:時代を彩った名車がずらり メイン会場となったグラウンドには、多様なクラシックカーと発動機が集合。 交流の場としても盛況だった。 来場していた40代男性からはこんな感想が。 「多様なジャンルのクルマを見ることができて楽しかったですね。ダイハツ シャルマンやスバル レオーネバンなど、レアなクルマにも会えてうれしい。私も整備学校に行ったので。自動車実習室も懐かしかったです」 このように、思い出や思い入れのある懐かしい1台に再会できた方も多かったのかもしれない。あらためて会場の様子を詳しく振り返っていこう。 ◆日産 ホーマーの「特設ステージ」で開会式 ▲開会式で特設ステージとしても活躍した日産 ホーマー 9時から開会式が行われた。 日産 ホーマーの荷台を特設ステージにして、畠浩二副校長をはじめ関係者の挨拶があった。 こちらのホーマーは1973年式。 プリンス自動車が日産と合併した後のモデルとなる。 なんと映画「とんび」に登場している個体そのもの。 現在も農機具を積載するなど現役で活躍しているという。 使い込まれて経年変化した木製の荷台も美しかった。 ▲時代を彩ったモデルが並ぶ ▲スズキ アルトハッスルは1992年式。所有して7年、オーナーの普段の足として元気に走っているそう ▲1991年式の日産 スカイラインGT-R(R32)。初期33ナンバーを保持する美しい個体 ▲1975年式のトヨタ セリカLB。ガルウィングドアにカスタマイズされていて、エンジンはスープラなどに搭載される「1JZ型」に換装されている ◆「文化遺産として大切に守りたい1台」いすゞ ピアッツァ ネロ ▲ジョルジェット ジウジアーロが手がけたデザインは先進性を想起させる。車名の「ネロ」はイタリア語で「黒色」の意味 取材中、いすゞ ピアッツァ ネロをじっくり見せていただく機会に恵まれた。 「いすゞのこの名車を、文化遺産として布教していきたい!」とオーナー。 抜群のコンディションを誇るこちらの個体は1988年式。 ピアッツァ(初代モデル)は1981年から1991年まで生産。 「ピアッツァ ネロ」として、ヤナセでも販売された。 ▲ネロのヘッドライトは最終型のみ北米仕様“まぶたなし”の4灯タイプ ▲直列4気筒SOHCターボエンジン「4ZC1型」は150馬力を発揮する ▲洗練されたインテリア ▲ステアリングの両脇にスイッチ類が集約された「サテライトスイッチ」。手を離さず操作できる 運転席に座らせていただいて驚いたのは、洗練された室内空間。 直線を基調としたデザインを壊さないこだわりが随所に見られ、スタイリッシュな空間を演出している。 そしてこの「スーパーロボット感」。 サテライトスイッチを配したコックピットの景色はもちろん、これらのスイッチ操作は複雑で、オーナー以外の人間はひと目で操作できないはずだ。 そんなところにもスーパーロボットならではの「ロボットが主と認めた者だけが扱える」を感じられ、筆者はグッときてしまった。 ■【VOICE】クラシックカーオーナーに聞く 参加車輌のオーナーにインタビュー。 愛車との出会いやこだわりを聞いた。 ●「最愛アーティストの直筆サイン入り!唯一無二の1台」トゥクトゥク:オーナー ぴいさん ▲三輪タクシーは 国によって呼び方が変わる。「トゥクトゥク」はタイ独自の呼び方だそう トゥクトゥクは、東南アジアで利用されている三輪タクシー。 ぴいさん: 「このフォルム、スタイルが大好きなんです!」 そう話すオーナーのぴいさんが、トゥクトゥクを手に入れたのが10年以上前。 塗装などのカスタムを施し、日常の足として利用しているそうだ。 エンジンは、スズキ ジムニーなどに搭載される「LJ50型」。 2サイクルの音がお気に入りだという。 さらにボディには、ぴいさん最愛のアーティスト「かぐや姫」フルメンバーの直筆サインが入っている。 実際にこのトゥクトゥクを見た3人に「こんなの乗ってんのー!」と驚かれたのが思い出に残っているそう。 最高の宝物だ。 ▲右上が南こうせつ氏、右下に伊勢正三氏、左に山田パンダ氏の直筆サイン ▲かぐや姫のコピーバンドも結成しているぴいさん。