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「旧車」と聞いて、どんなクルマを思い浮かべるだろうか。筆者にとっての旧車は、スバル360や三菱500、コスモスポーツやハコスカGT-Rなど、昭和の素敵なクルマたちだった。 だが、今や旧車の定義は広い。昭和の名車たちはもちろん、90年代のスポーツカーまで「もう旧車なんですね」といわれるようになった。いわゆる「ネオクラ」や「ネオクラシックカー」などと呼ばれている時代のクルマたちだ。マツダ RX-7やホンダ シビック タイプRなどの現役時代を知っている世代からすれば、それほど古いクルマというわけではないのだが・・・。 ■ホンダS2000を20年所有してみて気づくこと ちなみに筆者も、S2000を約20年所有している。今では「古いクルマ」の仲間入りをしているが、乗っているうちにそうなってしまった。 そんな世代の筆者が「旧車趣味」と聞いてまず思い浮かべるのは、ガレージで一人黙々と整備をする姿だ。部品確保から維持まで、基本は自己責任。まさに“孤高の趣味”といえよう。 実際、他人とかぶらない車種を選び、希少性にこだわるオーナーは今も多い。旧車イベントに足を運ぶ理由も、まず「見てほしい」「知ってほしい」という思いが先に立つ。それは至極まっとうな動機だ。時間をかけて仕上げた愛車を見てもらいたい。理解されたいといった気持ちが原動力になっている。 しかし今、誰もがSNSや動画で発信できるようになり「見てほしい」「知ってほしい」という思いは、そのまま「つながり」へと変わっていく時代になったと思う。 「仲間の存在も、クルマを動かす機構の一部といえるかもしれない」 そんな気づきから、このコラムを書きはじめた。あなたの愛車はどうだろうか?誰かの言葉に助けられたことはなかっただろうか? これから旧車に乗ろうと思っているあなたは、すでに一人ではない。 ■“時を戻そう!”「いいね」もなかった頃の情報共有術 そもそもカーライフに「つながり」が生まれるようになったのは、いつからだったのか。記憶を巻き戻してみたい。 1990年代前半。旧車の情報は、SNSや動画で探せる時代ではなかった。雑誌やクチコミが頼り。部品の流用やトラブル事例など、マニアックな情報はそもそも出回っていなかった。 今のように「いいね」ボタンもなく、即座に反応が返ってくることもない時代。当時のオーナーたちは、HTMLを手打ちして個人ホームページをつくり、備忘録として整備記録やパーツ情報を書き残していた。それは、誰かの道しるべになればという祈りにも似た行為だった。 個人ホームページにも読者やファンはいたが、リアルタイムでのやりとりはまだ難しく、メールやBBS(掲示板)に書き込んで返事を待つしかなかった。 もちろん、当時もオーナーズクラブなどは存在していたが、普段はML(メーリングリスト)などで連絡を取り合い、オフラインミーティング、いわゆる「オフ会」の場においてリアルで集まれる限られたつながりが中心だった。輪の中に入れなかったオーナーたちにとって、個人のホームページは貴重な発信手段だった。そうしたなかで、ゆっくりとした出会いが生まれていたのだ。 当時、筆者はS2000に特化した「I love S2000」という個人サイトをチェックしていた。いわゆるS2000の老舗サイトで、整備記録やパーツレビュー、オーナーたちの個人ページへのリンク集など、交流の記録が丁寧に蓄積されていた。S2000が新車として販売されていた時期だが、そこにはすでに「旧車になっても乗り続けたい」という熱量があった。 「I love S2000」では、コミュニティによる濃密なつながりも生まれていた。当時のホンダ専門誌でも、コミュニティでつながったS2000オーナーたちによる座談会記事が組まれていたほどだ。当時の筆者はS2000さえ所有していなかったが「同じクルマの仲間は、こんなに濃くつながるのか」と強く感じたことを覚えている。 ■情報共有が絆になる時代へ 2000年代に入ると「つながり」は一気に加速した。 2004年にサービスを開始したSNS「mixi」は、コミュニティという概念を広め、同じ趣味の仲間と気軽に交流できる環境を生み出した。ブログ機能や相互フォロー関係「マイミク」とのやりとりから、オーナー同士のリアルなつながりが生まれた。 また、2000年代後半になると、カーライフSNS「みんカラ(みんなのカーライフ)」が台頭。車種別の整備記録やパーツレビューの機能が備わり、検索すれば誰かの経験談にたどりつける環境が整った。 SNSや動画が主流となった現代では、パーツレビューや整備情報などの知見が、驚くほどのスピードで共有されるようになった。誰もが「発信者」となれる時代だ。さらに、誰かの失敗談までも拡散・共感され、励ましの言葉が寄せられる。情報だけでなく気持ちも共有され、自然と対話が生まれていく。 たとえば筆者が所有するS2000では、経年劣化によって起こる「ブレーキペダルやクラッチペダルのストッパーパッド脱落」の情報が、SNSを通じて広く共有されている。 他車種でも起こるトラブルだが、S2000は登録から20年以上が経過した個体が多いため、近年とくに報告が増えている。ある日、フロアに割れたストッパーパッドが落ちていることに気がつく。劣化して黄ばんだ見た目から“ピーナッツ現象”と呼ばれるこの不具合も、誰かが発信してくれたことで対策方法や純正品番が広まり、今では多くのオーナーの共通認識になった。 あらためて考えてみると、まるで見えない仲間に守られているようだ。これは「仲間意識」とは少し違う。一体感や連帯感とともに実用的なつながりをもちつつ、「クルマと今を生きる意志」を分かち合っているのではないだろうか。これは、どんなクルマでもあると思う。 ■仲間づくりは“結果論”でもいい 旧車と生きるには、仲間がいたほうがいい。 ・絶版部品や最新情報を共有できる・整備や修理のノウハウを分かち合える・同じ価値観を持つ仲間の存在が、精神的な支えになる 知識や技術はいうまでもないが、なにより一歩を踏み出せる“きっかけ”をもたらしてくれる。クルマ仲間とは、情報共有を超えて「背中を押す存在」でもあると思わずにはいられない。 誰かの投稿に背中を押され、放置していた修理に再挑戦できた。パーツの入手法を知ってあきらめずに済んだ。あるいは、何気ない投稿が「まだ手放さなくていい」と思わせてくれたオーナーもいるかもしれない。 もし、誰かの発信がきっかけで問題を解決できたなら…ひとことでもいい。感謝の言葉を伝えてみてほしい。気持ちのつながりが、未来にもつながっていくのだから。 [ライター・カメラ / 野鶴美和]
「お気に入りのアイテム」は、その使い勝手や愛着など、さまざまな理由でいつまでも愛用していたいと考えるもの。しかし、年数の経過による経年劣化や使用頻度の高さからくる摩耗といった、故障するリスクは避けられない。 クルマは消耗品の塊ともいわれ、走らせれば走らせるほど摩耗することは避けられず、同時に乗らなくとも劣化は避けられない。現代および最近まで生産されたクルマであれば部品を取り寄せて交換するなり修理すれば(費用のことはさておき)たいていは直る。 問題は、生産終了から一定の期間を経た愛車のメンテナンスや故障したときだ。部品が手に入らないといったトラブルは珍しいことではなく、旧車およびネオクラシックカーオーナーであれば誰にでも起こりうる身近な問題でもある。今回は、部品の「製造廃止」「欠品」問題への対処方法について触れていく。 ■1.部品が製造廃止・欠品その意味とは? まず「製造廃止」とは、対象部品の在庫がなく、新たに再生産しないことを意味している。そして「欠品」とは、現在在庫はないが、条件が揃えば再生産する可能性があり、製造廃止よりはまだ希望が持てる。ただ、その条件はさまざまあり、一番多い条件として、バックオーダー数が集まらなければ再生産を行わないことが多い。1個や2個作るのでは採算が取れないため、ある程度まとまった数がそろった時点で生産をすることだ。 必要な部品がすぐに手に入らないため、修理が行えないことには変わりはない。 先日、筆者も気に入ったコンパクトデジカメの修理が行えないために、泣く泣く引退させるという悔しい思いをした。 10年以上愛用していたカメラだったが、ピントを合わせる際に異音とともに思い通りに動かなくなる症状が発生した。壊れたデジカメを修理に出そうとしたが、部品が製造廃止のために対応不可となっていた。このデジカメを筆者が直す技術は持ち合わせていないため、残念ながら引退となってしまった。 このような事態は、旧車およびネオクラシックカーオーナーにとっても他人事とはいえないだろう。問題なく走行することが可能な状態でも、もし車検適合に必要な部品が製造廃止で手に入らない状況となった場合、車検不適合となり廃車にせざるを得ないこともある。