旧車と名車が甦るメディア

旧車の魅力と知識

「愛車遍歴の1台が左ハンドル+MTっていいかも」という話
旧車の魅力と知識 2024.08.29

「愛車遍歴の1台が左ハンドル+MTっていいかも」という話

筆者だけの思い込みかもしれないが、ハンドルの位置が右から左になるだけでずいぶんと景色が変わるものだと驚くことがある。 さらにMTともなれば、右ハンドルのときは左手で操作していたものが、左ハンドルになると右手に変わる。たったそれだけのことでも、運転する行為そのものが新鮮に思えてくるから不思議だ。 右ハンドル+MT車の選択肢が減りつつあるなか(それでもシビックRSのようにMTのみのモデルがいまだに発売されたりする)、左ハンドル+MT車ともなればもはや絶滅危惧種だ。 それなら、乗れるうちに乗っておいてもいいかも…。今回はそんな話だ。 ■初めて運転した左ハンドル+MT車の思い出 人生初の左ハンドル+MT車はというと、当時、最新モデルとして販売されていた993型のポルシェ911だ。当時ハタチ。なんでそんなクルマに乗れるんだ!と突っ込まれそうなので先に白状しておくと、当時の正規ディーラーに、友人と連れ立って「運転させてください」と乗り込んだんである。いま考えると、若葉マークがようやく外れたばかりの若者によく試乗させてくれたと思う。 「準備するので中で待っててください」と、ショールームに案内され、色っぽい美人のお姉さんが出してくれたディーラー物(?)のコーヒーを味わっていると、メカニック氏が「準備できました。どうぞ!」と、ポルシェ911をショールームの前に横付けしてくれていた。 自分から乗りたいといってショールームまで来てみたものの、クラッチミートが難しいとさんざん聞かされてきた911、果たして自分に運転できるのか!? ここまで来たら後には引けない。 覚悟を決めて運転席に乗り込み、シートポジションを調整する。左手でキーを捻り、背後で空冷エンジンがウォン!!と目覚める。クラッチペダルを踏み、おそるおそる右手でギアを1速に入れた。なんじゃこのガッシリしたシフトノブは!サイドブレーキを下ろし、いろいろクラッチミート。911はアイドリングのままクラッチミートするんだっけ…。するするっと…正しくはおそるおそる左足を床から離す。すると…動いた!エンストせずに発進できた! 2,30分くらいだったか、夢中で911を走らせた。実はこのとき、実はいろいろあって、結果としてホロ苦い思い出となってしまったのだけど…。 ■30万円のゴルフ2 GTIを買い逃した話 都内でウィンドウフィルムを施工するアルバイトをしていたおよそ30年前、勤め先の専務から「ゴルフ2 GTIのMTの売り物があるんだけど、買わない?3ドアの左ハンドル。30万円でどう?」と話を持ち掛けられた。 いまなら飛びつきたいくらいの話だけど、当時はまだ「ゴルフはダサい(すいません)」というイメージしかなかった。どうもハッチバックのクルマが好きになれなかったし、この時点でゴルフを運転したことがなかったことも関係していたように思う。このときハタチ。まだまだ頭でっかちだった時代だ。 アルバイト先であるフィルムの施工場に入庫してくるのは、メルセデス・ベンツやアウディ、当時流行りのボルボのエステート、たまにポルシェやジャガーといった高級車ばかり(在籍中、なぜかゴルフのフィルム施工は機会がなかった)。そんなわけで、仕事とはいえ高級車に触れる日々。だからこそ、余計にゴルフがチープに思えたのかもしれない。…というわけで、30万円のゴルフ2 GTIを手にすることはなかった。 それからおよそ4年後、就職した会社の社長が発売されたばかりのゴルフ4 GTI(MT)の新車を手に入れ、打ち合わせに同行した際には運転させもらった。このとき、初めて実際にゴルフを運転したことでようやくその魅力に気づいた。その後、ゴルフ4ワゴンを手に入れて以来、現在のゴルフ トゥーランまで都合6台のゴルフに乗ることになろうとは。 ■身近なところに左ハンドル+MT車があった! これまで、仕事を通じてさまざまな左ハンドル+MT車を運転する機会に恵まれた。ちなみに、現在、趣味車として所有しているクルマも左ハンドル+MT車だ。ふと思うのは、若いときのホロ苦い経験を埋め合わせたかったのかもしれない。 いまや、プライベートでもたびたびお邪魔している、東京都青梅市にある「Garage, Café and BAR monocoque/ガレージ・カフェ&バー モノコック」の駐車場に1台のハッチバックモデルが目に留まった。 店舗を訪れた人であれば「あぁ。あのクルマね」となるかもしれない。 2011年式 ルノー トゥインゴ ゴルディーニ ルノー・スポール。まさに「左ハンドル+MT車」そのものだ。 同店のマスターであるRYOさんに伺ったところ、走行距離は約10万キロ、価格はASKとのことだが、100万円前後(車検2年付き)を考えているらしい。 内装はというと、エアバッグ付きの純正ステアリングの代わりにOMP製のディープコーンステアリングが、運転席にはスパルコ製のフルバケットシートが装着される他、リアシートやカーペット類が取り外されており、実にスパルタンだ。また、タコメーターの隣にはPIVOT製のdigital monitorが装着され、水温・エンジンの回転数・電圧を表示することができる。 アラフィフ世代以上のクルマ好きにとっては、どこかで見覚えのある仕立てではないだろうか。かつて、スターレットやマーチ、シビック、CR-Xなど、国産ホットハッチで愛車をこんな感じに仕上げて峠道を攻めたり、朝から晩まで(翌日の明け方まで?)乗り回していた人も少なくないはずだ。 折からの旧車人気の影響を受けて、いずれのクルマは信じられないような価格帯になってしまった。オリジナルが是とされ、おいそれとカリカリにチューニングができない雰囲気ができつつある。そもそも、いじりたくても部品そのものがレアになり、安価に仕上げること自体が夢物語になってしまった感がある。 その代わり…ひと昔の輸入車が手頃な価格で手に入るようになってきた。その代わり、かつて高嶺の花だった「ガイシャ」が手頃な価格帯となり、一時期は「タダ同然で引き取ってきた」国産旧車がとんでもない相場で取り引きされる時代となった。 であれば、比較的手が届きやすい輸入車、しかも左ハンドル+MT車がその枠に含まれるのなら…これは楽しんだ者勝ちだと思う。特に、若い世代の方たちにとっては「左ハンドル+MT車+内燃機関のクルマを安価で楽しめる」またとない機会かもしれない。 ●2011年式 ルノー トゥインゴ ゴルディーニ ルノー・スポール ・価格:ASK(100万円前後を予定)・走行距離:約10万キロ・左ハンドル/5速MT・車検2年付き・BS Speedline ホイール・Pro Racing サブコン・BC Racing 車高調・PIVOT digital monitor・ブレーキ冷却ダクト・ボディ補強・アーシング・DIXCEL 特注スリットローター/Zタイプ ブレーキパッド・実測160馬力 ●問い合わせ先:クルマ&バイク好きのオアシス「Garage, Café and BAR monocoque/ガレージ・カフェ&バー モノコック」 ・Facebook:https://www.facebook.com/monocoquecafebar・Instagram:https://www.instagram.com/monocoque.cafebar/・営業時間:11:00〜23:00・定休日:不定休(facebook、Instagramに情報あり)・住所:東京都青梅市畑中1-126-1・TEL:0428-84-0644 ■まとめ:愛車遍歴の1台が左ハンドル+MTっていいかも 新車で買える左ハンドル+MTというと、基本的には輸入車、または逆輸入車だ。正規ディーラーで販売されているクルマで見ていくと、アバルトF595(448万円)あたりが現実的なところだが、それでもコミコミで500万円コースだ。正直いって決して安いクルマとはいえない。 しかし、中古車であれば、それこそピンからキリまである。カーセンサーで調べてみたら、もっとも高価な左ハンドル+MT車は1996年式のフェラーリF512M(RKスペシャル)の1億5千512万円(!)。そういえばこのフェラーリ、某ミュージシャンの元愛車だった個体のはず。反対に、もっとも安いクルマは、2004年式フィアットパンダの33万2千円(いずれも支払総額)だった。 欧州車を中心に、コミコミ100万円以下で買える左ハンドル+MT車もそれなりに選べる。安く買える分、低年式や過走行の個体も含まれている。そこはある程度割り切って「壊れたら、その都度直していく」くらいの心持ちの方がいいかもしれない。 2024年の時点で、新車で購入できる左ハンドル+MT車が限られている以上、10年後にはいまよりも確実に選択肢が限られていることは間違いない。交差点の右折が大変(特に対向車の右折待ちがいる場合)、駐車場などの料金所が左ハンドルに対応していない等、不便に感じることも少なくない。 しかし、左ハンドル+MT車には、それを補って余りある魅力があると個人的には感じている。右ハンドル+MT車も充分に楽しいけれど、ちょっと変化が欲しいと感じたら、左ハンドル+MT車を選択肢に入れてみてほしい。初めてMT車を運転したときのような、新鮮な感覚、そしてワクワクする気持ちが蘇ってくることは間違いない。 そして、行きつけのカフェに立ち寄って居合わせた人たちとクルマ談義を楽しむ…。きっと充実した時間を過ごせるはずだ。 [画像・Porsche、Volkswagen/撮影&ライター・松村透]

