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ガレージカレント取材記:1989年式メルセデス・ベンツ500SE(W126)
ライフスタイル 2023.08.28

ガレージカレント取材記:1989年式メルセデス・ベンツ500SE(W126)

今回は、20代による20代のための輸入車デビュー応援企画! 目的地であるガレージカレント(神奈川県横浜市)に向かい、取材してきました。 ■クルマの紹介 今回僕が取材した車輌は、メルセデス・ベンツの1989年式500SEというクルマです。 この500SEは、1979年にデビューしたW126と呼ばれる二代目のSクラスのなかでも上級グレードに位置するクルマです。 当時メルセデスは「最善か無か」というトガったスローガンを掲げた結果、生産終了から30年以上経過した現在においても「オーバークオリティ」と称されるほどの質感を誇ります。 当時の新車価格は1210万円。 まさに「高級車」といえるクルマですが、歴代Sクラスのなかでもっとも多い販売台数を記録。 現在のメルセデスのイメージを確かなものにしたクルマともいわれています。 また、当時の日本では、金丸信、田中角栄などの大物政治家をはじめ、企業経営者、プロ野球選手やプロゴルファー、芸能人などもW126を愛用していました。 また、F1ドライバーの間でも非常に人気があり、ケケ・ロズベルグ、ニキ・ラウダ、ナイジェル・マンセルなど、多くのドライバーたちがプライベートでW126を運転していたのだとか。 このことからも、ただ高級で快適なサルーンカーというだけでなく、ドライバーズカーであったことがうかがい知れるエピソードですね。 しかし、このクルマがスゴイのはわかったけど、価格も高いし若者にはもっと軽快なクルマのほうがよさそうなのに、なぜこれが20代におすすめなのかと疑問に思うことでしょう。 安心してください。ここからしっかり解説してまいります。 ■経験として体で知っておくべき上質さ 販売車輌ということで助手席での同乗走行となりましたが、その乗り心地に大きな衝撃を受けました。 ただ単に快適さでいったら現行の高級車のほうが上かもしれませんが、今のようにアクティブサスペンションや電子制御スロットルなどの魔法みたいなハイテク装備を持たずして、建築物のようなボディ剛性、バネの柔らかさに頼った乗り心地ではなく、コシをのこしたしなやかな足回りなどが体感できます。 クルマの基本的かつ根本的なメカニカルな部分を徹底的に煮詰めることで、80年代において現代と比べてもまったく謙遜のない素晴らしい乗り心地を保持している点には、本当に感動しました。 若いときに当時のメルセデスが持つプロダクトへのこだわりや、本物の上質さを体で知っておくということは、今後のカーライフに絶対的な影響を与えてくれるはずです。 しかし、この先W126もどんどん年老いて台数は減っていき、コンディションの良い個体を探すのは難しくなっていくことが予想されます。 そのため、このW126が当時のシャンとした面影を残したまま、はっきりと僕たちにその現役時代の実力を伝えてくれる時間はそれほど残されていないはず、といってもいいでしょう。 ■ガレージカレント店長に聞くW126の「オススメの使い方」とは? もし、僕たちがこのW126を手に入れたとき、どのような使い方をしたらカーライフを楽しめるのか、このとき、別の個体の取材に来ていたライターの林氏と、ガレージカレント店長を交え、20代のクルマ好き同士で真剣に考えてみました。 筆者:皆さんだったらどうやって使いますか? 店長:僕だったら仕事終わりに、好きな音楽を流しながら好きな道をぐるぐる走り回るのが楽しいと思うなぁ~。 林:ん~、僕だったら週末に友達とどこか遠くの温泉に出かけたりして使うとかですかねぇ。 筆者:あー温泉いいですね、みんなで運転を替わりながらタクシー、ハイヤーごっことかしても楽しそう! 店長:タクシーごっこは楽しいかもね。 筆者:大きなボディの割に意外と小回り効くから、都会でも難なく運転できそう。意外と普通に通勤とかで乗っていたら、偉くなった気分で面白いかもしれないですね(笑)。 一同:いずれにしてもクルマ主体の生活というよりかは、上質な道具としてうまく各々のライフスタイルに取り入れて使えるからいいよね。 もし仮に、新車同様のW126が残されていたとして、それはもはやコレクターズアイテム。そう簡単に手が届くものではないことが予想されます。 しかし、今ならまだコンディションのいい個体が、頑張れば20代でも手の届く価格帯で購入できるチャンスが残されています。 維持費のことが気掛かりなのはいうまでもありません。しかし、素性の良い個体を手に入れ、このクルマに精通した主治医やベテランオーナーたちと巡り会うことでさまざまな困難を乗り越えられる確率が格段にあがります。 仕事終わりの深夜、現代のスポーツカーに乗ってドライブすることで気分がリフレッシュできるように、僕のような20代の人たちが生まれる前に造られたクラシック・サルーンで音楽を聴きながら優雅に高速道路を流す……。 多様性が求められ、なおかつ受け容れられる現代だからこそ、クルマの本質を存分に味わっておきたいものです。 ホンのちょっとの勇気があれば、そこにはクルマに対する価値観を根底から覆すほどの「ホンモノの世界」が待っている。そう感じた取材となりました。 ⚫︎今回取材したクルマはこちらhttps://www.garagecurrent.com/car/87221 なお、ガレージカレントの運営元であるカレント自動車は「旧車王」という買取サービスも行っています。今回取材したガレージカレントと同様に、20年以上にわたって事業を展開した実績があり、クルマのプロが多く在籍しています。もし将来、クルマの売却を検討することがあればぜひ「旧車王」を検討してみてください。 [ライター・小河昭太]

日産・フェアレディZの系譜とその魅力【S30系・基本編】
ライフスタイル 2023.08.23

日産・フェアレディZの系譜とその魅力【S30系・基本編】

■スーパーカーたちと並んでも堂々として見えた国産スポーツカーの代表格 私が“フェアレディZ”と出会ったのは1970年代の末ごろ。 ランボルギーニやフェラーリ、マセラティなどのスタイリッシュなデザインをまとった“スーパーカー”たちが展示会場に集められ、スーパースターのように子供たちの憧れの視線を集めていた“スーパーカーブーム”のただ中でした。 どっぷりブームにハマっていた小学生の私は、親に買ってもらった大判のスーパーカーのグラビア本に毎日のように熱心に見入っていました。 その1ページを飾っていたのが、S30系・フェアレディZの1モデルである「240Z」でした。 特徴的なマルーンのボディ色に塗られたロケットを思わせる流線型のボディは、小学生の私にも美しく感じられ、並み居るイタリアのスーパーカーたちにも引けを取らない、堂々としたたたずまいが印象的でした。 日本人として誇らしい気持ちにさせてくれたのを覚えています。 ■オトナになった目線で見直したフェアレディZの素顔 今回紹介する「S30系」の「フェアレディZ」は、「フェアレディ」としてはSR311/SP311型の「ダットサン・フェアレディ」に次ぐ2代目ですが、その後ずっと受け継がれていくことになる「フェアレディZ」としては初代のモデルになります。 その成り立ちは、北米市場を主軸として見据えた、世界戦略モデルの開発からでした。 軽量なボディ設計に始まり、高性能なヨーロッパ車ともレースでじゅうぶんに戦える足まわりを備え、高出力な直列6気筒エンジンが搭載されたことで、国際的な基準で見ても一線級の動力性能が与えられました。 外観は、ジャガーEタイプやMG-Bなど英国車のエッセンスを採り入れつつ、独自の個性をカタチにした優れたデザインにまとめられました。 それらの要素が相まって、当時の代表的な存在であったジャガーやポルシェなどのスポーツカーに負けない魅力と性能を備えながらリーズナブルな価格だったことも後押しして、かなりのヒットを記録したそうです。 しかしそれから30年以上経ち、オトナになってある程度冷静な目で「S30系・フェアレディZ」を見たところ、ローコストで制作された車輌という側面が浮かび上がってきました。 軽量なモノコックボディは、同時期に作られたスカイライン(ハコスカ)ほど手が込んでおらず、足まわりは前後とも安価に製造できるシンプルなストラット方式、エンジンは実用性の色が強いタフなつくりで、製造コストを抑える努力があちこちに感じられるものでした。 それは、フェアレディZがスーパーカーに肩を並べていたという印象のまま育った私にはショックなことでしたが、デザインは当時美しいと感じたままの魅力を変わらず備えていましたし、ローコストの設計とは思えない性能を達成した開発陣の創意工夫と努力には、むしろリスペクトが高まったほどでした。 ■旧車ブームの立役者としてのフェアレディZ 今から約20年ほど前から盛り上がりを見せ始めた"旧車ブーム"のなかで、「ハコスカ(C10系・スカイライン)」との二枚看板でブームの火付け役となったのも、この「S30系・フェアレディZ」でした。 デビュー当時から、その流麗なデザインはスポーツカー好きの支持を集める大きな要因でしたが、それから40年以上経った今でも色あせずに、旧車ファンの心に刺さり続けていることが人気の大きな理由だと思います。 そしてそれと合わせて、搭載されている“L型エンジン”の存在も、もう一つの重要な要素ではないでしょうか。 発売当初も1,998ccで130馬力を発生して高性能ユニットと好評を得ていましたが、1980年代終盤から1990年代にかけての“ゼロヨンブーム”で盛んに競い合いが繰り広げられたおかげで、飛躍的にチューニング技術が進みました。 L型エンジンで最高排気量のL28型をベースに3.2Lまで排気量が拡大され、高度なチューニングが施された結果、300馬力をゆうに超える出力を発揮。 古い型式と言えるOHC(オーバーヘッド・カムシャフト)方式にも関わらず、当時の高性能の証といえるリッター100馬力オーバーを達成していたのです。 そんな背景が重なって、チューニング指向ではない人たちも憧れる存在として、新たに脚光を浴びることになりました。 ■S30系・フェアレディZのインプレッション S30系・フェアレディZの魅力は、何といってもまずデザインでしょう。 前に向かって鋭くなる流線形シルエットに加え、ロングノーズ&ショートデッキの“ファストバック”スタイルが、風を切り裂いて進むスポーツカーらしさをより強調させています。 エンジンは基本グレードのL20型(1,998cc)で130馬力。 あとから追加された「240Z」に搭載のL24型では、2,393ccで150馬力を発生。 今のクルマと比較すると心もとない数値ですが、実際に乗ってみると、L20型でも今の高速で気持ちよく走れる性能を有しているのに驚かされます。 それよりも特筆すべきは、数値には表れない回したときの気持ち良さです。 さすがに回転上昇の鋭さはそれほどではありませんが、直列6気筒特有のスムーズな回転フィーリングは、ぜひ味わっていただきたい部分です。 排気音よりもキャブレター特有の吸気音がよく聞こえるエンジン音も、今のクルマではけっして味わえない魅力の一つと言えるでしょう。 それらが相まって、どこか遠くにドライブしたくなる気持ちにさせてくれます。 室内を見てみましょう。 クラシックな雰囲気の中に、高性能さを感じさせる2眼+3眼メーターや、大径のウッドステアリングなどのスポーティな装備によって、欧州のGTカーを思わせる精悍な雰囲気を感じられます。 ハンドルはアシストのない、いわゆる“重ステ”なので、停止時の“据え切り”は少し覚悟して掛からないとなりませんが、慣れれば(真夏以外は)涼しい顔で回せるようになるでしょう。 シートの座り心地はお世辞にも良いとは言えませんが、適度に柔らかく、長距離でもそれほど心配することはないと思います。 それよりも印象的なのはその着座位置です。 ドアを開けて後ろに手を回すと、リヤタイヤに触れるくらい後方に位置するポジションは、走っていると背中にリヤタイヤの存在が感じられるようで、今のクルマに慣れた人には想像できない感覚を体験させてくれるでしょう。 ■S30系・フェアレディZの豆知識 S30系のフェアレディZは、年式やグレードごとに何種類かに分類されますが、ざっくり括ると前期と後期に分けられます。 見分ける点はいくつもありますが、大きなところだと、まずはテールランプの形状です。 前期は“ワンテール”と呼ばれ、ストップ、ウインカー、バックの各ランプがひとつのユニットにまとまっています。 後期はバックランプが独立して、前期のワンテールに対して“ツーテール”と呼ばれています。 もう一つは内装のダッシュボードの形状です。前期/後期とも、ハンドル正面の速度/回転計の2眼と、ダッシュ中央上部の水温&油圧/電圧&燃料/時計の3眼メーター(年式、グレードにより例外あり)という構成は共通です。 異なる点はそのデザインで、前期は各メーターにヒサシが付いた、独立感のある有機的な造形が特徴です。 後期になると各メーターのヒサシはなくなり、全体的にややシャープ感のあるデザインに変更されます。 ※年代やグレードでさらに細かく分類されるようですが、ここでは省略します。 ちなみに、“初期”と呼ばれる希少なモデルがあります。 その特徴は、リヤウインドウの後部に左右1対の細長い通気口があって、それが紳士のヒゲに見えることから、マニアの間では「ヒゲ付き」と呼ばれています。 次回は、フェアレディZの系譜とその魅力【S30系・中級編】をお届けする予定です。 どうぞお楽しみに。 [ライター・画像 / 往 機人]

