「車売却ってそもそもどんな流れなのか」「車の相続について相談したい」など車売却をご検討の際に出てくる悩みに無料でお答えいたします!
【相談例】
● 車売却のそもそもの流れが分からない
● どういった売り方が最適か相談したい
● 相続で車を売りたいけど売り方が分からない
● 二重査定や減額について知りたい
など
クルマに乗るのに、カーエアコンが必須な時期になりました。 1990年、東京都の猛暑日は2日間でしたが、昨年(2022年)は16日と、実に8倍! 一昔前はカーエアコンレス車に乗って「カーエアコンなんて軟弱なやつが使うもの」と、うそぶく方もいらっしゃいましたが、今や自殺行為以外の何物でもない時代となってしまいました。 と、こんなことを書いていた矢先の出来事。 この酷暑の中、すべての窓を全開にした8代目グロリア(Y31)とすれ違いましてね。 おそらくカーエアコンが効かないか、まったく動かないのでしょう。 運転席と助手席には、大学生とおぼしきお兄さんたち。 いや、若さってなんでもアリだなぁ。 いわゆるVIP系のドレスアップをされていない、ノーマル状態で綺麗なグロリア。 中古車の価格には疎いのですが、カーエアコンが不動であっても、決して安くはないと思います。 もっと快適で乗りやすい中古車もあった中での選択。 その素敵な笑顔からも、お兄さんが旧車ライフに踏み出し、グロリアを楽しんでらっしゃることがうかがえます。 納車、おめでとうございます。 くれぐれも熱中症にはご注意ください。 ■夏本番、コンプレッサーまわりの総取っ換え待ったなし! ここ数年、冷房の効きが悪くなった、愛車のS15。 外気が35度を超えると、吹き出し口から“ちょっとだけ涼しい”程度の冷風しか出ず、車内温度が下がらないという症状が出ていまして。 高速道路で渋滞にはまった際、助手席に座る妻を熱中症に陥らせたりもしました。 「さすがに、これはまずい」と、行きつけの自動車整備工場に持ち込んだところ、フロンガスは入っており、カーエアコン自体に異常はなし。 「コンプレッサーが弱くなっているほか、周辺の装備も劣化している。またエンジンルーム内が想定以上の暑さになり、効きが悪くなっているのではないか」との結論に。 そして「修理するなら、コンプレッサーまわりの総取っ換えがお勧め。多分、コンプレッサーだけ交換しても、すぐ周辺に異常が出る」とのこと。 まぁ、そうですよね。 コンプレッサーだけ交換して、勢いが復活! けれど弱いからこそ、バランスが取れていた周辺の装備(コンデンサーやエパボレーターなど)もあって、大きな負荷がかかれば一気に問題が吹き出るでしょう。 コンプレッサーまわりをまとめて交換となると、10万円を超える出費。 けれど猛暑日に達しなければ、まだそこそこ冷房が効いているのが悩ましいところ……。 いやいや、今年の暑さはこれからが本番。 熱中症や事故を防ぐためにも、交換しないわけにはいかないでしょう。 来年になったら、車検でお金がかかるわけですし。 昨今の暑さを想定したパーツに替わるのですから、きっと格段に冷房の効きが良くなる……のでは、ないでしょうか。 一般的にカーエアコンの寿命は10年ほどといわれており、頻繁に使用することで長く調子が維持できるそうです。 S15のカーエアコンは無交換で24年目ですから、かなりの“当たり”を引いたことになります。 こちらをご覧のみなさんは、これから年式が10年以上の古いクルマを購入されるのだと思います。 現車確認の際、カーエアコンまわりが交換してあるかを確認し、無交換だったら乗り出し前に交換してしまうのも手ではないでしょうか。 乗り出した後の不安や苦労の種は、ひとつでも潰しておきたいですからね。 ■夏は旧車の程度や素性を知る良い季節 日本車で最初にカークーラーを装備したのは、初代トヨペットクラウンで1957年。 カーエアコンを装備したのは、2代目トヨペットクラウン(マイナーチェンジ後)で1965年。 オートエアコンを装備したのは、トヨタセンチュリーで1971年だそう。 私が免許証を取得した頃(1990年頃)は、ほとんどの新車にカーエアコンが標準装備されるようになった時代。 子供の頃にはありふれていた三角窓、手動式の車内への空気導入口、後部座席の窓がわずかに外に開く機構は、すっかりと姿を消していました。 けれど当時のカーエアコンは効率が悪く、まだまだエンジンのパワーを食う代物でした。 今やカーエアコンやエンジンの進化、制御の高度化により、カーエアコンがエンジンパワーに与える影響はほとんどありませんが、当時やそれ以前は影響がとても大きいものでした。 特にAT車は排気量が1500~1600ccあっても、フル乗車すると勾配のきつい上り坂で、徐々に速度が落ちてしまいました。 あわててカーエアコンを切ってアクセルベタ踏みし、エンジンを唸らせて登ったのも、懐かしい思い出です。 当時はまだMT車の需要が大きかったのですが(MT27.5%:AT72.5%)、選ぶ理由に「カーエアコンの影響を受けにくい(低いギアで走ることにより、速度低下といった影響を最低限に抑えられる)」というのも、あったかもしれません。 程度の良い個体が多いことや球数の多さもあり、旧車を購入するにあたってAT車を検討されている方も多いと思います。 カーエアコンの影響は思いのほか大きく、特に夏場は大排気量車ではないかぎり、オーバードライブボタンやセカンドレンジを駆使してパワーの低下をフォローする必要が出てきます。 現代のクルマのようにDレンジオンリーで走行というわけにはいかず、必然的にトルクコンバーターやトランスミッションの程度も、重要になってきます。 日本の夏は、クルマにとって過酷な環境。 旧車は試乗が難しいと思いますが、可能ならばカーエアコンを入れて急勾配な上り坂に挑むことで、そのクルマの程度や素性、クセがある程度わかりますよ。 [画像・糸井 賢一,AdobeStock / ライター・糸井 賢一]
■寒い日のエンジントラブル。原因はプラグかぶり 少し前、冷え込んだ日のこと。 所用で早朝に出かけるべく、愛車S15のエンジンをかけようしたところ、「キュ、ガッガッガッ!」と、セルは回るものの始動しない。 大丈夫です、こういったアクシデントにはもう慣れました。 いや、慣れちゃダメだろ! 何度か始動を試みるも、症状は改善せず。 くすぶっている感じはあるので、ガソリンはエンジンまで届いている……あっ、プラグかぶりか。 あまりに久しぶりだったので忘れていましたが、これはプラグかぶりの典型的な症状。 クラッチとアクセルをベタ踏みし、一呼吸。 キーをひねって、そのまま戻さない! キュ、ガッガッガッ、ボッ! ガガッ、ボッ、ボッ。 かかれ! かかれ! キーを戻すな! ごめんよバッテリー、もってくれ! ボッ、ボボッ、ボッ、ボッ……。 かかれぇっ! ボボボッ、ドゥン! かかったぁ! アイドリングに元気はありませんが、かかってしまえばこっちのもの。 5分ほど様子をみましたが問題はなさそうなので、出発することができました。 ■プラグかぶりの対処は、強引にエンジンをかけること 今のクルマは電子制御がよくできているので、プラグかぶりを経験したことがない人も多いと思います。 プラグかぶりのプラグは、おなじみスパークプラグのこと。 プラグかぶりは、なんらかの理由でシリンダーに送られたガソリンが燃焼せず、スパークプラグの電極を濡らしてしまった状況のこと。 プラグかぶりを起こした電極(スパークプラグ)は思うように火花をちらせず、結果、エンジンはひどくかかりづらくなります。 