旧車の魅力

庶民にも手が届く本格ライトウェイトスポーツ!ホンダ 初代インテグラタイプRの魅力と中古車相場
旧車の魅力 2022.01.26

庶民にも手が届く本格ライトウェイトスポーツ!ホンダ 初代インテグラタイプRの魅力と中古車相場

ホンダが設定するスポーツグレード「タイプR」は、1992年に発売された初代NSXにはじめて設定されました。しかし、当時900万円を超える価格に、なかなか手が出づらいものでした。そんな中、222万円という価格ながら、1.8Lの排気量で最高出力200psを8000回転で絞り出す本気仕様のマシン、インテグラタイプRが登場します。 今回は、大衆車から一躍スポーツカーに躍り出たインテグラタイプRのスペックと、中古車相場について紹介していきましょう。 価格は控えめなのにスペックは本格派 インテグラタイプRは「もっと身近なレーシングスポーツが欲しい」というユーザーの声に応えるべく、1995年8月に発売されました。 3代目インテグラをベースとした初代インテグラタイプRは、超高回転型エンジンをはじめ、専用の足回りやLSDの採用でハンドリングを徹底的に追求。さらに、ボディ剛性の強化も施され、まさにメーカーチューンドと呼ぶにふさわしいスペックが与えられました。 それにも関わらず車体価格は222万8000円と、NSXタイプRに比べるとかなりリーズナブル。 ボディは3ドアクーペの他に4ドアハードトップも設定され、スポーツモデルながらパワステやパワーウィンドウも装備されるなど、家族での使用も想定されていたことが特徴的です。 性能がさらに強化された98spec、99spec 1998年1月には通称「98spec」と呼ばれる後期型へとマイナーチェンジし、各部の性能が強化されました。 ECUの見直しやエキゾーストマニホールドのステンレス化、さらに、タイヤは16インチへ拡大し、ホイール穴も5穴仕様に変更など、大幅なアップデートが実施されています。 その後の1999年7月のマイナーチェンジでは「99spec(00specとも呼ばれる)」が登場。基本的な性能は98specと変わりませんが、電動格納ミラーやキーレスエントリーなどの快適装備が追加されたほか、99spec特別ボディカラーとして「サンライトイエロー」が設定されています。 サンライトイエローを選択するとボディと同じ黄色のレカロシートが選べたため、それ以外に変更点はないものの、特別感を味わうことができました。 レーシングカー並みのスペックでも価格は200万円台前半! 搭載される1.8L直列4気筒DOHC VTEC(B18C型)エンジンは、Spec Rと名付けられたスペシャルモデル。最高出力200psを8,000rpmで発生し、8,400rpmを許容するレーシングエンジン並みのスペックが与えられました。 今の市販車ではまず採用されることの無い限界まで踏んで回すタイプのエンジンに、1060kgという軽量なボディが組み合わさることで、スペック以上のレーシーぶりを発揮してくれます。 専用部品を各部に惜しみなく使用 インテグラタイプRの特筆すべき点はエンジンだけでなく、各部細かい箇所まで徹底的にチューンナップされていることです。 4輪ダブルウイッシュボーンの専用サスペンションは、標準車に比べ車高を15mmダウン。さらにヘリカルLSDを採用し、エンジンやダンパーなどの各部マウント部も強化品に交換されています。 このタイプR用に開発された新規パーツ60点に及ぶにも関わらず、販売価格はベースモデルよりも約12万円高い222万8000円。20年以上前とは言え、メーカーチューンドといっても良いスペックであることを考えれば、まさにバーゲンプライスと言っても良い価格でした。 インテグラ タイプRの中古車相場と買取価格 そんな本格スポーツ仕様のインテグラタイプRですが、2021年8月時点で大手中古車サイトの相場は最安で1997年式の128万円。最高値は1999年式の98specが589万円と、当時の新車価格の2.5倍ほどのプライスがついており、インテグラタイプRの人気の高さが伺えます。 一方、旧車王での買取相場は3ドアクーペ、4ドアハードトップともに50~250万円。マイナーチェンジ後の98spec、99specとなると、3ドアクーペのみ50~300万円と買取り相場がアップします。 インテグラタイプRはジムカーナやターマックラリーなど、モータースポーツのベース車としての海外での需要も高く、市場での相場は新車価格越えが当たり前となっている現状です。 まとめ タイプRシリーズ第2弾として登場したインテグラタイプRは、NSXのときには味わえなかったスポーツカーの楽しさを身近なものにしてくれました。 新車価格は控えめにしながら、超高回転型エンジンを搭載するなど振り切った仕様にしたことで多くのファンを生み、タイプRシリーズはのちのシビックにも受け継がれていきます。 刺激的かつ、誰にでも乗ることのできるスポーツカーの楽しさを提供してくれたインテグラ タイプRは、ホンダのスポーツカー展開に大きな影響を与えた車であることは間違いありません。 [ライター/増田真吾]