土より街を選んだ「SUV」カテゴリーの開拓者、初代ハリアーを深掘り![開拓者シリーズ:第1回]
ライフスタイル 2023.08.21

土より街を選んだ「SUV」カテゴリーの開拓者、初代ハリアーを深掘り![開拓者シリーズ:第1回]

醤油、味噌、トンコツ。さらには家系……。 種類(カテゴリー)が多いゆえに味わう楽しさがラーメンにあるように、クルマにもいくつかのカテゴリーがあり、クルマ選びのスタート地点になっていると思う。 例えば「セダンから愛車を選ぼうと思ったけど、ラゲッジの使い勝手を考えるとハッチバックもアリだね……」と。 そんなクルマのカテゴリーには、それぞれ「始まりの存在」があるはず。 カテゴリーの開拓者(パイオニア)たちにスポットをあて、その開拓者の魅力を探りながら、私、柴太郎の独自視点でカテゴリーを形成していった功績や理由(ワケ)にも焦点をあてていきたい。 「短期集中3回シリーズ」でお届けしていきたいが、第1回目のカテゴリーは「SUV」。 そして、その開拓者はトヨタ初代ハリアーだ。 ■「SUV」という言葉が浸透する前夜には、確固たる「クロカン」ブームがあった 国産車、輸入車問わず、今をときめくカテゴリーといえば「SUV」だろう。 時代を遡り、1980年代から1990年代にかけて、最低地上高が高く、オフロードに強いヘビーデューティー使用の4WDモデルは一定人気があり、「クロカン」(クロスカントリー)というカテゴリーを形成していた。 スズキジムニーからトヨタランドクルーザーまで、サイズはさまざま。 都会乗りでも人気を集めた「三菱パジェロブーム」(1992年頃)が巻き起こり、また、従来のクロカン・カテゴリーの匂いがあまりしないトヨタRAV4(1994年)やホンダCR-V(1995年)など、シティ派ライトクロカンといえるモデルも次々と誕生。 それらは大ヒットしたが、「新しい何か」や「SUV」という言葉を市場に浸透させるには至らなかった。 ■「クロカンのようだが、どこか違う」。1997年、トヨタ初代ハリアーが新たな風を吹かせた そして1997年。突如としてトヨタが放ったモデルに世間の耳目が集まる。 それが初代「ハリアー」。 それまでのクロカンと、大枠という意味でのカタチは似ているが、丸みを帯びたスタイリッシュなデザイン。 斬新な大径タイヤを履き、オフロードをイメージさせる雰囲気はほぼ皆無。 その外観だけで「クロカンのようだが、どこか違う……」という新たな世界観を感じさせた。 今改めて見ても、リアピラーのデザイン処理は秀逸すぎる、と思う。 また、FFベースでモデルをつくりあげたという発想も、それまでのクロカンモデルとは一線を画している。 頑丈さと耐久性に優れたラダーフレーム構造。 多くのクロカンは、ピックアップやトラックなどに採用されるこのラダーフレームを採用していたが、初代ハリアーはフレームと上屋を一体構造にしたモノコックボディ構造を採用。 オンロード重視のコンセプトは「なんちゃってクロカン」と当時揶揄されたが、今思えば時代をかなり先取っていた戦略であり、この構造の違いが「別物」を生み出したと言っていい。 床から天井までのボディ全体でクルマを構築しているモノコックボディからは乗用車感覚が伝わり、広いキャビンは「まるで高級サルーン!」と例えていいほど。 初代ハリアー。 まさに「新しい何か」が感じられるモデルであり、当時のクルマ好きを振り向かせる存在であった。 ■初代のCMキャッチフレーズは「WILD but FORMAL」。猛々しくもスタイリッシュ。それが似合っていた 前項で「まるで高級サルーン!」と述べたが、当時、クルマ好きの仲間たちと初代ハリアーで高速道路を試乗したことがある。 そのモデルのパワーユニットはV6、3Lだったが、走行しながら、「この滑らかな走り味は背の高いクラウンのようだ~!」と興奮しながら、みんなで絶叫したことを思い出す。 そういう意味では、現在人気絶頂のクラウンクロスオーバーのコンセプトを、25年前に先駆けていたのが初代ハリアーなのかもしれない(……これはちょっと乱暴な表現ですかね。笑)。 このように「新しい何か」をもたらせた初代ハリアー。 シティ派クロカン、あるいはスタイリッシュ・クロカンともいえる存在となり、直後にメルセデスベンツMクラスやBMW X3など欧州ブランドからも「その手があったか!とフォロワーが誕生。 まさに開拓者(パイオニア)といえる。 SUV(スポーツ・ユーティリティ・ヴィークル)という、北米で形成されつつあったカテゴリーの言葉が、初代ハリアーの認知、市場への浸透とともに膨らんでいったのが、ちょうど20世紀が終わりを告げるあたりである。 ■2代目、3代目と正常進化したハリアー。パワフルな走りを味わえるハイブリッドモデルには驚いた! ▲レクサスRXの兄弟車的存在の2代目(上)と、価格を抑えたグレードもあった3代目(下)。3代目のグリルデザインは注目の的! その後、ハリアーの2代目は、レクサスRXの兄弟車的存在として2003年に誕生。 2005年にはトヨタの懐刀、ハイブリッド搭載車も追加された。 V6、3.3Lエンジン+モーターの組み合わせは、当時のハイブリッド=エコという認識を覆すかのように、燃費性能よりむしろ速さ重視というセッティング。 背の高いSUVでも速い! という新境地を提供したモデルといっていい。 2013年誕生の3代目はレクサスRXと袂を分かち、専用モデルとして新たなにスタートを切った。 2Lガソリンモデルという、価格が抑えられたグレードがラインナップされたこともあり、20代の若者にも人気が広がり、「SUV」はいろんな層に受け入れられていく。 ハリアーらしいエレガントさは保ちつつも、スポーティ志向もある。 何よりフロントグリルにガラスのような素材を採用したのが斬新。 当時、ある自動車評論家氏はこのグリルを見ながら「SUV界のEXILEだね」と言っていた。 ふむ、まさに言い得て妙だ。 ……そして、現行4代目ハリアーは2020年に誕生。 クーペフォルムとなったスタイルは、シティ派SUVの本流のど真ん中を走っているといっていい。 また、国産ミドルサイズSUVの主役を担っていることも明言したい。 それだけ、トヨタが力を入れて開発しているモデルであり、ユーザーが求めるクルマでもある、ということだ。 初代の誕生から26年。 SUVの開拓者となった「ハリアー」というクルマは、脈々と世代を紡ぎ、SUVのなかで今でも主役を張る。 これは……「凄い」としか言いようがない。 [ライター・柴太郎 / 画像・Dreamstime, Photo AC]

