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「ステーションワゴン」という言葉に市民権を与えた、スバル初代レガシィツーリングワゴンの輝き![開拓者シリーズ:第2回]
ライフスタイル 2023.09.20

「ステーションワゴン」という言葉に市民権を与えた、スバル初代レガシィツーリングワゴンの輝き![開拓者シリーズ:第2回]

■「ステーションワゴン」の王道を走っていた。レガシィツーリングワゴンの物語のはじまり ナポリタンにミートソース、さらにはペペロンチーノ……。 カテゴリー(種類)豊富なスパゲティに選ぶ楽しさ、味わう楽しさがあるのと同様に、クルマにもカテゴリーは多く、クルマ選びの楽しさを倍増させていると感じる。 スパゲティの話からという、やや大胆な入りになったが(汗)、クルマのカテゴリーの基盤を築き、軸となっていった「開拓者」に迫るシリーズ。 その2回目のテーマはステーションワゴン。 そして開拓者は「スバルレガシィツーリングワゴン」の初代(上写真)。 これに異を唱える者はいないでしょう。 きっと! ■スキーや釣りなどのアウトドアレジャーの人気の高まりが、背景にあった スバル初代レガシィツーリングワゴンの誕生前夜、日本車にステーションワゴンがなかったわけではない。 1970年代末から1980年代にかけて、スキーや釣りなど、アウトドアレジャー人気が高まるのと並行するように、トヨタ スプリンターカリブや日産 サニーカリフォルニアなどのステーションワゴンが誕生。 そして、スバルレオーネからもステーションワゴンが誕生する。 この後継モデルこそ、初代レガシィツーリングワゴンだ。 1980年代に各メーカーからいくつか生まれたステーションワゴンは、それまでのライトバンと異なり、当時の人気のカテゴリー「セダン」と同じ、あるいはそれ以上の機能を備えるカテゴリーとしてジワリとユーザーに定着していく。 ■居住性に驚き、走りにも驚いた。「ツーリングカーの新時代」を感じた初代モデル ▲いきなりですが、時代を一気に駆け抜け、2009年登場のレガシィツーリングワゴン5代目モデルに登場いただいた! そして、バブル真っ盛りの1989年。 スバルレオーネの後継モデルとして、初代レガシィツーリングワゴンが誕生する。 レオーネ同様、4ドアセダンもあったが、注目はツーリングワゴン。 洗練されたスポーティなスタイリングが、なんといっても目を引いた。 1970年代末、それまで格好いいともてはやされた「ラッパズボン」が急に格好悪く見えたように(例えが古いですか?)、それまでの各社のワゴン・デザインが急に、やぼったく見えたほど……。 2Lターボエンジンが搭載され、セダンにも引けを取らない走行性能。 スバル特有の4WD走破性に加え、エアバネと減衰力可変ダンパーを備えるグレードもあり、乗り味は上質。 ……走りに関する、これらのウリ文句だけでもウットリするほど。 そのうえで5人がムリなく乗れる居住性があり、ラゲッジに荷物をたくさん積める実用性。 さらに後席を倒すと、長さ1685×幅1365mmという広大なフラットスペースが現れる。 この「優秀さ」がユーザーに認められ、初代レガシィツーリングワゴンの人気とともに、「ステーションワゴン」というカテゴリーは市民権を得ていくわけだ。 ■初代~3代目までは5ナンバーサイズ。「荷物満載の長距離移動でも快適でした!」 ▲こちらは2代目モデル。初代のDNAが注入され、レガシィ人気を定着させた どこか洒落た匂いがする、レジャーヴィークルという位置づけとなったステーションワゴン・カテゴリー。 各メーカーからも「ならばウチも出そう!」とばかりに、本格的に開発されたステーションワゴンモデルが次々と投入され、日本にステーションワゴンのブームが到来したのが1990年代前半。 この軸となったのは、間違いなく初代レガシィツーリングワゴン。 「国産車ステーションワゴンの開拓者」、その称号にふさわしいモデルだ。 その初代に続き登場した2代目(1993年)は、初代のDNAを受け継いだモデルで、3代目(1998年)は大胆に顔つきを変えたのが話題になった。 それ以上に、FFモデルが廃止され、全グレードが4WDとなったことがクルマ好きの心を躍らせたのは記憶に新しい。 そして、この3代目までが5ナンバーサイズボディというのも、今となっては驚く。 そういえば2000年のころ、筆者は友人が所有する2代目レガシィツーリングワゴンに乗り、4名で東京~新潟・釣りドライブに出かけてことがある。 1泊2日の旅だったが、荷物や釣り具を満載した状態での長距離移動でも快適だったことを思い出す。 数時間ほどしか運転せず(寝ている時間のほうが長い!)、今でもみんなに申し訳ない気持ちでいっぱいだが(笑)。 ■トヨタ、日産、ホンダ……。各社からのワゴン包囲網をものともしない「安定した実力」 ▲3代目モデル。全グレードが4WDとなったのも話題になった! 初代がステーションワゴンというカテゴリーを切り拓いて定着させ、2代目でそのカテゴリーを盤石のものにしたといっていいスバル レガシィツーリングワゴン。 3代目が誕生した1990年代後半から21世紀に入ったころは、世の中に「RVブーム」が巻き起こり、各メーカーからのステーションワゴンの新規モデル投入はますます過熱。 トヨタからはカルディナ、カローラワゴン、マークⅡクオリス、クラウンワゴン、アルテッツァ・ジータなど。 日産からはプリメーラワゴンやステージア。 さらには、ホンダ アコードワゴン、三菱からはランサーセディアワゴン、ディアマンテワゴン、加えてマツダ カペラワゴン……など。 一部しか車名を挙げていないが、壮観ともいえる各メーカーのラインナップ数だ。 そのさなかでもスバル レガシィツーリングワゴンの凄みは圧倒的だった。 「ステーションワゴンとしての出来」で見た場合。 総合評価で、どのモデルもレガシィツーリングワゴンには及ばない、というのが当時の専門家の評価だったと記憶している。 数多のライバルを敵にまわしても、王者レガシィの座は揺るがなかった……ということである。 レガシィツーリングワゴン、恐るべし。 ■後継モデルとしてレヴォーグが誕生。ここにもレガシィDNAはしっかりと息づく ▲初代レヴォーグ ステーションワゴン・カテゴリーの開拓者となり、世代が変わっても常にステーションワゴン界の主役であったレガシィツーリングワゴン。 2009年誕生の5代目が最終モデルとなり(海外ではレガシィの名前は継続販売)、2014年、後継モデルとなるレヴォーグが誕生。 2023年現在、2代目が現行モデルとなり、スタイルや走りはもちろんのこと、先進安全技術などの評価も高く、人気を博している。 さらに、2023年9月にはレヴォーグをベースにした、レヴォーグレイバックというSUVモデルが登場するなど、「レガシィツーリングワゴンのDNA」は新章を迎えている。 ちなみに、筆者のイチ推し世代は2003年登場の4代目モデルである。 ▲レガシィ4代目モデル レガシィ初の3ナンバーサイズモデル(といっても車幅は1730mm)で、扱いやすさと徹底した軽量化が施された、街中でもロングツーリングでもベストな相棒というワゴンだ。 EJ20エンジンを踏襲しながらも、出力などをブラッシュアップ。 ドライバーになんら不満要素を与えないモデルだったと思う(……実燃費が悪いのはご愛敬ですが)。 多くの自動車評論家の評価が今でも高く、その年の日本カー・オブ・ザ・イヤーに輝いたのも納得といえる一台である。 [ライター・柴太郎 / 画像・Dreamstime, 旧車王]