一番、手っ取り早い対処法は先ほど私がやったように、アクセルを踏み込んだままセルを回し続けてシリンダーに空気を送り、火花がちりやすい環境を作って強引に始動させること。 エンジンがかかってしまえば電極も乾燥し、調子も戻ります。 それでも始動しないならプラグかぶりではなく、オイルかぶりやスパークプラグ自体に問題が出ているかもしれません。 スパークプラグはそう高価なものでもないので、交換しちゃうのも手です。 「一度、プラグかぶりをおこしたスパークプラグは、もう元には戻らない」という話もあります。 厳密にはそう(スパークプラグの性能が落ちる)なのかもしれませんが、四輪で街乗りが中心の場合は、そこまで気にしなくてもいいと思います。 エンジンが冷え切る寒い日は、いくぶんかプラグかぶりがおこりやすくなります。 これから旧車に乗られるならば、対処法を覚えておいても損はありません。 ■四輪ならば、スパークプラグの熱価は適正が最良 旧車を購入したらリフレッシュとして、スパークプラグは交換すべきパーツのひとつ。 ただ、どれでもいいから交換すればいいものではありません。 スパークプラグは燃焼によって受けた熱を処理する度合を示した「熱価」があります。 熱価の数値が高いほど耐熱性が高く、低いほど火花をちらしやすい特性を持っています。 適正の熱価は車種やグレードによって異なり、デンソーやNGKといった、スパークプラグを扱うメーカーの公式サイトで調べることができます。 「高回転で走行することが多いから」と、適正よりも高い熱価のスパークプラグに交換する方もいらっしゃいます。 実際、スパークプラグメーカーも、乗り方にあわせた熱価を推奨しています。個人的には、それは1万回転以上で長く走行し続ける二輪を想定しての話で、四輪ならば適正な熱価のスパークプラグが、もっともエンジンの性能を引き出すと考えています。 そんな考えに至ったのは、過去の経験から。 ■耐久レースで学んだ、普及品の性能の高さ! もう20年以上、過去の話になりますが、原付で耐久レースに出ていたことがあるんですよ。その耐久レースはレギュレーションにより「エンジンはノーマル状態であること」が義務付けられていました。 初参加の際はスパークプラグにレーシングプラグを奢り、「半日以上、高回転で走行するのだから」と、熱価も高いものを選択。 ところが実際にレースが始まると、練習走行のときよりもパワーが出ず、タイムも遅い。 排気音も元気がない。 当初は「原因はセッティングのミス」と推測し、どうすれば調子が戻るのかと、チーム全員で頭を抱えました。 あれこれと手直しするも、調子は戻らない。 「この際、全部を練習走行時に戻そう」と、スパークプラグもかぶっていたわけではないのですが、純正で使用される製品に戻します。 すると、とたんに排気音が勇ましく響きだしたじゃないですか! 実際にパワーやタイムも戻り、調子の良いまま完走することができました。 交換したスパークプラグに問題はなし。 電極に焼けすぎの兆候もありません。 耐久レースなので回転数は6000回転前後をキープ。 この回転数は、日頃から「高回転で走行する」という四輪と同程度じゃないでしょうか。 スパークプラグは普及品でも十分に性能は高く、色々と余裕のある四輪ならば、適正の熱価こそが一番、性能を引き出してくれると学んだ経験でした。 話はプラグかぶりに戻りますが、元気で適正な熱価のスパークプラグはプラグかぶりを予防し、対処の際もエンジンが始動しやすくなります。 リフレッシュの際はもちろんですが、「エンジンの調子が悪いな」と感じたら、交換してはいかがでしょう。 [画像/Adobe Stock、ライター・撮影/糸井賢一]
当たり前をしっかりと実行してくれるお店のありがたさ! 祝、S15型シルビアお迎え23周年! というわけで先日、11度目の車検を受けてきました。 現在、メンテナンスや車検、修理でお世話になっている自動車整備工場(以下、整備工場)は、私が都内に越してきてからのお付き合いになります。 料金は良心的、スタッフは経験豊富という、願ってもないお店。 この店舗とのご縁がなかったら、S15型シルビアを維持できていなかったかもしれません。 今回は今までにお付き合いしてきた整備工場の遍歴と、そこで学んだ事柄をお話ししたいと思います。 ■実はとってもすごい、ディーラーの「おもてなし」営業 S15型シルビアは新車購入だったので、最初のかかりつけ整備工場はディーラーになります。 前愛車のS14型シルビアから10年以上、面倒をみてもらっていました。 当時はディーラーのみとのお付き合いだったので、「整備工場のサービスはディーラーレベルが基準」と思っていました。 今にして思えば、とんでもない勘違い。 連絡をせず訪れたにも関わらず、整備でも車検でも受け入れ、その場で代車まで出してくれる。 調子が悪くなればメカニックが出張し、事故を起こせば積載車で迎えにきてくれる。 信じられないくらいの至れり尽くせり、すごいよディーラーのおもてなし! ただまぁ、今はお世話になっていませんし、そうなった理由だってもちろん、あります。 詳しくはのちほど記しますが、新車を早いサイクルで乗り換えるスタイルなら、そのままお付き合いを続けるのが正解なのではないでしょうか。 ■「信頼していた」は甘え。客も自身で確認を行わないと 都内へ越してきて最初にお世話になったのは、人当たりのいいお兄さんが店長を務める、開店したての整備工場。 車検こそお世話になっていませんが、オイル交換といったメンテナンスとさまざまなパーツの交換をお願いしていました。 この頃は、実家近くのディーラーにもまだ顔を出しており、たまたま12ヶ月点検と帰省が重なっていたので持ち込んだところ、驚愕の事実が発覚。 先の整備工場で交換したパーツの固定に結束バンドが使用されており、そもそも取り付けの位置がおかしい。 そのおかげかブレーキホースはタイヤと接触していた痕があり、かなり危険な状態だった。その他、諸々……。 Oh……。あの店長、悪意でやったのではなく、頼まれれば何でも引き受けちゃう人で、純粋に経験不足から取り付け方がよく分からないまま対処していたのではと、今では推測しています。 取り付けに問題のあったパーツは純正品、もしくは関連子会社の製品。 ディーラーでも対処できるということなので、正常な状態にして欲しいと依頼。 かかった料金は勉強代として身銭を切りました。 この件から学んだのは「どんな些細なメンテナンスであっても、作業内容を説明してくれる整備工場を選ぶ」ということと、「ちゃんと自分でも作業後を確認する」ということ。 ちなみに上記の件からかれこれ10年以上経っていますが、整備工場は今もしっかりと営業しています。 きっと店長も経験を積まれ、当時の若気の至りを恥ずかしく思って……いてくれたら、いいなぁ。 ■ディーラーのおもてなしは、そこで新車を購入するからこそ享受できるもの S15型シルビアを購入してから15~6年経った頃、リアの足回りから異音がするようになりました。 実家から現在の住まいまで、クルマで4時間近くの距離。 交通費も片道で4000円近くかかり、必要なガソリン代を考えると、そうポンポンと行き来できるものではありません。 そこで今回は住まい近くのディーラーへと足を運び、診てもらいました。 出てきた見積もりは、ハブ回り交換で6桁弱。金額はともかく、地元のディーラーではあったメカニックによる「どのパーツに異変があり、どうやって修理するか」といった説明はなし。 