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終わりのはじまり!? オーナーズクラブが空中分解する5つの前兆とは
旧車の魅力と知識 2024.10.30

終わりのはじまり!? オーナーズクラブが空中分解する5つの前兆とは

これまで、幾多のオーナーズクラブが生まれては消えることを繰り返してきた。そしてこの瞬間も「現在進行形」であり、10年後も、下手をしたら50年経ってもそれほど変わらないのかもしれない。 よくよく考えてみれば、人間が2人以上集まれば揉めごとが起こらないわけがない。共通のキーワードは、多くの場合「クルマのみ」という、非常に希薄な関係ともいえる。気がつけば疎遠になっていたり、自然消滅ということも少なくない。何しろ「苗字は分かるけど名前は知らない」といった程度の関係だからだ。 よくいえば絶妙な、裏を返せば実に危うい人間関係で形成されているオーナーズクラブ。今回は「不穏な空気は終わりのはじまり!? オーナーズクラブが空中分解する5つの前兆とは?」と題して、その前兆を考察してみた。 ■1.メンバー全員が参加しているLINEグループの投稿が減る NTTドコモ モバイル社会研究所が2023年4月17日に発表した統計によると、スマホ・ケータイ所有者のうち、LINEの利用率が83.7%に達するという。しかも、10~60代で8~9割以上が利用しているとのことで、もはやライフラインに近い。LINEアプリをインストールしていない人を探すのが難しいくらいだ。 そうなると、仲間同士の連絡網もLINEを介して行うのがもっともスムーズだ。さらにメンバーのみが閲覧・投稿できる非公開グループを作成すれば、普段の他愛ないやり取りからイベント等の業務連絡まで済ませることができてしまう。オーナーズクラブ管理者としては必須ツールだろう。 こうして作られたメンバー限定のLINEグループ。付き合いだしたばかりのカップルのように、クラブ創設直後はメンバー同士のやり取りが止まらず、日常生活が差し支えるほど(笑)。しかし、急速に熱せられたものは冷めるのも早いのが世の常。ある時期を境に倦怠期となり、気づけば1週間に数件。便りがないのは元気な証拠だとはいうけれど・・・。 ■2.内部分裂して別のグループが出来上がったうわさがたつ 本家LINEグループが妙に「過疎ってきている」場合、別のLINEグループが秘密裏に立ち上がり、そちらの方が盛り上がっている可能性もありうる。これこそが内部分裂、すなわち「空中分解」の初期段階ともいえるかもしれない。もちろん、メンバー同士で気の合う仲間同士が個別にLINEグループを作成し、よりフランクなやり取りをしている場合も大いにありうるだろう。 それくらいで収まれば何の問題もないのだが、メンバーの誰かが「本家のLINEグループがつまらないから」とか「いつも仕切る奴がいてうざい」などと愚痴りはじめたときは要注意だ。同じように思うメンバーが他にもいて、ヒミツのLINEグループになだれ込んでくる。そしていつしか、その噂は本家LINEグループでも話題になり・・・この時点で空中分解がかなり進行していると思っていいだろう。 ■3.リーダーの暴走 リーダーである本人にしてみれば「クラブの存続と発展のため」に身を粉にして頑張っているつもりかもしれない。しかし端から見れば単なるスタンドプレイ、つまり暴走しているとしか映らないこともある。人の話に耳をかたむけない、アドバイスを無視する、独断で決めてしまう。反対派をすみに追いやる。こうなると「裸の王様」そして「空中分解」の道へまっしぐらだ。 クラブ内の内部分裂が深刻化し、事実上「リーダー派」と「反リーダー派」に分裂してしまう。この時点で双方の関係修復はかなり困難な段階となり、定例MTGや忘新年会など「可能な限りメンバーは参加が好ましい」集まりが成立しなくなる。 ■4.自分の商売を持ち込む 参加しているクラブにその道のプロ(整備士やコーティングショップ経営者など)が参加していると、お友達価格で請け負ってくれたりと、かゆいところに手が届き、何かと頼りになることがある。相手も商売だし、このくらいの距離感で収まれば何の問題もない"Win-Win"な関係となりうる。 問題は「メンバーのクルマの整備は●●、コーティングは■■」といった具合に、なかば強制的に預けざるを得ない決まりができたときだ。メンバーそれぞれに付き合いやネットワークがあるだろう。その選択肢が奪われることは得策ではないといいきれる。しかし、これが分からないというべきか、自分の都合(商売)を優先してしまう人がいるのだから、困ったものである。 ■5.メンバー同士の男女関係のもつれ いわゆる修復不可能な遺恨を残す典型的な例が「メンバー同士の男女関係」だ。女性オーナーが増えきているとはいえ、クルマの趣味の世界はまだまだ男性の比率が高い。男性メンバー(さらには独身)ばかりの集まりのなかに、若い女性メンバーが加入してきたら・・・。「自分にもワンチャンあるかも」と期待しない方が無理というものだ。 こうしてメンバーの多くが、新入りの若い女性メンバーに対してアプローチを試みていたある日のこと、メンバーのひとりと女性メンバーが密会しているという噂が流れる。噂が噂を呼び、もはや犯人探し状態と化したすえ、女性メンバーに手を出したのが既婚者であるメンバーだと判明する。怒りが頂点に達したほかの男性メンバーたちは、そのまま勢いでクラブを脱退。こうして空中分解の悲劇が繰り返される。 ■まとめ:あえてどのクラブに入らないという選択肢も 同じクルマに憧れ、オーナーとなった者同士、思うところが一緒である以上、話があうのは当然のことかもしれない。しかし、冒頭にも記したとおり共通のキーワードは多くの場合「クルマのみ」という、非常に希薄な関係だからだ。関係がより親密になり、深入りするからこそ、あつれきが生まれることだってある。ならば無理に深入りせず、「苗字は知っているけどフルネームは分からない」くらいの距離感がいいのかもしれない。 繰り返しになるが、人が集まる以上、衝突は避けられない。揉めごとを避けたいのであれば、あえてクラブに入らないという選択肢もあるように思う。団体に属さず、気の合う人と個別に付き合うことで得られることもあるはずだ。 [画像・Mercedes-Benz,Adobestock ライター・松村透]