熟成に熟成を重ねた第三世代!ランサーエボリューションⅦ~Ⅸの魅力と故障しやすい箇所を解説
旧車の魅力 2022.01.26

熟成に熟成を重ねた第三世代!ランサーエボリューションⅦ~Ⅸの魅力と故障しやすい箇所を解説

ハイパワーエンジンと卓越した4WD性能を有し、伝説的存在となっている三菱のスポーツセダン、ランサーエボリューション。WRCや多くのモータースポーツで好成績を残したこともあり、今でもその熱は冷めやらず、多くのユーザーに愛され続けています。 今回はそんなランサーエボリューション「VII」から「IX」の第3世代を、よくある故障個所なども含めて解説していきましょう。 第3世代ランサーエボリューションとは? ランサーエボリューションは大きく4つの世代に分けられ「Ⅰ」から「III」が第1世代。「IV」から「VI」が第2世代で「VII」から「IX」が第3世代です。 そして最後の第4世代が「X」となっていますが、今回はシリーズ中でも性能が煮詰められた第3世代「CT9A」型について解説します。 新たなプラットフォームと新開発のACDを備えたランエボVII  2000年5月に登場したランサーエボリューションVIIは、ベース車をそれまでの「ランサー」から「ランサーセディア」に変更したことによりボディサイズが拡大しました。 エンジンは、初代から続く2リッター直列4気筒ターボの4G63型を搭載。大型インタークーラーの採用やターボの改良などを行い、最大トルクは39.0kg.mまでアップしています。 そしてVIIの目玉ともいえる、電子制御可変多板クラッチ機構「ACD」は、電子制御によって前後タイヤのトルク配分を行い、ハンドリング、トラクションともに大きく向上しました。 スーパーAYCでコーナリング性を高めたランエボVIII ランサーエボリューションVIIIは2003年1月に登場し、シリーズ初の6速MTを採用しています。 ターボはさらなる調整を施し、最大トルクは40.0kg.mに増加。さらにIVから採用のヨー・コントロールシステム「AYC」を発展させた「スーパーAYC」の搭載し、タイヤ左右間の限界駆動力を倍増させ旋回能力を向上させています。 MIVECでさらに加速が強化されたランエボIX 2005年3月に登場し、第3世代の集大成となるランサーエボリューションIX。フロントバンパーにダクトを新設したことで見た目はよりスポーティーになり、冷却効率も向上しました。 そして、エンジンに可変バルブタイミング機構「MIVEC」の採用。中低速のパワーを無駄なく使えるようになり、最大トルクも41.5kgmまで上がっています。 第3世代ランエボに乗るうえで知っておきたい故障個所 ランサーエボリューションはそのレーシーなキャラクターゆえ、サーキットの高負荷走行が多く、そのぶん故障の事例も多く出ています。 ここでは、第3世代通して故障しやすい箇所についてご紹介しましょう。 ACDポンプ VIIから採用されたACDを制御する「ACDポンプ」はスポーツ走行の繰り返しで故障するケースが多く、異常時は走行こそできますが、油圧による駆動制御が効かなくなってしまいます。 ACDポンプは部品代と交換工賃を合わせると20万円ほどの費用にもなるので、サーキットを走行する機会がある方は、故障に注意する必要があるでしょう。 O2センサー エンジンの吸入空気濃度を検知するO2センサーは、タービンのアウトレット部に設置されており、その熱やススが原因で故障することが多く見られます。 故障した場合は最適な燃料噴射量が狂い、加速不良やアイドリングの不調を起こします。センサー本体は純正だと3万円ほどですが、費用を抑えたい場合は約7000円前後で販売されているOEM品を使用するのがおすすめです。 カム角センサー カムシャフトの動きを検知するカム角センサーは、エキゾーストマニホールド付近に設置されているため、O2センサーのように熱にやられてしまうことが多くあります。 部品代は5000円ほどと比較的安価ですが、故障の際はエンジンが始動しなくなる恐れがあるので早急な修理が必要です。 車体のサビ 雪道を走行する場合はサビにも気を付けなければなりません。雪道に散布される融雪剤には「塩化カルシウム」が含まれており、車体のフレームやマフラーを腐食させる恐れがあります。 フルタイム4WDのランサーエボリューションは降雪地帯で使われることも多く、サビの被害も多数出ているので、下回りをこまめに洗い付着した融雪剤をできる限り落とすようにしましょう。 第3世代ランサーエボリューションの中古車市場 ランサーエボリューションのなかでも第3世代は特に人気が高く、中古車価格の高騰が続いています。 記事執筆時の2021年12月時点で、大手中古車サイトに掲載されている第3世代の中でも、いちばん高額だったのが平成18年式1.8万km走行のGSR IX MRで、車体価格は800万円。走行距離が少ないとは言え、15年以上前の中古車と考えれば、どれだけ高額で取引されているのかがお分かりいただけるのではないでしょうか。 一方、旧車王での買取価格はVIIが~250万円、VIIIが~300万円、IXが~350万円と高額。さらに、走行性能を高めたモデルのVIII MRは~380万円、IX MRは~500万円となっており、世界中で人気の高いランサーエボリューションならではのプライスといえるでしょう。 まとめ VIIからIXまでの第3世代ランサーエボリューションは、すでに頭打ちと思われていた第2世代からさらに進化を遂げ、多くのファンと業界関係者を驚かせました。 ユーザーによっては、その後に登場した第4世代のXよりも、車重の軽い第3世代を高く評価する場合もあり、根強い人気を保ち続けています。 しかし、その高い走行性能とは裏腹に、経年劣化による故障も決して珍しくないため、購入の際は、それまでどのように使われてきた、きちんとメンテナンスされてきたかなども確認するようにしましょう。 [ライター/増田真吾]

ロングノーズショートデッキとリトラクタブルヘッドライトがカッコいい!豪華で速かったA70スープラ
旧車の魅力 2022.01.26

ロングノーズショートデッキとリトラクタブルヘッドライトがカッコいい!豪華で速かったA70スープラ

ロングノーズのワイドボディ、リトラクタブルヘッドライトによるワイド&ローデザイン。 いかにもスポーツカーという風格を漂わせるトヨタ A70スープラは、初期モデル発売から30年以上が経過した今でも素直にカッコいいと見とれてしまう車のひとつです。海外で80年代以降のスポーツカー人気が高まっている現在、A70スープラも例外ではなく注目を集めています。今回は、今でも車好きを魅了するA70スープラの詳細と、現在の中古車相場についてご紹介します。 A70スープラはトヨタスポーツカーの歴史の礎 トヨタ スープラは、トヨタを代表するスポーツカーシリーズです。その中でも1986年から1993年まで販売されたA70スープラは、現在に続くスープラの歴史の基礎と言っても過言ではありません。 A70スープラはどんな車だったのか、開発時の状況や進化の歴史を振り返ってみましょう。 セリカを脱却しピュアスポーツへの転換 A70スープラは、それまで海外で「SUPRA」の名称で販売されていた、A60型セリカXXの後継車として開発されました。 Z20ソアラと共通のプラットフォームを採用し、セリカから脱却。国内販売の車名もスープラに統一され、先代から続くスポーツ路線をより明確にしたモデルとして登場しました。 エンジンは全グレード直列6気筒エンジンを採用し、最上位モデルとなる3L 6気筒ターボエンジン7M-GTEUでは230psを発生。これは、当時国内最強だったZ31型フェアレディZに搭載されたVG30ETエンジンと同等の出力で、トヨタがスポーツカーとしての地位確立を強く意識していたことがうかがえます。 高級スポーツカーの名に恥じないスタイリング スタイリングは、先進的でスポーツカーライクなデザインを採用し、スポーツカー路線へと舵を切った先代A60で採用されたリトラクタブルヘッドライトを踏襲。ロングノーズショートデッキというスタイリングは、スポーツカーとしての戦闘力の高さを期待させ、当時としては先進的なデザインでした。 一方で、内装は高級車ソアラの兄弟車ということもあり、高級感溢れるデザインと快適性も注目ポイント。例えば、当時まだほとんど馴染みのなかった人間工学に基づいて設計されたシートは、電動の調整機能も含む各種調整機能を持ち、ワンランク上の乗り心地を実現しました。 エンジン含め数々のマイナーチェンジを繰り返した7年間 A70スープラは、発売後も精力的に開発が続け、販売されていた7年の間に、ボディバリエーションの追加、マイナーチェンジなど数々の仕様変更を繰り返しています。特にエンジンは、グレード別も含めてNA、ターボ合わせて実に9種ものエンジンを搭載しました。 外装で特に大きな変更は、1988年の3L車の全車ワイドボディ化と、1989年のツインターボ版1G-GTEへのワイドボディ仕様の追加。輸出仕様と同様のワイドボディによって、より堂々とした風格を醸し出しました。 エンジンでは、1988年にターボエンジンのハイオク仕様への変更を行ったのが最初の大きな進化です。2Lの1G-GTEUが185psから210psに、3Lの7M-GTEUが230psから240psに進化しました。 モデル末期となる1990年の最後のマイナーチェンジでは、2.5Lながら国内自主規制いっぱいの280psを発生する1JZ-GTE型エンジンを最上位グレード「2.5GTツインターボ」に採用。まさにトヨタだけでなく、日本を代表するスポーツカーとなったのです。 A70スープラの中古車相場について 大手中古車サイトでA70スープラの現在の中古車価格を調べたところ、2020年8月の原稿執筆時点で、走行距離が30万km近くの最安値の2Lツインターボでも130万円以上。低走行でほぼ純正仕様のままという2.5Lツインターボで、なんと1,000万円近くの価格の車両もありました。 もちろん、旧車王での買取価格もA70スープラの人気を表しています。発売から既に30年以上が経っているにも関わらず、2Lのモデルでも最高200万円、2.5Lや3Lモデルでは、最高900万円もの買取価格がつくほどの人気ぶり。今後も高値が続くことが予想されますが、中古車相場は水物です。 また古い車であることには違いないため、保存状態や経年劣化の具合で査定が下がってしまう可能性も否定できません。もしA70がお手元にあるなら、高値が続く今こそ、一度見積もりだけでも出してみることをおすすめします。 まとめ 作るからにはジャンルを問わず他社より優れた車を作る。A70スープラはトヨタの自動車メーカーとしてのプライドを感じるモデルです。 先進的なデザインに、当時としては珍しい人間工学まで取り入れた高級感溢れる内装、そして素性のいいエンジンが生み出す高い運動性能。細部にこだわって作り込んだ車種だからこそ、30年以上が経った今でも人気で、高値がつくのも頷けます。 今後、高値が続くことも予想されていますので、手に入れたい方はぜひ早めに探してみてはいかがでしょうか。 [ライター/増田真吾]

