旧車の魅力と知識

なんと発売から17年! デリカD:5が長きにわたり愛される理由とは?
旧車の魅力と知識 2024.07.19

なんと発売から17年! デリカD:5が長きにわたり愛される理由とは?

三菱を代表する車種といえば何を思い浮かべるでしょうか。パジェロやランサーエボリューションという人もいるでしょう。しかし両車種とも現在は販売終了しています。今の三菱を代表する車種といえばデリカD:5ではないでしょうか。 驚くべきことに、発売から17年経った今でも好調な販売をキープしています。途中何度も改良を加えつつも、17年という長きに渡って愛されてきた理由は何だったんでしょうか。その理由を紐解いていきます。 デリカD:5の歴史 デリカD:5は2007年にデリカシリーズの5代目としてデビューしました。D:5がこれまでのデリカシリーズと大きく異なる点は、パジェロベースからD:5専用設計となったことです。専用設計となったことである程度のオフロード性能は保ちつつ、大部分を占めるであろう市街地走行での快適性が大幅に向上しました。 さらに2013年には、新たにクリーンディーゼルを投入したことで燃費やトルクも向上し、結果として商品力にも磨きがかかりました。実際、追加後は過半数以上の人がより高価なディーゼルを購入していることからもその人気がうかがえます。 そしてその後も堅調に販売を続け、2018年には主にフロントフェイスなど大幅な改良を施したビッグマイナーチェンジ版が発売されました。外見が大きく変わっただけでなくディーゼルエンジンがより改良されたものになったりと機関面でも様々な変更点があることも特徴です。 クリーンディーゼルのメリットとデメリット 従来の排気ガスがもくもくと出るディーゼルエンジンとは違い、排気ガスが綺麗なことがD:5に搭載されたクリーンディーゼルの利点です。そして生まれ変わったディーゼルエンジンを積んだD:5では、環境面に優れているだけでなく、販売面からみても主力エンジンになりました。 そこで、もはやD:5のメインエンジンとなったディーゼルモデルについて詳しくみていきます。 メリット メリットの一つ目はガソリン車と比べて、燃費やパワーが優れていることです。もちろんガソリン車との価格差はありますし、燃料代だけでそれをペイすることは厳しいでしょう。しかし、発進時から大トルクによる余裕の加速力を感じられ、ロングドライブ時も低い回転数で快適に巡行できます。また7~8人乗車や荷物が満載といったD:5ならではの場面でも、パワー不足を感じることもないでしょう。 そして、売却時もガソリン車よりも大幅に高いリセールバリューが期待できます。燃費の差と買取金額の差を足せば、ガソリン車との車体価格差も大きく縮むかもしれません。 デメリット デメリットのひとつめはやはりガソリン車と比べ価格が高いことでしょう。中古車で買うとなると約30万円以上の価格差があります。もちろん多少燃費や売却時の価格も優れていますが、そうは言っても最初に払う金額が多いのは確かです。 また、ビッグマイナーチェンジ後の車両は排ガスを綺麗にするためにアドブルーという水溶液を補給する必要があります。これはエンジンオイルとは全く別ものであり、かつタンクが空になってしまうとエンジンの再始動ができなくなります。補給するタイミングは大体1万キロごととなりますが、一回で約5,000円ほど費用もかかります。 数あるミニバンの中からデリカD:5を選ぶ理由 デリカD:5の個性といえば、家族も荷物もみんなで乗れるミニバンでありながらオフロードや雪道も難なく走れる四駆性能をもっていることに尽きるでしょう。これは他メーカーにはない、デリカD:5だけの唯一無二の個性です。 車においての個性は、ある意味そのままセールスポイントになる場合があります。デリカD:5はその最たる例といえるでしょう。例えば、家族でスキーなどのアウトドアに行っても、または昨今多く発生している異常気象の中でも、優れた四駆性能をもつデリカなら安心です。もちろん基本はミニバンなのでユーティリティも兼ね備えています。 昔ディーラーのセールスマンにこんなことを聞いたことがあります。それは「デリカを一度買うと、デリカを乗り継ぐ人が多い」という話でした。実際、豊富なカスタムパーツやデリカの専門店があることからも人気の高さが分かります。 デリカシリーズはこのようにファンが多いことも特徴です。一度乗ってみると、その魅力に気づき、虜になるかもしれません。 デリカD:5を売るなら旧車王に査定を依頼する デリカD:5を高価で売却したい場合は旧車王がおすすめです。デリカD:5に精通した専門スタッフは特徴及びセールスポイントを正確に把握しています。そのため17年以上経過した初期型などの、一般買取店では評価が難しい状態でも高額査定を実現します。 ディーラーでの下取り金額では不満な方、一括査定の鳴り止まない電話にうんざりの方などは、高価査定の旧車王にぜひともお任せください。 [ライター/旧車王編集部]