乗らないクルマは税金がかかる?税金を止める方法や注意点も紹介
旧車の魅力と知識 2024.10.29

乗らないクルマは税金がかかる?税金を止める方法や注意点も紹介

乗らなくなって放置しているクルマにも税金がかかるのか気になっている方もいるでしょう。たとえクルマを使っていなくても、自動車税(種別割)は毎年発生します。乗らないクルマの税金を止めたい場合は、抹消登録したり売却したりする必要があります。余計な税金がかからないようにするためにも、早めに対処しましょう。 この記事では、乗らないクルマの税金がかからないようにする方法や、注意点などについて紹介します。 クルマに乗らなくても自動車税(種別割)がかかる 自動車税(種別割)は、4月1日時点のクルマの所有者に対して毎年課税されるため、乗らなくても税金が発生します。 納税通知書が送付される時期は毎年5月頃で、納税の期限は5月末です。納税通知書の発送が6月上旬の地域の納付期限は6月末です。 ただし、2024年10月以降に新車を購入した場合、自動車税(種別割)が毎年減税される制度が適用されます。減税の割合は、排気量に応じて10〜15%程度です。 排気量が低くなるほどに減税額が大きくなり、2,000cc以下のコンパクトカーだと最大で年間4,500円も減税されます。 参考:経済産業省「新車の自動車税が毎年減税!」 乗らないクルマの税金がかからないようにする方法 抹消登録したり売却したりすれば、乗らないクルマの税金はかかりません。ここでは、乗らないクルマの税金がかからないようにする方法を詳しく紹介します。 一時抹消登録をする 一時抹消登録をすれば、乗らないクルマの税金はかかりません。一時抹消登録とは、クルマの登録を一時的に止める手続きのことです。再び乗るときは再登録が可能なため、今後クルマに乗る予定がある場合に行います。 ただし、ナンバープレートを運輸支局に返却するため、公道を走行できません。また、クルマ自体は存在しているため、駐車場代やメンテナンス費用などの維持コストがかかります。 下記の記事では、一時抹消登録の必要書類や手続きの流れを解説しています。乗らないクルマの税金を止めたい場合は、参考にしてみてください。クルマの抹消手続きとは?必要書類や手続きの流れについても解説 永久抹消登録をする 永久抹消登録をすれば、乗らないクルマの税金がかかりません。永久抹消登録とは、運輸支局での登録を完全に抹消する手続きのことで、未経過分の自動車重量税や自賠責保険の還付を受けられます。 ただし、クルマを解体した際に行う手続きのため、再登録できないことに留意してください。永久抹消登録は、修復不可能なクルマを処分したい場合に手続きしましょう。 下記の記事では、永久抹消登録に必要な書類や手続きの流れを解説しています。乗らないクルマの税金を止めつつ、クルマを廃車にしたい場合は参考にしてみてください。クルマの抹消手続きとは?必要書類や手続きの流れについても解説 売却する 乗らないクルマの税金を止めたい場合は、売却することも1つの手段です。クルマの売却は、所有権がほかの名義に移るため、税金を支払う必要がなくなります。 クルマの売却方法は下記3つに大きく分けられ、買取業者に手放すケースが多い傾向にあります。 ・買取業者に売却・家族や知人に売却・フリマサイトで売却 査定額は買取業者によって差があるため、売りたいクルマの買取に特化している業者であれば、より高く売却できるでしょう。たとえば、10年以上経過しているクルマは、旧車に特化した買取業者に査定を依頼するのがおすすめです。 旧車は、ほかのクルマと比較して評価方法が煩雑なため、専門性が高い業者でなければ適正価格を算出できません。少しでも高く売りたい場合は、買取業者を慎重に選定しましょう。 また、業者に売却すれば未経過分の自動車税(種別割)が戻ってくる場合があります。たとえば、3万6,000円を5月に支払い、8月にクルマを売却した場合、2万1,000円が戻ってきます(9月から3月までの7ヶ月分)。ただし、未経過分に対する返戻は買取業者によって対応が異なるため、売却前に確認しておきましょう。一般的には、買取金額に含めて返戻されるケースが多いです。 一方、自動車税(種別割)を滞納していると、売却を断られるケースがあります。滞納している場合は、事前に支払っておきましょう。 乗らないクルマの税金に関する注意点 乗らないクルマにかかる税金に関して、いくつかの注意点があります。不要な税金の支払いやトラブルを防ぐためにも、注意点について確認しておきましょう。 納税通知書が届かなくても免除されたわけではない 納税通知書が届かないからとはいえ、支払いが不要になったわけではないことに注意しましょう。車検を更新しておらず、クルマを使っていないと自治体が判断した場合は、納税通知書を送付しないケースがあります。 この場合、税金の支払いが保留になっているだけのため、支払わなくてよいわけではありません。たとえば、長野県では下記の場合に納税通知書を送付しません。 解体や盗難、所在不明などの理由で、クルマの現在の状態が県税事務所に届出されている 新車登録からある程度の期間が経過し、車検が更新されていないため、県がクルマの状況を確認できない 参考:自動車税種別割納税通知書を送付しない自動車があります/長野県 5月下旬になっても納税通知書が届かない場合は、管轄の税事務所に問い合わせましょう。 自動車税(種別割)を滞納すると延滞金が加算される クルマに乗っていないからといって、自動車税(種別割)を滞納すると、延滞金が加算されることに注意しましょう。納付期限の翌日から2ヶ月以内に支払った場合は「7.3%」、2ヶ月以上になると最低でも「14.6%」の延滞金が加算されます。 参考:国税庁「延滞税の割合」 たとえば、税額3万6,000円を、2ヶ月以上滞納すると最低でも5,256円の延滞金が発生します。延滞金は日割りで算出されるため、滞納した場合は1日でも早く支払いしましょう。 また、滞納していると、車検が受けられないうえに売却もできません。いざ「車検を取得して運転しよう」または「必要ないから売却しよう」と思っても、スムーズに手続きできないため、税金の納付を忘れないようにしましょう。 抹消登録をすると自動車税(種別割)が還付される場合がある 抹消登録をすると、自動車税(種別割)が還付される場合があります。自動車税(種別割)は、4月1日から翌年3月31日までの1年分をまとめて支払うため、抹消登録する時期に応じて還付される制度が設けられています。 還付金の計算方法は、下記のとおりです。 税額÷12ヶ月×抹消登録した翌月から3月までの月数 たとえば、6月にクルマを抹消した場合、9ヶ月分(7月から翌年3月まで)の還付金を受け取れます。ただし、3月にクルマを抹消した場合は還付金を受け取れません。抹消登録する予定がある場合は、少しでも早く手続きするとよいでしょう。 また、還付金を受け取るには、住民税や固定資産税などの地方税を漏れなく支払っている必要があります。滞納している場合、還付金は未納分の地方税に充てられることに留意してください。 まとめ 自動車税(種別割)は、4月1日時点の所有者に課されるため、乗っていないクルマでも税金がかかります。乗らないクルマの税金がかからないようにするには、抹消登録をしなければなりません。 納税通知書が自宅に届かなくても支払わなくてよいわけではなく、保留されているだけのため、抹消登録しない限り自動車税(種別割)がかかることに留意してください。 完全にクルマに乗る予定がない場合は、売却することも税金がかからないようにするための1つの手段です。買取金額は差が出るため、売却する際は愛車に特化している業者に査定を依頼するとよいでしょう。 なお、旧車王は20年以上旧車の買取を行っており、乗っていないクルマも適正に鑑定いたします。全国で無料出張査定も実施しているため、旧車の査定額を知りたい場合は、お気軽にお問い合わせください。

