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軽い車体に有り余るパワーのターボエンジンが搭載されていて、胸のすく加速を味わえるトヨタ EP82 スターレット。1980年代の終わりに登場したコンパクトカーですが、格上の1.6Lクラスと肩を並べる、世代を代表するホットハッチとして現在でも高い人気を集めています。 高性能とは無縁の大衆向け自動車をルーツにもつ意外な側面も含めて、EP82 スターレットの全てを徹底的に紹介します。 軽量コンパクトでも戦闘力は高かったEP82 スターレット 高い走行性能が魅力のEP82 スターレットですが、スポーツカーというわけではなく本来のコンセプトは大衆向けのコンパクトカーです。実際、価格面だけをみると若者でも購入しやすい設定になっていて、大衆車であることがよくわかります。 EP82 スターレットは、そもそもどんなクルマで、なぜ人気モデルになったのかを振り返ってみましょう。 スターレットは名車パブリカが源流 初代スターレットは、2代目パブリカの派生モデルとして1973年に登場しました。パブリカは、トヨタ初の大衆車として歴史に残る名車です。スターレットが大衆向けコンパクトカーとしての地位を確立した背景には、パブリカの存在があったといっても過言ではありません。 1989年に4代目スターレットとして登場したのが、EP82型です。安価なエントリーモデルから走りを楽しめるスポーツモデルまで、バブル景気を背景に豊富なラインナップが用意されました。 EP82 スターレットの人気につながったターボモデル「GT」 EP82 スターレットを象徴するモデルとして知られているのは、ターボエンジンを搭載した「GT」です。4バルブハイメカツインカムのDOHCエンジンにターボ搭載という、排気量以外は本格的なスポーツカーにも引けを取らないスペックを誇りました。 しかも、新車価格はわずか124万円からという当時としても破格の価格設定。高い運動性能を考えると、かなりコスパのよいモデルだったといえます。コンパクトカーという車格のため内装は決して豪華とはいえないものの、布張りのドアパネルやサイドサポートのあるスポーティなシートなど一定の水準を保っていました。 下位モデル「ソレイユ」も人気 EP82 スターレットといえばターボ搭載の「GT」ですが、実は下位のノンターボモデルも十分に高いポテンシャルを秘めていました。61万円からという販売価格ながら、最高出力100psを発揮するハイメカツインカムのDOHCエンジンを搭載していました。 また、サスペンションやタイヤをスポーティなものに交換すれば、手軽に運動性能を高められる点もソレイユの魅力です。車重がGTよりも100kg以上軽いわずか710kgということもあって、格上の「テンロク」と呼ばれる1.6L車はもちろん、NAモデルならシルビアよりも速かったという逸話も残っています。 じゃじゃ馬ながら格上にも勝る確かな運動性能を備える「GT」 EP82 スターレットが登場した1980年代後半から90年代前半にかけては、同じトヨタのレビン/ トレノ、ホンダ シビック、三菱 ミラージュといった1.6Lスポーツの全盛期を迎えつつありました。一方、EP82の排気量はテンロクから300ccも少ないわずか1.3L。これだけのハンデを背負いながら互角以上に戦える性能を備えていたため、多少ピーキーで扱いにくい面があったことは否めません。 しかし、エンジンだけでなく車体も細部まで作り込まれており、実は運動性能も先代からかなり向上していました。ここからは、EP82 スターレットの最高グレードGTの魅力をたっぷりご紹介します。 クラス最高峰のホットハッチ EP82 スターレットGTには、最高出力135psを発揮する1.3Lの水冷直列4気筒DOHC16バルブのインタークーラー付ターボエンジンが搭載されています。大衆車の車格ながら、高性能エンジンの目安といわれる1L当たり100psオーバーを実現していました。 同じくホットハッチの代表格として同時期に販売されていた1.6Lのホンダ シビック(EF9)でも、ちょうど100ps/Lだったことを考えると格下のEP82のエンジン性能は驚異的です。しかも、車重はわずか830kgだったため、加速力はシビックをも凌ぐほどでした。 運動性能は先代から大幅進化 830kgの車体に135psというハイパワーエンジンを搭載していることから、EP82スターレットは扱いにくい「じゃじゃ馬」とよく表現されます。先代のEP71から続く個性ともいえるキャラクターではあるのですが、EP82では実は運動性能が大きく改善されています。 前後トレッド幅の拡大やボディ剛性の強化、さらにこのクラスとしては幅の広い175/60R14サイズのタイヤを装着することでコーナリング時の安定性を強化。また、4輪ディスクブレーキを採用し、さらに格上のAE92と同サイズとすることでスポーツ走行に欠かせないブレーキ性能の向上も図られていました。 30年以上前のクルマなのに中古車としての価値を維持 EP82 スターレットの運動性能がいくら高いとはいえ、あくまでも大衆車という位置づけのクルマでスポーツカーではありません。しかも、登場は1980年代と30年以上前のオールドカーです。しかし、人気の高かった「GT」を中心に、いまだに中古車市場で一定の評価を得ています。 中古車の価値は需要と供給のバランスで決まるため確かなことはいえませんが、クルマとしての性能の高さはもちろん楽しさを感じられるために高く評価されているのではないでしょうか。 ただし、多くの人が普段の「足」として利用していたため、中古車で購入する際は状態の確認が重要です。また、旧車の取り扱いに慣れていない中古車業者だと、年式と車格からほとんど価値がないと判断されかねません。取引をする際は、旧車専門の業者に相談することをおすすめします。
奇跡といっていい年。 それが1989年。 国産車が次々と誕生し、まさに「国産車天国」「国産車の桃源郷」といっていい年だろう。 フルモデルチェンジや新規モデルはもちろん、MCや追加車種を含めると実に1年間に45モデルが誕生したとされる年。 数だけでなく、魅力あふれる質の高い国産車がどんどん誕生したのが特筆すべきことだ。 厳選して数台をピックアップしながら「なぜそれらは人気者になったのか?」を追っていき、最後に1989年が当たり年になった背景も交えていきたい。 ■まさに「スターの輝き」。まずはこのモデルを挙げないわけにはいかない、日産R32スカイラインGT-R 1989年国産車といえば……、まず日産R32スカイラインGT-Rを挙げないわけにはいかないだろう。 なにせ「1989年のクルマ=R32」と、0.7秒ほどですぐさま頭の中で結びつく人がほとんどだと思うから。 今見てもまとまりのある、2ドアスポーツモデルのカタチ。 絶妙に張り出したブリスターフェンダー。 格好いい~!と声を出さずにはいられないが、1989年当時の興奮度はこの比ではない。 先代GT-Rの販売終了から16年ぶりの復活誕生。 注目の浴び方はハンパなかった。 当時日産で行なわれていた「901運動」の集大成、新開発の2.6Lツインターボエンジン搭載。 日本車初の最高出力300psモデルを目指したが、馬力規制により280psに留められたモデル…… など、「見出し」になるネタがテンコ盛りというのもこのクルマの特色。 そして、いわゆる25年ルールが解禁され、アメリカがR32を輸入できるようになった昨今。 R32がもはや神格化している北米では、オークション落札価格が日本円で1000万円以上という事例も多いという。 日本で世界で、まさに「スターの輝き」のR32である。 ■R32が誕生した年に4代目フェアレディZ(Z32型)までも登場!もう泣くしかない! 日産のスポーツモデルの流れで、お次は日産4代目フェアレディZ(Z32型)に登場いただこう。 「フェアレディZといえばあのデザインね」と3代目までが頭の中にインプットされていたところ、このZ32型の姿を見て誰しも衝撃を受けたはずだ。 デザインからして「Zの新章スタート!」を感じるのに充分だった。 先代までのロングノーズ・ショートデッキではなく、ワイド&ロー。 先代より全幅がプラス65mmの1790mmとなり、当時としてはかなり平べったい日本車。 それだけに衝撃度も増し増しだった。 デザインのポイントは、これまた当時のクルマ好きにインパクトを与えたリアデザインとテールランプ。 現行RZ34型にこのテールランプデザインが盛り込まれているのは有名な話。 