ライター愛車レポート

耐久レースで知る、エンジントラブル防止の基本はスパークプラグの交換
ライター愛車レポート 23.05.10

耐久レースで知る、エンジントラブル防止の基本はスパークプラグの交換

■寒い日のエンジントラブル。原因はプラグかぶり 少し前、冷え込んだ日のこと。 所用で早朝に出かけるべく、愛車S15のエンジンをかけようしたところ、「キュ、ガッガッガッ!」と、セルは回るものの始動しない。 大丈夫です、こういったアクシデントにはもう慣れました。 いや、慣れちゃダメだろ! 何度か始動を試みるも、症状は改善せず。 くすぶっている感じはあるので、ガソリンはエンジンまで届いている……あっ、プラグかぶりか。 あまりに久しぶりだったので忘れていましたが、これはプラグかぶりの典型的な症状。 クラッチとアクセルをベタ踏みし、一呼吸。 キーをひねって、そのまま戻さない! キュ、ガッガッガッ、ボッ! ガガッ、ボッ、ボッ。 かかれ! かかれ! キーを戻すな! ごめんよバッテリー、もってくれ! ボッ、ボボッ、ボッ、ボッ……。 かかれぇっ! ボボボッ、ドゥン! かかったぁ! アイドリングに元気はありませんが、かかってしまえばこっちのもの。 5分ほど様子をみましたが問題はなさそうなので、出発することができました。 ■プラグかぶりの対処は、強引にエンジンをかけること 今のクルマは電子制御がよくできているので、プラグかぶりを経験したことがない人も多いと思います。 プラグかぶりのプラグは、おなじみスパークプラグのこと。 プラグかぶりは、なんらかの理由でシリンダーに送られたガソリンが燃焼せず、スパークプラグの電極を濡らしてしまった状況のこと。 プラグかぶりを起こした電極(スパークプラグ)は思うように火花をちらせず、結果、エンジンはひどくかかりづらくなります。 一番、手っ取り早い対処法は先ほど私がやったように、アクセルを踏み込んだままセルを回し続けてシリンダーに空気を送り、火花がちりやすい環境を作って強引に始動させること。 エンジンがかかってしまえば電極も乾燥し、調子も戻ります。 それでも始動しないならプラグかぶりではなく、オイルかぶりやスパークプラグ自体に問題が出ているかもしれません。 スパークプラグはそう高価なものでもないので、交換しちゃうのも手です。 「一度、プラグかぶりをおこしたスパークプラグは、もう元には戻らない」という話もあります。 厳密にはそう(スパークプラグの性能が落ちる)なのかもしれませんが、四輪で街乗りが中心の場合は、そこまで気にしなくてもいいと思います。 エンジンが冷え切る寒い日は、いくぶんかプラグかぶりがおこりやすくなります。 これから旧車に乗られるならば、対処法を覚えておいても損はありません。 ■四輪ならば、スパークプラグの熱価は適正が最良 旧車を購入したらリフレッシュとして、スパークプラグは交換すべきパーツのひとつ。 ただ、どれでもいいから交換すればいいものではありません。 スパークプラグは燃焼によって受けた熱を処理する度合を示した「熱価」があります。 熱価の数値が高いほど耐熱性が高く、低いほど火花をちらしやすい特性を持っています。 適正の熱価は車種やグレードによって異なり、デンソーやNGKといった、スパークプラグを扱うメーカーの公式サイトで調べることができます。 「高回転で走行することが多いから」と、適正よりも高い熱価のスパークプラグに交換する方もいらっしゃいます。 実際、スパークプラグメーカーも、乗り方にあわせた熱価を推奨しています。個人的には、それは1万回転以上で長く走行し続ける二輪を想定しての話で、四輪ならば適正な熱価のスパークプラグが、もっともエンジンの性能を引き出すと考えています。 そんな考えに至ったのは、過去の経験から。 ■耐久レースで学んだ、普及品の性能の高さ! もう20年以上、過去の話になりますが、原付で耐久レースに出ていたことがあるんですよ。その耐久レースはレギュレーションにより「エンジンはノーマル状態であること」が義務付けられていました。 初参加の際はスパークプラグにレーシングプラグを奢り、「半日以上、高回転で走行するのだから」と、熱価も高いものを選択。 ところが実際にレースが始まると、練習走行のときよりもパワーが出ず、タイムも遅い。 排気音も元気がない。 当初は「原因はセッティングのミス」と推測し、どうすれば調子が戻るのかと、チーム全員で頭を抱えました。 あれこれと手直しするも、調子は戻らない。 「この際、全部を練習走行時に戻そう」と、スパークプラグもかぶっていたわけではないのですが、純正で使用される製品に戻します。 すると、とたんに排気音が勇ましく響きだしたじゃないですか!  実際にパワーやタイムも戻り、調子の良いまま完走することができました。 交換したスパークプラグに問題はなし。 電極に焼けすぎの兆候もありません。 耐久レースなので回転数は6000回転前後をキープ。 この回転数は、日頃から「高回転で走行する」という四輪と同程度じゃないでしょうか。 スパークプラグは普及品でも十分に性能は高く、色々と余裕のある四輪ならば、適正の熱価こそが一番、性能を引き出してくれると学んだ経験でした。 話はプラグかぶりに戻りますが、元気で適正な熱価のスパークプラグはプラグかぶりを予防し、対処の際もエンジンが始動しやすくなります。 リフレッシュの際はもちろんですが、「エンジンの調子が悪いな」と感じたら、交換してはいかがでしょう。 [画像/Adobe Stock、ライター・撮影/糸井賢一]