トヨタ スポーツ800「ヨタハチ」は究極の大衆スポーツカー!? 脅威の燃費性能も実現した開発背景に迫る
旧車の魅力と知識 2024.07.18

トヨタ スポーツ800「ヨタハチ」は究極の大衆スポーツカー!? 脅威の燃費性能も実現した開発背景に迫る

ロングノーズ、ショートデッキにまとめられた個性的なスタイリングが魅力のトヨタ スポーツ800。「ヨタハチ」という通称までつけられるほど、多くのファンから愛されたモデルです。 スポーツカーを大衆の身近な存在にしたスポーツ800の、開発時の様子と魅力について詳しく紹介します。 コンセプトカーを見事に実車化したトヨタ スポーツ800 スポーツ800は、2シーターオープンスポーツという独特のスタイリングと大衆が手の届く価格を両立したモデルです。当初販売予定はなかったものの、コンセプトカーの反響が大きかったことが量産化につながりました。 大衆車であるパブリカをベースにしながらも、性能にこだわって設計されたスポーツ800の誕生背景を振り返りましょう。 大衆の手の届くスポーツカー スポーツ800は、高度経済成長期真っ只中の1965年に登場しました。「スポーツカーを大衆の手に」というコンセプトのもと、豊かになってきた若年層でも手の届く価格で発売されます。 安価に製造できた最大の理由は、大ヒットを記録したパブリカのコンポーネンツを多用したことです。ボアアップによって100ccほど拡大したものの、エンジンもパブリカのものを流用していました。 一方で、モノコックボディは専用設計され、外観からはパブリカの雰囲気を感じません。スポーツカーらしい個性的なデザインを実現しつつも、価格はわずか59万2,000万円に抑えられました。 スポーツカーとしての性能を追求 スポーツ800は、多くの部品をパブリカと共用した一方で、数々の専用パーツによってスポーツカーとしての性能がとことん追求されました。パブリカと同型で非力といわれたエンジンも、可能な限りのチューニングが施されています。 ボアを5mm拡大して排気量が697ccから790ccに向上し、ベンチュリーを拡大したキャブレターが2気筒それぞれに装備されるツインキャブレター仕様でした。また、クランクシャフト周りを強化して、圧縮比も8.0から9.0へと高められています。 さらに、スポーツカーとして重要な空力性能は、風洞実験を重ねて入念に研究開発されました。前面投影面積はポルシェ904とほぼ同等の1.33平方メートルを実現し、空気抵抗を示すCd値は0.30を上回る数値になっています。航空機の空力理論を徹底的に応用し、空気抵抗を限界まで抑えました。 話題を呼んだコンセプトカーを量産化 スポーツ800のもととなったのは、1962年の「第9回 全日本自動車ショウ」で公開されたパブリカスポーツです。乗降用のドアはなく、軽飛行機を思わせるキャノピーをスライドさせる機構は、多くの注目を集めました。発表当時はパブリカのイメージアップを図るためのショーモデルでしたが、高い注目度とスポーツカー人気を背景にトヨタは実車化に踏み切ります。 スライド式のキャノピーこそ実現しませんでしたが、有名なポルシェ911のタルガトップよりも1年半も早く着脱式のルーフを実装することでイメージを踏襲しました。さらに、ロングノーズと先端の丸目ヘッドライトといった、ボディデザイン全体はパブリカスポーツのスタイリングを見事に再現しています。 徹底した軽量化がレースでの結果にもつながった スポーツ800は、空力性能やデザインだけでなく、車重という点でもスポーツカーとしての性能を追求したモデルでした。徹底的ともいえる軽量化は、弱点の補強だけでなく燃費性能の向上にも寄与します。 レースで優勝という結果にもつながった、スポーツ800の軽量化について詳しくみていきましょう。 弱点を補った軽量化で高い運動性能を実現 スポーツ800はパブリカのエンジンを流用していたため、チューニングを施したものの非力さは否めませんでした。そこで、外装パーツを中心に、徹底的な軽量化が図られます。 ボンネット、ルーフ、トランクリッド、バンパー、シートパンなど細部に渡って、可能な限りアルミ合金が使用されています。さらに、リアウィンドウにアクリルパネルを使用するという徹底ぶりで、0-400m加速18.4秒を実現しました。市販車ながら、車重はわずか580kgに抑えられています。 また、軽量化は燃費面でも有利に働き、車体価格のみならず維持費の面でも庶民的な性能を実現しました。うまく走行をすると、市街地では18km/L、郊外では28km/Lにも達する燃費性能を発揮したようです。 ライバル車より非力ながらノーピットストップで優勝 優れた空力性能と燃費性能によって、スポーツ800はレースで輝かしい成績を残します。1966年に日本で初めて開催された長距離レース、第1回鈴鹿500kmで見事にワンツーフィニッシュを遂げました。 プリンス スカイライン、トヨペット コロナ、いすゞ ベレットといった大排気量の高性能車が数多く出走するなか、スポーツ800が優勝できた要因はピットストップを行わなかったことです。ライバル車は1回以上の給油ピットストップを余儀なくされましたが、スポーツ800はノーピットストップで完走。前を走るロータス エランの故障によって終盤にトップに躍り出たことから、信頼性の高さもアピールしました。 歴史的価値と希少性の高さは今も評価され続けている スポーツ800の累計販売台数は、わずか3,131台ほどです。パブリカスポーツの注目度やスポーツ800の価格と性能を考えると販売台数が伸びなかったのは意外な印象ですが、1960年代に2シーターという特殊な用途のモデルだったことを考えると妥当だったのかも知れません。 一方で、旧車ファンやスポーツカーファンからは、今も高く評価されています。トヨタにとってもスポーツ800は重要な存在なようで、復活プロジェクトを立ち上げ「スポーツ800 GR CONCEPT」として1台限定でレストアされました。 半世紀以上前のクルマで販売台数も少なかったために、300万円以上もの高額な買取価格がつけられることもあります。希少性と歴史的価値の高いクルマだけに、現存するスポーツ800は大切に乗り継いでいきたいものです。

定年間近のクルマ好きの方から「定年後にポルシェ911を買いたい」と聞かれてマジレスした話
旧車の魅力と知識 2024.07.02

定年間近のクルマ好きの方から「定年後にポルシェ911を買いたい」と聞かれてマジレスした話

企業に勤める方の定年退職の年齢は、60歳以上であれば各社ごとに任意に決定できるのだという。現実的には65歳で定年退職という流れが多いのだろうか。 私自身、自営業なので定年はない。気力と体力があれば90歳まで働いてもいいし、極論をいえば明日にでも定年してしまってもいいくらいだ(実際にはできないけれど)。 時短やワークライフバランスといったことが叫ばれて久しいが、実際にはいまだに夜遅くまで残業している方も少なくないはずだ。なかには残業代が稼げるから、遅くまで働くのは苦じゃないという方もいるだろう。こうして、家族のため、そして自分自身のため、文字どおり身を粉にして働いてきた方も多いと思う。 ■ポルシェ911が欲しいと語る仕事関係で知り合ったKさん(64歳) もうすぐ定年退職を迎え、これから先は少し時間に余裕ができる。生活に余裕があれば憧れの世界に足を踏み入れてもいいだろう。仕事関係で知り合ったKさん(64歳)と打ち合わせで顔を合わせたとき「時間に少し余裕ができるし、退職金を少し使わせてもらって憧れだったポルシェを買ってみたいんだけどどう思う?」と相談を受けた。 Kさんに「予算はいくらくらいですか?」と尋ねると「600万円くらいかな」とのこと。 予算が600万円ということは、キャッシュで新車のポルシェを買うのは厳しい。ただ、この600万円を頭金にして会社員であるうちにローンを組めば新車のポルシェが手に入るかもしれない。さすがに新車は高すぎるというのであれば、高年式の認定中古車という手もあるだろう。 以前からKさんからクルマ好きと伺っていたので、すでにモデル名を決めているかもしれないと思い「ポルシェのなかで、どのモデルはが欲しいんですか?」と尋ねてみた。すると「そりゃあキミ、911に決まってるじゃないか」とのこと。やはりそうか。多少なりともスーパーカーブームの洗礼を受けているだろうし、「ポルシェといえば911」という強烈な刷り込みを受け続けてきた世代でもある。 「ボクスターやケイマンはいかがですか?」とKさんに問うてみると「オレは911一択」といい切った。もはや打ち合わせはどこへやら。普段の取材(オーナーインタビューモード)みたいだなと思いつつ、Kさんにこれまでの愛車遍歴について伺ってみると…。「KP61型スターレットや、A70型スープラ、FD3S型RX-7などを経て、家族して子どもが産まれてからは日産ラルゴやエルグランド、トヨタ エスティマ」などを乗り継いできたということを初めて知った。 都内在住でさすがにセカンドカーは持つのは厳しく、家族のために事実上クルマの趣味を封印してきたのだという。現在は子どもたちも独立して手が離れ、Kさんご自身も定年間近。奧さんに「退職金を少し使わせてもらって憧れだったポルシェが欲しいんだけど」と、それとなく相談してみたところ「あなたが欲しいなら好きにすれば」といった具合に好意的な回答が得られたそうだ。最大の難関をクリアし、いよいよ本腰を入れて理想の911を探してみようと思っていたところなのだという。 ■ポルシェ911の認定中古車は1500万円〜という現実 ここでふと気づいた。Kさんはこれまで国産スポーツカー、そしてミニバンを乗り継いできている。つまり、1度も輸入車を所有したことがない。それならば少しでもリスクが低いと思われる認定中古車がいいのだろうか…と思い、スマホを取り出し、カーセンサーで調べてみた。 すると…600万円〜700万円の枠で911の認定中古車を調べてみたところ、なんと1台もヒットしない。上限を800万円に引き上げてみてようやく1台といったありさま。さらに、思い切ってリミッター(?)を解除してみると、ほぼ1000万円スタートだということが判明。そこから画面をスクロールしていくと…、事実上1500万円以下ではほとんど選択肢がないことを思い知らされた。これにはさすがのKさんもガックリ。 仮に600万円の予算をほぼすべて頭金としてつぎ込み、車両本体価格が約1500万円のポルシェ911カレラ(991.2)を手に入れるとしよう。60回ボーナス払いなし、均等払いの残価設定ローンで組んだとして、月々の支払いが約95,000円と算出された。 「残価設定ローンで組んでも毎月約10万かぁー」とKさん。どうやら勤めている企業を定年退職したあと、収入が減るのは避けられないようだ。すでに住宅ローンは完済しているというKさんだが、ため息をつくのも無理はない。虎の子の600万円を頭金に充て、さらに残価設定ローンで毎月約10万円。しかも60回で完済ではなく、5年後には残債分をどうするのか決断しなければならない。残債をさらにローンを組んで乗りつづけるか、新しいクルマに入れ替えるか、売却して残債をゼロにするか、そして一括返済するかの4択だ。 ■予算600万円で買えるポルシェ911といえば 気を取り直して600万円前後で買える911を探してみると、996型の上限と997型の最安値の個体がクロスする価格帯だということが分かってきた。 ここでKさんに「911のどのモデルが欲しいのですか?」と尋ねてみた。すると「本当はカレラ2のMT(964型)が欲しいんだけど、空冷911が手が届かない価格帯になっていることは何となく知っていた」という。「自分の買える範疇でいいので、人生において1度はポルシェ911に乗ってみたい」というのが本音だそうだ。 600万円の予算をすべてつぎこんで、997型であれば15年落ち前後、996型であればほぼ20年落ちのポルシェ911を手に入れることになる。購入後、整備費用の予算が0円ではあまりにも心もとない。仮にトラブルに見舞われなかったとしても、1点点検や車検時に「予防整備」としてさまざまな部品を交換することになる確率が高い。ましてや、ディーラーに整備や車検を依頼したら、天文学的な見積もり額にKさんが泡を吹きかねない。 ■結局、どうしたかというと・・・ つい1時間ほど前のハイテンションはどこへやら。すっかり意気消沈してしまったKさんから「どうすればいいと思う?」と、あまりにも直球過ぎる問いに、思わず言葉に詰まった。「買えばなんとかなりますヨ」なんて無責任なことはいえない。かといって「さすがに厳しいものがありますよね・・・」と、ここで引導を渡してしまうのもいかがなものか。 改めてKさんに問うた。「ボクスターやケイマンはアリですか?」と。するとKさん「いや、911に乗りたい!」と、ここだけはどうしても譲れないポイントらしい。 結局、どうしたかというと“911に乗りたいという意思は譲れないわけですし、「600万円(プラス整備費用の予備予算)で買える911」を選ぶか「600万円を頭金にして、残価設定ローンで認定中古車を買うか」。まずはKさんご自身でソロバンをはじいてみて、導きだした結論を奧さんに話して相談してみたらどうですか?”と伝えることにした。 いやー、これは厳しいですよと伝えるのは簡単だ。しかし「乗らないで後悔するより、乗ってみて後悔する」方が、少なくともKさんにとってシアワセな第二の人生が送れるのではないかと感じたからだ。 たとえ1年、もしくはわずか半年の所有期間であったとしても「ポルシェ911を所有できた」という事実は変わらない。売却するときに損をしてしまうかもしれないが、そのリスクを怖がっていたら永遠に欲しいクルマは手に入らない。かといって、ここから数年間貯金をして多少なりとも頭金を増やせたとしても、その分、いまよりは体力や身体能力が衰えているだろう。 せっかく念願のポルシェ911を手に入れたのに、体がついていかないとしたらそれこそ悲劇だ。さらに、長年勤めた企業を定年退職しているのだから、そもそもローンが通らない可能性も高い。 その後、Kさんから「ポルシェ911を買った」という連絡はない。SNSにもアップされている様子がないので、いまだに迷っているのだろうか。それとも奧さんが止めたのかもしれない。Kさんがいずれ運転免許を返納するとき「納得のいく終わりかた」になることを願うばかりだ。 *Kさんには許可をもらって記事にしています。 [画像・Porsche ライター・撮影/松村透]