固着したネジでも諦めないで!回らないネジの緩め方アラカルト
ライフスタイル 2023.09.14

固着したネジでも諦めないで!回らないネジの緩め方アラカルト

普通の人なら、ネジなんてドライバーかスパナで回せば緩むんじゃないの?と思われるかもしれません。 ですが、旧車王ヒストリアの取材対象になるような年式のクルマの場合、長年の使用でネジ山の隙間に埃が詰まったり、何度も再塗装されたために塗料が固着したり、ネジ同士が錆び付いたりなど、緩めることが困難になることが往々にしてあります。 その際に、無理にネジを回そうとしてネジの頭部分を破損する、いわゆる「ネジをナメる」ことで回せなくなったり、ネジが中で折れてしまいネジが取れなくなるという事があります。 ■基本は緩めるネジにあった工具を使い、強引に回さない ナベネジ、皿ネジの場合は必ず頭の切れ込みの大きさにあったドライバーを選びます。 切れ込みに入ればいいと小さいドライバーで無理に大きなネジを回そうとすると、切れ込みを破損する「ナメる」原因になります。 六角ボルトの場合はなるべくメガネレンチ、ソケットレンチを使います。 片口スパナやモンキーレンチは「ナメる」原因になります。 どうしてもスパナがやソケットレンチが入らない場所、手持ちに合うサイズが無い場合など、やむを得ない理由がある時以外は極力使わないようにしてください。 ■固着したネジの緩め方 まずは、CRCなどの浸透性潤滑剤をネジに吹き付けます。 鍋ネジ、皿ネジの場合、切れ込みに合った貫通ドライバーをあて、ドライバー後端をハンマーで叩いて打撃を与えると、かなりの高確率でネジが回ります。 打撃を回転力に変えることでネジを回す「インパクトドライバー」という工具も存在します。 自分でクルマを弄る人なら持っておいて損は無い工具です。 六角ボルトの場合は、同様にCRCを吹き付け、大き目のマイナス貫通ドライバーをボルトにあて、同じ要領で打撃を与えます。 ネジが回り出したら、無理に最後まで回そうとせず、回りにくくなったら一旦そこで止め、逆方向(締める方向)に回します。 この緩める・締めるの動作を繰り返しているうちに、ネジ山に詰まっているサビやチリが剥がれ、CRCが浸透していきます。 次第に回転角度が大きくなり、回転も軽くなり、最終的にネジを外すことができます。 DIYのお供として、CRCやMD-40などの浸透性潤滑剤が必須アイテムなのは言うまでもありません。 摺動部の潤滑よりも、固着部分の潤滑剤としてのほうが重要という方も多いと思います。 最近は「凍結浸透ルブ」という、ボルトを凍結収縮させることでサビや固着部分にクラックを入れ、潤滑剤を浸透させやすくするスプレーもあります。 ■ネジの頭をナメてしまった場合の緩め方 ドライバーやスパナがネジの頭の切れ込みや角をえぐり取ったときのグニッとした感触は、なんともいやな物です。 プラスネジの場合は、糸ノコやディスクグラインダーでネジの頭に切れ目を入れ、マイナスドライバーで緩めるという方法があります。 六角ボルトの場合、もしも12角のメガネレンチかソケットでボルト・ナットの角をナメかけた!と思ったら、即作業を中止して、6角のメガネレンチかソケットで作業を再開してください。 12角よりも6角の方が、ボルト・ナットに対する接触面が増えるためです。 ボルト・ナットの角が少しえぐれた程度なら、6角のメガネレンチでボルト全体を回せば持ち堪えてくれる可能性はまだまだあります。 完全にネジの頭が潰れてしまい、ドライバーもスパナ・レンチでは回せなくなった場合、バイスプライヤー、ロッキングプライヤーと呼ばれているプライヤーで直接ネジを掴んで回します。 バイスプライヤーは鋼鈑やパーツを貼り合わせるときの仮止めにもよく使うので、2~3種類は持っておいて良い工具だと思います。 ■破損したネジを外す専用工具を使う 最近は「ネジザウルス」という、破損したネジを緩める専用のプライヤーもあります。 ネジザウルスブランドを展開する「株式会社エンジニア」では、「ネジレスQ」という外れなくなったネジを外すための相談も受け付けています。 ネジの頭が完全に破損したり折れてしまった際は「エキストラクター」という工具を使います。 逆タップとも呼ばれ、テーパー型のタップに左回りのネジ山が切られています。 ナメてしまったネジの頭にドリルで垂直に穴をあけ、エキストラクターを左回転でねじ込んでいきます。 ポンチで位置決めをしてから、細いドリルで垂直に穴を開け、順番にドリル径を大きくしていきます。 ボルトに開けた穴にエキストラクターを差し込み「左回り」に回転させると、折れたネジが抜けるハズなのですが、撮影時はうまくいかず、ネジ山を別の方法で再生させました。 その様子が次項です。 ■いっそネジに工具を直接溶接してしまう 溶接機を持ってる人限定ですが、余っている工具や不要になった工具を、ネジに直接溶接してしまうという方法もあります。 熱を加えることで、膨張、収縮を繰り返し、固着部分が剥がれるという効果も期待できます。 いずれの方法を用いてもネジが緩みも外れもしないとなれば、あとはドリルやボール盤でネジをもみ切り、修正タップやリコイルヘリサートを使ってネジを再生することになります。 次回はネジの再生手段について書きたいと思います。 [ライター・画像 / 鈴木 修一郎]

見た目より中身を優先!? こんな人に旧車を乗ってほしい!
ライフスタイル 2023.09.08

見た目より中身を優先!? こんな人に旧車を乗ってほしい!

私自身、Z32専門店を営む店主ですが、いつの間にか疑いようのない「旧車」であることを日々実感しています。 年々、個体数が減っていく現状を目の当たりにし、絶滅の危機に直面している日を案ずる日々です。 これから先「一台でも多くZ32を後世に遺すためには?」を、皆さんと一緒に真剣に考えなければなりません。 いきついた答えは、その一台を大事に守ってくれるオーナー様が必要だということです。 「こんな人に乗ってほしい!」という要望をまとめてみました。 これから旧車に乗りたい方へのメッセージでもあります。 ■愛車を守り、一生乗り続ける覚悟がある人 オーナー様が、愛車を守り、一生乗り続ける覚悟が必要です。 そのクルマは縁あって出会ったわけですが、貴方のお陰で幸せなはずです。 一蓮托生の思いがあれば、貴方の気持ちに愛車が応えてくれます。 ■維持費がかかることを理解している人 愛車を維持していくために、お金がかかることに対する理解が必要です。 自動車税・ガソリン代・車検代はもちろん、修理やメンテナンス代も確実にかかります。 お金を惜しみなくかけてあげれば、愛車も喜んでくれます。 ■見た目より中身を優先し、メンテナンスしながら乗る人 見た目より中身(機関系)を優先し、メンテナンスしながら乗ることが必要です。 いくら見た目を良くしても、調子が悪ければ、安心して楽しく乗れません。 しっかりメンテナンスしてあげれば、愛車がいつまでも活き活きと長生きしてくれます。 ■改造メインではなく、ノーマル重視で乗る人 改造メインではなく、ノーマル重視で乗ることが必要です。 改造してクルマが良くなることはありません。 やはりノーマルが一番格好良いのです。 ノーマルで綺麗に乗ってあげれば、愛車も喜んでくれます。 ■万が一の場合、中途半端な状態で手放さない人 万が一の場合、中途半端な状態で手放さないことが必要です。 中途半端な状態の車からは愛着が感じられず、次の方へ受け継ぐのが難しいのです。 次の方も大事に乗ってくれれば、愛車も安心するはずです。 ■オーナー自身が健康な人 愛車を守るためには、オーナー自身が健康であることが必要です。 病気がちでは、愛車に手をかけることも、乗ってあげることもできません。 オーナー自身も健康であり続ければ、愛車を一生守ることができます。 ■まとめ 旧車に乗るのは、ペットを飼うのと同じです。 ただ可愛いだけでペットを飼うのはダメですよね? 住みやすい場を提供し、毎日栄養のある良い物を食べさせ、定期的に健診・散歩・シャンプーをします。 日々、健康管理をし、清潔にして、安らげる環境を見直す必要があります。 気が抜けません。 時間とお金を惜しみなく使い、愛を与え続けます。 それが可愛がるということです。 そうすることで、ペットも、この人が飼い主で良かった、この人のお蔭で幸せだと感じるはずです。 それができない人は、ペットを飼ってはいけません。 ペットが不幸になるからです。 飼い主は、ペットのためにモチベーションを維持し、健康で、一生添い遂げることができる覚悟が必要なのです。 [ライター・画像 / 小村英樹]

映画007シリーズの"James Bond"はアストンマーティン人気の立役者?
ライフスタイル 2023.08.30

映画007シリーズの"James Bond"はアストンマーティン人気の立役者?