9500rpmの超高回転型エンジンを搭載したクラシックオープンカー!ホンダ S600の魅力と中古車相場
旧車の魅力 2022.01.25

9500rpmの超高回転型エンジンを搭載したクラシックオープンカー!ホンダ S600の魅力と中古車相場

多くの人々を魅了するホンダのスポーツカーは歴史が長く、1964年に発売されたオープンカー、S600は市販車でありながら、9500回転まで回せる超高回転型エンジンを搭載していました。上まで回るエンジンと、荷室が広々使える革新的な技術で当時は話題を呼び、今でも根強い人気がある車です。 今回はホンダのスポーツカーS600のレーシーな性能と、中古車相場についてご紹介します。 S600は世界を目指したオープンスポーツ ホンダ S600はFR駆動のオープンカーとして、1964年3月に発売。もともとは自動車産業発展のために、そして「世界一でなければ意味がない」という本田宗一郎氏の言葉のもと、スポーツカーを開発したのが始まりでした。 1962年、ホンダは第9回全日本自動車ショーにて排気量354ccのDOHCエンジンを搭載したスポーツカーS360を出展。2シーターオープンのスポーツカーは話題を呼び、市販化が期待されましたが、当時制定された法案によりS360は発売に至りませんでした。 しかし、翌1963年10月には、水冷直列4気筒DOHCエンジンを搭載した2シーターオープンカーS500を発売。最高出力44PSというS500のパワー不足を補うため、そのわずか5か月後には排気量を531ccから606ccにアップしたS600を登場させます。 S660まで続いたSシリーズ 二輪で培ったホンダの技術が注ぎ込まれたS600は、小排気量でありながら、高回転・高出力なエンジンを搭載し、当時のドライバーには「エスロク」の愛称で親しまれました。 その後は1965年にクーペモデルを追加、排気量を791ccまでアップしたS800を1966年に発売。そして2リッターVTECエンジンを搭載したS2000、2022年3月に販売を終了するS660と、これまでホンダは、オープンカー「Sシリーズ」を展開してきました。 当時のリッターカーにも負けない走行性能 当時はOHVが当たり前のなか、S600は直列4気筒DOHCエンジンを採用。4連キャブレーター、各部専用パーツを使用するなど、当時の市販車としてはレーシーかつ革新的な機構を採用していました。 見た目こそS500とほとんど変わりませんが、エンジンシリンダーのボア、ストロークは拡大され、最高出力は13psアップの57PS/8,500rpm。最高速度145㎞/hという数字は、当時の1200ccクラスにも匹敵するほどのスピードを誇ります。 そして、当時のユーザーから「時計のように精密」と評され、9,500rpmまで回るエンジンは、驚くほど精密に組まれていました。 革新的なチェーン駆動システムで荷室は広々 ほかの車にはないS600の特徴的な部分として、リアのチェーン駆動システムが有名です。 S600の荷室スペースを広くとりたかったホンダは、収納を妨げる後軸付近の機構を移設することを考えます。 まず、後軸付近にある燃料タンク、デフなどを後部座席の後ろに移動。デフから横方向に伸びる2本の駆動シャフトは、後軸中心を避けるようにリアタイヤ内側のアルミケースへと繋がっています。そして、アルミケース内部の油浸チェーンがデフからの駆動力を受けることで、リアタイヤを回転させるという仕組みです。 結果、後軸中心にスペースが空き、当時の小型車としては広く、機能的な荷室空間を確保することに成功しました。 海外でも人気のS600は価格高騰傾向? S600は50年以上前に販売されたクラシックカーですが、海外のオークションではまだまだ熱が冷めやらず、高騰の一途を辿っています。 あるオークションでは50回以上入札されたのち、76,125ドル、日本円で約840万円(執筆時点のレート)という価格で落札されたほど。これはオークションの最低落札価格の54,600ドル(約602万円)よりも40%近く上昇しており、S600の価値が上昇していることがわかります。 中古車である以上、S600の車体在庫はこれからますます減っていき、それと同時に希少価値も上がっていくので、今後のオークションでの落札価格は10万ドル(約1,100万円)を超える可能性があるかもしれません。 S600の中古車相場と買取価格 S600の市場価格を国内の大手中古車サイトで調べたところ、2020年9月時点で走行距離不明の1966年式の個体が333万円。最高値のものだと、同じく走行距離不明の1965年式、クーペタイプのボディで458万円となっていました。 国内での在庫は9台ありましたが、走行距離が不明の個体が多く、購入を考えている場合は実車確認が必須になってくるでしょう。一方、旧車王での買取価格はオープンタイプ、クーペタイプどちらも100~300万円となっています。 S600は半世紀以上前の車ということもあり、各箇所のサビや電装系の不具合など、さまざま問題が考えられるので、売却の際はショップなどで一度点検してもらうのが良いでしょう。 まとめ 「世界一でなければ意味がない」という本田宗一郎氏の言葉にあるとおり、妥協のないクオリティで登場したS600は、国内だけでなく海外にもその名を轟かせました。 超高回転型エンジンは、その後の可変バルブタイミング機構「VTEC」によってさらに進化を遂げ、ホンダ製スポーツカーの印象を世に知らしめることとなります。 そんなS600は今や国内に残っているのはごくわずかであり、海外需要が高まれば価格高騰もあり得るので、購入の際は早めに動くのが吉かもしれません。 [ライター/増田真吾]