このことは文字どおりクルマにとって死活問題となる。 ■2.製造廃止部品、もう手に入らない? 実際に製造廃止となった部品を自動車メーカーから手に入れることは、ほぼ不可能といえる。現在各パーツセンターの在庫状況は、ネットワーク上で確認することができ、欲しい部品の所在を把握することができる。そのネットワーク上に「製造廃止」の文字があれば、手には入らないといえる。 たまにあるのは、整備工場が何かしらの理由で在庫として持っていたものが出てくるケースだが、余程のことがなければ巡り合わせはないといえる。 それ以外に頼りとなる入手経路をここで紹介しよう。 ●純正同等のサードパーティー製部品 純正部品は、自動車メーカー独自の適合性や品質を保証するための証として、自動車メーカーの刻印や専用の包装がされている。 しかし、その部品を製造しているのは部品メーカーであるため、サプライヤーが自社製品として販売をしていることもある。 また、規格で決まったサイズのものは汎用性が高いため、数社の部品メーカーからラインナップされていることもある。これらの部品は、整備工場を顧客とする自動車部品商をはじめネットショップでも取り扱われていることがある。適合など不安がある場合は、整備を依頼する整備工場に問い合わせると良いだろう。 ●ヤフオクやメリカリ、アップガレージ等をくまなくチェック 中古部品の場合は、流通量の多さからヤフオクやメルカリはもっとも有力な手段といえる。 店舗販売では、アップガレージといった中古パーツ店での購入という選択肢もある。商品によっては保証付きで販売されていることもある。 どの方法もパソコンだけではなく、スマホでちょっとしたスキマ時間を利用して検索をすることが可能だ。 特にヤフオクやメルカリの場合、出品者が元々乗っていたクルマの部品を出品していることもあり、出品リストを見れば同一車種の部品を多く出品しているケースもある。 中古パーツ店の場合は、買い取り時に商品のチェックを行っていることもあり、一部の商品は保証付きという安心感がある。販売しているのが近くの店舗ではない場合でも、自宅への配送も可能となっている。 ●オーナー同士のトレード(有償または無償で) 同一車種の場合、オーナー同士で流用情報の共有や直接部品のトレードを行うケースもある。 部品トレードの場合、純正パーツとカスタムパーツのトレードといったケースは割とある。 カスタム全盛期から乗っているオーナーは、一周回ってノーマルを再び味わいたいことも多い。しかし、カスタムを行った際にノーマルパーツを廃棄してしまったケースは多くある。ノーマルパーツも近年の旧車人気で高騰気味になっている。 対して近年購入したオーナーは、カスタムを行いたい欲があるが、パーツが流通していないため、カスタムを行えないケースは多い。 そのような場合、双方でパーツをトレードすることで外したパーツを無駄にはせず、win-winの関係といえる。 また、リフレッシュやレストアをするオーナーはストックしていたパーツに交換後、まだ使用することができるが、不要となったパーツを相場より安くオーナー間で譲り合うこともある。 ■3.自動車メーカーがヘリテージパーツを展開 近年、旧車オーナーにとっては嬉しい動きが起きている。 自動車メーカーが、一度製造廃止にした部品を「ヘリテージパーツ」として改めて再生産を行うことだ。対象となっている車種の多くは、ネオヒストリックカーと呼ばれている90年代初頭モデルだ。 車種、年式、グレードなどは限られているが、一度製造廃止となり入手が困難になった部品を手に入れられることは、重要なポイントといえる。特に専用部品や車検適合に重要となる部品が再生産されることで、多くの現存車両が今後も走り続けられる可能性が高まったことを意味する。 今までの国内自動車メーカーは、その多くが残念ながら過去のモデルについて、プロモーション活動以外ではあまり積極的に話題にすることがなかった。 しかし、現在世界的にも知名度が上がり人気が高まっている点、今も大切に乗っているオーナーが多くいることをメーカーも認識しているのだろう。そのために始まった新たなムーブメントといえる活動である。 ■4.まとめ 愛車とともに走り続けるためには、日ごろのメンテナンスや故障した際の対処が重要となる。しかし、そのためには部品の供給状況や入手性がキーポイントといえる。 もし、愛車の純正部品が「製造廃止」になった場合、今回紹介した方法を参考にしてもらえれば幸いだ。簡単にはいかないケースも多々あると思うが、愛車と過ごす時間が続くことと一台でも多くのクルマが今後も活躍できることを切に願っている。 [画像/Adobe Stock、ライター・カメラ/お杉]
1990年代から2000年代前半にかけて生産された「ネオクラシック」と呼ばれるクルマが人気だ。最近は若い世代のオーナーも増えつつある。幼い頃から、漫画やレース映像などで親しんでいたなどの原体験をもつオーナーが多いように感じられる。 いっぽうで、実際クルマを手に入れても「整備費用が払えずに手放した」とか「どこに相談すればいいのか分からなかった」という声も少なくない。 困難を乗り越えているオーナーの多くは、共通点を持っている。それは「主治医(かかりつけのショップや整備士)」との関係を築いていることだ。 愛車の変化に気づいてくれる。予防整備を提案してくれる。まるで主治医のような存在が、旧車の維持を可能にしてくれる。 今回は、旧車ライフに欠かせない主治医のような整備士が、なぜ重要なのかをあらためて考えてみたい。 ■1.履歴と経験にひもづいた診断ができる 旧車のトラブルは、突然発生するように見えて必ず予兆がある。これに気づけるか(事前に対応できるか)どうかだ。 異音や振動、匂いなどの違和感を見逃さず、先手を打つことが致命的なトラブルを回避できるかどうかの分かれ目になるといってもいいだろう。 そのためには、愛車の整備履歴を把握し、クセや傾向を読み取れる主治医の力が欠かせない。履歴と経験がひもづいたメンテナンスができる主治医の存在は、大きな意味を持つ。スポット対応の場合、それは難しいだろう。 例えばあるオーナーの話だが、愛車の水温計がいつもよりも高めの数値を示していることに主治医が気づいた。すぐに「クーリングファンが動いていないかもしれない」と判断。確認すると案の定、左右のファンのうち片方が停止していたそうだ。 こんな例も聞いたことがある。エンジンのかかりにくさを相談した際には「このクルマは○○(同メーカー別車種)と症状が似ている」と、経験と車種知識をもとに原因を的中させたという。 豊かな経験をもつ整備士は、クルマの過去と未来を見ることができる。 ■2.トラブルを突破する実行力を持っている 旧車ライフには、ある種の覚悟が求められる。ときに「乗り続けることが無理かもしれない」と思う瞬間が訪れる。 例えば部品が出ない、保険の見積もりが通らない。また、原因不明の不具合に行き詰まることもある。「詰んだ…」と思うような状況でも、経験とネットワークを持った整備士がいれば活路を見出せることもある。 あるオーナーは、廃番となった部品を製作してもらったことで、愛車を延命できたという。 こんな例もある。事故の際に部品代の見積もりが出せないことから、保険会社とのやりとりが滞ってしまった。そこで主治医が部品の実勢価格や入手ルートを調べ、根拠となる明細を提示したことで解決に結びついたそうだ。 こうした対応が可能なのは、日頃から「何が入手できて何が代用できるか」という部品の供給状況を把握しているからだ。 このように「修理できるかどうか」ではなく「どうすれば修理できるか」を一緒に探してくれる安心感が、愛車の維持にもつながる。 ■3.不安な時間に寄り添ってくれる 繰り返しになるが、旧車は壊れる。 そして修理には時間がかかる。部品待ち、優先順位の都合など避けては通れない。 それでも、何の音沙汰もないまま何週間も待つのと「今こういう状態です」「◯日から着手します」という進捗報告、必要なら写真や動画を添えてくれるのとでは、オーナーの心理的負担がまるで違う。 あなたの信頼する主治医を思い浮かべてほしい。豊かな経験と技術はもちろん、オーナーの気持ちも汲んでくれているように感じられないだろうか。 何が起きているかを共有しながら、まるで一緒に乗り越えているような感覚は、旧車を維持していくうえで心の支えになる。 ■4.オーナーに合った整備を提案してくれる 旧車の整備に正解はない。同じ症状でも交換部品の範囲や修理の方法、費用や時間は異なってくる。 だからこそクルマの状態、オーナーの予算、理想とするコンディションを把握したうえで、いわゆるオーダーメイドな整備計画を提案してくれる主治医は頼りになる。 一気にやるのか、段階を分けるのか。新品を使うのか、中古や代替品を利用するのか。主治医なら「この使い方ならここはまだいける」「ここをやるなら次はここが弱る」といった見立てができる。 