ホンダ EF9型グランドシビックがVTECの凄さを証明! ホットハッチの定番車種にまでのぼりつめた魅力に迫る
旧車の魅力と知識 2024.06.25

ホンダ EF9型グランドシビックがVTECの凄さを証明! ホットハッチの定番車種にまでのぼりつめた魅力に迫る

国産ホットハッチといわれて、ホンダ シビックを思い浮かべる人は多いのではないでしょうか。今回紹介するEF9型シビックは、ハッチバックのみならずライトウェイトスポーツにおいての地位を確立するきっかけになったモデルです。高回転で響き渡る心地よいVTECサウンドと運動性能の高さが、多くのファンの心を掴みました。 シビックとして初のVTECを搭載した、EF9の歴史と魅力をたっぷりと紹介します。 国産ホットハッチ最強のEF9 グランドシビックの愛称で呼ばれるEF型シビックのうち、EF9は特に注目を集めたモデルです。可変バルブタイミング機構を同クラスでいち早く取り入れ、VTECの実力と名前を世間に知らしめました。 まずは、EF9の誕生やVTECの高いパフォーマンス、レースでの結果を振り返ってみましょう。 EF9はシビック初のVTEC搭載車種 1987年に4代目として登場したEF型は、半世紀以上続くシビックの歴史のなかでも特にエポックメイキングだったモデルです。モデルチェンジから2年後の1989年に、シビック初のVTECエンジンを搭載したEF9が追加されました。 VTECエンジンは、今やホンダの代名詞ともいえるハイパフォーマンスエンジンです。バルブタイミングとリフト量の可変機構によって、高回転での出力と力強い低中速域の加速を両立しています。VTECが初めて搭載されたのは2代目インテグラで、発売はEF9登場と同年の1989年です。つまり、ホンダはシビックへの搭載も強く意識して、VTECの開発を進めていたのではないでしょうか。 シビックの地位を一気に高めたVTEC EF9に搭載されたエンジンは、1.6L直列4気筒の名機B16A型です。可変バルブタイミング機構のVTECを備え、最高出力160ps、最大トルク15.5kg・mという、現在のスポーツモデルと比べても見劣りしない圧倒的なスペックを誇ります。わずか990kgの車重(SiR)ということもあって、まるでターボ車のような爆発的な加速力を体感できました。VTECを搭載したEF9によって、単なる大衆車だったシビックは国産最高峰ホットハッチとしての地位を確立したといえます。 VTECとは、給排気バルブの開閉タイミングとリフト量を変えることで、エンジン特性を劇的に変化させる可変バルブタイミング機構のことです。具体的には、バルブを動作させるカムを一定回転数以上で切り替えることで、チューニングエンジン並みのパフォーマンスを実現しています。他社の同クラスでもさまざまな可変バルブタイミング機構が採用されますが、いずれも1990年代以降だったこととVTECほど過激な挙動をするエンジンはありませんでした。 レースでの活躍によってさらに人気を集めた EF9は、市販車ベースのグループAで争われるJTC(全日本ツーリングカー選手権)に登場翌年の1990年から参戦します。当初はVTECを搭載していませんでしたが、信頼性が確立されるとすぐにVTECを投入。2位のトヨタを6ポイント差で退けて、参戦初年度からメーカータイトルを獲得しました。 2年目の1991年にもメーカータイトルを獲得し、2連覇を達成。さらに、同年にはドライバーズタイトルも獲得しました。速さと信頼性の高さを過酷なレースで証明したことも、EF9の人気が高まった理由です。 EF9に詰め込まれたホンダのこだわり 数あるホンダ車のなかでもっとも長く同一車名のまま販売され続けているシビックは、ホンダにとって特別なモデルです。とりわけ、今やシビックの代名詞ともいえるVTECを初めて搭載したEF9には、ホンダのこだわりが詰め込まれていました。 後のタイプRにもつながったといわれる、EF9のこだわりポイントを2つ紹介します。 EF9に設定された2つのグレードSiRとSiRⅡ EF9には、SiRとSiRⅡの2種類のグレードが設定されています。名称だけを見ると単純にSiRⅡのほうが後から登場した発展型という印象を受けますが、実はこの2グレードは同時に投入されました。 SiRⅡは最上位グレードらしく、パワーウィンドウや電動ミラー、電動サンルーフやABS(オプション扱い)といった豪華装備が備えられていました。一方のSiRは、パワーステアリングすらついていないという、最上位グレードとは思えないほどの簡素な仕様です。 しかし、実はこのSiRの存在こそがホンダのこだわりの現れで、競技車ベースとして設定されていました。SiR最大の特徴は車重の軽さで、1,050kgに達するSiRⅡの車重に対して、余計な装備を極限まで削り落とした結果わずか990kgに抑えられています。ホンダが誇るVTECエンジンの実力を最大限に感じてほしいという、開発側の意図が込められているのでしょう。 タイプRにつながる系譜の源流 実は、EF9こそが、8年後に発売された初代シビック タイプRの基礎を作ったといわれています。エンジンはEF9に搭載されたB16A型の発展型で、ダブルウィッシュボーン方式という足回りもEF型へのモデルチェンジ時に採用されたものです。さらに、EF9の登場に合わせて、ボディワークにも変更が加えられています。 EF9のデザインでもっとも大きな変更点は、フロントバンパーやヘッドライトの形状だといわれています。しかし、ボンネット形状の変更こそが、EF9の特徴だといえるでしょう。従来は左右のフェンダーからつながるラインに対して、ボンネット中央部が凹んだ形状になっていました。しかし、EF9では、中央部のほうが盛り上がったデザインに変更されています。エンジンヘッドの大きい、B16A型エンジンを搭載するためだったといわれています。また、先代から続いていた、ボンネット左端のパワーバルジも廃止されました。 初のシビック タイプRの型式名も、EF9からの系譜であることを示唆しています。シビックで初めてタイプRが設定されたのは、6代目のEK型でした。EK型タイプRの型式はEK9、EF9と同様に「9」が割り振られています。EG型の最高グレードSiRⅡの型式がEG6だったことを考えると、EK9型タイプRはEF9の系譜を直接引き継ぐモデルだといえるのかも知れません。 混沌とした時代に明確な立ち位置を確立した名車 1990年代のライトウェイトスポーツの代表車種としてシビックが定着したのは、間違いなくEF9が大きな功績を残したためです。トヨタ レビン/トレノやMIVECエンジンが話題だった三菱 ミラージュといった強豪がひしめくなかにあって、圧倒的な実力差を見せつけました。後のEG6やEK4、そしてタイプRのEK9が成功したのは、EF9で実現したVTECの爆発的な加速力があったからこそでしょう。 EF9は、クルマの歴史的価値を認める旧車ファンのみならず、競技車輌を求めるモータースポーツ愛好者からも高く評価されています。設計の古さは否めませんが、軽い車重とシンプルなボディ構造から、チューニングベースとして最適なモデルです。ホンダVTECの元祖ともいえるEF9シビックの加速力を、機会があればぜひ一度味わってみてください。

