フランスの国民車と呼ばれるほどの人気を誇るシトロエン 2CVは、42年間と非常に長いモデルサイクルで販売されました。現在はレトロかつ、おしゃれなクラシックカーとして人気が高い2CVですが、もともとは農村の人々にむけて開発された車でもあったのです。
今回はクラシックでかっこいい2CVの意外な開発経緯と、現在の中古車市場についても解説していきます。
42年で380万台を生産したフランスの国民車
シトロエン 2CVは1948年の製造開始から生産終了の1990年までの42年間、一切モデルチェンジをせずに販売され続けました。モデル期間中の生産台数は387万2,583台にもなり、その凄まじい数字から2CVが当時いかに支持されていたかがうかがえます。
2CVのサイズは全長3,830mm×全幅1,480mm×全高1,600mmと、現在の軽自動車に近いもので、車体重量は495kgの超軽量級です。搭載されるエンジンは最高出力9psの375cc(初期型)空冷水平対向2気筒OHVを採用。足回りは「前後関連懸架」という、他車では見られない独特の方式で、悪路でもしなやかな乗り心地を発揮するシトロエンらしい優れた足を持っていました。
駆動方式は当時珍しいFFを採用することで車体後部にプロペラシャフトを通す必要がなく、そのぶん室内空間を広く確保。小さい車体でありながら、多くの荷物や人を乗せることができました。
広さと安さと走行性を追求したコスパの塊
そもそも2CVはなぜ開発されたのか、それは1935年当時のフランスで農村の人々の交通手段が十分ではなく、不便な暮らしを強いられていたことがきっかけでした。
その事態を重く見たシトロエンは、小型車の開発に着手。「室内に卵を乗せて運転しても、卵が割れない乗り心地」をテーマに掲げ、実用的でありながら整備や修理が難しくならないよう、構造は極力シンプルにまとめられています。
そして1948年、農民のための実用車として2CVが完成。価格は当時で593ポンド(日本円で約91,300円)と抑えつつ、室内は大人が4人座れるほど広く、まさに実用車といえる完成度でした。
実用性を優先した外観デザインは当時賛否両論となったものの、低価格かつ広い室内空間、そして悪路をものともしない走行性能を持つ2CVは、当時の民衆に大ヒット。またたく間に販売台数は増えていき、見事フランスの国民車の称号を手にしたのです。
エンジン追加で無理やり4WDに?
バンタイプや2ドアクーペなど、シャーシを流用した派生モデルが多いことでも有名な2CV。そのなかでも特にユニークなのが、4WD車の2CVサハラです。
当時、北アフリカ地区はフランスの農道以上に地形が荒く、FFの2CVでは適応できませんでした。そこでシトロエンは、2CVを北アフリカ地区に適応させるため、4WDモデルの開発に着手。1960年、苦悩の末に完成したのが、車体後部にもう1基エンジンを搭載したツインエンジンの2CVサハラです。
シトロエン 2CVサハラは3つの駆動に切り替え可能!
シトロエン 2CVサハラは、リアエンジンの駆動をリアタイヤに割り当てることで4WD走行を可能にするという斬新な仕組みでした。
室内のレバーでFF、FR、4WDと駆動方式を切り替えることができるため一見革新的ですが、エンジンが2基となったことで燃料タンクと給油口も2つに増設。1度の給油で2回燃料を入れなければならないといった、不便な点も数多くありました。
使用用途が限定的な2CVサハラは、生産台数は694台と本家の2CVのように大ヒットとはならなかったものの、マニアの間では世にも珍しいツインエンジン車ということで、一目置かれた存在になっています。
シトロエン 2CVの中古車相場と買取価格
製造からすでに70年以上経過している2CVですが、中古車市場はいったいどうなっているのでしょうか。
2021年10月執筆時点で大手中古車サイトを調べてみたところ、日本国内の在庫は、排気量600ccの2CV6のみで在庫は11台残っていました。最安値は走行距離不明の1990年式の個体で99万9000円、最高額だと1987年式の走行距離20,000kmの個体で228万円のプライスがついています。
一方、旧車王では1989年式43,600kmの個体を30万円で買取した実績があり、30年以上経過したモデルと考えれば、かなり高額で売買されていることが分かります。
とは言え、2CVはそこまでプレミアがついているわけではなく、在庫も残っているので手に入れることの難易度はさほど高くありません。
もちろん、2CVは販売末期のモデルでも製造から30年以上経過しており、いつどこが急に故障するかも分からない状態です。購入を検討する際は車体価格にプラスして、その後の修理費のことも頭に入れておくことをおすすめします。
まとめ
当初は農村の人々の移動手段として誕生したシトロエン 2CVは、その実用性の高さは村だけに留まらず、フランス全土の人々に愛される国民車になりました。
実用性を重視したため当時は酷評もされた外観も、その個性的な曲面と平面のデザインはクラシックカー好きの間でも評価が高く、今でも多くのファンが存在します。空冷水平対向2気筒OHVエンジンや前後関連懸架という特殊な機構が多く、故障時の不安がついてまわる2CVですが、これだけの歴史を重ねた車に乗れる機会はそうそうありません。
コスト面での負担は覚悟したうえで、今あえて2CVを選択するカーライフというのも決して悪くはないでしょう。
[ライター/増田真吾]
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