取引価格1億越えの個体も?メーカー初のミッドシップカー、BMW M1の魅力を解説
旧車の魅力 2022.01.25

取引価格1億越えの個体も?メーカー初のミッドシップカー、BMW M1の魅力を解説

モータースポーツの技術が惜しみなく注ぎ込まれたBMWのコンプリートカーモデル「Mシリーズ」。そんなMシリーズの原点であり、BMW初のミッドシップとして登場したM1は、高い走行性能とスタイリッシュなデザインで非常に人気の車でもあります。 しかし、販売までには紆余曲折あり、そのスペックの高さとは裏腹に、十分な日の目を見ることができなかった悲運の車としても有名です。今回は、そんなBMW M1の魅力と中古市場についても解説していきましょう。 当初はランボルギーニとの共同開発だったM1 1970年代後半、レースでの結果が振るわず、ライバルのポルシェに遅れを取っていたBMWは、ミッドシップのスポーツカーM1の開発を決断します。 ミッドシップのノウハウがなかったBMWは、当時経営難に瀕していたランボルギーニと提携を結び、1976年に共同開発という形でプロジェクトに着手しました。しかし、開発計画中でもランボルギーニの経営悪化は進み、一任していたシャシー関連の開発が大幅に遅れたことからM1の計画は難航し、ランボルギーニとの提携を解消せざるを得なくなってしまいます。 その結果、ドイツのバウア社でシャシーを製造したあと、イタリアのイタルデザイン社でボディの組み立てとペイント。そして、最終的にドイツのBMWでサスペンションやブレーキ関連のパーツが組み上げられるという、なんとも非効率な生産体制となっていました。 ワンメイクレースの開催で起死回生を狙う 提携先を失ったBMWは、M1をなんとか1979年春の正式発表に間に合わせたものの、プロジェクト変更による生産コストの増加で、販売価格は計画よりも大幅に上昇。レース参戦のためのホモロゲーションを取得するには、年間400台を販売する必要がありましたが、それも難しくなってしまいます。 そこでBMWは苦肉の策として、F1グランプリの前座でワンメイクレースを自社開催し、最高出力を470psにアップしたグループ4仕様のM1プロカーでアピールの場を作ったのです。 悲運のスーパーカーと呼ばれた所以 ワンメイクレースの効果とFIA(国際自動車連名)の救済もあり、M1はホモロゲーションを取得し、見事1981年からレースへの参戦が許されました。 同年のニュルブルクリンク1000kmレースでは優勝を果たすなど好成績を収めますが、1982年にはM1が属する「グループ4」が終了。新たに「グループC」が設立され、M1は参戦の場を失ってしまいます。 こういったことから、M1は悲運のスーパーカーと呼ばれ、人々の記憶に強く刻まれました。 ポルシェに勝つためのミッドシップエンジン 活躍の場に恵まれなかったM1ですが、BMW M社初のミッドシップというだけでなく、打倒ポルシェを掲げたそのスペックは、まさに本気仕様と言えるものでした。 リアアクスル前部に縦置きされた3.5L直列6気筒DOHCエンジンは、最高出力で277ps/6500rpmを発生。最高時速は262km/h、0~100km/h加速は5.6秒をマークしました。また、レース用では470psのグループ4仕様、850psのグループ5仕様も存在し、まさにライバルのポルシェを圧倒せんと言わんばかりの大出力です。 ジウジアーロデザインによるスタイリッシュなFRPボディ M1の特筆すべき点はエンジンだけでなく、ボディのフレームや外板、さらにはそのデザインにも手を抜いていないところです。 ボディフレームは、当時のフォーミュラーカーと同様の鋼管を使用したスペースフレーム構造で、外板にFRPを採用することで、車重は1300kgと軽量。エクステリアデザインはイタリアの巨匠、ジョルジェット・ジウジアーロ率いるイタルデザインが担当しました。 くさび形のシャープなフォルムや、BMWではあまり見ないリトラクタブルヘッドライトなど、スーパーカー要素が満載のデザインは今でも高い人気を誇っています。 オークションでは数千万円の取引が当たり前 M1はオークションでも人気が高く、近年では566,000ドル(約6200万円)のプライスで落札されました。さらに、走行距離2,700kmの個体が798,900ユーロ(約1億300万円)で落札というさらに高額な事例があるほどで、M1の人気がとても高いことが伺えます。 M1はレースに参戦するためのホモロゲーションモデルということもあり、生産台数は市販車と競技仕様のものを含め、約450台しか生産されていません。そんな希少性の高いBMWのクラシックカーに、コレクターが食いつかないはずもなく、M1の価値は現在も高まり続けています。 BMW M1の中古車市場 そんなM1ですが、2021年9月時点の大手中古車サイトで相場を調べてみたところ、残念ながら国内での在庫は残っていないようでした。 上の項でも述べたとおりM1は生産数が少なく人気が高いので、ひとたび中古市場に上がるようなことがあれば、まずニュースサイトで取り上げられるのがお決まりです。 そして、M1は事故車の場合でもすぐに買い手がつき、高額で取引された事例もあるほど競争率が高く、国内の中古車サイトでの購入はまず不可能と言って良いでしょう。もし購入を考えているのであれば、数千万円に及ぶ資金と、M1が市場に上がった瞬間に即決できる決断力が必要です。 まとめ ポルシェに打ち勝つために、さまざまな問題を抱えつつも完成したM1は、見た目、性能ともに申し分なく、まさに誰もが望んだスーパーカーでした。 悲運のスーパーカーと呼ばれつつも、M1の研ぎ澄まされたDNAは現在も続くMシリーズに脈々と受け継がれています。 M1の人気の高さは市場価格にも現れていますが、そのプライスは決して大げさなものではなく、元祖BMW Mシリーズとしての正当な評価なのではないでしょうか。 [ライター/増田真吾]