ホンダ NSXはアイルトン・セナがいないと完成しなかった?! 全日本GT選手権で活躍した和製スーパーカーのすべて
旧車の魅力と知識 2024.08.29

ホンダ NSXはアイルトン・セナがいないと完成しなかった?! 全日本GT選手権で活躍した和製スーパーカーのすべて

元祖和製スーパーカーともいわれる、ホンダ NSX。自然吸気ながらハイパワーを発揮するVTECエンジンをミッドシップに搭載し、独特のスタイリングの軽量高剛性ボディで圧倒的なパフォーマンスを誇りました。 世界のスポーツカーメーカーにまで影響を与えたNSXについて、全日本GT選手権での活躍を中心に振り返ってみましょう。 世界初のオールアルミ製軽量高剛性ボディの国産スーパーカー NSXは、量産車として世界初発のオールアルミ製ボディを採用したスーパーカーです。ハイパワーエンジンをあえて不慣れなミッドシップに搭載し、「新しい時代のスポーツカー」を目指して開発されました。 あのF1ドライバーのアドバイスが完成のきっかけになったともいわれる、NSXの誕生背景を振り返ってみましょう。 アイルトン・セナの一言で完成を迎えた 国産スーパーカーの代表ともいわれるNSXは、アイルトン・セナの一言によって最終的な方向性が決まったといわれています。NSX登場直前の1989年に、アイルトン・セナがプロトタイプのステアリングを握りました。テスト走行の感想として、ボディ剛性を高めたほうがよいというアドバイスをホンダ開発陣に伝えたそうです。この発言をきっかけに、ホンダはドイツのニュルブルクリンクでの徹底的な走り込みを決断しました。 今でこそ市販車開発のテストコースとして有名なニュルブルクリンクですが、当時は現地に長期滞在してテストを実施する日本のメーカーはいませんでした。数ヶ月に及ぶテスト走行で、セナが指摘したボディ剛性を50%も高めることに成功します。ボディ剛性の向上により、スポーツカーとしての運動性能を高めつつ、高級車としての乗り心地も両立させました。結果として、ホンダが目指した「新しい時代のスポーツカー」というコンセプトを体現したモデルになりました。 VTECエンジンをミッドシップ搭載 ミッドシップに搭載されたV6エンジンには、ホンダを象徴する可変バルブ機構のVTECを採用。自然吸気エンジンながら、最高出力は自主規制いっぱいの280psを発揮します。 また、FFの開発を得意としていたホンダですが、NSXではミッドシップレイアウトを採用しています。誰もがドライビングを楽しめる、新時代のスポーツカーを提示したかったためです。 全日本GT選手権で発揮した高い実力 スーパーGTの前身である全日本GT選手権(以下JGTC)で、NSXは13年間の参戦期間で37勝という成績を残しています。参戦自体が後発となってしまったことや、トヨタ スープラ、日産 GT-Rといった競合がひしめいていた時代だったことを考えると輝かしい実績です。 JGTCでのNSXの活躍を、順を追ってみていきましょう。 本格参戦2年目で初優勝を達成 NSXがJGTCに本格的に参戦したのは、選手権発足3年後の1997年です。多くのライバルがハイパワーターボ車だったなかで自然吸気エンジンだったため、空力を中心とした運動性能でカバーする方針を打ち出して開発されました。 参戦初年度は多くのトラブルに見舞われつつも、第5戦のMINE、第6戦のSUGOで連続して2位表彰台を獲得。優勝こそ獲得できませんでしたが、参戦初年度から実力の片鱗を感じさせました。 続く1998年は、開幕戦鈴鹿の予選で上位3位を独占すると、毎戦ポールポジションを獲得します。そして、第4戦の富士で念願の初優勝を成し遂げた後、最終戦までの4戦とも勝ち続け、見事5連勝を飾ります。前半に勝利を重ねられなかったことでタイトルこそ逃したものの、全戦でポールポジションを獲得するという圧倒的な速さをみせつけました。 ランボルギーニと同じ方式の縦置きMR JGTC参戦時は、市販車と同様の横置きのMRレイアウトでした。しかし、2003年に自由なエンジンレイアウトが認められたことで、利点の多い縦置きへの変更に踏み切ります。 しかも、ただの縦置きではなく、ランボルギーニと同じ前後を逆に配置してトランスミッションが前方にくるレイアウトを採用。ウェイトハンデや実質的な空力規制といったミッドシップに不利な規制改定がされるなか、少しでも前後重量バランスを改善することが目的でした。 苦心の末に獲得した最後のタイトル NSXは参戦全105戦中、5割弱に及ぶ50回ものポールポジションを獲得しました。また、優勝を37回も数えていることからも、NSXの実力の高さがうかがえます。しかし、意外にもタイトルの獲得は、2000年と2007年の2度のみに終わりました。 特に2000年のタイトル初獲得以降は、度重なる仕様変更に苦心していたことがわかります。先のエンジンレイアウトの変更、自然吸気へのこだわりを捨ててターボエンジンを投入するといった多くの対策を講じたものの、思うような結果にはつながりませんでした。 しかし、最終的には自然吸気エンジンに回帰した結果、2007年シーズン開幕戦ではNSX勢が予選で上位4位を独占。シーズンを通じて速さを発揮し、2度目となるタイトルを獲得しました。 スポーツカーの時代を変えたNSX NSXの登場は、フェラーリやポルシェといった名だたるスポーツカーメーカーのアプローチを変えたともいわれています。オールアルミ製ボディの採用、アイルトン・セナの発言をきっかけに突き詰められた高剛性化によって、ミッドシップ本来の運動性能の高さを最大限に発揮するモデルとして誕生したNSX。 スポーツカーらしい人馬一体の操作感に加え、乗る人を選ばない運転のしやすさと乗り心地を両立しました。従来のスポーツカーは乗り手の技術を要求する存在でしたが、誰でも運転できるという新ジャンルを切り開いたのがNSXです。高性能で速いのに乗りやすいという現代のスポーツカーは、NSXの存在がなければ実現していなかったのかも知れません。