「限界レストアラー」による限界ガレージライフ
ライター愛車レポート 23.04.12

「限界レストアラー」による限界ガレージライフ

紆余曲折を経て、ガレージを借りることとなり、電気が開通して早1年が経ちました。 ガレージ通いも、いまやすっかり日々のルーティーンです。 最近はカブオーナー(世にいう「カブ主」)で、ウーバー専業配達員の友人も同じ敷地内でガレージを借り、仕事道具のカブのメンテナンスピットとして使っています。 ときには壁にかけてあるソケットレンチや、電気をシェアすることもあります。  ■まさしく「限界ガレージライフ」? ガレージライフといえば、例えばGQやPOPEYE、BRUTUSあたりのライフスタイル雑誌に出てくるような、古い英国車と骨董品や雑貨のインテリアのファッションセンスに満ちたガレージを思い浮かべる方がいるかもしれません。 あるいはオールドタイマーやガレージ系YouTubeに出てくるような、二柱リフトもあって、加工機や特殊工具がちょっとした町工場並みの設備を揃えた「DIYメカニックガチ勢」を期待するかもしれません。 残念ながら、筆者にそんな甲斐性はなく、物置小屋に工具や設備を無理やり詰め込んだ雰囲気のガレージです。 サイズ的にも、スバル360だからかろうじて作業スペースとしてどうにか……という状況です。 ゆえに、同じ旧車王ヒストリア執筆陣のクマダ氏の記事を見ていると、これでガレージライフを名乗るのも正直穴があったら入りたいとさえ思えてくる有様です(苦笑)。 本来はあくまで、屋根付きシャッター付の月極駐車場。 ガレージや車庫というと、車両の保管場所以外に車両のメンテナンススペースという意味合いも出てくると個人的には思っています。 しかし、筆者が借りているガレージは昔の2Lのクラウンクラスを基準に最低限保管できる間取りのようです。 2ドアクーペのようなドアの大きい車両では、片方に寄せないとドアを開けるのにも苦労します。  おそらく現在のフルサイズSUVではかなり乗り降りが大変だろう、というのも予想がつきます。 賃料が比較的安価で、ほとんどの利用者がレンタルコンテナとして使っているのも、自動車の保管場所(特に本来室内保管が必須の高級車)には小さいという事情があると思われます。 ■昔の小型車の趣味車やオートバイとなると 車庫としては小ぶりですが、筆者のような昔の360cc規格の軽自動車をレストアしたいとなると事情は変わります。 エンジンの不調で一時的にセリカLBを保管したときは、ボンネットを開けて圧縮を計ったり、ラジエターホースを外したりするにも狭くて大変でした。 しかし、スバル360程度なら工具棚や機材を車庫内に設置して、外した部品を周りに置いてもどうにか作業スペースを確保できます。  現在は足回りもすべて外して、モノコックのみの状態ですが、単管パイプと自在キャスターを組み合わせた台車の上に載せてあります。 手で押すだけで前後左右に動かせるので、タイヤが装着されている状態より、狭い場所の移動は楽かもしれません。 ちなみに、この単管パイプは自宅に簡易ガレージを作ろうとしたときのもので、どうにかここで役に立ってくれました。 ■収納は自作の棚 いくらスバル360が小さいといっても、工具類や部品、スプレー等の置き場所は限りがあります。 内見したときに即思いついたのが、波板の壁の梁を利用して棚を作ることでした。 不動産屋さんに聞くと、壁や柱への多少の穴あけはOKとのこと。 よく見ると古い鉄板ビスがそのままになっていたり、床にアンカーを打ち込んであったりします。 退去時に自費で撤去さえすればいいとのことで、寛容な大家さんには本当に感謝です。 ちなみに、壁にかかっている流木らしき物体は、なぜかこのガレージの屋根の上に載っていた状態で、これは電気工事の際に見つけたものです。 エアガンは職場の引っ越しの際に出てきた、社長が昔遊んでいたというつづみ玉型のボルトアクションの空気銃、今ではガレージのオブジェになっています。 ■極力、もらいものや廃品を再利用 棚は新品の木材を使いましたが、配電盤は廃業したパチンコ店から出た中古、照明器具は職場の移転で出た廃棄品の再利用です。 中の工具や機材は20年間かかって集めたものです。 ボール盤は元土木関係のお隣さんからもらったもの、コンプレッサーは昔の職場の自転車屋でエア漏れを起こしたコンプレッサーを譲り受け、自力でエア漏れを直したものです。 一方で、溶接機はネットで買った格安のノンガス半自動溶接機。 仕上がりはそれなりですが、DIYで腐食部分の切り継ぎをする分にはどうにか使えるという感じです。 ■自分のガレージでDIYで弄ればリーズナブルになんて思われがち 専門業者に出せば最低でも数百万円といわれているレストア費用も、確かに自分でやれば部品代、油脂類代、塗料代だけで済みます。 全部自分でやれば数十万円でフルレストアできるのでは?と思ってしまいますが、なかなかそうはいきません。 筆者もここまで工具類を揃えるのに20年以上かかりました。 整備マニュアルと首っ引きでエンジンやサスペンションを自力で脱着して分解、組立ができるようになるまでに10年、そろそろ鈑金も自分でやってみるかと思い始めるまで15年かかりました。 自分でやってみて(仕事でもするようになって)、改めてレストア費用には工賃はもちろん、ノウハウの蓄積や、想定外の損傷に対応するための労力など、相応の意味があるのだなと思い知らされます。 筆者のスバル360は完全に個人の趣味なので、あえて仕事で請けるようなレストア作業なら絶対にやらないような(採算が合わないであろう)やり方とペースでのんびり作業しています。 クルマを実用品として考えている人は、安くクルマを買ってDIYで整備すれば安上りだと考えてはなりません。 やっぱりクルマの値段や整備の工賃には意味があり、それなりの金額を出して買ったクルマを信頼できる整備工場に出すのが費用対効果では安くつきます。 何かしら得るものがあるという意味で苦労は買ってでもしろという言葉があります。 しかし、何も得るものがなくても苦労したことの達成感に価値を見出せる人ではないとガレージライフは向いてないかもしれません。 [ライター・撮影/鈴木修一郎]