イギリスで大人気の映画007シリーズ James Bondでは、主人公がいつでもアストンマーティンを運転しています。 1964年初代の007シリーズ『Goldfinger』では、アストンマーティン DB5が使用されました。 それ以降すべての映画に登場しており、アストンマーティンと007は、切っても切れない縁となっています。 映画007は初代より今現在までの60年間、ここイギリスでは常に大人気で、次回作をいつも楽しみにされているほどです。 日本でいうジブリ映画と同じくらい知名度があります。 ある英国民を対象とした「一番好きな憧れのクルマはなんですか?」という質問調査では、アストンマーティンはベスト3でした。 年齢別でみると、中高年の方々から多く支持されているようです。 ■クラッシックカー、アストンマーティンの価値は億単位 映画007を観た方はご存じかもしれませんが、主役は外見はもちろんのことながら、いつもスマートでかっこいいですよね。 そんな人をさらにかっこよくするのが、上質で品格のあるアストンマーティンなのです。 1964年製DB5コンバーチブルの値段は、軽く1億ポンドを超えます。 また、初代のジェームズボンドを演じたショーンコネリーは、アストンマーティンを所有していましたが、これをオークションで売却しています。 その値段は2億3千ポンドでした。 また、DB4のオリジナルレプリカが25台のみの限定で製造されましたが、こちらのお値段も2億9千ポンドです。 現在市場に出ている、アストンマーティン中古車の値段を調べてみました。 1964年製DB5は60万ポンド、さらにボディカラーがシルバーバーチの場合は1億ポンド。 シルバーバーチは007映画で使われているボディカラーです。 1963年製DB5ヴァンテージは90万ポンド、1963年製DB5コンバーチブルは1億2千ポンド、1964年製DB5とDB6に使われたクルマのパーツ(リア車軸のみ)は9千ポンドです。 桁が多すぎてクラクラしますね。 すべてのモデルにいえることですが、希少価値がこれらの値段に反映されています。 ■アストンマーティンの歴史に迫ると... アストンマーティンは、1913年に2人のイギリス人エンジニアによって、レース用に作られました。 エンジンと車の土台は、特別かつ質のいいものを使用し、高性能でかつ高速であることで、そのためいくつかのレースでも優勝しています。 ちなみに名前の由来アストン(ASTON)はレース場の地名です。 アストンマーティンは、すべて高級な部品を使用して希少性を保っています。 量より質にこだわり、すべての人のために作られたわけでなく、その性能を知る人のみのためにデザインされ、巧みさを兼ねて作られたクルマです。 贅沢さ、美々、洗練、スタイルなどの表現をされ、これは本来の英国性を反映させているように思われます。 第一次世界大戦後から第二次世界大戦が始まるまでの間の製造台数を見てみると、たったの55台。 また戦後、DBシリーズのみでは、1950年から1972年の22年間で約7000台。 年間平均製造台数はたったの316台です。 ■アストンマーティンの倒産、暗黒時代 アストンマーティンは今年で110年を迎えますが、実は現在に至るまで7回もの倒産を繰り返しています。 創業から2021年までの、108年間で製造販売されたクルマの合計数は、約12万台だけです。 ちなみに他社と比べてみると、ホンダは1963年から1億台以上を製造しています。 かなりの違いがわかると思います。 アストンマーティンは美しいレーシングカーと呼ばれ、ル・マンなどのレースでも優勝、または上位で完走していましたが、約400億ポンド以上の損失を作り倒産しています。 その後、何人ものオーナーに買われ続け、現在に至ります。 この倒産を繰り返すなか、DB5がアストンマーティンの利益挽回に貢献しました。 007シリーズの著者でもあるイアン フレーミングは、アストンマーティンのファンだったことから、自身の著書の中でアストンマーティン DB3を登場させています。 しかし、実際の映画『Gold finger』ではDB5かジャガー3.4の選択肢を与えられ、結局、映画プロデューサーはアストンマーティンを選びました。 これは、アストンマーティンが広告目的で映画会社へ35億ポンドを支払ったためです。 そして、このことから一気にアストンマーティン DB5が世に知れわたり、瞬く間に人気となります。 ■やっぱり人気のDream Car アストンマーティン 007シリーズでは、DB5の他にもV8ヴァンテージヴォランテ、DBS V12、DBS V10などが登場してきましたが、そのなかで圧倒的に人気なのがやはりDB5で、なんと24本中8本の映画に登場しています。 映画を見るたびに登場するアストンマーティンが英国人の夢のクルマとなり、そこに誰でもが手にすることができない希少さが加わって、人気度は上昇しました。 やはり007シリーズ James Bondは、アストンマーティン人気に影響を与えたといっても過言ではないでしょう。 英国人にアストンマーティンの魅力について聞いてみると、スタイル、そして洗練さと答えます。 また、1世紀を超える歴史をもつことも魅力であり、古いものを大切にする英国人ならではの感性が伺われます。 私からいわせてもらうと、アストンマーティンはスポーツカーでありながら、上品さや気品を感じるのと、フェラーリやポルシェなど他のスポーツカーにはない、なにか伝統的英国らしさというものを感じるのです。 この先の100年も、多くの英国人にとってアストンマーティンはドリームカーであり続けることでしょう。 [ライター・SANAE]

ガレージカレント取材記:1989年式メルセデス・ベンツ500SE(W126)
ライフスタイル 2023.08.28

ガレージカレント取材記:1989年式メルセデス・ベンツ500SE(W126)

今回は、20代による20代のための輸入車デビュー応援企画! 目的地であるガレージカレント(神奈川県横浜市)に向かい、取材してきました。 ■クルマの紹介 今回僕が取材した車輌は、メルセデス・ベンツの1989年式500SEというクルマです。 この500SEは、1979年にデビューしたW126と呼ばれる二代目のSクラスのなかでも上級グレードに位置するクルマです。 当時メルセデスは「最善か無か」というトガったスローガンを掲げた結果、生産終了から30年以上経過した現在においても「オーバークオリティ」と称されるほどの質感を誇ります。 当時の新車価格は1210万円。 まさに「高級車」といえるクルマですが、歴代Sクラスのなかでもっとも多い販売台数を記録。 現在のメルセデスのイメージを確かなものにしたクルマともいわれています。 また、当時の日本では、金丸信、田中角栄などの大物政治家をはじめ、企業経営者、プロ野球選手やプロゴルファー、芸能人などもW126を愛用していました。 また、F1ドライバーの間でも非常に人気があり、ケケ・ロズベルグ、ニキ・ラウダ、ナイジェル・マンセルなど、多くのドライバーたちがプライベートでW126を運転していたのだとか。 このことからも、ただ高級で快適なサルーンカーというだけでなく、ドライバーズカーであったことがうかがい知れるエピソードですね。 しかし、このクルマがスゴイのはわかったけど、価格も高いし若者にはもっと軽快なクルマのほうがよさそうなのに、なぜこれが20代におすすめなのかと疑問に思うことでしょう。 安心してください。ここからしっかり解説してまいります。 ■経験として体で知っておくべき上質さ 販売車輌ということで助手席での同乗走行となりましたが、その乗り心地に大きな衝撃を受けました。 ただ単に快適さでいったら現行の高級車のほうが上かもしれませんが、今のようにアクティブサスペンションや電子制御スロットルなどの魔法みたいなハイテク装備を持たずして、建築物のようなボディ剛性、バネの柔らかさに頼った乗り心地ではなく、コシをのこしたしなやかな足回りなどが体感できます。 クルマの基本的かつ根本的なメカニカルな部分を徹底的に煮詰めることで、80年代において現代と比べてもまったく謙遜のない素晴らしい乗り心地を保持している点には、本当に感動しました。 若いときに当時のメルセデスが持つプロダクトへのこだわりや、本物の上質さを体で知っておくということは、今後のカーライフに絶対的な影響を与えてくれるはずです。 しかし、この先W126もどんどん年老いて台数は減っていき、コンディションの良い個体を探すのは難しくなっていくことが予想されます。 そのため、このW126が当時のシャンとした面影を残したまま、はっきりと僕たちにその現役時代の実力を伝えてくれる時間はそれほど残されていないはず、といってもいいでしょう。 ■ガレージカレント店長に聞くW126の「オススメの使い方」とは? もし、僕たちがこのW126を手に入れたとき、どのような使い方をしたらカーライフを楽しめるのか、このとき、別の個体の取材に来ていたライターの林氏と、ガレージカレント店長を交え、20代のクルマ好き同士で真剣に考えてみました。 筆者:皆さんだったらどうやって使いますか? 店長:僕だったら仕事終わりに、好きな音楽を流しながら好きな道をぐるぐる走り回るのが楽しいと思うなぁ~。 林:ん~、僕だったら週末に友達とどこか遠くの温泉に出かけたりして使うとかですかねぇ。 筆者:あー温泉いいですね、みんなで運転を替わりながらタクシー、ハイヤーごっことかしても楽しそう! 店長:タクシーごっこは楽しいかもね。 筆者:大きなボディの割に意外と小回り効くから、都会でも難なく運転できそう。意外と普通に通勤とかで乗っていたら、偉くなった気分で面白いかもしれないですね(笑)。 一同:いずれにしてもクルマ主体の生活というよりかは、上質な道具としてうまく各々のライフスタイルに取り入れて使えるからいいよね。 もし仮に、新車同様のW126が残されていたとして、それはもはやコレクターズアイテム。そう簡単に手が届くものではないことが予想されます。 しかし、今ならまだコンディションのいい個体が、頑張れば20代でも手の届く価格帯で購入できるチャンスが残されています。 維持費のことが気掛かりなのはいうまでもありません。しかし、素性の良い個体を手に入れ、このクルマに精通した主治医やベテランオーナーたちと巡り会うことでさまざまな困難を乗り越えられる確率が格段にあがります。 仕事終わりの深夜、現代のスポーツカーに乗ってドライブすることで気分がリフレッシュできるように、僕のような20代の人たちが生まれる前に造られたクラシック・サルーンで音楽を聴きながら優雅に高速道路を流す……。 多様性が求められ、なおかつ受け容れられる現代だからこそ、クルマの本質を存分に味わっておきたいものです。 ホンのちょっとの勇気があれば、そこにはクルマに対する価値観を根底から覆すほどの「ホンモノの世界」が待っている。そう感じた取材となりました。 ⚫︎今回取材したクルマはこちらhttps://www.garagecurrent.com/car/87221 なお、ガレージカレントの運営元であるカレント自動車は「旧車王」という買取サービスも行っています。今回取材したガレージカレントと同様に、20年以上にわたって事業を展開した実績があり、クルマのプロが多く在籍しています。もし将来、クルマの売却を検討することがあればぜひ「旧車王」を検討してみてください。 [ライター・小河昭太]