三菱 パジェロ エボリューションは最強のクロカンマシンだった! MIVECエンジン搭載のモンスターSUV
旧車の魅力と知識 2024.08.26

三菱 パジェロ エボリューションは最強のクロカンマシンだった! MIVECエンジン搭載のモンスターSUV

特徴的な大型リアウィングと左右に大きく張り出したフェンダーが特徴的な三菱 パジェロ エボリューション。外観だけでなく、チューニングされたV6エンジンによる高いパフォーマンスも高く評価されているモデルです。 今回は、三菱の開発陣がダカール・ラリーで勝つためにこだわって作り込んだ、パジェロ エボリューションの誕生背景と魅力を紹介します。 1レースに勝つためだけに誕生したパジェロ エボリューション 三菱の「エボリューション」といえば、WRCを戦ったランサー エボリューション(通称:ランエボ)があります。同じくレースを制するために開発されたモデルが、パジェロ エボリューションです。しかし、ランエボがシリーズ戦での勝利を目的としていたのに対して、パジェロ エボリューションはダカールラリーただ1戦に勝つために開発されました。 たった1つのレースにかけた三菱の情熱がつまった、パジェロ エボリューションの誕生背景を振り返ってみましょう。 新レギュレーション対応のために開発 パジェロ エボリューションが登場した1997年から主催者が規定を変更し、メーカーは市販車ベースで改造範囲の狭いT2車輌でのみ参戦可能となりました。また、ガソリンエンジンの過給機使用が全面的に禁止されます。三菱は規定内の改造を施したパジェロを1997年のレースに投入すると同時に、翌年以降のホモロゲーション取得のためにパジェロ エボリューションを開発しました。 改造範囲が限られるため、パジェロは市販車の段階で強くレースを意識した仕様になっていました。例えば、当時のクロスカントリー車のリアサスペンションとして一般的だったリジット式ではなく、4輪独立懸架のダブルウィッシュボーン式を採用しています。また、エンジンには可変バルブタイミング機構を備え、全域でのトルクフルな加速を実現しました。 投入初年度から圧倒的な速さをみせた パジェロ エボリューションは、投入初年度の1998年に期待通りの成績を残します。優勝を飾ったJ-P. フォントネを筆頭に、3位まで表彰台を独占。前年にパジェロで日本人で初めてダカール・ラリーを制した篠塚氏も2位を獲得しています。 翌1999年は優勝こそ逃したものの、2位から4位までの上位を独占して存在感を示しました。また、優勝したのはプロトタイプのシュレッサーバギーだったことを考えると、パジェロ エボリューションが市販車ベースとしては無類の速さを誇っていたことがわかります。 市販モデルも抜群の個性と存在感を発揮 レースで輝かしい実績を残したパジェロ エボリューションですが、単に市販車としてみても個性的で魅力あふれるSUVです。 続いて、パジェロ エボリューションの魅力を紹介します。 NAながら280psを発揮したMIVECエンジン パジェロ エボリューションの圧倒的なパフォーマンスを支えたのは、三菱の可変バルブ技術MIVECを搭載した6G74型3.5LのV型6気筒エンジンです。過給機禁止のレギュレーションへの対応で、自然吸気エンジンながら最高出力は自主規制いっぱいの280ps、最大トルクは35.5kgmを発揮します。 また、過酷なラリーでの信頼性を高めるため、チタン製バルブリテーナー、中空吸気バルブ、ナトリウム封入排気バルブといった細かい点まで突き詰められました。さらに、エンジンの高出力化に対応するため、トランスミッションも剛性強化とセッティング変更が施されています。 空力性能を追求した迫力のエアロボディ レースでの空力性能を強く意識したエアロボディもパジェロ エボリューションの特徴です。WRCに参戦していたランサー エボリューションのように、個性的なエアロパーツを備えています。 大幅に広げられた前後のフェンダー、エアロバンパー、大型の個性的なリアスポイラーが「エボリューション」を主張するポイントです。さらに、フロント部の開口部と大型のボンネットエアインテークは、エンジンの冷却効率を追求した結果の機能美だといえます。 フラッグシップモデルにふさわしいインテリア ダカール・ラリーで勝つために開発されたものの、パジェロシリーズのフラッグシップモデルという肩書きにふさわしい内装もパジェロ エボリューションの特徴です。本革巻きのステアリングやメーターベゼルやエアコンの吹出口などに配されたカーボン調のパネルといった装備は、所有するドライバーの満足度を高めます。 また、フルオートエアコンやキーレスエントリーに加え、フロントにはホールド性の高いレカロ社製のシートが装備されるなど、日常使いからロングドライブまで快適にこなせる1台に仕上がっています。 初代限りの生産だった希少性の高いモデル パジェロ エボリューションは、1997年に発売された初代のみで生産を終了しました。もともとホモロゲーション取得のために販売されたということもあり、生産台数もわずか2,693台といわれています。パジェロシリーズのなかでも、特に希少性の高いモデルです。 新車価格は374万円(5MT車)という、優れた性能と現在のSUVの価格水準から考えると大変コストパフォーマンスに優れたモデルでした。しかし、その希少性の高さから、現在の中古車市場ではプレミア化しつつあり、高値で取引されるケースが増えているようです。ダカール・ラリーで残した輝かしい実績も影響して、今後価値がさらに高まっていくかもしれません。

プジョー 205 ターボ16は最後のモンスターマシン!? ジャン・トッドが作り上げた最強のWRCモデル
旧車の魅力と知識 2024.08.22

プジョー 205 ターボ16は最後のモンスターマシン!? ジャン・トッドが作り上げた最強のWRCモデル

一般的な2ボックスのホットハッチというフォルムながら、ミッドシップ4WDという個性的なドライブトレインをもつプジョー 205 ターボ16。WRCで勝つために開発され、圧倒的な速さで期待に応えたプジョーの歴史のなかで燦然と輝く名車です。 そこで今回は、プジョー 205 ターボ16が誕生した背景とWRCでの活躍について詳しく紹介します。 プジョーの歴史を作り上げた205 ターボ16 205 ターボ16は2年連続でタイトル獲得を成し遂げ、プジョーの実力の高さを見せつけたモデルです。WRCにおいて、プジョーは1970年代の限定的な活躍に留まっていましたが、205 ターボ16が歴史を大きく変えました。 あのジャン・トッドをトップに迎えたプジョー・タルボ・スポールが開発した205 ターボ16の概要を振り返ってみましょう。 空前の大ヒットモデル・205の人気を支えたターボ16 205 ターボ16は、同時期に登場した205をベースに開発されました。「新型ラリーカーは、開発中の205に似ていなければいけない」と、当時のプジョー社長、ボワローから要求されていたためです。 205 ターボ16の開発には、プジョーのモータースポーツ部門として設立されたプジョー・タルボ・スポールがあたりました。WRCで勝つべく中身はまったくの別物でしたが、社長の要求通り205の外観イメージを踏襲したマシンに仕上げられています。205が熱い支持を得た理由の1つが、圧倒的なパフォーマンスを誇る205 ターボ16の存在だと言ってもよいかもしれません。 プジョー・タルボ・スポールを設立したジャン・トッド 205 ターボ16の誕生に欠かせなかった人物が、ジャン・トッドです。のちにF1でのフェラーリ躍進の立役者となり、FIAの9代目会長まで務めた彼が、プジョー・タルボ・スポールを設立しました。 205 ターボ16の開発にあたって、ジャン・トッドは大胆なアプローチを行います。左右のドアと前後ウィンドウ、ルーフの前部を205と共有しつつ、パワーユニットをミッドシップに搭載する4WD仕様への変更を成し遂げました。 WRCで圧倒的な強さを証明 当時のWRCでは、アウディ クアトロが4WDで圧倒的な速さを誇っていました。しかし、205 ターボ16は、1984年の投入初年度から早速実力の高さを証明します。デビュー戦こそリタイヤに終わるものの、シーズン半ばから1000湖ラリー、サンレモラリー、RACラリーで3連勝を飾りました。 翌1985年シーズンでは、マニュファクチャラーとドライバータイトルをダブル獲得。さらに、続く1986年にも猛追するランチア デルタS4を制して、2年連続でダブルタイトルを手にしました。 WRCで勝つべく磨き上げられた205 ターボ16 205 ターボ16は、WRCで勝つために作られたモデルです。一方で、ベース車の見た目を踏襲するという限られた条件も課せられていました。 圧倒的なパワーと個性的な外装を備えた、205 ターボ16の魅力をみていきましょう。 圧倒的な戦闘力を発揮したパワートレイン 運転席後方に横置きで配置された直列4気筒DOHCエンジンは、一般発売された公道仕様でも最高出力200ps、最大トルク26.0kg・mを発揮。KKK製ターボチャージャー、ボッシュ製Kジェトロニック、空冷インタークーラーを備え、レース仕様では205T16エボリューション1で350ps、エボリューション2で450psを発生したともいわれています。 生み出された強大なパワーは、5MTのギアボックスからフルタイム4WDのトルク配分を司るファーガソン・システムに至ります。トルクを余すことなく路面に伝達するため、足回りは4輪ダブルウィッシュボーンサスペンションで固められました。 専用設計された個性的な外装 205の外観イメージを踏襲している一方で、205 ターボ16専用の外装パーツも数々装備されています。もっとも目を引くのが、前後に大きく張り出したブリスターフェンダーです。特にリアフェンダーには大型のエアインテークがデザインされ、ミッドシップレイアウトを象徴しています。 ボンネットに開けられた大型のエアアウトレットやリアスポイラーも、レーシーな雰囲気を高めるポイントです。左右のドアはベース車輌を踏襲した標準的なデザインだけに、モデファイされた部分がさらに際立ちます。 グループB終焉のきっかけにもなったモンスターマシン 205 ターボ16は見た目こそ市販車と同じですが、中身は全く別物のモンスターマシンです。当時のWRC グループBでは、プジョーに限らず、ランチアやアウディも同様のアプローチでマシン製作を行っていて、最高出力は500psを大きく上回っていたともいわれています。 市販車ベースに強大なパワーユニットを搭載することで、レースがエキサイティングになるのと同時に、ドライバーの危険性が高まります。実際、1985年のアルゼンチンでは、プジョーのエースドライバーがアクシデントで大怪我を負っています。さらに、1986年には、プジョーと死闘を繰り広げていたランチアの若きエースドライバーであったヘンリ・トイヴォネンが事故により他界しました。WRCは多くの痛ましい事故の発生を重く受け止め、グループBの廃止を決定します。 結果的に、205 ターボ16は、プジョーが持てる技術を最大限詰め込んで開発した最後のモンスターマシンになりました。グループB時代を締めくくる象徴として、205 ターボ16は今後も語り継がれていくことでしょう。