このデザインで、V6・3Lツインターボのアグレッシブな走りを見せるワケだから、街中で目を引かないわけがない。 それにしても、前項のR32スカイラインGT-RとZ32が同じ年に生まれるなんて……、やはり1989年は奇跡の年なのである。 ■ずっと憧れの的だったトヨタセリカも5代目が誕生。それが1989年という年だ 筆者のように「アラウンド還暦」世代にとって、子ども時分から格好いいクルマといえばセリカ。 憧れの存在でもあった。 そのトヨタ5代目セリカが生まれたのも1989年。 WRC用のホモロゲーションモデル、GT-FOUR RCも1991年に発表され、日本では限定1800台が販売されたという。 ということもあり、特別に5代目セリカのWRCカーの雄姿をお届けしているのが上の写真だ。 筆者の好きなハリウッド俳優、エディ・マーフィをCM起用し、「スゴスバ セリカ!」がキャッチフレーズ。 4代目より近未来感あるデザインになり、今見ると、現行クラウンクロスオーバーを思わせる顔をしていません……か?(こちらはリトラクタブル・ヘッドライトだが) 直4・2Lターボの最高出力は235psをたたき出し、当時の若者を興奮させるには充分。 歴代セリカでも強いインパクトを残した一台だ。 ■2人乗りコンパクト2ドアクーペというスペシャリティ感を味わえる、トヨタ2代目MR2 スポーティカーの流れでお次はトヨタMR2だ。 日本車史上、初の市販ミッドシップモデルとして誕生した初代のあとを受け、1989年に2代目MR2が誕生。 当時の日本車では珍しかった2人乗りコンパクト2ドアクーペ(今の日本車でも稀有な存在だが……)。 中身はセリカ/コロナベースがベースだが、初代の「角が取れた」感じの絶妙な曲線デザインが目を引いた。 のちに前項のセリカと同じ2L・直4にターボが追加され、シャープな走りを体感させてくれた。 乗るほどに2人乗りコンパクト2ドアクーペというスペシャリティ感が味わえるクルマ。 トヨタさん、よくぞこんなクルマを出してくれました~!と今でも感慨に浸るほどだ。 ■1989年誕生のスポーツモデル……。忘れちゃ困るぜ「人馬一体」のマツダロードスター R32GT-Rを皮切りに、1989年誕生のスポーツモデルの魅力を4台続けざまに取りあげてきた。 「スポーツモデルはもうないでしょ?」と言いたいところだが、あるんです。 そう、マツダ初代ロードスター(ユーノスロードスター)だ。 現行4代目まで脈々と続く「人馬一体のマツダロードスター」というクルマの礎を成した金字塔的クルマまでも、この年に生まれていたなんて……。 やはり、1989年という年は只者じゃない。 クルマ好きにとってまさに「盆と正月が一緒に来た」ような年である。 「MGのようなライトウェイトカーを作ってみよう」が開発のきっかけとされ、「人馬一体」というテーマがブレることなく現行モデルまで真髄を貫いているところは、脱帽するしかない。 爆発的な走りでもなく、アグレッシブな走りでもない。 車重を極限まで軽くした特有の「ひらひら感」あるFRの走りこそがロードスターの真骨頂、と筆者は熱く語りたい! その源流が初代モデルだ。 この誕生に感謝するしかないですね! ■海外メーカーにインパクトを与えた初代セルシオ。「高級車・新ステージ」への突入 今、「歴代の国産モデルのなかで海外メーカーにインパクトを与えたのはどれ?」と自動車ジャーナリストへ尋ねると、多くの方がこの名を挙げる。 それがトヨタ初代セルシオ。 1980年代前半、それまでの北米の高級車市場といえば、キャデラックやリンカーン、メルセデス・ベンツなどが占め、日本車メーカーが割って入れない状況が続いていた。 そこへトヨタが本腰を入れ、堅い門をこじ開けたのが高級車「レクサス」ブランドの戦略。 1989年、最初に投入されたのが初代LSで、それの日本仕様がトヨタ初代セルシオだ。 クルマ所有の大目標として「いつかはクラウン」が体の中に沁みついていた日本人にとっても、初代セルシオの登場は衝撃的だった。 (センチュリーは別格として)クラウンの上をいくセダンが誕生したわけだから。 が、当時はバブル景気、真っ盛り。 「超高級車、アリかも!」と市場が活気づき、初代セルシオは人気を博した。 時代背景も後押しし、「高級車の新ステージ」を築きあげたモデルといっていいだろう。 セダン然としたスタイル、全長4995mmという堂々たる風格。 新設計のV8・4Lエンジン搭載……。 クルマに新たな価値観が生まれたのも、1989年という年である。 ■ランクル80系と初代レガシィツーリングワゴン。のちのRVブームの礎となった2モデルも登場 現在、世界でも日本でもSUVの潮流は続くが、その源となるのがクロカン(クロスカントリー)だ。 そのクロカンやステーションワゴン、ミニバンといったカテゴリーで一時代を築いたのが、1990年代末から21世紀初頭にかけてのRV(レクレーショナル・ヴィークル)ブーム。 いまや「RV」という言葉自体が懐かしすぎますが……。 そのクロカンというカテゴリーを、歴代モデルたちが軸となり構築してきたのがトヨタ ランドクルーザーといっていい。 そして、ランクル80系が誕生したのが1989年だ。 2023年現在、復活販売として話題になっている70系の次の世代。 「無骨さの塊」という印象の70系以前より、洗練された雰囲気がある外観。 が、ランクルの真骨頂、ラダーフレームを基盤にオフロードでもタフな走りを見せる無骨さは健在。 オンロードでの快適性が向上したのも80系の特徴だ。 1989年にはもう一台、人気者のクロカンが登場している。 トヨタ2代目ハイラックスサーフで、ランクル80系を1.5まわりほど(!?)小さくしたモデルだ。 全長4470mmというサイズ感もあり、若い世代にも人気が高かったクロカン。 そして、のちのRVブームを支える大黒柱となるスバル レガシィツーリングワゴン、その初代モデルが誕生したのも1989年(写真下)。 いい意味で「レガシィよ、お前もか!」と有名な諺をアレンジして使いたくもなりますよ! スバル レオーネの後継モデルとして誕生。 それまでの各社のワゴンデザインが急にやぼったく見えるほど、洗練されたスポーティなデザインに目が留まった。 スタイルには確実に新鮮味があった。 5人がムリなく乗れ、荷物をたくさん積めるラゲッジという実用性の高いパッケージングは驚くばかり。 2Lターボが搭載され、スバル特有の4WD走破性。 「優等生」を地で行くクルマで、「ステーションワゴン」というカテゴリーに市民権を与えた立役者だ。 ■そして日産パオも誕生。1989年は「国産各メーカーの技術進化の絶頂期」でもあった! 1989年生まれの魅力あふれる国産車。 スポーツモデルやクロカンなどを取りあげてきたが、最後は毛色を変えて日産パオ。 今も記憶に残る、Be-1やフィガロとともに1990年前後に登場した日産パイクカーシリーズの一台だ。 どこかレトロ風味がありつつも、アウトドアテイストをも感じるスタイル。 いい意味で、初代マーチをベースにしたとは思えない出来。 3カ月間の予約受注で約5万1000台も売れ、時代のニーズに合致した「仕立て」だったことがよくわかる。 今スタイルを見ても、ユニークなボディサイドのキャラクターライン、上下二分割のリアガラス、開閉式の三角窓、外ヒンジのドア……など、かなり凝っている。 当時の企業としての日産の、余裕とセンスの高さが滲み出ているモデルといっていい。 ……ということで、「国産車の桃源郷」の年といえる1989年に登場した魅力あふれるクルマたちを取りあげてきたが、いやはや、よくぞこんなにも凄いクルマたちが同じ年に出揃ったな、とつくづく感じる。 国産各メーカーの技術進化と技術競争におけるひとつの絶頂期と、バブル景気の時期が重なり市場が一気に膨らんだ……ということが背景にあるといえるだろう。 後世に語り継がれる「奇跡の一年」。 1989年はなんとも濃い!です。 [ライター / 柴太郎 ・ 画像 / Dreamstime]