GTの元祖は意外にもいすゞだった! 日本の自動車史に残るベレットGTが今なお人気の理由
旧車の魅力と知識 2024.06.25

GTの元祖は意外にもいすゞだった! 日本の自動車史に残るベレットGTが今なお人気の理由

高いパフォーマンスとラグジュアリーさを兼ね備えた、最上級スポーティーカーにつけられている「GT」という名称。日本で初めて名前に「GT」を採用したメーカーは、意外にもいすゞでした。2ドアクーペとして開発された、ベレットGTです。 今回は、流麗なボディに最高の性能を備えていたベレットGTと最上位モデルのGTRについて紹介します。ベレットGTの魅力を紐解き、今もなお高い人気を誇る理由に迫ってみましょう。 GTの意味を体現していたベレットGT 現在ではトラックやバスといったイメージの強いいすゞですが、当時はレースにも参戦するなど高性能車の開発に力を注いでいました。 その流れを汲んで、いすゞはセダンタイプのベレットをベースに、2ドアクーペのベレットGTを発売。「GT」本来の意味を体現する、完成度の高いクルマでした。いすゞ ベレットGTの誕生背景とそもそも「GT」とはどういう意味なのか詳しく解説します。 東京オリンピックとともに登場したいすゞ ベレットGT いすゞベレットGTは、東京オリンピックが開催される1964年4月に登場。前年1963年に発売された、セダンタイプのベレットをベースに開発されました。首都高速が整備され、高い走行性能のクルマを求める機運のなか、ベレットGTは誕生します。 実はこの頃のいすゞは、ワークス体制でレースに参戦しており、ベレットGTにはレースで獲得したノウハウが惜しみなく注がれていました。 スポーツカーを中心に使われるGTの本当の意味 GTとは、イタリア語のGranTurismo(グランツーリスモ)の略称です。もともとは、大旅行を意味する「グランドツーリング」から派生した言葉で、長距離ドライブもこなせる高い性能とラグジュアリー感を備えたクルマを指します。 いすゞベレットGTも、ベースとなったセダンタイプのラグジュアリー感を活かしつつ、走行性能をとことん高めたモデルでした。 ペレットGTには「R」モデルも存在していた ベレットGTの発売から3年後の1969年、さらにパフォーマンスを高めたベレットGTRが誕生します。ベレットGTRは、レース車輌として活躍していたGTXをベースに、ロードカー仕様にチューンされ、極限まで走行性能を高めたモデルに仕上がりました。 なお、ベレットGTRは1970年に行ったマイナーチェンジの際に、ベレットGT typeRと名称を改めています。GTR、TypeRともに、現在では走行性能の高い国産車の象徴ともいえるグレード名です。どちらの名前も1960年代に使用していたいすゞは、先見の明があったのかもしれません。 GTの名にふさわしい走行性能を誇ったベレットGT ベレットGTは、GTの名前にふさわしく、ベース車輌のセダンタイプとは別のクルマといっていいほど充実した装備が盛り込まれていました。 さらに特別感を高めたGTRとともに、ベレットGTの装備を見ていきましょう。 走行性能を高めるために注ぎ込まれた先進技術 ベレットGTに搭載されたG160型1.6L水冷4気筒OHVエンジンは、最高出力88ps/rpm、最大トルク12.5kgm/4,200rpmを発揮。わずか940kgの車体を軽快にドライブしました。 さらにベレットGTには、当時の市販車としては最新とも呼べる技術によって、高い走行性能を実現します。サスペンションは4輪独立懸架、ステアリング機構はラック&ピニオン式、ディスクブレーキ(フロントのみ)、4速MTなど、名称だけであれば現在のクルマとほぼ遜色のない技術と装備が投入されました。 Rの名前は伊達じゃない ベレットGTRに搭載されたG161W型1.6L水冷直列4気筒DOHCエンジンは、最高出力120ps/6,400rpm、最大トルク14.5kgm/5,000rpmを発生。GTRの名に恥じない最高峰の性能を誇っていました。 ベレットGTRはGTカーのラグジュアリーの側面を満たすべく、内外装でも特別感のある仕様になっています。 外装面では、ダクトの開いた専用ボンネットにリムにメッキを施したホイール(スチール製)、そしてフロントにはベレットGTRの象徴の大型フォグランプが備えられていました。さらに、マイナーチェンジ後のGT TypeRでは、スカイラインGT-Rを想起させるような「R」のエンブレムがボディサイドにあしらわれています。 内装は本革巻き3本スポークステアリング、木目シフトノブといった高級感のあるアイテムが特別装備されていました。一方、インパネには220km/hのスピードメーター、センターコンソールには水温系、電圧計、燃料計の3連メーターを備えるなどレーシーな雰囲気がいかにもGTRらしさを演出しています。さらに、シートはヘッドレスト一体型のバケットシートでした。 名前だけではなく日本の自動車史に残る性能を誇っていた ベレットGTとGTRが、登場から50年以上経った今も高い人気を保っている理由は、単に日本で初めて「GT」の名を冠したクルマだったからというわけではありません。レースからのフィードバックを、ロードカーに詰め込んだ高性能マシンだったからです。ちなみに、日本で初めて「発売」されたGTとなると、発売日の関係でスカイラインGTにその座を譲っています。 半世紀を超えるクルマだけに、中古車の売買は慎重に行いたいところです。仮に程度のいい車輌を探し出しても、維持するためにはメンテナンスは欠かせません。専門の知識をしっかりともった業者と取引をしましょう。