限られた予算でやりくりする若い世代のオーナーや、日常使いしているオーナーにとっては心強い。 ■5.主治医との関係そのものが愛車維持のモチベーションにつながる 技術はもちろんだが、信頼できる主治医との関係性も、カーライフを支える大きな要素になることは間違いないだろう。整備方針を一緒に考えられる関係ができると、モチベーションも揺らぎにくくなる。 しかし「一見さんお断り」としているショップは少なくない。 それは、作業効率やトラブルの回避といった理由や、クルマとオーナーを長く見守っていきたいという姿勢の表れでもある。 そんな主治医と出会いたいが、実際に接してみなければわからない。最初から大きな修理を依頼するのではなく、オイル交換や軽整備などからはじめて、整備士の姿勢や考え方にふれたい。 言葉のキャッチボールを重ねながら少しずつ信頼を築いていくことが、長く付き合える主治医との出会いにもつながる。 ■まとめ:主治医との信頼関係を築く際にはオーナーの姿勢も問われる 5つの理由からもわかるように、主治医の重要性は多くのオーナーが実感していることだろう。加えて、整備士との信頼関係を築くには、オーナーの姿勢も問われていることを忘れないようにしたい。 たしかに、ようやく手に入れた1台に思いが強くなるのは自然なことだ。メンテナンスに対して意見したくなるのも、真剣さのあらわれかもしれない。 だが、主張を通そうとしたりネットで調べた知識や持論をぶつけたりするなど、疑うような態度で接してしまうと、主治医との信頼関係は築きにくい。 「謙虚になる」とは黙って従うことではない。希望や疑問は伝え、委ねるべきところは任せよう。そのバランスが主治医との信頼関係を育み、カーライフの土台となるのではないだろうか。 [画像・日産,Adobe Stock、ライター・カメラ / 野鶴美和]
日産を代表するスポーツカーの1つでもあるフェアレディZは、半世紀以上の歴史をもち、世界中の車好きから愛されているモデルです。今回は、フェアレディZの維持費がどのくらいかかるのか、その内訳や費用の目安とともに解説します。 ▼モデル別の維持費はこちらで解説しています日産 フェアレディZ(Z33)の維持費は高い?内訳といくらかかるかを解説日産 フェアレディZ(Z34)の維持費は高い?内訳といくらかかるかを解説 フェアレディZの特徴 日産 フェアレディZは、世界で180万台以上販売されている、半世紀以上の歴史をもつスポーツカーです。 1969年に登場した初代フェアレディZ(S30)以降、世界トップレベルの走行性能、走りのために鍛え上げられたしなやかでダイナミックなデザインで世界中を魅了し、真のスポーツカーとして評価されてきました。 フェアレディZは、ダットサンフェアレディシリーズの後継として1969年10月に初代S30型がデビュー。本格スポーツカーとして、これまでにないバリュー・フォー・マネーを実現したことで北米市場を中心に大ヒットしました。以降、S130型、Z31型、Z32型、Z33型、Z34型、RZ34型と歴史を重ねてきました。 また、モータースポーツのベース車輌として使われたり、ドラマに登場したり、パトカーとして採用されたりするなど、さまざまな場面で活躍しています。 フェアレディZの維持費の内訳 フェアレディZを維持するためには、どの程度の費用がかかるのでしょうか。一般的な印象どおり維持が大変なスポーツカーなのか、それとも低コストで維持できるのかを知るために、維持費の内訳をシミュレーションしてみましょう。 燃料代 燃料代は、世代やグレードによって異なります。 フェアレディZの燃費は、平均すると9km/L前後。1年間に1万キロ走行する場合、燃料は1,111Lほど必要です。フェアレディZはハイオク限定車のため、ハイオクガソリンの単価が1Lあたり180円だと、燃料代は約20万円かかります。 なお、燃料代は世代やグレードだけでなく、走り方によっても異なるため、参考程度に考えてください。 自動車税 自動車税は、エンジン排気量によって税額が決まる税金です。 フェアレディZのエンジン排気量は、2.0L〜3.7Lと世代やグレードによって異なります。ここでは、エンジン排気量別の自動車税額を一覧で紹介します。 【エンジン排気量別自動車税額(初年度登録から13年以上経過した場合)】・1.5L超〜2.0L以下:4万5,400円・2.0L超〜2.5L以下:5万1,700円・2.5L超〜3.0L以下:5万8,600円・3.0L超〜3.5L以下:6万6,700円・3.5L超〜4.0L以下:7万6,400円 初年度登録から13年以上経過すると重課の対象となります。上記の一覧は重課後の税額です。古い年式のフェアレディZを購入するときの参考にしてみてください。 任意保険 任意保険の保険料を大手ネット保険で見積もりしてみましょう。条件は次のとおりです。 【条件】年齢:30歳等級:6等級使用目的:通勤・通学運転者:本人限定 上記の条件で各世代ごとに見積もりしたところ、自動車保険料は1年間で約5万〜15万円でした。年式の古いモデルだと車輌保険が付帯されない場合があります。世代やグレード、年式が異なる場合は、保険料も異なるため、参考程度に考えてください。 車検 車検の費用をシミュレーションしてみましょう。ここでは、ディーラーで車検を受けた場合を想定してシミュレーションします。 【ディーラー車検の場合】自賠責保険:1万7,650円(24ヶ月)※2023年時点、離島以外の地域の場合自動車重量税:2万5,200〜5万400円(24ヶ月)印紙代:1,800円車検基本料金:約7万円(点検・検査・代行費用)合計:約11万4,650〜13万9,850円 ※車検基本料金は内容や整備工場などにより変動します フェアレディZは長い歴史をもつモデルのため、世代によっては初年度登録から13年もしくは18年経過しており、重量税が重課される場合があります。車検にかかる費用は、世代やグレード、年式などによって異なるため注意してください。また、この車検費用は車検にかかる必要最低限の費用で、部品交換や整備・調整をした場合は追加費用がかかります。 メンテナンス費用 フェアレディZのメンテナンスには、次の項目があります。 ・洗車・ワイパーゴム交換・ウォッシャー液・冷却水の補充・エアコンフィルターの交換・ヘッドライトのバルブ交換・エンジンオイル交換・オイルフィルター交換・ブレーキオイル交換・エアクリーナー交換 など 年間10万円程度のメンテナンス費用がかかるでしょう。また、タイヤ交換をしたときは、10万円〜20万円程度の費用が追加で必要です。 フェアレディZの年間維持費はいくら? フェアレディZの維持費をまとめると次のようになります。 ・燃料代:20万円・自動車税:4万5,400〜7万6,400円・任意保険:約5万〜15万円・メンテナンス費:約10万〜30万円・車検:約5万7,325〜6万9,925円(2年毎のため約11万4,650〜13万9,850円の半額分)合計:約45万2,725円〜79万6,325円 ここでの試算の合計は、車を維持するためにかかる最低限の費用となっています。ローンで車を買ったり、駐車場を契約したりした場合、別途費用がかかるため注意してください。また、世代やグレードなどが異なる場合は年間維持費も異なります。 フェアレディZの維持費が高いと思った時の対処法 フェアレディZの維持費が高いと感じたときは、フェアレディZを売却して新しい車への乗り換えを検討するとよいでしょう。 フェアレディZは、歴史が長く、車好きから高く評価されているモデルであるため、高価買取に期待できます。 まとめ 世界中で愛され続けているフェアレディZは、日本を代表するスポーツカーの1つです。フェアレディZを維持し続けるためには多額の費用がかかるため、経済的な余裕がなければ維持は難しいでしょう。 もし、フェアレディZに乗る機会が減っていたり、家庭環境が変化したり、維持するのが大変と感じたりしたときは、フェアレディZの価値を正しく評価できる買取店に売却し、新しい車に乗り換えるのも検討するとよいでしょう。