「これでいい...ではなく、これがいい!」2代目ダイハツ・タントを格安で飼う
ライター愛車レポート 23.04.06

「これでいい...ではなく、これがいい!」2代目ダイハツ・タントを格安で飼う

うまい・やすい・はやい。 筆者はこの言葉が嫌いではない。 デフレ文化がはびこる日本において、賛否両論があるワードであろうが、人間として生きるべく難易度低めに手に入れることができて、快適に物事を扱うことができるならばそれは人類の英知の賜物であろう。 クルマは人間を補助してくれるパートナーでもあり、めちゃくちゃに甘やかしてくれる存在でもある(やたらスパルタなクルマもいたりするが...)。 雨風を凌いで目的地まで安全に走ることができ、夏の暑い日に大量のペットボトルを買い込んで坂道を文句を言わずに登ってくれる。 旧車王ヒストリアというメディアで執筆するには、いささか趣味性に欠ける観点かもしれないが、日々の暮らしを豊かに彩ってくれる相棒はやはり自分のカーライフにおいて外せないものだ。 ここに「うまい・やすい・はやい」を意識し始めると、どんな感じになるだろうか。 ■これでいい...ではなく、これがいい! この9年で16台のクルマを購入し、そのすべてに愛情を注いできたつもりだ。 そのなかでも「これは好きだ!」と明確に思わざるを得ない存在がある。 それが自分にとってはダイハツの軽自動車であり、そのなかでも「タント」というトールワゴンに妙に惹かれてしまっている。 タントは初代モデルが2003年のデビューだ。 以前の記事にも執筆したが、トールタイプの軽ワゴンの風雲児であり優れた積載性や居住性は後続の軽自動車、ならびに日本のファミリーワゴンに大きな影響をもたらしたであろうことはさまざまなクルマの内装レイアウトを見ても明白だ。 室内長は2160mm、室内高は1355mmと、ベビーカーや自転車をそのまま載せられてしまう大きさなのだ。 日本のカントリーサイドへと足を運ぶと、山間部や公共交通機関が手を伸ばせない地域でもタントをはじめとするハイトワゴンの活躍ぶりを頻繁に見かける。 狭い道へと人と荷物をグングンと進むことができ、いわば社会インフラになりかけているといっても過言ではないように思える。 親子に“ぴったんと”という初代のキャッチフレーズが懐かしいが、日本に“ぴったんと”したクルマだ。 常々その存在には惹かれるものがあったのだが、実際に所有するとやはりその使いやすさに舌を巻くことになったのだ。 それまで所有していたアウディA4アバントを手離し、初代タントを購入したのは2022年の6月。 そこから約半年ほど所有して日常や業務で使用しつつ、下道で北海道1.5周と日本海側の東北地方を下道だけで移動したりした。 これまで所有したなかで自身の身体にもっともあったシートはシトロエン・C4のシートであったが、次点で初代タントがノミネートする。 その証拠は、毎日400km超を車中泊しながら3週間移動した実績に起因するものだが、実際に乗ってあまり緊張せず疲れない作りであると感じたのだ。 だから自分にとってタントはまず「実に“うまい”」クルマであるのだ。 まぐれだろうか、と思い他にも同年代で別ブランドの軽自動車を2台購入してみたのだが、残念ながらシートが身体に合わず今回改めて2代目のタント(L375)を購入する運びとなった。 ■うまい・やすい・はやい。三拍子揃った2代目タント 新たに自分のもとにやってきたのが2代目のタント(L375)だ。 見た目こそ初代からのキープコンセプトだが、その進化幅は小さくない。 車台はダイハツのAプラットフォームを採用。 エンジンは低速トルクにKF-VEエンジンを採用したことで初代と比べても出足が良い。 もちろんこの型だけ乗れば“古い軽自動車”の印象は拭えないかもしれないが、初代と比べれば「あれ?マイルドターボでもついたかな?」くらいにはトルクを感じるものだ。 CVTの相性は悪くなく、ストップアンドゴーが多い道での乗り味は喜びが大きい。 街中でリッター当たり15キロ以上は走るので、非常に経済的なこともメリットだ。 足回りは初代のタイヤ4本がどこにあるかを掴みやすい印象から、しなやかに動く足元といった感じに印象がシートの座面とも相まってグッとアップグレードされている。 ステアリングは一時期のコンパクトカーのようにものすごく軽いというわけではなく、不安定な雰囲気は感じさせない。 もちろん背が高い車体なので大きくロールはするが、予測を立てて安全な速度域で走るぶんには問題が無い。 内装に目を向けてみる。大きなセンターメーターが特徴的なタント。 ワイドに拡がるシンメトリーなインパネの造形と、大きなガラスエリアが軽自動車とは思えない解放感を感じさせる。 昔、ホンダのモビリオが登場した際、ユーロトラムをモチーフとしたデザインコンセプトだったが、同じくトラムのように大きくとった視界は当たり前のように景色が沢山見え、ドライブがそれだけでも豊かだと思える。 シフトレバーはインパネシフト。直観的に力を入れられるIパターンなので、夜間の駐車場での操作も非常にスムーズだ。 また、シフトレバーと同様にコンパクトにまとめられたオーディオやエアコンの操作類のお陰で初代タントよりもありとあらゆる隙間に収納スペースが増加。 花粉が舞う時期にお世話になる箱ティッシュや携帯電話のホルダーや充電器、折り畳み傘やマスクなどごっそり隠しておけるので、本来のデザインを邪魔しないことも収納力が高いハイトワゴン車がもつ高い性能の一つだと思っている。 内装のトリムに関していえば、初代の方がトリムの内張りにクロスなども多かったのだが、90°開くことができるファミリーカーのドア...ということを実用目線で考えると拭きとりやすくシンプルなドアトリムにも理由があるように思える(現行のLA650に試乗した際もそう感じた)。 シートアレンジにも一工夫あり、超ロングスライドする助手席シートはハイバッグ部分が前方へと倒れてテーブルスペースに。 キッズがいる家族には重宝する機能であろうが、パック寿司やピザを車内で楽しみたい独身男性にも素晴らしい。 また、フラットになるシートとピラーレスのドアはあまりにも相性がいい。もちろん積載のしやすさもいうことが無いが、ドアを解放しての昼寝は格別だ。 デイキャンプ道具なしでも居心地の良い空間が作れる。 こんな雰囲気をどこかで見たことがある。 きっとそれはかつての東京モーターショーのダイハツブースで味わった感覚に近い。 街中で大量に見るタントも、実はコンセプトカーで描いた未来の姿そのものなんじゃないだろうか。 ここまでエンジン特性と、インテリアの使い方について述べた。 エンジンの特性も、まさに“はやい”になるのだが、使いやすくて動作がスムーズ。 これもまた”はやくてうまい”部分といえるのではないだろうか。 ■このお値段で味わえる至福のカーライフ 購入時、走行距離は79000キロだった。 手元に来たときは内装の汚れが酷く、おそらくコンビニのカップコーヒーを盛大にこぼしたであろう凄惨な汚れがシートにまき散らされていた。 筆者はクルマを購入後、まず洗車をしながらよく観察する。 もちろん買ったばかりの愛車が嬉しい!という気持ちもあるのだが、傷などのダメージやモール類の劣化具合など自分でどのくらい修復が可能かを眺める。 内装に関しても同様だ。 今回は掃除機をかけつつ、カーペットリンサーで座席のクリーニングも施した。 清掃を行っているとスライドドアやシートレールの隙間からは夥しい砂埃が出てきてなんとなく砂利駐車場に停めていたのかな?と想像出できる。 樹脂類はアーマーオールとシリコンルブを使って磨き、ガラスの内拭きは薬局で買える100円の純水でふきあげると奇麗に仕上がるので筆者的に重宝している。 数時間かけて洗車を行うと、買った当初は汚かった車内も、それなりに気持ちよく過ごせる車内となった。 なにより、奇麗になると新車当時とまでは言わないまでも、クルマ本来のデザインやコンセプトが掴みやすくなる気もする。 エクステリアのデザインは直線基調で細部のデザイン以外は水平基調だった初代に比べ、ドア断面などに豊かな立体が追加され始めクルマとしての軽快さが追加されている。 左側のリアのドアは電動スライド、右後ろはヒンジと、変則的な構造である。 個人的には運転席を降りてサッと開けるこの方式は理想的なのだが、子供たちとコミュニケーションをとるママさんドライバーの為には、運転席で開閉リクエストをしてドア開閉の力を要せずに開くことができる電動スライドドアの方が好まれるかもしれない。タントも3代目以降はそういった方式をとっている。 また、外装を眺めてハッキリと異なるのはリアのクオーターウインドウの形状だ。 初代はスクエアな形状で見切りよく作られていたが、2代目は丸くとられて車内から感じる光も柔らかく感じる。 筆者は激安の軽自動車を足にするようになってから都心と郊外をクルマ移動する機会がグンと増えた。 それまで、首都高に乗りボンヤリと防音壁の向こうに延々と続いていくビル群や住宅の屋根を見ながら走っていた。 最近では殆ど首都高に乗らず、少し家を早く出て下道で行き来するようになった。 断捨離だとか、豊かすぎる生活をあえて手離したつもりは無い。自分にとって軽自動車のスピード感で移動することの心地よさがすっかりフィットしてしまったのだ。 それどころか、裏道へとスイスイ入れて荷物も沢山入る。 燃費に関してはA4アバントの倍だ。 ちなみに車体価格は車検が半年ついて12.9万円。 ナンバープレートなどの諸費用やオイル交換を含めても14万円でおつりがくる。 iPhone14proやロードバイクより安いこのクルマを“やすい”と言わずしてなんという。 実は欲しい軽自動車はまだ沢山あり、どんなクルマで何をしてみようという妄想は膨らむばかりだ。 このタントならば車中泊もしてみたいし、カメラ機材を積んで長距離の旅行にも出かけてみたい。 そう考えさせてくれる余裕が生まれたのも、キャパシティ的にも経済的にも懐の広い低年式軽自動車のお陰ではなかろうか。 “趣味車”と一括りにしてもさまざまな切り口があるが、ここで“うまい・はやい・やすい”を軸にしたクルマ選びから大きな喜びを得てみるのはいかがだろうか? そのうち「これでいい...」ではなく「これがいい!」に想いがどんどん膨らんでしまうかもしれない。 [ライター・撮影/TUNA]      

縁の下の力持ち「エンジンマウント交換」の重要性とは?
ライター愛車レポート 23.04.03

縁の下の力持ち「エンジンマウント交換」の重要性とは?

読者の皆様は「エンジンマウント」という部品をご存知だろうか? クルマのメンテナンスが好きな方は、なんとなく想像できると思う。 今回、意外と注目されていない部品「エンジンマウント」に注目をしてみたいと思う。 ■エンジンマウントってなに? 「エンジンマウント」とは、エンジンを“車体上に乗せる=マウント”するための部品である。 最近、巷で話題の“マウント”という言葉の意味は、確かに合っている(笑)。 エンジンやミッションは、マウントを介してクルマに固定されている。 部品自体は、ゴムなどのブッシュが内蔵された金属や強化樹脂製のブラケットになる。 取り付け時は、ブラケットが車体側・ブッシュがエンジン側になる。 ブッシュによってエンジンの振動が吸収され、車体側に伝わらない仕組みになっている。 トランスミッションにも同様のマウントが存在し「ミッションマウント」といわれている。 今回「エンジンマウント」と銘打っているが、ミッションマウントも同様と考えていただければと思う。 ■エンジンマウントがダメになったらどうなる? 交換歴がない旧車(20年以上経過)の多くは、すでにくたびれた状態になっている可能性が高いと思われる。 というのも、エンジンマウントは重量物であるエンジンを支えている部品であり、常に重さが加わり続けている状態である。 そのため、走行距離だけでなく、経過年数により劣化して、その免振機能が低下してしまう。 エンジンマウントが劣化したことに気が付くきっかけの多くは「振動」になる。 劣化によりブッシュが硬化してしまい、今まで吸収されていた振動が伝わることになる。 また、長年エンジンやミッションの重さを支えていたことから、ブッシュがつぶれてしまい、位置が下方向に落ちてしまうことがある。 そのため、エンジンやミッションの搭載位置にズレが生じてしまう。 ズレによって、他の部品へ負担がかかることや、スムーズなシフト操作を妨げることにも繋がる。 ■マウント交換は快適性UPに効果テキメン! 筆者の愛車で、劣化に気が付いたきっかけを紹介したいと思う。 1つ目は、AT車でリバースにシフトした際、振動が発生した。 アイドリングや走行をしていても問題となる症状はなかった。 しかし、車庫入れ等でリバースに入れた際、驚くほどの振動が車体を揺らしたのだった。 後退時、エンジンとミッションが普段と逆の方向に捩じれる動きとなる。 劣化したマウントの収まりが悪くなり、振動が発生していた。 交換する際、外した部品の見た目に大きな劣化は見られなかった。 しかし、新旧の部品を並べたところ、古い部品のブッシュ側の固定点位置が下がっていることがわかった。 事実、マウント交換後はエンジン位置が今までよりも高い位置になったのだ! それだけ、マウントは劣化して搭載位置が下がってしまっていたのだった。 2つ目は、MT車でクラッチを繋ぐ際、ジャダーのような振動が発生した。 この振動の原因は、ミッション側のマウントの破断が主な原因であった。 交換時、取り外したマウントは劣化して切れた状態となっていた。 車両は、走行距離10万kmの2001年式 三菱 トッポBJである。 同じく10万km目前の2000年式ダイハツ ミラでも、ミッション側のマウントが破断していた経験がある。 両車ともにMTであり、ミッションマウントへの負荷が大きいのかもしれない。 助手席側のタイヤハウス内、アクセスしやすい場所にあるマウントである。 もし、読者の方で同様の気になる振動がある方は、確認されてみてはいかがだろうか。 ■強化品という選択肢も! エンジンマウントには、強化品も存在している。 封入されたブッシュが標準よりも硬いものと思っていただければ、イメージしやすいと思う。 強化品がラインナップされている目的としては、モータースポーツ用途のためである。 TRDやNISMOといった自動車メーカー系ブランドからもリリースされている。 加減速時、エンジンやミッションは大きく揺れや傾き・捩じれといった動きをする。 街中を普通に走る分には、気にならない程度の動きである。 スポーツ走行をする場合、高負荷がかかり動きも大きくなるが、可能な限り小さくしたい。 強化マウントは、それらを抑える役割を担っており、アクセルレスポンスやシフトフィーリングが向上する。 調べたところ、すでに旧車の域に入っている人気スポーツカーにも設定されている。 車種によっては、純正部品が製造廃止になっていることも、おおいにあり得る。 その場合、強化マウントを流用するといった対応策も選択肢の一つとして可能となる。 強化マウントではあっても、劣化した本来の性能が出せていない標準のマウントと比較して、快適性や操舵性能が良くなることは間違いない。 そしてほんの少し、スポーティになる副産物がついても来るのだ(笑)。 ■まとめ:エンジンマウントは縁の下の力持ち! エンジンマウントは、快適な車内空間を保つ、縁の下の力持ちなのである。 常に支え続けていることで、距離は走っていなくとも劣化してしまう。 気になる振動が出ている場合、マウントの劣化を疑って、早めの交換をオススメしたい。 快適性向上だけでなく、他部品への負担軽減にも繋がり、より長く愛車との時間を過ごせることに繋がるだろう。 [ライター・撮影/お杉]