そもそも「職場の上司や先輩よりイイクルマに乗るのは罪なのか?」という話
旧車の魅力と知識 2024.06.25

そもそも「職場の上司や先輩よりイイクルマに乗るのは罪なのか?」という話

現代よりもはるかに年功序列が厳しかった昭和の時代。社長がクラウンであれば、管理職はマークIIに、そして平社員はカローラ乗るべき(またはそれぞれのクラスに属するモデル)といった暗黙のルールがあった。 会社のゴルフコンペに上司より高級なクルマに乗っていこうものなら非常識呼ばわりされ、その後もネチネチと嫌味をいわれた。 終身雇用かつ企業戦士が是とされた昭和の時代を生き抜き、無事に定年退職した父から聞いた話だ。この話を聞いたときはまだ学生だったので、その意味がきちんと理解できなかったように思う。 ■社長、ポルシェ911が欲しいんですけど・・・ やがて社会人になり、勤め先の社長の愛車はメルセデス・ベンツ190Eディーゼルターボだった。当時は「なんでベンツなのにディーゼルなの?」と聞かれることも多かったそうだ。 かつてウィンドウフィルムを施工するショップでアルバイトした際に、納引き(納車引き取り)で何度もメルセデス・ベンツを運転したが、ディーゼルエンジン仕様は1度もなかった。それだけに、とても新鮮だった記憶がある。 打ち合わせなどのお供で何度も社長の190Dを運転させてもらったが、バブル期に「小ベンツ」なんて揶揄されていたのが不思議なくらい心地良いクルマだった。 あるとき「キミは何のクルマが欲しいの?」と社長に尋ねられ、ついうっかり「ポルシェ911が欲しいです」と答えてしまった。自動車関連業の職場とはいえ、かつて父から聞かされた「平社員はカローラ(またはそのクラスに属するモデル)という暗黙のルール」が不意に蘇った。まずい。怒られるかな…。 すると社長は「それはいい!買いなよ!」と背中を押してきた。おいおい、いいのかよ。あとで知ったのだが、当時の勤め先の社長は自分よりも社員が「イイクルマ」に乗ることについてとても寛容な人だった。そして、その言葉を真に受けて、20代半ばで60回ローンを組んでナローポルシェを手に入れてしまった。 いまでこそ価格が高騰してしまったが、25年くらい前は国産スポーツカー並み(またはそれ以下)の価格で買えたのだった。先のことはともかく、とりあえず「買うだけなら何とかなる」時代だった。それがいまや…。とはいえ、月々のローンは5万円を超えたので、薄給の身には結構きつかったけれど。 昭和の時代の「平社員はカローラという暗黙のルール」なんてとうの昔に崩壊したと思いきや、令和6年となった2024年現在でも「ダメなものはダメ」らしい。つまり、一部の世界では根本的に何も変わっていないということだ。 ■どうしても欲しいなら完全プライベートで 勤め先の社長や上司が理解ある人であれば問題はないのだが、そうでない場合、あるいは業界の慣習的に許されないこともあると思う。電車通勤が可能な職場であれば「クルマは趣味」に徹することもできるだろう。しかし、クルマ通勤でなければ通えない場所に職場がある場合、「足車」が必要になってくる。 5万円で友人知人から譲り受けた10万キロオーバーの軽自動車でも何でもいい。そこから中古パーツを駆使して自分好みに仕上げたり、痛んだところを直していく過程も楽しかったりする。もともと安く買ったクルマだけに、趣味車では躊躇してしまうようなDIYも楽しめる。そして、気軽に手を加えられる点が何よりの魅力だ。 そして本命の趣味車だが、もし所有している事実を職場の人に知られたくないなら、SNSにアップするのは気をつけた方がいい。どこで誰が見ているか分からない。鍵アカウントは必須かもしれない。可能であればクルマ関連の投稿は避けた方が無難だ。面倒だけど、それくらい万全の態勢で臨まないとうっかり誰かに知られてしまうからだ。 とはいえ、現実の世界でも気を抜けない。出先でばったり職場の同僚や上司に会ってしまう可能性だってある。もはやこれはもう運の世界だが…。もしばったり遭遇したとき、例えば「○○○くん、ベンツ乗ってんの?」と聞かれ、咄嗟に「いえいえこれは親のクルマを借りてます」と返せるよう、日頃から頭のなかでシミュレートしておいてもいいかもしれない。 ■とはいえ、若いときにしか乗れないクルマがある なかには「そこまでしてでも乗りたいのかよ」と思う人がいるかもしれない。そこまでしてでも乗りたいのよ。足まわりガチガチ、ロールバー&フルバケットシート、エアコンレスのクルマなんて若いときでなければ楽しめない。アラフォー世代にでもなれば、フルバケットシートのままで仮眠なんてできなくなる(どうしても眠いときは別だが、起きたあとがツラい)。 あとは時間の使いかたもそうだ。仕事が終わり、夜「ふとドライブしようかな」と、あてもなく走るなんて行為もいずれおっくうになる。ましてや、家庭を持ったら若くしても夜な夜なドライブなんてほぼ不可能だと思った方がいい。 湾岸ミッドナイト3巻で平本洸一が妻である恵に発した 「も…ッ、もう一度、もう一度走っちゃダメか…?あの金使っちゃダメか…?本当にこれで最後だから…ゴメ…ン。ずっとふりきれて…なかったんだ」 のセリフを知っている人もいるだろう。どうやら作品のなかで2人は離婚しなかったようだが、現実はそうは甘くない。身重の妻がいるにもかかわらず、貯金に手を出して数百万円単位のクルマの買うなんてもってのほかだ。ましてや、そのクルマで最高速トライアル(バトル)をするわけだから、何の見返りもない単なるハイリスクな行為でしかない。無事にバトルを終えて帰宅できたとしても、不安のあまり妻が流産してしまう可能性だってある。 この時点で三行半を突きつけられるか、どうにか離婚を回避できたとしても、奧さんに一生頭が上がらなくなる(むしろ、その程度で済めば御の字だ)。 ■まとめ:いちばん怖いのは男の嫉妬かもしれない SNSなどで「20代でフェラーリ買っちゃいました。界隈の皆さんよろしくお願いします」という投稿を見つけて、コメントこそしないけれど、心のなかで頑張れーというエールを送っている。そのいっぽうで、聖人君子ではないので、正直うらやましいし、一部は親ローンでしょ?みたいな嫉妬心がないわけ…ではない。 ただ、その心境をありのままコメントする行為はまったく別の話だ。「それをいってしまったらおしまいよ」というやつだ。 昭和の時代の「平社員はカローラ」も、俺の方が偉い、立場が上という事実を内外にアピールするための手段にすぎない。社員が上司よりイイクルマに乗れるほど高給なんだと知らしめることにもなると思うのだが…。いつの時代も、いちばん怖いのは男の嫉妬かもしれない。 [ライター&撮影/松村透・画像/Mercedes-Benz、Porsche、AdobeStock]