「アルピナ」の商標権がBMWに譲渡されるというニュースが、2022年に話題になりました。アルピナ社はBMWと長年協力関係を結び、独自の開発でBMW車にひと味違う魅力を与えてきた自動車メーカーです。 規格外のハイパワーエンジンと独自の世界観をもつ内外装が魅力のアルピナについて、商標権譲渡の真相とともに詳しく紹介します。 BMW車の価値を高めるアルピナ 自動車メーカーのアルピナは、BMW車に新たな命を吹き込む開発を続けてきました。一方で、長年続いたBMWとアルピナの協力関係は、商標権の譲渡によって2025年に終了することがすでに発表されています。 アルピナが単なるチューニングメーカーでないことと、商標権譲渡の意図を振り返っていきましょう。 アルピナ車は自動車メーカー ドイツにあるアルピナ社は、アルピナ・ブルカルト・ボーフェンジーペン社という正式名称の自動車メーカーです。ベース車輌がBMW製であることからBMWの高性能モデルブランドと誤解されがちですが、独立した自動車メーカーとして開発や組立工程から独自で行っています。 最近のモデルこそBMWのラインで組み立てられていますが、かつてはホワイトボディからアルピナで製造されていました。独自の思想でBMW車を再度開発し、オリジナルにはない新たな魅力と価値を与えたモデルを生み出してきたのがアルピナです。 商標権譲渡はアルピナブランドを次世代に残すための決断 長年BMWと良好な協力関係にあったアルピナですが、2022年にBMWによるアルピナ商標権の獲得が報じられました。株式や資産などは引き続きアルピナ・ブルカルト・ボーフェンジーペン社に残されますが、アルピナが開発するBMW車は今後はなくなるということです。 ファンにとっては寂しいニュースですが、実は「アルピナ」というブランドを将来に残すための決断だったという見方もできます。電動化や世界的な規制が厳しくなるなか、小規模メーカーでは対応が難しくなってきていました。実際、現在アルピナが製造する車輌は、BMWの工場で多くの工程が組み立てられるように変化しています。 商標権をBMWに移譲したことで、「アルピナ」の名称は時代の変化による消滅の可能性が限りなく低くなりました。「自社のラグジュアリーカーをより多様なものにする」という展望をもつBMWが、今後どのような形でアルピナの名称を利用していくのかに期待が高まります。 中古車市場でも価値の落ちないアルピナ製BMW車 アルピナが製造していたモデルは現在でも人気が高く、ベースのBMWの車輌に価値がなくても高値で取引されているものがいくつもあります。つまり、アルピナの開発によってBMW車が新たな価値を得たということです。 名車揃いのアルピナ BMWのなかでも、特に人気の高い3モデルを紹介します。 E34を超高性能サルーンに高めたB10 Bi-Turbo B10は、強力なツインターボエンジンを搭載した超高性能サルーンです。「ビックシックス」と呼ばれる直列6気筒エンジンを究極までチューニングし、最高出力を370psまで高めました。ツインターボとしたことで、低回転域から高回転域までトルクが持続します。 大柄ボディの重量級E34ですが、アルピナのチューニングエンジンによって強烈な加速を実現。さらに、シャシーの剛性強化やゲトラグ製の5速ミッション、BOGE製のレベライザー付きショックアブソーバーなど、強力なパワーを余すことなく発揮できる車体設計もさすがアルピナというポイントです。 E36に究極の洗練さを与えたB8 4.6 リムジン E36の直列6気筒エンジンに換え、強力な4.6LのV8を搭載したのがB8 4.6 リムジンです。 BMWの3シリーズとして生産された比較的コンパクトなE36に、最大340psを発揮するV8エンジンを押し込んだことで異次元の加速力を発揮します。 一方で、誤差1/1000gの精度で組み上げられたエンジンは、暴力的な加速に反して驚くほどスムーズ。しなやかな足回りも相まって、E36にさらなる上質さを与えます。また、内装もスポーティーながらエレガントさも持ち合わせていて、究極のパワーと洗練さを両立したモデルです。 E28にメカチューンを加えたB9 3.5 B9 3.5は、SOHCエンジンながらDOHCエンジンの初代M5に匹敵するハイパフォーマンスモデルです。ボアアップや圧縮比の向上、カムシャフトと吸排気バルブの見直しといったNAエンジン定番のメカチューンを徹底的に施して、245psもの最高出力を絞り出すことに成功しました。 ターボでは味わえないNA特有の加速感が人気を集めたのか、生産台数は当時のアルピナとして最大の577台にまで達します。異径4灯のヘッドライトやアルピナストライプの入ったシャープなボディラインといった外観のアルピナらしさも、B9 3.5の魅力です。 永遠ともいわれるアルピナの価値の今後の動向に注目 アルピナの価値は旧車になっても失われることはありません。たとえば、現在では査定額がほぼつかないE36でも、B8 4.6 リムジンなら600万円もの価格がつきます。さらに、E28をベースにしたB9 3.5に至っては950万円もの高値での買取実績もあります。 一方で、もともと生産台数の少ないアルピナモデルは、旧車のなかでもかなり希少な部類です。特にベース車輌の価値が失われつつある現在では、旧車王のようにアルピナを正しく査定できる業者は決して多くありません。商標権の譲渡によってアルピナが今後BMWを製造しなくなることも含めて、アルピナの価値を評価してくれる専門性の高い業者に売却の相談をしてください。
ヨーロッパ・フォードが1980年代に販売していた、斜めに切り立ったフロントマスクと角目のヘッドライトが個性的なシエラ。正規輸入されていなかったこともあり、日本では知る人ぞ知る車種の1つです。レースでの活躍を目指して投入された高性能モデルで、欧州のみならず日本でも当時無敵を誇りました。 日産 R32型GT-R誕生のきっかけになったともいわれる、フォード シエラについて詳しく紹介します。 フォードなのにアメ車ではないシエラ アメリカ自動車メーカーのビッグスリーの一角をなすフォードですが、シエラはいわゆる「アメ車」ではなく欧州拠点で開発されたモデルです。 新世代ファミリーカーとして欧州市場でのシェア獲得を目指した、シエラの開発背景を振り返ってみましょう。 欧州市場を狙ったシエラ 欧州への進出を目指したフォードは、1960年代からヨーロッパ・フォードとしてイギリスとドイツに拠点を置いていました。シエラは、欧州両拠点から1982年に発売されます。コルティナとタウナスの後継である、「新世代ファミリーカー」として位置づけられました。 イタリアのカロッツェリア・ギア社がデザインを手掛けていたという点からも、フォードが欧州市場を強く意識していたことがわかります。一方で、空力を強く意識したモダンなデザインはイギリスの既存ユーザーには不評だったという話も残っているため、当初から欧州を席巻したモデルというわけでもなかったようです。 実力を証明するためレースに投入 ヨーロッパ・フォードは、設立時からレースに積極的に取り組んでいました。自動車レースの本場ヨーロッパだけに、欧州進出を目指すフォードにとって重要な戦略だったのでしょう。 シエラが発売された1982年からグループA規定を採用したETC(ヨーロッパ・ツーリングカー・チャンピオンシップ)では、既存のカプリで参戦したものの結果が残せずにいました。1986年にはシエラのスポーツグレードXR4Tiを投入しますが、レースで主導権を握るまでには至りません。そこでフォードは、シエラをベースにレースで戦えるマシンの開発に本気で取り組むことを決断しました。 名門コスワースとのタッグで誕生したシエラRSコスワース シエラでレースに勝つためにパートナーとして選んだのは、フォードと関係性の深かったイギリスのエンジンメーカーコスワースでした。コスワース製ハイパワーエンジンを手に入れたシエラは、ツーリングカー選手権で好成績をあげます。 無敵を誇ったシエラRSコスワースについて、日本での戦績も交えながら詳しく紹介します。 グループA規格で戦うために開発 グループA対策を施したシエラは、シエラRSコスワースとして1986年に登場します。シエラのためにコスワースが用意したのは、最高出力204馬力を発揮する2LのDOHCターボエンジンでした。5,000台の生産実績というグループAの規定(当時)を満たして、1987年からWTC(世界ツーリングカーチャンピオンシップ)に投入されました。 また、エンジンの変更だけでなく、フォードは車体各部を徹底的に見直します。フロントマスクに設けられた冷却用のエアインテークや大型のリアウィングによって、見た目の印象もファミリーカーから大幅に変わりました。 翌年にはRS500にアップデート シエラRSコスワースが登場した翌年の1987年には、シエラRS500コスワースにアップデートされます。タービンの変更やインタークーラーの大型化によって、最高出力は225馬力まで引き上げられました。さらに、レース用モデルは、最高出力500馬力だったともいわれています。 さらに、グループA規定に違反しない箇所の全てに手を加えたといわれるほど、車体も大幅に変更されました。