受付のお姉さんに見積もり書を渡されて「はい、終わり」という対応に「歓迎されてなさ」を感じながら、お店をあとにします。 いや、まぁ、塩対応はしかたのないもの。 ディーラーは新車の販売ありきで、整備や修理は購入者に向けたアフターサービス&再び購入してもらうための投資。 よそで購入し、しかも販売を終了して10年以上経つ厄介なクルマを持ち込まれたら、そりゃ困るよね。 新車を買う気のなさも、ありありと伝わっていたでしょうし。 客がお店を選べるように、お店だって客を選べます。 ディーラーでの対応を“やんわりとした拒否”と受け取り、あらためて主治医を探すことにしました。 近所を見てまわったところ数件、旧車を受け入れている整備工場を見かけたのですが、さて、どこに持ち込むか……。 ■口コミを信じて訪れたお店は、紛れもなく“整備士”が腕をふるうお店でした ふと近隣の旧車サークルのメンバーさんが、ブログにて勧めていた車整備工場があったのを思い出します。 記憶に残っていたのも、なにかの縁。まずはこちらの整備工場に診てもらうことにしました。 この頃は「訪問前にまず連絡」という基本的なマナーすら知らなかったため、突然の訪問。 応対してくれたのは店長で、忙しいにも関わらず嫌な顔ひとつせずにS15型シルビアを診てくれ、出てきた見積もりは先のディーラーの半額ほど。 半額!? もちろん安いのは嬉しいけど、そこまで差があると、ちょっと怖いというか……。 聞けばハブ回り全部を交換する必要はなく、異常が出ている箇所だけを交換するから、この金額に収まるのだそう。 かつて旧車やヒストリックカーのレストアも手がけるディーラーを取材したとき、「今のディーラーはアッセンブリー交換士しかいない。 ちゃんとした整備士を育てるためにレストアをはじめた」という所長のコメントを思い出し、妙に合点がいったものでした。 店長の説明に納得し、正式に修理をお願い。 スケジュールが一杯の上、代車の空きもないということで、入庫は1週間先となりました。 整備工場の忙しさとともに、ディーラーの体制がどれほどすごいか、そしてディーラー慣れした自身のおごりを理解したものです。 修理が終わって引き取りに向かった際、写真付きで作業内容の説明を受け、整備士の「きちんとした仕事」がどういうものかを、客の立場で教わります。 不満どころか感謝しかないお店です。 その後も引き続き、整備や車検をお願いし、6~7年を経た今では「乗り続ける限りS15型シルビアの面倒をみるから、最後は引き取らせて」との冗談をもらう程度の付き合いになりました。 部品の供給終了や価格の高騰により、修理が出来なくなる日もくるとは思いますが、少なくとも私が諦めるまではS15型シルビアに乗り続けることができそうです。 お金持ちならいざ知らず、いち庶民の私たちが旧車を維持するには、良心的で旧車の整備に慣れた整備工場の存在が必要不可欠。 これから旧車を購入される方は、まめに先達に聞くなどして情報を集めることをお勧めします。 [画像・AdobeStock、ライター・撮影/糸井賢一]
こちら旧車ヒストリアで何枚もの画像を掲げているので、ご存じかも知れませんが、愛車のS15は、いわゆるライトチューン仕様。 独身の頃は月イチくらいでサーキットに足を運び、「キャッキャ!」と楽しんでいました。 根っからの恐がり、かつ臆病者なので、タイムは絶望的に遅かったんですけどね。 そんな経緯から、「愛車を手に入れたらチューニングしたい!」、「自分好みにモデファイしたいっ!」って気持ち、よーく分かります。 余談ですけどNAのSR20なら、マフラー交換よりもEXマニホールドの交換をお勧めします。 正直、マフラー交換による違いは、ほとんど体感できませんが、EXマニホールドを交換すると、アクセルレスポンスの向上がよく分かります。 もう楽しくてしかたがありません。 自分で言うのもなんですが、私のような「愛車をネコ可愛がる」派ですら、多少の改造を施しています。 旧車であっても大半のスポーツモデルは、多かれ少なかれ手が加えられているのではないでしょうか。 完全リフレッシュをウリにしているショップでない限り、旧車(中古車)は基本、現状渡し。 購入を果たしたら、チューニングやモデファイを後回しにし、まずはリフレッシュを施す必要があります。 ■「リフレッシュ終了」時点から旧車ライフのスタート地点に リフレッシュとは、劣化したパーツを交換し、可能な限り新車にコンディションを近づける作業です。 オイル交換やベルト交換から始まり、ブレーキパッドやブレーキローターなどの消耗品の交換。 ブッシュやマウントなどのゴム製品の交換。 排気音が大きいようならマフラーの交換。 ショックアブソーバーからオイル漏れがあったり車高が落ちてタイヤに偏摩耗が出ているようならサスキットの交換。 大規模なものになるとエンジンやトランスミッションのオーバーホール等々、施す項目は山ほどあります。 どの程度の作業が必要になるかは購入した旧車のコンディションと、かけられる予算次第。 理想的なのは、旧車やヒストリックカーに強い自動車整備工場と相談して進めること。 リフレッシュが終わり、アライメント調整といった最適化が終了したら、そこが旧車ライフのスタート地点になります。 なんて偉そうなこといってますが、私のS15も、そろそろエンジンのオーバーホールを考えなければならない頃合い。 頑張ってお金を貯めないとねー。 ■念願のヒストリックカーを購入。楽しいカーライフを送るハズだったのに 私の親しい友人が、ちょうど今回のテーマにピッタリの体験をしていました。 友人が購入したのは、旧車よりもヒストリックカーに近い年式のクルマ。 有名な専門店で購入し、ボディはピカピカ、エンジンもブロックにパフがけが施され、新車のように綺麗なクルマでした。 レストアも終了しているとのことで、友人はさっそくモデファイに着手。 ボディにオールペンを施し、シートもボディカラーにあわせて張り替えるなど、自身が思い描いたクルマを作り上げます。 ただ、オーバーホール済みというエンジンはとても不調で、度々、出先で不動になってはレッカーを呼び、専門店に担ぎ込まれて入院。 所有していた期間のほとんどは修理で入庫中、しかも修理費用はしっかり請求されて自腹という有様でした。 当初、全面的に専門店を信用していた友人でしたが、次第に不信感が募り、その車種を専門に扱う自動車整備工場に持ち込みます。 ザッと診てもらったところ、エンジンはオーバーホールこそ行われているものの組み立てに異常があり、それは「何度、入庫しても原因が分からない」といったものではないこと。 他にも専用のブッシュが使用されるべき箇所に汎用のプラスチックパーツが使用されるなど、高かった価格に見合わないレストアが施されていたのが分かりました。 自動車整備工場から修理と、最低限の正常化にかかる費用の見積もりをだされますが、精神的に疲れていた友人はクルマを売却。 クルマ趣味から降りてしまいました……。 もちろん一番、疑問に思うのは専門店の態度ですが、もし最初のモデファイにかけた費用をリフレッシュやコンディションの確認にまわしていたら、別のカーライフが送れたと思います。 ■古いクルマを手に入れたら、信頼できる自動車整備工場で診てもらうべき この顛末を横から見ていて学んだのは「旧車やヒストリックカーを購入したら、ショップが専門店であっても、念のために信頼できる自動車整備工場に診てもらった方がいい」ということ。 ショールームには何台もの綺麗なクルマが並んでおり、同行した私も「経験豊富な専門店なら問題ない」と思ってしまったことを反省しなくてはなりません。 繰り返しになりますが、念願だった旧車の購入を果たしたら、思い描いた理想に向かってチューニングやモデファイを進めたくなるものだと思います。 けど、そこはまだスタート地点の前。 まずは本来の性能に戻すことを最優先に、リフレッシュを進めましょう。 それが結局、将来の大きな出費を防ぐ保険になりますから。 [画像・AdobeStock、ライター・撮影/糸井賢一]