日産・フェアレディZの系譜とその魅力【S30系・基本編】
ライフスタイル 2023.08.23

日産・フェアレディZの系譜とその魅力【S30系・基本編】

■スーパーカーたちと並んでも堂々として見えた国産スポーツカーの代表格 私が“フェアレディZ”と出会ったのは1970年代の末ごろ。 ランボルギーニやフェラーリ、マセラティなどのスタイリッシュなデザインをまとった“スーパーカー”たちが展示会場に集められ、スーパースターのように子供たちの憧れの視線を集めていた“スーパーカーブーム”のただ中でした。 どっぷりブームにハマっていた小学生の私は、親に買ってもらった大判のスーパーカーのグラビア本に毎日のように熱心に見入っていました。 その1ページを飾っていたのが、S30系・フェアレディZの1モデルである「240Z」でした。 特徴的なマルーンのボディ色に塗られたロケットを思わせる流線型のボディは、小学生の私にも美しく感じられ、並み居るイタリアのスーパーカーたちにも引けを取らない、堂々としたたたずまいが印象的でした。 日本人として誇らしい気持ちにさせてくれたのを覚えています。 ■オトナになった目線で見直したフェアレディZの素顔 今回紹介する「S30系」の「フェアレディZ」は、「フェアレディ」としてはSR311/SP311型の「ダットサン・フェアレディ」に次ぐ2代目ですが、その後ずっと受け継がれていくことになる「フェアレディZ」としては初代のモデルになります。 その成り立ちは、北米市場を主軸として見据えた、世界戦略モデルの開発からでした。 軽量なボディ設計に始まり、高性能なヨーロッパ車ともレースでじゅうぶんに戦える足まわりを備え、高出力な直列6気筒エンジンが搭載されたことで、国際的な基準で見ても一線級の動力性能が与えられました。 外観は、ジャガーEタイプやMG-Bなど英国車のエッセンスを採り入れつつ、独自の個性をカタチにした優れたデザインにまとめられました。 それらの要素が相まって、当時の代表的な存在であったジャガーやポルシェなどのスポーツカーに負けない魅力と性能を備えながらリーズナブルな価格だったことも後押しして、かなりのヒットを記録したそうです。 しかしそれから30年以上経ち、オトナになってある程度冷静な目で「S30系・フェアレディZ」を見たところ、ローコストで制作された車輌という側面が浮かび上がってきました。 軽量なモノコックボディは、同時期に作られたスカイライン(ハコスカ)ほど手が込んでおらず、足まわりは前後とも安価に製造できるシンプルなストラット方式、エンジンは実用性の色が強いタフなつくりで、製造コストを抑える努力があちこちに感じられるものでした。 それは、フェアレディZがスーパーカーに肩を並べていたという印象のまま育った私にはショックなことでしたが、デザインは当時美しいと感じたままの魅力を変わらず備えていましたし、ローコストの設計とは思えない性能を達成した開発陣の創意工夫と努力には、むしろリスペクトが高まったほどでした。 ■旧車ブームの立役者としてのフェアレディZ 今から約20年ほど前から盛り上がりを見せ始めた"旧車ブーム"のなかで、「ハコスカ(C10系・スカイライン)」との二枚看板でブームの火付け役となったのも、この「S30系・フェアレディZ」でした。 デビュー当時から、その流麗なデザインはスポーツカー好きの支持を集める大きな要因でしたが、それから40年以上経った今でも色あせずに、旧車ファンの心に刺さり続けていることが人気の大きな理由だと思います。 そしてそれと合わせて、搭載されている“L型エンジン”の存在も、もう一つの重要な要素ではないでしょうか。 発売当初も1,998ccで130馬力を発生して高性能ユニットと好評を得ていましたが、1980年代終盤から1990年代にかけての“ゼロヨンブーム”で盛んに競い合いが繰り広げられたおかげで、飛躍的にチューニング技術が進みました。 L型エンジンで最高排気量のL28型をベースに3.2Lまで排気量が拡大され、高度なチューニングが施された結果、300馬力をゆうに超える出力を発揮。 古い型式と言えるOHC(オーバーヘッド・カムシャフト)方式にも関わらず、当時の高性能の証といえるリッター100馬力オーバーを達成していたのです。 そんな背景が重なって、チューニング指向ではない人たちも憧れる存在として、新たに脚光を浴びることになりました。 ■S30系・フェアレディZのインプレッション S30系・フェアレディZの魅力は、何といってもまずデザインでしょう。 前に向かって鋭くなる流線形シルエットに加え、ロングノーズ&ショートデッキの“ファストバック”スタイルが、風を切り裂いて進むスポーツカーらしさをより強調させています。 エンジンは基本グレードのL20型(1,998cc)で130馬力。 あとから追加された「240Z」に搭載のL24型では、2,393ccで150馬力を発生。 今のクルマと比較すると心もとない数値ですが、実際に乗ってみると、L20型でも今の高速で気持ちよく走れる性能を有しているのに驚かされます。 それよりも特筆すべきは、数値には表れない回したときの気持ち良さです。 さすがに回転上昇の鋭さはそれほどではありませんが、直列6気筒特有のスムーズな回転フィーリングは、ぜひ味わっていただきたい部分です。 排気音よりもキャブレター特有の吸気音がよく聞こえるエンジン音も、今のクルマではけっして味わえない魅力の一つと言えるでしょう。 それらが相まって、どこか遠くにドライブしたくなる気持ちにさせてくれます。 室内を見てみましょう。 クラシックな雰囲気の中に、高性能さを感じさせる2眼+3眼メーターや、大径のウッドステアリングなどのスポーティな装備によって、欧州のGTカーを思わせる精悍な雰囲気を感じられます。 ハンドルはアシストのない、いわゆる“重ステ”なので、停止時の“据え切り”は少し覚悟して掛からないとなりませんが、慣れれば(真夏以外は)涼しい顔で回せるようになるでしょう。 シートの座り心地はお世辞にも良いとは言えませんが、適度に柔らかく、長距離でもそれほど心配することはないと思います。 それよりも印象的なのはその着座位置です。 ドアを開けて後ろに手を回すと、リヤタイヤに触れるくらい後方に位置するポジションは、走っていると背中にリヤタイヤの存在が感じられるようで、今のクルマに慣れた人には想像できない感覚を体験させてくれるでしょう。 ■S30系・フェアレディZの豆知識 S30系のフェアレディZは、年式やグレードごとに何種類かに分類されますが、ざっくり括ると前期と後期に分けられます。 見分ける点はいくつもありますが、大きなところだと、まずはテールランプの形状です。 前期は“ワンテール”と呼ばれ、ストップ、ウインカー、バックの各ランプがひとつのユニットにまとまっています。 後期はバックランプが独立して、前期のワンテールに対して“ツーテール”と呼ばれています。 もう一つは内装のダッシュボードの形状です。前期/後期とも、ハンドル正面の速度/回転計の2眼と、ダッシュ中央上部の水温&油圧/電圧&燃料/時計の3眼メーター(年式、グレードにより例外あり)という構成は共通です。 異なる点はそのデザインで、前期は各メーターにヒサシが付いた、独立感のある有機的な造形が特徴です。 後期になると各メーターのヒサシはなくなり、全体的にややシャープ感のあるデザインに変更されます。 ※年代やグレードでさらに細かく分類されるようですが、ここでは省略します。 ちなみに、“初期”と呼ばれる希少なモデルがあります。 その特徴は、リヤウインドウの後部に左右1対の細長い通気口があって、それが紳士のヒゲに見えることから、マニアの間では「ヒゲ付き」と呼ばれています。 次回は、フェアレディZの系譜とその魅力【S30系・中級編】をお届けする予定です。 どうぞお楽しみに。 [ライター・画像 / 往 機人]

