日産チェリーX-1・R誕生50周年!名古屋で開催された『チェリーミーティング』

目次
1.■チェリーってどんなクルマ? 2.■カスタマイズ手法の名前にもなった「チェリー」 3.■いざ、チェリーを間近で見ると・・・ 4.■オーバーフェンダーが人気のX-1・R 5.■取材後記〜今改めて実感するチェリーの強烈な個性〜

近年は操縦性やトラクションの優位性から、スポーツカーや高級車を中心に後輪駆動方式が再注目されている印象があります。

しかし、1960年代から小型車向きの駆動方式として注目され、1980年代から1990年代にかけてトラックや保守的なモデルを除くほとんどの車種に普及したのが、FFと呼ばれる前輪駆動方式です。

大きく重いプロペラシャフトが不要なことで、スペース効率が高く軽量化に適した構造。

そして、高速回転をするシャフトがなくなることでl振動の原因を取り除くことができるというメリットから、現在ではスペース効率を要求しない大型車にまで採用されています。

国産車では1960年代末頃から軽自動車を中心に採用を始めるモデルが出始めますが、その国産前輪駆動車黎明期のモデルのひとつが、2023年10月28日に開催されたチェリーX-1・R誕生50周年名古屋ミーティングの「日産チェリー」です。

■チェリーってどんなクルマ?

チェリーというクルマを覚えている人は、40代以上ではないでしょうか。

1200~1400ccクラスとなったサニーより、さらに小型の1000ccクラスモデルとして販売されたチェリー。

企画自体は吸収合併前から旧プリンス自工が開発を進め、合併後もプリンス陣営のエンジニアにより開発が続行され、1970年10月に発売となりました。

エンジンはサニーと同じA型OHV4気筒エンジンを横置きに搭載、トランスミッションはBMCミニと同様、クランクシャフト下に配置する「イシゴニス方式」を採用。

上級グレードに1200cc仕様の「X-1」が設定され、ボディタイプはセミファストバックの2ドア・4ドアセダン、3ドアハッチバッククーペ、後に3ドアバンが追加されました。

今からちょうど50年前となる1973年3月には、オーバーフェンダー付きの「X-1・R」が登場。

1974年9月には、1200ccと1400ccの上級モデルに移行する形で「チェリーF-II」にフルモデルチェンジしますが、初代もしばらく併売が続きました。

1978年に「パルサー」と入れ替わる形でチェリーは消滅し、8年のモデルライフを終えますが、いかにも1970年代の濃厚な個性が、いつまでも記憶に残るようなモデルだったようにも感じます。

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■カスタマイズ手法の名前にもなった「チェリー」

1970年代後半~1980年代初頭の改造車で、「チェリーテール」と呼ばれる技法がありました。

1970年代中頃の国産車というと、アクの強い立体的造形のエクステリアデザインが花開いた時代です。

特に、チェリークーペの丸テールに長方形のウィンカーレンズを組み込んだテールライトユニットの他車流用は、当時のシャコタン車の定番カスタムでした。

「チェリーテール」は、現在もトラックのカスタムパーツ等で根強い人気があり、このデザインをモチーフにしたアフターパーツのテールライトユニットは、トラック用品として現在も流通しています。

■いざ、チェリーを間近で見ると・・・

▲純正ホイールキャップも含めフルオリジナルを保った初期型チェリーX-1の4ドアセダン

筆者が未就学児の頃は街中でいつも見かけたクルマでしたが、1980年代も半ばになるといつの間にか見かけなくなり、1990年代に入ると早くも「旧車」「絶版車」と呼ばれていました。

幼児の目線で見ていたから余計にそう感じたのかもしれませんが、当時は「随分腰高でずんぐりしたクルマ」という印象でした。

しかし、ハイトボディのコンパクトカーを見慣れた今となっては「こんなにルーフが低かったんだ」と感じたのには、ちょっと新鮮な驚きでした。

左フロントフェンダーから覗くラジエターファン、これは初期の1年のみ製造されたベルト駆動ファン仕様の特徴で、以降は電動ファンになります。

まだまだ横置きエンジンがメーカーも手探りだった時代を偲ばせます。

年季の入った樹脂パーツに山梨55ナンバーのX-1クーペは、なんとワンオーナー車だそうです。

オーナーとの歴史が刻まれたフェンダーミラー、フルレストアも良いですが、こういう風合いをあえて残すというのも旧車の醍醐味かもしれません。

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■オーバーフェンダーが人気のX-1・R

当時の日産のハイスペックモデルの象徴ともいうべき純正オーバーフェンダー、「R」を名乗るに恥じない装備です。

当時の日本ではクルマの改造が厳しく制限されていたため、純正状態でレーシーな後付けオーバーフェンダーを持つクルマは、中古車でもプレミア価格で取引されたといわれています。

搭載されるA12型エンジンはツーリングカーレースで長年活躍し、レース仕様はOHVながらレブリミットが10000rpmを越えた名機であり、FFのじゃじゃ馬を抑え込んで走るというのも当時の腕自慢の走り屋にはステイタスだったのではないでしょうか。

ちなみにX-1・Rの純正塗装色は白のみだったそうです。

▲オーナーが思い思いのモディファイを施した後期型X-1・R。

1974年になると、フロントグリルはより立体的な造形になり、前後バンパーも大型化されます。

後期型になると、テールライトのリムに凸凹のモールドが入ります。

また、クーペの嵌め殺しだったリアクォーターウィンドウは、ポップアップ式の開閉型になります。

現在流通している新品のウェーバーキャブレターはスペイン製ですが、このウェーバーはイタリア本国製の当時物、綺麗な状態を保ったスロットルボディには驚きました。

オーナーが熱心なメンテナンスに抜かりのないことが伺えます。

■取材後記〜今改めて実感するチェリーの強烈な個性〜

実はこの日のトヨタ博物館でのミーティングは、全国から集まるチェリーオーナーの集合場所のような形で午前10時にスタートし、14時ごろに遠方からのオーナーが集まったところで、次の目的地の犬山市までのツーリングといったプラン。

犬山ではお楽しみの宴会が催されたのだとか。

人気者揃いの日産の旧車のなかでは、陰に隠れた存在であることは否めない日産チェリー。

しかし、日産の前輪駆動車の先駆けであり、かつては「日産チェリー店」という販売チャネルもあり(現在も一部の日産レッドステージ店の中には登記簿上「チェリー店」のまま存続している法人もあるそうです)、なかなか存在感のあるモデルでした。

かくいう筆者も、身近にこのクルマのオーナーがいたわけでもなく、特に思い入れがあるわけでもないのに、いざ現車を見ると幼少期の記憶が蘇る、不思議な存在です。

これからも、あの一度見たら忘れられない強烈な個性を、見る人の記憶に残しながら走り続けることでしょう。

[ライター・画像 / 鈴木 修一郎]

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