ホンダ インテグラ タイプRはFFは曲がらないという常識を覆した! Specによる違いも紹介
旧車の魅力と知識 2024.10.29

ホンダ インテグラ タイプRはFFは曲がらないという常識を覆した! Specによる違いも紹介

軽量なのに剛性の高いボディと追従性の高い足回りによって、FFながらハンドリングマシンと称されることもあるホンダ DC2型 インテグラ タイプR。NSXに続く、タイプRシリーズ第2弾として誕生しました。 NSXとは価格帯が全く異なる車種にも関わらず、FFピュアスポーツとして高い完成度を誇るモデルです。インテグラ タイプRのアイデンティティともいえる、高いハンドリング性能の秘密とモデルによる違いを詳しく紹介します。 タイプRという称号にふさわしい完成度 DC2型 インテグラ タイプRは、わずか1.8Lのエンジンで駆動方式はFFという点ではベース車輌と同様です。タイプR第1弾として登場したNSXを考えると、ピュアスポーツと呼ぶにはやや迫力不足に感じます。 しかし、タイプRという称号にふさわしく、ピュアスポーツとしての性能を徹底的に追求したモデルです。インテグラ タイプRの開発陣がこだわったポイントを詳しくみていきましょう。 FFとは思えないハンドリング性能 1995年に登場したDC2型 インテグラ タイプRは、動力性能以上にFFとは思えないハンドリング性能に注目されました。駆動輪が前輪のFFは、元来アンダーステアリングといわれています。しかし、インテグラ タイプRのコーナリング性能は、後輪駆動車よりも曲がると評されるほどでした。 足回りはダンパー、スプリング、スタビライザーをそれぞれ強化。特に、リアのスプリングレートは、1.25倍~2.2倍にまで引き上げられています。車高をノーマル車輌から15mm下げたことと合わせて、余計なロールを発生させないダイレクトなハンドリング性能を実現しました。 また、パフォーマンスロッドの追加や板厚の増加などによって、各部のボディ剛性が徹底的に高められているのもタイプRの特徴です。ドライバーのステアリング操作に対するクルマ全体のレスポンスが、細部にわたって徹底的に追求されています。 60点以上もの新設計パーツを使った「B18C 96 spec R」エンジン 200馬力の大台を実現したタイプRの「B18C 96 spec R」エンジンには、60点以上もの新開発された専用パーツが使われています。リッター当たり100馬力を超え、自然吸気エンジンとして最高ともいえるB18Cエンジンの性能を極限まで引き出しました。 B18C 96 spec Rのチューニング内容は、単に吸排気の見直しといった表面的な部分にとどまりません。ピストンの形状変更による圧縮比アップ、バルブの軽量化といった内部も徹底的に見直されました。さらに、高回転型エンジンの特性を最大限発揮できるよう、トランスミッションもクロスレシオのものに更新されています。 初の「庶民が買えるタイプR」 インテグラ タイプRが人気を集めた理由は、実はもう1つあります。わずか222万8,000円(3ドア)という、一般的なクルマと変わらない価格設定です。タイプRとして最初に登場したNSXの価格は、1,000万円を超えていました。性能面を考えると十分バーゲン価格なのですが、庶民の手の届く価格ではありません。 しかし、インテグラ タイプRはNSXと同様にこだわり抜いた設計思想でありながら、多くの人が手にできる価格で発売されました。また、3ドアタイプだけでなくDB8型の4ドアハードトップが用意されていたことも、インテグラ タイプRが一般層に支持された理由です。単純に性能面だけを考えるとドアの枚数が少ないほうが有利ですが、日常的な使い勝手を考えると4ドアに軍配があがります。実は、同車種のタイプRで複数のボディタイプが用意されていたのは、現在のところDC2型/DB8型だけです。多くの人に高性能車を届けたい、というホンダの思いがあったのかもしれません。 好みのわかれる3つのスペック DC2型(DB8型)インテグラ タイプRは、登場時の初期型も含めて合計3モデルが作られました。基本的には後発モデルのほうが性能や装備は向上しているのですが、初期型のピーキーな乗り心地を好むドライバーも一定数います。 96Spec、98Spec、00Spec(99Spec)それぞれの違いをみていきましょう。 世間を驚かせた初期型の96Spec エンジンはベース車輌と同型のB18C型ながら、最高出力は180psから200psにまで高められています。ターボのように劇的なパワーアップさせるのが難しい自然吸気エンジンで、10%以上もの出力向上は驚くべきことです。 FFとは思えないハンドリング性能、2L未満の自然吸気エンジンとは思えない高出力、そして価格とあらゆる面で世間を驚かせました。 安定性を高めた98Spec 98Specは、1998年にマイナーチェンジで登場しました。エンジン出力こそ変わらないものの、エキゾーストマニホールドやHIDヘッドライトなど、細部にわたって見直しが図られています。特に大きな変更点は、走行安定性に関わる部分です。 タイヤ幅を195mmから215mmワイド化しつつ、ホイールサイズも15インチから16インチに大径化されました。また、ブレーキローターも同じく大径化され、ホイールハブは4穴から5穴に変更されています。モノコックのさらなる剛性向上やファイナルギアレシオ、ECUも変更され、走行安定性が向上しました。 数字には現れない部分での性能向上が図られましたが、安定性よりも軽くキビキビとしたハンドリング性能を好むユーザーからは不評だったともいわれています。 内外装が拡充された00Spec(99Spec) 最終型として1999年末に登場したのが、00Spec(99Spec)です。性能面ではほぼ98Specと変わらないものの、内外装の充実が図られています。 まず、インテグラ タイプRだけの個性ともいえる、サンライトイエローが外装色に追加されました。また、内装も、外装色に合わせて黄色シート仕様が追加されています。 さらに、「タイプR・X」という、タイプRの上位グレードともいえるモデルが追加されました。スポーツペダルや専用カーボンパネルといった内装が追加されただけでなく、快適性を向上させる装備が数多く追加されているのもタイプR・Xの特徴です。キーレスエントリー、デジタルクロック、オートアンテナ、AM/FM電子チューナー&CDステレオ+6スピーカー、プライバシーガラス、電動格納式ドアミラーといった当時としては高級セダンなみともいえる快適装備が標準装備されていました。なお、サンライトイエローはタイプR・X専用カラーと誤解されがちですが、00SpecのタイプR全モデルで選択可能です。 実はあのシビック タイプRよりも売れた インテグラ タイプR登場の2年後に発売されたEK9型 シビックタイプRは、「タイプR」のモデルではもっともなじみ深いモデルです。しかし、実際の販売台数はEK9型 シビック タイプRの約1万5,900台に対して、DC2型/DB8型 インテグラ タイプRは2倍以上の約3万4,500台に達しました。RV車の台頭でスポーツカーの販売台数が落ち込みつつあったことも考えると、驚異的な販売台数です。 200万円あまりという破格の価格設定と、FFピュアスポーツとしての性能の高さが多くのユーザーの心を掴んだのでしょう。また、現在でも、DC2型/DB8型 インテグラ タイプRの人気は衰えていません。特に00Specで追加されたサンライトイエローは人気で、他色よりも100万円高く買い取られることもあるようです。