未だ人気の衰えないFRハッチバッククーペ!日産180SXの魅力を解説
旧車の魅力 2022.01.20

未だ人気の衰えないFRハッチバッククーペ!日産180SXの魅力を解説

1989年のバブル絶頂期に登場したFRスポーツハッチバック、日産180SX。S13シルビアをベースとしつつ、リトラクタブルヘッドライトを採用したシャープな外観や、高出力のターボエンジンといった個性を持ち、当時の若者に絶大な人気を誇りました。 今回はそんなスタイリッシュかつスポーティな180SXの魅力と、中古市場について解説していきます。 スタイリッシュ&スポーティで若者を熱狂させた180SX 180SXは日産の小型ハッチバッククーペとして、1989年5月に発売されました。 1988年5月に登場したS13シルビアとは兄弟車であり、プラットフォームやエンジン、そのほか車体の多くの部分を共有。ファストバック形状のボディや角型2灯式のリトラクタブルヘッドライト、全グレードターボモデルのみのラインナップなど、S13シルビアと比べてスポーティ寄りのコンセプトとなっています。 最高出力175psの1.8リッター直4ターボエンジン(CA18DET型)や、Cd値0.30の空気抵抗係数を誇るボディラインといった走行性能の高さも相まって、若者を中心に人気が爆発。約11万5000台の販売台数のうち9割はMTモデルで、スポーツカーとして多くのファンを生みました。 180SXの3つのモデルについて解説 180SXは、1989年5月から1999年1月の約10年という長い期間で販売され、そのモデルサイクルのなかで大きく「前期」「中期」「後期」の3つに分類することができます。 本来の「180」エンジンを持つ前期型 1989年5月に発売開始された前期型は、最高出力175ps、1.8リッターターボのCA18DET型エンジンを搭載。180SXの「180」は排気量を現すものですが、中期型からは2.0リッターにアップするため、車名どおりのエンジンを搭載するのはこの前期型のみとなります。 グレードは「タイプⅠ」と「タイプⅡ」に分けられ、前者は簡易装備の廉価モデル。後者はオーディオやパワーウィンドウなどの装備を充実させた快適仕様です。前期型の特徴としては、フロントバンパーのナンバー上部にはダミーダクトがあり、シートはヘッドレスト一体型のものが使われている点が挙げられます。 モデルサイクル中もっとも人気の高かった中期型 1991年1月のマイナーチェンジで中期型となった180SXは、エンジンが2リッターターボのSR20DET型に一新。最高出力は前期型の175psから30psアップの205psとなりました。 外観はフロントバンパーのダミーダクトがなくなったことでシンプルな印象になったとともに、タイヤのサイズアップやホイールデザインも変更されています。グレードはデジタル表示式オートエアコンや、専用リアスポイラーなどを装備した最上級グレード「タイプIII」が追加されました。 エンジンの出力向上でさらにスポーティになった中期型は、走り屋の若者を中心に大ブレイク。販売期間中でもっとも生産台数が多くなったモデルでもあります。その分峠などでの事故が多くなり、修復歴ありの中古車がこの時期に一気に増えてしまいました。また、保険料が上昇してしまった車種としても有名です。 後期型ではアグレッシブなエクステリアに 1996年8月のマイナーチェンジから後期型に一新。フロントバンパーはダクトが追加され、疾走感のあるデザインになったとともに、リアコンビネーションランプもスカイラインを彷彿とさせる丸型に変更。そのほかにも大型リアスポイラーが装着されるなど、後期型はエクステリア面での変更が多くなっています。 新たなグレードとしては、2リッターの自然吸気(NA)SR20DE型エンジンを搭載した「タイプS」が追加されました。最高出力は140psと、当然ながらターボモデルほどの出力はなく、あまり世に出回っていませんが、NAエンジンを愛するコアな車ファンにはひそかに人気のグレードとなっています。 そして、この当時はすでにミニバンなどの実用車が人気を博しており、スポーツカー人気は低迷真っただ中。180SXも例外ではなく、この頃には通常の生産ラインに乗らず、ほぼ受注生産に近い状態で生産されていました。最終的には1999年1月発売のS15シルビアの登場と同時に販売終了となりました。 180SXの中古車市場 そんな180SXですが、スポーツカーとしての人気は衰えず、サーキットやドリフト界では未だ現役であり、それとともに市場価値も上昇しています。 2021年12月時点での大手中古車サイトでは、1997年式 11.7万km走行の後期型最上級グレード「タイプX」が452万円のプライスとなっていました。最安値でも1995年式 16.9万km走行の「タイプX」が130万円となっており、当時の同グレードの新車販売価格が約260万円であることを考えると、180SXの人気の高さがうかがえます。 一方、旧車王の買取価格は中期型、後期型ともに大きな違いはなく、廉価グレードの「タイプⅠ」や「タイプS」では~200万円。上級グレードの「タイプX」では~300万円の高価買取となっています。 まとめ FRハッチバックスポーツとして多くの若者を魅了した180SX。1993年10月のS14シルビア発売後もフルモデルチェンジはせず、そのままのS13シルビアベースで販売され続けたことが、180SXの何よりの人気の証といえます。 今や180SXは安価で購入できる車ではありませんが、リトラクタブルヘッドライトを備えたFRハッチバッククーペという時代離れしたそのフォルムは、必ずやコスト以上の満足感を与えてくれるでしょう。 [ライター/増田真吾]