最新モデルを運転したら、愛車S15シルビアへの愛情がより深まった話
ライター愛車レポート 23.03.31

最新モデルを運転したら、愛車S15シルビアへの愛情がより深まった話

■S15が恋しくなった原因はGR86? 少し前にGR86をお借りし、丸一日、乗り回してきました。 軽量、高性能、低重心を追求したというGR86。 旧モデルの発展型というより、NDロードスターをクローズドボディ&4座にしたような、カッチリとした乗り心地。 本当によくできていて、高速走行時はもちろん、ゆっくり走っていても楽しい。 久しぶりに「ずっと走っていたいな」と思った一台です。 ■筆者が望むクルマに望む条件 ・MT・後輪駆動・車重が1,3t以下・4座・メーターがアナログ GR86はメーターこそ液晶ですが、それ以外はクリアしています。 今のご時世に、本当にありがたいクルマです。 「これは買い替えの最有力候補か?」 なんて、ひとりごとをつぶやきながら運転していたのですが、帰りの道でどうにも寂しい。 乗り出したときはあんなに気分が高揚していたのに、今はS15が恋しくてしょうがない。 GR86とS15とは設計に20年以上の差があります。 走行性能に快適性能と、すべての要素で一回りも二回りも違い、GR86が劣っているところなんて、ただのひとつもないでしょう。 それなのに、なんでS15が恋しくなるのか? 帰宅してから数日間、ずっとその理由を考え続け、自分なりに納得のできる答えにたどり着きました。 ■寂しさの正体は右足に伝わる情報の違いか? 決してGR86を否定するつもりはないのですが、乗った直後からアクセルの軽さが気になっていました。 踏み込む量ではなく、踏む力に対して加速が鋭すぎる、あるいはレスポンスが良すぎる、といえば伝わるでしょうか。 慣れの問題と思い、実際、すぐに思った通りの加減速ができるようになったのですが、最後までその軽さを気持ちよく感じることはありませんでした。 アクセルに関して、GR86とS15(NA)は機構が別物。 S15(NA)はアクセルペダルからエンジン(スロットルバルブ)まで、物理的に繋がる機械式スロットル。 対してGR86はアクセルを踏んだ量をセンサーで計測し、エンジンで再現される電子制御式スロットル。 思えば電子制御式スロットルのクルマを、(たまに乗ることがあっても)所有したことがありません。 競技車両では機械式スロットルと電子制御式スロットルの優位性が比較されたりしますが、そういった次元の話ではありません。 踏力を押し返すリターンスプリングの感触とかワイヤーの重みとか、右足に伝わるアナログな情報をいつも感じていた。 それがGR86では感じられず、寂しかったんだと思います。 いや、自分でも重箱の隅を突く、難癖のようなことをいってると分かってるんですよ。 でも思いの外、機械式スロットルは私にとって身体に染みこんだ、大切なクルマとの対話装備だったようです。 ■手に入れて23年。改めて愛車の魅力に気づく 購入から23年を経て、あらためてS15(NA)の魅力を見つけることができるなんて、クルマって奥が深ぇなぁ。 電子制御式スロットルを採用することで部品点数を少なくでき、必要なスペースも小さくてすむ。 ATとの相性が良く、踏み間違いの抑制といった安全装備には必須な機能ため、現在の主流になっているそう。 そう遠くない将来、機械式スロットルを採用したクルマは姿を消してしまうのでしょうね。 自分が望むクルマの条件に「機械式スロットル」が入り、ますます選べる幅が狭くなりました。 機会をみて、運転中に機械式スロットルがどう動き、どんな反応が右足に伝わるのかを勉強しておきます。 きっとアクセルを操作するたびに頭の中で作動イメージが再現され、より運転が楽しくなることでしょう! [ライター・撮影/糸井賢一]