ローン中に廃車できる?手続き方法やすぐにローン完済できないときの対処法も紹介
旧車の魅力と知識 2024.10.25

ローン中に廃車できる?手続き方法やすぐにローン完済できないときの対処法も紹介

クルマのローンが残っている状態で、事故や故障などによって廃車にしなければならなくなった方もいるでしょう。ローンで購入したクルマを廃車にするには、基本的にローン残債を完済しなければなりません。 この記事では、ローン残債があるクルマを廃車にする流れや、完済が難しいときの対処法などを紹介します。 ローン残債があるクルマを廃車にする流れ ローンで購入したクルマの所有権は、基本的にローン会社にあります。そのため、ローン中のクルマを廃車にするには残債を完済するだけでなく、所有権の変更手続きもしなければなりません。 ここでは、ローン残債があるクルマを廃車にする流れを紹介します。 1.ローンを完済する ローン中のクルマを廃車にするには、まず残債を完済しなければなりません。借入したローン会社に問い合わせて、一括返済の手続きをしましょう。 銀行系ローンでクルマを購入した場合は、所有者が購入者本人になっているケースがあります。所有者が自分であれば、基本的にローンを完済しなくても廃車にできます。ただし、契約内容によっては残債を完済しないと廃車にできません。借入した銀行系ローン会社に問い合わせて、残債がある状態でも廃車にできるか確認しましょう。 また、事故によりローン中のクルマが廃車になった場合、加入している車両保険や相手側の任意保険を利用すれば、保険金が支払われます。たとえば、10対0の事故でローン中のクルマが廃車になった場合、契約時に設定した車両保険金額または時価額を限度に補償されます(※全損の場合)。 事故の状況次第では、ローンの支払いや乗り換え費用を補填できるため、保険金がいくら支払われるのか保険会社に相談するとよいでしょう。 なお、盗難に遭った場合も加入している車両保険を利用すれば、契約時に設定した車輌保険金額を限度に保険金を受け取れます。 残債を完済したら「完済証明書」が発行されます。完済証明書は、所有権を変更する際に必要な書類のため、紛失しないよう注意しましょう。 2.所有権解除手続きをする 残債を完済したら、ローン会社から購入者名義に変更する「所有権解除」の手続きをします。ローン会社にクルマを廃車にしたい旨を伝えて、所有権解除に必要な書類を送付してもらいましょう。 ただし、車検証の内容に変更があった場合は、自分で揃えなければならない書類もあります。たとえば、ローン中に引っ越しをした場合、住所の移り変わりがわかる住民票を添付しなければなりません。車検証の内容に変更がないか確認し、ある場合はローン会社に必要書類を案内してもらいましょう。 3.廃車手続きをする 所有権解除が完了したら、廃車手続きが可能になります。廃車手続きの流れは下記のとおりです。 1.解体業者にクルマをスクラップしてもらう2.必要書類を揃える3.管轄の運輸支局で「永久抹消登録」をする4.税金の還付申請をする5.還付金を受け取る 廃車手続きは、廃車専門の業者に依頼できます。クルマの引取から運輸支局での手続きを無料で行ってくれる業者に依頼すれば、廃車にかかる手間や費用を抑えられます。 なお、車種や状態によっては中古車買取業者に買い取ってもらえます。廃車にすると1円も受け取れませんが、買取であれば売却代金を受け取ることが可能です。「買取してもらえない」「どうせ金額はつかない」と自分で判断せず、まずは中古車買取業者に相談するとよいでしょう。 ローンの完済が難しいときの対処法 ローン中のクルマを廃車にするには、残債を完済しなければならないものの、まとまった金額を用意できない場合もあるでしょう。残債の完済が難しい場合は、ローンを借り換えたり、ローン会社やディーラーに相談してみることが選択肢として挙げられます。 続いて、ローンの完済が難しいときの対処法を紹介します。 ローンを借り換える 残債の完済が難しいときは、ローンを借り換えるとよいでしょう。ローンの借り換えとは、借入しているローンを別の金融機関で新たに組み直し、借りたお金で残債を返済することです。たとえば、クルマのローンが100万円残っている状態で、ほかの金融機関で新たに100万円借入し、残債を完済します。 金利が低いローンを利用できた場合、毎月の返済額や利息を減らすことができます。 ただし、ローンを借り換えるには、審査に通過しなければなりません。銀行系のマイカーローンで借り換える場合、廃車を前提としていると、借入を断られるケースもあります。必ずしもローンの借り換えができるわけではないことに留意してください。 ローン会社やディーラーに相談する 残債の完済が難しいときは、ローン会社やディーラーに相談するとよいでしょう。理由次第では、条件つきでローン中のクルマを廃車にできる可能性があります。 ただし、相談したからといって、必ずローン中の廃車が認められるわけではありません。 ローンを完済しても廃車にするのが難しいケース 自動車税(種別割)を長年滞納していたり、車検切れで公道を走行できなくなっていたりすると、ローンを完済できても廃車にすることは難しいでしょう。 続いて、ローンを完済しても廃車にするのが難しいケースについて解説します。 自動車税(種別割)の滞納により「嘱託保存」されている 自動車税(種別割)の滞納により、クルマが嘱託保存(しょくたくほぞん)されていると、ローンを完済しても廃車にするのが難しいでしょう。 嘱託保存とは、税務署からクルマを差し押さえられている状態のことです。滞納分の自動車税(種別割)を納税しない限り、嘱託保存は解除されません。 基本的に、自動車税(種別割)を2年以上滞納していると、クルマは嘱託保存されます。ただし、2年以上はあくまでも目安であり、いつ嘱託保存されるかわからないため、廃車を予定している場合は自動車税(種別割)を滞納しないようにしましょう。 なお、自動車税(種別割)を滞納しているとはいえ、絶対に廃車にできないわけではありません。下記の記事で詳しく解説しているため、参考にしてください。自動車税(種別割)を滞納していても廃車はできるのか?税金と廃車について解説 車検切れで公道を走行できない 車検切れで公道を走行できないと、解体業者までクルマを持ち込めないため、ローンを完済しても廃車にすることは難しいでしょう。 車検切れのクルマを解体業者に持ち込むには、仮ナンバーを取得する必要があります。レッカーで牽引しても、公道を走行することになるため、車検切れの場合は仮ナンバーの取得が必須です。 仮ナンバーは、役所で申請した当日に取得できます。ただし、自賠責保険に加入していることが条件のため、保険期間を確認しておきましょう。 なお、積載車の場合は車体全体を載せるため、レッカー移動のように仮ナンバーを取得する必要がありません。積載車を運転できる場合は、活用してみてください。 まとめ ローン中のクルマは、所有権がローン会社にあるため、残債を完済した後に所有権解除を行い廃車手続きをします。 事故や盗難で廃車にする場合は、相手方の任意保険や自分で加入している車輌保険で補償されるため、受け取った保険金で残債の一部を補填するとよいでしょう。 それでも完済が難しい場合は、ローンを借り換えたりローン会社に相談するといった方法があります。また、ローンを完済しても自動車税(種別割)を2年以上滞納していたり、車検が切れていたりする場合は、廃車手続きの手間が増えます。 状況次第で手続きの内容が異なるため、ローンが残っているクルマの廃車手続きを検討されている方は、今回解説した内容を参考にしてみてください。

トヨタ AE86は単なるドリフト車ではない?! クルマとしての高い実力を再評価
旧車の魅力と知識 2024.10.23

トヨタ AE86は単なるドリフト車ではない?! クルマとしての高い実力を再評価

FRレイアウトと高効率エンジンという組み合わせで、軽量コンパクトながら本格的なFRスポーツとして人気を集めたAE86。絶対的なパワーをもたないにも関わらず、格上車種を相手にレースで結果を残すほど高い実力を秘めたモデルでした。 ドリフトというイメージが先行するAE86ですが、本記事ではクルマとしてのポテンシャルの高さと人気の秘密を紹介します。 ドリフト車というイメージの強いAE86 AE86は、長年ドリフトシーンで活躍しているモデルの1つです。軽量で思い通りにコントロールしやすく、構造的にリアをスライドさせやすいことがドリフトに活用されている理由だといわれています。 一方で、1.6LのDOHCエンジンとFRというパッケージングは、レーシングカーとしても高い完成度に達していました。 ここからは、AE86の知名度があがったきっかけと、レースでの活躍を詳しく紹介します。 AE86人気を押し上げた「頭文字D」と土屋圭市氏の存在 AE86の知名度が一般層にまで広まったきっかけは、しげの秀一氏原作の「頭文字D」(イニシャルD)という漫画のヒットです。非力なAE86 トレノで、主人公がハイパワーマシンに勝利していく姿が人気を呼びました。 しかし、「頭文字D」の連載開始は、AE86販売終了後の1995年です。1983年から1987年の販売当時、AE86の高い実力を示したのはレーシングドライバーの土屋圭市氏でした。峠で腕を磨いてプロドライバーに転向した土屋氏は、ドリフトを多用するドライビングスタイルから「ドリフトキング(ドリキン)」と呼ばれて人気を集めます。 ドリフトだけでなくレースシーンでも大活躍したAE86 土屋圭市氏とAE86の名を一躍広めたのは、1984年のフレッシュマンレースです。AE86 トレノのステアリングを握った土屋氏は、開幕6連勝という圧倒的な速さを見せつけました。 翌年の1985年から始まった全日本ツーリングカー選手権には、レビンに乗り換えてフル参戦。そのうちの1戦として開催されたインターTEC(国際ツーリングカー耐久レース)では、大排気量が占める上位陣の一角に食い込む総合6位という成績を収めました。 また、星野薫氏がドライブするトランピオレビンも、1985年と1986年のスポーツランドSUGOで総合優勝を果たしました。格上の日産 スカイラインや三菱 スタリオンが相手だったことを考えると、驚くべき結果です。 レビンとトレノの甲乙はつけがたい AE86には、カローラ レビンとスプリンター トレノという2種の兄弟車があります。基本構造は変わらないものの、それぞれにファンが存在しています。 販売台数や特別仕様車の存在など、レビンとトレノの違いをみていきましょう。 基本性能はどちらも同様 レビンとトレノの基本性能は、どちらも同じです。ボディタイプは、2ドアクーペと3ドアハッチバックが双方に用意されていました。心臓部も共通で、130psを発揮する4A-GEU型エンジンは後に名機として評価されます。 足回りは、フロントにストラット方式、リアにリジット方式を採用。エンジンの耐久性の高さと、改造が容易だったことも多くのユーザーから愛された理由です。 一方で、レビンとトレノの大きく異なる点は、ヘッドライトの形状です。一般的な角目形状のレビンに対し、トレノはリトラクタブルヘッドライトを採用しています。 販売台数が多かったのはレビン 人気漫画「頭文字D」の主人公が乗っていたこと、土屋圭市氏が個人所有していることからトレノのほうが露出が多く人気が高いと思われがちです。しかし、実際の販売台数は、レビンが約6万6000台、トレノが3万5000台と2倍近くレビンのほうが多く売れています。 1985年に始まった全日本ツーリングカー選手権での活躍がレビンの販売台数増加につながったのかも知れません。また、大衆車としてすでに地位を築いていた、カローラブランドだったという点も影響したのでしょう。 トレノにのみ設定されたブラックリミテッド 販売台数では大きくレビンに水を開けられたトレノですが、実はトレノのみに設定された特別仕様車がありました。1986年に最上級グレードのGT APEXをベースに開発された、ブラックエディションです。 ゴールド塗装を施した専用の14インチホイールをはじめ、ボディサイドの「BLACK LIMITED」ステッカーやフロントグリルのエンブレムなど、ブラックのモノトーンにまとめられたボディにゴールドの装飾が特別感を演出しています。 また、内装では、オレンジ色の専用メーターパネルやステアリングの「TWINCAM16」の文字、シートバックレストの「APEX」の刺繍など随所に専用の装飾が施されていました。 40年近くが経過した現在も進化し続けるAE86 AE86は販売終了して40年近く経過する現在もなお、多くのファンから愛されています。AE86はチューニングベースとして優秀なクルマで、アフターパーツメーカーから毎年のように新パーツがリリースされており、ユーザーは自分なりのチューニングを楽しんでいます。 現行車種でさえチューニングパーツは減少傾向にあることを考えると、AE86のアフターパーツの進化は驚異的です。クルマとしての古さは否めませんが、シンプルな構造がカスタマイズ性の高さにつながっているのでしょう。今後も、さらなる進化と人気の高まりが予想されます。