42年間で生産台数380万台の国民車!シトロエン 2CVの魅力と中古車市場を解説
旧車の魅力 2022.01.17

42年間で生産台数380万台の国民車!シトロエン 2CVの魅力と中古車市場を解説

フランスの国民車と呼ばれるほどの人気を誇るシトロエン 2CVは、42年間と非常に長いモデルサイクルで販売されました。現在はレトロかつ、おしゃれなクラシックカーとして人気が高い2CVですが、もともとは農村の人々にむけて開発された車でもあったのです。 今回はクラシックでかっこいい2CVの意外な開発経緯と、現在の中古車市場についても解説していきます。 42年で380万台を生産したフランスの国民車 シトロエン 2CVは1948年の製造開始から生産終了の1990年までの42年間、一切モデルチェンジをせずに販売され続けました。モデル期間中の生産台数は387万2,583台にもなり、その凄まじい数字から2CVが当時いかに支持されていたかがうかがえます。 2CVのサイズは全長3,830mm×全幅1,480mm×全高1,600mmと、現在の軽自動車に近いもので、車体重量は495kgの超軽量級です。搭載されるエンジンは最高出力9psの375cc(初期型)空冷水平対向2気筒OHVを採用。足回りは「前後関連懸架」という、他車では見られない独特の方式で、悪路でもしなやかな乗り心地を発揮するシトロエンらしい優れた足を持っていました。 駆動方式は当時珍しいFFを採用することで車体後部にプロペラシャフトを通す必要がなく、そのぶん室内空間を広く確保。小さい車体でありながら、多くの荷物や人を乗せることができました。 広さと安さと走行性を追求したコスパの塊 そもそも2CVはなぜ開発されたのか、それは1935年当時のフランスで農村の人々の交通手段が十分ではなく、不便な暮らしを強いられていたことがきっかけでした。 その事態を重く見たシトロエンは、小型車の開発に着手。「室内に卵を乗せて運転しても、卵が割れない乗り心地」をテーマに掲げ、実用的でありながら整備や修理が難しくならないよう、構造は極力シンプルにまとめられています。 そして1948年、農民のための実用車として2CVが完成。価格は当時で593ポンド(日本円で約91,300円)と抑えつつ、室内は大人が4人座れるほど広く、まさに実用車といえる完成度でした。実用性を優先した外観デザインは当時賛否両論となったものの、低価格かつ広い室内空間、そして悪路をものともしない走行性能を持つ2CVは、当時の民衆に大ヒット。またたく間に販売台数は増えていき、見事フランスの国民車の称号を手にしたのです。   エンジン追加で無理やり4WDに? バンタイプや2ドアクーペなど、シャーシを流用した派生モデルが多いことでも有名な2CV。そのなかでも特にユニークなのが、4WD車の2CVサハラです。 当時、北アフリカ地区はフランスの農道以上に地形が荒く、FFの2CVでは適応できませんでした。そこでシトロエンは、2CVを北アフリカ地区に適応させるため、4WDモデルの開発に着手。1960年、苦悩の末に完成したのが、車体後部にもう1基エンジンを搭載したツインエンジンの2CVサハラです。 シトロエン 2CVサハラは3つの駆動に切り替え可能! シトロエン 2CVサハラは、リアエンジンの駆動をリアタイヤに割り当てることで4WD走行を可能にするという斬新な仕組みでした。 室内のレバーでFF、FR、4WDと駆動方式を切り替えることができるため一見革新的ですが、エンジンが2基となったことで燃料タンクと給油口も2つに増設。1度の給油で2回燃料を入れなければならないといった、不便な点も数多くありました。 使用用途が限定的な2CVサハラは、生産台数は694台と本家の2CVのように大ヒットとはならなかったものの、マニアの間では世にも珍しいツインエンジン車ということで、一目置かれた存在になっています。 シトロエン 2CVの中古車相場と買取価格 製造からすでに70年以上経過している2CVですが、中古車市場はいったいどうなっているのでしょうか。 2021年10月執筆時点で大手中古車サイトを調べてみたところ、日本国内の在庫は、排気量600ccの2CV6のみで在庫は11台残っていました。最安値は走行距離不明の1990年式の個体で99万9000円、最高額だと1987年式の走行距離20,000kmの個体で228万円のプライスがついています。 一方、旧車王では1989年式43,600kmの個体を30万円で買取した実績があり、30年以上経過したモデルと考えれば、かなり高額で売買されていることが分かります。 とは言え、2CVはそこまでプレミアがついているわけではなく、在庫も残っているので手に入れることの難易度はさほど高くありません。 もちろん、2CVは販売末期のモデルでも製造から30年以上経過しており、いつどこが急に故障するかも分からない状態です。購入を検討する際は車体価格にプラスして、その後の修理費のことも頭に入れておくことをおすすめします。 まとめ 当初は農村の人々の移動手段として誕生したシトロエン 2CVは、その実用性の高さは村だけに留まらず、フランス全土の人々に愛される国民車になりました。 実用性を重視したため当時は酷評もされた外観も、その個性的な曲面と平面のデザインはクラシックカー好きの間でも評価が高く、今でも多くのファンが存在します。空冷水平対向2気筒OHVエンジンや前後関連懸架という特殊な機構が多く、故障時の不安がついてまわる2CVですが、これだけの歴史を重ねた車に乗れる機会はそうそうありません。 コスト面での負担は覚悟したうえで、今あえて2CVを選択するカーライフというのも決して悪くはないでしょう。 [ライター/増田真吾]

ボルボと言えばこの形!生産終了後30年近く経っても色褪せない四角いフォルムVolvo 240
旧車の魅力 2022.01.12

ボルボと言えばこの形!生産終了後30年近く経っても色褪せない四角いフォルムVolvo 240

ボルボと言えば、四角いステーションワゴン。このイメージを定着させたモデルが、ボルボ 240シリーズです。角目のヘッドライト、直線で構成された角張ったデザインに、余計な装飾のない内装と、まさに質実剛健を体現したボルボ240。国産車にはない雰囲気と、後席を倒して完全なフルフラットになる実用性の高さから、1980年代後半から90年代にかけて仕事に使う実用車として人気を集めました。 カメラマン、デザイナー、サーファーといった、いわゆる「ナウい」と憧れられた人たちがこぞって乗った、ボルボ 240の魅力をご紹介します。 ボルボ史上最長の販売期間だったボルボ 240 ボルボは、1車種を比較的長い期間販売するメーカーですが、それでも、ほとんどの車種の販売期間は10年弱。そんなボルボの歴史上、ボルボ 240は1974年から1993年の19年間に渡って販売され、異例な長さの販売期間となりました。 先進的な安全設計によって、ボルボ車は安全性が高いというイメージを定着させたのも240シリーズの功績です。 累計販売台数は280万台に上るステーションワゴンの定番車種 ボルボ 240シリーズは、19年間に渡って累計2,862,053台を売り上げた人気車種です。販売開始当初は、2ドアセダンと4ドアセダン、ワゴンの3車種で構成されていました。 高い実用性と、1980年代終わりから1990年代にかけてのワゴンブームの後押しもあって、ステーションワゴンに人気が集まり、ボルボ  240もエステートと呼ばれる、ステーションワゴンモデルに人気が集中。「近所にあるちょっと大きくて四角いワゴン」という子供の頃の記憶をお持ちの方も多いのではないでしょうか。 基本設計は1960年代までさかのぼる ボルボ 240の基本設計は、前モデルである1966年の140のものを踏襲していました。つまり、1960年代の設計が1990年代まで新車として通用していたことになります。 なぜ、これだけ長く通用する基本設計だったのかという理由の1つが安全性です。ボルボ=安全性が高い。この方程式はすでに140で完成していて、240シリーズがヒットしたことによって世間に定着しました。 もっとも画期的だったと言えるのが、安全性を高めるために前後にクラッシャブルゾーンを設けたことです。1980年代初頭までの車の安全設計は、乗員保護のために壊れない、つまり衝突時の衝撃を跳ね返すという考え方で設計されていました。ボルボが1960年代の140シリーズで採用した、衝撃を吸収するという発想で乗員を守る設計は画期的だったのです。 衝撃を吸収するという設計は、その後多くの車で取り入れられ、現代の車では当たり前に採用されていますから、当時の設計がどれだけ画期的で先進性があったのかが分かります。 1985年までほぼ毎年進化し続けた ボルボ 240は、基本設計を30年近くに渡って変えなかった一方で、1974年の登場後も精力的に進化し続けました。この点も、ボルボ240シリーズが長く愛された理由の1つです。1985年に発表されたモデルまで、ほぼ毎年マイナーチェンジを繰り返し、その後も細かな変更点を積み重ねて、性能を高めていきました。 ボルボ 240モデル変遷 20年近くのロングセラーとなったボルボ 240ですが、その歴史は進化の歴史とも言えます。デザイン面では大きく印象を変えるほどの変更はなかったものの、ターボの搭載、足回りの強化といった走行性能の向上に加え、エアバッグやABSなどの安全装備の強化は販売終了間際まで続けられました。ボルボ 240の進化の歴史を一部抜粋してご紹介します。 1976年モデル 先代の140から受け継がれていたOHV式B20F型エンジンをSOHC式B21F型へと置き換えました。また、マニュアルトランスミッションも、耐久性を高めたオーバードライブ付きのものに換装されました。 1978年モデル この年に追加されたモデルで注目を集めたのは242GTです。固められたサスペンションとスポーティな内外装を持つモデルでした。 ステーションワゴンのイメージが強い240シリーズですが、実はレースの世界でも、その実力を発揮します。特に1980年代には、四角い車が速く走る様子から「空飛ぶレンガ(Flying brick)」と異名を付けられるほど速かったのです。 1979年モデル ボンネットの形状が、フラットなデザインから、「棺桶フード」と呼ばれ中央部に起伏があるデザインになりました。ボルボ  240のイメージとしては、こちらのデザインをイメージする方も多いでしょう。 1981年モデル エンジン出力を約30%向上させたターボエンジンが追加されます。また、ターボモデルは、ベロア調シート、パワーウィンドウ、エアコン、パワーミラーなど豪華な内装でした。 1985年以降 後継車である740が登場したことで、ターボモデルは全て740に移行。しかし、240は根強い人気から生産を続けます。ワゴンモデルの売上が特に伸びたのはこの頃からです。 一方で、1990年にエアバッグ、1991年にABSが装備されるなど、安全性に対する開発は販売終了間際まで続きました。 ボルボ 240を買う時に気をつけるべきこと ボルボ 240には、当然最新車種のような衝突被害軽減ブレーキや誤発進抑制装置といった先進の安全装備は付いていません。とは言え、そこは安全な車の代名詞であるボルボ。令和になった現代でも、重厚な安心感を得ながら運転することができます。 一方で、最終型の販売終了から既に30年近くが経過していて、初期型に至っては50年近く経過しているので、車の状態には細心の注意が必要です。 エンジンの状態や性能面での劣化はもちろん、特に問題となるのが錆びの発生状況は購入前に必ず確認しましょう。特に、亜鉛メッキがされる1987年頃以前のモデルは注意が必要です。 今後価格上昇の可能性大!ボルボ 240の中古車価格 ボルボ 240は、販売台数が多かったことから、現在でも中古車市場で入手可能です。原稿執筆時点(2021年10月)での掲載台数は50台前後、価格面も、60~100万円前後と、現実的な価格で販売されています。 また、四角くクラシカルな見た目で“ネオクラシカル”として最近注目を集め始めているボルボ 240。現役当時を知る40代以上だけでなく、若いユーザーからの人気も出始め、今後販売価格が値上がりする可能性の高い車種です。 [ライター/増田真吾]