ルノー サンクターボはなにがすごいのか? WRCの歴史に功績を残したコンパクトミッドシップを振り返る
旧車の魅力と知識 2024.08.08

ルノー サンクターボはなにがすごいのか? WRCの歴史に功績を残したコンパクトミッドシップを振り返る

3ドアコンパクトカーでありながらミッドシップレイアウトを採用した、ルノーのサンクターボ。WRCのホモロゲーション取得のため大衆車のサンクをベースに1980年代に開発されました。 本記事では、個性的なレイアウトと外観、レースで勝てる確かな性能を備えたサンクターボについて詳しく解説します。 WRCで勝つために生まれたルノー 5ターボ ルノー 5(サンク)は、先進的なデザインと高い実用性によって欧州でベストセラーになった大衆車です。サンクをベースに開発されたサンクターボは、レースで勝つことを目的に生まれました。 大胆な設計変更を加えて開発された、サンクターボの誕生を振り返ってみましょう。 ベース車輌の後席を取り払ってエンジンを搭載 サンクターボは、ベース車輌のサンク発売から8年後の1980年に登場しました。サンクはもともとFFの大衆車でしたが、サンクターボでは後輪駆動、しかもMRに変更されています。3ドアハッチバックの後席を取り払ったスペースにエンジンを搭載するという、思い切った設計によって実現しました。WRCで勝つという、ルノーの強い意志を感じるレイアウトです。 エンジンには、5アルピーヌのエンジンをベースに開発した、水冷式直列4気筒 1397cc OHVユニットを採用。ギャレット製インタークーラー付ターボチャージャーを搭載し、最高出力160ps/6,000rpm、最大トルク22.5kgm/3,250rpmを発揮します。 しっかりと作り込まれた基本設計 サンクターボの特徴は、個性的なエンジンの搭載位置だけではありません。WRCでしっかりと戦えるよう、基本設計もしっかりと詰められていました。サスペンションにはダブルウィッシュボーン方式を採用し、タイヤは前後でサイズが異なり、フロント190/55VR340、リア220/55VR365を装着します。 また、ルーフやドア、テールゲートがアルミ製で、そのほかのパネルにも薄い鋼板が使われている点も、ルノーがレースでの勝利にこだわっていたことがうかがえるポイントです。もともとコンパクトなサンクに、さらなる軽量化が施されました。 ターボ車としてのWRC初勝利を飾る サンクターボは、WRC史上初めてターボ車が勝利を挙げたモデルです。WRCでの勝利を目指して開発され、タイトルこそ獲得できなかったものの、歴史に名を残す活躍をしました。 まず、グループ4時代の1981年開幕戦モンテカルロで、いきなりの初優勝。翌年の1982年ツール・ド・コルスでは、2勝目をあげて実力の高さを証明します。さらに、グループB時代に突入後も、1985年のツール・ド・コルス、1986年のポルトガルでそれぞれ勝利を挙げ、合計4勝を挙げました。 性能面以外も個性的だった WRCで実力を証明したサンクターボですが、ロードカーとしても魅力あふれるモデルです。迫力のある外観、有名デザイナーによる内装など、個性的で特別感のある1台に仕上げられました。 ここからは、性能面以外でのサンクターボの魅力をみていきましょう。 大衆車がベースとは思えない迫力ある外観 サンクターボで真っ先に目を奪われるのは、リアの大きく張り出したフェンダーです。フロント、リアともにブリスターフェンダーではありますが、リア形状が醸し出す迫力は唯一無二だといえるでしょう。また、フェンダー前部に設けられたエアインテークも、戦うマシンであることを主張しています。 一方で、フロント周りを中心に、サンクのイメージを踏襲している点もサンクターボのアイデンティティです。大衆コンパクトカーのスタイリングを維持しながら、戦闘力をあげる工夫が随所に凝らされています。 マリオ・ベリーニが担当した内装 ホモロゲーション取得のために開発されたサンクターボですが、市販車としての質感にも徹底的にこだわっています。内装デザインを担当したのは、イタリアの有名デザイナーマリオ・ベリーニです。 独特の真っ赤なシートやダッシュボードが大きな話題を呼びました。性能や外観に負けない内装のデザイン性の高さも、サンクターボの大きな魅力です。 こだわりのターボ1とコスパのターボ2 サンクターボには、ターボ1とターボ2の2種類があります。ターボ1は、最初に開発されたモデルということもあり、マリオ・ベリーニが手掛けた内装も含めて性能だけでなく質感も高められています。 一方のターボ2は、実用的な内装を組み合わせて生産性をあげることで、ターボ1よりも25%も安価な価格設定を実現したコスパの高いモデルです。 ターボ1が1,820台、ターボ2は3,167台が生産されました。価格が安かったため生産台数が伸びたターボ2ですが、中古車で入手するのであれば質感の高いターボ1がおすすめです。 輸入車ということもあって流通台数は少ない サンクターボは、ターボ1、2合わせても5,000台ほどしか販売されていないため、残存数はわずかです。しかも、正規輸入された台数は限られていたため、日本国内ではあまり流通していません。 希少性の高さから、新車時には安価に設定されたターボ2も、価値ある1台として評価されています。 【まとめ】サンクターボを売却するなら修理・修復の仕組みのある買取業者に サンクターボの歴史と魅力について紹介しました。 WRCの歴史に功績を残した名誉あるモデルでありながら、現存数は少なく、年々希少価値が高まっています。また、40年前のクルマであるために、ダメージが蓄積された個体が多いのが現状です。 希少性が高いクルマであるにもかかわらず、コンディションが理由で査定額が下がってしまうのは大変もったいないことです。サンクターボを売却をご検討されているのであれば、古いクルマを修理・修復する仕組みが整っている業者に依頼しましょう。自社でクルマのコンディションを蘇らせることができる会社であれば、故障している個体であっても査定額が下がりにくい傾向にあります。 レース史に名を刻んだ名車であるからこそ、慎重な売却先の選定をおすすめします。 なお、本メディアの運営元である「旧車王」では、10年以上経過したクルマに特化して買取を行っているのみならず、お客様からお譲りいただいたクルマを修理・修復して市場へ再流通させています。長年乗り続けて故障しているクルマであっても丁寧に査定いたしますので、売却先にお悩みの方はぜひご相談ください。