日産 Z33型フェアレディZは初代の設計思想を踏襲?! 低予算で楽しめる最高のスポーツカー
旧車の魅力と知識 2024.10.17

日産 Z33型フェアレディZは初代の設計思想を踏襲?! 低予算で楽しめる最高のスポーツカー

フロントから後端まで流れるようなデザインに回帰した、日産 Z33型 フェアレディZ。初代を思い起こさせるデザインですが、実はほかにも意外な共通点がありました。 Z33型は。製造コストの削減に迫られるなかで生まれたモデルであり、他の世代と比べるとあまり評価されていません。しかし、実際にはスポーツカーとして高いポテンシャルをもつ、魅力的なクルマです。 Z33型 フェアレディZの魅力と実力を、開発背景も含めて振り返ってみましょう。 世界進出の活路を開いたフェアレディZ フェアレディZは、日産が世界に進出するきっかけになったモデルです。名門スポーツカーに迫る性能と価格の安さから、北米を中心に大ヒットを記録しました。 初代から30年余り経ってから、5代目フェアレディZとして登場したZ33型の開発背景と性能を振り返ってみましょう。 奇しくも初代と同じ組み合わせで開発されたZ33 Z32型の販売終了から2年後の2002年、日産リバイバルプランの一環としてZ33型 フェアレディZが登場しました。GT-Rの開発責任者でもある水野和敏氏が開発した「FMプラットフォーム」と呼ばれるプラットフォームを採用し、V6エンジンをフロントミッドシップに搭載することで、抜群の運動性能を発揮します。 一方、でコストダウンの影響で、エンジンはエルグランドと共通のVQ35DE型が採用されました。自然吸気エンジンとして実用的で優れたエンジンではあるものの、スポーツカーと考えると物足りなさを感じます。 しかし、実は優れたプラットフォームと実用的なエンジンという組み合わせは、初代フェアレディZに通じるものがあります。1969年に登場したS30型初代フェアレディZは、ポルシェやジャガーに迫る軽量モノコックボディに実用的なL型エンジンというパッケージングで北米で高い評価を得ました。 フェアレディZは毎年進化している Z33型 フェアレディZは、2002年の登場以降も毎年のように改良が重ねられました。特に大きく進化をしたのはエンジンです。 エルグランドと共通のエンジンはトルクフルで扱いやすい一方、6,600rpmに抑えられた最高回転数ではスポーツカーらしい伸びやかさを発揮できません。しかし、2005年の改良で、最高回転数は7,000rpmにまで引き上げられます。トルクはやや犠牲になったものの、最高出力は294psを発揮するエンジンに生まれ変わりました。 さらに2007年には、後発のV36型スカイラインセダンのエンジンであるVQ35HR型に変更されます。最高出力は313ps、最大回転数は7,500rpmという、まさにスポーツカーらしいエンジンです。もともと素性のよかったFMプラットフォームと合わせて、スポーツカーとして魅力的なモデルに進化しました。 コストダウンの影響を最小限に抑えたスポーツカーとしての高い実力 Z33型 フェアレディZは、バブル崩壊の煽りを受けたモデルと評されています。バブル景気が終焉した1990年初頭以降、徐々に経済活動が縮小されていきました。自動車開発も例外ではなく、影響は2000年初頭あたりまで続いたといわれています。Z33の開発も必要最低限にとどめられ、性能に直接影響する専用エンジンでさえ開発されませんでした。 しかし、高性能なプラットフォームやボディデザインによって、スポーツカーらしい高い走行性能を備えたモデルです。Z33の高い実力について詳しく紹介します。 トップクラスの空力性能 先代のZ32型から大きく印象を変えたボディデザインは、見た目だけでなく性能を追求した機能美が光るスタイリングです。空力性能を示すCd値は0.3で、当時としてはトップクラスの数値を記録しました。 現代でも0.3が目指すべき数値として捉えられていることを考えると、20年以上前に達成していたという事実に驚かざるを得ません。前後スポイラー装着車では、0.29にまで達していたといわれています。 市販車ベースの車輌でレースタイトル獲得 Z33型 フェアレディZは、JGTC(全日本GT選手権)最終年に、ドライバーとチームタイトルをW獲得しています。また、翌年にスタートしたスーパーGT初年度もチームタイトルを獲得しています。続く2006、2007年はタイトルこそ逃したものの、安定した走りをみせて、チーム2位という結果を残しました。 当時は市販車のモノコックボディがベースのため、クルマとしての基本性能がレース結果に大きく影響を与える時代です。空力性能の高いボディ、GT-R譲りのFMプラットフォームの作りのよさによって、Z33型 フェアレディZは圧倒的な速さをみせつけました。 100万前後から購入可能な本格FRスポーツ Z33型 フェアレディZは、前後のZ32型、Z34型に比べると決して評価の高いモデルではありません。現在の中古車価格をみると、状態にもよりますが100万円前後から購入できます。1990年代から2000年前後のスポーツカーの価格が高騰している近年においては、驚くべきバーゲンプライスです。 価格が安いからといって、性能面で他モデルに大きく劣っているわけではありません。初期モデルこそミニバンのエルグランドと共通のエンジンですが、年式によっては300psオーバーのモデルもあります。憧れのFRスポーツを手にしたい方にとって、Z33型 フェアレディZは狙い目の車種かもしれません。