土より街を選んだ「SUV」カテゴリーの開拓者、初代ハリアーを深掘り![開拓者シリーズ:第1回]
ライフスタイル 2023.08.21

土より街を選んだ「SUV」カテゴリーの開拓者、初代ハリアーを深掘り![開拓者シリーズ:第1回]

醤油、味噌、トンコツ。さらには家系……。 種類(カテゴリー)が多いゆえに味わう楽しさがラーメンにあるように、クルマにもいくつかのカテゴリーがあり、クルマ選びのスタート地点になっていると思う。 例えば「セダンから愛車を選ぼうと思ったけど、ラゲッジの使い勝手を考えるとハッチバックもアリだね……」と。 そんなクルマのカテゴリーには、それぞれ「始まりの存在」があるはず。 カテゴリーの開拓者(パイオニア)たちにスポットをあて、その開拓者の魅力を探りながら、私、柴太郎の独自視点でカテゴリーを形成していった功績や理由(ワケ)にも焦点をあてていきたい。 「短期集中3回シリーズ」でお届けしていきたいが、第1回目のカテゴリーは「SUV」。 そして、その開拓者はトヨタ初代ハリアーだ。 ■「SUV」という言葉が浸透する前夜には、確固たる「クロカン」ブームがあった 国産車、輸入車問わず、今をときめくカテゴリーといえば「SUV」だろう。 時代を遡り、1980年代から1990年代にかけて、最低地上高が高く、オフロードに強いヘビーデューティー使用の4WDモデルは一定人気があり、「クロカン」(クロスカントリー)というカテゴリーを形成していた。 スズキジムニーからトヨタランドクルーザーまで、サイズはさまざま。 都会乗りでも人気を集めた「三菱パジェロブーム」(1992年頃)が巻き起こり、また、従来のクロカン・カテゴリーの匂いがあまりしないトヨタRAV4(1994年)やホンダCR-V(1995年)など、シティ派ライトクロカンといえるモデルも次々と誕生。 それらは大ヒットしたが、「新しい何か」や「SUV」という言葉を市場に浸透させるには至らなかった。 ■「クロカンのようだが、どこか違う」。1997年、トヨタ初代ハリアーが新たな風を吹かせた そして1997年。突如としてトヨタが放ったモデルに世間の耳目が集まる。 それが初代「ハリアー」。 それまでのクロカンと、大枠という意味でのカタチは似ているが、丸みを帯びたスタイリッシュなデザイン。 斬新な大径タイヤを履き、オフロードをイメージさせる雰囲気はほぼ皆無。 その外観だけで「クロカンのようだが、どこか違う……」という新たな世界観を感じさせた。 今改めて見ても、リアピラーのデザイン処理は秀逸すぎる、と思う。 また、FFベースでモデルをつくりあげたという発想も、それまでのクロカンモデルとは一線を画している。 頑丈さと耐久性に優れたラダーフレーム構造。 多くのクロカンは、ピックアップやトラックなどに採用されるこのラダーフレームを採用していたが、初代ハリアーはフレームと上屋を一体構造にしたモノコックボディ構造を採用。 オンロード重視のコンセプトは「なんちゃってクロカン」と当時揶揄されたが、今思えば時代をかなり先取っていた戦略であり、この構造の違いが「別物」を生み出したと言っていい。 床から天井までのボディ全体でクルマを構築しているモノコックボディからは乗用車感覚が伝わり、広いキャビンは「まるで高級サルーン!」と例えていいほど。 初代ハリアー。 まさに「新しい何か」が感じられるモデルであり、当時のクルマ好きを振り向かせる存在であった。 ■初代のCMキャッチフレーズは「WILD but FORMAL」。猛々しくもスタイリッシュ。それが似合っていた 前項で「まるで高級サルーン!」と述べたが、当時、クルマ好きの仲間たちと初代ハリアーで高速道路を試乗したことがある。 そのモデルのパワーユニットはV6、3Lだったが、走行しながら、「この滑らかな走り味は背の高いクラウンのようだ~!」と興奮しながら、みんなで絶叫したことを思い出す。 そういう意味では、現在人気絶頂のクラウンクロスオーバーのコンセプトを、25年前に先駆けていたのが初代ハリアーなのかもしれない(……これはちょっと乱暴な表現ですかね。笑)。 このように「新しい何か」をもたらせた初代ハリアー。 シティ派クロカン、あるいはスタイリッシュ・クロカンともいえる存在となり、直後にメルセデスベンツMクラスやBMW X3など欧州ブランドからも「その手があったか!とフォロワーが誕生。 まさに開拓者(パイオニア)といえる。 SUV(スポーツ・ユーティリティ・ヴィークル)という、北米で形成されつつあったカテゴリーの言葉が、初代ハリアーの認知、市場への浸透とともに膨らんでいったのが、ちょうど20世紀が終わりを告げるあたりである。 ■2代目、3代目と正常進化したハリアー。パワフルな走りを味わえるハイブリッドモデルには驚いた! ▲レクサスRXの兄弟車的存在の2代目(上)と、価格を抑えたグレードもあった3代目(下)。3代目のグリルデザインは注目の的! その後、ハリアーの2代目は、レクサスRXの兄弟車的存在として2003年に誕生。 2005年にはトヨタの懐刀、ハイブリッド搭載車も追加された。 V6、3.3Lエンジン+モーターの組み合わせは、当時のハイブリッド=エコという認識を覆すかのように、燃費性能よりむしろ速さ重視というセッティング。 背の高いSUVでも速い! という新境地を提供したモデルといっていい。 2013年誕生の3代目はレクサスRXと袂を分かち、専用モデルとして新たなにスタートを切った。 2Lガソリンモデルという、価格が抑えられたグレードがラインナップされたこともあり、20代の若者にも人気が広がり、「SUV」はいろんな層に受け入れられていく。 ハリアーらしいエレガントさは保ちつつも、スポーティ志向もある。 何よりフロントグリルにガラスのような素材を採用したのが斬新。 当時、ある自動車評論家氏はこのグリルを見ながら「SUV界のEXILEだね」と言っていた。 ふむ、まさに言い得て妙だ。 ……そして、現行4代目ハリアーは2020年に誕生。 クーペフォルムとなったスタイルは、シティ派SUVの本流のど真ん中を走っているといっていい。 また、国産ミドルサイズSUVの主役を担っていることも明言したい。 それだけ、トヨタが力を入れて開発しているモデルであり、ユーザーが求めるクルマでもある、ということだ。 初代の誕生から26年。 SUVの開拓者となった「ハリアー」というクルマは、脈々と世代を紡ぎ、SUVのなかで今でも主役を張る。 これは……「凄い」としか言いようがない。 [ライター・柴太郎 / 画像・Dreamstime, Photo AC]