外観は基本的にシエラRSコスワースを踏襲しているものの、2段式になったリアウィングが戦闘力の高さをうかがわせます。 日本のツーリングカー選手権を席巻 シエラRSコスワースは、トランピオチームからJTC(日本ツーリングカー選手権)にも参戦します。開幕戦こそリタイアに終わるものの、第2戦では2位、第3戦では早くも優勝を果たして実力の高さを証明しました。 さらに、WTC最終戦にも組み込まれたインターTECに投入されたシエラRS500コスワースも圧倒的な強さをみせます。エッゲンバーガー・モータースポーツが優勝、トランピオチームが2位というワンツーフィニッシュを達成しました。また、エントラント部門での世界チャンピオンも獲得しました。 1988年には、6戦中4戦でシエラが優勝を獲得。1989年には開幕戦と最終戦の2勝にとどまったものの1987年と1988年には2年連続で全日本タイトルを手中に収め、日本のツーリングカー選手権を席巻しました。 日産 R32型GT-Rの誕生のきっかけともいわれるシエラ 日本のレースで無敵を誇っていたシエラの快進撃を止めたのは、1990年の日産 R32型GT-Rでした。実は、R32型GT-Rはシエラを倒すために投入したともいわれています。R32の高い走行性能は誰もが認めるところですが、逆の見方をするとシエラはそこまでしないと倒せない存在だったということです。 輝かしいレースの成績を収めたシエラですが、正規輸入されていなかったこともあり日本国内ではあまり流通していません。希少車は入手が難しいのはもちろんですが、実は売却時にもスムーズに取引できないこともあるため注意が必要です。流通量が少ないがゆえに正しい金額がつかない場合や、業者によっては買い取ってもらえない場合もあります。 旧車の買取経験豊富な旧車王では、希少で流通しにくいシエラRSコスワースも2023年11月に買取りました。フォード シエラを取引する際は、旧車のノウハウをもった専門業者に相談することをおすすめします。
車のスリップは頻繁に経験するものではありません。しかし、悪条件が重なると、日常使いの範囲内でもスリップすることがあります。そこで今回は、車がスリップしてしまう原因やスリップしたときの対処法、スリップしないための対策について紹介します。 車がスリップする原因 車のスリップは、タイヤと路面の摩擦により発生するグリップ力の限界を超えると発生します。グリップ力の限界を超える理由は、車の速度、タイヤの性能、タイヤの摩耗具合などによって異なります。 ただし、車のスリップは、グリップ力の限界を超えたときだけではありません。路面とタイヤの間に水が入り込みタイヤが浮いてしまう「ハイドロプレーニング現象」もスリップの1つです。また、路面の上に散らばっている砂利や砂などによってタイヤのグリップ力が失われることでスリップする場合もあります。 このように、車のスリップは性能の限界を超えることで発生するだけでなく、車を走らせる環境によって発生する場合もあるのです。そのため、日常使いの範囲ではスリップすることがないとは言い切れません。 車がスリップしたらどうなるのか? 車がスリップすると、アクセル、ブレーキ、ハンドルなどの操作が効かない状態になります。つまり、車が制御不能状態に陥り、事故につながるリスクが格段に上がります。 カーブや曲がり角でスリップした場合、進みたい方向に進めないため、ドライバーがすぐにスリップに気づくでしょう。しかし、直進しているときや一瞬だけスリップした場合は、ドライバーがスリップに気づかないこともあります。 ■スリップしているときの警告灯を「スリップ表示灯」という 走行中に車の制御ができないと感じたときや違和感を覚えたときは、メーター内の車が滑っているマーク「スリップ表示灯」を見てください。 スリップ表示灯は、タイヤがスリップしているときに点滅する警告灯です。この警告灯が点滅しているときは、車がスリップしていることを意味します。 車がスリップしたときの対処法 車がスリップしたときは、どのように対処すればよいのでしょうか。ここからは、スリップした時の対処法を紹介します。 とっさにアクセルやブレーキを踏まないようにする 車がスリップすると、何とかしてスリップ状態から抜け出そうとするでしょう。このようなときに、アクセルを踏み続けたり、ブレーキを強く踏み込んだりするのは危険です。 そもそも、スリップ中はアクセル操作やブレーキ操作をしても効果がありません。また、スリップしながら自然と速度が低くなり、タイヤのグリップが回復したときにペダル操作をしていると、飛び出したり急減速による横滑りが発生したりします。 つまり、スリップ中のペダル操作は、効果がないだけでなく、タイヤのグリップが回復したときに新たな危険を発生させる原因となるのです。 ハンドルを大きく回さない 車がスリップしているとき、ドライバーはスリップによって進んでいる方向から早く元の走行ラインに戻りたいと考え、ハンドルを急いで大きく操作してしまうことがあります。 しかし、この大きなハンドル操作は、タイヤのグリップ力が回復したときに急旋回や横滑りを誘発する危険があるため、避けたほうがよいでしょう。 カウンターステアを行う カウンターステアをあてるのも有効な手段といえるでしょう。カウンターステアとは、後輪がスリップしている方向と同じ方向にステアリングを切る操作です。 しかし、カウンターステアは、ある程度の運転技量が必要となるため、運転技量を高めてから行うほうがよいでしょう。 車のスリップを防ぐ方法 車のスリップを防ぐためには、どのようにしたらよいのでしょうか。ここからは、車がスリップしないようにするための方法について紹介します。 悪路では速度を抑える 未舗装路、砂利道、濡れた路面、積雪路、凍結路などの悪路では、速度を抑えましょう。 車のスリップは、タイヤと路面の摩擦力がなくなったり、路面からタイヤが浮いたりすることで発生します。つまり、タイヤと路面の接地および摩擦を確保することでスリップを防げるのです。そのため、悪路では速度を落としたほうがよいといえるでしょう。 急ハンドルを切らない 急ハンドルをはじめとした急操作は、スリップの原因になることがあります。 カーブや曲がり角を通過するときは、直線部分であらかじめ減速し、落ち着いたハンドル操作で通行しましょう。このようなゆとりを持った操作は、スリップを防止するだけでなく交通の安全にもつながります。 空気圧を適切に保つ タイヤの空気圧を適正に保ちましょう。タイヤの空気圧が高すぎたり低すぎたりすると、タイヤが路面に正しく接地しません。 タイヤの面が正しく路面に接地していない場合、タイヤのグリップ力が最大限に発揮されず、スリップを誘発することがあります。このようなことから、タイヤの空気圧を適正に保つこともスリップを防止する方法の1つとなるのです。 タイヤの空気圧は、最低でも1ヶ月に1回はチェックし、適正値を保ち続けるようにしましょう。 タイヤの溝やヒビをチェックしておく スリップを防ぐためには、タイヤの管理が大切です。そのため、タイヤの残り溝の深さやひび割れも1ヶ月に1回はチェックしておきましょう。 タイヤは、路面との接地面に刻まれている溝で路面の水を排水しています。また、ゴムの柔軟性によって適切なグリップ力を確保しています。つまり、溝が浅く、ひび割れるほど硬化したタイヤでは、適切な排水やグリップ力を発揮することができません。 このようなことから、タイヤの残り溝の深さやひび割れなどを確認しておく必要があるのです。 まとめ 車のスリップは、公道での走行や日常使いの範囲内で経験することはほとんどありません。しかし、悪条件が重なると、通勤や買い物などの日常使いのシーンでもスリップする場合があります。車がスリップすると、焦って適切な操作ができないこともあるため、万が一に備えてスリップしたときの操作方法を覚えておくとよいでしょう。 また、車のスリップは運転操作の見直しや日常点検をすることで防げます。安全に車を走らせるためにも、車やタイヤの点検、ゆとりある運転を心がけるようにしましょう。