トヨタ 86の開発ストーリーに迫る! 可能性を探るべく製作された1台の試作車が実現のきっかけだった
旧車の魅力と知識 2024.09.24

トヨタ 86の開発ストーリーに迫る! 可能性を探るべく製作された1台の試作車が実現のきっかけだった

トヨタ 86は、2代目の現行型の受注が一時停止になっていたほどの人気のスポーツカーです。車名の由来が名車「AE86」であることやスバルとの共同開発といった話題性の高さから、発売前から注目を集めていました。 スバルの水平対向エンジンにトヨタの燃料直噴技術を組み込むという、形だけではない真の共同開発によって生まれた名車の開発ストーリーを紐解いていきましょう。 両社の思惑が見事に融合して実現 初代86は、トヨタとスバルの業務提携を受けて開発されました。しかし、開発が決定した当初は、トヨタの掲げるコンセプトに対してスバル側が違和感を感じていた場面もあったようです。 最終的には両社の開発陣が強力なタッグを組んで完成させた、初代ZN6型86の開発時の状況を改めて振り返ってみましょう。 決め手となった1台の試作車 2012年に初代が発売された86の開発起源は、2005年のスバルとの業務提携にまで遡ります。両社の提携のシンボルとなり得る車種の開発を目指して、スバルの水平対向エンジンを搭載したFRスポーツという大枠のコンセプトが決定されました。 しかし、トヨタが提示した2Lの自然吸気エンジンのFRスポーツという企画に対して、スバル開発陣は当初は温度差を感じたそうです。長年ターボを装備したハイパワー水平対向エンジンと4WDという最強の組み合わせに価値を見出していたため、トヨタの開発哲学に違和感があったのかもしれません。 両社が一歩を踏み出すきっかけになったのは、レガシィをベースに製作したFRの試作車です。水平対向エンジン+FRスポーツの可能性を探るために、手作りともいえる手法で製作されました。実際に形にしたことで水平対向エンジンが新しい領域を切り開く可能性をスバルが感じたため、プロジェクトは一気に本格的な開発フェーズに移行します。 コンセプトカーを段階的に公開 車輌デザインを担当していたトヨタは、2009年の東京モーターショーで「FT-86 コンセプト」を発表します。このコンセプトカーの時点で、スバル製の2Lの水平対向エンジンを採用することも発表されました。 続く2010年の東京オートサロンでは、「FT-86 G スポーツコンセプト」を公開。東京モーターショーで発表したFT-86 コンセプトに、エアロやターボチャージャーでカスタマイズが施されていました。 さらに2011年のスイス・ジュネーブモーターショーでは、市販化に向けたデザインスタディとして「FT-86 II コンセプト」を発表します。また、同モーターショーでスバルが公開した「BOXERスポーツカーアーキテクチャ」も話題を呼びました。水平対向エンジンとFRのメカニズムをスケルトンの車体に搭載するという、技術コンセプトモデルとしての展示でした。トヨタのFT-86 II コンセプトとスバルのBOXERスポーツカーアーキテクチャを合わせると新車の全体像が見えてくるという、共同開発ならではの心にくい演出です。 スタートダッシュを決めて地位を確立 発売前から段階的にコンセプトカーが公開されて期待が高まっていたこともあり、86は発売直後から一気に注目を集めます。また、発売直後のレースで結果を残したことで、スポーツカーとしての実力を強烈に印象付けました。 続いて、86の人気と実力の高さをうかがうことができる、当初の販売台数とレースでの結果を紹介します。 計画の7倍にも達した販売台数 86発売当初の目標では、月間販売台数は1,000台だったといわれています。しかし、発売初月には約7,000台を売り上げ、年間での販売台数は2万2,510台にも達しました。翌年の2013年にも、1万2,400台を販売しています。 86が発売された2012年ごろは、多くのメーカーのラインナップからスポーツカーが消えていました。歴史のあるGT-Rのように従来からファンのついているモデルならまだしも、まったくの新車種が市場でユーザーを掴んだのは驚異的なことです。 発売翌月のレースで早くも結果を残す 86が発売されたのは2012年の4月ですが、5月にドイツのニュルブルクリンクで開催された24時間耐久レースでいきなりクラス優勝を果たします。記念すべき第40回大会という歴史あるレースで、新型車が優勝したことで世界からも注目を集めました。 また、全日本ラリーや全日本ジムカーナなどでも数々の優勝を果たしており、基本性能の高さをうかがい知れます。過酷なレースの世界での活躍によって、86のスポーツカーとしての評価をさらに高めました。 トヨタとしてのアイデンティティも表現 業務提携というビジネス上の思惑ありきではなく、2社の開発陣が文字通り「共同」で開発したことで86の完成度は高まりました。一方で、トヨタが販売する86には、AE86のDNAも組み込まれています。 基本設計は共同開発ながら、サスペンションや細部の最終的なチューニングは各メーカに委ねられました。トヨタは、AE86を彷彿とさせる、FRらしい旋回性能重視の乗り味に調整。また、極端な味付けをせず、ユーザーが好みにチューニングして仕上げていくという点もAE86と同様です。 スポーツカー不遇の時代に風穴を開けた初代ZN6型86は、現行型が進化し続けても特別な存在であり続けるでしょう。

マツダ FD3S型RX-7が個性的なスタイリングを手に入れた理由とは? 1型~6型の違いも解説
旧車の魅力と知識 2024.09.19

マツダ FD3S型RX-7が個性的なスタイリングを手に入れた理由とは? 1型~6型の違いも解説

  マツダ FD3S型RX-7は、「ワイド&ロー」「ロングノーズショートデッキ」といったスポーツカーに欠かせない外観要素を備えたモデルです。しかし、RX-7の本当の魅力は、個性的な外観ではなく磨き上げられた運動性能にあります。 そこで今回は、FD3S型RX-7が誕生した背景と進化の軌跡を紹介します。 登場後も進化し続けたRX-7 FD3S型RX-7は、12年の販売期間の間、1度もフルモデルチェンジをしませんでした。製品サイクルの短くなりつつあった1990年代以降のモデルとしては、かなり珍しいことです。 基本設計がしっかりしていたからこそロングライフが実現した、FD3Sの開発の背景を振り返ってみましょう。 先代から正統進化を遂げた 3代目RX-7のFD3S型は、6年ぶりのフルモデルチェンジを果たして1991年に登場します。初代から続いた「サバンナ」の呼称がなくなり、当時の販売チャネルを冠した「アンフィニ RX-7」という名称に改められました。 「世界最速のハンドリングマシン」というコンセプトで開発されたモデルで、先代のFC3S型で強めたピュアスポーツという性格を完成の域にまで高めています。 なお、1997年にはマツダの販売チャネルが統合されたこと受け、「マツダ RX-7」に改められました。 意欲的にマイナーチェンジを重ねた FD3Sには、1〜6型までの合計6種類があります。さらに大きく3つの時期に分類され、1~3型が前期型、4型が中期型、5~6型が後期型です。また、各モデルで数多くの特別仕様車も投入されました。 初期モデルの販売台数が思うように伸びなかったなか、発売2年後の1993年に登場したのが2型です。内外装の改良に加え、タイプR2という2シーターモデルも投入されました。バブル崩壊の影響が色濃い1995年に誕生した3型では、大幅なプライスダウンが決行されます。これまでは400万円を超えるモデルもラインナップされていましたが、3型では全モデルが300万円台に抑えられました。 中期型と呼ばれる4型は、6種類のモデルでもっとも長く生産されました。デザイン面での大きな変更点は、テールランプがFD3S型を象徴する3連丸型に変更されたことです。また、エンジン周りでも、16ビットECUの採用やエアインテークパイプの材質変更といったアップデートが加えられています。 後期型の5型では、フルモデルチェンジ並みの大幅な変更が加えられました。特に目立ったのは、エンジン出力がついに国内自主規制いっぱいの280psにまで高められたことです。デザイン面では、開口部の大きなフロントバンパーに変更することでクーリングの解決が図られています。さらに、フロントのウィンカー部がコンビネーションランプに変わり、より現代的で洗練されたデザインになりました。最終の6型では、5型で洗練された箇所や仕様をさらに高める形で、内外装とグレード体系に手が加えられています。 ピュアスポーツを追求したRX-7 1980年代後半から、スポーティな走りにラグジュアリー要素を加えたスペシャルティカーの開発に自動車各社は傾倒していきました。しかし、マツダはRX-7の位置づけをピュアスポーツとして、運動性能を徹底的に磨き上げます。 マツダがこだわり抜いた、FD3Sの運動性能の高さについてみていきましょう。 ロータリーエンジンはモデルごとに進化 FD3Sに搭載されたロータリーエンジンの最高出力は、当初は255psでした。1990年初頭だったとはいえ、GT-RやNSXが自主規制いっぱいの280psを達成していたことを考えるとやや物足りない印象です。 しかし、初代登場以降も意欲的にエンジン開発は続けられ、16ビットECUを採用した4型(中期型)では265psにまで引き上げられます。さらに、後期型の5型では、ついに自主規制いっぱいの280psに到達しました。 脅威のパワーウェイトレシオが実現したハンドリング性能 パワーこそライバル車にやや劣っていましたが、FD3Sの魅力はエンジン搭載位置の最適化と軽量化によって実現した高い運動性能でした。徹底的な軽量化を図った結果、1型登場時の最高出力255psでもパワー・ウェイト・レシオ5.0kg/ps以下という難しい指標をクリアしています。 また、エンジンをフロントミッドシップに搭載し、50:50という理想的な前後重量配分を実現しました。さらに、エンジン搭載位置をFC3Sから25mmも下げ、安定したコーナリング性能も手に入れています。 スーパーGTでも証明したロータリーエンジンの実力 ロータリーエンジンのレースでの活躍といえば、1991年の日本メーカー初のルマン優勝です。それから10年以上の時を経て、FD3Sも日本最高峰のツーリングカーレース、スーパーGTでシリーズタイトルを獲得しています。 すでに販売を終了していた2006年のシリーズで、RE雨宮のRX-7がついにシリーズチャンピオンに輝きました。シリーズ2位のRE雨宮RX-7は最終戦の富士での逆転を目指しましたが、途中スピンを喫したこともあり、最終ラップまで逆転でのタイトル獲得は難しい位置でした。しかし、最終ラップのゴール直前で前走車がガス欠になったことで1つ順位が繰り上がり、ポイントでトップチームと並びます。結果的に、規定によってシリーズチャンピオンを獲得しました。 色褪せない個性的なスタイリング フロントからテールエンドまで、流れるような曲線で描かれたボディライン。FD3S型RX-7は、現代のスポーツカーと比較しても見劣りしない、美しさと圧倒的な個性を兼ね備えたモデルです。 また、FD3Sの個性的なデザインは、世界で唯一量産ロータリーエンジンを搭載できるマツダだからこそ実現しました。ハイパワーながら小型という特徴を活かすことで、他メーカーでは真似できない低重心化を成し遂げたのです。ピュアスポーツとしての性能を追い求めたために、長く愛されるスタイリングが生まれたのかもしれません。