トヨタの高性能スポーツカーとして現在でも高い人気を誇るA80型スープラ。今回は、人気のあるA80型スープラの維持費がどのくらいかかるのか解説します。A80型スープラを所有するかどうか迷っているときや、維持費を踏まえて売却を検討する際の参考にしてみてください。 A80型スープラの特徴 A80型スープラは、1993年に販売を開始した2ドアのスポーツカーです。直線基調のA70型スープラからデザインや走行性能が変更・進化しました。 デザインは、角を落とした丸みのあるスタイリングに変更されました。エンジンは、直列6気筒3.0Lに一本化されています。エンジンのバリエーションは、自然吸気エンジンとツインターボエンジンの2種類です。トランスミッションは、MT(自然吸気エンジンは5速MT、ツインターボエンジンは6速MT)とATをラインナップしています。 A80型スープラは2002年まで販売され、2019年の新型スープラが登場するまで「スープラ」の名が途絶えることとなりました。また、A80型スープラは、2019年に新型が販売されてからも高い人気を維持し続けています。 A80型スープラ維持費の内訳 A80型スープラの維持には、燃料代、自動車税、車検費用など、さまざまな費用がかかります。ここからは、A80型スープラを所有する際にかかる維持費の内訳を解説します。 燃料代 A80型スープラの燃費は、10・15モードで7.6km/L〜8.9km/L(1993年モデル)となっています。 1ヶ月に1,000km走行するとした場合、燃料は112L〜131L必要です。1Lあたりのガソリン単価が175円の場合、1ヶ月あたりの燃料代は1万9,600円〜2万2,925円。1年に換算すると23万5,200円〜27万5,100円となります。 自動車税 自動車税は、エンジン排気量によって税額が変わります。A80型スープラはエンジン排気量が3.0Lで、初年度登録から13年以上が経過している場合、税額が5万8,600円となります。 任意保険 A80型スープラの自動車保険料についてみてみましょう。ここでは次の条件で自動車保険料を算出します。 【条件】年齢:30歳等級:6等級使用目的:日常・レジャー運転者:本人限定 【補償内容】対人賠償(1名につき):無制限対物賠償(1事故につき):無制限対物超過特約(相手自動車1台につき50万円まで):あり人身傷害:あり(車内のみ補償)人身傷害(保険金額/1名につき):5,000万円車輌保険:なし 上記の条件でシミュレーションしたところ、自動車保険料は年間約6万1,000円でした。ただし、この保険料には車輌保険が含まれていません。そのため、車輌にトラブルがあったときに保険が適用できない点に注意しなければなりません。 車検 車検費用についてみていきましょう。 【ディーラー車検の場合】 自賠責保険:1万7,650円(24ヶ月)※2023年時点の保険料自動車重量税:3万7,800円(24ヶ月)※車輌重量1.5tの場合、初年度登録から18年以上経過した場合の税額で算出印紙代:1,800円車検基本料金:6万円(点検・検査・代行費用)合計:11万7,250円 ※車検基本料金は内容や整備工場などにより変動します A80型スープラは、初年度登録から18年以上経過しているため重課の対象となります。そのため、重量税の税額が高くなっています。 メンテナンス費用 A80型スープラのメンテナンスには、次のような項目があります。 ・洗車・ワイパーゴム交換・ウォッシャー液・冷却水の補充・エアコンフィルターの交換・ヘッドライトのバルブ交換・エンジンオイル交換・オイルフィルター交換・ブレーキオイル交換・エアクリーナー交換など メンテナンスには、年間10万円程度の費用がかかります。また、タイヤ交換をしたときは、追加で10万〜20万円程度かかると考えておくとよいでしょう。 A80型スープラの年間維持費はいくら? A80型スープラの年間維持費は以下のとおりです。 ・ガソリン代:23万5,200円〜27万5,100円・自動車税:5万8,600円・任意保険:6万1,000円・メンテナンス費:10万円〜20万円・車検:5万8,625円(2年毎のため11万7,250円の半額分)合計:51万3,425円〜65万3,325円 上記は、車を維持するために1年でかかる最低限の費用です。車をローンで購入した場合や月極駐車場を契約する場合は、別途ローンの支払いや駐車場代がかかります。 A80型スープラの維持費が高いと思った時の対処法 A80型スープラの維持費は、年間50万円ほどかかることがわかりました。また、A80型スープラは年式が新しいスポーツカーよりメンテナンス費用がかかる可能性が高いため、予定外の費用がかかることがあるかもしれません。 そのため、維持するのが大変だと感じる方もいるのではないでしょうか。A80型スープラの維持が大変だと感じたときは、手放すことも検討するとよいでしょう。 直列6気筒ツインターボエンジンを搭載する国産スポーツカーのA80型スープラは、生産が終了した現在でも高い人気を誇っています。そのため、高額で買い取ってもらえる可能性があります。 もし、A80型スープラを少しでも高く売りたいのであれば、旧車の査定や買取を専門としている旧車王がおすすめです。A80型スープラの売却をお考えの際は、ぜひ旧車王にご相談ください。
筆者の愛車はホンダ S2000(AP1)。 1999年式の「初期型」だ。約16年前に中古で手に入れた。 16年という年月を過ごしているうちに、S2000は「旧車」となったようだ。 S2000を含む80〜90年代に生産されたクルマたちはいつしか「ネオクラシック」と呼ばれ、中古市場も高騰中と聞く。 しかし正直なところ、現在のS2000の立ち位置など個人的にはどうでも良い。 ほぼ毎日乗り、人生の節目はもちろん、苦しい場面も一緒にくぐり抜けてきた存在。 S2000が語られるときは「唯一無二」と表現されるが、自分にとってはこの個体こそが唯一無二だと思っている。 ▲エンジン載せ換え以降25万キロ以上走行している(実走行は31万キロ)筆者のS2000。外内装ともくたびれてきた 筆者のS2000は、2012年に中古エンジン(約8万キロ)に載せ換えている。 それから約10年が経過。 エンジンも25万キロを越え、車体は31万キロを越えた。 2021年の秋頃からはエンジンが掛かりにくくなる症状も。 「本当に良くないことが起こり始めている。早く対処しなければ二度と乗れなくなるかもしれない」 そう危機感を抱いていたところ、友人の紹介でS2000のリフレッシュ&チューニングを数多く手がける広島県福山市の「ComeTec」にご縁があり、エンジンのオーバーホールが決まった。 今回は愛車の修理レポートとともに「S2000との付き合い方」を取材。 “旧車”となったS2000とのこれからの付き合い方について「ComeTec」の代表・熊谷展宏さんにお話を伺った。 ▲AP1に搭載される直列4気筒DOHCエンジン「F20C」の特徴的なカムシャフト。高回転エンジンのため慴動部が多く複雑な構造[写真提供/ComeTec] ■S2000のスペシャリスト「ComeTec」 今回、お世話になった「ComeTec」。 代表の熊谷展宏さんは、ディーラー勤務を経てホンダ系のチューニングショップへ。 2010年に「ComeTec」を設立。 自動車メディアでは「ホンダ車のスペシャリスト」として登場するイメージが強いが、手掛ける車種は幅広い。 熊谷さん自身がMINIのオーナーだったこともあり、MINIやAbarthなどの輸入モデルからGRヤリス、86/BRZといった近年の国産モデルまでさまざま。 ショップを経営する傍らスーパー耐久のメカニックとしても活動するなど、豊かな経験と実績を誇る。 なかでもS2000は特別な存在で、リスペクトしているとのこと。 ◆熊谷さん:20年も前によくぞ出したなと思います。ホンダはこの先、FR車を出すことはないでしょう。S2000は特別な存在だと思いますし、ライフワークとして携わりたいですね。「あと20年以上元気に走る」をモットーに取り組んでいます。 ●デモカーはサーキットマシンとして22万キロの個体をリフレッシュ! ▲塗り替えられたマツダのボディカラー「セラミックメタリック」が、S2000のもつ凛とした美しさを一層引き立てる[写真提供/ComeTec] デモカーは22万キロ走行個体を譲り受け、サーキットマシンに生まれ変わらせている。 リフレッシュとチューニング、耐久性も高められている。 「車体がしっかりしていれば、一級のマシンになります」と熊谷さん。 ◆熊谷さん:デモカーはサーキット専用ですが、最も力を入れているのは、できるだけ新車に近づけるリフレッシュメニューです。お客様が手に入れた当時の気持ちになっていただけるようにベストを尽くします! もちろん、お客様のサーキットと普段乗りの割合によって、リフレッシュ&チューニングメニューも調整可能です。基本のメニュー設定は「エンジン、トランスミッション」「車体、足回り」「外内装」の3パートあり、いずれかを軸にプランを立てていきます。サーキット仕様をご希望の場合は、レストアしながらモディファイできますよ。 ▲ベース車両は22万キロ以上走行したAP1の初期型[写真提供/ComeTec] ▲エンジンはオーバーホールの際に戸田レーシングのキャパシティアップ2350キットを導入[写真提供/ComeTec] ▲骨組みまで分解。