■クルマの汚れは心の荒みのあらわれ? 洗車はクルマのコンディションを確認する絶好の機会。 生きてりゃ何もかもがうまくいかず、心が荒むことだってあります。 15年くらい前のことだったかな? 所用で実家に行ったところ「あれ(筆者)が、汚れたままのクルマに乗っているのか」と、今は亡き父がつぶやいていたそう。 うまくいってないのを表に出さないよう、ふるまってはいたんですが、クルマの汚れという形であらわれていました。 以来、「クルマの汚れは心の荒みのあらわれ」と、なるべくきれいな状態を維持するように心がけています。 まぁ、今もって心も懐も余裕がないんですけどね! ■洗車は洗車機派。けれど長くコンディションを維持したいのなら、やっぱり手洗いをオススメ 1999年に新車で購入したS15。 購入したての頃は、自分でもひくほどの猫かわいがり。 当時は田舎の実家で暮らしており、自由に使える庭あり・水道ありの環境をいいことに、好きな時間に好きなだけ洗車を行っていました。 けれど日々、乗っていればクルマは傷つくもの。 都内の集合住宅に引越し、青空駐車となったこともあるのでしょう。 経年劣化でゴムパーツはちぎれ、ウィンドウモールは色あせて変形。 購入から15年を経た頃から、あちこちにサビが噴出してきました。 整備工場にサビの除去を相談したところ「さびた箇所の周辺は、さびやすい状態になっている。一部だけサビを取って再塗装しても、すぐにまたサビが出るから、あまり意味がない。やるなら広い範囲を処置しないと」といった旨の返答をもらいます。 「いずれサビ除去のためにオールペンを」との考えに至ってから、洗車傷を作ることの後ろめたさもなくなりました。 そんな経緯から私の洗車スタイルは、普段はガソリンスタンドの洗車機で。 ガンコな水アカやイオンデポジットが目立ってきたら、プロの洗車ショップにお願いするといった形になっています。 ※イオンデポジット:水滴が乾き、残った成分がボディに蓄積した現象 ただ、これはあくまで私の考え方であり、クルマとの接し方。 ボディにウォータースポットやイオンデポジットを作らぬよう、洗車は曇りの日を選び、十分にエンジンが冷えてから行う。 洗車傷を極力増やさぬよう、洗車と拭きあげはやさしく行い、最後はワックスで保護。 可能な限りオリジナルのコンディションを維持する姿勢は、尊敬すべきクルマとの接し方だと思います。 ※ウォータースポット:水滴がレンズの役割となり、太陽光を集めてボディや塗料を痛めてしまう現象 ■拭きあげ時にチェックを行うポイント 洗車機での洗車を終え、拭きあげの際は、当たり前ですが車体全体を見回すもの。 各所をチェックし、劣化しているパーツの見極めや、早期に異常を見つける機会としています。 参考までに、S15のボディまわりで要注意な箇所や、ケアが必要と思っている箇所を挙げると……。 ●各ウィンドウモールの劣化具合。最近は反って浮き上がっているので、機会があったら交換したいところ ●リア側のサイドウィンドウの水漏れ具合。サイドウィンドウの内側についた水滴のアトから、どの程度、水漏れがおこっているのかを推測。あまりにひどくなってきたら、整備工場に相談ですね ●トランクリッド内側のサビを確認。スポイラーを後付けにしたせいか、ネジ穴からサビが発生。補修後、しばらくすると再発しています ●サイドミラーの塗装剥がれの確認。塗装が剥がれても機能に問題はないのですが、やっぱりみすぼらしいので、こちらも機会があったら再塗装したい箇所 ●ワイパーのサビ具合の確認。目立つようなら紙ヤスリでのサビ取りと塗装。 ●Cピラーに発生したサビの進行具合を確認。ボディ中、一番の懸念となっている箇所。進行具合によっては、オールペンの実施を決めなければなりません。 チェックとは関係ないのですが、拭きあげの途中で身に覚えのない傷を見つけると、せっかくクルマがキレイになってアガったテンションが、一瞬で冷めてしまいますよねー。 あとボディではありませんが、タイヤやブレーキ回りといった消耗品の摩耗も確認しています。 住んでいる集合住宅は駐車場との距離が離れており、クルマに乗るとき以外は駐車場に向かわない環境。 つい消耗品の目視確認を怠ってしまいがちなんですよね。 ■クルマ好きは愛車が汚れていると落ち着かない? クルマが好きな人ならば、クルマが汚れていると服が汚れているように、どこか居心地が悪くなるものです。 手洗い・洗車機はそれぞれのオーナーの考え方ですが、せっかく洗車をするのですから、拭きあげ時はボディや足回りのチェックを行ういい機会になると思いますよ。 意識してチェックをする機会を作らないと、例えばタイヤのミゾが無くなっているのにも、意外と気が付けないものですから。 [画像/AdobeStock ライター・カメラ/糸井賢一]
購入から23年をむかえた愛車のS15。 3度目の車検をこえた辺りから、さまざまなパーツが寿命をむかえはじめます。 ベルトなどの経済的な負担の少ないパーツは定期的な交換を、コンプレッサーやオルタネーターといった、おいそれと交換できないパーツは日頃から気を配りつつ、整備工場に行く機会があったら確認をしてもらっていました。 それでも予想もしていなかったパーツが不意に寿命をむかえ、立ち往生を強いられることがあるもので……。 ■突如、発生したバッテリーあがり。その原因は? 所用にS15で出かけて、現地のコインパーキングに駐車。 3時間かからないくらいでクルマに戻り、「さぁ、帰ろう」とキーをひねったところ……。 キュッ、キュッ……。 セルの動きが弱々しく、エンジンがかかる気配はなし。 この症状は、バッテリーあがり? そういえばドアロックを(キーレスエントリーは壊れているので、手動で)解錠した際、助手席側の解錠音が、いつもと違っていた気も。 でも、3時間前までは普通に走っていたのに、いきなりバッテリーがあがる? 半年前に交換したばかりよ? コインパーキングで原因を考えていても、当たり前ですが状況は変わりません。 ひとまずJAFに救援を依頼。支払っていてよかった年会費。 日が傾いた頃、山ほどの工具を満載した、頼もしき青い車両が到着します。 このとき、S15はセルすら動かないありさまでした。 レスキューサービスのお兄さんに事情を説明すると「これくらいの年代のクルマは多いんですよね」と、即座に原因を特定。 あおむけになって運転席の足下に潜り込み、なにやら作業をはじめます。 結論からいうと、バッテリーあがりの原因はオルタネーターやバッテリーのトラブルではなく、ましてや室内灯の点灯しっぱなしでもない。 ブレーキペダルの根元近くについていている『ブレーキペダルストッパーラバー』が寿命で破砕。 ブレーキランプのスイッチが入りっぱなし(ブレーキランプが点灯しっぱなし)になったため、起こったものでした。 硬貨を用いた応急処置(このとき、「応急処置が外れたときのために」と、運転席にあおむけで潜らされるスパルタレッスンがあったことを記しておきます)ののち、ジャンプスタートでエンジン始動。