90年代最強のホットハッチ!テンロクスポーツの至宝EG/EK型ホンダ シビック
旧車の魅力 2022.01.12

90年代最強のホットハッチ!テンロクスポーツの至宝EG/EK型ホンダ シビック

大衆車でありながら、モータースポーツファンからの人気も高いEG/EK型シビック。小排気量の1,600ccVTECエンジンはリッター100馬力を超える最高出力を発生し、ダブルウィッシュボーンサスペンションで小気味良い軽快なハンドリングは、今でも最強ホットハッチの一角と言っても過言ではありません。 同クラスの他車種を寄せ付けないどころか、上位クラスの車種とも互角に戦えるほどの高い戦闘力を誇ったEG/EK型シビックの魅力に迫ります。 運動性能重視の差別化された大衆車シビック ホンダ シビックは、1972年に初代が発表され、50年近く経った現在も11代目が新車として販売されています。これだけのロングランを実現したシビック成功の理由の1つは、大衆車でも車として基本的な運動性能を重視して開発され続けてきたことです。 さらに、VTECという画期的なエンジンの登場が、シビックの地位を不動のものに押し上げました。 ホンダ史上最長の販売期間を誇るシビック 1972年の誕生以来、ホンダの基幹車種として販売されているシビック。 3ドアハッチバックのイメージが強いシビックですが、初代の販売当初は意外なことに2ドアセダンから市場投入されました。(3ドアハッチバックは約1ヶ月遅れで発表)2ドアセダン、4ドアセダン、3ドアハッチバック、クーペなど、豊富なボディバリエーションもシビックの魅力です。 そんなシビックのライバルは、同じく大衆車の位置付けだったトヨタ カローラ。ホンダは価格と燃費、そして運動性能を重視して開発することで差別化を図りました。 EG/EK型の絶大な人気につながったVTEC シビックを語る上で外せないのがVTECエンジンです。最初の搭載車こそ、当時新発売だった2代目DA型インテグラに譲ったものの、約半年後には既に販売されていたEF型シビックに搭載されます。 VTECエンジンは、バルブタイミングとリフト量を切り替え、低回転域のトルクと、高回転域のパワーを両立した画期的なエンジンです。バルブタイミングとリフト量を同時に変化させる機構は当時世界初。カムシャフトに物理的に2種類のカムを設け、ロッカーアームを一定の回転数で切り替えることで、低回転用のローカムと高回転用のハイカムを切り替えます。 運動性能を重視して開発され続けていたシビックに、VTEC機構を持つB16A型エンジンを搭載したことでよりスポーツ色が強まり、その後のEG/EK型シビックの人気へとつながりました。 シビックの長い歴史の中でも突出していたEG/EK型シビック 50年近くも販売され続けていることからも分かるように、シビックはどの世代も安定した人気があります。その中でも、1990年代に販売されたEG/EK型シビックは突出した存在です。 リッター100馬力超えを実現したVTECエンジンを搭載したEG型、NSX、インテグラに続くタイプRモデルが投入されたEK型。いずれもシビックの歴史上大きな出来事で、直接のライバルだったカローラのスポーツモデル、レビン/トレノを圧倒しました。 スポーティなイメージを確立したEG型 5代目シビックのEG型は、先代となるEF型の基本設計をより高める形で1991年に登場しました。 EF型で投入されていたB16A型エンジンは、同型エンジン最高馬力となる170馬力を発生。また、低グレード車には、新たに低燃費志向のVTEC-E仕様エンジンも投入されました。さらに足回りは、EF型から採用されているダブルウィッシュボーンを継承しつつ、安定性を向上。ストローク不足によるピーキーな挙動を克服し、高いハンドリング性能を実現しました。 もともと、シビックはボディタイプの多さから幅広い層に支持されていました。そこへ、完成度の高いエンジやサスペンションを搭載し、同クラスでは性能面で頭1つ抜けた存在へと進化。スポーティなイメージを確立したことでより高い人気を獲得し、シビックとして2度目の日本カー・オブ・ザ・イヤーを受賞しました。 タイプRが初めて投入されたEK型 1995年に「ミラクルシビック」の通称で投入されたEK型シビック。最高グレードであるSiRについては、EG型で既に完成の域に達していたB16Aエンジンとダブルウィッシュボーンサスペンションをほぼそのまま受け継いでいます。 一方、主力モデルとなるVTiには、低燃費高出力を実現した3ステージVTECを搭載し、オートマチックトランスミッションとしてCVTを採用するなど、意欲的に新技術が取り入れられたモデルです。 EK型シビックの目玉は、1997年に投入されたタイプRです。最高出力を185馬力にまで引き上げたB16Bエンジンを搭載。さらに、サスペンションのチューニング、車体重量の軽量化、専用エアロパーツなど、タイプRの名にふさわしく、随所に高性能化が図られました。 また、レカロ製バケットシート、モモ製ステアリング(SRSエアバッグ付き)、チタン製のシフトノブなど装備面も充実しています。 そして、EG型シビックに続いて、EK型シビックは3度目となる日本カー・オブ・ザ・イヤーを受賞しました。 まとめ 最後にシビックの中古車相場について紹介します。 海外での90年代日本製スポーツカー人気の影響をシビックも少なからず受けており、年式の割には高い価格で取引されている印象です。ただ、EG型/EK型シビックは当時人気が高かったため、今でもそれなりに台数が残っていて、まだ非現実的な価格にまでは高騰していません。 状態によっては最上位グレードのSiRIIでも、100万円台後半で手に入るものもあります。(2021年12月現在)一方、400万円オーバーの価格をつけている中古車もあるので、今後の価格高騰には注意が必要です。買取価格も高騰していて、EG型のSiRIIで最高200万円、EK型のタイプRなら最高400万円の価格がつくこともあります。(旧車王2021年12月現在) 日本製スポーツカーがもっとも熱かった90年代を駆け抜けたEG/EK型シビック。車の挙動をダイレクトに感じ、軽量な車体を操る感覚は、現代では味わえないもの。 その価値感は、まさに現代の中古車取引価格に反映されており、手に入れたい方は少し急いだほうが良いかもしれません。 [ライター/増田真吾]