マニュアル車に乗っていると「フライホイールを軽量化した方が走りがよくなる」と言われることがあるのではないでしょうか。 今回はフライホイールが必要な理由や原理と役割、軽量化で得られる効果について紹介します。フライホイールについて調べている方は参考にしてみてください。 フライホイールとは? フライホイールは、クランクシャフトの端につけられている円盤状のパーツです。日本語で「弾み車」といわれます。マニュアル車には必ずある部品です。オートマチック車の場合にはトルクコンバーターがその代わりを果たすため使われていません。また、エンジンの回転を均一に保ったりエンジンを始動させたりする役割も担っています。 まずは、フライホイールが必要な理由とその原理を詳しく解説します。 フライホイールが必要な理由 エンジンは、吸気・圧縮・燃焼・排気という4つのサイクルで動いています。この4つサイクルの中でエネルギーを発生させられるのは燃焼行程だけです。それ以外の行程では動力が生み出されないため、フライホイールがない場合、アイドリングが安定しなくなります。 フライホイールの原理 フライホイールは円盤状の部品で、外側部分が歯車になっているのが特徴です。トランスミッション側のクランクシャフトの端に取り付けられています。 フライホイールは、慣性の法則を利用して回転するパーツとなっています。慣性の法則とは、運動している物体は運動を続け、静止している物体はいつまでも静止し続けるという法則です。エンジンが動き出すことによって回り始めたフライホイールは、慣性の法則によって回転し続けるため、エンジンの回転ムラを抑えることができるのです。 たとえば、手に空のペットボトルを持って腕を回した場合、腕を回すのに大きな力は必要なく、止めたいときに止めることができます。しかし、2Lの水が入ったペットボトルを持っている場合、動かし始めるのに大きな力が必要となり、自分が止めたいと思った瞬間に止めることが難しいでしょう。 これと同じ原理でフライホイールは作動しています。 フライホイールの役割 フライホイールの役割は以下の3つです。 ・エンジンの回転ムラをなくす ・エンジンの動力を伝える ・エンジンの始動 それぞれ詳しく解説します。 エンジンの回転ムラをなくす エンジンは、吸気・圧縮・燃焼・排気という4つのサイクルを繰り返して動力を発生させています。このプロセスを通じて発生したエネルギーは、クランクシャフトで、回転運動に変えられ、車輪に伝わります。 また、エンジンで発生した回転エネルギーは、クランクシャフトを通じてフライホイールにも伝わります。回転エネルギーを受けたフライホイールは、慣性の法則に従って運動を続けようとするため、燃焼以外のプロセスでもエンジンが止まることなく安定して回り続けるのです。 エンジンの動力を伝える フライホイールには動力をクラッチディスクに伝達する役割もあります。 エンジンで発生した動力は、フライホイールに伝わり、フライホイールとクラッチディスクがつながることで、トランスミッションにエンジンの動力が伝達されます。つまり、エンジン側のフライホイールとトランスミッション側のクラッチディスクがくっついたり離れたりすることで動力の伝達・遮断が行われるのです。 エンジンの始動 フライホイールはエンジンをスタートさせるときにも必要です。エンジンをスタートさせるためには、はじめに動き出すきっかけ、つまり、外側から力をかけなければなりません。 フライホイールの外周にあるリングギアにセルモーターが噛み合ってフライホイールが回転すると、エンジンが動き始めます。つまり、エンジンの始動にもフライホイールは欠かせないのです。 軽量フライホイールとは? 軽量フライホイールとは、クランクシャフトの端に取り付けられているフライホイールの重さを軽くしたタイプです。ここからは、軽量フライホイールのメリットとデメリットを解説します。 フライホイールを軽量化するメリット フライホイールを軽量化するメリットは以下のとおりです。 ・レスポンスアップ ・加減速性能アップ ・早くシフトアップできる 軽量化したフライホイールを使用すると、アクセルを踏んだときにエンジンの吹きあがり(レスポンス)がよくなり、アクセルを緩めたときの回転変化が素早くなります。 また、軽量フライホイールはエンジンの回転数を変化させるのに必要なエネルギーが少なくて済むため、加速と減速の性能アップも期待できます。さらに、エンジン回転数の上げ下げが素早いため、シフトアップのするときの回転数を合わせやすくなることも軽量フライホイールのメリットです。 軽量フライホイールのデメリット 軽量フライホイールの主なデメリットはは以下のとおりです。 ・アクセル操作がシビアになる ・燃費の悪化 エンジンのレスポンスがアップするということは、わずかな操作でもエンジンが敏感に反応することを意味しています。つまり、軽量フライホイールにすると扱いがシビアになるということです。 また、フライホイールを軽量化したことで慣性モーメントが減ってしまい、同じ速度を維持するためにエネルギーが増加します。その結果、より多くのエネルギーを作り出さなければならず、ガソリンの消費量が増える場合があります。 まとめ 今回は、フライホイールとは何なのか、その役割や軽量化のメリット・デメリットなどを解説しました。 フライホイールは、エンジン回転を均一に保つために必要なパーツです。フライホイールについて正しい理解と知識を得ることで、軽量化するべきかという判断も変わるでしょう。 フライホイールは、自分の車の使い方に合わせて、ベストなものをチョイスすることをおすすめします。
オークランド在住のtomatoです。 以前お伝えした通り、公共交通機関が貧弱なニュージーランドではクルマの保有率はほぼ1人1台と高く、スマートフォンと同様にクルマは生活必需品といっても過言ではありません。 ●懐かしい日本車と再会できる国「ニュージーランド」現地レポート https://www.qsha-oh.com/historia/article/tomato-new-zealand-report1/ では、ニュージーランドでクルマを所有する際は、一体どんな車検や税金制度があり、どれくらいの費用が掛かるのでしょうか。 筆者の愛車「マツダ・ロードスター(ND型)」が2023年9月にちょうど更新タイミングを迎えたので、この機会にレポートします。 果たすべき義務は2つ ニュージーランドの公道を走行するためには、下記の2つの認可を取得または更新する必要があります。 ・ヴィークル ライセンス (Vehicle Licence) https://www.nzta.govt.nz/vehicles/licensing-rego/ ・ウォレント オブ フィットネス(Warrant Of Fitness) https://www.nzta.govt.nz/vehicles/warrants-and-certificates/warrant-of-fitness/ Vehicle Licence (Rego) これは公道の走行許可で、一般的には「Rego」(Registrationの短縮形で、「リジョー」と発音 )と呼ばれています。 とはいうものの、結局のところは税金を徴収する仕組みと考えられ、日本の「自動車税」に相当するかと思います。 オンライン(または窓口)で費用を支払うことで、上記のような小型のレーベル(カード)が郵送されてきます。 それをフロントガラスの助手席側に掲示することで、プロセスは完了です。 日付形式は日本式やアメリカ式などとは異なる馴染みの薄いイギリス式で、この実例は2024年5月9日ではなく9月5日まで有効という意味になります。 ちなみに、このレーベルを見るだけで年式や車種などの基本的な車輌情報が得られるので、クルマのミーティングなどで会話のキッカケに非常に重宝しています。 そして気になるその費用はというと、筆者のロードスターはもっとも一般的な「ぺトロール(ガソリン)乗用車」カテゴリーに属していることから、最長となる12か月分の費用は(事務手数料が安価なオンライン申請で)$103.68でした。 なお、2023年10月からは価格改定により$106.15と若干の値上がりとなって、11月執筆現在の為替レート(89円/ニュージーランドドル)で換算するとおよそ9,400円。 ここで「あれ?」と疑問に思う方も多いのではないでしょうか。 そうです。驚くことに「車輌重量」や「エンジン排気量」などは、金額にまったく影響しないのです。 さらに驚くことに、ニュージーランドには日本の自賠責保険(自動車損害賠償責任保険)に相当するものも存在しないのです。 といっても、不安になる必要はありません。その代わりとしてACC(Accident Compensation Corporation)という仕組みがあり、なんとニュージーランドへの渡航者も含めて、自動車事故に限らずさまざまな事故での損害を補償してくれます。 したがって、この国では自動車保険といえば、「対人/対物保険」ではなく「対物保険」となります。 ただし、付保すること自体は義務ではないので、ここでは割愛します。 