学生だからってあきらめるのはまだ早い!工夫次第では夢じゃないこだわりの旧車ライフ
ライフスタイル 2023.08.08

学生だからってあきらめるのはまだ早い!工夫次第では夢じゃないこだわりの旧車ライフ

近年、20~30代の若者の間でネオクラシックカーと呼ばれる旧車ブームが巻き起こっており、非常に注目を集めている。 都内で大学生をしている筆者のまわりでも、ゴルフやボルボに代表される王道車種はもちろん、そのほかにも個性的なネオクラシックカーがほしいという声がちらほらと聞こえるようになってきた。 クルマが好きな筆者としては、同世代の友人たちがどんな要因であれ自動車に興味を持ってくれるのは本当に嬉しいことである。 ▲近年絶大な人気を得ているゴルフ2 ▲同じく人気を集めているボルボ240 しかし我々20代の学生にとって、クルマというのはとてもハードルが高い買い物、ましてや旧い車なんてなおさらのこと。 しかも自動車というものは買っただけでは済まず、維持費がかかるし、旧車なら修理費もかかったりもする。 そういった点で、皆あこがれてはいるけれど、なかなか手が出ないというのが現状である。 そんな“旧車に乗りたいけれど、ハードルが高くてあきらめかけている同世代のオーナー予備軍の方々”へ。 ごく一般家庭で育った文系大学生の筆者が、“どのようにして旧車ライフを送れているかのコツと工夫”を参考になるかはさておき、お伝えしておこうと思う。 ■旧車は維持費が高い、燃費が悪いというイメージについて 僕のまわりの大人や友人、いろいろな人から“超”頻繁に聞くフレーズとして“旧車は壊れる、旧車は金がかかる、燃費が悪い”がある。 これは確かに間違っていないが、正しいとも言い難い。 旧車のなかでも大小さまざま千差万別であり、これを真に受けて旧車をあきらめてしまうのは非常にもったいないと思う。 ■旧車と付き合っていくうえでネックになる維持費や修理費を節約するには 旧車がその魅力にもかかわらず敬遠される要因でもあるランニングコスト。 これは工夫次第で抑えることができるのだ。 もちろん税金や保険は節約できないので、頑張って捻出する以外に選択肢はないのだが、ここでは車検や整備費などの抑え方について解説していく。 ポイント1 ~ユーザー車検~ 車検というと、整備工場に依頼して取得してもらうのが一般的である。 しかし旧車の場合、車検を取得には現行の自動車とは少し異なる技術が必要であり、整備費が高くついてしまうのだ。 それを自分でおこなうことによって、大幅に費用を節約することができる。 もちろん車両によって注意点などが異なったりもするわけだが、近年ではユーザー車検に挑む人も増えている。 さらにネットにも多くの情報が公開されているので、それらを参考にすると良いだろう。 ポイント2 ~こまめな点検、整備を自分で~ 旧車は壊れやすいといわれるが、理由としてはさまざまな部品が年数を経て劣化していることがあげられる。 それらの部品は大抵大事になる前に予兆があり、それに気が付いて事前に交換や修理、調整をしてやることで解決できる。 ほったらかしにしないで日頃からこまめに車の様子を観察して注油するなど、メンテナンスしてクルマとコミュニケーションを取ることが大切だ。 これらのことを続けていれば、オーナーにしかわからないクルマの声のようなものが聞き取れるようになっていき、これが旧車と付き合っていくことの醍醐味だったりもする。 ポイント3 ~修理を自力で行う方法~  旧車は壊れやすいといわれるが、それゆえに構造がシンプルで簡単に修理できる傾向がある。 メジャーな車種や一部輸入車などは、未だにメーカーから新品の部品が生産されていたり、そうでなくてもヤフオクやイーベイなどを駆使すれば、素人でも簡単に部品が入手できるケースが多い。 一定数人気のある車種だと修理の解説をしている動画やサイトなどもあるので、筆者のような完全な素人でもネット時代の恩恵である程度の修理はできてしまうのだ。 手をかければかけるほど愛着が湧くので、なるべく自分で修理するというのもオススメである。 ■筆者がオススメするクルマの条件 比較的維持しやすいクルマの条件を解説する ・排気量が小さめ 税金やガソリン代を抑えるためというのもあるが、排気量はクルマ自体の大きさや重さ、パワーに直結する指標であるので、排気量が少なければタイヤにかかる負担も小さくなりやすい。 ▲排気量ごとの税金 ・1960~1970年代に設計されたクルマ この年代に設計されたクルマは、それ以降のクルマに比べてはるかにシンプルな構造になっていて、電気的に車を制御するシステムなどもない。 つまりDIYで修理をするにも比較的イージーであり、不便な部分は多いけれど運転するのにもコツが要るため、ドライバーを育ててくれる利点もある。 ▲シンプルで手の入りやすい旧車のエンジンルーム ・自分が心から惚れ込んでしまったクルマ 旧車というのは現行の自動車に比べてやはり手間がかかるし、苦労する部分もあるので情熱がないとなかなか厳しい。 なので苦労や手間もすべて吹き飛んでしまうくらい大好きなクルマを選ぶことが肝心だ(もちろん妥協のないクルマ選びというのは口でいう100倍以上難しいのだけれど…)。 ■さいごに筆者より クルマが欲しいと思ったなら、旧車やクルマ全般によく言われる噂やイメージなどを鵜呑みにせず、ネットなり本なりで細かくいろいろと調べてみることを薦めます。 ハードルが高いとはいえ情熱があれば案外どうにでもなったりするものです。 諦めなければいつかきっと手に入るはず。 これを読んでいる旧車にあこがれているみなさまが、ステキなカーライフを送れることを心より祈ります。 [ライター・画像 / 小河昭太]

「AI」が描くオレたちの旧車!
ライフスタイル 2023.08.04

「AI」が描くオレたちの旧車!