「不本意にも手放さざるを得ない愛車との別れ」について考えてみた
旧車の魅力と知識 2024.08.01

「不本意にも手放さざるを得ない愛車との別れ」について考えてみた

生きていると「運命としか思えない」できごとに遭遇することがある。単なる偶然かもしれないし、本当に運命だったのかもしれない。 日本語に訳すと「幸運は用意された心のみに宿る」と説いたのは、フランスの細菌学者であるルイ・パスツールだった。 起こるべくして起こる。これこそ運命だといえる。 しかし「起こるべくして起こる」ことが幸運なエピソードだとは限らない。自分の意思とは無関係に不本意な運命に出くわしてしまうことだって(少なからず)ある。 ■誰にでも「不本意な運命が起こるかもしれない」という事実 年間、100人単位でオーナーインタビューを行っていると、良い方と悪い方、それぞれの「起こるべくして起こった」エピソードに接することになる。 1度は金銭的な事情で手放し、必死に働いて見事にカムバックしたオーナー、コツコツ仕上げてきた愛車がもらい事故で廃車になってしまったオーナー、愛娘の中学受験の費用を捻出するために愛車を手放したオーナー。起業するためあえて退路を断つべく、相棒ともいえる愛車を手放したオーナー。そして高齢のため、クラシックカーの運転が厳しくなり、最新モデルに乗り替えるべく断腸の思いで手放したオーナー…。 このように、ざっと挙げただけでもこれだけある。まさに、人それぞれにエピソードがあることに気づかされる。 そして、改めて振り返ってみると、不本意な理由で愛車を手放した経験があるオーナーが思った以上に多かった。特に多かったのが結婚や出産を機に泣く泣く…というパターンだったように思う。なかにはこの段階でクルマ趣味を諦めたという方もいた。 そう考えてみると、20年、30年、あるいはそれ以上、1台のクルマととことん付き合っているオーナーの存在が奇跡かもしれないとすら思えてくる。 ■親友が所有していたマツダ RX-7の話 もう数十年前のことだが、学生時代の親友がマツダ RX-7(FC3S型)で気になる中古車があるから一緒に観に行って欲しいと頼まれた。最寄り駅から徒歩で20分くらい掛けてバイパス沿いにある小さな中古車販売店に2人で足を運んだ記憶がある。 ずっと欲しいと思っていたクルマ(FC3Sの限定モデル)が手頃な価格で売り出されていたこともあり、親友はその場で即決。確か納車のときも一緒に行ったと思う。平成1ケタ、1990年代前半といえば、スポーツ系モデルのチューニングが盛りあがっていた時期だ。親友もご多分に漏れず、手に入れたRX-7をチューニングしていったことはいうまでもない。 それから1年ほど経ったある日、深夜の湾岸線でエンジンブローを起こしたのを機に、その後はゼロヨンの世界へと傾倒していく。やがて、いまでは完全に絶滅した街道ゼロヨンにも参戦するようになった。その頃には当時としては珍しい13B型の2ローターエンジンにブリッジポート加工が施され、親友のRX-7は独得のアイドリング音を轟かせていた。いまでも「ドッドッドッ」という心臓の鼓動のように一定のリズムで刻むアイドリング音、そして走り去る際の残り香のような濃い生ガスの匂い(※臭いではない)を思い出すことがある。 まさに親友のこだわりと熱量と給料がこれでもかと注がれたRX-7、あるとき再びエンジンブロー。今度ばかりは直そうにも資金が捻出できない。親友としては不本意だったと思うが、結局、最後はそのRX-7も手放した。 それから数年後。たまたま2人でいるとき、偶然このRX-7と再会することになった。親友が青春と当時の給与をほぼすべてつぎ込んだRX-7は別のオーナーが所有し、まったく別の姿になっていた。それでも、そこかしこに当時装着していた部品が残されていたのでお互いすぐに分かった。 何とも複雑な心境ではあったが、せっかくだからということで親友と元愛車であるRX-7とのツーショット写真を撮った。このときのデータはいまでも手元に残されているが、撮影しておいてよかったと思う。結果として、このときがRX-7との最後の対面となってしまったからだ。その後、このRX-7がどうなったのかは分からない。 ■「いっそこの世から葬ってしまった方が引きずらなくて済む」という選択 壊れて修理に高額な費用が掛かることが分かり、「知らない誰かのところに嫁いでいじくり倒されるくらいなら、いっそこの世から葬ってしまった方が引きずらなくて済む」という涙の決断を下した方もいた。 一部の方には反発を食らうかもしれないが、事あるたびに「あのクルマいまどうしているのかな」と思い悩むくらいなら、いっそスクラップ、廃車にしてしまおう。この方が気持ちに区切りがつけられる。終わりを見届けたことで(クルマには申し訳ないけれど)諦めがつくということなのだろう。 なかにはスクラップ場まで同行し、愛車との最後の別れを惜しんだという方もいる。ちなみにこのオーナー、せめてもの思い出として、2度と使うことはない愛車のキーを手元に残し、大切に保管しているそうだ。 ■「あえて愛車に深入りをしない」という接し方もある 取材した方のなかには「失ったときのショックが計り知れないから、あえて愛車に深入りしない」と考えているケースもあった。それはそれでありかもしれないと思った記憶がある。 よくよく話を伺っていくと「若い頃、憧れのクルマを手に入れて楽しんでいたある日、ふと浮気心が芽生えてしまい、別のクルマに乗り換えてしまった」のだという。いわゆる魔が差したというやつだ。 この先の展開はクルマ好きの方であればおおかた予想がつくだろう。 新たに迎え入れたクルマにはすぐに飽きてしまい、買い戻そうにも元愛車は売約済みで別のオーナーが所有しているという。結局、二束三文で売り飛ばすことになり、「つなぎのつもりで」手に入れたアシ車に乗り替えてからずるずると10年以上が経過…。現在の愛車にはそれほど想い入れがない分、飽きることもなければ、わざわざ手を加えようとも思わないそうだ。 ただ…、ときどきふと思い出したようにネットで検索して元愛車がどうなっているか調べてしまうのだという。どこかの誰かが所有しているのか、廃車になってしまったのか、それとも海外へと流れたのか…。しかし、いまだに手掛かりはつかめずにいるそうだ。 この呪縛から逃れるためには元愛車よりも惚れ込めるクルマを見つけるしかないのだが、こればかりは「運命の出会い」次第なのでジタバタしたところでどうなるものでもない。そんな堂々巡りを繰り返しているうちに「あえて愛車には深入りしない」という悟りに近い境地に達してしまったのだという。 ■まとめ:「不本意にも手放さざるを得ない愛車との別れ」は若いうちに経験すべき? 多くの辛い経験がそうであるように、最終的には時間が解決、あるいは忘れさせてくれるような気がする。時が経つにつれて美しい思い出へと補正されることもあるだろうし、リベンジするべく、奮起する時間的な余裕もある。 しかし、ある程度年齢を重ねてからの「不本意にも手放さざるを得ない愛車との別れ」は予想外にダメージが大きい。所有していた愛車との時間が長ければ長いほどダメージの度合いも大きくなる。それならば、いっそこの世から葬ってしまった方が…と思ってしまいたくなる気持ちも理解できる。 老いも若きも、遅かれ早かれいずれ愛車との別れの日が必ず訪れる。来るべき日が訪れてしまったとき、できることなら運命とやらに翻弄されるのではなく、自分の意思とタイミングでその日を迎えたいものだと思う。 [撮影/松村透、画像/Mazda,Mercedes-Benz、ライター/松村透]      