完全なる「かぐや姫仕様」だ ●「古き良き昭和の空気をまとって」トヨタ ミニエース:オーナー 五十嵐純一さん ▲東北在住の五十嵐さんは自走で各地のイベントへ出かけているそうだ パブリカと同じ空冷水平対向2気筒エンジンを搭載する小型商用車、トヨタ ミニエース。 五十嵐さんの個体は1975年式だという。 「人と被らないクルマを」とオークションでこの個体を手に入れた五十嵐さん。 自走で遠征できるように修理しつつ大切に乗っている。 五十嵐さん: 「岡山には新車ナンバーが多くて珍しいですね。50年以上も所有している人に今日だけでも7人会いました。すごいですね」 と、岡山の旧車シーンにも驚いていた。 ▲トラックタイプは珍しい ▲古き良き昭和の空気をまとう。目にするなり「懐かしい」と声に出す人も ●「安心感が魅力」トヨタ セリカ GT-FOUR:オーナー 末宗安之さん ▲オーナーの末宗さん。1998年式のGT-FOURとは約8年の付き合い トヨタ セリカ GT-FOUR(ST205)は、シリーズでは6代目のモデルだ。 末宗さんの所有する個体は、ボディ、樹脂パーツに至るまで新車を思わせる美しさだった。 末宗さん: 「以前は5代目(ST185)のGT-FOURを10年ほど所有していました。また乗りたいと思っていたところ、関西のショップにあったこの個体を見つけました。 気に入っている点は、安心感があるところでしょうか。頑丈なエンジンですし、フルタイム4WDなので雪の日も問題なく移動できます。 フロントにスーパーストラットサスペンションが採用されているのですが、特殊な構造のため、整備性が良くないところが難点かもしれません。 普段のメンテナンスでは、予防整備に力を入れています。熱で劣化する部品を早めに交換したり、多車種から部品を流用したり。少しでも長く乗っていたいなと思います」   ▲ホイールは燃費向上と乗り心地改善のため、エンケイの16インチを選択。キャリパーの大きさゆえにホイールの選択肢は限られてしまうのだそう ▲最高出力255馬力を誇る直列4気筒DOHCターボエンジン「3S-GTE型」を搭載。ヘッドライトはガラス製。黄ばみとは無縁だ ■グラウンド:実物を見て感じる石油発動機(發動機)の魅力 発動機が一斉に始動すると同時に、カメラやスマートフォンを向けるギャラリー。 あちこちから聞こえ始める「シュッシュッ」「ポンポン」という排気音が郷愁を誘った。 岡山県は「発動機王国」と呼ばれている。 大正6年に県内で初めて発動機が使われてから、昭和30年まで岡山市内を中心に約110社の農業用発動機メーカー(農発メーカー)が存在していたそうだ。 日照時間の長さから「晴れの国」と呼ばれるほど温暖な気候に恵まれている岡山県。 江戸時代から干拓事業とともに、畳の原材料となる「い草」と米、麦の二毛作が行なわれるなど農業が発達。 明治時代からは農機具の機械化も進み、県内には農業用発動機の製作所が点在。 国内メーカーの7割が岡山の製作所だった。 高知県で発動機の保存活動を行なう森下泰伸さんによると、全国の發動機メーカーは452社あり、そのうち岡山には約100社が存在した。(2009年調べ) 昭和11年、12年には岡山市を中心に年生産1万7000余台を生産し、全国の 60%のシェアを占めた。 まさに發動機王国を築き上げていたという。 岡山県の発展を支えてきた農業用発動機を深く愛する人は多い。 (参考文献・コメント引用:岡山商科大学附属高等学校 自動車整備研究部「温故知新 農業王国岡山は發動機王国だった MADE IN 岡山の石油発動機 歴史とレストア」) ■【VOICE】発動機オーナー&来場者に聞く この日の運転会には、石油発動機30台が参加。 そんな光景を織り交ぜながら、インタビューとともに運転会の様子を紹介していこう。 ▲発動機の始動時はガソリンを使い、燃焼室が温まったら灯油に切り替える。切り替えの場面が見どころ ●「我が子のように愛機に接する」「運転会で発動機の魅力を知った」発動機オーナー  川上森三さん&発動機ファン 鳥羽哲弘さん ▲発動機のオーナー川上さん(左)と発動機ファンの鳥羽さん(右) 一眼レフカメラを携え、発動機を熱心に眺めるのは、発動機ファンの鳥羽哲弘さん。 