BMW E92型M3は伝統のシルキーシックスを捨てた?! シリーズ唯一のV8エンジン搭載モデルの魅力に迫る
旧車の魅力と知識 2024.06.24

BMW E92型M3は伝統のシルキーシックスを捨てた?! シリーズ唯一のV8エンジン搭載モデルの魅力に迫る

初代登場から20年以上を経て4代目に達したBMW M3は、8,000回転オーバーという超高回転まで一気に吹け上がる自然吸気エンジンを搭載した魅力的なモデルです。伝統の直6エンジンではなく、シリーズ初のV8エンジンの官能的なサウンドに多くの人が魅了されました。 今回は、V8エンジン以外にも独自の進化を遂げた4代目M3のクーペモデル、E92型の魅力を紹介します。 独自性の高かった4代目M3 現在6代目まで進化したM3ですが、4代目のE92型は歴代モデルのなかでも独自色の強かったモデルです。唯一のV8エンジン、ベースモデルからの大幅な刷新と、チューニングを担当したBMW Mのこだわりが詰まっていました。 先代から7年ぶりの大幅な刷新をして登場した、E92型4代目M3の誕生を振り返ってみましょう。 V8エンジンの搭載で大幅刷新したM3 M3は、主力車種の3シリーズをベースに専用のチューニングを施したモデルです。レースへの参加条件(ホモロゲーション)取得のために、初代E30型が1985年に制作されました。E92型は、M3の4代目として2007年に登場します。3シリーズで初めてV8エンジンを搭載するなど、ボディからパワートレインに至るまで大幅刷新されました。 直6エンジン、いわゆるシルキーシックスを伝統としてきたM3だけに、E92型でのV8エンジン搭載は画期的なことです。最高出力は先代E46の346psに対して、420psにまで引き上げられています。伝統を途切れさせてでも性能を向上させたいという、BMWのこだわりの現れといえるでしょう。 ボディの大部分もM3専用に開発 M3の「M」とは、3シリーズにチューニングを施したBMWのレースやモータースポーツの研究開発部門「BMW M Motorsport GmbH」(通称BMW M)の名称が由来です。E92型 M3で進化したポイントは、初のV8エンジンだけではありません。BMW Mが培ってきたノウハウが、惜しげもなく注ぎ込まれました。 特にボディには、カーボン製のルーフ、エアアウトレットを配したアルミ製ボンネット、巨大なエアインテークを備えたフロントスカートなど、ベースの3シリーズと比較して実に80%もの新開発パーツが盛り込まれています。さらに、迫力のある4本出しマフラーや330km/hまで表示されるスピードメーターなど、Mモデルとしてのキャラクターを打ち出すことに余念がありません。 E92型がM3最後のクーペにして唯一のV8エンジン搭載車 4代目M3は、実は歴代M3のなかでもメモリアルな1台です。初のV8エンジン搭載で大きな話題を呼びましたが、5代目M3では伝統の直6エンジンに回帰します。また、次世代のクーペモデルは、4シリーズに移行。結果的に、M3シリーズ唯一のV8エンジン、最後のクーペという特別な存在になりました。 なお、4代目M3では、セダン(E90型)と日本未発売のカブリオレ(E93型)という、クーペモデル以外のボディタイプも展開されました。セダンは5代目M3以降も継続しましたが、カブリオレもクーペと同様に4シリーズに移行したためM3としては最後のモデルです。 M3最後のクーペにふさわしい圧倒的な走行性能 セダンやカブリオレも販売されていた4代目M3ですが、世代を象徴するのはやはりE92型クーペです。4シリーズへの移行に伴って結果的にM3最後のクーペになりましたが、圧倒的な走行性能の高さで存在感を放ちました。 ここからは、E92型の高い走行性能を紹介します。 サーキット走行にも耐えうる走行性能 シリーズ初にして唯一のV8エンジンS65B40型は、最高出力420ps/ 8,300rpm、最大トルク400N・m/3,900rpmを誇ります。また、特筆すべきは最高出力を発揮する回転数で、8,300回転という超高回転型の自然吸気エンジンというのもE92型の魅力です。車重が1,630kgもあるにも関わらず、0-100km/h加速はわずか4.8秒、最高速度は250km/hにも達します。 さらに、レース部門を担当するBMW Mが開発しただけあって、リミッターを解除することで最高速度は280km/hまで引き上げることも可能でした。ただし、約40万円のオプション料金の支払いと、「ハイスピードドライバーズトレーニング」という講習への参加が条件とされていました。 走りにこだわってドライブトレインを刷新 E92型の俊敏な走りをさらに向上させたのは、7速M DCT Drivelogic(エム・ディーシーティー・ドライブロジック)への変更です。先代の6速AMT(セミオートマチックトランスミッション)、SMGⅡに代わって装備されました。 エンジンとトランスミッションを物理的に接続するデュアルクラッチを採用することで、流体でトルクを伝達するトルクコンバーター式のATよりもロスのないダイレクトな操作感を得られます。なお、7速 M DCTDrivelogicは、セダンとカブリオレでも選択できました。グランツーリスモという位置づけながら、ピュアスポーツと肩を並べるほどのダイレクトな操作感こそが4代目M3の真骨頂です。 商業的な成功は微妙だったが希少性の高まりとともに再評価 新時代への幕開けを予感させたE92型M3ですが、商業的には大成功と呼べるモデルではありませんでした。販売台数は先代のE46型の8万6,000台に対して、クーペ、セダン、カブリオレの3種を合わせても6万6,000台ほどにとどまっています。 シルキーシックスという伝統の直6エンジンに代わって搭載されたV8エンジンに賛否両論あったことも、販売台数の伸びに少なからず影響したのかもしれません。実際、5代目のM3にはV8が積まれることはなく、直6に回帰しています。 しかし、販売台数が少なかったということは、旧車としての希少性が高いということです。また、M3としては画期的なV8エンジン、最後のクーペモデルという点を考えてもマニアの心をくすぐるモデルといえます。希少性の高まりからE92型の中古車相場がどう動くのか、ぜひ注目してみてください。

アルテッツァが25年ルール解禁!値上がりしている?最新相場情報を解説!
旧車の魅力と知識 2024.06.24

アルテッツァが25年ルール解禁!値上がりしている?最新相場情報を解説!