常に一難去ってまた一難?愛車スバル360のDIYレストアについて
ライター愛車レポート 23.03.28

常に一難去ってまた一難?愛車スバル360のDIYレストアについて

一昨年、自宅から「車庫証明が取れなくもない程度」に離れた場所にガレージを借りて、スバル360のDIYレストアを再開したのは、以前、記事に書いた通りです。 そこで、ふとスバル360のレストアっていつから始めたんだっけ?と思い返してみると・・・。 セリカLBがレストアから戻ってくるタイミングと入れかえだったので、2016年末、気が付くと6年も経っていました。 そう考えると、フルレストアをしたばかりだと思っていたセリカLBも、レストアから6年経過していたことになります。 フルレストアしたことで、これまで見落としていた不具合が洗い出されるように発生してはその対処に追われていたので、あっという間でした。 このあたりの話も、いつか触れることができたらと思っています。 ■ボディは想像以上に腐食していた 当初は各部の浮いてきた錆をサンダーで削り落として、錆止め剤を塗布してサフェーサーを吹けばと思っていたのですが・・・。 フロントフェンダーやフロントエプロンを外すと、左のフロントサブフレームがこの有様。 腐食というより、溶けてなくなっているという状態です。 察しの良い方の中にはシャシーブラックがマスキングしたかのように途切れており、違和感を感じる方もいるかもしれません。 実はこのシャシーブラックの途切れている部分には、FRPが貼ってありました。 そのFRPも加水分解をおこし、もはや部材としての用を成してない状態です。 今でも、腐食部分の補修にFRPを紹介する事例も散見します。 FRPは錆びないことをメリットに挙げる例もありますが、10年~20年スパンで見ると加水分解で腐食と同じ結果です。 それどころか、加水分解でボロボロになった箇所や、はみ出たグラスマットが水を含んでしまい、錆を進行させる原因にもなります。 個人的にはFRPでの補修は好ましくないと考えています。 なにより、この状態で何年も走行し、ときには高速道路も走っていたと思うとゾッとする話です。 昔からスバル360はバッテリートレーの部分がバッテリーの液漏れで腐食しやすいことが知られています。 しかし、近年はさらにバッテリートレーだけでなく真下のサブフレームにも腐食が進行する個体も見受けられます。 心当たりのあるスバル360のオーナーは一度確認し、状態によってはレストアを考えた方がいいかもしれません。 ■厚盛りパテの洗礼 あちこちパテが割れていて覚悟はしていたものの、試しに右フロントフェンダーにグラインダーをあててみたところ、ミリ単位どころかセンチメートル単位でパテが盛ってあったのです。 自分のセリカをレストアした整備工場の社長は「鈑金は基本ハンマリングで成形、パテはハンマーの打痕の傷消しに使うだけ」という「パテを使わない鈑金」をする人です。 とはいっても付け焼刃で真似できる物でもなく、せめて数ミリ単位に抑える方向で頑張っています。 しかし、パテを剝がしていくと、過去に事故でひしゃげたフェンダーを鈑金修理したものということが判明します。 事故による全体のゆがみが酷くヘッドライトベゼルとフェンダーの曲面がまったく合いません。 ホイールアーチのアールもくるっていて、このフェンダーの再生は断念。 結局、ひずみのないフェンダーを探すのに1年ほどかかりました。 ■ボディの腐食の進行は思いのほか重症だった 元々、閉まりの悪い右ドアは諦めて(今までと比べれば)状態のいい中古ドアに交換します。 このあたりから、モノコックだけの状態にしてから腐食部分をすべて直さないとだめだと思うようになり、エンジンミッション・サスペンション・ステアリング・電装系ハーネス、すべて取り外すことにしました。 錆びた部品はサンドブラストで処理できれば一番いいのですが、錆取り剤に漬けおきでもかなり効果があります。 そこで、一晩漬けてワイヤブラシでこすれば、おもしろいように錆が取れました。 錆取りといえば、サンポールやクエン酸も有名ですが、母材への影響や安全性もメーカーが確認している専用の錆取り剤を使うようにしています。 もちろん、このあとは錆止め剤を塗布してシャシーブラックで塗装したのですが、結局最近になって、より強固な二液ウレタン塗料で塗りなおそうかと思っています。 下地を塗装し、塗料店を通じて塗料メーカーに純正カラーコードで調合してもらった二液ウレタン塗料まで用意したところで、どうやって塗装するかという難題にぶつかります。 ソリッド色ならパネル1枚1枚を塗装して研いで修正ということもできます。 しかし、このクルマはシャンパンゴールドのメタリック塗装。 クリアコートまで一発勝負ということにここにきてようやく気づいたのでした。 ゴールド+クリアの2コートを一気に仕上げるには簡易的な塗装ブースでもいいのですが、建屋内で作業する必要が出てきてしまいました。 その後、「ガレージを借りる」という大技にたどりつくまでに3年ほど要することになるのです。 [ライター・撮影/鈴木修一郎]

マイカー紹介 〜910型ブルーバードバンの巻〜
ライター愛車レポート 23.03.24

マイカー紹介 〜910型ブルーバードバンの巻〜

1983年型だから、タクシー仕様を除くとシリーズ最終モデルとなった910型ブルーバード。 ボクのはバンなので、丸目4灯が特徴。ブルーバードシリーズ最後のFR車である。 FRの小型4ドア車を買うはずが何故かブルバン ■毎度のことだけど、購入候補にないクルマを買っちゃった それは2020年夏のことだった。 この10年ほど、常時数台の公道走行可能なクルマと暮らしているのだが、その当時は、フェアレディSRL311・ポルシェ964・サニークーペ・ミニ1300i・初代フィットという非常にバランスに優れたラインアップ。 充実したカーライフをエンジョイしていたのだ。 でもね、ラインアップが完成形となると、何故か崩したくなってくるのがへそ曲りの性。 そこで、4ドアであること、マニュアルミッション車であること、フィットと同等程度までのボディサイズであることを条件に、売り物情報との睨めっこを始めたわけだ。 具体的なターゲットとしてイメージしたのは、国産車では、R411型ブルーバード・B110型サニー・RT100系コロナ・TA40系カリーナなど。 輸入車では、ADO16系各モデル・シトロエン2CV・ルノー4あたりだ。 そんなとき、クルマ屋を経営している友人から、210型サニーバンの情報が入ってきた。 210型は他のサニーより安いし、素材としては悪くない。 そこで、早速問い合わせてもらったのだが、情報を得た時点で商談中だったようで、現車を見ることもなく破談となった。 もともと興味の対象ではなかったからどうってことはない。 ただし、ボクには悪いクセがあって、縁がなかったクルマと似たタイプのクルマまで見るようになってしまい、約1ヶ月後、910型ブルーバードバンを発見してしまったわけ。 見つけた後は迷う間もなくトントン拍子。 イメージしたクルマより随分とデカイし、素の状態ではカッコイイとはいえないけど、まぁなんとかなるでしょう、ってな感じだった。 ■実物を見てのファーストインプレッション&作業開始 荷物の運搬にも使われた商用車だけど、ガンガン使った感はない。 一番気になる荷室も、想像以上に傷みが少ないし、リアゲートのダンパーも生きている。 運転席シートの座面右側が破れていたけど、新車登録から37年間で実走行約8万4000キロと走行距離も少なく、意外と程度は良さそうだ。 ボディカラーはシルバーメタリックで、左右の前ドアに看板を消した跡があるが、そもそも全塗装前提だったので問題なしだ。 色は、スズキ・ジムニーの純正色「ミディアムグレー」を選択した。 ということで、約10センチ車高を落とし、ボディはマスキングによる全塗装、ウインドウには濃いブラックでフィルム貼りを依頼。 