手に入れて20年!スバル360とセリカLBが直面するレストア問題

目次
1.■平穏無事とはまったく無縁な筆者のカーライフ 2.■早20年。経年劣化の残酷さを知る 3.■エンジンオーバーホールは定期的? 4.■年々高騰するオーバーホール費用 5.■ただし、部品は手に入りやすくなっている  6.■状況は厳しくなる一方だが、悪い話ばかりでもない

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■平穏無事とはまったく無縁な筆者のカーライフ

運転免許が取得可能な年齢になる10年以上前からスバル360に惚れ込んできた筆者。

免許取得後は周囲の制止にも聞く耳を持たず(笑)、スバル360とセリカリフトバックのオーナーになって早20年。

これまで、問題に直面してばかりというのが正直なところでしょうか。

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■早20年。経年劣化の残酷さを知る

世間では「クラシックカー」や「旧車」と呼ばれているクルマを買う以上、新車や高年式の中古車を買うのとはワケが違うということは覚悟の上でした。

部品を探したり、時には自分で手を入れることもありました。

トラブルは楽しむくらいのつもりで乗る、苦労は情熱でカバーすればいい・・・今思えば、若かったからこそできたのかもしれません。 

しかし、経年劣化に慈悲はないとでもいえばいいのでしょうか。

いくら定期的な消耗品交換やオーバーホールを繰り返していても、「経年劣化」は、まるでこちらの整備スケジュールの裏をかくかのように出現するのです。

入念に整備しても「まったく想定していなかった箇所が突然壊れる」ということは日常茶飯事です。

新車から20年も30年、さらに40年、50年も経てばいくらレストアしても、新車当時からまったく手を付けていない場所があれば、いつどこが壊れるかまったく予想がつきません。

そして、あたふたしているうちに、昔オーバーホールした箇所がまた 耐用年数を迎える。

結果、この繰り返しになるのです。

■エンジンオーバーホールは定期的?

筆者の愛車である1973年式セリカリフトバックは、現在、通算3度目のエンジンオーバーホールで入庫中です。

最初のオーバーホールは購入してから2年後のこと。

「ノンレストア・未再生」という触れ込みで購入を決めました。

しかし、 筆者が現車確認をしにいった時点ですでに、バルブからオイル下がりが発生していたようです。

さらに、ピストン・シリンダーも圧縮が抜けが発生し(エンジン分解時にバルブが割れ、3番のピストンリングが折れていたことが判明)排気ガスには白煙が混じっていました。

購入当初から、お世話になっている整備工場の社長から「ブローバイガスの圧が高すぎる。今すぐにでもオーバーホールしないとダメなくらいだ」という指摘を受けていました。

そして、購入から2年後、ついにヘッドガスケットが吹き抜け、重篤なオーバーヒートが頻発。

ついに1度目のエンジンオーバーホールとなったのです。

そしてなんと、2度目のオーバーホールはそれからわずか3年後のことでした。

最初のオーバーホールで使用した社外品のハイコンプピストンの形状に問題があったようで(但し、ボアアップを目的としない純正オーバーサイズと同程度のサイズ)、ピストンにクラックが入り(この時も3番のピストン)わずか3年、5万kmにも満たない走行距離でエンジンブローしたのです。

鋳造関係に詳しい知人に割れたピストンを見せたところ「リブの入れ方が間違っている。応力のかかるところが強度不足、いくらなんでも設計がひどすぎる」と指摘を受けました。

