名車を「鑑賞する」贅沢なひととき。オートモビルカウンシル2023

目次
1.■クルマを「観る」というより「鑑賞」する感覚に近い 2.■国内外の名車を間近で観られる幸せ 3.■日産ブース、攻める 4.■国産ネオクラシックカーが近くて遠い存在になったことを実感 5.■会場内を何周もすることで気づくこともきっとある

去る4月14日〜16日にかけて、幕張メッセで開催された「オートモビルカウンシル2023」を取材した。

早いもので、今回が8回目の開催となるオートモビルカウンシル。

今回より「Classic Meets Modern」から「Classic Meets Modern and Future」にテーマが改められ、新たなステージを目指したという。

日本車メーカー、インポーター、新世代の自動車メーカーが9社、ヘリテージカー販売店は過去最高となる41社が出展。

トータル166台もの名車が一堂に会することとなった。

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■クルマを「観る」というより「鑑賞」する感覚に近い

モータショーでもなければチューニング系のイベントでもない。

国内外の名車が一堂に会するクルマのイベントは意外と少ない。

そしてこれが重要なのだが、オートモビルカウンシルの魅力のひとつに「じっくりと観られる」ことが挙げられる。

「鑑賞」という表現が適切かもしれない。

気になるクルマ、普段なかなか目にする機会がないクルマを心ゆくまで「鑑賞」できるのだ。

もし、目に留まったクルマが販売車輌であれば購入することもできる。

……かといって「早い者勝ちのバーゲンセール」というわけではない(実際には早い者勝ちなんだけれど)。

また、クルマにまつわるアート作品が数多く展示されており、ギャラリーで美術品を鑑賞している感覚に近いかもしれない。

それだけに、会場内の空気感は独得だ。

また、来場者の年齢層が比較的高めなので、会場内の雰囲気もどこか落ち着いている。

会場内の時間がゆっくりと流れているのが取材をしていても分かる。

もちろん、それなりに来場者がいる……ことはいるのだが、東京モーターショーのようにお目当てのクルマに近づけないということは稀だ。

気になるクルマを撮影したければ、少し待てば「オールクリア」のチャンスがめぐってくる。

撮影したい人がいることを他の来場者も気がついて、自然と「間」を作ってくれるからだ。

そしてある種の慎みというか、マナーの良い方が多い印象だ。

この空気感がしっかりと醸成できている時点で、このイベントは大成功だと思う。

先述のように「ギャラリーで鑑賞している」雰囲気に近いので、この空気感を好む人たちにとっては非常に居心地がいいだと断言できる。

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■国内外の名車を間近で観られる幸せ

最新のモデルであれば、メーカーの広報車を集めて並べばいい(それはそれで大変だけれど)。

メーカーとしても秘蔵コレクションを出品するまたとない機会でもある。

マツダブースに展示されていた「マツダMX-81アリア(レストア済み)」が間近で観られるだけでも、このイベントに足を運んで良かったと思えたほどだ。

しかし、メーカーが保有しているケースは日本車が主で、輸入車ともなればは基本的にはオーナーカー。

つまり、オーナーに声を掛け、車輌を貸し出してもらえないか交渉する必要がある。

喜んで貸してくれるオーナーがいる一方で、難色を示す方も少なからずいる。

それが希少車であればあるほど大変だ。

筆者自身もさまざまなオーナーを取材させていただく機会に恵まれたが「人目に触れず、ひっそりとクルマ趣味を楽しみたい」という方も少なからずいらっしゃることは承知しているつもりだ。

正面突破ではまず断られるけれど「○○さんの紹介なら断れない」と、人のつながりで大切な愛車を貸してくれることも多い。

実際に裏でどのようなやりとりがあったのかは分からないが、テーマ展示でズラリと並べられた 〜ポルシェ 911 60 周年記念企画〜 「初期ナローからカレラ GTまで」および〜エンツォ・フェラーリ生誕125周年企画〜「フェラーリ・スペチャーレ」の展示車をそろえるのはそれなりのご苦労があったのではないかと推察する(まさに眼福でした。関係者の皆さま、ありがとうございました)。