ボディや足回りにはAP2補強パーツも加工流用されている[写真提供/ComeTec] ▲車体、足回り、エンジンが完成した後はレースに出場[写真提供/ComeTec] ▲どんなサーキットでも扱いやすく、耐久性も高められている[写真提供/ComeTec] ■あらためて愛車の状態を目の当たりに ▲カーボンが堆積してしまったエンジン内部[写真提供/ComeTec] さて、筆者の愛車。 エンジンの内部を確認して言葉を失ってしまった。 真っ黒に汚れたエンジン。 「愛車は大切な存在」などと、SNSで発言した言葉がみるみる霞んでいった……。 エンジンを分解した直後の状態を熊谷さんに伺った。 ◆熊谷さん:カーボンの堆積が、これまで見た中で最もひどいレベルでした。原因はいくつかの要因がからみ合っていると思われます。8万キロの中古エンジンに載せ換えているそうですが、このエンジンが載せ換えられるまでにどんな乗り方やオイル管理をされていたかも影響していると思います。 ーーこのエンジンが載せ換えられるまでに、どんな乗り方がされていたと推測されますか? ◆熊谷さん:近距離移動の「ちょい乗り」が多かったり、渋滞によるストップ&ゴーが頻繁だったりするシビアコンディションが多かったと推測されます。 「ちょい乗り」やストップ&ゴーの繰り返しは、低回転走行により理想的な燃焼がしにくくなり、カーボン発生の原因になります。 さらにエンジンオイルの温度が低いままだと、性能が発揮できずエンジンの消耗が進み、ブローバイガスが増えて、これもカーボン発生の原因になります。 この堆積したカーボンがピストン、シリンダー、バルブシールの間に入り込んでしまうことで燃焼が悪くなり、さらにカーボンが溜まるという悪循環を生みます。 ーーオイル管理は、適切なサイクルで行われていなかったということでしょうか? ◆熊谷さん:交換時期というよりも、S2000に適したオイルを使用していなかったことでエンジンに負担がかかっていた可能性があります。 エンジンオイルにはポリマー(添加剤)が入っていますが、オイルが熱して冷えたり水分を含んだりを繰り返すうちに、ポリマーが分解されて泥状の沈殿物、いわゆるスラッジになります。 質の良くないエンジンオイルだと、スラッジが出やすくなります。さらにスラッジがオイルと一緒に回ってしまうと、仮にその後良いオイルを使ったとしても性能は落ちます。ピストンリングに堆積すると燃焼室にも入り込み、オイル上がりを起こします。 筆者の1基目のエンジンが17万キロを迎えた頃、当時お世話になっていた主治医からオーバーホールの提案があった。が、当時の筆者は予算の事情もあり、結局中古エンジンへの交換を選ぶ。そして主治医に無理を言って探していただいたのが、現在のエンジンだ。 ▲筆者のエンジンはオイル上がりを起こし、ブローバイガスが増えていたはずだ[写真提供/ComeTec] ーー最初に「いくつかの要因」とおっしゃっていましたが、他にはどんなダメージが考えられますか? ◆熊谷さん:S2000が高回転型エンジンであるがゆえのダメージですね。一般的な自動車よりも1000回転以上多いS2000の圧縮比は11.7対1と高いため、シリンダーやピストンに負担が掛かります。元々強くつくられているものの、通常より消耗は早く、劣化にともなって出力も低下していきます。 ▲摩耗したピストン[写真提供/ComeTec] ▲シリンダーも摩耗していた[写真提供/ComeTec] ●あらゆる部品を交換 さらにエンジン周りのあらゆるパーツが、経年劣化によって交換レベルに達していた。 乗り始めてまもなく交換したラジエーターも樹脂部分がボロボロに。 エンジンマウント、ミッションマウント、ノックセンサー、オルタネーター、O2センサー、サーモスタット、オイルポンプ、ウォーターポンプなどが交換となった。 エンジンハーネスは熱で損傷。 始動不良の原因にもなっている可能性があるという。 ありがたいことに、ストック部品を使って新調することになった。 エンジンハーネスは今後、供給が危ういとされる部品のひとつでもある。 「ストックしておくのがおすすめです」と熊谷さん。 ●ヒーターバルブの破損 ▲ヒーターバルブが割れている。いつ水漏れしてオーバーヒートしてもおかしくない状態だった[写真提供/ComeTec] ●アクセルワイヤーの劣化 ▲ケーブルの表面被覆材が剥がれ、要交換レベル。そしてアクセルワイヤーはすでに廃盤。生産はもちろんメーカーも在庫はないため中古品で対応[写真提供/ComeTec] ●エンジンマウントの破損 ▲ちぎれたエンジンマウント。かなりの振動があったはずだが、毎日乗っていると劣化のサインにも気づきにくくなってしまうそう。今後は定期的なメンテナンスを心がけたい[写真提供/ComeTec] ■油膜の厚い高性能なオイルと「適度なドライブ」でエンジンを保護 S2000といえば、エンジンオイルはどんなものを使うかがよく話題になる。熊谷さんに「良いエンジンオイル」について尋ねてみた。 ◆熊谷さん:S2000にとっての良いエンジンオイルとは「エンジンを保護するオイル」です。油膜の厚い高性能なオイルがおすすめです。 エンジンオイルは冷却、潤滑、汚れを取るなど、いくつもの役割をもちます。それがひとつでも欠けると、エンジンにダメージを負わせてしまいます。S2000のエンジンは高回転型で慴動部が多く、オイルに要求するレベルも高いだけに、役割がひとつ欠けたときのダメージも大きくなります。 当社では、24時間耐久レースで使われているものと同じエンジンオイルをおすすめしています。Moty'sのM111(5W-40)は、強力な油膜でピストンの摩耗を防ぎ、気密性も向上するのでブローバイガスの排出量を減少させてくれます。さらに洗浄性能の高さも大きな特徴です。このオイルを使ってレースでトラブルなく完走できているので、安心して使えますよ。 ーーオイル管理とともに心がけるべきことがありますか? ◆熊谷さん:1度のドライブはできるだけ長距離を走り、ときどきエンジンを回してあげてください。また、カーボンを分解してくれるガソリン添加剤での定期的なクリーニングがおすすめです。そして何よりも愛情をもってS2000に接してあげてください。 ●よみがえるF20C 筆者のくたびれたエンジンは新品に近づいた。 バルブシートカットを行い、バルブの気密性を改善。摩耗したピストンは新品に交換。シリンダーヘッドとブロックは面研して修正された。 ▲シリンダーヘッドはダミーヘッドボーリング、ホーニングされている[写真提供/ComeTec] ■この先、S2000を手に入れたい人へ 最後に、この先S2000を購入する際の注意点を熊谷さんに伺った。 ーーS2000の中古車を購入する前にまず、決めておいたほうが良いことはありますか? ◆熊谷さん:AP1とAP2、どちらの型に乗るかを決めておいたほうがいいでしょう。型式にこだわらずS2000というクルマが欲しいなら、AP2をおすすめします。年式が新しいぶん故障が少ないことと、今後最後まで生産され続ける部品は、AP2の最終モデルが中心になると思われるからです。 ーー程度の良い個体の競争率は高く、一刻も早くキープしたいと思われている方がほとんどだと思います。実際に店へ足を運んでの現車確認は大切ですか? ◆熊谷さん:大切だと思います。試乗が可能であれば必ず乗って、変な振動や異音がしないか確認しましょう。 例えば、S2000はもともとリヤのハブベアリングが強くありません。そこが傷んでいる個体は、乗ってみると高音で引きずるような、あるいは唸るような異音がするはずです。しかも一定の速度域でしか症状が出ないこともあるので、できれば速度域ごとの確認もしたほうがいいかもしれません。 ーーもし試乗が難しい場合は、どんなポイントを重点的にチェックしておくと良いのでしょうか? ◆熊谷さん:S2000はサーキットで酷使され、エンジンを消耗している個体が多いです。できるだけ状態の良いエンジンを選びたいですね。最も素早く見分ける方法は、煤の付き方でしょうか。マフラーのテールとバンパーが煤けている個体は避けたほうが良いでしょう。 外観では、色褪せと幌の状態をチェックしてください。レッドやイエローのボディカラーを選ぶ際は色褪せしやすいです。 ちなみに、特に色褪せしやすいレッドやイエローなどは屋内保管推奨ですが、露天駐車がやむを得ない場合は、2〜3年おきにコーティングして、できるだけ塗装を長持ちさせるようにすると良いでしょう。全塗装するのも手ですね。色にこだわりがなければ、色褪せが目立ちにくいシルバーやホワイトを選ぶのもありです。 幌は、10年を越えていれば張り替えがおすすめです。穴やヒビが入っていないかをチェックしましょう。今は社外品でも質の良い幌があります。カラーも豊富なので好みの幌を選んでみるのも楽しいですね。 ▲レッドやイエローは色褪せしやすい。部分的に塗装していると、経年劣化によって色のばらつきが出ることも ーー極端に低走行な個体も見かけますが、そのような個体はどこに注意すれば良いでしょうか? ◆熊谷さん:例えばAP1(初期型)で約8万キロ走行の個体があったとします。