しばらく様子をみてから、路上でのエンジン停止に怯えつつ帰宅の途につきます。 翌朝、あらためて車内を確認すると、フロアマットの上に黒いプラスティックの破片が落ちていました。 主治医の整備工場に行き、パーツを取り寄せ後に修理。 バッテリーあがりの原因は、レスキューサービスのお兄さんがいっていたとおりでした。 修理代はブレーキペダルストッパーラバー代と周辺の点検込みで3000円。 ブレーキペダルストッパーラバー自体の金額は500円くらいです。 車種やモデルによっては備わっていないパーツかもしれませんが、もし旧車を購入するのなら、保険としてブレーキペダルストッパーラバー(もしくは、それに相当するパーツ)を交換しておくことを、強くオススメします。 わずか1円玉ほどの小さなパーツですが、壊れるとたいそうな騒ぎになります。 ■今後のバッテリーあがり対策にバッテリージャンプスターターを購入! バッテリーあがり騒動から数日後。 その日もS15で出かけようとしたところ……。 今度はセルがウンともスンともいわねぇ! 再び発生のバッテリーあがり。 件の日にバッテリーを完全放電させたから、お亡くなりになったのか!? とりあえずバッテリーあがり問題は後回しにして、公共の交通機関を使って出先に急行します。 その帰り道、バスの中で「これまでバッテリー回りに問題が起こらなかったのが幸運だったのだ。今後は、急なバッテリートラブルは発生するものとして対策を講じよう」と心に決めます。 ちなみに今回のバッテリーあがりは、整備工場で見てもらったものの原因は不明。現在、半年ほど経っていますが、再発はしていません。 ■バッテリーあがり対策として考えたのは 1:予備バッテリーを購入する2:バッテリー充電器を購入する3:バッテリージャンプスターターを購入する の、3案。 最終的には持ち歩きも容易で、出先でのバッテリートラブルにも対応できる「3:バッテリージャンプスターターを購入する」を選択。 ネットであれこれと比較し、コスパ的に妥当な商品を購入しました。 とはいえ、バッテリーあがり対策といえば1と2が当たり前だった時代のおっさんです。 手元に届いたバッテリージャンプスターターの小ささもあって、その性能には懐疑的でした。 説明書に従って充電し、S15のバッテリーに接続。 「ギリ、エンジンがかかる程度のものだろう」と、弱いセルの動きを想像してキーをひねると……。 「キュッ、ズォン!」 即、始動! バッテリーは空っぽだったにもかかわらず、フル充電時のようなセルの動き! なにコレ、すごくね!? 最近の小型充電池の高性能さを、あらためて見せつけられ、その場で「バッテリーあがりにはバッテリージャンプスターター派」への転向をはたします。 夏場の高温を考えると車内に放置できない、月に一回、充電が必要といったところが面倒ですが、バッテリーあがりの不安が大きくやわらいだのですから、買って正解だったと思っています。 ブースターケーブルもトランクから下ろせますし。 最中は気が気ではありませんでしたが、終わってみれば勉強になったバッテリーあがり騒動。 私の知る限り、旧車や中古車購入後にすべきこととして「ブレーキペダルストッパーラバーの交換をしろ」と記されているガイドはなかったので、あらためてオススメしておきます。 いくらバッテリーを新品に交換しても、ブレーキランプストッパーラバーが外れるだけでバッテリーはあがり、出先の駐車場で立ち往生を強いられます。 ■旧車に限らず、バッテリートラブルは起こるもの JAFの「ロードサービス出動理由」ランキングでも、バッテリートラブルは1位(2021年)と発表されています。 バッテリージャンプスターターをクルマに乗せておくことで、完全ではありませんが対策になります。 ブースターケーブルによるジャンプとは違って、他車の補助なく再始動できるのも強みですね。 S15に乗り続けていれば、また予想もつかなかったパーツや装備が寿命をむかえて、右往左往するのでしょうね。 不安半分・楽しみ半分の心構えで、乗り切って行きたいと思います。 [ライター・カメラ/糸井賢一]
前回は固着したネジの緩め方について書きましたが、今回はやむを得ずネジ山を破損してしまった場合の「ネジ山再生方法に」ついてご紹介いたします。 旧車がメインのWebメディアとしては随分地味な内容が多い筆者ですが、全国のさまざまなイベントで雄姿を見ることのできるクラシックカーには、こうした地道な作業を伴うオーナーの努力の上に成り立っているということも、ぜひ頭の片隅に入れて置いていただけると幸いです。 *記事の内容は個人の見解でもあるので、作業は自己責任でお願いいたします。 ■修正タップをたてる 完全にネジ山が潰れてしまったわけでもなく、一部残っている。あるいは、カジリやネジ山が変形したボルトを抜いたことで一部変形してしまったときは、同じサイズのタップを経てることで修正することができます。 もしナット側のネジ山が変形して、同じサイズのボルトが回らないくらいきつくなったときは、無理に締め込もうとしないで一度修正タップをたててみましょう。 ネジ穴に固着したボルトが折れて残ってしまい、ドリルで「もいでいく」際は、ドリル径を少しずつ大きくしていきます。 ネジ径の8割くらいのドリルまで使ったら、あとは元のネジ穴と同サイズのタップを立てれば再生できます。 ネジを切るための正確な「下穴径」は、「ネジ 下穴」で検索すると一覧表が出ますが、概ねネジ径×0.8前後と覚えておくと便利です。 長年使っていなくてサビや埃でネジ山が埋まってしまったり、再塗装や再メッキで嵌めあいがきつくなってしまった場合にも修正タップは有効です。 自動車用のネジの場合、嵌めあいの精度は、手でボルト・ナットが抵抗なく回せるくらいが目安だそうです。 修正タップは市販のタップセットを揃えるのが簡単ですが、よく使うサイズは奮発してスパイラルタップを用意しておくといいかもしれません。 タップハンドルもセットに入ってるタップハンドルの他に、チャック式の小型のハンドルも用意しておくと便利です。 ■ナッターを使う クルマに限らずDIYで何かを作ったり、リノベーションを楽しんでいる人なら持っておいて損はないツールに「リベッター・ナッター」があります。 本来「リベット」や「カシメ」で薄板同士を固定する役割なのですが、ナッターとして使えば、板の外側から反対側にナットをカシメて固定することができるという優れモノです。 裏側に手が入らないところにパーツや板材をネジ止めするときに重宝します。 本来はM4のナベネジで車体側の外接ナットで固定できるはずのスバル 360のテールランプ。 しかし、筆者が入手した時点では下側のネジ山が潰れていて、長年上側のネジだけで固定している状態でした。 この際、ナッターでネジの再生をすべく、まずは6mmの下穴を開けます。 「ブラインドナット」と呼ばれるカシメ型のナットを、「マンドレル」と呼ばれるネジを切ったシャフトに取り付けます。 下穴にマンドレルに取り付けたブラインドナットを、差し込み穴に対してマンドレルが垂直を保っている状態でグリップをしっかり握ります。 ブラインドナットをカシメてからマンドレル後ろのツマミを左に回して、ナットからシャフトを抜けば完成です。 これで、外接ナットが復活。 普通にM4サイズのビスで固定できるようになりました。 ブラインドナットを「カシメる」際は、グリップの手ごたえが変わったところで、少し力を入れて動かなくなったあたりで止めるという微妙な力加減が必要です。 引きが足らなければナットの固定ができず、引きすぎたらシャフトが抜けてネジ山を潰してしまいます。 