シルビアは価格高騰&値上がりしている?旧車買取専門店が相場推移を解説
旧車の魅力と知識 2024.09.08

シルビアは価格高騰&値上がりしている?旧車買取専門店が相場推移を解説

シルビアは日産を代表するスポーツクーペとして1965年に誕生しました。2002年に登場した7代目に至るまで37年間にわたり、多くのユーザーを虜にしてきました。 今回はシルビアの特徴や魅力、現在の買取相場、今後の価格の見通しなどについて解説します。シルビアを所有している方や、購入を検討している方は参考にしてください。 シルビアとは シルビアは、日産自動車が1965年にクーペとして発表してから2002年まで生産・販売していたモデルです。現代ではスポーツ車として知られていますが、実はスポーツ車として花開くようになったのは1980年代に入ってからです。 また、当時は斬新なデザインで話題を呼びましたが、販売価格が高かったことや乗り心地に対する不評などの影響で、販売台数は伸びませんでした。 世界情勢などの影響を鑑み、紆余曲折を経て7年ぶりとなる1975年に2代目が登場しました。海外向けに、「セクレタリーカー(秘書の乗る車)」をコンセプトとして生産されました。丸目2灯式ヘッドランプやファストバックスタイルで、主に北米からの支持獲得を狙ったデザインに仕上げられています。また、翌年には電子制御式燃料噴射装置を備えたシリーズが追加されています。 1979年に3代目S110型ハードトップが登場しました。センターピラーレスのデザインや直線的なボディラインが当時のトレンドとマッチしたことにより、人気に火が着きます。翌年にはモータースポーツ車として参戦し始めます。 1983年に4代目S12型が登場します。マッシブなデザインのリトラクタブルヘッドライトを採用したクーペとして開発されました。1,800cc、2,000cc、2,000ccターボなど多彩なエンジン設定をラインナップしていました。 1988年に5代目となるS13型が登場します。2ドアクーペとして他メーカーの対抗馬として設計されました。 流れるようなデザインは女性のみならず、当時のスポーツカー愛好家たちからも人気を得て、歴代最高の30万台を販売します。 初期設定は1,800cc、1,800ccターボでしたが、マイナーチェンジで2,000ccと2,000ccターボに変更されました。 1993年に6代目S14シルビアが登場します。 5代目を踏襲しつつボディコンポーネントを拡大したもののS13型の様な軽快な走りを得ることが難しく、スポーツ車としては人気を獲得できませんでした。また、RVブームに入ったことも販売台数が伸びなかった理由の1つです。 1999年に7代目S15型が登場します。 スポーティクーペの座を取り戻すべく開発された最終バージョンです。グレードはスペックSとスペックRの2グレードが設定されました。 時代に合わせ、安全装備としてABSとブレーキアシスト、デュアルエアバックを標準装備しました。 2002年に最終特別限定車としてVパッケージを発売します。同年、市場の変化や排気ガス規制などに伴い、惜しまれつつも生産・販売を終了しました。 シルビアの価格は高騰している? シルビアの価格は高騰している状況です。特に直近数ヶ月は、年式を問わず右肩上がりの傾向を示しています。停滞や下降した時期もありましたが、改めて市場から評価されているといえるでしょう。 高騰の背景には、S15の25年ルール解禁が考えられます。生産終了後も日本国内で高い人気を誇っていましたが、さらに需要が高まった可能性があります。※2024年9月時点の情報です。 ▼25年ルール解禁による影響については、下記の記事で解説しているため、ぜひご覧ください。2024年1月にシルビアS15が25年ルール解禁!今後値上がりする? シルビアの現在の買取相場 シルビアの現在の買取相場は、10万〜370万円程度です。個体差による金額差はありますが、生産終了から20年経過したモデルでありながら高値で取引されています。 2024年9月現在の型式ごとの相場は、下記のとおりです。 型式 買取相場 S13 10万〜250万程度 S14 5万〜250万円程度 S15 10万〜370万円程度 どの型式も、ターボとMTを組み合わせたグレードの買取相場が高くなっています。2L・直列4気筒ターボのSR20DETのエンジンを搭載している点が買取相場に大きな影響を与えている可能性があります。 シルビアを高く売るにはどうすればよい? 続いて、シルビアを高く売るためのポイントを紹介します。 こまめにメンテナンスする&事故を起こさない 一番価格に影響があるのは修復歴の有無です。シルビアはスポーツ車ということもあり、フレームの修復歴の有無が価格に大きな影響を及ぼします。きちんと修復されていて機能的に問題が無くても、市場での「傷物」という評価は免れません。 またチューニングやカスタムが行われているクルマも価格に影響がでるでしょう。そして、こまめなメンテナンスで良好な状態が保たれているシルビアも、当然ながら価格が高くなりやすいです。 13K’sは排気量やターボであることをアピールする 販売台数30万台を記録した5代目シルビアのターボモデルです。モデルは2ドアクーペだけの販売となりました。マイナーチェンジに際して前期型の1,800ccから2,000ccへ排気量がアップされ、ターボ車は205psになりました。 S15 スペックRの高い性能をアピールする S15 スペックRは、マニュアルトランスミッション車で250ps/6400rpmをマークするレーシンググレードとも言うべきスポーティクーペです。 スポーツ走行を視野に入れたボディは剛性がアップされました。16インチホイール装着車はスポーツチューン・サスペンションが装備されています。 ブレーキも強化され、全ベンチレーテッド・ディスクを採用し、フロントキャリパーは4ポッド対向ピストン方式です。またブレーキブースターもサイズアップされています。