ホイールは、以前街乗りのフェアレディSRLで使っていたロナール製の鉄風アルミを夏タイヤ用に、レース車両で使っていたスピードスター製RSワタナベタイプの3ピースアルミをスタッドレス用に決定した。 また、ステアリングはナルディのウッド。 後は、すべてのオイルの交換とラジエター内&ガソリンタンク内の洗浄という作業を依頼。 マイカー仕様のブルバン・プロジェクトのスタートだ。 ■自分で買った誕生日&クリスマスプレゼント プロジェクトスタートから約2ヶ月後、完成の連絡を受け、2020年12月22日に引き取りに行った。 ジャジャ~ン!! である。 ジムニーのミディアムグレーとなったボディカラーは、フロントと前席左右以外のウインドウをブラックフィルム貼り仕上げとしたことで、ビシッと締まった感じ。 ローダウンの効果もあって、フツーのライトバンだった910ブルバンを、クールなチョイ悪スタイルに変身させることに成功した。 まぁ、ドアを開けると顔をだすピラーの内側やステップ付近などは元色のまま、という仕上げには不満があるものの、パッと見は充分にカッコイイ。 最初はフェアレディのレース車両用として購入し、後に310サニーのセダンでも使ったRSワタナベタイプのスピードスター製ホイールも似合っている。 インテリアは、ステアリングをナルディのウッドに替えただけだからごくフツー。 タコメーターもなく、ヒールアンドトゥなんてまったく考えていないペダル配置も笑えてくる。 エンジンはZ16型だが、乗用車用のツインプラグとは異なり、フツーのシングルプラグ。 これは、当時の乗用車に厳しく商用車には緩い排出ガス規制により、商用エンジンは希薄燃焼化しなくても規制値におさまるのでツインプラグの必要性がなかったから。 ツインプラグのZ型エンジンは酷評されていたが、商用エンジンの仕様ならマシなはずだ。 っつうことで、ほぼ誕生日に手に入れてプロジェクトをスタートした910バンは、クリスマスイブの2日前に完成。 予算は大幅にオーバーしてしまったが、自分で買った誕生日兼クリスマスプレゼントとなったのだ。 ▲ボディカラーは現行ジムニー用のミディアムグレー かなり濃いブラックフィルムの効果もあって引き締まったスタイルに見える。 ■アッという間に工場へ!? 納車時の走行距離は8万4542km。 非力だし遅いけど、運転していて意外と楽しい。 こういうクルマに美点を見出せる年齢になったんだなぁ、とか、ボクも大人に近づいてきたのさ。 なんて思い、ニヤけながらのドライブだ。 ところが12月30日。 ワインディングをそれなりに攻めていたら、しばしば燃料供給不良の症状が!!  で、いつものコンビニまで辿り着いて工場に電話。 指示に従って対処してみたけど、結局JAFのお世話になり、自宅前まで運んでもらった。 翌日引き取りにきてもらい、一緒に工場へ。 原因はキャブレターで、オーバーホールが必要とのこと。 困ったなぁ、なんて考えていたそのとき、「どうせオーバーホールするならツインキャブ化しちゃいなさい!!」という声が聞こえたような……。 それが神様の声なのか悪魔の囁きなのかは不明だが、ボクはその声に従うことにしたのだ。 ■ウェーバーツインの吸気音が快感!! エンジンはノーマルのままなので、ツイン化するといっても口径は小さめにしたい。 そこで選んだのが、現在入手しやすいキャブレター中、最も小口径である40φのウェーバーだ。 マニホールドはL型用と共通のようで、部品の手配に苦労はなかった。 ついでにタコメーターの装着も依頼した。 作業が完了して取りに行ったのが1月16日。 停止時に頻発していたエンジンストールも解消したし、なによりもツインウェーバーが奏でる吸気サウンドが心地よい。 パワーはないけど、その気にさせるサウンドに陶酔するボク。 絶対的な走行性能も大切ではあるけど、吸気音や排気音などのサウンドもファン・トゥ・ドライブには欠かせない要素なのだ。 ▲キャブレターを2連装のウェーバー40に変更 Z型エンジンはクロスフローに進化しているので、夏場のパーコレーション発生も少ないはずだ。 エンジンチューンはしていないのでパワーはないが、ミュージックといえる官能的な吸気音は格別だ。 ■高速移動中に初体験のトラブル発生!! キャブレターの問題も解決し、ウェーバーサウンドを楽しめるツアラーとして存在感を高めていった910バン。 1月の岡山国際サーキット遠征のパートナーとして連れ出し、仲間達に披露。 そして、翌月の東京出張にも連れ出した。 パワーはないけどサウンドは快適。 深夜の高速道路を80〜100km/hの速度でユッタリと流す。 ブルバンは4速ミッションでオーバードライブが付いていないから、タコメーターの針は、だいたい3000~3500回転を示している。 新東名に入り、静岡SAに近づいた頃、突然落下物でも拾ったような音に続いてガラガラ音が!! 慎重にスローダウンし、SAに入る。 それまで中央の位置でピタッと止まっていた水温計が急に動き出した。 近い駐車スペースに停める頃には、不凍液が焼ける匂いとともにボンネット付近から白煙。 オーバーヒートの症状だ。 とにかく冷ましてからじゃないと何もできない。 仲間に連絡したいけど時間は午前2時過ぎだし、電話のバッテリーも残量がヤバイ。 とりあえずスタンドに行って充電器を借り、電話を充電しながらiPadを開き、SNSでピンチに立たされている現状を発信した。 すると、それに気がついた大阪の仲間が、代車を積んでヘルプにきてくれるという。 長いことクルマと付き合っているけど、この事象は初体験だ。 ヘルプの到着を待っている間、ボクは、最悪エンジンのオーバーホールまで必要になるかもしれないと危惧していた。 そのとき頭をよぎったのは、すでに大幅に予算オーバーしていたにもかかわらず、エンジンのチューンアップとか、積み替えのこと。 どうせ積み替えるなら、日産製エンジンに拘らず、ケントユニットとかアメリカンV8なんてのもアリかな、なんてね。 まったくもってノーテンキなのだ。 ▲ナルディのウッドステアリングは現在デカレディに転用している ステアリングコラムカバーに貼り付けたタコメーターは、明るくて見やすく気に入っていた。 ■長く付き合う予感はあったけど・・・ イロイロなことがあったけど、ウェーバーツイン装着以来、かなりボクのイロが濃厚になってきた910バン。 TSM(高雄サンデーミーティング)では特別賞をいただいたし、ほとんど効果はなかったけど、台湾製の汎用クーラーを入れて快適性向上チャレンジもしてみた。 イメージとしては長く付き合う感じだったけど、ヒョンなことから立ち上がった「車種未発表の極秘プロジェクト」によって、運命は大きく変わってしまった。 前回の愛車紹介に登場したサニークーペとともに下取りに出すことになったのだ。 1回目の車検を終えてすぐの2021年12月のことである。 プロジェクト完了時に渡すので、残された時間を積極的にともに過ごし、たくさんの想い出を作るつもりだった。 本来なら現在も手元にあり、計画中の北陸から始まる東北一周ドライブも910バンで行くはずだった。 でもね、昨年8月、突如やってきた「デカレディ」ことGS130型フェアレディの購入資金捻出のため、プロジェクト完成後に下取りに出すはずだったサニーとブルバンを先に差し出すことに……。 ブルバンとの想い出は、トラブルが中心の波乱万丈スタイルになってしまったけど、ボクの趣味人ライフに大きな足跡を残してくれたことは事実。 特に、パワー不足で遅いクルマだから、速度違反を気にすることなく、ウェーバーの奏でる吸気音を楽しめた安心感は格別だった。 お金をかけてしまったし、それなりに気に入っていたブルバンだが、デカレディ出現により、別れの時期が早まってしまった。 なお、奥にあるムーブは、フィットを手放した後に入手したもので、当時のボクにとって唯一の快適エアコン号だった。 [撮影&ライター/島田和也]