■日産ブース、攻める

今回、個人的に驚いたのが日産自動車のブースだった。現行モデルはSAKURAのみ。

このクルマを取り囲むようにして、日産シーマ(Y31)、フェアレディZ(Z32)、PAO、そしてハコスカが展示されていたのだ。

日産シーマのオーナーは女優の伊藤かずえさん。

新車ワンオーナーで乗りつづけ、昨年、フルレストアされた個体そのものが展示されていた。

レストア完了後、銀座の日産ギャラリーに展示され、その後は以前と同じように乗りつづけているという。

メーカーに手によってフルレストアされたのだから、そのままガレージにしまいこむこともできたはずだが、これまでと変わらず乗りつづけている姿勢は本当に素敵だと思う。

フェアレディZ(Z32)とPAOのオーナーは日産の若き社員の方の愛車で、伊藤かずえさんとともにトークショーを繰り広げていた。

何を隠そう、純白のZ32は、旧車王ヒストリアの執筆陣のひとりである、Z32専門店「Z-one」代表小村氏のショップ出身の個体だ。

キュートな女性オーナー、丹呉いづみさんを別媒体で取材させていただいたことがあるのだが、この方のZ32愛は半端ではない。

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■国産ネオクラシックカーが近くて遠い存在になったことを実感

かつて、東京モーターショーの会場でお立ち台に載っていたクルマがやがて路上で見掛けるようになり、そしてひっそりと姿を消していく……。

そしてこのように旧車、ヴィンテージカーとしてふたたびスポットライトを浴び、表舞台に姿を見せてくれる。

1980年代、そして1990年代の現代では「ネオクラシックカー」といわれている時代のクルマも、ハコスカやホンダSシリーズのような旧車と呼ばれるカテゴリーに近づきつつあることを実感した。

それはつまり、チューニングやドレスアップのベース車輌ではなく、オリジナルの状態に戻すレストアベースの立ち位置に変わってきていることを意味する。

廃車寸前の個体をタダ同然で引き取ってきて、自宅の駐車場でウマを掛けて空き時間に修理する……なんて存在ではなくなりつつあるのかもしれない。

■会場内を何周もすることで気づくこともきっとある

昨年「追いトップガン」というキーワードが話題になった。

映画トップガンの続編である「トップガンマーヴェリック」を観るために何度も何度も映画館に足を運ぶ熱心なファンのことを指す表現だ。

ちなみに、筆者も地元の映画館まで3回足を運んだ。

1回目、2回目、3回目……と、何度も繰り返して観るうちに新しい発見があるのだ。

「オートモビルカウンシル」は、東京モーターショーや東京オートサロンなどの大型イベントと比較したら会場はグッとコンパクトだ。

それでいて、入場料は先述のイベントよりも高価……ではある。

フロアマップを見る限りでは「すぐに見終わってしまうのではないか?」と懸念しても仕方がない。

しかし、会場全体が見渡せる分、東京モーターショーや東京オートサロンのように駆け足で観る必要もないし、見逃す可能性も低い。

そして「追いトップガン」のごとく、会場内を何周もすることで全体を把握でき、細部にいたるまでじっくり観られるようになる。

これこそが「オートモビルカウンシル」の醍醐味のひとつであるような気がした。

気の合う友人とクルマ談義しながら会場を練り歩けば充実した1日を過ごせるだろう。

もちろん1人でも楽しめる。

自分のペースで、誰に気兼ねすることもなく、文字通り「鑑賞したい」のならおひとりさまの方がいいかもしれない。

すでに来年の開催が決定しているので(2024年4月12日〜4月14日開催)、迷っているうちに行きそびれてしまった方はぜひ会場に足を運んでみてほしい。

そうそう。ひとつ、気をつけた方がいいことがある。

自動車関連グッズの販売が充実しているので、散財する可能性が高い方はクレジットカードを自宅に置いて、財布の中身は現金のみにした方がいいかもしれない。

[ライター・撮影/松村透]

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