最初は適当な薄板で練習して慣れる必要があるかもしれません。 ■ある程度自分で機関部のDIYメカをしたい、クラシックカーのレストアをしたいという人はリコイルヘリサートを 「リコイルヘリサート」は、エンジンブロックやバンパーステーの雌ネジ部分が潰れてしまった際にネジ山を復活させる道具です。 最近は、アマゾンやアリエクスプレスなどでM5、M6、M8、M10、M12の補修キットが買えます。 アメリカ車、英国車のオーナーは、更に奮発してユニファイネジ対応のリコイルヘリサートキットを買っておけばもう万全でしょう。 かいつまんで説明すると、潰れた雌ネジを一旦ドリルでもみ切り、特殊なサイズのタップで一回り大き目のネジ山を切り、内側がネジ山と同じサイズ・形状・ピッチになっているコイルを挿入し、雌ネジを再生する工具です。 ▲写真はM6サイズ用コイルの下穴 まずは、ネジ山を再生するコイルインサートを入れるために、潰れたネジ穴に付属のドリルで指定のサイズの下穴を開けます。 次に、付属の指定のタップでコイルインサート(M6)を入れるためのネジ山を切ります。 中央の引きばねのようなコイルですが、内側はM6サイズのナットのネジ山と同じ形状になっています。 数字の7のような形をしたハンドルの先に切り欠きがあり、コイルの中のまっすぐな部分をひっかけます。 先ほどタップを切ったネジ穴に、ハンドルに取り付けたコイルを入れ右方向(時計回り)にハンドルを回し、コイルを挿入します。 反対側からコイルの先が出ないところで止めます。 コイルを挿入したらハンドルを抜き、コイルを入れた方向から、今度は付属の丸棒を勢いよく差し込み、コイルの余分な部分を折ります。 この際、反対側からコイルが飛び出した状態で折ろうとするとコイルが伸びて変形し、ボルトが入りにくくなってしまいます。 こうなったときは、コイルの伸びた方をラジオペンチか先の細いプライヤーでつまんでコイルを引き抜き、もう一度新しいコイルを挿入してください。 表側は多少飛び出していても、ボルトを締めこめば飛び出している部分も中に入っていきます。 ■工具と技術は必要ではあるものの、潰れたネジ山を再生する方法はある 腕のいいメカニックなら「そもそもネジを壊さず外す」なんていいますが、古いクルマをいじっているとなかなかそうはいかないものです。 普通はネジを破損してしまったとなれば途方に暮れるかもしれません。 しかし、少々高いスキルを要し危険も伴う作業もありますが、ネジを再生することは可能です。 DIYメカニックでワンステップ高いところ目指してみるなら、ネジの修正方法を覚えておくのも悪くないかと思います。 ただし、作業には危険が伴います。 指定の手順で、ときには工具店のスタッフ等詳しい人の指示のもと、くれぐれも無理はしないでくださいね。 技量に自信がなければ最初からプロにお願いするなど、安全には配慮をお願いします。 [ライター・画像 / 鈴木 修一郎]
普通の人なら、ネジなんてドライバーかスパナで回せば緩むんじゃないの?と思われるかもしれません。 ですが、旧車王ヒストリアの取材対象になるような年式のクルマの場合、長年の使用でネジ山の隙間に埃が詰まったり、何度も再塗装されたために塗料が固着したり、ネジ同士が錆び付いたりなど、緩めることが困難になることが往々にしてあります。 その際に、無理にネジを回そうとしてネジの頭部分を破損する、いわゆる「ネジをナメる」ことで回せなくなったり、ネジが中で折れてしまいネジが取れなくなるという事があります。 ■基本は緩めるネジにあった工具を使い、強引に回さない ナベネジ、皿ネジの場合は必ず頭の切れ込みの大きさにあったドライバーを選びます。 切れ込みに入ればいいと小さいドライバーで無理に大きなネジを回そうとすると、切れ込みを破損する「ナメる」原因になります。 六角ボルトの場合はなるべくメガネレンチ、ソケットレンチを使います。 片口スパナやモンキーレンチは「ナメる」原因になります。 どうしてもスパナがやソケットレンチが入らない場所、手持ちに合うサイズが無い場合など、やむを得ない理由がある時以外は極力使わないようにしてください。 ■固着したネジの緩め方 まずは、CRCなどの浸透性潤滑剤をネジに吹き付けます。 鍋ネジ、皿ネジの場合、切れ込みに合った貫通ドライバーをあて、ドライバー後端をハンマーで叩いて打撃を与えると、かなりの高確率でネジが回ります。 打撃を回転力に変えることでネジを回す「インパクトドライバー」という工具も存在します。 自分でクルマを弄る人なら持っておいて損は無い工具です。 六角ボルトの場合は、同様にCRCを吹き付け、大き目のマイナス貫通ドライバーをボルトにあて、同じ要領で打撃を与えます。 ネジが回り出したら、無理に最後まで回そうとせず、回りにくくなったら一旦そこで止め、逆方向(締める方向)に回します。 この緩める・締めるの動作を繰り返しているうちに、ネジ山に詰まっているサビやチリが剥がれ、CRCが浸透していきます。 次第に回転角度が大きくなり、回転も軽くなり、最終的にネジを外すことができます。 DIYのお供として、CRCやMD-40などの浸透性潤滑剤が必須アイテムなのは言うまでもありません。 摺動部の潤滑よりも、固着部分の潤滑剤としてのほうが重要という方も多いと思います。 最近は「凍結浸透ルブ」という、ボルトを凍結収縮させることでサビや固着部分にクラックを入れ、潤滑剤を浸透させやすくするスプレーもあります。 ■ネジの頭をナメてしまった場合の緩め方 ドライバーやスパナがネジの頭の切れ込みや角をえぐり取ったときのグニッとした感触は、なんともいやな物です。 プラスネジの場合は、糸ノコやディスクグラインダーでネジの頭に切れ目を入れ、マイナスドライバーで緩めるという方法があります。 六角ボルトの場合、もしも12角のメガネレンチかソケットでボルト・ナットの角をナメかけた!と思ったら、即作業を中止して、6角のメガネレンチかソケットで作業を再開してください。 12角よりも6角の方が、ボルト・ナットに対する接触面が増えるためです。 ボルト・ナットの角が少しえぐれた程度なら、6角のメガネレンチでボルト全体を回せば持ち堪えてくれる可能性はまだまだあります。 完全にネジの頭が潰れてしまい、ドライバーもスパナ・レンチでは回せなくなった場合、バイスプライヤー、ロッキングプライヤーと呼ばれているプライヤーで直接ネジを掴んで回します。 バイスプライヤーは鋼鈑やパーツを貼り合わせるときの仮止めにもよく使うので、2~3種類は持っておいて良い工具だと思います。 ■破損したネジを外す専用工具を使う 最近は「ネジザウルス」という、破損したネジを緩める専用のプライヤーもあります。 ネジザウルスブランドを展開する「株式会社エンジニア」では、「ネジレスQ」という外れなくなったネジを外すための相談も受け付けています。 ネジの頭が完全に破損したり折れてしまった際は「エキストラクター」という工具を使います。 逆タップとも呼ばれ、テーパー型のタップに左回りのネジ山が切られています。 ナメてしまったネジの頭にドリルで垂直に穴をあけ、エキストラクターを左回転でねじ込んでいきます。 ポンチで位置決めをしてから、細いドリルで垂直に穴を開け、順番にドリル径を大きくしていきます。 ボルトに開けた穴にエキストラクターを差し込み「左回り」に回転させると、折れたネジが抜けるハズなのですが、撮影時はうまくいかず、ネジ山を別の方法で再生させました。 その様子が次項です。 ■いっそネジに工具を直接溶接してしまう 溶接機を持ってる人限定ですが、余っている工具や不要になった工具を、ネジに直接溶接してしまうという方法もあります。 熱を加えることで、膨張、収縮を繰り返し、固着部分が剥がれるという効果も期待できます。 いずれの方法を用いてもネジが緩みも外れもしないとなれば、あとはドリルやボール盤でネジをもみ切り、修正タップやリコイルヘリサートを使ってネジを再生することになります。 次回はネジの再生手段について書きたいと思います。 [ライター・画像 / 鈴木 修一郎]