DIY派旧車オーナーにとってあるある?な失敗談とは
ライター愛車レポート 23.03.20

DIY派旧車オーナーにとってあるある?な失敗談とは

「昔のクルマに乗る」 ある程度クルマを趣味の対象にしている人であれば、なんのリスクも伴わずに済むと考えている人はほぼいないものと考えます。 「旧車・クラシックカーに乗る」と決めている人のなかには、免許取得年齢になる前から、ありとあらゆる方法で情報収集を始める人も多いと聞きます。 なかにはSNSやイベントで実際のオーナーと交流して早くもお目当ての車両のレクチャーを受けたり、スペシャルショップと懇意になるという話も……。 。 さらに、免許取得年齢になる頃には、このクルマのオーナーになってほしいというオファーを受けるという話も聞きます。 とはいえ、いくら事前に情報収集しても実際に現車を前にすると、文章で読んだり話に聞いていた情報だけでは対処しきれず、思わぬ失敗をしたという人も多いのではないでしょうか。 今回は筆者が実際に経験した失敗についてお送りしたいと思います。 ■注油してはいけない場所に大量のCRC 現在所有しているスバル360の前に、レストアを断念して部品取りに回したレストアベースのス同車を所有していました。 何年も不動状態で、エンジンだけでもかかるようにしようと躍起になったのですが、当時の筆者にできるのはとにかく可動部分にCRCを吹き付けることだけでした。 そのうちに、クラッチハウジングにあったサービスホールを見つけ大量のCRCを吹き付けたところ、実はそのサービスホールはクラッチカバーに刻印された点火タイミングを確認するためのものでした。 当然クラッチカバーはCRCまみれ・・・クラッチディスクはライニングがしっかり残っているにも関わらず潤滑剤がしみ込んで、立体駐車場のスロープもろくに登れないほどのクラッチの滑り具合でした。 ■オイルのグレード・量を間違える スバル360を購入して2年、ある程度は自分でできるようになった頃のことです。 スバル360の主治医から、自分でミッションオイルの交換に挑戦したらと勧められ、まずはBPのギアオイルを2L購入します。 灯油ポンプを使い注油用のドレンボルトの穴から入れたのですが、スバル360のミッションオイルは1.6L。 ミッションオイル規定値になればボルト穴からあふれてくるだろうと勝手に思い込み、気が付いたら結局2L全部使い切ってました。 それでもあふれてくる気配はなく、そのままドレンボルトを締めて乗っていました。 そして楽しみにしていたロングドライブの日、高速道路を走行中に異変を感じます。 エンジンは吹きあがっているのに加速しない。 そこでクラッチをCRCまみれにしたときのトラウマが蘇ります。 クラッチハウジングの点火時期調整用のサービスホールを見ると、オイルのぬめりが光沢を放っています。 どうにかクラッチをなだめながら帰路につき、クラッチハウジングの蓋を開けると、ハウジング内はオイルまみれでした。 規定値を超えたミッションオイルがプライマリーギアのオイルシールからあふれだし、クラッチ周りに侵入。 またもやクラッチディスクをオイルまみれにしてしまいました。 このとき、スバル360のミッションオイルの量はシビアで、オイルジョッキであらかじめ必要な量を計ってから注入することを覚えます。  セリカの購入直後、まだ当時「クラシックカー用オイル」というものがあまり流通しておらず、「鉱物油」を使うといった情報くらいしか出回っていない頃のことです。 その頃、知り合った旧車オーナーも、メーカー純正の鉱物油を入れておけばOKという認識でした。 縁あってトヨタ純正のキヤッスルオイルの鉱物油20L入りペール缶を安く購入でき、オイル交換くらいは自分でしようとしたのですが……。 その後、頻繁なオイル滲みに悩まされることになります。 いくらヘッドカバーガスケットやグロメット類を新品に交換しても、数か月から半年もするとオイル漏れに悩まされていました。 ペール缶のオイルを半分以上使った頃合いで、次のオイルをどうするかを整備工場に相談すると……。 「キヤッスルの10w-30を使っていたの?そりゃ漏れるよ」 まだ、当時はパーツクリアランスが大きい昔のクルマに、現行車向けのオイルを使うとオイル漏れや異音の原因になるという情報が今ほど共有されていませんでした。 以降は、整備工場の勧めるイタリア製の20w‐50の鉱物油を使用し、現在はその整備工場がオリジナル商品として開発したクラシックカー専用の20w-50を使用しています。 昔は20w-50をラインナップするブランドはごく限られていましたが、近年はリーズナブルな物から高級な物まで充実し、旧車には粘度の高いオイルという知識も広く共有されるようになりました。 ■互換性がないことを知らずに年式違いの部品を入手 生産期間が長いクルマは部品が入手しやすいと思われがちですが……。 たしかにあえてオリジナルに拘らず、高年式・後期型の改良型の部品を流用することで強化するというのは常套手段です。 カムやバルブ・変速ギアなど、年式・グレードによってプロフィールの違う部品をいろいろ組み合わせて純正流用によるハイカム仕様や、クロスレシオ・ファイナル変更というのは、一度は考える方も多いでしょう。 ところが、実は長い生産期間の間に細かい仕様変更が繰り返されていて、基本設計は変わらないものの補器類のレイアウトやエンジンそのものが変わっているケースは少なくありません。 なかには、外見は同じでも衝突安全基準の変更でサブフレームの形状そのものが別物といっていいくらい変更されているケースもあります。 1960年代後半からは安全基準、1970年代に入ると排ガス規制が導入され、毎年のように保安基準が目まぐるしく変わります。 そのため同じモデルでも初期型・後期型で基準の変更があった場合、形状や構造が違い初期型の部品では後期型には取付できない、取り付けることはできても保安基準に適合せず車検で不適合になるというケースがあります。 例えば筆者のセリカの場合、1975年以降の排ガス規制後のモデルはホイールベースそのものが違います。 ボンネットもフロントフェンダーはもちろん、ラジエターサポート周りの形状も違うため、フロントセクションの互換性はほとんどないといってもいいくらいです。 また1972年にはフェンダーミラーの構造を可倒式あるいは脱落式にすることが義務化されています。そのためミラー自体の形状は同じでも、ごく初期型のセリカの直付けフェンダーミラーを1972年以降の可倒式ミラーのセリカに使用することはできません。 取り付けは可能ですが、車検場の検査官は各年式と保安基準・排ガス規制の適合を熟知しています。 1972年式以降のセリカに初期型の直付けミラーを取り付けて検査ラインに持ち込むとほぼ確実に不合格になるとのことです(初期型車に可倒式ミラーは問題なし)。 スバル360では年式違いの中古エンジン(中期型)を入手した後に、中期型のクランクシャフトやクランクケースはオイル経路の形状が違うことを知るという失敗をしたことがあります。 2ストロークエンジンでさらに燃焼温度のシビアな空冷エンジンは、オイル潤滑の不備は即ブローにつながります。 他にもピストンスカートの切り欠きの形状も混合気の吸排気動作の「掃気」に影響するため、ピストンの適合には注意が必要です。 純正流用チューンというのは、先人の膨大な試行錯誤や失敗のうえに成り立っているということは頭の片隅に入れておいたほうがいいかもしれません。 ■家庭用塗料をタッチアップに使ってしまう 小物の塗装やちょっとしたタッチアップに家庭用ラッカーを使う。 なかには家庭用ラッカーで再塗装したという人も見たことがありますが、自動車用以外の塗料をクルマに使うのはお勧めできません。 と、いうのも自動車用の塗料は各自動車メーカーの純正色のカラーコードに合わせて調合しているだけではありません。 自動車用塗料は常時直射日光に露光された状態で雨や油脂類・高速走行時の飛び石に耐えられるような耐久性が求められます。 昔、エンジンシュラウドを安い家庭用塗料で塗ったことがあるのですが、あまり綺麗に仕上がらなかっただけでなく、エンジンオイルやガソリンですぐに侵されてしまいあまり長く持たなかったことがありました。 その後、試しに自動車用(正確にはオートバイ用)で塗りなおしたところ綺麗に発色し、多少の油脂類の付着や高温にも耐え、何年も綺麗な状態を保っていました。 また、自動車用塗料は溶剤が強く、家庭用塗料の上から自動車用塗料、特に鈑金修理用ウレタン塗料を上塗することはできません。下の塗膜が上塗り塗料の溶剤に侵されて、ちぢれや剝がれが起こる 「ブリーディング」が発生します。 クルマに使う塗料は必ず、自動車補修用品として販売されている物を使いましょう。 ちなみにクルマのタッチアップ用塗料は、ラッカー系でもかなり溶剤が強いようで、同じラッカー系でも家庭用塗料に上塗りするとブリーディングが発生します。 その代わり自動車用であればラッカーの上からウレタンを上塗りすることにも耐えられるようです。 もし、家庭用ラッカーを使用した車両を鈑金塗装に出すときは、必ず家庭用ラッカーを使った旨を申告し、一度家庭用ラッカーを除去してもらいましょう。 とはいえ、どんな旧車・クラシックカーのスペシャリストも必ず、大なり小なり失敗を経験しているもので、案外「誰もが通る道」なのかもしれません。 もし、若い人が失敗をしているのを見てもあげつらうことなく、優しくどうすればいいかを教えられる、示唆を与えることができるようにありたいものです。 [ライター・撮影/鈴木修一郎]