総社市で催された運転会で見て魅了されたと話す。 鳥羽さん: 「味のある音、シンプルな構造、匂いまですべてワクワクします。運転会の情報をチェックしては見に行っています」 鳥羽さんが一人のオーナーに声を掛けた。 発動機オーナーの川上森三さんは、2000年頃から発動機を所有している。 川上さん: 「始動して安定するまで、今日の調子を音で確認しています」 と話しつつ、我が子のように接している姿が素敵だった。 ▲川上さんの愛機は「カナミツ石油軽油発動機(金光電機工場内燃機部製)」。昭和6年製造だった ●「ないものは作るの精神で部品も自作」発動機オーナー  岩田茂雄さん&龍雲さん親子 ▲「総社製作所」の発動機を所有する岩田さん親子、父の茂雄さん(左)と息子の龍雲さん(右) 発動機ファンの鳥羽さんから「最近は若い方もいるんですよ」と紹介していただいた岩田さん親子。 息子の龍雲さんは、なんと小学4年生から整備を学び始めたという。 ▲総社製作所の発動機。箱型マグネットのコイルを巻き直すなどの手厚いメンテナンスを受け、今日も元気に稼働 龍雲さん: 「この発動機は、近所の骨董品店で見つけてもらいました。部品は“ないものは作る”の精神で自作することもあります」 と話す龍雲さんは、メグロ製作所のバイクのファンコミュニティも運営している。 ▲メグロオーナー&ファンのコミュニティ「目黒植輪介」を運営 ■【VOICE】岡山の「ものづくり」について イベントではトークショーも催された。 ゲストは自動車エンジニアであり、YouTuberとしても活躍する「トミタクさん」こと富松拓也さん。 あらゆるクルマのエンジンを修理し、部品まで自作する富松さんは、“幻のエンジン”と呼ばれる「オーエス技研TC24-B1」を甦らせたことでも知られる凄腕エンジンビルダーだ。 今回はイベントの感想とともに、岡山のものづくりへの思いを聞いた。 ●「岡山県民のチャレンジ精神が今に繋がっている」富松拓也さん ▲オーエス技研TC24-B1を搭載する「トミタクZ(S30Z)」は富松さんの分身的存在 まずは、イベントに参加して感じたことを伺った。 富松さん: 「トークショーで、生徒さんが興味を持ってくれたのがすごくうれしかったです。内燃機関の魅力が伝わっていたら良いですね。 こんなふうに『やって良かったな』と喜びを感じる瞬間は、若い方が喜んでくれたときなんです。 これから自動車業界を目指す皆さんには、チャレンジ精神を大事にし続けてほしいと思います」 そう話す富松さんのもとには、トークショーが終わってからも次々と人が訪れていた。 その中には若い世代も多かった。 続いて「岡山のものづくり」に対して抱いている思いを伺った。 富松さん: 「岡山のものづくりは、何事もあきらめずに挑んだ先人の方々に支えられていると思います。 器用な人が最初から多かったのではなく、さまざまなことをして器用になっていったのだと。 人間としての幅が広がることでチャレンジに繋がる…このTC24にも繋がっていったのではないでしょうか」 ▲TC24-B1は1980年にオーエス技研が開発。L28型をベースに独自の技術でツインカム4バルブ(クロスフロー方式)を採用。9基しか生産されなかったため“幻のエンジン”と呼ばれる ▲富松さんの軽快なトークに引き込まれる ■【まとめ】地域とのつながり、未来への希望を感じるイベント 幅広い世代の来場者があった「2023クラシックカーミーティング&発動機運転会」。 このようなイベントを学校が主催しているのはすばらしい。 地域とのつながりも感じられ、未来への希望を感じるイベントだった。 来年の開催の際には、ぜひ足を運んでいただきたい。 【取材後記】 筆者の愛車もひっそりと。 コンテストに出場するような美しい名車ばかりのなかで恐縮だったが、皆さんの愛車を拝見しつつ「愛車を守っていくこと」について深く考えた。 S2000を少しでも長生きさせたいとあらためて思ったひとときでもあった。 ありがとうございました。 【取材協力】 ●岡山商科大学附属高等学校https://www.osu-h.ed.jp/ [ライター・カメラ / 野鶴 美和]