日産 R32型GT-Rが速かった理由とは? レースで勝つという目的をストレートに体現したモデル
旧車の魅力と知識 2024.07.30

日産 R32型GT-Rが速かった理由とは? レースで勝つという目的をストレートに体現したモデル

「スパルタン」とも評される日産 R32型GT-R。無駄が削ぎ落とされたボディデザインや大型のリアウィングなど見た目の印象が強いクルマですが、世間での評価通り機能性を追求した末に生まれた高性能スポーツカーです。 レース仕様を意識して開発されたエンジンなど、勝つための工夫が随所に凝らされたR32型GT-Rの誕生背景と実力を振り返ってみましょう。 レースで勝つために作られたR32型GT-R 1985年に始まった日本国内のグループA規定のレース、JTC(Japan Touringcar Championship)で思うような結果が残せていなかった日産は、「サーキットレースで勝てなければスカイラインの存在価値はない」とGT-R復活への決意を固めます。 スカイライン 2000GT-R以来16年ぶりに登場した、R32型GT-Rの誕生背景を振り返ってみましょう。 16年ぶりに復活したGT-Rの称号 スカイラインは、1989年にR32型へのフルモデルチェンジを果たします。同時に、1973年以来16年ぶりにGT-Rのグレードが復活しました。このタイミングでのGT-Rの復活には、単なる最上位グレードの設定ではなく、「レースで勝つ」という明確な目的がありました。 「GT-R」とは、「GrandTouring」と「Race」を意味しているといわれています。しかし、直接的にレースを意識して開発されたGT-Rは、初代PGC/KPGC10型とR32型の2モデルのみです。 あらゆる造形がグループAを意識していた グループA規定は市販車からの改造範囲が狭く、性能向上のために基本構造を変更することができません。そこで、R32型GT-Rは、あらゆる部分がレースへの参戦を前提に設計されました。特に外装部分の造形は、スポーツカーとしての見た目ではなく機能性に重点が置かれています。 例えば、フロントの大きな開口部とバンパーの特徴的なエアインレットは、冷却性能を最大限に高めることが目的です。加えて、ワイドホイールを使用する目的で採用されたブリスターフェンダーの存在もR32型GT-Rの魅力を語るうえで欠かせません。大径ホイールの装着が実現したためにグリップ力が向上し、走行性能にさらなる磨きがかかりました。。 圧倒的な速さを実現した2つの要素 R32型GT-Rは、当初の開発目的どおりレースで無類の速さを見せつけます。高い戦闘力に直接的に影響したのは、エンジンと先進的な駆動システムです。 レースでの結果も交えて、R32型GT-Rの実力を再確認してみましょう。 速すぎたRB26DETT R32型GT-Rに搭載されたのは、新開発のRB26DETTエンジンです。市販車の最高出力は、自主規制いっぱいの280ps。さらにレース仕様では、600ps+αのパワーを発揮したといわれています。 R32型がいかにレースを意識して設計されていたのかがわかるポイントが、エンジンの燃焼室の形状です。実は、RB26DETTの燃焼室は、市販車に適した形状ではありません。レースで高過給圧仕様にして圧縮比を下げた際に、最適になるように設計されています。 さらに、このエンジンの実力の高さをうかがわせるエピソードが残っています。当初、レース仕様の過給圧は1.6kgf/cm2を想定していました。しかし、他車が相手にならないほどの圧倒的な速さになることが判明し、何らかのハンディを課せられることをおそれた日産は過給圧の引き下げを決断したそうです。最終的な過給圧は、1.4kgf/cm2まで下げられました。 直線でもコーナリングでもライバルを引き離すアテーサET-S 高出力エンジンのパワーを余すことなく地面に伝えるアテーサET-Sも、GT-Rの圧倒的な速さを支えました。GT-Rの駆動方式は一般的に4WDだと認識されていますが、正確には後輪駆動がベースのパートタイム4WDです。 アテーサET-Sは、後輪のトルクが過大になるシチュエーションで湿式クラッチを介して前輪にもトルクを配分します。湿式クラッチを電子制御することで、0:100〜50:50の広範囲でシチュエーションに応じた最適なトルク配分を実現しました。 4年間負けなしの29連勝という大記録を樹立 R32型GT-Rは、開発の目的通りレース参戦直後から無類の強さを発揮します。市販の翌年にJTCに投入されると、1990年から1993年の4シーズンにわたって負け知らずの29連勝という大記録を打ち立てました。 最終年の1993年には7〜8台のGT-Rが出場していましたが他車を寄せ付けない速さだったため、GT-R同士の熾烈な順位争いが常に繰り広げられました。同型車同士の争いだっただけに、クルマとしての速さはあってもなかなか表彰台を獲得できないチームもありました。 特に1992年のRd.3 SUGOでのレースは、GT-Rを擁するチーム間での争いがいかに過酷だったのかがわかります。師と仰ぐ高橋国光氏とSTPタイサンGT-Rでチームを組む土屋圭市氏は、念願の3位表彰台を獲得しました。高橋氏の他界後に「オレが国さんをグループAの表彰台に上げる!」という固い決意をもってレースに臨んだことを土屋氏は語っています。 販売台数からわかる圧倒的な人気ぶり レースでの速さだけではなく、R32型GT-Rは商業的にも成功したモデルです。最上位グレードという位置づけにも関わらず、販売台数は4万3,934台にものぼりました。後継のR33型が1万6,422台、R34型が1万1,345台に留まったことからも、いかに驚異的な販売台数だったのかがわかります。 GT-Rには数々のモデルがありますが、初代と同等かそれ以上に特別視されているのがR32型です。エンジンのスペックやニュルブルクリンクでのタイムなど絶対的な性能は後発モデルのほうが向上していますが、R32型GT-Rにこだわるユーザーは少なくありません。販売終了からでもすでに30年以上が経過し年々残存台数は減ってきていますが、不滅の記録を打ち立てた歴史的なクルマとして後世に永く語り継がれていくでしょう。