年式にしては低走行だからといって、状態が良いとは限りません。サーキットで消耗しているかもしれないですし、「ちょい乗り」によってカーボンの堆積があるかもしれません。 S2000は高回転型エンジンで消耗が早いぶん、8万キロだとコンディションが落ちている個体が多いはずです。走行距離よりも「どんな乗られ方をしてきたか」に注意したほうが良さそうです。 ●「リフレッシュ費用」込みで購入計画を ーーお話を伺っていると、購入してから何らかのトラブルに見舞われる可能性が高い気がしますね。 ◆熊谷さん:そうですね。現在流通している個体は、10万キロ以上のものがほとんどだと思われます。車齢20年以上といえば、通常なら寿命を迎えているはずです。 購入の際はぜひ、リフレッシュ費用込みで予算を組んでいただきたいです。ゴム類、マウント、パッキン、などの消耗品交換からオイル漏れ対策なども必要になります。しかし骨格がしっかりしているなら、新車に近いレストアもできます。メンテナンス次第で良い状態のS2000と長く付き合えると思います。 ーー今回の修理でリフレッシュがどんなに大事かをあらためて実感しました。納車当時の16年前の気持ちを思い出し、愛情をもって乗っていきたいと思います。ありがとうございました! ■取材後記 プロの手に委ねてみて、気づきはもちろん反省点が多すぎた。16年間どれだけボーッと乗ってきたかを痛感した…。 この先はエンジンだけでなく、コンピュータや足回りなど、他の部分の問題も抱えるかもしれない。 できるだけ対応しつつS2000と長く暮らしたい。「人生の相棒」となるように…。 最後に、丁寧な作業とアドバイスをくださった「ComeTec」さんに感謝申し上げます。 [取材協力]ComeTec 広島県福山市神村町2107-2公式HP:https://www.cometecracing.com/Facebook:https://www.facebook.com/profile.php?id=100032848646363 [ライター・撮影/野鶴美和]
車の運転中に誤って物にぶつけてしまったり、事故に遭った際に、車のフレームが損傷する場合があります。車のフレームが損傷した場合、買い替えるか修理で直すか悩む方は多いのではないでしょうか。 この記事では、車のフレームの基本的な構造や、フレームの損傷によってどのような影響が出るのかについて詳しく解説します。 修理費用や修理にかかる期間も紹介するので、車のフレームを修理するか迷っている人はぜひ参考にしてみてください。 車のフレームとは 車のフレームとは、車の骨組み・土台部分のパーツのことです。車のボディの形状を保ち、走行時の安定性に影響を与えます。 フレームは車体の安全面でも重要な役割を担っているため、フレームが損傷したまま運転すると車が真っすぐに走れず、安全性に大きな影響を与えます。そのため、フレームに傷がついてしまった場合は、細部までチェックしましょう。 また、車検でもフレームの状態は検査対象です。フレームの損傷を修復していないと安全性が低いと評価されて車検に通らない可能性があるため注意しましょう。 車のフレームの種類 現在、多くの車のメーカーが採用しているフレームはラダーフレーム構造とモノコック構造の2種類です。それぞれの構造の特性について詳しく解説します。 ラダーフレーム構造 ラダーフレーム構造とは、はしご(ラダー)のような形をしたフレームを、ボディと組み合わせて車体を完成させる構造のことです。フレームとボディの両方にある程度の耐久性が備わっているため、外部からの衝撃に対して強いとされています。 ラダーフレーム構造の車は、衝突したり横転しても故障しにくいため、クロスカントリーモデルやトラックなどに多く利用されています。 デメリットは、フレーム自体が重くなりやすいことです。車輌が重くなると燃費にも影響するため、モノコック構造と比較すると燃費効率が悪くなりやすいでしょう。 モノコック構造 モノコック構造とはボディとフレームが一体化した構造で、車体が箱のような形をしています。組み立てるときに使用する部品が少なく、軽量化を実現しやすいというメリットがあります。また、車が衝突しても車体全体に衝撃を分散できるため、運転者や同乗者への衝突の影響を和らげる効果も期待できるでしょう。 デメリットは、強い刺激に耐えられずフレームが大きく損傷する可能性があるところです。高い安全性が見込まれる構造ですが、車をぶつけてしまったときに想像よりも大きな損傷が発生する危険があります。 車のフレームの修理が必要になるケース 車のフレームの修理が必要なケースは以下のとおりです。 ・側溝への脱輪 ・縁石への衝突 ・車同士の衝突 それぞれのケースの例を紹介します。 側溝への脱輪 車の車輪が側溝にはまってしまい脱出不能になってしまうと、フレームに歪みが生じ、修理が必要なケースがあります。 見た目でフレームの損傷がわからない場合も、車を走らせたときに、車が左右どちらかに曲がってしまう場合はフレームに異常があると考えられるため、修理が必要です。 また、側溝へ脱輪したときに車の下から液体が漏れている場合は、車を走行させてはいけません。レッカーサービスを要請し、修理工場に運んで修理してもらいましょう。 縁石への衝突 車が縁石へ衝突した場合も車のフレームの修理が必要な場合があります。見た目には損傷がないように見えても、フレームが損傷している可能性があります。 縁石へ衝突した後に、運転していてハンドルのアライメントがズレているなど、走行中に違和感を覚えたら修理が必要です。 また、縁石に衝突した場合は、物損事故として扱われるため、警察に報告しましょう。警察に報告しなければ、交通事故証明書を発行してもらえません。交通事故証明書がないと、損害賠償や修理費用が発生した場合、自費で支払うことになってしまいます。必ず警察に報告しましょう。 車同士の衝突 車同士が衝突した場合もフレームが歪む可能性があります。他のケースと同様に、見た目で損傷がわからない場合も、走行したときに左右どちらかに曲がるといった異常があれば、修理業者に見てもらいましょう。 車のフレームがダメージを受けたときのサイン 見た目ではフレームの損傷がわからない場合でも、先に述べたように車を走行しているときに真っすぐ走らないといった異常が発生します。 真っすぐ走らない以外の車のフレームがダメージを受けたときのサインは以下のとおりです。 ・凹凸の激しい路面を走るときに普段よりも安定して走れない ・タイヤのすり減り方が均等でない ・思うようにハンドル操作できない フレームが損傷し車体のバランスが崩れると車体が傾くため正常に走りづらくなります。これらの異常があるときは、修理業者に点検を依頼しましょう。 車のフレームを修理すると修復歴がつく 車のフレームを修理すると修復歴がつきます。中古車として売却する際に、一般的な相場に比べて売却額が安くなる可能性があります。 しかし、修復歴をつけたくないからといってフレームの損傷を放置すると、大きな事故に発展する可能性があるため、必ず修理業者に点検を依頼しましょう。 車のフレームは修理工場に依頼することが一般的 車のフレーム修理は、板金加工ができる修理工場へ依頼することが一般的です。修理工場以外にも、ガソリンスタンド、カー用品店へ依頼できます。普段からお世話になっているディーラーがいれば、そちらに依頼するのもよいでしょう。 ただし、ディーラーやガソリンスタンド・カー用品店に依頼する場合、板金加工が必要な修理は下請けの専門業者へ依頼するため、中間マージンがかかってしまい、修理費用が高額になります。 また、軽い歪みならDIYで直せると考える人もいると思いますが、フレームの修理には車の専門的な知識と板金加工の技術がないとできません。専用の機械を使って繊細な作業を行うため、プロであっても熟練の技術がなければ失敗する可能性があります。車の整備や修理の経験がない人は、DIY修理はやめておきましょう。 車のフレームの修理費用 フレームは他の部品よりも修理に手間がかかるため、小さな損傷でも10万円以上かかることが多いです。損傷がひどい場合や、モノコックフレームのように使われている部品が少ないモデルだと100万円前後かかる場合もあります。 修理費用次第では、買い替えも視野に入れたほうがよいでしょう。もし同じ車に乗り続けたい場合は、高額になることを理解したうえで、事前に見積もりをしてから修理を依頼しましょう。 車のフレームの修理期間 車のフレームの修理は即日では完了しません。最短でも数日程度はかかります。また、損傷具合がひどい場合は作業工程が増えるため、数週間から1ヶ月程度かかることもあるでしょう。 日頃の移動手段が車しかない場合や、仕事の都合で車移動しなければならない場合は、修理期間中の代車の手配も検討しましょう。 まとめ 車のフレームは車の土台・骨組みの部分です。そのため、車のフレームが損傷すると安全に車を走行できません。見た目でわからなくても、歪んでいる可能性はあるため、車を側溝に脱輪させたり、物や車に衝突させてしまったりしたときは、修理業者に点検に出しましょう。 フレームの修理は手間がかかるため、費用が高額になることがあります。フレームの損傷がひどい場合は、買い替えを検討したほうがよい場合もあるでしょう。また、修理には最短でも数日、損傷具合がひどい場合は数週間から1ヶ月程度かかることがありますので、車がないと生活に支障が出る人は代車の手配を検討しましょう。