今年の主役はカレラRS!約150台のポルシェが参加「エキサイティングポルシェ2023」
イベントレポート 2023.11.26

今年の主役はカレラRS!約150台のポルシェが参加「エキサイティングポルシェ2023」

去る11月12日(日)、横浜赤レンガ倉庫で「エキサイティングポルシェ2023(EXCITING PORSCHE/略称:EXP)」が開催された。*今回で16回目となるエキサイティングポルシェ(以前は"EXCITING PORSCHE MEETNG(EPM)"だったが、5年前から"EXCITING PORSCHE(EXP)"に改称している)。 筆者自身も第1回のときから会場に足を運んでいるが、多くのポルシェオーナーおよびポルシェファンにも「11月の第2日曜日といえば、横浜赤レンガ倉庫のポルシェのイベント=エキサイティングポルシェ」としてすっかり定着した印象がある。 毎年のように150台前後のポルシェを集めるには、イベントの知名度はもちろん、魅力がなければ成立しない。その人気振りは「エントリー開始からわずか数時間で枠が埋まる(しかも、今年からはエントリーを2回に分けたほどだ)」といえばご理解いただけるだろう。 今回、可能な限り当日エントリーしたポルシェを取材を試みた(もし、掲載されていないポルシェがあったら・・・オーナーさん、すみません)。 ■エキサイティングポルシェ2023:カレラRS編 今年のエキサイティングポルシェの主役は、昨年、生誕50周年を迎えたカレラRS。2台のカレラRS2.7をはじめ、964、997、991といった、空冷&水冷の「RS」の名を冠した911がエントリー。ポルシェファンにとっては、このクルマたちを間近で眺めるだけでも横浜赤レンガ倉庫に足を運ぶ価値があったといってもいい。 ■エキサイティングポルシェ2023:ポルシェ356/911(901/ナロー)/914編 ポルシェのなかでもクラシックに位置づけられる、356、いわゆる“ナローポルシェ”、914もエントリー。オリジナル重視の個体から、独自のモディファイを施したクルマまで、原色系ボディカラーに塗られた個体が多いのもこの年代の特徴。半世紀以上も前に造られた個体ばかりなのに、いずれもバリバリの現役モデル特有のオーラを発していた。 ■エキサイティングポルシェ2023:ポルシェ911(930)編 気がつけば930型も最終モデルですら30年を優に超えるクラシックモデルに。今回は比較的オリジナルの個体が多い印象(反面、モディファイされた個体は過激だ)。ナロールック、そしてスピードスターターボルックという、2台のガルフカラーに塗られた930や、RAUH-Weltのワイドボディをまとった個体もあり、バラエティに富んでいて楽しい。 ■エキサイティングポルシェ2023:ポルシェ911(964)編 ナローポルシェ時代からのヘッドライトを受け継ぐ(細かくは違うけれど)最後のモデルとして非常に人気が高い964型。レアなスピードスターやターボ3.6、シュトロゼックおよびRUFコンプリートカーなど、普段なかなか見られない珍しい個体が多数エントリーしていた。 ■エキサイティングポルシェ2023:ポルシェ911(993)編 最後の空冷911として常に高い人気を誇る993型。エキサイティングポルシェではお馴染みとなっている、東西の993GT2が今年もそろい踏み。そして、今年はたまたまなのか、モディファイした個体が多かったのも993カテゴリーの特徴といえる。 ■エキサイティングポルシェ2023:ポルシェ911(996)編 水冷エンジンを搭載した初の911である996型。今回のエントリー数は少なめな印象。それでも前・後期モデルをはじめ、発売当時に争奪戦となったGT3もエントリー。今年はターボ系の展示がなかったので、来年に期待したいところだ(オーナーさん、よろしくお願いします!)。 ■エキサイティングポルシェ2023:ポルシェ911(997)編 例年、多数のエントリーがあるはずの997型も今年は少なめ。それでもスペシャルモデルのGT3をはじめ、ターボモデルもエントリー。