さて、ワタクシまつばらは「イラストレーター」としての肩書きも持っております。 webの挿絵とか本の表紙とか説明図とか、線画が多いのですがこんなの描いているんですよ、実は。 さて、そんなイラストレーターとしての立場でお話しすると、昨今様々なメディアでウワサの「AI」。 すなわち「Artificial Intelligence」の略ですが、昭和時代なら鉄腕アトムに搭載されている「人工頭脳」とか、まあ、そんなイメージがありますよね。 その「AI」くん、ご存知の方もいるかとは思いますが、最近イラスト業界では話題持ちきりなのは、写真ライクな美少女画像とか、かっこいいヒーローのポーズとか、AIが描くそのハイクオリティな出来栄えに、多くの人が「近い将来イラストレーターの仕事なくなっちゃうんじゃないか」とか「この出来ならモデル撮影のカメラマンも不要になるかも」とか、色々ウワサが絶えません。 まあ、その辺の考察は別の機会にイロイロ考えるということで、今回は旧車王らしく、そしてプロのイラストレーターとして、AIが生成する「オレたちの旧車」を考えてみようというのが今回のネタ。 いやあ、AIくん、なかなか面白いですぜ、ということではじまりはじまりー。 まずは手始めに、AIくんに何か描いてもらいましょう。 今回登場するのは、Microsoftのブラウザ「Bing」に搭載されているAI「DALL-E」という画像生成AIくんと、SeaArt というAIコミュニティで使えるイラスト生成「img2img」というAIくんです。 現在のAIにはそれぞれ特徴があって、画像を生成するためのキーワード「プロンプト」=ワレワレは「呪文」とか呼んでますが(笑)、同じ「呪文」を唱えても、生成される結果は大幅に違うというように、すでに「AIの個性」というものが芽生え始めている感じがします。 まあ、そんな前振りはともかく、早速AIくんに「描いて」もらいましょう、オレたちの旧車! まずは「DALL-E」くんの描く旧車! 呪文は「縄文時代のスポーツカー、日本、古代、縄文人」って、旧すぎ?(笑) おおっ! なんかそれらしいイメージというか、チキチキマシンに出てくる「001 岩石オープン」みたいなイメージだけど、まあ、縄文人ならこんなスポーツカー、アリだよね!という感じでいいっすね。 さて、全く同じ呪文を「img2img」くんにお願いして、縄文人のスポーツカーを・・・・・ って、おい!サイドカー?・・・・昭和時代じゃないかコレ?って感じで、同じプロンプト=呪文唱えてももこんなに違う。 確かに運転手は縄文人っぽいけれど。 さて、さらに時代は進み、時は飛鳥時代。 聖徳太子のスポーツカーをAIくんたちに描いてもらいましょう。 デザインは遣隋使でお馴染みの小野妹子くんです! 「DALL-E」くんはなんとなくそれっぽい感じに仕上がってますね・・・。 キャラデザインがそれとなく中華風。 これ見るとエンジンは付いてなさそうなので、足漕ぎかも。 足漕ぎだったらカッコいいすね、コレ。 で、次は「img2img」くん・・・うを!オモシロすぎ!なんだよコレ(笑)。 まるで祇園祭か岸和田のだんじりじゃないっすか。 やはりエンジンどこに付いてるんだか・・・、あ、飛鳥時代だからエンジンなんてないのか。 まあ、いくら旧車王でも縄文や飛鳥時代は旧すぎなので、もっと近いところで、大正時代はいかがでしょう? あ、コレはかなりいい線行ってますね、AIくんも。 近い過去ならあまり忘れてないようで。 こんなありそうでなさそうなグラフィックが、AIくんが最も得意とするところなんでしょう。 呪文は「大正時代 実用車 日本製 自動車 東京 モダン」です。 さて、それではもう少し現実的に。 AIくんもがんばって画像を生成してくれていますぞ。 作画は「DALL-E」くん。 呪文は「スズキ フロンテクーペ 70年代 スーパーカーみたい かっこいい」です。 過日鬼籍に入られたデザイナーで、世の中に直線なんてものはないと豪語されていたシド・ミードさんが、もしシトロエン2CVをデザインしていたならば・・・、という想定で、こんな呪文を唱えてみました。 こちらも作画は「DALL-E」くん。 「シド・ミード デザイン 2CV シトロエン」です。 うむー、どちらも納得できるかどうか?と言えば「そうかもね・・・」という感じになっちゃうのですが、それでもなんとなく「ソレっぽい」仕上がりになっているのは、さすがAI(笑)。 フロンテクーペはかっこいいなあ。 今度はシンプルに、呪文を「シトロエン 2CV」として、「img2img」くんに描いてもらいましょう・・・・って、なんとなくビートル混ざってる感が(笑)。 ドアの枚数とか構造の描写に、かなり悩んでいる様子が見えますね。 まあ、それとなく特徴を捉えていたりして、誰が見ても「2CV」というところはキッチリ押さえているようです。 というように、現状でのAIくんは、かなり無茶な要求にも真摯に、クソ真面目に応えてくれます。 そもそも、普段ワレワレが使っているコンピュータも「人間が指示したり要求したこと」以外はできませんよね。 言われたことを忠実に実行する。それが彼らの行動です。 なので、AIくんが「描いて」くれたイラスト的なものや写真的なモノも、プロンプト=呪文をできるだけ忠実に再現してくれたものだと思うのです。 それはネット上に溢れる情報=「ビッグデータ」から、必要なものを取り出して組み合わせたモノなので、ワレワレ人間が思いもよらないような、すなわち「意志」や「感情」を省いたデータの組み合わせが可能、というのがAIくんの強みでもあり、弱みなのかな、という気がします。 ともあれ、絵描きとしては、AIくんはなかなか面白い遊び相手だなと思っておりますので、これからもイロイロ一緒に遊んでみようと計略中であります。 いや、こいつ面白いっすよ(笑)。 最後に「現在日本で最強 旧車王 えらい イラスト」という呪文を唱えてみましょう。 応えてくれるのは「DALL-E」くんです。 どうですか?最強? ありそうでなさそうな、ちょっと素敵なデザインではありますね。 [画像 / OpenAI「DALL-E」, Stable Diffusion「img2img」・ライター/まつばらあつし]