4ナンバー車の自動車税種別割はいくら?13年超えた場合についても紹介
旧車の魅力と知識 2024.07.29

4ナンバー車の自動車税種別割はいくら?13年超えた場合についても紹介

4ナンバー車の自動車税額は、3ナンバーや5ナンバーの乗用車とは異なります。自動車税の納付でトラブルにならないように、正確な税額を把握しておきましょう。 この記事では、4ナンバー車の自動車税や自動車重量税、自賠責保険料などについて紹介します。 4ナンバー車とは 4ナンバー車は貨物の運送で使う小型自動車のことです。分類番号は4から始まり、「貨物自動車」や「小型貨物自動車」に該当します。そもそも分類番号は車体の大きさやクルマの用途によって区別するナンバーのことで、ナンバープレートの地名の横に記載されています。 4ナンバー車として登録されるモデルには、トヨタのハイエースバンやスズキのエブリイなどがあります。4ナンバー車の車輌サイズの基準は下記のとおりです。 ・全長 4,700cm以下・全幅 1,700cm以下・全高 2,000cm以下・排気量 660cc超2,000cc以下(ディーゼル車は対象外) 出典:国土交通省「自動車の種類」 上記のサイズを超える場合は、1ナンバー車としての登録が必要です。また、貨物の運送で使うため、下記のような要件もクリアしなければなりません。 ・車輌の荷物積載スペースの床面積が1㎡以上ある(軽自動車は0.6㎡以上)・後部座席よりも荷物を積むスペースが広い・積載可能重量が乗車定員の合計重量を超えている(乗員一人当たり55kgとして計算)・荷物の積み降ろし口が幅80cm以上、高さ80cm以上ある(軽自動車は幅60cm以上、高さ80cm以上)・荷物を積むスペースと乗客席の間に壁や保護仕切りがある この他にも要件はあるため、詳しくは国土交通省のページを参照し、要件を満たしているか確認しましょう。 出典:国土交通省「3 貨物自動車等」 4ナンバー車の自動車税種別割 4ナンバー車の自動車税種別割は、クルマの「最大積載量」によって決まります。具体的な税額は下記のとおりです。 【乗車定員が3人以下】 最大積載量 営業用 自家用 〜1t 6,500円 8,000円 1t〜2t以下 9,000円 11,500円 2t〜3t以下 12,000円 16,000円 3t〜4t以下 15,000円 20,500円 4t〜5t以下 18,500円 25,500円 5t〜6t以下 22,000円 30,000円 6t〜7t以下 25,500円 35,000円 7t〜8t以下 29,500円 40,500円 乗車定員が4人以上の場合は最大積載量のほかに、排気量に応じて税額が異なります。具体的な税額は下記のとおりです。 【乗車定員が4人以上】 最大積載量・排気量 営業用 自家用 1t以下・1L以下 10,200円 13,200円 1t以下・1L〜1.5L以下 11,200円 14,300円 1t以下・1.5L超 12,800円 16,000円 1t〜2t以下・1L以下 12,700円 16,700円 1t〜2t以下・1L〜1.5L以下 13,700円 17,800円 1t〜2t以下・1.5L超 15,300円 19,500円 2t〜3t以下・1L以下 15,700円 21,200円 2t〜3t以下・1L〜1.5L以下 16,700円 22,300円 2t〜3t以下・1.5L超 18,300円 18,300円 参考:東京主税局「税率(年額)」 また、軽貨物自動車は以下の税額が適用されます。   平成27年4月1日以後に新規検査 平成27年3月31日までに新規検査 営業用 3,800円 3,000円 自家用 5,000円 4,000円 4ナンバー車の自動車重量税 4ナンバー車の自動車重量税は、車輌重量ではなく「車輌総重量」で決まります。車輌総重量ごとの税額は、下記のとおりです。 車輌総重量 事業用 自家用 1t以下 2,600円 3,300円 〜2t 5,200円 6,600円 〜2.5t 7,800円 9,900円 〜3t 7,800円 12,300円 〜4t 10,400円 16,400円 〜5t 13,000円 20,500円 〜6t 15,600円 24,600円 〜7t 18,200円 28,700円 〜8t 28,700円 32,800円 軽自動車 5,200円 6,600円 出典:国土交通省「継続検査等時における自動車重量税額」 4ナンバー車の自賠責保険料 4ナンバー車の自賠責保険料は、加入期間によって決まります。具体的な金額は下記のとおりです。 ■小型貨物自動車・24ヶ月営業用:26,240円自家用:20,340円 ・12ヶ月営業用:15,830円自家用:12,850円 ■軽貨物自動車・24ヶ月検査対象車:17,540円検査対象外車:8,920円 出典:損害保険料算出機構「自動車損害賠償責任保険基準料率 2023年1月18日届出」 4ナンバー車は自動車税種別割が安い 4ナンバー車は、3ナンバー車や5ナンバー車より自動車税種別割が安いです。また、税額が決まる基準が異なり、3ナンバーや5ナンバーが排気量によって税額が決まるのに対し、4ナンバー車は最大積載量に応じて税額が設定されています。 たとえば、普通乗用車の自動車税種別割は最低でも年間25,000円(1L以下・自家用/2019年10月1日以降に新規登録した場合)かかります。一方、4ナンバー車は最も税額の低い区分だと年間8,000円(〜1t・自家用)です。 また、4ナンバーの軽自動車が年間5,000円に対して、5ナンバーの軽自動車の場合は年間10,800円です。 自動車税種別割は13年経過で重課となることに注意 自動車税種別割は13年経過すると、税額が重課されることに注意が必要です。初度登録年月から13年経過したクルマは環境負荷が大きいと考えられているため、税額が15%程度重課されます。 また、自動車重量税も初度登録年月から13年経過すると重課され、18年を超えるとさらに税額が高くなります。 一方、環境に優しい電気自動車やプラグインハイブリッド自動車などは「グリーン化特列」(※1)が適用されるため、自動車税種別割を抑えることが可能です。自動車重量税には「エコカー減税」が適用(※2)され、車検時にかかる税金を抑えられます。 4ナンバー車の自動車税種別割を抑えたい場合は、環境に優しいモデルに乗り換えるとよいでしょう。たとえば、小型貨物自動車の場合は下記の電気自動車が該当します。 ・三菱 ミニキャブEV・ホンダ N-VAN e・日産 クリッパーEV なお、ディーゼル車の場合は初度登録から11年経過していると自動車税種別割が重課されます。 ※1 購入した翌年度の自動車税種別割の軽減措置は2026年3月31日までの新規登録車が対象※2 2024年1月1日〜2025年4月30日までの新規登録車が対象上記はいずれも2024年7月時点の情報です。出典:トヨタ「エコカー対象車 | エコカー減税・環境性能割・グリーン化特例について」  まとめ 4ナンバー車は貨物の運送で使う小型自動車であり、自動車税種別割の税額は「最大積載量」に応じて異なります。3ナンバー車や5ナンバー車よりも4ナンバー車の方が自動車税種別割を抑えられますが、初度登録年月から13年経過すると15%程度重課されることに注意が必要です(自動車重量税は13年・18年)。 4ナンバー車の購入を検討する際には、最大積載量にあわせて、中古の場合は年式を確認し、自動車税種別割の正確な税額を把握しましょう。

ホンダ ビートが実現した軽ミッドシップオープンの衝撃! 小さなボディーに大きなこだわりが満載だった
旧車の魅力と知識 2024.07.29

ホンダ ビートが実現した軽ミッドシップオープンの衝撃! 小さなボディーに大きなこだわりが満載だった

風を切りながら走る爽快感を、軽自動車ながら存分に味わえるホンダ ビート。わずか一世代しか生産されなかったにも関わらず、現在でも多くのファンの心を掴んでいるクルマです。 そこで今回は、ビートに込められたホンダ開発陣のこだわりと、今も愛される理由を徹底的に紹介します。 ビートは初物づくしのすごい軽自動車 1990年代に登場したビートは、「初」という冠のつく仕様が多数盛り込まれた画期的なモデルでした。しかし、初採用の仕様の数々は決して奇をてらったものではなく、ホンダがこだわり抜いて開発した結果です。 まずは、ビートの仕様を改めて振り返ってみましょう。 世界初のミッドシップフルオープンモノコックボディ 1991年に発売されたビートは、量産車として世界で初めてミッドシップレイアウトとフルオープンモノコックボディを採用したモデルです。普通車でも存在しなかった世界初の仕様を、軽自動車で実現した点にホンダの高い技術力がうかがえます。 まず、ミッドシップレイアウトを軽自動車で設計するのは、容易なことではありません。ボディサイズが規格で決められているため、限られたスペースのなかで座席後部にエンジンを配置する必要があります。 さらに、フルオープンという仕様も、本格スポーツという方向性の軽自動車で実現するのは困難です。排気量の小さなエンジンで十分な走行性能を発揮するには、ボディの軽量化は欠かせません。しかし、ボディ剛性を確保しておかないと、キビキビとしたハンドリング性能が犠牲になってしまいます。そこでホンダは、主要なボディパーツの板厚をアップしつつ入力部分に効果的に補強材をいれることで、ビートの高い剛性を実現しました。 軽自動車で初めての仕様を詰め込んだ、ホンダのこだわり ビートには、軽自動車初の仕様が数多く採用されました。なかでも注目したいのは、フロント13インチとリア14インチの異径ホイールです。ミッドシップレイアウトによってリア側の重量が増した分、ホイールサイズを前後で変えることで重量バランスの最適化が図られています。 なお、ミッドシップレイアウトを軽自動車に採用したのもビートが初めてです。さらに、4輪ディスクブレーキ、SRSエアバックも軽自動車としては初の装備でした。 また、単なる軽自動車ではない、本格スポーツとしてのこだわりも随所にみられます。例えば、トランスミッションは5速MTのみが設定されています。日常の足という軽自動車本来の利便性を考えるとATを用意したほうが販売台数を伸ばせたはずですが、あえて5MTのみに限定し、走りを最大限に楽しめるモデルとしてリリースされました。 他にも、エンジン出力が犠牲になるパワーステアリングは装備しておらず、万人受けする利便性より走行性能を重視していたことがわかります。 ビートが今も愛されている理由 軽自動車初の仕様が数多く採用されたビートですが、他の高性能スポーツカーに比べて特別優位な点はあまり見当たりません。しかし、現在も中古車市場では活発に取引され、多くの人が大切に乗り続けています。 ビートがなぜ今も愛されているのか、2つのポイントで探っていきましょう。 F1の技術がフィードバックされた自然吸気エンジン ビートに搭載されているE07A型エンジンは、トゥデイやライフなどにも搭載される汎用エンジンです。しかし、ビートに搭載するにあたって、F1のテクノロジーを応用した技術で徹底的なチューニングが施されました。自然吸気エンジンながら、軽自動車の自主規制いっぱいの64psを発揮します。 E07A型エンジンで特筆すべきは、普通車でもあまり採用されていない3連スロットルです。気筒ごとに独立したスロットルを設けることで、吸気効率を高めています。さらに、レスポンスとアイドリングを両立するために、2つの燃料噴射制御マップを切り換える方式が採用されました。このホンダ独自のエンジンシステムは、「MTREC」(Multi Throttle Responsive Engine Control System)と呼ばれています。 ミッドシップレイアウトというスペース的な問題もあったのかもしれませんが、ターボに頼らないというホンダのエンジンへのこだわりは、ビートが愛されている理由の1つでしょう。 クルマを操る楽しさを追求 ビートは、実際に運転してみるとそれほど速いと感じるクルマではありません。最高出力の64psを発生するのは8,100rpmと極めて高い回転数で、ターボ車のような爆発的な加速力はないためです。 しかし、軽自動車というサイズとミッドシップレイアウトを活かした、キビキビとしたハンドリング性能はビートでなければ味わえません。また、8,000回転以上まで到達するエンジンは、スポーツカーに乗っているという感覚を満足させるには十分です。 絶対的な速さではなく、手足のようにクルマを扱える感覚こそが人々を惹きつける魅力なのでしょう。 残存台数の多さから今も愛されていることがわかる ビートは1991年から1996年の1世代しか生産されず、販売台数はそれほど伸びませんでした。デビュー当時は、前年発売されたNSXと同様のミッドシップレイアウトというイメージ戦略と138万8,000円という手頃な価格から予約が殺到。しかし、1990年代の「RVブーム」のあおりを受けて販売台数が伸び悩み、最終的な生産台数は3万3,892台にとどまりました。 一方で、2021年12月時点で日本全国に残るビートは、1万7,072台にものぼるという情報もあります。生産終了から30年近くを経ても、なお半数以上が残っているのは驚異的です。軽自動車規格の2シーターという日常的には使い勝手の悪いパッケージのうえ、5MTでパワステはなしという快適性もないモデルですが、今も多くの人に愛されていることを残存台数が証明しています。

