何人たりとも避けてとおれない「クルマの終活」について考えてみた

目次
1.■愛車の終活。不意に「そのとき」が訪れてからでは遅すぎる 2.■「早く処分したい」のか「大切に乗り継いで欲しい」のか? 3.■購入希望者と面談するという手もある 4.■手放して別の誰かのものになった瞬間、決定的に何かが変わる 5.■まとめ:誰にでもクルマの終活の時期は訪れる。そのためにも・・・ 6.余談:クルマ好きによるクルマ好きのための・・・

ここ10年くらいで「終活」という語句の響きや意味合いが、比較的ポジティブに捉えられるようになった印象がある。

いまや、銀行口座の暗証番号や、生命保険の連絡先、ネット関連のパスワードなど、基本的に本人しか知り得ない情報をまとめて書き記すことができる「エンディングノート」が100円ショップでも売られているほどだ。

それだけ「終活」という行為が市民権を得られるようになったのかもしれない。

しかし、お膳立ては整っていても、当の本人が行動を起こさなければ何もはじまらない。そして「そのとき」に周囲を巻き込んだ大騒動にもなりかねないことも事実だ。

■愛車の終活。不意に「そのとき」が訪れてからでは遅すぎる

「そのとき」。

それはつまり、クルマを所有するオーナー(この記事を読んでいるあなた)が、すぐにでも入院したり、施設に入居しなければならないなど……。オーナーの体調が思わしくない"のっぴきならない状況"を意味する。

そんな急を要する状況で、「クルマの終活云々」だなんていってられないことは容易に想像ができるだろう。

とはいえ、オーナーとしては自分の家族はもちろん、大切な愛車のことも気になって仕方がないはず。ただ、当の本人はそれどころでなくて、どうにもできない状況であることもまた事実なわけで……。

こうなってしまっては残された家族も大変だし、「大事なクルマなのは分かるけれど、処分に困る」というのが本音だろう。

早すぎるということはない。とにかく早めに動いておくことが重要だ。自分自身への戒めを込めて。

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■「早く処分したい」のか「大切に乗り継いで欲しい」のか?

前者であれば話が早い。買取り業者に依頼して買い取ってもらう方法がもっとも手っ取り早く、しかも手間いらずだ。

ただし、買取り業者が査定に来たその日に大切な愛車が引き取られていく可能性が高いので「最後にドライブをしてからお別れをしたい」といった時間的猶予がないことを知っておいたほうがいいだろう。

そのため、ひととおり別れの儀式を済ませてから買取り業者に依頼することを強くおすすめしたい。

反面、後者の場合はどうだろうか。

身内をはじめ、信頼できそうな友人・知人に声を掛けてみるといいだろう。「俺(私)がいざというとき、このクルマに乗って欲しい」と。

悲しいかな、前述の人たちから色好い返事がもらえなかったら、SNSを活用するか、ネットが苦手であれば、信頼できる身近な人に代行してもらえれれば、誰かしら名乗り出てくれる。

あまり興味がない身近な人より、オーナーと熱量が近い(あるいはそれ以上の)次期オーナー候補に託した方が、クルマとしても長生きできる可能性が高まるはずだ。

■購入希望者と面談するという手もある

「かといって、手塩に掛けた大事な愛車を"どこのウマの骨とも分からんヤツ"にだまって譲るわけにはいかん!」

その気持ちも痛いほど分かる。

日々、取材を通じてオーナーインタビューをしていると「前オーナーさんと面談をして、お眼鏡にかなったから譲ってもらえた」というエピソードを伺うことがある。

不思議なもので、相対したときの第一印象というのは総じて当たることが多い。

いわゆる「直感」というやつだ。

電話やメール、LINEなどでどれほど美辞麗句を並べても、実際に会ってみないとその人の"人となり"は分からないものだ。

ひまひとつ信用できない、目が笑っていない……などなど、ふとしたときに感じた違和感(直感)は信じた方がいいと個人的に思う。

たとえ口下手であっても、本気度って伝わるもの。むろん、その逆も然りだ。

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■手放して別の誰かのものになった瞬間、決定的に何かが変わる

仮に長年の付き合いの親友が大事な愛車を引き取ってくれたとしよう。

いつでも会える間柄だし、気心知れた相手に譲ることができてホッとしているかもしれない。

しかし、手塩に掛けた愛車はもう他人のものだ。たとえそれが小学生の頃から付き合いがある親友であったとしても。

マフラーを交換しようと、オールペンしようと現オーナーの自由だ。

仮に、親友が前オーナーであるあなたに敬意を表して「現状のまま」乗ってくれたとしよう。

それでもやっぱりもはや別のクルマだと悟るべきだ。

手放して別の誰かのものになった瞬間、決定的に何かが変わる。

その揺るぎない事実はいまから覚悟しておいた方がいいかもしれない。

■まとめ:誰にでもクルマの終活の時期は訪れる。そのためにも・・・

どれほど手塩に掛けた愛車であろうとも、悲しいかないつかは別れのときが必ずやってくる。何人たりとも「必ず」だ。

それが1年後なのか、30年後なのか誰にも分からない、というだけのことだ。

その「いつか」に大して備えることはできる。

エンディングノートや遺言書に明記する方法もそのひとつだろう。

次期オーナー候補に(口約束でもいいから)話をつけておいてもいいかもしれない。

筆者の知り合いには「家族は乗らないことが分かっているから、自分が何かあったときに困らないよう、いまから奧さんの名義にして有事の際にはいつでもクルマを売却できるように」と、明確に方針を示している人もいる。

無事に次期オーナーが決まり、大切な愛車を引き継げたら……。

それはもはや、最愛の娘を嫁に送り出したようなものだ。

それこそ新たな生活に口出しするのは野暮というもの。

あとは何も「見ざる聞かざる言わざる」を貫き、少しずつさまざまな思い出を美化していくことで、自身のカーライフも無事「大団円」を迎えることができると信じたい。

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余談:クルマ好きによるクルマ好きのための・・・

この記事の初稿ができあがったあと、旧車王ヒストリアの運営母体である「旧車王」の担当者の方にもチェックしていただいた。

すると「編集長、これだけは念を押して読者の方に伝えてほしい」と、普段ではあまりないトーンで返信があった。

『旧車王としては、お客様の気持ちも踏まえて買取りをしているし"最後にドライブしたい"というお気持ちにも寄り添っています!』としっかり書いておいてください、とのことだった。

「旧車王」を立ち上げたカレント自動車の人たちとは長年、お仕事をさせていただいているが、クルマ好きの人たちの集まりだということは筆者もよく知っている。

クルマ談義になると仕事そっちのけで脱線することもしばしばだ。

オーナーにとってまたとない愛車を手放すときの心境、そして行く末も案じたうえで買い取るように心掛けているというのは、同じクルマ好きとして本心だということが伝わってきた。

もし、ゆくゆくは愛車の終活を考えているとしたら、一考の余地はあると思う。

[画像/Adobe Stock ライター・撮影/松村透]

 

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