学生だからってあきらめるのはまだ早い!工夫次第では夢じゃないこだわりの旧車ライフ
ライフスタイル 2023.08.08

学生だからってあきらめるのはまだ早い!工夫次第では夢じゃないこだわりの旧車ライフ

近年、20~30代の若者の間でネオクラシックカーと呼ばれる旧車ブームが巻き起こっており、非常に注目を集めている。 都内で大学生をしている筆者のまわりでも、ゴルフやボルボに代表される王道車種はもちろん、そのほかにも個性的なネオクラシックカーがほしいという声がちらほらと聞こえるようになってきた。 クルマが好きな筆者としては、同世代の友人たちがどんな要因であれ自動車に興味を持ってくれるのは本当に嬉しいことである。 ▲近年絶大な人気を得ているゴルフ2 ▲同じく人気を集めているボルボ240 しかし我々20代の学生にとって、クルマというのはとてもハードルが高い買い物、ましてや旧い車なんてなおさらのこと。 しかも自動車というものは買っただけでは済まず、維持費がかかるし、旧車なら修理費もかかったりもする。 そういった点で、皆あこがれてはいるけれど、なかなか手が出ないというのが現状である。 そんな“旧車に乗りたいけれど、ハードルが高くてあきらめかけている同世代のオーナー予備軍の方々”へ。 ごく一般家庭で育った文系大学生の筆者が、“どのようにして旧車ライフを送れているかのコツと工夫”を参考になるかはさておき、お伝えしておこうと思う。 ■旧車は維持費が高い、燃費が悪いというイメージについて 僕のまわりの大人や友人、いろいろな人から“超”頻繁に聞くフレーズとして“旧車は壊れる、旧車は金がかかる、燃費が悪い”がある。 これは確かに間違っていないが、正しいとも言い難い。 旧車のなかでも大小さまざま千差万別であり、これを真に受けて旧車をあきらめてしまうのは非常にもったいないと思う。 ■旧車と付き合っていくうえでネックになる維持費や修理費を節約するには 旧車がその魅力にもかかわらず敬遠される要因でもあるランニングコスト。 これは工夫次第で抑えることができるのだ。 もちろん税金や保険は節約できないので、頑張って捻出する以外に選択肢はないのだが、ここでは車検や整備費などの抑え方について解説していく。 ポイント1 ~ユーザー車検~ 車検というと、整備工場に依頼して取得してもらうのが一般的である。 しかし旧車の場合、車検を取得には現行の自動車とは少し異なる技術が必要であり、整備費が高くついてしまうのだ。 それを自分でおこなうことによって、大幅に費用を節約することができる。 もちろん車両によって注意点などが異なったりもするわけだが、近年ではユーザー車検に挑む人も増えている。 さらにネットにも多くの情報が公開されているので、それらを参考にすると良いだろう。 ポイント2 ~こまめな点検、整備を自分で~ 旧車は壊れやすいといわれるが、理由としてはさまざまな部品が年数を経て劣化していることがあげられる。 それらの部品は大抵大事になる前に予兆があり、それに気が付いて事前に交換や修理、調整をしてやることで解決できる。 ほったらかしにしないで日頃からこまめに車の様子を観察して注油するなど、メンテナンスしてクルマとコミュニケーションを取ることが大切だ。 これらのことを続けていれば、オーナーにしかわからないクルマの声のようなものが聞き取れるようになっていき、これが旧車と付き合っていくことの醍醐味だったりもする。 ポイント3 ~修理を自力で行う方法~  旧車は壊れやすいといわれるが、それゆえに構造がシンプルで簡単に修理できる傾向がある。 メジャーな車種や一部輸入車などは、未だにメーカーから新品の部品が生産されていたり、そうでなくてもヤフオクやイーベイなどを駆使すれば、素人でも簡単に部品が入手できるケースが多い。 一定数人気のある車種だと修理の解説をしている動画やサイトなどもあるので、筆者のような完全な素人でもネット時代の恩恵である程度の修理はできてしまうのだ。 手をかければかけるほど愛着が湧くので、なるべく自分で修理するというのもオススメである。 ■筆者がオススメするクルマの条件 比較的維持しやすいクルマの条件を解説する ・排気量が小さめ 税金やガソリン代を抑えるためというのもあるが、排気量はクルマ自体の大きさや重さ、パワーに直結する指標であるので、排気量が少なければタイヤにかかる負担も小さくなりやすい。 ▲排気量ごとの税金 ・1960~1970年代に設計されたクルマ この年代に設計されたクルマは、それ以降のクルマに比べてはるかにシンプルな構造になっていて、電気的に車を制御するシステムなどもない。 つまりDIYで修理をするにも比較的イージーであり、不便な部分は多いけれど運転するのにもコツが要るため、ドライバーを育ててくれる利点もある。 ▲シンプルで手の入りやすい旧車のエンジンルーム ・自分が心から惚れ込んでしまったクルマ 旧車というのは現行の自動車に比べてやはり手間がかかるし、苦労する部分もあるので情熱がないとなかなか厳しい。 なので苦労や手間もすべて吹き飛んでしまうくらい大好きなクルマを選ぶことが肝心だ(もちろん妥協のないクルマ選びというのは口でいう100倍以上難しいのだけれど…)。 ■さいごに筆者より クルマが欲しいと思ったなら、旧車やクルマ全般によく言われる噂やイメージなどを鵜呑みにせず、ネットなり本なりで細かくいろいろと調べてみることを薦めます。 ハードルが高いとはいえ情熱があれば案外どうにでもなったりするものです。 諦めなければいつかきっと手に入るはず。 これを読んでいる旧車にあこがれているみなさまが、ステキなカーライフを送れることを心より祈ります。 [ライター・画像 / 小河昭太]

「AI」が描くオレたちの旧車!
ライフスタイル 2023.08.04

「AI」が描くオレたちの旧車!

さて、ワタクシまつばらは「イラストレーター」としての肩書きも持っております。 webの挿絵とか本の表紙とか説明図とか、線画が多いのですがこんなの描いているんですよ、実は。 さて、そんなイラストレーターとしての立場でお話しすると、昨今様々なメディアでウワサの「AI」。 すなわち「Artificial Intelligence」の略ですが、昭和時代なら鉄腕アトムに搭載されている「人工頭脳」とか、まあ、そんなイメージがありますよね。 その「AI」くん、ご存知の方もいるかとは思いますが、最近イラスト業界では話題持ちきりなのは、写真ライクな美少女画像とか、かっこいいヒーローのポーズとか、AIが描くそのハイクオリティな出来栄えに、多くの人が「近い将来イラストレーターの仕事なくなっちゃうんじゃないか」とか「この出来ならモデル撮影のカメラマンも不要になるかも」とか、色々ウワサが絶えません。 まあ、その辺の考察は別の機会にイロイロ考えるということで、今回は旧車王らしく、そしてプロのイラストレーターとして、AIが生成する「オレたちの旧車」を考えてみようというのが今回のネタ。 いやあ、AIくん、なかなか面白いですぜ、ということではじまりはじまりー。 まずは手始めに、AIくんに何か描いてもらいましょう。 今回登場するのは、Microsoftのブラウザ「Bing」に搭載されているAI「DALL-E」という画像生成AIくんと、SeaArt というAIコミュニティで使えるイラスト生成「img2img」というAIくんです。 現在のAIにはそれぞれ特徴があって、画像を生成するためのキーワード「プロンプト」=ワレワレは「呪文」とか呼んでますが(笑)、同じ「呪文」を唱えても、生成される結果は大幅に違うというように、すでに「AIの個性」というものが芽生え始めている感じがします。 まあ、そんな前振りはともかく、早速AIくんに「描いて」もらいましょう、オレたちの旧車! まずは「DALL-E」くんの描く旧車! 呪文は「縄文時代のスポーツカー、日本、古代、縄文人」って、旧すぎ?(笑) おおっ! なんかそれらしいイメージというか、チキチキマシンに出てくる「001 岩石オープン」みたいなイメージだけど、まあ、縄文人ならこんなスポーツカー、アリだよね!という感じでいいっすね。 さて、全く同じ呪文を「img2img」くんにお願いして、縄文人のスポーツカーを・・・・・ って、おい!サイドカー?・・・・昭和時代じゃないかコレ?って感じで、同じプロンプト=呪文唱えてももこんなに違う。 確かに運転手は縄文人っぽいけれど。 さて、さらに時代は進み、時は飛鳥時代。 聖徳太子のスポーツカーをAIくんたちに描いてもらいましょう。 デザインは遣隋使でお馴染みの小野妹子くんです! 「DALL-E」くんはなんとなくそれっぽい感じに仕上がってますね・・・。 キャラデザインがそれとなく中華風。 これ見るとエンジンは付いてなさそうなので、足漕ぎかも。 足漕ぎだったらカッコいいすね、コレ。 で、次は「img2img」くん・・・うを!オモシロすぎ!なんだよコレ(笑)。 まるで祇園祭か岸和田のだんじりじゃないっすか。 やはりエンジンどこに付いてるんだか・・・、あ、飛鳥時代だからエンジンなんてないのか。 まあ、いくら旧車王でも縄文や飛鳥時代は旧すぎなので、もっと近いところで、大正時代はいかがでしょう? あ、コレはかなりいい線行ってますね、AIくんも。 近い過去ならあまり忘れてないようで。 こんなありそうでなさそうなグラフィックが、AIくんが最も得意とするところなんでしょう。 呪文は「大正時代 実用車 日本製 自動車 東京 モダン」です。 さて、それではもう少し現実的に。 AIくんもがんばって画像を生成してくれていますぞ。 作画は「DALL-E」くん。 呪文は「スズキ フロンテクーペ 70年代 スーパーカーみたい かっこいい」です。 過日鬼籍に入られたデザイナーで、世の中に直線なんてものはないと豪語されていたシド・ミードさんが、もしシトロエン2CVをデザインしていたならば・・・、という想定で、こんな呪文を唱えてみました。 こちらも作画は「DALL-E」くん。 「シド・ミード デザイン 2CV シトロエン」です。 うむー、どちらも納得できるかどうか?と言えば「そうかもね・・・」という感じになっちゃうのですが、それでもなんとなく「ソレっぽい」仕上がりになっているのは、さすがAI(笑)。 フロンテクーペはかっこいいなあ。 今度はシンプルに、呪文を「シトロエン 2CV」として、「img2img」くんに描いてもらいましょう・・・・って、なんとなくビートル混ざってる感が(笑)。 ドアの枚数とか構造の描写に、かなり悩んでいる様子が見えますね。 まあ、それとなく特徴を捉えていたりして、誰が見ても「2CV」というところはキッチリ押さえているようです。 というように、現状でのAIくんは、かなり無茶な要求にも真摯に、クソ真面目に応えてくれます。 そもそも、普段ワレワレが使っているコンピュータも「人間が指示したり要求したこと」以外はできませんよね。 言われたことを忠実に実行する。それが彼らの行動です。 なので、AIくんが「描いて」くれたイラスト的なものや写真的なモノも、プロンプト=呪文をできるだけ忠実に再現してくれたものだと思うのです。 それはネット上に溢れる情報=「ビッグデータ」から、必要なものを取り出して組み合わせたモノなので、ワレワレ人間が思いもよらないような、すなわち「意志」や「感情」を省いたデータの組み合わせが可能、というのがAIくんの強みでもあり、弱みなのかな、という気がします。 ともあれ、絵描きとしては、AIくんはなかなか面白い遊び相手だなと思っておりますので、これからもイロイロ一緒に遊んでみようと計略中であります。 いや、こいつ面白いっすよ(笑)。 最後に「現在日本で最強 旧車王 えらい イラスト」という呪文を唱えてみましょう。 応えてくれるのは「DALL-E」くんです。 どうですか?最強? ありそうでなさそうな、ちょっと素敵なデザインではありますね。 [画像 / OpenAI「DALL-E」, Stable Diffusion「img2img」・ライター/まつばらあつし]