Warrant Of Fitness (WoF) これは日本でいう車検(自動車検査登録制度)にあたり、一般的には「WoF」と省略して表現することが多く、犬の鳴き声のように「ウォフ」と呼ばれています。 認可されている整備会社ごとに料金が異なるので一律ではありませんが、一般的には$50~$75(日本円で4,400~6,700円)ほど。 検査に合格すると、上記のような、小型のレーベル(カード)をフロントガラスに貼りつけてWoFが完了となります。 この実例では、2024年9月まで有効という意味。 ただし、これは月末まで有効という意味ではなく、裏面にある日付が実際の有効期限になるので注意が必要です。 興味深いことにWoFは日本の車検とは少し方針が異なり、車輌の根本的な安全性のチェックが主体となっているようです。 例えば、エンジンオイルの交換はおろか、その状態を確認することもないのが特徴です。 <検査項目>・タイヤの状態(溝の深さ含む)・ブレーキの動作・車体の構造点検(特定の場所のサビは許されない)・ライト・ガラスの安全性・ワイパー、ウォッシャー・ドアの動作・シートベルト(痛んでいないか。正しく、バックルが動作するか)・エアバック・スピードメーター・ステアリング、サスペンション・排気システム(漏れていないか、うるさくないか)・燃料システム(漏れてないか) (ニュージーランドで初めて登録される)新車に関しては、初回のWoFを受ければ、3年間有効となります。 それ以外の車輌に関しては、大量の中古車を輸入するユニークな国だけに、有効となる期間はニュージーランドを含めた世界のいずれかの国で、「車輌が初めて登録された年月日」で決まる仕組み(下表)です。 要は新車でなければ一般的には1年間有効。 ただし、古いクルマは、「リスクが高いのだから、有効期間は6ヵ月だけですよ」となっているのです。 これは走行安全の観点からも理にかなっていると思えます。 なお、WoFで不合格となっても、28日以内に対象箇所を直し、同じ整備工場に持って行けば、ありがたいことに再検査の費用はかかりません。 まるで軽自動車並みのコスパ? 驚くことに、一般的な「ガソリン乗用車」であれば、義務はこれだけ! 仮に筆者の愛車が旧車、1990年式の初代ロードスター(NA型)であったとしましょう。 その場合WoFは年に2回更新する必要がありますが、それでもRegoとWoF合わせた年間総額は、(消耗品を除いて)2.5万円程度で済んでしまう計算です。 調べたところ日本国内でクルマを維持する場合、地方の「生活の足」として優遇されている軽自動車ですら自動車税と車検代(年換算)の合計は4.5万円程度となるようですから、ニュージーランドはクルマ好き/旧車好きにとても優しい国といえるのではないでしょうか。 今でもたくさんの懐かしいクルマ達が現役で走っているのにもうなずけますね。 編集後記 今回の更新を迎えるにあたり、ここオークランドにて輸入中古車を扱われている「マツダ・ホームグロウン」さんに、エンジンオイル交換といった車輌整備からWoFまでのフルソリューションを行なっていただきました。 実は同社を運営するのは日本国内の正規マツダディーラー「広島マツダ」さん。 実際に作業を担当するメカニックはマツダ車を熟知しているだけでなく日本人なのです。 ただし、WoFに関しては同社は認可を保有していないため、オークランドで20年以上にも渡り自動車整備工場を営んでいる同じく日系の「クリア・モータース」さんがWoF検査作業のみ請け負う形態となっていました。 なお、「クリア・モータース」さんには、今回の記事内容の監修をしていただきました。 この場をお借りして、お礼を申し上げます。 ありがとうございました。 取材協力 「マツダ・ホームグロウン」さんhttps://www.maho.co.nz/ 「クリア・モータース」さんhttps://clearmotors.co.nz/ [撮影・ライター / tomato 監修 / クリア・モータースさん]
週末の行楽地に出かけているとき、遠くから普段聞き慣れない種類の荒々しいエンジン音が響いてきて、思わず「おっ?」と気を惹かれてしまう、というシーンに遭遇したことはありませんか? そのまま運が良ければ、反対車線をすれ違う複数の旧車のツーリングに出くわすこともあるでしょう。 その際に聞こえてくる迫力を秘めたエンジン音のうち、「カアアアァァン・・・」というカン高く空に抜ける爽快な音の部分の多くは、キャブレターから発せられる吸気音なんです。 この例のように、大口径キャブレターの吸気音に魅せられて乗りたくなったという旧車ファンは少なくないでしょう。 ここではそんなキャブレターの魅力について、改めてしっかりお伝えしていきたいと思います。 まずは前編ということで、キャブレターの基本の部分を解説していきましょう。 ■旧車乗りが「キャブ、キャブ」っていうけど何がいいの? まずキャブレターの魅力について触れておきましょう。 魅力のひとつは上で話したように“吸気音”が心地良い、という点です。 私も旧車に乗るまでは、チューニングエンジンの音を味わうのは“排気音”だと思っていました。 しかし、初めて旧車のエンジン音をしっかり聴けるチャンスが訪れたとき、排気音よりも吸気音が気になるということに気付きました。 旧車の排気音は、触媒が無かったりサイレンサーの構造もシンプルだったりして、今どきのクルマの排気音よりストレートに響いてきます。 それはそれで好きなのですが、エンジンルームをのぞき込んだ状態や室内でアクセルを煽ったときに、耳に届いて感性をくすぐってくるのは吸気音の方でした。 音の印象を頑張って擬音で表してみましょう。 排気音は「ブオンブオン」や「ガオンガオン」という低めで腹に響く系の音質だと感じます。 一方で吸気音の方は、「カオーン」や「シュゴーッ」という、空に抜けていくような感じのする高めの音だと感じます。 これが、回転が高くなるほど音量が増し音質も高くなるので、アクセルを踏む自分の気持ちも昂ぶってくるんです。 ちなみにこの抜けるように響く感じは、キャブレターの口径が大きいほど気持ち良いと感じます。 声量のあるプロの歌手が、目いっぱい歌い上げているのを聴いている感じに近いでしょうか。 あとは加速感がガラッと変わります。 だいたいの車種で普段の使い勝手の方を優先して設計しているので、使用する頻度の高い低回転から中回転の領域でレスポンスとトルクの効率が最適になるように、かなり絞った口径のキャブレターを装着しています。 したがってピークパワーに関してはだいぶ抑えられている状態なのです。 パワーを出すにはカムなど他の要素も関わってくるので一概にはいえませんが、単純にキャブレターの口径を大きくすると、それまで抑えられていた部分が解放され、エンジンが求める空気(混合気)がより多く吸えるようになります。 その結果、パワーが上がります。 上がる割合はエンジンの特性や仕様、状態などで異なりますが、適切な口径を選んで、セッティングが合ってさえいれば、パワーが下がることはないでしょう。 パワーとともにレスポンスもアップします。 特に空ぶかしの時の反応がまったく違うので、シフトダウンの時にアクセルを煽るのが楽しくなるでしょう。 そして、これは機械いじり中級者以上の人になりますが、自分でメンテや調整がおこなえるという点も、趣味のクルマの装置としては魅力アップのポイントではないでしょうか。 ボンネットを開けてもカバーが邪魔でエンジンの存在が隠されているような今のクルマは論外ですが、80年代のじゅうぶん旧車と呼べる年式のクルマでも、インジェクションや排ガス浄化デバイスなどがひしめいていて、ちょこっとメンテしようかなという気も削がれてしまうでしょう。 その点、キャブレターがむき出しになっているエンジンなら、余計な手間をかけなくても直接キャブレターにアクセスできるので、ストレスがありません。 まあ、用も無いのにしょっちゅうキャブを触っているというのもちょっと考えものですが、それだけ気軽に作業できるというのはメリットだと感じます。 ■基本の基本、キャブレターってなんだ? そもそも「キャブレター」という単語を知っているという人はどれくらいいるでしょうか? まあ旧車に興味がある人がチェックしている「旧車王ヒストリア」の読者さんなら、ほとんどの人は耳にしたことはありますよね。 ではキャブレターが何をする装置なのかを知っている人はどうでしょうか。 まあこれも半分以上は大丈夫かと思います。 そうです、キャブレターはエンジンが燃焼を行なうのに必要な、ガソリンと空気をミックスした“混合気”を送り込むための装置です。 