前回は固着したネジの緩め方について書きましたが、今回はやむを得ずネジ山を破損してしまった場合の「ネジ山再生方法に」ついてご紹介いたします。 旧車がメインのWebメディアとしては随分地味な内容が多い筆者ですが、全国のさまざまなイベントで雄姿を見ることのできるクラシックカーには、こうした地道な作業を伴うオーナーの努力の上に成り立っているということも、ぜひ頭の片隅に入れて置いていただけると幸いです。 *記事の内容は個人の見解でもあるので、作業は自己責任でお願いいたします。 ■修正タップをたてる 完全にネジ山が潰れてしまったわけでもなく、一部残っている。あるいは、カジリやネジ山が変形したボルトを抜いたことで一部変形してしまったときは、同じサイズのタップを経てることで修正することができます。 もしナット側のネジ山が変形して、同じサイズのボルトが回らないくらいきつくなったときは、無理に締め込もうとしないで一度修正タップをたててみましょう。 ネジ穴に固着したボルトが折れて残ってしまい、ドリルで「もいでいく」際は、ドリル径を少しずつ大きくしていきます。 ネジ径の8割くらいのドリルまで使ったら、あとは元のネジ穴と同サイズのタップを立てれば再生できます。 ネジを切るための正確な「下穴径」は、「ネジ 下穴」で検索すると一覧表が出ますが、概ねネジ径×0.8前後と覚えておくと便利です。 長年使っていなくてサビや埃でネジ山が埋まってしまったり、再塗装や再メッキで嵌めあいがきつくなってしまった場合にも修正タップは有効です。 自動車用のネジの場合、嵌めあいの精度は、手でボルト・ナットが抵抗なく回せるくらいが目安だそうです。 修正タップは市販のタップセットを揃えるのが簡単ですが、よく使うサイズは奮発してスパイラルタップを用意しておくといいかもしれません。 タップハンドルもセットに入ってるタップハンドルの他に、チャック式の小型のハンドルも用意しておくと便利です。 ■ナッターを使う クルマに限らずDIYで何かを作ったり、リノベーションを楽しんでいる人なら持っておいて損はないツールに「リベッター・ナッター」があります。 本来「リベット」や「カシメ」で薄板同士を固定する役割なのですが、ナッターとして使えば、板の外側から反対側にナットをカシメて固定することができるという優れモノです。 裏側に手が入らないところにパーツや板材をネジ止めするときに重宝します。 本来はM4のナベネジで車体側の外接ナットで固定できるはずのスバル 360のテールランプ。 しかし、筆者が入手した時点では下側のネジ山が潰れていて、長年上側のネジだけで固定している状態でした。 この際、ナッターでネジの再生をすべく、まずは6mmの下穴を開けます。 「ブラインドナット」と呼ばれるカシメ型のナットを、「マンドレル」と呼ばれるネジを切ったシャフトに取り付けます。 下穴にマンドレルに取り付けたブラインドナットを、差し込み穴に対してマンドレルが垂直を保っている状態でグリップをしっかり握ります。 ブラインドナットをカシメてからマンドレル後ろのツマミを左に回して、ナットからシャフトを抜けば完成です。 これで、外接ナットが復活。 普通にM4サイズのビスで固定できるようになりました。 ブラインドナットを「カシメる」際は、グリップの手ごたえが変わったところで、少し力を入れて動かなくなったあたりで止めるという微妙な力加減が必要です。 引きが足らなければナットの固定ができず、引きすぎたらシャフトが抜けてネジ山を潰してしまいます。 最初は適当な薄板で練習して慣れる必要があるかもしれません。 ■ある程度自分で機関部のDIYメカをしたい、クラシックカーのレストアをしたいという人はリコイルヘリサートを 「リコイルヘリサート」は、エンジンブロックやバンパーステーの雌ネジ部分が潰れてしまった際にネジ山を復活させる道具です。 最近は、アマゾンやアリエクスプレスなどでM5、M6、M8、M10、M12の補修キットが買えます。 アメリカ車、英国車のオーナーは、更に奮発してユニファイネジ対応のリコイルヘリサートキットを買っておけばもう万全でしょう。 かいつまんで説明すると、潰れた雌ネジを一旦ドリルでもみ切り、特殊なサイズのタップで一回り大き目のネジ山を切り、内側がネジ山と同じサイズ・形状・ピッチになっているコイルを挿入し、雌ネジを再生する工具です。 ▲写真はM6サイズ用コイルの下穴 まずは、ネジ山を再生するコイルインサートを入れるために、潰れたネジ穴に付属のドリルで指定のサイズの下穴を開けます。 次に、付属の指定のタップでコイルインサート(M6)を入れるためのネジ山を切ります。 中央の引きばねのようなコイルですが、内側はM6サイズのナットのネジ山と同じ形状になっています。 数字の7のような形をしたハンドルの先に切り欠きがあり、コイルの中のまっすぐな部分をひっかけます。 先ほどタップを切ったネジ穴に、ハンドルに取り付けたコイルを入れ右方向(時計回り)にハンドルを回し、コイルを挿入します。 反対側からコイルの先が出ないところで止めます。 コイルを挿入したらハンドルを抜き、コイルを入れた方向から、今度は付属の丸棒を勢いよく差し込み、コイルの余分な部分を折ります。 この際、反対側からコイルが飛び出した状態で折ろうとするとコイルが伸びて変形し、ボルトが入りにくくなってしまいます。 こうなったときは、コイルの伸びた方をラジオペンチか先の細いプライヤーでつまんでコイルを引き抜き、もう一度新しいコイルを挿入してください。 表側は多少飛び出していても、ボルトを締めこめば飛び出している部分も中に入っていきます。 ■工具と技術は必要ではあるものの、潰れたネジ山を再生する方法はある 腕のいいメカニックなら「そもそもネジを壊さず外す」なんていいますが、古いクルマをいじっているとなかなかそうはいかないものです。 普通はネジを破損してしまったとなれば途方に暮れるかもしれません。 しかし、少々高いスキルを要し危険も伴う作業もありますが、ネジを再生することは可能です。 DIYメカニックでワンステップ高いところ目指してみるなら、ネジの修正方法を覚えておくのも悪くないかと思います。 ただし、作業には危険が伴います。 指定の手順で、ときには工具店のスタッフ等詳しい人の指示のもと、くれぐれも無理はしないでくださいね。 技量に自信がなければ最初からプロにお願いするなど、安全には配慮をお願いします。 [ライター・画像 / 鈴木 修一郎]
普通の人なら、ネジなんてドライバーかスパナで回せば緩むんじゃないの?と思われるかもしれません。 ですが、旧車王ヒストリアの取材対象になるような年式のクルマの場合、長年の使用でネジ山の隙間に埃が詰まったり、何度も再塗装されたために塗料が固着したり、ネジ同士が錆び付いたりなど、緩めることが困難になることが往々にしてあります。 その際に、無理にネジを回そうとしてネジの頭部分を破損する、いわゆる「ネジをナメる」ことで回せなくなったり、ネジが中で折れてしまいネジが取れなくなるという事があります。 ■基本は緩めるネジにあった工具を使い、強引に回さない ナベネジ、皿ネジの場合は必ず頭の切れ込みの大きさにあったドライバーを選びます。 切れ込みに入ればいいと小さいドライバーで無理に大きなネジを回そうとすると、切れ込みを破損する「ナメる」原因になります。 六角ボルトの場合はなるべくメガネレンチ、ソケットレンチを使います。 片口スパナやモンキーレンチは「ナメる」原因になります。 どうしてもスパナがやソケットレンチが入らない場所、手持ちに合うサイズが無い場合など、やむを得ない理由がある時以外は極力使わないようにしてください。 ■固着したネジの緩め方 まずは、CRCなどの浸透性潤滑剤をネジに吹き付けます。 鍋ネジ、皿ネジの場合、切れ込みに合った貫通ドライバーをあて、ドライバー後端をハンマーで叩いて打撃を与えると、かなりの高確率でネジが回ります。 打撃を回転力に変えることでネジを回す「インパクトドライバー」という工具も存在します。 自分でクルマを弄る人なら持っておいて損は無い工具です。 六角ボルトの場合は、同様にCRCを吹き付け、大き目のマイナス貫通ドライバーをボルトにあて、同じ要領で打撃を与えます。 