旧車、クラシックカーの維持といえば、部品供給や整備の問題と並んで所有の障壁となるのが保管場所ではないでしょうか。 生憎、日本は気候変動が極端で湿度が高いため、クラシックカーに限らず美術品や楽器類などを保管するには不向きな環境だといわれています。 耐候性も考慮されている自動車はまだいいほうで、フライトごとに整備が必要になる航空機になると、日本の環境では博物館でも動態保存はほぼ不可能ではないかと感じます。 慈悲のない経年劣化を少しでも食い止める方法について書いてみたいと思います。 ■王道はシャッター付き屋内ガレージ これができれば苦労しないといわれそうですが、やはり愛車の保管方法の王道といえばこれでしょう。 直射日光や風雨から愛車を守る方法としてこれに勝るものはないと思います。 保管はもちろん、メンテナンスやDIYレストアも夢ではありません。 但し、建屋のガレージを用意するにあたって気をつけなければいけないのが、どこまでもついて回るの湿気の問題です。 外気や雨をシャットダウンしたいがために、あまりに密閉性の高い構造にしてしまうと、もっとも避けたかったはずの湿度が上がってしまいます。 結露も発生しやすくなり、結局錆の原因になったり、本革内装にカビが発生するという事態に陥ります。 高温で蒸れた密室内は不快で中にいて我慢できるものではないというのは、人もクルマも同じことです。 換気口の設置等必ず換気を意識した構造にするのが鉄則です。 市場価格が億単位のスーパーカーやヴィンテージカーとなると、エアコン付きのガレージを用意するというのはそれなりの理由があるわけです。 エアコンとまではいかなくても、換気扇の設置でもかなり有効かと思われます。 キャブ調整や暖気でエンジンをアイドリングさせる際の酸欠事故を防ぐ効果も期待できます。 筆者の借りているガレージは鉄骨に波板を貼っただけの簡素なものですが、湿度や換気のことを考えるとこのくらいがちょうどいいのかもしれません。 ちなみに、屋内ガレージの類で侮れないのが、農村部の古民家に残っている、昔ながらの土蔵や納屋、家畜小屋等です。 昔の人の知恵とは素晴らしいもので、茅葺屋根の木造の土壁の建屋というのは温度変化が小さく、湿度も一定に保たれ、古い自動車を長期保管するには適した環境と推察します。 最近はなかなかそういう話も少なくなりましたが、昔はよく納屋や土蔵を整理していたらオドメーターが5000kmも進んでいないような1960~1970年代の国産旧車が新車当時に近い状態のまま見つかったという話をよく聞いたものです。 そういうクルマの中には他に所有しているトラックやトラクターと一緒にまとめて税金を払っていたことで、長年車検切れの状態でも登録抹消されず、納車時のパンフレットや保護ビニールが残ったまま1桁ナンバーまで引き継げたというケースも少なくありませんでした。 ガレージ内で保管するにしても、動かす頻度が週末だけとか月に数回だけというのであれば、ガレージ内で簡易的なものでもいいので埃除けにカバーをかけておくのもいいでしょう。 あるいは、外壁塗装時に近くに駐車しているクルマを塗装ミストから守る養生カバー(500~1000円くらい)でも十分です。 これであとはコンプレッサーでもあればエアダスターで埃を飛ばして、スプレー式の水なし洗車クリーナーで拭いておけば水洗いの必要もなくなります。 ■侮れないカーカバー カーカバーを使うとボディに傷がつく、湿気や汚れがたまって意味がない、という意見も耳にします。 しかし、結論からいえば直射日光による紫外線や風雨、土埃等の直撃を防ぐ効果は確実にあります。 何もしないで露天駐車するよりは間違いなくボディへのダメージは防止できます。 ただし、必ず最低限、防水生地、あるいは撥水加工されて生地で透湿を確保。 さらに裏起毛でボディ接触面がソフトなものを選び、脱着は天気のいい日に限り、定期的なメンテナンスを怠らないというのが前提です。 ▲筆者が初めて使った防水、裏地付きカバー。フェンダーミラー仕様は注文品(現在は廃版) 安価なカーカバーは安物買いの銭失い、高価なものほど良いというのが顕著に出る製品です。 前述の屋内ガレージ保管の埃除け用であれば、裏起毛なしのカバーでもいいと思います。 しかし、屋外で使うにはボディにこすれてしまいますし、透湿性のないカバーでは湿気がこもり錆の原因にもなります。 サイズにもよりますが、価格帯としてはある程度有名なメーカーの汎用品で20,000円前後から、車種ごとに専用サイズが用意されているオーダーメイド品では5万円~10万円を越えるものもあります。 毎日、日常的に使うクルマでは難しいですが、いわゆる旧車に位置づけられるクルマで、普段の実用目的ではなく、乗るのは週末程度、月に数回というのであればカバーはかなり有効です。 カバーを使用するときは必ず、ボディを一旦綺麗に洗いワックスをかけておきます。 あとはボディ側の面に接する裏起毛側に汚れを付着させないように注意しながらカバーをかけます。 何か月もかけっぱなしにするのではなく、晴れた日は週に1度カバーを外して虫干しし、スプレーワックスやボディクリーナーで埃を取るだけでOK。 これで何か月も水洗いしなくても済むようになります。 ▲カバーをかけて2週間、内3~4日ほど雨でもこの通り どうしても雨の日に乗らなければならない、あるいはカバーを外して乗っているうちに雨に降られてしまったときは、天気が回復してから、雨水を拭きとってカバーをかぶせてください。 ただしカバーには寿命があり、長い人では4~5年は使えたというケースもあるようですが、概ね2~3年、条件や気候によっては数か月~1年で要交換となるケースもあります。 事実、日当たりや、購入時の気候変動等で大きく変化するようで、同時期に複数購入して同じ敷地内で使っていても顕著に差が出るそうです。 最近は裏起毛付きの撥水、透湿機能付きのカバーで1万円以下で購入できるものもあり、一度試したことがりますが、ものの一か月で破れて使い物になりませんでした。 汎用性が高く価格も手頃で耐久性もある手堅い製品としては、まずは2万円前後で購入できるCOVERITE製がお勧めです。 専用品が欲しいという方は、オーダーメイドで車種別、ラインナップにない車種や社外品エアロ付きなどは持ち込みで採寸に応じてくれるメーカーもあるので、そちらを検討してみるのもいいかもしれません。 ▲現在筆者が愛用しているCOVERITE製カバー。このロゴのカバーを一度は見たことがある人も多いのでは。まずは汎用品からという人にはお勧め ■究極の保管方法「日常使用」 あるクラシックカー専門店の社長に「ロールスロイスやメルセデスの一番いい保管方法はどうすればいいのですか?」と尋ねたら「毎日、普通に乗ってください」と回答でした。 実際に技術工学的にも、機械は常時適度な負荷をかけ続けて運転すると一番長持ちするともいわれています。 本革内装は人が乗り降りしているほうがカビが生えにくくなります。 