トヨタの歴史に残る名車として知られる小型のFRセダン「アルテッツァ」が製造開始から25年を過ぎ、アメリカの25年ルールの対象となりました。アメリカでは1990年代の日本車の人気が高く、輸入が可能になると国内での希少性が高まって値上がりする可能性があります。そのため、現在のアルテッツァの価格事情を気にされている方も多いでしょう。 本記事では、25年ルール解禁に伴うアルテッツァの価格変動について解説します。最新の買取相場や人気グレードも紹介するため、売却をご検討されている方はぜひ参考にしてみてください。 アルテッツァは25年ルール解禁で値上がりの可能性あり 25年ルール解禁に伴い、アルテッツァは値上がりする可能性があります。 アルテッツァは、小型のFRスポーツセダンとして人気が高く、海外ではレクサス「IS」として販売されていたことから、国内外問わず一定の人気があります。そのため、25年ルールの対象になることによって、右ハンドル仕様のアルテッツァの中古車価格に動きがある可能性が高いです。 しかし、高値がつくかどうかについては車輌の状態によって異なります。加えて中古車市場の相場や市況は日々変動しているため、今後いかなる場合でもアルテッツァが高く売却できるわけではない点に留意しておきましょう。 そもそも25年ルールとは 25年ルールは、アメリカにおけるクルマの輸入規制に関する法律における例外として認められているルールです。アメリカでは右ハンドル車の輸入が禁止されていますが、製造から25年以上経過するとクラシックカーとして登録できるようになります。 ▼25年ルールについては、以下の記事でさらに詳しく解説しています。アメリカ「25年ルール」とは?名車の中古相場が急騰するしくみ アルテッツァの最新の買取事情 25年ルールによって値上がりが見込まれるアルテッツァですが、現在の買取事情はどうなっているのでしょうか。最新の買取相場とともに人気のグレードを紹介します。 アルテッツァの買取相場 アルテッツァの買取相場は以下のとおりです。ここでは、25年ルールが解禁された、または間もなく解禁されるSXE10型のモデルのみに絞って紹介します。※2024年6月時点の情報です。 ■RS200 6MTLエディション/Zエディション/リミテッド/リミテッドⅡ/リミテッド・ナビパッケージ/リミテッドⅡ・ナビパッケージ〜150万円 ■TOM'S 280T 6MT〜250万円 アルテッツァで人気のグレード アルテッツァ全体を通しての人気のグレードはRS200です。 当時の最新技術が盛り込まれた3S-GE型エンジンを搭載しており、最高出力210ps(ATは200ps)を誇るスポーツカーらしさを存分に楽しめるグレードです。前述したSXE10型はRS200グレードしかラインナップされていないため、いずれも高値がつく傾向にあります。 また、TOM'S 280Tはわずか100台しか生産されていないため、その希少性の高さから買取相場が高くなっています。 アルテッツァの魅力 ここで改めてアルテッツァの魅力を振り返ってみましょう。 アルテッツァは、「操り、走る」心地よさを堪能できるクルマとして、1998年10月30日に販売が開始されました。トヨタの小さな高級車「プログレ」用プラットフォームのホイールベースを110mm短縮し、トレッドを前20mm/後25mm拡大したモデルです。 また、エンジンをフロントミッドシップに搭載し、バッテリーや燃料タンクなどの重量物を車輌の中心に寄せた最適な重量配分により、小気味良いハンドリングを実現しているのも魅力の1つです。 エンジンは、2L直列4気筒ツインカムと2L直列6気筒24バルブの2種類をラインナップしています。トランスミッションは、4気筒モデルが6速MTと5速AT、6気筒モデルが6速MTと4速ATです。 いずれも操る楽しさを感じられるスポーツセダンとして、高い人気を誇ります。今後は、25年ルール解禁に伴って、手に入れるのがさらに難しくなるかもしれません。 アルテッツァ以外で2023年に25年ルールが解禁された車種一覧 アルテッツァの他にも、2023年に25年ルールが解禁されたモデルがいくつかあります。以下は、その一例です。 ・トヨタ ランドクルーザー(100系):2023年1月・三菱 ランサーエボリューションV:2023年1月・日産 スカイライン(R34):2023年5月・トヨタ プログレ:2023年5月・スバル レガシィ(BE型):2023年12月 このように、今となって名車といわれたり、人気が再発したりしているモデルが続々と製造から25年を迎え、アメリカに輸出されるようになっています。 まとめ 日本でも人気が高い小型FRスポーツセダン・アルテッツァは、製造から25年が過ぎ、アメリカでの輸入が可能となりました。高く売却したい方は、今後の値動きを注視したほうがよいでしょう。 もし、アルテッツァの売却を検討している方は、過去の相場と2023年10月以降の相場を比較し、売却時期を見極めることが大切です。

初代マツダ サバンナはあのGT-Rよりも速かった!? RX-3とも呼ばれる最速マシンの歴史を振り返る
旧車の魅力と知識 2024.06.20

初代マツダ サバンナはあのGT-Rよりも速かった!? RX-3とも呼ばれる最速マシンの歴史を振り返る

初代マツダ サバンナは同系統車種としてはわずか1代で終了したものの、登場時に大きなインパクトで世間をわかせ、後世にも多大な影響を与えたモデルです。デビューイヤーに日産 スカイライン GT-Rの牙城を崩して高い運動性能を証明し、名車サバンナ RX-7への進化という道をたどりました。 この記事では、今もなお語り継がれる、初代サバンナの誕生の歴史と活躍を振り返ります。また、「サバンナ」という名称の由来やなぜ「RX-3」と呼ばれるかについても詳しく紹介します。 ロータリゼーションを進めるマツダにとって重要だったサバンナ 世界で初めてロータリーエンジンを搭載したコスモスポーツで、マツダはロータリーエンジンの可能性を世界に示しました。ファミリア、ルーチェ、カペラと既存モデルに次いでロータリーエンジンを搭載し、「ロータリゼーション」の名の下で普及を図ります。 そして、初搭載のコスモスポーツ以来のロータリーエンジン専用車として、サバンナをラインナップに加えました。現在でも根強い人気を誇るRX-7にもつながった、初代サバンナの誕生について振り返ってみましょう。 5車種目のロータリーエンジン搭載車 初代サバンナは、5車種目のロータリーエンジン車として1971年に誕生。発売当初は、コスモスポーツと同型の10A型エンジンが搭載されていました。 最高出力は105psとコスモスポーツの110psにはやや劣っていたものの、900kgを切る軽量な車体を走らせるには十分な出力だったといえます。ボディ自体はレシプロエンジンを搭載するグランドファミリアと共通でしたが、サバンナはロータリーエンジン専用車という位置づけで専用のフロントマスクが与えられました。 なお、「RX-3」といい名称で呼ばれることもありますが、国内での正しい車名は「サバンナ」です。RXという名称が定着しているのは、輸出仕様が「マツダ RX-3」、レース仕様が「サバンナ RX-3」という名称だったことに起因します。 実はクーペモデル以外も展開されていた初代サバンナ ファミリアとボディが共通だったこともあり、サバンナは当初クーペタイプに加えて4ドアセダンもラインナップされていました。さらに1972年には、サバンナ・スポーツワゴンという名称でロータリーエンジン搭載のステーションワゴンまで追加されます。 サバンナに幅広いボディタイプが用意されたのは、当時のマツダは「ロータリゼーション」と称してロータリーエンジンの普及を推進していたためです。より広いユーザー層に、ロータリーエンジン車に乗ってもらいたいという戦略だったのでしょう。 RX-7に受け継がれたサバンナの名称 初代サバンナの直接の後継車は、名車RX-7です。1978年に登場した初代RX-7(SA22C型)はサバンナ RX-7と名付けられました。 ただし、セダンやステーションワゴンは廃止され、クーペのみ展開されています。プラットフォームも専用開発のものに刷新し、スポーツカーという性格を明確に打ち出しました。 なお、「サバンナ」という名称は、猛獣の野生美やパワーをイメージしただけではありません。実は世界初の蒸気船と原子力船が「SAVANNA」という名前だったことから、「世界初」という意味も込められていたようです。 初代サバンナの評価が高まったのはレースでの活躍とコスパの高さ 初代サバンナは実力を証明すべく、登場と同時にレース活動を始めました。そして、当時国内では無敵だった、日産 スカイラインGT-Rを打ち破ります。ロータリーエンジンの実力をレースで見せつけたことで、サバンナの評価は一気に上昇しました。 驚くべきコストパフォーマンスも含めて、サバンナの魅力を紹介します。 無敗神話を誇るGT-Rとの戦いのなかで打ち立てた国内100勝の偉業 初代サバンナが誕生した1971年は、スカイライン GT-Rが国内レースで無敵を誇っていました。サバンナは同年12月の富士ツーリストトロフィ500マイルで、50連勝に迫っていたスカイライン GT-Rの記録をついに止めます。スカイライン GT-Rの連勝記録カウントについては諸説ありますが、少なくともサバンナが同車を抑えてデビューイヤーで優勝を飾ったことは間違いありません。 さらに、翌年の1972年には、エンジンを10A型から12A型に変更します。1972年5月の日本グランプリでは、GT-Rを抑えて表彰台を独占。当時無敵だったスカイライン GT-Rに世代交代の引導を渡したのは、サバンナ RX-3(サバンナのレース車輌名)だと大きな話題を呼びました。無類の強さを発揮したサバンナ RX-3は、1976年に単一車種で国内レース通算100勝という偉業を成し遂げます。 GT-Rの半額程度なのに国産トップクラスの動力性能 圧倒的なコストパフォーマンスも、サバンナの大きな魅力の1つでしょう。レースでの活躍を受けて、1972年に最上位モデルとして12A型エンジンを搭載したサバンナGTが投入されました。しかし、ライバルだった日産 PGC10型スカイライン GT-Rの価格が154万円だったのに対して、サバンナGTはわずか79万5,000円。 最高出力120ps、最高速度190km/h、0-400m加速わずか15.6秒という高性能を誇るクルマに、GT-Rの半額程度で乗れるというのはユーザーにとって大きな魅力だったに違いありません。 RX-7とともに今も色褪せない人気を誇る初代サバンナ 軽量コンパクトに設計できるロータリーエンジンの特徴を最大限に発揮して、速さと信頼性を証明したのが初代サバンナです。サバンナの成功がなければ、世界的に人気を集めるRX-7は生まれなかったかもしれません。 優れた動力性能だけでなく歴史的観点も含めて、サバンナは旧車として高い評価を受け続けている車種の1つです。実際、人気のクーペではなく、4ドアセダンのGRに300万円もの買取価格がついた実績もあります。 ただし、モデル最終年の1978年から数えても、すでに四半世紀近く経過しています。市場の流通量も限られているため、旧車専門の買取業者でなければその価値を正しく査定してもらえないでしょう。サバンナを売却する際には、知識と経験が豊富な旧車専門業者に相談することをおすすめします。