ネジが回り出したら、無理に最後まで回そうとせず、回りにくくなったら一旦そこで止め、逆方向(締める方向)に回します。 この緩める・締めるの動作を繰り返しているうちに、ネジ山に詰まっているサビやチリが剥がれ、CRCが浸透していきます。 次第に回転角度が大きくなり、回転も軽くなり、最終的にネジを外すことができます。 DIYのお供として、CRCやMD-40などの浸透性潤滑剤が必須アイテムなのは言うまでもありません。 摺動部の潤滑よりも、固着部分の潤滑剤としてのほうが重要という方も多いと思います。 最近は「凍結浸透ルブ」という、ボルトを凍結収縮させることでサビや固着部分にクラックを入れ、潤滑剤を浸透させやすくするスプレーもあります。 ■ネジの頭をナメてしまった場合の緩め方 ドライバーやスパナがネジの頭の切れ込みや角をえぐり取ったときのグニッとした感触は、なんともいやな物です。 プラスネジの場合は、糸ノコやディスクグラインダーでネジの頭に切れ目を入れ、マイナスドライバーで緩めるという方法があります。 六角ボルトの場合、もしも12角のメガネレンチかソケットでボルト・ナットの角をナメかけた!と思ったら、即作業を中止して、6角のメガネレンチかソケットで作業を再開してください。 12角よりも6角の方が、ボルト・ナットに対する接触面が増えるためです。 ボルト・ナットの角が少しえぐれた程度なら、6角のメガネレンチでボルト全体を回せば持ち堪えてくれる可能性はまだまだあります。 完全にネジの頭が潰れてしまい、ドライバーもスパナ・レンチでは回せなくなった場合、バイスプライヤー、ロッキングプライヤーと呼ばれているプライヤーで直接ネジを掴んで回します。 バイスプライヤーは鋼鈑やパーツを貼り合わせるときの仮止めにもよく使うので、2~3種類は持っておいて良い工具だと思います。 ■破損したネジを外す専用工具を使う 最近は「ネジザウルス」という、破損したネジを緩める専用のプライヤーもあります。 ネジザウルスブランドを展開する「株式会社エンジニア」では、「ネジレスQ」という外れなくなったネジを外すための相談も受け付けています。 ネジの頭が完全に破損したり折れてしまった際は「エキストラクター」という工具を使います。 逆タップとも呼ばれ、テーパー型のタップに左回りのネジ山が切られています。 ナメてしまったネジの頭にドリルで垂直に穴をあけ、エキストラクターを左回転でねじ込んでいきます。 ポンチで位置決めをしてから、細いドリルで垂直に穴を開け、順番にドリル径を大きくしていきます。 ボルトに開けた穴にエキストラクターを差し込み「左回り」に回転させると、折れたネジが抜けるハズなのですが、撮影時はうまくいかず、ネジ山を別の方法で再生させました。 その様子が次項です。 ■いっそネジに工具を直接溶接してしまう 溶接機を持ってる人限定ですが、余っている工具や不要になった工具を、ネジに直接溶接してしまうという方法もあります。 熱を加えることで、膨張、収縮を繰り返し、固着部分が剥がれるという効果も期待できます。 いずれの方法を用いてもネジが緩みも外れもしないとなれば、あとはドリルやボール盤でネジをもみ切り、修正タップやリコイルヘリサートを使ってネジを再生することになります。 次回はネジの再生手段について書きたいと思います。 [ライター・画像 / 鈴木 修一郎]
クルマに乗るのに、カーエアコンが必須な時期になりました。 1990年、東京都の猛暑日は2日間でしたが、昨年(2022年)は16日と、実に8倍! 一昔前はカーエアコンレス車に乗って「カーエアコンなんて軟弱なやつが使うもの」と、うそぶく方もいらっしゃいましたが、今や自殺行為以外の何物でもない時代となってしまいました。 と、こんなことを書いていた矢先の出来事。 この酷暑の中、すべての窓を全開にした8代目グロリア(Y31)とすれ違いましてね。 おそらくカーエアコンが効かないか、まったく動かないのでしょう。 運転席と助手席には、大学生とおぼしきお兄さんたち。 いや、若さってなんでもアリだなぁ。 いわゆるVIP系のドレスアップをされていない、ノーマル状態で綺麗なグロリア。 中古車の価格には疎いのですが、カーエアコンが不動であっても、決して安くはないと思います。 もっと快適で乗りやすい中古車もあった中での選択。 その素敵な笑顔からも、お兄さんが旧車ライフに踏み出し、グロリアを楽しんでらっしゃることがうかがえます。 納車、おめでとうございます。 くれぐれも熱中症にはご注意ください。 ■夏本番、コンプレッサーまわりの総取っ換え待ったなし! ここ数年、冷房の効きが悪くなった、愛車のS15。 外気が35度を超えると、吹き出し口から“ちょっとだけ涼しい”程度の冷風しか出ず、車内温度が下がらないという症状が出ていまして。 高速道路で渋滞にはまった際、助手席に座る妻を熱中症に陥らせたりもしました。 「さすがに、これはまずい」と、行きつけの自動車整備工場に持ち込んだところ、フロンガスは入っており、カーエアコン自体に異常はなし。 「コンプレッサーが弱くなっているほか、周辺の装備も劣化している。またエンジンルーム内が想定以上の暑さになり、効きが悪くなっているのではないか」との結論に。 そして「修理するなら、コンプレッサーまわりの総取っ換えがお勧め。多分、コンプレッサーだけ交換しても、すぐ周辺に異常が出る」とのこと。 まぁ、そうですよね。 コンプレッサーだけ交換して、勢いが復活! けれど弱いからこそ、バランスが取れていた周辺の装備(コンデンサーやエパボレーターなど)もあって、大きな負荷がかかれば一気に問題が吹き出るでしょう。 コンプレッサーまわりをまとめて交換となると、10万円を超える出費。 けれど猛暑日に達しなければ、まだそこそこ冷房が効いているのが悩ましいところ……。 いやいや、今年の暑さはこれからが本番。 熱中症や事故を防ぐためにも、交換しないわけにはいかないでしょう。 来年になったら、車検でお金がかかるわけですし。 昨今の暑さを想定したパーツに替わるのですから、きっと格段に冷房の効きが良くなる……のでは、ないでしょうか。 一般的にカーエアコンの寿命は10年ほどといわれており、頻繁に使用することで長く調子が維持できるそうです。 S15のカーエアコンは無交換で24年目ですから、かなりの“当たり”を引いたことになります。 こちらをご覧のみなさんは、これから年式が10年以上の古いクルマを購入されるのだと思います。 現車確認の際、カーエアコンまわりが交換してあるかを確認し、無交換だったら乗り出し前に交換してしまうのも手ではないでしょうか。 乗り出した後の不安や苦労の種は、ひとつでも潰しておきたいですからね。 ■夏は旧車の程度や素性を知る良い季節 日本車で最初にカークーラーを装備したのは、初代トヨペットクラウンで1957年。 カーエアコンを装備したのは、2代目トヨペットクラウン(マイナーチェンジ後)で1965年。 オートエアコンを装備したのは、トヨタセンチュリーで1971年だそう。 私が免許証を取得した頃(1990年頃)は、ほとんどの新車にカーエアコンが標準装備されるようになった時代。 子供の頃にはありふれていた三角窓、手動式の車内への空気導入口、後部座席の窓がわずかに外に開く機構は、すっかりと姿を消していました。 けれど当時のカーエアコンは効率が悪く、まだまだエンジンのパワーを食う代物でした。 今やカーエアコンやエンジンの進化、制御の高度化により、カーエアコンがエンジンパワーに与える影響はほとんどありませんが、当時やそれ以前は影響がとても大きいものでした。 特にAT車は排気量が1500~1600ccあっても、フル乗車すると勾配のきつい上り坂で、徐々に速度が落ちてしまいました。 あわててカーエアコンを切ってアクセルベタ踏みし、エンジンを唸らせて登ったのも、懐かしい思い出です。 当時はまだMT車の需要が大きかったのですが(MT27.5%:AT72.5%)、選ぶ理由に「カーエアコンの影響を受けにくい(低いギアで走ることにより、速度低下といった影響を最低限に抑えられる)」というのも、あったかもしれません。 程度の良い個体が多いことや球数の多さもあり、旧車を購入するにあたってAT車を検討されている方も多いと思います。 カーエアコンの影響は思いのほか大きく、特に夏場は大排気量車ではないかぎり、オーバードライブボタンやセカンドレンジを駆使してパワーの低下をフォローする必要が出てきます。 現代のクルマのようにDレンジオンリーで走行というわけにはいかず、必然的にトルクコンバーターやトランスミッションの程度も、重要になってきます。 日本の夏は、クルマにとって過酷な環境。 旧車は試乗が難しいと思いますが、可能ならばカーエアコンを入れて急勾配な上り坂に挑むことで、そのクルマの程度や素性、クセがある程度わかりますよ。 [画像・糸井 賢一,AdobeStock / ライター・糸井 賢一]