常に油脂類が循環し、機械部分が駆動していれば、偏摩耗も配管の詰りも発生せず、樹脂部品やゴム部品も柔軟性を保持することができます。 走行していれば、エンジンの熱や走行風で水気も飛び、錆の原因となる湿気を取り除くことができます。 何十年も日常使用している旧車、クラシックカーの中には年相応にヤレが進んでいるのに対して、致命的な錆や腐食には至っていないというのはよくある話です。 ある程度シンプルかつ堅牢で手堅い設計をしている車種で、なおかつ部品供給が安定している車種も存在します。 多少の不便や手間は覚悟のうえで、日常使用してしまうというのもひとつの方法です。 最後に、旧車の保管で小技をひとつ紹介します。保管場所に関係なく使える湿気対策で「除湿剤を車内に置く」という方法があります。 昔、試しにスバル360の車内に100円ショップで買った押し入れ用の除湿剤を車内においてカバーをかけて保管したところ、体感できるほど蒸れがなくなり、窓ガラスの曇りの発生も抑えられて驚いたことがあります。 但し置き型の場合、中身は塩化カルシウムのため、中身が漏れると最悪の事態になります。 取扱いには細心の注意を払う、あるいは定期的に天日干し等がいる吸湿剤を使うのもいいかもしれません。 苛酷な試練も承知で手に入れた旧車、少しでも良好で、長く現存させるための保存環境を用意するヒントになれば幸いです。 [画像/AdobeStock・ライター・撮影/鈴木修一郎]
紆余曲折を経て、ガレージを借りることとなり、電気が開通して早1年が経ちました。 ガレージ通いも、いまやすっかり日々のルーティーンです。 最近はカブオーナー(世にいう「カブ主」)で、ウーバー専業配達員の友人も同じ敷地内でガレージを借り、仕事道具のカブのメンテナンスピットとして使っています。 ときには壁にかけてあるソケットレンチや、電気をシェアすることもあります。 ■まさしく「限界ガレージライフ」? ガレージライフといえば、例えばGQやPOPEYE、BRUTUSあたりのライフスタイル雑誌に出てくるような、古い英国車と骨董品や雑貨のインテリアのファッションセンスに満ちたガレージを思い浮かべる方がいるかもしれません。 あるいはオールドタイマーやガレージ系YouTubeに出てくるような、二柱リフトもあって、加工機や特殊工具がちょっとした町工場並みの設備を揃えた「DIYメカニックガチ勢」を期待するかもしれません。 残念ながら、筆者にそんな甲斐性はなく、物置小屋に工具や設備を無理やり詰め込んだ雰囲気のガレージです。 サイズ的にも、スバル360だからかろうじて作業スペースとしてどうにか……という状況です。 ゆえに、同じ旧車王ヒストリア執筆陣のクマダ氏の記事を見ていると、これでガレージライフを名乗るのも正直穴があったら入りたいとさえ思えてくる有様です(苦笑)。 本来はあくまで、屋根付きシャッター付の月極駐車場。 ガレージや車庫というと、車両の保管場所以外に車両のメンテナンススペースという意味合いも出てくると個人的には思っています。 しかし、筆者が借りているガレージは昔の2Lのクラウンクラスを基準に最低限保管できる間取りのようです。 2ドアクーペのようなドアの大きい車両では、片方に寄せないとドアを開けるのにも苦労します。 おそらく現在のフルサイズSUVではかなり乗り降りが大変だろう、というのも予想がつきます。 賃料が比較的安価で、ほとんどの利用者がレンタルコンテナとして使っているのも、自動車の保管場所(特に本来室内保管が必須の高級車)には小さいという事情があると思われます。 ■昔の小型車の趣味車やオートバイとなると 車庫としては小ぶりですが、筆者のような昔の360cc規格の軽自動車をレストアしたいとなると事情は変わります。 エンジンの不調で一時的にセリカLBを保管したときは、ボンネットを開けて圧縮を計ったり、ラジエターホースを外したりするにも狭くて大変でした。 しかし、スバル360程度なら工具棚や機材を車庫内に設置して、外した部品を周りに置いてもどうにか作業スペースを確保できます。 現在は足回りもすべて外して、モノコックのみの状態ですが、単管パイプと自在キャスターを組み合わせた台車の上に載せてあります。 手で押すだけで前後左右に動かせるので、タイヤが装着されている状態より、狭い場所の移動は楽かもしれません。 ちなみに、この単管パイプは自宅に簡易ガレージを作ろうとしたときのもので、どうにかここで役に立ってくれました。 ■収納は自作の棚 いくらスバル360が小さいといっても、工具類や部品、スプレー等の置き場所は限りがあります。 内見したときに即思いついたのが、波板の壁の梁を利用して棚を作ることでした。 不動産屋さんに聞くと、壁や柱への多少の穴あけはOKとのこと。 よく見ると古い鉄板ビスがそのままになっていたり、床にアンカーを打ち込んであったりします。 退去時に自費で撤去さえすればいいとのことで、寛容な大家さんには本当に感謝です。 ちなみに、壁にかかっている流木らしき物体は、なぜかこのガレージの屋根の上に載っていた状態で、これは電気工事の際に見つけたものです。 エアガンは職場の引っ越しの際に出てきた、社長が昔遊んでいたというつづみ玉型のボルトアクションの空気銃、今ではガレージのオブジェになっています。 ■極力、もらいものや廃品を再利用 棚は新品の木材を使いましたが、配電盤は廃業したパチンコ店から出た中古、照明器具は職場の移転で出た廃棄品の再利用です。 中の工具や機材は20年間かかって集めたものです。 ボール盤は元土木関係のお隣さんからもらったもの、コンプレッサーは昔の職場の自転車屋でエア漏れを起こしたコンプレッサーを譲り受け、自力でエア漏れを直したものです。 一方で、溶接機はネットで買った格安のノンガス半自動溶接機。 仕上がりはそれなりですが、DIYで腐食部分の切り継ぎをする分にはどうにか使えるという感じです。 ■自分のガレージでDIYで弄ればリーズナブルになんて思われがち 専門業者に出せば最低でも数百万円といわれているレストア費用も、確かに自分でやれば部品代、油脂類代、塗料代だけで済みます。 全部自分でやれば数十万円でフルレストアできるのでは?と思ってしまいますが、なかなかそうはいきません。 筆者もここまで工具類を揃えるのに20年以上かかりました。 整備マニュアルと首っ引きでエンジンやサスペンションを自力で脱着して分解、組立ができるようになるまでに10年、そろそろ鈑金も自分でやってみるかと思い始めるまで15年かかりました。 自分でやってみて(仕事でもするようになって)、改めてレストア費用には工賃はもちろん、ノウハウの蓄積や、想定外の損傷に対応するための労力など、相応の意味があるのだなと思い知らされます。 筆者のスバル360は完全に個人の趣味なので、あえて仕事で請けるようなレストア作業なら絶対にやらないような(採算が合わないであろう)やり方とペースでのんびり作業しています。 クルマを実用品として考えている人は、安くクルマを買ってDIYで整備すれば安上りだと考えてはなりません。 やっぱりクルマの値段や整備の工賃には意味があり、それなりの金額を出して買ったクルマを信頼できる整備工場に出すのが費用対効果では安くつきます。 何かしら得るものがあるという意味で苦労は買ってでもしろという言葉があります。 しかし、何も得るものがなくても苦労したことの達成感に価値を見出せる人ではないとガレージライフは向いてないかもしれません。 [ライター・撮影/鈴木修一郎]