エンジンが調子よく回るかどうかの大部分は、このキャブレターの設定にかかっているのです。 キャブレターはその内部に、空気の通り道の一部を絞って流速を上げて負圧を作り出す「ベンチュリー」という機構が備わっています。 このベンチュリーで作り出した負圧の部分に燃料の管をつなげることで、自然と燃料が吸い出されていきます。 キャブいじりの解説で良く出てくる「ジェットの番手を上げる(大きいものに交換する)」というのは、燃料の管の入り口を絞ったり開けたりして流量を調節するための行為のことなんです。 ■キャブレターのセットアップやセッティングは難しい? キャブレターの装着とセットアップ、そしてセッティングをイチからおこなうという場合、まったくの初心者の場合はいろいろと覚えなくてはならない要素があるので、そういう意味ではけっしてカンタンではありません。 とはいえ、いまどきはキャブレターの扱い方を解説している本がいくつもありますし、動画配信などでも初心者向けに解説をしているものがありますので、そういう情報をしっかり勉強してから挑めば、エンジンを動かせるところまでは思ったほど時間はかからないと思います。 いちばんの近道は詳しい人を探してアドバイスしてもらうということですが、まあそう都合良く身近にはいないでしょう。 SNSで旧車の集まりに参加して、相談してみるところから始めるといいと思います。 キャブレターの魅力を楽しむためには、まずはキャブレター本体を入手しないことには始まりません。 そこで決めなくてはならないのがキャブレターの口径です。 エンジンの仕様や特性、オーナーの求める方向によって変わる部分はありますが、大きなガイドラインは排気量で見当が付けられます。 例えばよく使われている公式で見てみましょう。 D=0.82 √(CxNx0.001) D=キャブ口径(mm)C=1気筒あたりの排気量(cc)N=最高出力回転数(rpm) 実際にソレックスの40パイが装着されているトヨタの「2T-G型」を当てはめてみましょう。 0.82√(400×6400×0.01)=41.5 となり、だいたい合っていますね。 では旧車エンジンの代表格「L20型」を当てはめてみると、0.82√(333×5200×0.01)=34.1 となります。 実際に34パイのキャブレターとなると、ソレックスの36パイがあるにはありますが、かなり入手は難しいと思います。 私の経験では、L20型エンジンにソレックスの40パイを3機装着してみたことがありますが、ノーマルキャブレターに比べてゼロ発進の時、特に坂道発進ではすこし慎重になるものの、街乗りで不足を感じることはありませんでした。 むしろアクセルのレスポンスが良くなり、中回転から上のパワー感が増したので、差し引きでいうと大きくプラスになったと感じました。 ですので感じ方には個人差はありますが、目安はあくまで目安として考えたほうがいいでしょう。 慎重に選ぶなら小さめを、せっかく変えるなら変化が大きい方が良いと考えるのであれば、大きめを選ぶと良いと思います。 キャブレター選びで、ひとつ注意をして欲しい点をお伝えしておきます。 キャブレターは一部を除いてもう新品での販売はしていませんので、ほとんどの人はネットオークションや中古を扱っているネットショップなどから中古で購入することになると思います。 その際、さり気なく混じっている不良品をつかまないよう慎重に選ぶようにしてください。 といっても「良いか悪いか、写真とコメントだけでは判別できないよ!」というのが実際だと思います。 ただここでいえることは限られてしまいますが、可能な限り現物を見て購入するようにすれば、少しでも失敗は遠ざけられると思います。 少なくとも写真で見てキレイだったからと安易な判断は控えましょう。 ■あとがき どうでしょう、キャブレターの魅力をしっかり伝えられたでしょうか? ひと昔前に比べると、キャブレターの価格も上がってきていて、手軽に購入しづらくなってきてはいますが、私自身は旧車のカスタムパーツの中で一二を争うくらいに交換した時の変化が大きいものだと思っています。 せっかく旧車ライフを楽しむならば、ぜひ一度はこの効果を体感していただきたいです。 次回はもう少しマニアックな部分に踏み込んで、キャブレターの楽しさの奥深さを話してみたいと思います。 [ライター・画像 / 往 機人]
フロントグリルにおさまる、「R」が強調されたエンブレム。日産のみならず、日本を代表するスポーツカー、スカイラインGT-Rの証です。特に人気なのがR34型スカイラインGT-R。しかし、あなたの目の前にあるGT-Rは、本来の型式であるBNR34ではなく「ER34」かも知れません。 R34マニアが、ER34をベースにカスタマイズしたGT-R仕様車が今注目されています。外観上は見分けがつかないほど精巧なカスタマイズ車も存在する、ER34のGT-R仕様について詳しくみてみましょう。 R34型は第2世代最後のスカイライン R34型スカイラインは、R32型から続く第2世代と呼ばれるスカイラインの最終モデルです。当時不評だった、丸みを帯びた重い印象のR33型の後継ということで、スカイラインらしさを感じるシャープな印象に仕上げられました。 下位グレードであるにも関わらず人気のあったER34も含めて、R34型スカイラインについて振り返ってみましょう。 BNR34は「スカイライン」最後のGT-R BNR34は、結果的にスカイラインとして最後のGT-Rになりました。スカイラインの最上位グレードとして生まれたGT-Rですが、BNR34の後継モデルの35型からは「GT-R」という車名でスカイラインから独立したためです。 BNR34はスカイラインGT-Rの集大成にふさわしく、クルマとしての完成度を追求したモデルでした。「究極のドライビングボディ」と称して、ボディ剛性と空力特性を大幅に向上。さらに、前後重量配分は、理想的といわれる50:50に限りなく近い55:45を実現しました。 エンジンは第2世代GT-R共通のRB26DETTですが、ボールベアリングタービンの採用などで最大トルクは40kg・mにまで引き上げられています。 FR車として人気の高かったER34 R34型スカイラインのなかでは、スポーティーモデルのER34も人気の高いモデルです。GT-Rの性能には及ばないものの、ターボモデルに搭載するRB25DETエンジンは自主規制いっぱいの最高出力280psを発生させます。駆動方式がスポーツ走行に最適なFRということもあって、スポーツ走行から街乗りまで幅広く楽しめることもER34の魅力です。 また、カスタムベース車輌としても、ER34は支持を集めています。完成度の高いGT-Rではカスタマイズを楽しもうにも手を加える余地があまり残っていないうえ、中古車価格の高騰でそもそも入手が困難です。結果的に、GT-Rに比べると安価に入手でき、チューニング余地の残るER34はカスタマイズユーザーにとってはちょうど良いモデルなのです。 ER34のGT-R仕様が熱い ER34で人気のカスタマイズが、GT-R仕様への変更です。基本的なシャシーやボディデザインが共通のため、パーツの流用によってER34をBNR34風に仕上げることができます。 ライトチューンから性能面含めてGT-Rを狙う本格的なものまで、ER34のGT-R化について詳しく紹介します。 ライトチューンで雰囲気を楽しむ ER34のGT-R化で定番なのは、フロント周りの変更でGT-R顔にしてしまうカスタマイズです。あまりボディ本体に手を加えずに楽しめるため、比較的手軽にGT-Rの雰囲気を味わえます。 具体的には、フロントバンパー、フェンダー、ボンネットをGT-R用のパーツに変更するだけです。クルマの性能自体は変わりませんが、GT-Rルックを手軽に手に入れられます。 また、本物のGT-Rにはなりませんが、ER34用に発売されているGT-R風フロントバンパーを利用すればもっと簡単です。フェンダーやボンネットといった大型のパーツを変更することなく、GT-R風を楽しめます。 RB26DETTエンジンを搭載してGT-Rに近づける ER34のGT-R化は、見た目だけにとどまりません。GT-Rに装備された高性能パーツも、ER34に移植可能です。代表的なのはブレーキの移植で、取り付けの難易度もそこまで高くありません。また、GT-Rからのブレーキの流用は、R34型だけでなくR35型のものも最近では人気です。 さらに、本格的にGT-Rを目指すチューナーのなかには、GT-RのRB26DETTエンジンに載せ替える人もいます。