先入観から誤解しやすい、旧車へのボディーコーティングについて語る
ライフスタイル 2023.07.27

先入観から誤解しやすい、旧車へのボディーコーティングについて語る

▲筆者の所有する空冷ビートル。ソリッドカラーとはいえクリアー層を有するが、比較的高年式の車輌とはいえ塗装の質は現代車に比べ明らかに劣る 新車・中古車に関わらず、クルマを購入する際に、必ずといってよいほどボディーコーティングの施工を勧められることはないだろうか? クルマの見積書に記載があれば、これから自身のモノとなる愛車のために、いわれるがまま施工される方も多いことであろう。 もはやボディーコーティングといえば、車輌購入時のオプションメニューとして、代表的な選択肢の一つといっても過言ではないはずだ。 さて、ここまでは一般的な現代のクルマでの話であるが、これが旧車へのボディーコーティングとなったら一体いかがなものであろうか? 今回はボディーコーティング施工の業務経験から、旧車へのボディーコーティング施工について、私クマダの主観とはなるが、初心者のためにできるだけ簡単に意見を述べてみたいと思う。 ▲現代のクルマでは、購入と共に当たり前のように施工されるボディーコーティング ■1.そもそもボディーコーティングとは何か? ボディーコーティングとは、その名のとおり、自動車のボディーなど外装に施工する保護処理の一つである。 業務用の特殊なコーティング剤を塗布してボディーの塗装面全般を保護し、耐久性を向上させるためにおこなわれる。 使用されるコーティング剤については、黎明期はワックスに類似する程度のものから、フッ素(テフロンとも呼ばれる)やシリコーンを用いたポリマーコーティング剤が主であったが、おおよそ10数年ほど前から、(ガラスの組成に近いシロキサンやポリシラザンを原料とする)二酸化ケイ素を用いたガラス系コーティング剤が主流となった。 今回の記事は、現代において主流となったガラス系コーティングの施工を前提として、話を進めていきたいと思う。 ▲昨今では近所のガソリンスタンドでも施工できるほど、身近になったボディーコーティングではあるが・・・ ■2.ボディーコーティングを施工するメリットとは? それでは、旧車にボディーコーティングを施工するメリットとデメリットについて語っていきたい。 まず、現代車に施工する場合と同様の一般的なメリットをあげれば、以下のとおりだ。 【塗装の保護】厚く硬いコーティング膜により塗装面を傷やスクラッチなどのダメージを緩和し、傷そのものをつきづらくする。 【光沢に優れる】ガラスの組成に似た成分を持つことから光沢に優れる。ハイグレードなコーティング剤を施工すれば、その膜厚によりクリアー層がさらに厚くなった様に見える製品も存在する。 【汚れが定着しづらくなる】コーティング被膜上に汚れが定着しづらくなる。ピッチ・タールなど、特に油性の汚れがこびり付くことが少なくなる。また、長期間放置したものはNGだが、水アカも通常の洗車でかなり落としやすくなる。 【長寿命である】ガラス系コーティングは無機質のため、酸化しないことが特徴だ。 旧来のポリマーコーティングについて全てがそうとはいえないが、ロウや石油系溶剤などの有機物からなるワックスについては、熱を受けたり時間の経過により、ゆくゆくは保護膜そのものが酸化し、汚れとともに塗装にこびりついて劣化してしまう場合もある。 無機質であるガラス系コーティングは熱や紫外線に強く、酸性雨からもボディーを保護する効果が高い。 これは有機物からなるワックスやポリマーコーティングとの最大の違いである。 一般的に寿命は3~5年といわれるが、筆者の経験上、メンテナンス次第だが寿命はそれ以上ともいえる。 【旧車に施工するメリットは?】旧車に施工するメリットは、とくに青空駐車にてクルマを保管するオーナーにとって、紫外線や酸性雨からボディーの塗装を保護できることが最大のメリットとなるはずだ。 それ以上に、現代車のように厚いクリアー層を持たない旧車については、膜厚のあるコーティングを施工することによって、ボディーに光沢を与えることができる場合もある。 また、油性の汚れがこびり付きづらくなる防汚性能にもメリットがある。 キャブレター車など、リアバンパーのマフラー周りに排気ガスによる黒いススがつくことが無かろうか? こういった汚れが通常の洗車で落としやすくなるのだ。 ■3.逆にボディーコーティングを施工することによるデメリットは? それでは、逆にデメリットを述べよう。 今日においては、ボディーコーティングを施工するうえで、選択肢はほぼガラス系コーティング一択となるであろう。 考えられるデメリットは以下のとおりだ。 【施工費用が高額である】価格が高い。誰しもがそう感じるはずだ。情報化の進んだ今日では、ボディーコーティングに用いるプロ用の薬剤もインターネットショッピングで手に入れることができる。薬剤そのものの価格は、施工する金額の数分の一となり、けっして高価ではない。 それでは、なぜプロに施工を依頼すると高額なのか? 答えは簡単だ。施工にとても時間がかかり、とにかく重労働だからである。 その理由を次の項で述べる。 ▲旧車ではありませんが、筆者はこんなYouTube動画をつくっております。https://youtu.be/SK1gWpUxyIk ■4.ボディーコーティング剤への過度な期待は禁物 ところで、実際にボディーコーティングの施工をプロに依頼する際の検討材料といえば、よほどのマニアでない限り、なんとなく使用するコーティング剤のブランドや、ネームバリューから想像される仕様や性能に興味が向きがちではなかろうか? 私クマダは、この部分に注意喚起をしたい。 あくまでもボディーコーティングの施工において、作業の主役はコーティング剤そのものを塗布する工程ではなく、その施工時間の大半を費やす、施工者自身による下地作りの工程なのだ。 では、ボディーコーティング施工において主役となる、下地作りとは何か? 簡単にいえば、それはボディーの汚れ落としと塗装面の研磨だ。 ボディーに付着した長年の汚れ、鉄粉やピッチ・タールをトラップ粘土で除去することから始まり、ボディーについた傷やスクラッチを、ポリッシャーを用いて入念にコンパウンド掛けをして削り落とす。 使用過程のクルマにおいては、通常の洗車では手の届かない部分の汚れ、一例を述べれば、モールとボディーのすき間やエンブレムの周りなどにこびりついた長年の水アカなどを、スケール除去剤のような個人で取り扱うにはリスクのある「プロ仕様」の特殊な薬剤をもちいて入念に落とす。 実は、ボディーコーティングを施工することでクルマが輝くのではなく、むしろこの下地作りの作業でクルマが輝くといっても過言ではない。 ではなぜ、ボディーコーティングを施工するために、そこまでの作業が必要なのか? それは、ガラス系コーティングの被膜はとても強固なため、簡単にやり直しができないからである。 ガラス系コーティングはシンナーで簡単に落とせるような代物ではない。 下地となる塗装面に傷や汚れが残ったまま施工してしまうと、そのままその傷や汚れを強固にコーティングしてしまうのだ。 新車と違い、使用過程におけるクルマを磨くことは、面倒なことこの上ない。 さらにコーティング剤を塗布する場合にも、塗布する場所の温度や湿度など、施工環境への配慮が必要である。 また施工後も、決められた時間、ボディーを水に濡らさないようにして、しっかり乾燥させなければならない。 とにかく、全般的にとても気を遣う作業なのだ。 だからボディーコーティングの施工は高額となるのである。 どこかで聞いたような言葉で述べれば、「コーティング剤の性能の違いが、コーティングの仕上がりの決定的な差ではない」のだ。 むしろ、施工者の技術や経験で仕上がりに大きな差がでるといって過言ではないであろう。 コーティング剤のネームバリューに惑わされてはいけない。 お金を費やすべきものは、施工者自身の腕と情熱なのだ。 ▲旧車ではありませんが、筆者はこんなYouTube動画をつくっております(その2)https://youtu.be/mLqZ6kl4BWc ■5.悩ましい旧車へのボディーコーティング 旧車にボディーコーティングを施工する場合は、さらにいくつか注意するべき点がある。 ここまでの記事を読めば、勘の良い読者の方は気づかれたことであろう。 ボディーコーティングの下地作りをする際におこなう、電動ポリッシャーによるコンパウンド掛けはボディーの塗装面を磨くので、当然のことではあるが少なからずボディーの塗装を薄くしてしまう。 もとより旧車の塗装といえば、経年により少なからずダメージがあることが前提ではある。 しかしながら、事故などの補修による再塗装部分やキレイにレストアされた車輌など、プロフェッショナルであっても、その塗膜がどのような下地の上に乗っているものか予想がつかない場合が多い。 こういった部分に安易に手を入れると、下地作りの作業途中で、思いもよらない原因で塗装面を傷めてしまう場合もあるのだ。 旧車のボディーコーティングについては、施工を断られることもあると耳にしたことがある。 当然のことであろう。 旧車の塗装に手を入れるには、それなりの経験が必要だ。 ボディーコーティング施工者の誰もが旧車を相手にできるわけではないのだ。 レストアされた車輌であればまだしも、貴重なオリジナルペイントの車輌に手を入れる場合は特に慎重に作業せねばならない。 それこそ取り返しのつかない事態になりかねないからだ。 ならば、旧車のボディーコーティングはどこに依頼すれば良いのか? ボディーコーティング施工は洗車の延長線上、すなわちカーディティーリング業界に属する。 旧車への施工を唱っている施工業者であればなんら問題ないが、身の回りに見つからなければ、鈑金塗装の、それも旧車が得意なプロフェッショナルの門を叩くと良い。 ワックスは塗料を弾くため、塗装時のトラブルの素となるためか、洗車業界と鈑金業界は水と油といわれることもある。 しかし、常にボディーペイントの下地と塗膜に向き合っている彼らからは「佳い(よい)」アドバイスをいただけるはずだ。 ▲業務上、今日までガラス系コーティングを施工する時間はいくらでもあったが、今日までワックス仕上げで維持している。メキシコ産ビートルとはいえ、すでに25年が経過したオリジナルペイント塗装はいたるところでクリアー層の剥がれが始まっている ■6.まとめ レストアされたクルマはどれも美しい。 しかし、自身の幼少期、これらのクルマが新車であった頃、はたして、これほど艶やかに輝いていただろうか・・・?ふと思うことがある。 旧車といえば、ある時代より旧いクルマの場合、ソリッドカラーのクルマなど、クリアー層を持たない塗装が多く存在する。 筆者もいわばアラフォーのおっさんとなり、昨今の旧車ブームではネオクラシックと呼ばれる1970年代後半から1980年代のクルマが自身の刷り込みのクルマであるのだが・・・。 そういえばこのクルマ、新車の頃はもう少し落ち着いた輝きだったような・・・。 特にここ数年、旧いクルマを眺めていると、このように感じることが多い。 極端にいえば「不自然」に感じるのだ。 レストアされ、新車時以上に高品質な塗装で、エンジンルームのスミからスミまで美しく厚い塗膜でオールペイントされたクルマ。 こういったクルマには、躊躇せずボディーコーティングを施せばよいことであろう。 しかし、オリジナルペイントが残るクルマはどうだろうか? 当時はまだ高額だったシュアラスターのカルナバで仕上げたクルマは、まだ幼かった筆者の目でも違いを感じたものだ。 ここからは余談であるが、ここまでボディーコーティングについて語っておきながら、特にオリジナルが随所に残る旧車風情が漂う佳き時代のクルマに対し、安直にガラス系コーティングをおススメして良いものかと感じているのが筆者の正直な感想だ。 青空駐車かつ日常使いの旧車オーナーにとって、ボディーコーティングは強くおススメできるものではあるが、決して必須であるとはいえない。 有機物ゆえに、ボディーの水アカの原因になりかねない旧来のカーワックスであっても、その自然な艶と肌ざわりに根強い人気があり、週末の洗車とワックス掛けがルーチンワークとなっているベテランオーナーは数多い。 長い期間隅々までキレイに磨かれ、良好な状態を保たれた旧車のボディーの細部に残る、どうしてもオーナーが落としきれないちょっとした水アカに、むしろそのオーナーの愛着の深さを感じてしまうことがあるのだ。 あばたもえくぼ。 結局は、自身のいちばんやりたい方法でクルマを仕上げるのが、究極の旧車メンテナンスではなかろうか。 閑話休題。 旧車においては、最新が最良と言えないことが多いのだ。 ボディーコーティング然り。 ボディーコーティングはあくまでも、クルマ維持の選択肢の一つに過ぎない。 ※私クマダはYouTubeでポンコツ再生動画を公開しております。ぜひ動画もご覧になってください。チャンネル登録お待ちしております。https://www.youtube.com/@BEARMANs   [ライター・クマダトシロー / 画像・クマダトシロー, AdobeStock]