「愛車遍歴の1台が左ハンドル+MTっていいかも」という話
旧車の魅力と知識 2024.08.29

「愛車遍歴の1台が左ハンドル+MTっていいかも」という話

筆者だけの思い込みかもしれないが、ハンドルの位置が右から左になるだけでずいぶんと景色が変わるものだと驚くことがある。 さらにMTともなれば、右ハンドルのときは左手で操作していたものが、左ハンドルになると右手に変わる。たったそれだけのことでも、運転する行為そのものが新鮮に思えてくるから不思議だ。 右ハンドル+MT車の選択肢が減りつつあるなか(それでもシビックRSのようにMTのみのモデルがいまだに発売されたりする)、左ハンドル+MT車ともなればもはや絶滅危惧種だ。 それなら、乗れるうちに乗っておいてもいいかも…。今回はそんな話だ。 ■初めて運転した左ハンドル+MT車の思い出 人生初の左ハンドル+MT車はというと、当時、最新モデルとして販売されていた993型のポルシェ911だ。当時ハタチ。なんでそんなクルマに乗れるんだ!と突っ込まれそうなので先に白状しておくと、当時の正規ディーラーに、友人と連れ立って「運転させてください」と乗り込んだんである。いま考えると、若葉マークがようやく外れたばかりの若者によく試乗させてくれたと思う。 「準備するので中で待っててください」と、ショールームに案内され、色っぽい美人のお姉さんが出してくれたディーラー物(?)のコーヒーを味わっていると、メカニック氏が「準備できました。どうぞ!」と、ポルシェ911をショールームの前に横付けしてくれていた。 自分から乗りたいといってショールームまで来てみたものの、クラッチミートが難しいとさんざん聞かされてきた911、果たして自分に運転できるのか!? ここまで来たら後には引けない。 覚悟を決めて運転席に乗り込み、シートポジションを調整する。左手でキーを捻り、背後で空冷エンジンがウォン!!と目覚める。クラッチペダルを踏み、おそるおそる右手でギアを1速に入れた。なんじゃこのガッシリしたシフトノブは!サイドブレーキを下ろし、いろいろクラッチミート。911はアイドリングのままクラッチミートするんだっけ…。するするっと…正しくはおそるおそる左足を床から離す。すると…動いた!エンストせずに発進できた! 2,30分くらいだったか、夢中で911を走らせた。実はこのとき、実はいろいろあって、結果としてホロ苦い思い出となってしまったのだけど…。 ■30万円のゴルフ2 GTIを買い逃した話 都内でウィンドウフィルムを施工するアルバイトをしていたおよそ30年前、勤め先の専務から「ゴルフ2 GTIのMTの売り物があるんだけど、買わない?3ドアの左ハンドル。30万円でどう?」と話を持ち掛けられた。 いまなら飛びつきたいくらいの話だけど、当時はまだ「ゴルフはダサい(すいません)」というイメージしかなかった。どうもハッチバックのクルマが好きになれなかったし、この時点でゴルフを運転したことがなかったことも関係していたように思う。このときハタチ。まだまだ頭でっかちだった時代だ。 アルバイト先であるフィルムの施工場に入庫してくるのは、メルセデス・ベンツやアウディ、当時流行りのボルボのエステート、たまにポルシェやジャガーといった高級車ばかり(在籍中、なぜかゴルフのフィルム施工は機会がなかった)。そんなわけで、仕事とはいえ高級車に触れる日々。だからこそ、余計にゴルフがチープに思えたのかもしれない。…というわけで、30万円のゴルフ2 GTIを手にすることはなかった。 それからおよそ4年後、就職した会社の社長が発売されたばかりのゴルフ4 GTI(MT)の新車を手に入れ、打ち合わせに同行した際には運転させもらった。このとき、初めて実際にゴルフを運転したことでようやくその魅力に気づいた。その後、ゴルフ4ワゴンを手に入れて以来、現在のゴルフ トゥーランまで都合6台のゴルフに乗ることになろうとは。 ■身近なところに左ハンドル+MT車があった! これまで、仕事を通じてさまざまな左ハンドル+MT車を運転する機会に恵まれた。ちなみに、現在、趣味車として所有しているクルマも左ハンドル+MT車だ。ふと思うのは、若いときのホロ苦い経験を埋め合わせたかったのかもしれない。 いまや、プライベートでもたびたびお邪魔している、東京都青梅市にある「Garage, Café and BAR monocoque/ガレージ・カフェ&バー モノコック」の駐車場に1台のハッチバックモデルが目に留まった。 店舗を訪れた人であれば「あぁ。あのクルマね」となるかもしれない。 2011年式 ルノー トゥインゴ ゴルディーニ ルノー・スポール。まさに「左ハンドル+MT車」そのものだ。 同店のマスターであるRYOさんに伺ったところ、走行距離は約10万キロ、価格はASKとのことだが、100万円前後(車検2年付き)を考えているらしい。 内装はというと、エアバッグ付きの純正ステアリングの代わりにOMP製のディープコーンステアリングが、運転席にはスパルコ製のフルバケットシートが装着される他、リアシートやカーペット類が取り外されており、実にスパルタンだ。また、タコメーターの隣にはPIVOT製のdigital monitorが装着され、水温・エンジンの回転数・電圧を表示することができる。 アラフィフ世代以上のクルマ好きにとっては、どこかで見覚えのある仕立てではないだろうか。かつて、スターレットやマーチ、シビック、CR-Xなど、国産ホットハッチで愛車をこんな感じに仕上げて峠道を攻めたり、朝から晩まで(翌日の明け方まで?)乗り回していた人も少なくないはずだ。 折からの旧車人気の影響を受けて、いずれのクルマは信じられないような価格帯になってしまった。オリジナルが是とされ、おいそれとカリカリにチューニングができない雰囲気ができつつある。そもそも、いじりたくても部品そのものがレアになり、安価に仕上げること自体が夢物語になってしまった感がある。 その代わり…ひと昔の輸入車が手頃な価格で手に入るようになってきた。その代わり、かつて高嶺の花だった「ガイシャ」が手頃な価格帯となり、一時期は「タダ同然で引き取ってきた」国産旧車がとんでもない相場で取り引きされる時代となった。 であれば、比較的手が届きやすい輸入車、しかも左ハンドル+MT車がその枠に含まれるのなら…これは楽しんだ者勝ちだと思う。特に、若い世代の方たちにとっては「左ハンドル+MT車+内燃機関のクルマを安価で楽しめる」またとない機会かもしれない。 ●2011年式 ルノー トゥインゴ ゴルディーニ ルノー・スポール ・価格:ASK(100万円前後を予定)・走行距離:約10万キロ・左ハンドル/5速MT・車検2年付き・BS Speedline ホイール・Pro Racing サブコン・BC Racing 車高調・PIVOT digital monitor・ブレーキ冷却ダクト・ボディ補強・アーシング・DIXCEL 特注スリットローター/Zタイプ ブレーキパッド・実測160馬力 ●問い合わせ先:クルマ&バイク好きのオアシス「Garage, Café and BAR monocoque/ガレージ・カフェ&バー モノコック」 ・Facebook:https://www.facebook.com/monocoquecafebar・Instagram:https://www.instagram.com/monocoque.cafebar/・営業時間:11:00〜23:00・定休日:不定休(facebook、Instagramに情報あり)・住所:東京都青梅市畑中1-126-1・TEL:0428-84-0644 ■まとめ:愛車遍歴の1台が左ハンドル+MTっていいかも 新車で買える左ハンドル+MTというと、基本的には輸入車、または逆輸入車だ。正規ディーラーで販売されているクルマで見ていくと、アバルトF595(448万円)あたりが現実的なところだが、それでもコミコミで500万円コースだ。正直いって決して安いクルマとはいえない。 しかし、中古車であれば、それこそピンからキリまである。カーセンサーで調べてみたら、もっとも高価な左ハンドル+MT車は1996年式のフェラーリF512M(RKスペシャル)の1億5千512万円(!)。そういえばこのフェラーリ、某ミュージシャンの元愛車だった個体のはず。反対に、もっとも安いクルマは、2004年式フィアットパンダの33万2千円(いずれも支払総額)だった。 欧州車を中心に、コミコミ100万円以下で買える左ハンドル+MT車もそれなりに選べる。安く買える分、低年式や過走行の個体も含まれている。そこはある程度割り切って「壊れたら、その都度直していく」くらいの心持ちの方がいいかもしれない。 2024年の時点で、新車で購入できる左ハンドル+MT車が限られている以上、10年後にはいまよりも確実に選択肢が限られていることは間違いない。交差点の右折が大変(特に対向車の右折待ちがいる場合)、駐車場などの料金所が左ハンドルに対応していない等、不便に感じることも少なくない。 しかし、左ハンドル+MT車には、それを補って余りある魅力があると個人的には感じている。右ハンドル+MT車も充分に楽しいけれど、ちょっと変化が欲しいと感じたら、左ハンドル+MT車を選択肢に入れてみてほしい。初めてMT車を運転したときのような、新鮮な感覚、そしてワクワクする気持ちが蘇ってくることは間違いない。 そして、行きつけのカフェに立ち寄って居合わせた人たちとクルマ談義を楽しむ…。きっと充実した時間を過ごせるはずだ。 [画像・Porsche、Volkswagen/撮影&ライター・松村透]

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