手間はそれなりにかかりますが、究極のGT-R仕様ともいえるでしょう。 本物にはない装備で楽しめる ER34をGT-R仕様にすると、本物とは違う個性的なGT-Rを楽しめます。たとえば、4ドアセダンをベースに制作すれば、4枚ドアという迫力のあるGT-Rも実現可能です。 また、サンルーフも本物のGT-Rには設定がありません。純正オプションのサンルーフ装備のER34であれば、開放感のある特別なGT-Rに仕上がります。 内装もBNR34とER34では異なるので、全てをGT-R仕様にすることは困難です。しかし、あえてER34のよさを活かすことで、本物とは違う魅力を引き出せます。 高額査定にもつながるER34のGT-R仕様 最後のスカイラインGT-R、BNR34の人気が高いことはいうまでもありません。しかし、ER34も当時の新車価格を上回る価格で取引されるなど、チューニングベースとしても素性が良いだけに現在でも高い人気を誇ります。 さらに、ER34のなかでも注目されているのが、GT-R仕様の車輌です。GT-Rの純正パーツを利用してしっかりと作り込まれていれば、高額査定につながることも少なくありません。一般的には、純正から変更されていると売却価格は下がりますが、ER34のGT-R仕様なら場合によってはリセールバリューの向上につながります。 GT-Rを楽しむ方法の1つとして、入手の難しいBNR34ではなくあえてER34を選んでカスタマイズという手段も検討してみてはいかがでしょうか。
根強いファンから支持を集める三菱 ランサーエボリューション(以下適宜ランエボと表記)。特に第2世代と呼ばれるランエボIVからVIは、WRC(世界ラリー選手権)で輝かしい成績を残しました。 WRCでの活躍によって「トミ・マキネンエディション」というドライバーの名を冠した特別仕様車も発売されるほど人気を集めた、第2世代ランサーエボリューションについて詳しく紹介します。 三菱の実力を世界に示したランエボ ランサーエボリューションは、そもそもWRCで戦うことを目的に作られました。そして、三菱は狙い通り、ランエボで実力を世界に証明します。 特に無類の強さを誇った第2世代を中心に、ランサーエボリューションの開発背景と実績を振り返ってみましょう。 ランサーエボリューションは戦うために作られた ランサーエボリューションは、WRCの当時のトップカテゴリー「グループA」の出場条件を満たすために開発されました。当時の参加車輌の条件は、最低2,500台生産された市販車輌ベースと規定されていたためです。 初代の登場は1992年で、小型なランサーにギャランの4G63型2.0Lターボエンジンを搭載。以降2006年まで、ランサーエボリューションの基本フォーマットとして踏襲されます。 ランサーエボリューションは、1992年から2016年までの14年間で合計10モデル(派生モデルを除く)が販売されました。また、ベースのランサーのフルモデルチェンジにあわせて(ランサーエボリューションXのみギャランフォルティス)4世代に分類されています。 第2世代が三菱の黄金期を作り上げた ランサーエボリューションのなかでも特に人気を集めるのが、第2世代に分類されるIVからVIの3モデルです。第2世代ランサーエボリューションは、トミ・マキネン選手が全てのモデルでドライバーズタイトル4連覇(最初の獲得はランエボIII)という前人未到の記録を達成。さらに、ランエボVでは、三菱初のマニュファクチャラーズタイトルをもたらしました。 実は、初代ランサーエボリューションの投入当初は、開発期間が短かったこともありあまり目立った成績は残せませんでした。しかし、ランエボIIで初勝利を挙げると、ランエボIIIではトミ・マキネン選手が初のドライバーズタイトルを獲得。徐々に強さを見せはじめたなかで、満を持して投入されたのがフルモデルチェンジを図った第2世代だったのです。 結果を追い求めて進化し続けた第2世代ランエボ ベース車輌ランサーのフルモデルチェンジに合わせて、第2世代に更新されたランサーエボリューション。ランエボIVからVIの3モデルは、同モデルがベースです。 しかし、モデルを追うごとにマイナーチェンジとは思えない進化を遂げて、WRCで結果を残し続けました。ここからは各モデルの違いや特徴を、WRCの戦績と合わせて紹介します。(1シーズンに2モデル投入された年度もあるため、成績は単一モデルでのもののみ掲載) ランサーエボリューションIV: 1996年 ランサーエボリューションIVは、ランサーのフルモデルチェンジに合わせてボディを刷新。ボディ刷新に合わせて、エンジンの左右を先代から180度入れ替えました。エンジン回転を逆転させるシャフトが不要な、合理的でシンプルな構造に変更されます。また、エンジンの最高出力は、当時の自主規制いっぱいの280psまで引き上げられました。 次期モデルよりボディをワイド化したため、最後の5ナンバーランエボとしても有名です。WRCの戦績は4勝で、トミ・マキネン選手が2年連続でのドライバーズタイトルを獲得しました。 ランサーエボリューションV: 1998年 ランサーエボリューションVが登場した1998年は、WRCが新たに認めた改造範囲の広いWRカーの参戦が本格化した年でした。三菱は、市販車ベースのグループAでの参戦を決定。より一層高い戦闘力の実現を目指して、ランサーエボリューションVは開発されました。 すでに自主規制いっぱいまで高出力化されていた4G63型エンジンでしたが、細部の見直しでトルクを38.0kg・mまで引き上げます。また、2,500〜6,000回転の常用域のパワーとトルクも引き上げて、高い加速性能を実現しました。 ボディのワイド化も、ランエボVの大きなトピックです。走行性能の向上を目指して、1,770mmまで拡幅されました。迎角調整式の新型リアスポイラーといった、エアロパーツも一新。先代と同じ車種がベースとは思えない、どっしりとした印象になりました。 WRCでは、念願のマニュファクチャラータイトルを獲得します。トミ・マキネン選手は、ついにドライバーズタイトル3連覇を達成しました。 ランサーエボリューションVI: 1999年 第2世代の完成形ともいわれるのが、ランサーエボリューションVIです。先代でワイド化されたボディはサイズこそ変更はないものの、空力性能と冷却性能をさらに向上させました。 エンジンでは大型のオイルクーラーの採用や吸気口の大径化に加え、世界初のチタンアルミ合金製タービンホイールを採用。高回転域での効率化と、レスポンスアップを実現しました。 WRCでは1999年度に4勝を挙げたものの、2年連続でのマニュファクチャラーズタイトルは逃します。しかし、トミ・マキネン選手は前人未到のドライバーズタイトル4連覇を達成しました。 トミ・マキネンエディション: 2000年 トミ・マキネンのドライバーズタイトル4連覇を記念して、三菱はランサーエボリューションVIをベースに開発した特別仕様車をリリースします。ランエボ6.5とも呼ばれる「ランサーエボリューションIV トミ・マキネンエディション」です。 ランサーエボリューションIVを、舗装路(ターマック)向けに特化した仕様に変更。中低速域のレスポンス向上や専用のサスペンションを装備するなど、一般道を走るロードカーに最適な仕様だったこともあって高い人気を集めました。 また、専用に新開発されたフロントバンパーエアロや三菱のWRCワークスラリーカーと同デザインのホイールを採用するなど、細かい点まで三菱ファン垂涎の仕様になっています。 ランエボ第2世代は根強い人気を保っている ランサーエボリューションのなかでも、特に第2世代はWRCでの活躍もあっただけに20年以上が経過した今でも人気は衰えていません。さらに、ランサーエボリューションIV トミ・マキネンエディションともなると販売台数はわずか3,000台前後ともいわれていて、さらに希少性が高まっています。 ただし、中古車の売買をする際は、高い専門性のある業者を選定しましょう。最も新しいランサーエボリューションIV トミ・マキネンエディションでも登場から20年以上が経過していて、ランサーエボリューションIVは1996年の登場から30年近くの年月が経っています。思わぬ不具合に見舞われないよう、車両状態を見極められる業者と取引することが重要です。 また、希少性の高いクルマは、一般的な買取業者に依頼すると売却時に正しく査定してもらえない可能性があります。車輌状態だけでなく、クルマそのものの価値も正しく査定してくれる旧車の取り扱いに慣れた業者に相談しましょう。 ※経過年数は2023年11月執筆当時