フェラーリ 328GTB/GTSが今も評価されるポイントとは? 歴代最高の美しさの秘密に迫る
旧車の魅力と知識 2024.06.20

フェラーリ 328GTB/GTSが今も評価されるポイントとは? 歴代最高の美しさの秘密に迫る

歴代フェラーリのなかで、最も美しいといわれる328GTB/GTS。一方で、フェラーリのV8エンジンモデルとしては実質2代目ながら、性能面でも圧倒的な進化を遂げたモデルでした。 わずか4年という短いモデルライフながら、今も多くのフェラーリファンが憧れる328GTB/GTSの誕生と魅力について詳しく紹介します。 名車ばかりのMRレイアウトのV8エンジン 「MRレイアウトへのV8エンジン搭載」は、今でこそフェラーリの代名詞とも呼べる王道モデルです。F355やF430、F8トリブートなど数々の名車が生まれています。しかし、フェラーリが初めてV8エンジンを搭載したのは1973年。1940年代創業ということを考えると、意外にもV8エンジンの歴史は決して深くありません。 2シーターモデルとして初めてV8エンジンを搭載してから、実に10年ぶりのフルモデルチェンジとなった328GTB/GTSについて詳しくみていきましょう。 V8エンジンモデルの正統な後継モデル 1985年に登場した328GTB/GTSは、2シーターとしては初のV8エンジンモデルだった308GTB/GTSの後継モデルです。308GTB/GTSは、1973年に先行デビューしていた2+2クーペのディーノ 308GT4をベースに開発されました。なお、モデル名の「B」はベルリネッタ(イタリア語で「クーペ」)を意味し、「S」はスパイダー(タルガトップ)のことです。 308GTB/GTSの大成功を受けて10年ぶりのモデルチェンジで登場した328GTB/GTSは、まさに正統進化と呼ぶにふさわしいモデルでした。デザイン、性能面ともに先代の良さを踏襲しつつも、大幅にブラッシュアップされています。 排気量の拡大によって大幅なスペックアップを果たす 328GTB/GTSが最も顕著に進化したのは、エンジン出力です。先代の308GTBは、排ガス規制対応によってモデル末期に最高出力を抑えざるをえませんでした。しかし、328GTBでは排気量を約200ccアップし、240psから270psまで実に30psもの最高出力の引き上げを実現。最高出力の大幅な向上に伴って、255km/hだった最高速度も263km/hにまで高められました。 328GTB/GTSが排ガス規制をクリアしつつ大幅なスペックアップを果たしたことが、その後のV8エンジンモデルの成長につながったといえるでしょう。なお、モデル名の数字は排気量と気筒数を表し、先代の308は3.0L(2,926cc)で8気筒、328は3.2L(3,185cc)で8気筒という意味です。 2.0Lモデルはターボを搭載して高性能を維持 328GTB/GTSには、発売翌年の1986年にそれぞれ2.0Lのターボモデルが追加されます。先代の308GTB/GTSも208GTB/GTSターボがラインナップに追加されましたが、最高出力は220ps止まりと3Lモデルに比べると物足りなさは否めませんでした。 しかし、328GTB/GTSで追加されたGTB/GTSターボは、最高出力こそ254psに抑えられているものの、最大トルクは328GTB/GTSを上回る33.5kgf・mを発揮。エンジン特性の異なるモデルとして、ユーザーに選択肢を与えました。 なお、排気量と気筒数を表す数字はなく、単にGTB/GTSターボと名付けられています。 現在も高い評価を受ける最も美しいフェラーリ 高められた性能面もさることながら、328GTB/GTSが最も評価を集めるポイントはボディラインです。フェラーリ史上最も美しいとも評されるスタイリングは、現在も多くのファンから絶大な支持を受けています。 40年近く前に登場したとは思えないほど美しい、328GTB/GTSの魅力をみていきましょう。 最高のバランスに仕上げられたボディライン 328GTB/GTSのデザインは、ピニンファリーナのレオナルド・フィオラバンティ氏によるものです。先代308GTB/GTSも手掛けた同氏は、同じイメージを踏襲しつつもアプローチを大幅に変更。直線基調で鋭角なデザインだったウェッジシェイプから、曲線を見事に取り入れた丸みのあるフォルムへ転換しています。 また、手が加えられたのは、全体のデザインだけではありません。大型化したフロントグリルや、ボディと同色でサイズアップされたバンパーなど、細部にわたって見直されています。結果的に「最も美しい」と称賛される、最高のデザインに仕上げられました。 全面改良されてクオリティが高められたインテリア 328GTB/GTSのデザインで変更が加えられたのは、外観だけではありません。インテリアのデザインを変更するとともに、質感もより高められていました。 308GTB/GTSからの変更箇所は、ドアパネルやドアハンドル、スイッチ、シートのステッチにまで及びます。また、メタリック塗装や革張りのダッシュボードとタルガトップ革張りヘッドライニングまでオプションで用意され、より車格にふさわしい内装に生まれ変わりました。 当時の新車価格に迫る買取価格 デザイン面、性能面ともに最高と呼べる進化を果たした328GTB/GTSの新車価格は、当時1,560万円でした。1985年の登場から40年近く経過した現在も、人気と希少性の高さから新車に迫る価値を維持しています。物価水準が異なるため単純比較はできませんが、1,000万円もの買取価格がつけられることも珍しくありません。 328GTB/GTSの最大の魅力は、性能面ではなくデザインの美しさです。後継車がいかに性能面で優れていても、328GTB/GTSの価値は今後も維持し続けられるでしょう。328GTB/GTSを売却する際は、性能や状態だけでなく「旧車としてどの点に価値があるのか」を把握している専門業者への相談をおすすめします。

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