VIPカーって何?どのような特徴があるのか人気車種はどれなのか解説
旧車の魅力と知識 2024.07.29

VIPカーって何?どのような特徴があるのか人気車種はどれなのか解説

車高を落として派手な外装や内装にしているVIPカーを見かけたことがある方も多いでしょう。そもそもVIPカーはどのようなクルマのことで、どのような特徴があるのでしょうか。今回は、VIPカーの特徴やベースとなる人気車種について解説します。 VIPカーとは VIPカーの「VIP(Very Important Personの略)」とは「要人」のため、直訳すると「要人が乗るクルマ」を意味します。 しかし、クルマのジャンルとしてのVIPカーは意味が異なります。 クルマのジャンルとしてのVIPカーは、主に高級セダンに豪華な加飾を施したカスタムカーのことです。そのため、本来の「VIP」とは用途もクルマの状態も異なります。 要人が乗るような高級セダンをカスタムするため、VIPカーと呼ばれるようになったとの説がありますが、具体的な定義はありません。 VIPカーの特徴 ここからは、クルマのジャンルとしてのVIPカーの傾向を解説します。 車高が低い VIPカーの特徴の1つは、車高が低いことです。それも、少しだけ車高が低いのではなく、サイドシルが地面に擦れそうになるほどに車高が低いものが多くみられます。いわゆる「シャコタン」と呼ばれる人気のあるスタイルですが、車高を下げすぎると保安基準に適合しなくなる場合があるため、カスタムする際は保安基準を確認したうえで行いましょう。 旧車の高級車 VIPカーは、旧車の国産高級車をベースにカスタムしているものが多くみられます。型落ちの高級車は新型と比べて安価で入手できます。しかし、古いクルマの場合はメンテナンス費が高かったり自動車税種別割の重課される可能性があったりして維持費用が高いことに注意が必要です。 豪華な装飾 VIPカーには、内装が豪華に仕上げられているものが多くみられます。ランプ関係、グリル、スポイラー、エアロパーツなどのエクステリアのみならず、シートや内装パネルなど、さまざまな部分をカスタムしている傾向があります。 アウトリップ フェンダーからホイールのリムだけをはみ出させる「アウトリップ」をしているクルマも多くみられます。ただし、アウトリップは、保安基準に適合していないカスタムであることを理解しておきましょう。 マフラーの変更 VIPカーは、極太のマフラーを装着していたり音が大きいマフラーを取り付けていたりする傾向があります。ただし、マフラーのカスタムについても保安基準に適合していないケースがあるため、慎重な判断が必要です。 内装の変更 シートや内装パネルなどのインテリアの部品を変更することも多いです。ただし、カスタム内容によっては保安基準に適合しないものもあるため、保安基準を確認したうえでカスタムしましょう。 VIPカーのベースとなる人気の車種 VIPカーのベースとなる人気車種を紹介します。自分でVPIカーを作りたいと考えている方は参考にしてみてください。 アリスト トヨタ アリストは、高級スポーツセダンとして販売されていたモデルです。海外ではレクサス GSとして販売されていました。ターボエンジンを搭載するグレードは国産最速セダンともいわれています。 センチュリー センチュリーは、トヨタの最高級車として販売されているモデルです。公用車にも採用されているセンチュリーの中古車は、VIPカーのベース車輌として人気があります。2代目センチュリーは、国産車唯一のV12エンジンを搭載しています。 シーマ シーマは、日産の高級セダンです。初代シーマは大ヒットモデルのひとつで、「シーマ現象」と呼ばれる社会現象を引き起こしました。 クラウン クラウンは、トヨタの高級車です。セダン・ワゴン・ハッチバックなど、さまざまなボディタイプを展開しているパーソナルプレミアムカーです。さまざまなモデルがあるクラウンですが、VIPカーのベース車輌として人気なのはセダンです。 レクサスLS レクサス LSは、レクサスのフラッグシップセダンです。国内外問わず人気の最高級セダンの中古車は、VIPカーのベース車輌としても人気があります。レクサスの雰囲気と高品質な内外装を活かしたカスタムも人気です。 セルシオ セルシオは、トヨタの最高級車として登場したモデルです。海外では、レクサス LSとして販売されました。圧倒的な静粛性や安定性、優れた耐久性などが特徴です。高い人気を誇ることから、現在でも多くのセルシオが町中で見られます。 VIPカーを購入するときの注意点 VIPカーを購入するときに、気をつけなければならないことがあります。ここでは、購入時の注意点を解説します。 保安基準に適合しているか VIPカーを購入する際は、保安基準に適合しているか確認してから購入しましょう。また、カスタムパーツを取り付ける際も同様です。保安基準を満たしていない場合、整備不良の車輌として取り締まられるだけでなく、万が一のときの被害が拡大してしまいます。VIPカーを走らせて会場やミーティングなどに向かうときは、保安基準に適合しているかどうかを確認してから公道を走行しましょう。 販売店の保証内容 VIPカーを購入する際は、販売店で保証を用意しているか確認しましょう。購入後にトラブルが発生したときに対応してもらえるような保証がある場合は、加入しておくことをおすすめします。 事故車ではないか 事故車ではないか確認してから購入しましょう。事故車をカスタムしてしまうと、思わぬトラブルや事故が発生してしまう可能性があります。事故車は価格が安い傾向にありますが、安全に走らせるためにも避けた方がよいでしょう。 まとめ VIPカーは、派手な見た目や圧倒的な存在感などが特徴のカスタムカーです。VIPカーに乗りたいものの、どのようなことに気をつければよいのかわからないときは、この記事を参考に、ベースとなるクルマ選びやカスタマイズの方針などを考えてみてください。

旧車王マガジンは
旧車王
が運営しています

旧車王は、「買取は10年以上の旧車だけ」というコンセプトのもと、旧車・クラシックカーに特化して25年、 累積15,000台以上を買取させていただいております。改造車から希少車まで、適正価格を見極めて買取させていただきます。弊社所属の鑑定士が最短当日で全国無料出張査定いたします。ご契約後の買取額の減額や不当なキャンセル料を請求する二重査定は一切ありません。特別なそして価値ある希少車の買取こそ、確かなノウハウと実績を持つ旧車王にお任せください!

すぐ査定依頼が可能!

Web査定申込はこちら

まずは車について気軽に相談したい

LINEで売却相談する

カテゴリ一覧

# 旧車の魅力と知識 # 旧車の売買と鑑定市場 # 旧車の再生と維持 # 旧車のイベント # 旧車の愛好家たち