軽快すぎて事故多発!?ホンダ 初代・2代目CR-Xのスポーティな魅力と中古市場について解説
旧車の魅力 2022.01.07

軽快すぎて事故多発!?ホンダ 初代・2代目CR-Xのスポーティな魅力と中古市場について解説

ホンダのFFライトウェイトスポーツとして、車史に名を馳せるシビックやインテグラですが、1983年に登場したCR-Xは、それらのルーツともいえる存在です。CR-Xは居住空間を捨ててまで洗練させたフォルムと軽量ボディ、そして、高回転まで回るエンジンを搭載し、当時の若者たちを魅了し尽くしました。 今回は元祖FFライトウェイトスポーツ、CR-Xの初代と2代目について、中古市場も合わせて解説していきます。 スタイリッシュかつ斬新な装備も多かった初代CR-X ホンダ 初代CR-Xは、シビックの姉妹車として発売されていた「バラード」の派生スポーツクーペ「バラードスポーツCR-X」の名で、1983年7月に登場します。 スタイリングはセミリトラクタブルヘッドライトや、ラインを断ち切ったようなリアエンドの「カムテール」など、先進的な意匠を採用。ほかにも手動開閉式のルーフベンチレーションや電動アウタースライドサンルーフなど、個性的な装備が用意されていました。 初代CR-Xのエンジンは、それぞれ直4SOHCの1.3リッターのキャブレター仕様と、1.5リッターPGM-FI仕様をラインナップ。1984年11月には最高出力135psの直4DOHCエンジンを搭載した「Si」を追加し、860kgという軽量ボディも相まって、迫力のあるドライビングが味わえました。 2人乗りと割り切れば必要十分な室内 スポーツクーペとして洗練されたフォルムを持つ初代CR-Xですが、そのぶん室内空間に制限ができてしまい、決して快適な広さとはいえません。 4人乗りではありつつも、2,200mmという短いホイールベースや室内の高さが低いことで後部座席は非常に窮屈。ホンダ自らが「ワンマイルシート」と呼ぶほどで、後部座席は荷物置きとして使われることがほとんどでした。 「デュエットクルーザー」というキャッチコピーのとおり、初代CR-Xはデートカーとしても宣伝されていたので、後部スペースを重視しない若者を中心に、高い人気を得ることができました。 キープコンセプトながらよりシャープになった2代目CR-X 初代のヒットを受け、さらにスタイリッシュになった2代目CR-Xが登場したのは1987年9月。「バラード」の名が外れ「CR-X」と名称を改めた2代目は、先代よりも車体形状を長く低くしたことで、よりスポーティなフォルムに進化しました。 印象的だった「カムテール」を引き続き採用しつつも、先代で難点とされていた後方視界に対しては「エクストラウインドウ」を追加。リアガラス下部に横長のウィンドウを設置することで、後方視界が大幅に改善するとともに、CR-Xの個性的なエクステリアを保つことにも成功しました。 後部座席の快適性は初代モデルと変わりありませんが、より低くスポーティになった2代目CR-Xは初代以上の盛り上がりを見せ、多くのファンを生みます。 リッター100馬力を実現したVTECエンジンを搭載 2代目CR-Xの特徴的な点として、車体の軽さと高回転エンジンを活かした走行性能の高さが挙げられます。 エンジンは当初、1.5リッターSOHCと1.6リッターDOHCのみでしたが、1989年9月のマイナーチェンジで、1.6リッターのVTECエンジンを搭載した「SiR」グレードを追加しました。可変バルブタイミング・リフト機構である「VTEC」を搭載したB16A型エンジンは、最大出力160ps/7600rpmを発生。970kgの軽量ボディと160psを発生する高回転エンジンの組み合わせは、パワフルな加速と軽快なハンドリングを楽しめ、当時の走り屋の間で高い人気を博しました。 まさにライトウェイトスポーツたるスペックの2代目CR-Xですが、高回転ハイパワーなエンジンと短いホイールベースゆえ、コントロール性はまさにじゃじゃ馬。自損事故も多く発生し、自動車保険料が高くなってしまった車としても有名です。 初代&2代目CR-Xの中古市場 そんな2世代のホンダ CR-Xの中古市場はどうなっているのか、記事執筆時の2021年11月時点での大手中古車サイトを調べてみました。サイト上では初代が5台、2代目は18台掲載されていますが、やはり年式が古い車ということもあり、走行距離が10万kmを超えた個体がほとんどです。 初代は最安値だと、1984年式9.4万km走行の個体が89万円で、最高値は1985年式18.1万km走行のものが220万円となっていました。一方、2代目は最安値が1988年式10.3万km走行で120万円。最高値は1989年式の6.4万km走行のSiRグレードが319万円。SiRグレードは、今では稀有な存在となってしまった高回転型エンジンを搭載するコンパクトスポーツとして、その希少性ゆえ高額になりがちです。 全体的に見ても、当時人気の高かった2代目のSiRグレードが最も高い上昇率を見せており、車体の状態によってはかなりの高プライスが期待できるかもしれません。 まとめ 初代、2代目ともに軽快かつ、スタイリッシュなスポーツクーペとして、当時の若者を魅了したホンダ CR-X。ホンダの元祖FFライトウェイトスポーツともいえる初代、そして走ることの楽しさをさらに増した2代目と、その人気は北米にも及び、CR-Xの人気は拡大していきました。 その後は、3代目の「CR-Xデルソル」を最後にCR-Xの名は消滅。しかし、2010年2月には初代、2代目のDNAを汲んだ「CR-Z」が登場し、CR-Xのコンセプトは完全に断たれたわけではありません。 中古市場では多少値が張るものの、当時のFFライトウェイトスポーツを楽しみたいのであれば、CR-Xは買って損のない車です。 [ライター/増田真吾]

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