今だからこそ惹かれる「チョイ古」な国産コンパクト
ライフスタイル 2023.07.26

今だからこそ惹かれる「チョイ古」な国産コンパクト

先日、私が所有しているアウディ・初代TTを整備工場に入庫させました。 1週間ほど代車としてお借りしたクルマが、2代目のトヨタ・ヴィッツ。 ひとりのクルマ好きとして、結構興味深く観察することができたので、記事にしてみようと思います。 日頃から趣味性が高いクルマに乗り慣れている方々にとっては、興味の範疇の外にあることも多いであろう国産コンパクト。 老若男女を問わず、多くの人の移動を支える「フツーに街中で見かけるクルマ」に改めて着目してみると、面白い発見があるかもしれません。 「チョイ古」な国産コンパクトといっても、選択肢として頭に浮かんでくる車種の数は膨大。 今回は、私が今までお借りした代車から厳選して、先述のトヨタ・ヴィッツと、トヨタ・ポルテ(初代)を比較します。 ポルテをお借りした期間は、ヴィッツと同じく約1週間。 参考までにお伝えすると、ヴィッツは約1000km、ポルテは500kmほど走行しました。 ■ヴィッツとポルテ、まずはスペックを比較してみよう まず、2台のスペックを確認しましょう。 私がお借りしたヴィッツは、2代目(90系)の前期型、2005年式の「Ⅰ’ll(アイル)」というグレード。 本革とスエード調ファブリックのハーフレザーシートや、本革巻きステアリングが奢られた、ちょっぴり高級なグレードです。 排気量1.3Lの直列4気筒エンジン(2SZ-FE)を搭載し、車重1020kgに対し、最高出力は87psです。 駆動方式はFF、トランスミッションはCVTで、サイドブレーキは手引き式。 対してポルテは、初代(10系)の後期型、2010年式の「130i」というグレード。 排気量は(ヴィッツと同じく)1.3Lで、直列4気筒。 こちらは2NZ-FEという形式のエンジンのようです。 車重1090㎏に対し、最高出力は(こちらもヴィッツと同じく)87psで、駆動方式はFF。 トランスミッションは4ATで、足踏み式のパーキングブレーキを装備しています。 トヨタ・ポルテは、ヴィッツの派生車種として誕生したクルマ…といっても、ベースとなったのは今回比較する2代目ではなく、初代ヴィッツ。 初代ヴィッツと初代ポルテは、プラットフォーム(NBCプラットフォーム)やパワートレーンをともにしている関係です。 初代ヴィッツの背を高くして、助手席側に大きなスライドドアを付けたモデルが、初代ポルテという認識で問題ないでしょう。 対して、私がお借りした2代目のヴィッツは、Bプラットフォームを用いたモデル。 BプラットフォームはNBCプラットフォームの改良版にあたります。 そして先述したエンジンの違いについても、簡単にご紹介しましょう。 ヴィッツに搭載されている2SZはダイハツ製であるのに対して、ポルテの2NZはトヨタ製。 2SZの方が後発、新開発のエンジンです。 燃費性能などが若干向上したらしいのですが、やたらマニアックになってしまうので詳述は避けることにします(製造品質にも若干の違いがあるようです)。 とはいっても最大出力は同じですし、ほぼ同列に語って差し支えないでしょう。 プラットフォームとエンジンのどちらも面からみても、2代目ヴィッツはブラッシュアップが施されています。 初代ポルテと比較するうえで、技術の先鋭性に多少の違いがあることは留意が必要です。 …とはいっても、その違いは微小。 従兄弟のような関係の2台であると捉えても問題はないはずです。 比較してみると、さまざまな気づきが得られるはず。 ■ヴィッツとポルテ、レスポンスの良さを比較してみよう スペックを確認したところで(だいぶマニアックな説明になってしまいましたが)、実際に運転してみてどう感じたか、インプレッションを比較してみましょう。 結論から申し上げると、ヴィッツもポルテも、どちらもすごくいいクルマ。 私の好みに合う方はポルテでした。 ヴィッツとポルテの双方を運転して、共通している印象は「出足が速い」ということ。 アクセルペダルを踏みこんだときに、即座にスロットルが開いて応答してくれる感じが、意外にも気持ち良いのです。 言い方を変えるのであれば、レスポンスが良いということ。 私が所有しているアウディ・初代TTよりも、はるかに加速のツキが良いのです。 その出足の良さは、とても87psとは思えないほど。日常使いにおいて、モアパワーを欲することがないのです。 まるでスポーツカーのよう…と言っても過言ではないかもしれないレスポンスの良さ。 その理由を深堀りしてみると、ヴィッツとポルテではスロットルの仕組みに違いがあることに気が付きます。 2代目ヴィッツは電子制御スロットル・システムを採用しています。 アクセルペダルの操作がコンピュータ制御で電気的に接続されることによって、スロットルバルブに伝わるという仕組みです。 対して初代ポルテは、より原始的なワイヤースロットル。 アクセルペダルとスロットルバルブがワイヤーによって繋がっており、ドライバーのアクセル操作が直接的に機関系に伝達されるという仕組みです。 先にご紹介した通り、メカニズム的には2代目ヴィッツの方が、初代ポルテよりも先鋭的。 スロットルに関しても例外ではなく、電子制御スロットルの方が新しいといえます。 その利点は、構造がシンプルなため部品点数が節約できること、そしてドライバーの無駄なアクセル操作を意図的にキャンセルすることができることなどが挙げられます。 不要なアクセル操作をコントロールすることによって、燃費向上が狙えることは確かでしょう。 その一方で、運転する際のダイレクト感(レスポンスの良さ)が失われてしまうという欠点もあるのです。 しかし私個人の印象としては、ヴィッツの方が、ダイレクト感が強かったのです。 スロットルがワイヤー式なポルテよりも、電子式のヴィッツの方がレスポンス性に長けるのは不思議です。 スロットル以外の別要因が存在すると考えるべきでしょう。 2NZと2SZのエンジン差異に関しても、本来は考慮すべきだとは思うのですが、前者(ヴィッツ)が64kW/116N・mに対して、後者(ポルテ)が64kW/121N・mとほぼ同じなので、今回は無視することにします。 あまりマニアックすぎるのもアレなので…(すでに手遅れだったらごめんなさい)。 正確にいうと、ヴィッツは若干トルクが薄いのですが、ヴィッツの方が出足の良さが顕著なので、トルク以上に“速さ”を体感させる要素があるということですね。 スロットル構造以外の要因として考えられるモノは、車両重量と車体剛性。 ヴィッツの方が、軽くて硬いのです。 先にご紹介した通り、ポルテの車重が1090kgなのに対して、ヴィッツの車重は1020kg。 たかが70kg、されど70kg。 アクセルのツキの良さ(≒出足の“軽さ”)には少なからず影響を与えているはずです。 同等の出力性能を誇るエンジンがそれぞれクルマを動かす場合、軽いクルマの方が速く転がることは想像に容易いでしょう。 ボディ形状からしても、ヴィッツの方が車体剛性に長けているといえます。 ポルテは背が高く、室内空間が広い点が魅力。 助手席側につく大きなスライドドアも魅力的です。 しかしながら、これらが車体剛性(=クルマの硬さ)には不利に作用します。 窓ガラスが大きく空間が広い構造は、高い剛性を確保するうえで限界があるのです。 実際に運転してみても、その違いは明白。 交差点を曲がるたびに、車体が“頑張っている”ことをヒシヒシと感じます。 すなわち、(ヴィッツに対して)剛性が低いポルテは、エンジンの出力が車体の歪みにスポイルされてしまっているのです。 動力がタイヤに伝わる際に、剛性が低い車体性能が追い付かないが故に失われる力が大きいほど、出足はモッサリとしてしまいます。 その結果、より軽くて硬いヴィッツの方が車体の応答性が高く、レスポンスが良いと感じさせたのでしょう。 …というわけで、今までヴィッツとポルテのどちらが速いかを「ああでもないこうでもない」と考察してきたのですが、そもそも論、我々はお買い物に行くクルマ(国産コンパクト)にレスポンスの良さなど求めていないのです。 それにも関わらず、これらのコンパクトカーに“速い”と感じさせるセッティングが施されていた理由として考えられることはただ一つ。 それは、「遅いと感じさせないため」ではないでしょうか。 実際問題、アクセルを深く踏み込んでみても、(エンジンは唸りを増すけれども、)加速度は大して変わらないのです。 すなわち、レスポンス性に優れたセッティングは、高出力ではないローパワーなエンジンを搭載しつつも、実用領域で不足と感じさせないための工夫だったのです。 そう考えてみると、過剰な「速さ」の演出はナンセンス。 出足を鋭くすると、速度を維持するためのアクセルコントロールが難しくなってしまいます。 