昨年の維持費は53万円。所有歴23年のS15シルビアを妻はどう思うのか聞いてみた
ライター愛車レポート 23.03.14

昨年の維持費は53万円。所有歴23年のS15シルビアを妻はどう思うのか聞いてみた

昨年末、11度目の車検を終えた愛車のS15。 実はその数日後にエンジンが始動せず、年末の帰省がはたせなかったのですが……それはまた別の話。 今回の車検にかかった費用は、およそ23万円。 大きな修理やパーツの交換は行わず、消耗品の交換が中心です。 昨年を通してS15の維持費(所有していることで、支払の生じた費用)は、およそ53万円。 1ヶ月に、およそ44,000円。 今年は車検がないので、ずいぶんと楽にはなるはずです。 そりゃね、これほどのお金がかかっているとなると、配偶者の理解は必要不可欠。 クルマにかけるお金が、夫婦間の諍いの理由になるって話もよく聞きますし。 聞くのが怖くはありましたが、これも機会です。 今回は妻に「私がS15を維持しているのをどう思っているか」を聞いてみました。 ■妻もまた、助手席でカーライフの苦楽をともにしてきた 交際当初、すでに私はS15を所有していました。 当時の妻の言動から「(私がS15に対して)特別な思い入れは持っておらず、古くなったら乗り換えるだろう」と、思っていたようです。 結婚から3年でS15の所有年数が10年を越え、それでも私が乗り続けているのを見て「日産車が好きで、乗り換えないのは後継となるクルマ(S16以降)が出ないからだろう」と、考えていたそう。 さて、問題はそこから。 一緒に出かける直前になってエンジンが始動しない。 走行中にエンジンが停止し、ヒヤリとさせられる。 出先でクルマが動かなくなり、レッカー到着まで途方に暮れる。 夏場にエアコンが故障し、熱中症を起こす等々……。 この10年間、普通なら「さっさと買い換えろ」と詰められてもおかしくない事態に、幾度も妻を巻き込みました。くわえて少なくない経済的な負担をかけ続けています。 文字にすると、自分の妻ながら本当によく認めてくれているよね。 やっぱり聞かない方がいいかな。藪の中の蛇を突きたくないなぁ……。 ■日頃から家事とか、自分のやれることをやっておくことが、旧車を維持する秘訣? 単刀直入に聞くけど、S15を買い換えて欲しいって思ってる? 「いや、買い換えてもお金がかかるし、そうは思ってないよ。最近のクルマはフワフワしてフラフラするから苦手だし」 妻の母(私からみて義母)はスポーツカーが好きで、かつてはホンダのS600、新しいところだとコペンといった、ハイカラなカーライフを送ってこられた方。 その影響でしょう。妻もがっしりしたサスペンションに低重心のクルマの方が、乗っていて安心するそうです。 でも、クルマが新しい方がトラブル知らずで安心して乗れるよ。 「別に心配しながらクルマ(S15)に乗ってないよ。止まったら、止まっただし、故障があったら都度、直しているし」 理解と懐の深さに涙が出そう。 維持になにかとお金がかかることはどう思う? 「こちらも送り迎えとかしてもらってるからね、そこまで負い目を感じなくていいよ。さっきもいったけど、今のクルマって高いからね。同じくらいかかるんだったら、好きなクルマに乗ってなよ」 正確には「今のクルマが高い」じゃなく「日本の賃金が安い」だと思うのですが、今は口にしないでおきます。 「旦那、お酒も飲まないしタバコも吸わないじゃない。お金を使っているのクルマくらいでしょ。家事もやってくれてるし、そこで趣味を取り上げちゃうほど鬼じゃないよ」 ありがたいお言葉。 やっぱり日頃から家事とか自分のやれることをやっておくことが、こっちの無理を聞いてもらう秘訣な気がします。 「けどギリギリのラインだからね。出費どうこうよりも、旦那は頑張って収入をあげること。安い仕事を引き受けると、高いお仕事が逃げていくよ。なにより、高いお金を払ってくれるところに悪いでしょ! あとねぇ……」 あー、うー。やっぱりお説教の流れですか……。 私の収入はともかく、あらためて妻の理解あってこそ、S15を維持できているのだと知ることができました。 今後も理解を得続けられるように努め、クルマが原因で不仲になることだけは起こさないよう、気をつけたいと思います。 旧車オーナーだけでなく、縁の下の力持ちである配偶者に話を聞くのも、面白そうですよね。 もしお話を聞かせてもらえる方がいらっしゃったら、編集部までご連絡をお願いします。 後々、もめごとにならないよう、ちゃんと夫婦間で同意しておいてくださいね! [ライター・撮影/糸井賢一]

本家カーナビより使える!? 旧車でナビアプリの利用はアリかナシか
ライター愛車レポート 23.02.23

本家カーナビより使える!? 旧車でナビアプリの利用はアリかナシか

昨年、愛車S15で使用していたカーナビが壊れまして。 購入したのが2004年。3~4年おきにデータを更新しながら18年間の使用なので、よく働いてくれたと思います。 仕事柄、初見の地に出向くことが多いので、なんらかのナビゲーションシステムは必須。 当初はネットオークションで中古の同一機種を落札し、配線はそのままに本体だけ交換しようと考えていたのですが、これが思いのほか高価なこと。 ちょっと足せば、新品のポータブルカーナビが買えちゃう額。 「なら、スマートフォンのナビアプリを使ってみよう。不都合があったら、あらためてカーナビを買えばいいし」 そんな顛末があってカーナビを外し、現在、ナビアプリを利用しています。 旧車を所有し、「車内の雰囲気を壊さないため、カーナビは取り付けたくない。 けれどナビは使いたい。 スマートフォンのナビアプリはどうなんだ?」と、考えている方は、意外に多いようです。 今回は実体験に基づいたカーナビとナビアプリの違いを記してみたいと思います。 ■ダッシュボード設置型のカーナビは取り外しが大変! 中古品を落札する案はなくなったので、まずはカーナビの取り外しから。 壊れたカーナビはダッシュボード上に両面テープで土台を固定するタイプ。 簡単に取り除けるかと思ったら、実際はかなり面倒な作業でした。 土台を引っ張るものの(貼り付けから20年近くを経ているにもかかわらず)両面テープはびくともせず、ダッシュボードの表皮が浮き上がってしまう事態に。 いやいや、強力過ぎだろ! 本来ならドライヤーで温めて剥がすのがいいのでしょうが、非コンセント型のドライヤーを所有していません。 接着はがし剤を使用しますが、正直なところ効果はなし。 結局、力で少しだけ浮かべて土台とダッシュボードのすき間を作り、慎重にカッターで切って剥がす方法を取りました。 土台は取れたのですが、ダッシュボード上に両面テープが残ってしまったので、時間をかけてチマチマと剥がします。 信号待ち中にもチマチマ。渋滞にはまって停車中にもチマチマ。車内で妻を待っている間にもチマチマ。チマチマチマチマ……。 3日ほどで剥がし終えたのですが、どうしてもノリは除去しきれませんでした。 ダッシュボードの色あせもあって、両面テープが貼ってあった場所がクッキリと分かる状態に。 個人的にはカーナビの取り付け位置は、視線移動の少ないダッシュボード上がベストだとは思います。 思いますが、旧車を綺麗な状態で維持したいのなら、カーオーディオスペースを活用するDINタイプにすべきだなと感じました。 ■ナビアプリの使用感に問題なし。ただ、トンネル内では位置を示してくれず さて、近場のホームセンターでスマートフォンスタンドを購入し、ダッシュボード上に両面テープで取り付け。 今度は範囲も狭いですし、両面テープもチープなので、不要になった際、そこまで苦労せずに剥がせるでしょう。多分……。 ちなみにスマートフォンを吸盤等でフロントウィンドウに貼り付けるのは道交法違反にあたるので注意が必要です。 そういった製品が販売されているのは、小売店や個人が合法である国から輸入し、日本の道交法を確認していないから、ではないでしょうか。 選択したナビアプリは、無料の『yahoo! カーナビ』。 選んだ理由は、基本の地図データにゼンリンを使用しているところ。 不満が出たら、有料版の『ゼンリンのいつもNAVI』に変えればいいかなと。 かつての廉価モデルスマートフォンだと性能や機能が足りず、ナビアプリが正常に動作しないこともあったそうです。 ですが、いまどきのスマートフォンなら廉価モデルでも問題なく作動します。 実際、私のスマートフォンも3年前の廉価モデルですが、一点を除いて動作に問題はでていません。 この一点については、のちほど記します。 使用してみた感じ(それまで使用していたカーナビが古くてシンプルなのもあって)特に不満はありませんでした。カーナビと比べると誤差は大きく、また位置ズレも頻繁に発生していますが、走行しているうちに補正してくれますし、慣れの範疇だと考えています。 データ通信量も思っていたほどではなく、月に2~3回、使うくらいなら、2~3Gの契約でも事足りるのではないでしょうか。 そして問題点。 クルマから車速信号を取ることのできないスマートフォンだから仕方がないのですが、トンネル内では自車の位置を拾ってくれません。 アプリの表示は、地下道やトンネルの入り口付近で停止している状態です。 分岐のある高速道路だった場合、致命的な間違いに繋がります。 ただ『yahoo! カーナビ』、本来ならばスマートフォンのジャイロ機能に対応し、地下道やトンネルでも現在地を表示できるそう。 これは私のスマートフォンの問題なのかもしれません。 ハイエンドモデルやミドルレンジモデルのスマートフォンで、リリースからしばらく時間が経っているモデルなら、アプリも対応しているのではないでしょうか。 ■事前に所有するスマートフォンとナビアプリとの相性を確認 スマートフォンのナビアプリ。個人的には十分にカーナビの代わりになると感じています。 不足な点は多々ありますが、不足をオーナーの知恵と経験で補うのは、旧車に乗られる皆さんの得意技でしょうし。 ダッシュボードに両面テープや吸盤用のシールを貼りたくない。 あるいは美観からダッシュボード上にスマートフォンスタンドを設置したくないのなら、取り付けに工夫が必要になると思います。 念のためスマートフォンスタンドを購入する前に、所有されるスマートフォンにジャイロ機能があるか、ないか。くわえてトンネル内で案内してくれるかを調べておくと失敗せずに済みます。 当面、ナビアプリを利用するつもりです。 今後、スマートフォンを買い替えてトンネル内の案内に変化が出たら、またお伝えしたいと思います。 [ライター・カメラ/糸井賢一]  

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