先入観から誤解しやすい、旧車へのボディーコーティングについて語る
ライフスタイル 2023.07.27

先入観から誤解しやすい、旧車へのボディーコーティングについて語る

▲筆者の所有する空冷ビートル。ソリッドカラーとはいえクリアー層を有するが、比較的高年式の車輌とはいえ塗装の質は現代車に比べ明らかに劣る 新車・中古車に関わらず、クルマを購入する際に、必ずといってよいほどボディーコーティングの施工を勧められることはないだろうか? クルマの見積書に記載があれば、これから自身のモノとなる愛車のために、いわれるがまま施工される方も多いことであろう。 もはやボディーコーティングといえば、車輌購入時のオプションメニューとして、代表的な選択肢の一つといっても過言ではないはずだ。 さて、ここまでは一般的な現代のクルマでの話であるが、これが旧車へのボディーコーティングとなったら一体いかがなものであろうか? 今回はボディーコーティング施工の業務経験から、旧車へのボディーコーティング施工について、私クマダの主観とはなるが、初心者のためにできるだけ簡単に意見を述べてみたいと思う。 ▲現代のクルマでは、購入と共に当たり前のように施工されるボディーコーティング ■1.そもそもボディーコーティングとは何か? ボディーコーティングとは、その名のとおり、自動車のボディーなど外装に施工する保護処理の一つである。 業務用の特殊なコーティング剤を塗布してボディーの塗装面全般を保護し、耐久性を向上させるためにおこなわれる。 使用されるコーティング剤については、黎明期はワックスに類似する程度のものから、フッ素(テフロンとも呼ばれる)やシリコーンを用いたポリマーコーティング剤が主であったが、おおよそ10数年ほど前から、(ガラスの組成に近いシロキサンやポリシラザンを原料とする)二酸化ケイ素を用いたガラス系コーティング剤が主流となった。 今回の記事は、現代において主流となったガラス系コーティングの施工を前提として、話を進めていきたいと思う。 ▲昨今では近所のガソリンスタンドでも施工できるほど、身近になったボディーコーティングではあるが・・・ ■2.ボディーコーティングを施工するメリットとは? それでは、旧車にボディーコーティングを施工するメリットとデメリットについて語っていきたい。 まず、現代車に施工する場合と同様の一般的なメリットをあげれば、以下のとおりだ。 【塗装の保護】厚く硬いコーティング膜により塗装面を傷やスクラッチなどのダメージを緩和し、傷そのものをつきづらくする。 【光沢に優れる】ガラスの組成に似た成分を持つことから光沢に優れる。ハイグレードなコーティング剤を施工すれば、その膜厚によりクリアー層がさらに厚くなった様に見える製品も存在する。 【汚れが定着しづらくなる】コーティング被膜上に汚れが定着しづらくなる。ピッチ・タールなど、特に油性の汚れがこびり付くことが少なくなる。また、長期間放置したものはNGだが、水アカも通常の洗車でかなり落としやすくなる。 【長寿命である】ガラス系コーティングは無機質のため、酸化しないことが特徴だ。 旧来のポリマーコーティングについて全てがそうとはいえないが、ロウや石油系溶剤などの有機物からなるワックスについては、熱を受けたり時間の経過により、ゆくゆくは保護膜そのものが酸化し、汚れとともに塗装にこびりついて劣化してしまう場合もある。 無機質であるガラス系コーティングは熱や紫外線に強く、酸性雨からもボディーを保護する効果が高い。 これは有機物からなるワックスやポリマーコーティングとの最大の違いである。 一般的に寿命は3~5年といわれるが、筆者の経験上、メンテナンス次第だが寿命はそれ以上ともいえる。 【旧車に施工するメリットは?】旧車に施工するメリットは、とくに青空駐車にてクルマを保管するオーナーにとって、紫外線や酸性雨からボディーの塗装を保護できることが最大のメリットとなるはずだ。 それ以上に、現代車のように厚いクリアー層を持たない旧車については、膜厚のあるコーティングを施工することによって、ボディーに光沢を与えることができる場合もある。 また、油性の汚れがこびり付きづらくなる防汚性能にもメリットがある。 キャブレター車など、リアバンパーのマフラー周りに排気ガスによる黒いススがつくことが無かろうか? こういった汚れが通常の洗車で落としやすくなるのだ。 ■3.逆にボディーコーティングを施工することによるデメリットは? それでは、逆にデメリットを述べよう。 今日においては、ボディーコーティングを施工するうえで、選択肢はほぼガラス系コーティング一択となるであろう。 考えられるデメリットは以下のとおりだ。 【施工費用が高額である】価格が高い。誰しもがそう感じるはずだ。情報化の進んだ今日では、ボディーコーティングに用いるプロ用の薬剤もインターネットショッピングで手に入れることができる。薬剤そのものの価格は、施工する金額の数分の一となり、けっして高価ではない。 それでは、なぜプロに施工を依頼すると高額なのか? 答えは簡単だ。施工にとても時間がかかり、とにかく重労働だからである。 その理由を次の項で述べる。 ▲旧車ではありませんが、筆者はこんなYouTube動画をつくっております。https://youtu.be/SK1gWpUxyIk ■4.ボディーコーティング剤への過度な期待は禁物 ところで、実際にボディーコーティングの施工をプロに依頼する際の検討材料といえば、よほどのマニアでない限り、なんとなく使用するコーティング剤のブランドや、ネームバリューから想像される仕様や性能に興味が向きがちではなかろうか? 私クマダは、この部分に注意喚起をしたい。 あくまでもボディーコーティングの施工において、作業の主役はコーティング剤そのものを塗布する工程ではなく、その施工時間の大半を費やす、施工者自身による下地作りの工程なのだ。 では、ボディーコーティング施工において主役となる、下地作りとは何か? 簡単にいえば、それはボディーの汚れ落としと塗装面の研磨だ。 ボディーに付着した長年の汚れ、鉄粉やピッチ・タールをトラップ粘土で除去することから始まり、ボディーについた傷やスクラッチを、ポリッシャーを用いて入念にコンパウンド掛けをして削り落とす。 使用過程のクルマにおいては、通常の洗車では手の届かない部分の汚れ、一例を述べれば、モールとボディーのすき間やエンブレムの周りなどにこびりついた長年の水アカなどを、スケール除去剤のような個人で取り扱うにはリスクのある「プロ仕様」の特殊な薬剤をもちいて入念に落とす。 実は、ボディーコーティングを施工することでクルマが輝くのではなく、むしろこの下地作りの作業でクルマが輝くといっても過言ではない。 ではなぜ、ボディーコーティングを施工するために、そこまでの作業が必要なのか? それは、ガラス系コーティングの被膜はとても強固なため、簡単にやり直しができないからである。 ガラス系コーティングはシンナーで簡単に落とせるような代物ではない。 下地となる塗装面に傷や汚れが残ったまま施工してしまうと、そのままその傷や汚れを強固にコーティングしてしまうのだ。 新車と違い、使用過程におけるクルマを磨くことは、面倒なことこの上ない。 さらにコーティング剤を塗布する場合にも、塗布する場所の温度や湿度など、施工環境への配慮が必要である。 また施工後も、決められた時間、ボディーを水に濡らさないようにして、しっかり乾燥させなければならない。 とにかく、全般的にとても気を遣う作業なのだ。 だからボディーコーティングの施工は高額となるのである。 どこかで聞いたような言葉で述べれば、「コーティング剤の性能の違いが、コーティングの仕上がりの決定的な差ではない」のだ。 むしろ、施工者の技術や経験で仕上がりに大きな差がでるといって過言ではないであろう。 コーティング剤のネームバリューに惑わされてはいけない。 お金を費やすべきものは、施工者自身の腕と情熱なのだ。 ▲旧車ではありませんが、筆者はこんなYouTube動画をつくっております(その2)https://youtu.be/mLqZ6kl4BWc ■5.悩ましい旧車へのボディーコーティング 旧車にボディーコーティングを施工する場合は、さらにいくつか注意するべき点がある。 ここまでの記事を読めば、勘の良い読者の方は気づかれたことであろう。 ボディーコーティングの下地作りをする際におこなう、電動ポリッシャーによるコンパウンド掛けはボディーの塗装面を磨くので、当然のことではあるが少なからずボディーの塗装を薄くしてしまう。 もとより旧車の塗装といえば、経年により少なからずダメージがあることが前提ではある。 しかしながら、事故などの補修による再塗装部分やキレイにレストアされた車輌など、プロフェッショナルであっても、その塗膜がどのような下地の上に乗っているものか予想がつかない場合が多い。 こういった部分に安易に手を入れると、下地作りの作業途中で、思いもよらない原因で塗装面を傷めてしまう場合もあるのだ。 旧車のボディーコーティングについては、施工を断られることもあると耳にしたことがある。 当然のことであろう。 旧車の塗装に手を入れるには、それなりの経験が必要だ。 ボディーコーティング施工者の誰もが旧車を相手にできるわけではないのだ。 レストアされた車輌であればまだしも、貴重なオリジナルペイントの車輌に手を入れる場合は特に慎重に作業せねばならない。 それこそ取り返しのつかない事態になりかねないからだ。 ならば、旧車のボディーコーティングはどこに依頼すれば良いのか? ボディーコーティング施工は洗車の延長線上、すなわちカーディティーリング業界に属する。 旧車への施工を唱っている施工業者であればなんら問題ないが、身の回りに見つからなければ、鈑金塗装の、それも旧車が得意なプロフェッショナルの門を叩くと良い。 ワックスは塗料を弾くため、塗装時のトラブルの素となるためか、洗車業界と鈑金業界は水と油といわれることもある。 しかし、常にボディーペイントの下地と塗膜に向き合っている彼らからは「佳い(よい)」アドバイスをいただけるはずだ。 ▲業務上、今日までガラス系コーティングを施工する時間はいくらでもあったが、今日までワックス仕上げで維持している。メキシコ産ビートルとはいえ、すでに25年が経過したオリジナルペイント塗装はいたるところでクリアー層の剥がれが始まっている ■6.まとめ レストアされたクルマはどれも美しい。 しかし、自身の幼少期、これらのクルマが新車であった頃、はたして、これほど艶やかに輝いていただろうか・・・?ふと思うことがある。 旧車といえば、ある時代より旧いクルマの場合、ソリッドカラーのクルマなど、クリアー層を持たない塗装が多く存在する。 筆者もいわばアラフォーのおっさんとなり、昨今の旧車ブームではネオクラシックと呼ばれる1970年代後半から1980年代のクルマが自身の刷り込みのクルマであるのだが・・・。 そういえばこのクルマ、新車の頃はもう少し落ち着いた輝きだったような・・・。 特にここ数年、旧いクルマを眺めていると、このように感じることが多い。 極端にいえば「不自然」に感じるのだ。 レストアされ、新車時以上に高品質な塗装で、エンジンルームのスミからスミまで美しく厚い塗膜でオールペイントされたクルマ。 こういったクルマには、躊躇せずボディーコーティングを施せばよいことであろう。 しかし、オリジナルペイントが残るクルマはどうだろうか? 当時はまだ高額だったシュアラスターのカルナバで仕上げたクルマは、まだ幼かった筆者の目でも違いを感じたものだ。 ここからは余談であるが、ここまでボディーコーティングについて語っておきながら、特にオリジナルが随所に残る旧車風情が漂う佳き時代のクルマに対し、安直にガラス系コーティングをおススメして良いものかと感じているのが筆者の正直な感想だ。 青空駐車かつ日常使いの旧車オーナーにとって、ボディーコーティングは強くおススメできるものではあるが、決して必須であるとはいえない。 有機物ゆえに、ボディーの水アカの原因になりかねない旧来のカーワックスであっても、その自然な艶と肌ざわりに根強い人気があり、週末の洗車とワックス掛けがルーチンワークとなっているベテランオーナーは数多い。 長い期間隅々までキレイに磨かれ、良好な状態を保たれた旧車のボディーの細部に残る、どうしてもオーナーが落としきれないちょっとした水アカに、むしろそのオーナーの愛着の深さを感じてしまうことがあるのだ。 あばたもえくぼ。 結局は、自身のいちばんやりたい方法でクルマを仕上げるのが、究極の旧車メンテナンスではなかろうか。 閑話休題。 旧車においては、最新が最良と言えないことが多いのだ。 ボディーコーティング然り。 ボディーコーティングはあくまでも、クルマ維持の選択肢の一つに過ぎない。 ※私クマダはYouTubeでポンコツ再生動画を公開しております。ぜひ動画もご覧になってください。チャンネル登録お待ちしております。https://www.youtube.com/@BEARMANs   [ライター・クマダトシロー / 画像・クマダトシロー, AdobeStock]

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