応答性が高すぎるのも、なかなか考えものですね。 ■自分の偏愛にハマるお買い物クルマを見つけると、すごく楽しい それゆえに、個人的により好印象だったのは、相対的に出足がマイルドな初代ポルテ。 非常に運転がしやすいのです。 日常領域で不足を感じることは一切ないし、速度維持が容易で長距離を走っても疲れづらいし、高いアイポイントも車体感覚が掴みやすくて非常にグッド。 そして何より、非常に広くて便利です。 小さな子どもがいる主婦をターゲットにしたことが、随所からうかがえます。 後席横のドリンクホルダーには2Lペットボトルが入るし、助手席側のスライドドアは開口部が超広大。 前席のヘッドレストを外してうしろに倒せば、後席と連結させることもできてしまいます(お昼寝に最適!)。 さらに助手席を前に倒せば、テーブルに早変わり。 さまざまなギミックから一貫した設計意図を感じ取れるクルマに触れると、日々の移動に彩りが加わる気がします。 スライドドアを操作したいがゆえに、無駄に助手席側から出入りしちゃったりして。 クルマの楽しみ方は一つではないことを実感しました。 想定ターゲットを固定したことによって、一貫した設計意図を明確に感じることができたポルテに対して、ヴィッツはオールマイティな優等生のようでした。 ターゲットを固定することなく、さまざまな利用形態に対応できるように、極めて綿密に作り込まれたことがうかがえます。 近所のマダムのお買い物の足になるだけではなく、営業マンの相棒になることや、レンタカーを借りた若者の旅行のお供をすることすら想定されているように感じます。 誰がどう使っても不満がないような、非常に気が利くクルマだったことに驚きを覚えました。 結構な散文になってしまいました…。 メカニズム面や設計思想の面など、さまざまな側面から2台の国産コンパクトについて考察してきましたが、私がこの記事を書くうえでもっとも強調したいことは、「フツーに街中で見かけるクルマ」も、すごく楽しいということ。 マニアックな目線でさまざまなポイントに着目してみると、国産コンパクトは見どころだらけ。 今、非常に安価で手に入れることができる「チョイ古」な国産コンパクト。 いざ生活をともにしてみたら、面白い気付きをたくさん得ることができること、間違いなしではないでしょうか。   [ライター・カメラ / 林哲也]

海アリ!山アリ!旧車に優しい!?初夏のオススメツーリング
ライフスタイル 2023.07.17

海アリ!山アリ!旧車に優しい!?初夏のオススメツーリング

多くの読者においては、梅雨でなかなか愛車を引っ張りして、出かけられない日々が続いたことだろう。 梅雨明けした地域では、待ちに待ったツーリングシーズンの到来である! しかし、酷暑と渋滞は、旧車にはツラいところ。 今回、旧車オーナーたちと梅雨の晴れ間に、ツーリングをおこなった。 旧車に優しく、オーナーには楽しいツーリングルートの一例をご紹介したいと思う。 ■スタートは高速道路のサービスエリアに集合 この日、普段お世話になっている方にお誘いいただき、一緒にツーリングをすることとなった。 「ツーリング」というと、バイクのイメージをお持ちになられるかと思う。 クルマなら「ドライブ」の方が一般的とは思う。 「ドライブ」というと、1台のクルマに乗り合わせて出かけたり、1人で走る時に使う方がしっくりくると思う。 今回、1人1台で連なって走るため「ツーリング」という単語の方が、適していると筆者は考えた。 当日の朝、曇り空ではあるが、雨は降らない予報だ。 厳しい暑さにはならないことは、クルマにもドライバーにも都合がよい。 今回のツーリングは、暑さと混雑を避けるために設定された日程でもあった。 まだ、街が動き始めた頃、自宅を出発して最初の目的地を目指す。 待ち合わせ場所は、高速道路のパーキングエリア。 パーキングエリアに到着すると、すでに2台が到着していた。 今回、息子さんもご一緒されることになり、3台でのツーリングだ。 参加車輌は、お世話になっている方の日産 N15 パルサー VZ-R。 息子さんの日産 R32 スカイラインGT-R。 筆者の日産 N14 パルサー GTI-Rである。 息子さんとは初めてお会いするが、クルマを前に話しはじめると、初対面同士でも話題に困ることはない。(笑) まだまだ話を伺いたいところだが、道路が混む前に出発した。 高速道路上を走っているクルマの台数は多いが、流れは悪くなく、3台で連なって走る。 ストップ&ゴーの多い市街地とは違い、一定のペースで走れてクルマへの負担も少ない。 ■オーシャンビューな海沿いのルート 高速を走り、たどり着いたのは西湘バイパス。 ここは、海沿いを走る有料道路であり、眼下に広がる海と開けた景色が楽しめる。 もちろん、ドライバーのよそ見は厳禁だ。 しかし、西湘バイパスには海沿いのパーキングエリアもあるのでご安心を。 一時、台風の影響で損壊してしまい利用不可になっていたが、最近リニューアルオープンした。 海を臨む展望スペースもあるため、落ち着いてじっくり景色を楽しみたい方は、ぜひ寄っていただきたい。 西湘バイパスを降りたあとも海沿いの道を走り、漁港を目指す。 向かっている道中も、眺めの良いポイントがいくつもあった。 筆者としては、海と山と道路が同時に見えるポイントの景色が、お気に入りであった。 ■昼食は海の幸に舌鼓 漁港に到着後、休憩をしつつ、駐車場で海をバックに、各々写真撮影を楽しんだ。 そこは、パルサー VZ-Rオーナーさんお気に入りのフォトスポットとのことだ。 昼食の時間が近づいてきたので、地元の方に教えていただいたという、人気の定食屋へ向かった。 人気店とのことだが、タイミング良く、並ばずに入店することができた。 やはり海が近いので、海鮮丼を選ぶこととしたが、店内に掲げられた「オススメ」の握り寿司5貫の誘惑にも負け、勢いで2品もオーダーしてしまった。 美味しい海の幸を、お腹一杯お得に味わうことができた。 行った先で、美味しい食事に舌鼓を打つことも、ツーリングならではの楽しみである。 ■海から山へ!日本が誇るワインディング お腹が満たされたあとは、日本が誇るワインディング、箱根を目指す。 意外なことに、海沿いを走っていた西湘バイパスからすぐ、箱根の入口にたどり着く。 今回はターンパイクで箱根を登ることとした。 ここで、それぞれの愛車を乗り換えて山頂を目指す提案をいただいた。 最初に、N15パルサー VZ-Rに乗らせていただいた。 高回転型エンジンが自慢のグレードである。 実は、筆者が初めての愛車選びの際に憧れていたクルマの1台が、このVZ-Rというグレードであった。 オーナーから、せっかくなのでエンジンを高回転まで、回して乗ってみることを勧めていただいた。 ターンパイクは、料金所を抜けると長い上り坂である。 お言葉に甘え、低いギアで高回転まで回させていただいた。 MTのダイレクトな繋がりもあり、エンジンがとても気持ちよく吹け上がることを体感できた。 マフラーの発する音はもちろんだが、エンジン自体が発する音も心地よい快音である。 途中のパーキングで、再度乗り換えをおこなった。 続いて、R32スカイラインGT-Rを運転することとなった。 実は、GT-Rを運転するのは初めての経験である。 ドッシリとした乗り味に、上り坂の勾配を忘れさせる力強さ。 筆者の愛車と並べると大きく感じるが、現代の目で見るとR32 スカイラインGT-Rはコンパクトである。 車内はベース車と同じ、5ナンバーサイズであることも手伝い、運転をする際には大きさを感じさせない。 この点も、今もなお第一線を突き進んでいる、理由の一つなのかもしれない。 ターンパイクの頂上に到着し、ラウンジで休憩をすることとした。 お互いのクルマを運転した感想、さまざまなクルマの話題で会話は尽きないのであった。 ■帰路のルートは選び放題! 時間はあっという間に過ぎ、帰路につくこととなった。 箱根の頂上から、首都圏へのルートは複数選択肢がある。 ・ワインディングを楽しみながら、湯河原方面へ下り海沿いルート・御殿場方面へ下り、アウトレットなどでお買い物を楽しみ、東名高速ルート・箱根駅伝で知られる、国道1号線を下り、小田原経由ルート 他にも意外とルートはあり、お気に入りのルートを見つけることができるかもしれない。 ■猛暑前に楽しもう! これからのシーズン、気温が上がり、クルマにもオーナーにも厳しいものとなる。 旧車となると、猛暑は思わぬトラブルに見舞われるリスクも考えられる。 今回、首都圏に住む読者の方にはピンとくるであろうルートを紹介させていただいた。 読者の方々も、地元付近のツーリング・ドライブルートを開拓して、気温が高くなる前に、愛車との語らいをぜひ楽しんでいただきたいと思う。   [ライター・撮影 / お杉]