このとき、詳細は不明でしたが、かなり古いパーツだったことが判明。

おそらく、チューニングパーツメーカーもまだまだ手探りで、試行錯誤の時代だったのかもしれません。

実は、タイミングよく同年式同グレードの18R-G型エンジンの状態の良い(シリンダー摩耗なし)部品取りが整備工場に余っていたので、ピストンリングだけ交換しました。

部品取りのピストンシリンダーにもとから載っていたシリンダーヘッドと、補器類を組み合わせるという「ニコイチ」で組み上げることにしました。

前回の反省を踏まえ、極力「純正部品」を使用し、メーカー指定値準拠の信頼性を優先しました。

このとき「基本的に、純正のノーマル仕様でエンジンを組めば、最低限のメンテナンスで長く乗れる」と期待したのですが、さすがに2回目のオーバーホールから14年。

走行距離にして15万km以上となると、いくらノーマル準拠で、サーキット走行やスポーツ走行はしないといっても、そろそろ限界のようでした。

そこで2022年3月、クーラントの異常減少とオーバーヒートの頻発という最初のオーバーホールと同じ症状により、通算3回目のオーバーホールとなりました。 

エンジンをおろし、ピストンを確認すると、やはり3番4番のシリンダー部分のヘッドガスケットが抜け、異常燃焼を起こしていることを確認。

どうやら、ラジエターから離れている4番と熱の逃げ場のない3番のシリンダーは熱による負荷が大きいことが分かってきました。

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■年々高騰するオーバーホール費用

オーバーホールの度に頭を抱えるのが、いうまでもなく一連の作業にかかる費用です。

詳細な金額は伏せますが、同じような症状でも回を重ねるたびに、おおむね10万~20万円くらいずつ増えていく印象です。

今回のオーバーホールでは、1回目のときと比較して倍近い金額にまで膨れ上がりました。

高額になった原因は、原材料費の高騰による部品の値上げが挙げられます。

また、年々稀少になりつつある部品のプレミア価格もその要因のひとつです。

さらに無視できないのが、前回のオーバーホールでは問題がなかったり、摩耗が規定値内だった箇所について。

(当然ながら)2回目、3回目のオーバーホールのタイミングでついに寿命を迎える部品があるのです。

例えば、当初シリンダーヘッドはバルブとバルブステムの交換とタペット調整と修正の研磨で済んでいたのが、回を重ねるごとに、バルブシートの打ち換えやクラックが発生するようになります。

その結果、アルゴン溶接をおこない、修正漏れがないか水圧検査するといった作業が増えていきます。 

エンジン本体でも、ポンプ類や電装部品、点火系および燃料系の補器類で、前回は許容範囲内で「続投」と判断された部品も例外ではありません。

次のオーバーホール、その次のタイミングで寿命と判断され、回を重ねれば修理・交換する箇所が増えていきます。 

さらに、新車から50年〜60年を経過することで、気候も使用環境も大きく変化し、日常使用の範囲内でも設計当時の想定をはるかに上回る高負荷がかかっているケースもあります。

そのため、シリンダーブロックやシリンダーヘッドが大きくゆがみ、最悪の場合、前述のアルゴン溶接によるクラック修理、あるいは状態のいいシリンダーブロックやシリンダーヘッドに交換する必要が出てきます。

その結果、オーバーホール代が高額となっていくのです。

■ただし、部品は手に入りやすくなっている 

しかし、悪い話ばかりではありません。

最近は一部の国産車メーカーがヘリテイジ部門を立ち上げ、すでに絶版となった部品の再生産の告知が話題となっています。

中には、「ダメモト」でメーカーの部品販売部門に問い合わせたら、純正部品がそろったという話も聞きます。

レストアの文化が成熟した国では、以前から復刻部品や社外品のアフターマーケットパーツが流通しています。

近年は日本のクラシックカー人気に呼応して、国内の国産クラシックカーの専門店に海外からも部品のリプロダクトのオファーがあると聞きます。

そういう意味では、10年前と比べて部品の供給状態は改善の方向に向かっているといえるでしょう。

筆者のセリカも、以前は、ガスケット一つの入手だけでも何か月も待たされることは当たり前でした。

今回のオーバーホールも、部品をそろえるだけで数か月から半年はかかるだろうと思っていました。

ところが、実際には「クランクシャフトやシリンダーブロックといった大物」を除けば、オーバーホールに必要な補修部品程度なら、大体復刻部品がそろうのです。

しかもネット注文すれば、早いものなら翌日に届くと聞き、拍子抜けでした。

以前は、2.2L仕様のボアアップピストンしかなかったものが、今では純正オーバーサイズ準拠のノーマル圧縮の鍛造ピストンが某有名チューニングパーツメーカーのラインナップに存在するなど、新品の部品が充実しています。

以前は、部品の値段が売主と交渉が成立するまでわからず、ある程度作業が進まなければ概算金額がわからず苦労したものです。

今はエンジンを分解し、どの部品の交換が必要なのかわかれば「定価」が各リプロ部品販売サイトに表示されています。

そのお陰で、かなり早い段階から正確な概算金額が把握できるようになりました。  

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■状況は厳しくなる一方だが、悪い話ばかりでもない

ガソリン自動車の先行きの不安や、旧型車の市場価格の暴騰、人気車種の盗難の横行など、目をそむけたくなる話題も多い感じることもあります。

しかし、市場価格の高騰や盗難が横行するというのは、それだけ人気があり、需要も多いということでもあります。 

それはつまり、弊害はありつつも、人気があって、大金を払ってでも購入する人がいるということです。

見方を変えれば、ある程度手間や金額をかけてでも十分見合った価値があるともみなされることを意味します。

レストアやオーバーホールを敢行するオーナーが増えれば、部品の需要が増えて再販部品、アフターマーケットのリプロ部品の商品化が期待できるということもでもあります。 

さらには複数回のレストア作業を受ける個体が増えることで「症例」が蓄積され、レストアのノウハウの共有も進んでいくでしょう。

最近、自動車メディアがクラシックカーの情報を取り上げる機会が増えてきた印象を持ちます。

クラシックカーを手にすること自体のハードルは高くなりましたが、情熱のある人、多少の出費や手間に躊躇しない人にはむしろいい時代になっているのかもしれません。

[ライター・撮影/鈴木修一郎]

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