若い世代のオーナーも増えつつあるようで、お父さん世代としては次世代を担うポルシェオーナーの奮起を願うばかりだ。 ■エキサイティングポルシェ2023:ポルシェ911(991)編 2023年のエキサイティングポルシェでは大所帯となった991型。カレラ系では最後のNAエンジン搭載モデルとなった前期型をはじめ、GT3、カブリオレ、タルガなど珍しい個体がエントリー。そういえば、とエキサイティングポルシェでは不思議とGT3系のエントリーが多い気がする。 ■エキサイティングポルシェ2023:ポルシェ911(992)編 そして現行モデルの992型。991型に比べてエントリー数は少なめだが、ここでもGT3系の個体が多い。来年以降は、カレラTやようやくナンバーがついたGT3RSなど、シリーズ後半でデビューしたモデルのエントリーにも期待したいところ。 ■エキサイティングポルシェ2023:ポルシェ924/944/968/928編 FRポルシェとして根強い人気を持つ924/944/968/928型もそれぞれエントリー。個人的にはこのカテゴリーがどのくらいエントリーしてくれるのか、毎回とても楽しみにしている。同年代の911と比較すると残存数が少ないので、現オーナーにはラストオーナーとして後世に受け継いでもらえたら・・・と思う。 ■エキサイティングポルシェ2023:ポルシェボクスター&ケイマン編 FRポルシェの後を担い、そして911系とは異なる魅力を持ったボクスター&ケイマンも多数エントリー。実車を並べてみると、モデルチェンジを経るごとにボディが大きくなっているのが分かる。こうして同じ場所に並べられていると、初代ボクスター&ケイマンがライトウェイトスポーツにすら思えてくるほどだ。 ■エキサイティングポルシェ2023:マカン&タイカン編 次世代のポルシェといえるタイカン、そして現代のポルシェの屋台骨を支えるマカンもエントリー。クーペ系だけでなく、セダンやSUVモデルのエントリーができるのもエキサイティングポルシェの魅力のひとつだと思う。来年はカイエンやパナメーラ系のエントリーにも期待したい。 ■エキサイティングポルシェ2023:ポルシェライフを支える各ショップもエントリー エキサイティングポルシェに欠かせないものといえば、各ショップの出展ブースだ。ポルシェビギナーはもちろん、オーナー予備軍が各ショップのスタッフと直接話ができる貴重な場となっている。将来、ポルシェの購入を考えているとしたら、来年は会場に足を運び気になるショップのブースを訪ねてみてほしい。何らかの有益な情報が得られるはずだ。 ■エキサイティングポルシェ2023:まとめ 2022年に引き続き、今年も雨模様となってしまったエキサイティングポルシェ。午前中は小雨が降り続き、人出もまばら。しかし、雨が止んだ午後には赤レンガ倉庫に多くの来場者が足を運び、いつもの賑わいが戻った。 エキサイティングポルシェの魅力は参加者と来場者の距離が非常に近いところにある。ポルシェが好きなクルマ好きにとっては珍しいモデルが間近で見られる貴重な場ともいえるし、オーナーから生の声を聴けるまたとない機会でもある。 エキサイティングポルシェに参加するために愛車をモディファイしたり、このイベントにエントリーすることを目指して仕事を頑張っている若い世代も方もいると聞く。16年間、続けたことで、多くのポルシェオーナー、そしてポルシェファンにとって欠くことのできないイベントになったことは間違いない。 その裏では、このイベントを円滑かつ安全に進行させるべく、事前の準備はもちろん、当日は早朝から夜までフル稼働状態で尽力されたスタッフがいることにも意識を向けたいところだ。なかにはイベントの設営のためだけにわざわざ九州から応援に駆けつけるスタッフもいるという。 来年以降もエキサイティングポルシェを継続させるためには、スタッフの皆さんの努力だけでは限界がある。個々の参加者の意識付けがあってこそはじめて整理するのだということを、今回の取材を通じて改めて実感した次第だ。 [ライター・撮影/松村透]

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