旧車乗りには必須の相棒!? 普段乗り用探しに奔走す
ライフスタイル 2023.07.14

旧車乗りには必須の相棒!? 普段乗り用探しに奔走す

スバル360を購入して24年、セリカLBを購入して20年。 ハードボイルド作品の主人公のように、旧型車をカジュアルに乗り回すキャラに憧れ、この20年はいろいろなトラブル、不具合、経年変化と戦いながら戦いながら、筆者の日常の相棒として頑張ってくれていたのですが・・・。この何年かは、1年で整備工場に入庫している時間が長いため(酷いと数か月~半年もザラ)、ほとんど代車ですごしていたり、時には保険の代車特約で現行モデルのコンパクトカーを期限いっぱいまで借りたり…。 スマートキーにBluetooth対応ナビが装備された今のクルマは、本当に便利だなと感心するありさまです。 整備工場の代車がないときは、格安のマンスリーレンタカーを借りたりしていました。 いよいよセリカLBも普段乗りから退役させ、現状で車体価格一桁万円に収まるかどうかくらいの軽自動車を普段乗りに・・・と考えはじめたのが昨年の夏ごろでした。  ■経年劣化との戦いに敗北 ちょうど 「後世に残せるかは現オーナー次第!ネオクラシックカーを持つ覚悟とは?」(https://www.qsha-oh.com/historia/article/be-prepared/) 「手に入れて20年!スバル360とセリカLBが直面するレストア問題」(https://www.qsha-oh.com/historia/article/celica-subaru-restore/) を執筆していた時期です。 その稿に思わず「経年劣化に慈悲はない」と書きましたが、実はこのころから「経年劣化との戦いからの撤退戦」を考えるようになっていきました。 昨年末、エンジンオーバーホールからセリカLBが戻るものの、その翌月には早くもオルタネーターが寿命を迎え、さらにオルタネーター交換時、ヒーターホースのジョイント部分のパイプの腐食部分から、クーラント漏れが発生していることが発覚しました。 前述の稿に書いたように「もはや、次はいつどこの部品が壊れるのか、主治医の整備工場の社長ですらまったく予想がつかない」という状態に陥ったのが今年の2月。 最悪なことに、冷却系の不具合が出てるところに水温計まで動作不良を起こし、常にクーラントの残量を気にする必要があるものの、頼りの水温計はまったくアテにならず。 予備のクーラントを携行し、エンジン停止時にクーラントの残量を確認しなければならないという事態にまでいたったのです。 整備工場の社長に聞くと、「ジョイントのパイプ部分がリプロ品で手に入れば、片手で収まる工賃で3~4日あれば直せるが、部品が手に入らなければラジエター屋で現物から採寸して作ってもらう必要があり、金額も納期も全く読めなくなる」とのこと。 あいにく18R-G車用のヒーターパイプのリプロ品は存在せず(注:1600ccの2T-Gエンジン車用のヒーターパイプはTHサービスで入手可)、さすがにまた何か月も代車を借りっぱなしで直るまで預けるという気にはなれません。 これから気温があがっていくことを考えると、クーラントをつぎ足しながら「だましだまし」乗るのにも抵抗を感じます。 なにより、ここでジョイントの修理を出したところで、相手は50年も前のクルマです。 その後、問題なく乗り続けられるとは限りません。 ジョイントの修理費用と、普段使いの格安中古車を天秤にかけたうえ、ついに自分の友人にいつものファミレスで「もう、自分もいよいよ旧車の普段使いからドロップアウトする」と宣言したのが3月の某日でした。 ■普段使い用マシーン探し 普段乗りに関しては、そこに趣味性を求める気もなく、以下の条件をあげました。 ・維持費、燃費が安く、登録手続きの簡単な軽自動車・趣味性は求めないとは言いつつも、やっぱり好みでMT車は外せない・ボディ形式は軽トラック以外。ワンボックス、トールワゴン、ボンネットバン、セダ  ンetc...エアコンさえあればメーカー車種、年式色装備、問わず・金額は現状・車体費用が出来れば1桁万円に収まるかどうかくらい。名義変更、車検、車庫証明は自分で手続きして極力安く済ます・安物買いの銭失いはある程度覚悟の上 また 【この出物に当たると嬉しい枠】・エブリイ、ハイゼット、サンバー等の軽ワンボックス・パジェロミニ、デリオスキッド等の軽SUV 【これは絶対無理だろう枠】・アルトワークス、ジムニー、ミラジーノ等の趣味性の高いモデル・スバル(旧富士重工)内製軽乗用車、ヴィヴィオに至っては90年代のスバル360みたいなヴィンテージ価格 といった車種の候補も。 いざ中古車サイトで探してみると、近年の中古車の高騰ぶりは聞きしに勝るもので、バブル状態のヴィンテージモデルはもちろん、新車の供給不足で高年式のモデルは新車と変わらないプライスタグを下げています。 その影響は低価格帯の車両にも影響しているようで、新車の納車が間に合わない、経済不況でとにかく安いクルマが欲しいという需要が多いのか、激安中古車が皆無、5万円以下の激安中古車は全滅というありさまです。  あくまで筆者の私見ですが、最近は中古スポーツカー高騰の影響か、ボディタイプ問わず安価なMT車にスポーツ走行目的の需要があるようです。 軽自動車などの低価格帯のMT車ですら高くなるという傾向が感じられました。 人気のモデルで、高年式で走行距離が少ない車両ならば総支払額で50万円を越えるのはザラ、車齢10年走行距離10km越えでようやく総支払額20万円以下という感じです。 筆者の住む愛知県では、総支払額10万円以下の売り物はほぼ全滅、まれに遠方でMT車でギリ両手で収まるかという出物があっても、陸送費のほうが高くつくというありさまでした。 東海三県でMTの軽となると、どうしても総支払額で20万円近くになります。 登録や車検は自分でするので、現状で車両価格だけで売ってほしいといおうにも、総支払額に粗利が乗っているためそれも難しいという話です。 ためしに予算オーバーの30万円以上で見てみると、高年式の軽ハイトワゴンの売り物が出てくる一方で、ダブルタイヤのマツダ ボンゴバンのMT、「スポーツ」ではない一般グレードのスズキ スイフトのMT、果てはBE/BH系スバル レガシィのMTまで出てくる始末。 いかに、維持費が経済的な軽自動車が、低価格帯中古車のボリュームゾーンになっているかが垣間見えます。 ■縁あって思わぬ出物は思わぬ所から 昨年から再開したスバル360のレストアで、そろそろ部品調達の相談をしようと、昔お世話になったスバル360専門店に行ったときのことです。 なにげなく「普段乗りにMTの軽自動車を探してる」なんて話をしたところ、「MTの軽?前俺が乗ってたR2のMTなら、去年一時抹消してそこに置いてあるぞ」と・・・。 まさかの、一番期待してなかった(無理だと思っていた)旧富士重工(現SUBARU)内製末期の軽乗用車の出物が思わぬ身近なところから。 まさに灯台下暗し・・・。 R2のMTモデルとしては最上級グレードのR(機械式スーパーチャージャー付のSはCVTのみ)、STiの純正エアロや、Sグレードのバンパーとアルミホイールという組み合わせ。 あとになって、Bluetooth対応の地デジナビにHIDまでついてることを知ったときは、むしろ面喰いました。 もとは関東のオーナーがワンオーナーで使用していた個体を、スバル360専門店の社長が普段使い用にゆずり受け、5~6年ほど使用したそう。 ところが最近腰が調子悪くなり、MT車の普段使いをやめて一時抹消。 ネットオークションに出すか業販に出すかを考えあぐねていたところへ、筆者がMTの軽自動車を普段乗りに欲しいとやってきたわけです。  走行距離は17万kmを越えていましたが、2オーナーで、前オーナーはスバル360専門店の社長なので、出どころは悪くありません。 売る側としても、スバル360をDIYレストアしている愛好家へ託すというのは、悪い話ではないとのこと。 現状販売で引き取り、登録、車検の手続きは自分でするので、車両価格でとお願いしたところ、両手で収まる金額とはいきませんでしたが、予算の上限+αで話がつきました。 富士重工内製時代の軽MTで、STiエアロをはじめとするオプションがついていることを考慮すれば、むしろ破格と言ってもいいかもしれません。 ■クルマというのはつくづく縁 因果なもので初めての愛車となり、現在DIYレストア中のスバル360を購入(正確には委託販売)した店で、20年以上も経ってからスバルの軽自動車を買うことになるとは思いもしませんでした。 色も青で(購入時は純正のシャンパンゴールドから青に塗り替えられた状態)、スバル360をリバイバルしたデザインのR2というのも、なにかの縁かもしれません。   [ライター・撮影 / 鈴木修一郎]  

お気に入りの空間をそのまま連れて。今、あえて3代目日産・キューブを買う理由
ライフスタイル 2023.07.13

お気に入りの空間をそのまま連れて。今、あえて3代目日産・キューブを買う理由

■半年でクルマを4台買う人間 まさか自分だって、半年でこんなにクルマを買うとは思っていなかった。 昨年の12月から約半年で、筆者はクルマを4台立て続けに購入したのだ。 それも家族のためなどではなく、完全に自分の趣味。 それもエンスージアストな趣味からはほど遠い、ごく普通のコンパクトカーばかりだ。 今はなんだか無性に、そんな気分なのである。 もちろん、購入の理由はどのクルマも一長一短があってのことなのだが、可能であればすべて手元に残したいくらい大好きである。 昨年購入した三菱・アイ、スズキ・セルボ、ダイハツ・タントと、3台軽自動車が続いたが、今回久しぶりに(?)普通自動車を購入することとなった。 これらの共通点は、すべて“00年代のクルマ”であるということだ。 中古車の値段が底値に差し掛かろうとしていることも、気軽な買いやすさの理由ではあるのだが、00年代に青春時代を過ごした筆者には、いずれにしても気になるクルマたちであることには変わりない。 さて、筆者と3代目キューブの出会いは2008年までさかのぼる。 当時高校生だった筆者は、北海道の地方にある小さな街に住んでいた。 インターネット通販はすでにあったが、現代のようにアマゾンプライムで翌日に配送されたり、送料が無料ということは滅多になかった。 そのため、デザイン用の画材一つ買うために、180km離れた札幌市まで足を運ぶことも少なくなかった。 なけなしのバイト代で、鈍行列車を乗り継いでいった札幌。 地元の小さな街に比べれば、文明を肌で感じられるほどの大きな都市なのだ。 関東に長く住み、地元の良さに気が付いた今ですら、地元の小さな街と札幌のことを比べて思い出すと、その落差には卑屈な気持ちになる。 そんな札幌には、日産自動車のギャラリーが存在していた。 1997年、当時最新の商業施設として開業していた、札幌ファクトリー(現・ペットランドプラス)で開業。 2004年には大通り地区に移転してオープンした。 大通り地区にあった日産ギャラリーは、ビルの1、2階部分に展示場が入っていた。 最新の日産車が鎮座する姿と存在感は、はるか遠くにある東京の銀座ギャラリー(現・NISSAN CROSSING)を想起させるような、都市型の展示施設であった。 特にデザインを“SHIFT”させて以降の日産車のデザインと、ギャラリーの雰囲気が非常にマッチしており、落ち着いた空間で光り輝く最新モデルの姿にゴクリと生唾を飲んだのを、今でも覚えている。 ■憧れの空間で見た最新モデルの記憶 その中でもひと際記憶に残っているのが、2008年に登場した3代目キューブだ。 キューブというクルマは初代、2代目ともに若い世代のユーザーへと訴求する商品力を感じさせていたモデルだが、3代目のキューブも負けず劣らずの商品性を有していたように思う。 当時風にいうと“癒し系”のデザインは、高校生の筆者から見ても「タイムレスなデザインになるであろうな...」と予感させるほど、普遍的な良さが車体の内外に表現されていた。 が、心に残っていたのは車体だけでなく、展示場でのプロモーションの面白さにもある。 新色であった“クラフトダンボール”という明るいブラウンの車体の隣には、ダンボールで制作されたキューブを模した大きなモックアップが並べられ、「このクルマのコンセプトはこうなんだ!」と語っているかのようでだった。 デザインを学ぼうと躍起になっていた当時の筆者の心に非常に響いたものである。 左右非対称のバックドアや、サングラスをかけたブルドックをモチーフの1つとしたデザイン、陶器のようにまるっこい車体は非常に親しみやすく、日本の自動車における既成概念をゆるやかに破壊してくれそうな期待感すらもてた。 内装にも驚きは多く、シャギー調の足の長いフロアマットや数多くのカップホルダー、ジャグジーのように乗員を取り囲むようなインテリアなどなど...そのコンセプトからアイテムに至るまで、所有欲だけでない部分までを刺激してくれそうだ。 特に気に入ったのは、上級グレードに設定されるサンルーフの「スタイリッシュガラスルーフ+SHOJIシェード&ロールブラインド」だ。 ルーフガラス部分自体はハメ殺しだが、巻き取り式のサンシェードの他に透過素材で出来た障子調の層が存在する。 直射日光を弱めつつ、頭上の光を柔らかに室内へ取り込むことができる和風な感覚は、00年代に日産がコンセプトで提示したいくつかのコンセプトカー、例えばインフィニティ・クラーザや日産・JIKOOなど、日本的な意匠からのインスピレーションも取り込まれているのかもしれない。(なお、残念ながら筆者のキューブにはサンルーフがついていないが...) 3代目キューブの前年に発売されたGT-Rも日産...いや、日本車の極みにあるモデルだと思うが、キューブもまた長く愛される、日本らしいプロダクトといえるのではないだろうか。 2008年に発売され、2020年まで生産され続けた3代目キューブは、2018年度にグッドデザイン・ロングライフデザイン賞のアワードを受賞している。 マイナーチェンジや特別仕様車における細やかな差異は多いものの、長いモデルライフにおいて外観における大きな変更点がほとんどないことも、3代目キューブの良き特徴であることだろう。 ■偶然にも「ガチャ」で出会った白いキューブ 筆者が購入したキューブは2009年モデルだ。 きっかけは、ゲームセンターで回したガチャポンで出てきたカプセルトイのミニカーが、白い2代目キューブが出たからという、軽い理由からなのだが...。 それまで所有していたクルマは2代目タントなのだが、所有して実際に数か月走ってみると、オイルの消費量がかなり激しいことに気付いてしまった(中古車のKF-VE型エンジンにありがちな症状)。 小さなクルマで長距離移動をするのが大好きな筆者なので、これは致命的であり...手離そうと考えていた際に、ふと思いついたのがガチャでひいたキューブだったのだ。 実際に中古車の3代目キューブを探してみると、総額で30万円前後からの個体が多かったのだが、今回はラッキーにも車検付きで5万キロ未満、乗り出しは15万円に満たない値段で購入することができた。 今回のクルマはエンジンも好調で、大変にご機嫌だ。 色もガチャでひいたカプセルトイに似せて、当時のオプション色ホワイトパール(3コートパール)を選択した。 1.5LのHR15DEエンジンを搭載し、109psを出力する。 のんびりしたデザインの印象とはうらはらに、意外と元気な出足だ。 足回りもふんわりした感じではなく、むしろ段差のショックはそれなりに入力するものである。 ただそれがとても不快に感じるものでないのは、大きく作られたシートとの相性が良いからであろう。 座面にハイバック、ヘッドレストまで厚みがあり、柔らかである。 角度の立ったフロントウインドウと、まるく縁どられたサイドウインドウは、街中で見かけていた印象よりも、実際に車内に入ってみるとまるっこさがさらに際立つ。 さらに、室内にはいたるところに波紋状のデザインが入れられて、柔らかな印象が取り込まれている。 グレードは下から数えて一つ上のXでマニュアルエアコンだが、スイッチ部がぼんやりと透過して光る工夫があるなど、安いからといってこだわりがなくなるわけではないのも好印象だ。 かつて、札幌の日産ギャラリーで見たときから不可思議だったのが、メーターのグラフィック。 白と青が交わるような意匠上の箇所は、車体を見回しても外観のエクストロニックCVTのバッジ以外にはないのだが、やはりエコカー的なデザインを意識した色使いなのだろうか。 他が牧歌的な印象すら感じるデザインなので、ここだけは意外な配色だ。 先述のとおり、バックドアは左右非対称のデザイン。 ヒンジドアを開くとその重厚な印象に驚かされる(とはいえさほど操作しにくいわけでもないのだが...)。 荷室は深くとられ、右側のピラー部にはしっかりと物入も設けられる。 こんな風にデザインが実用性を兼ねているのを見つけたとき、さらにキューブの魅力にハマっていくのだろうな、と感じさせられる。 まだまだ街の中で見かける3代目キューブだが、もう間もなく登場から15年が経過しようとしているものの、その魅力はまだまだ色褪せそうもない。 2023年のオートサロンにおける、日産ブースで展示されていた「日産・キューブ リフレッシュ&レトロコンセプト」は、中古車の魅力を向上させる事をコンセプトとしたモデルだ。 各部の部品をリフレッシュさせながら、カスタムカーとしての魅力も付与していた同モデルだが、キューブという個性的かつタイムレスなデザインの車種を同社が有していたからこそ、新たな魅力を加え世の中に問う一台となったのであろう。 日産には他にも魅力的なクルマは数多い。 そのクルマが持つ魅力をリスペクトしながら、リフレッシュ&カスタムされることがビジネス化されるのを今から期待してしまう。 半年に4台のクルマを買う自分のことだから、この先またいつ何を購入したくなるかは自分でももうわからないのだが...この3代目キューブでいけるところまでいってみたいと思う。 小さな目標は、左ハンドル仕様のキューブはバックドアの開き方も逆...ということなので、いつかこのキューブで右側通行の国へ行き、並べて写真を撮ることができれば最高だ...なんて妄想は欲張りすぎだろうか。 お気に入りの空間をそのまま連れて、旅に出かけられる日を夢に見ながら、日々を暮らしてみようと思う。   [ライター・撮影 / TUNA]

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