旧車の魅力と知識

世界に誇るミニオフローダー!スズキ ジムニーJA11・JA12・JA22の違いを徹底紹介
旧車の魅力と知識 2023.12.29

世界に誇るミニオフローダー!スズキ ジムニーJA11・JA12・JA22の違いを徹底紹介

スズキ ジムニーは、軽自動車でありながら本格的な悪路走破性能とレトロなデザインが支持され、半世紀以上高い人気を維持しています。 今回はそんな歴代ジムニーの中でも根強いファンが多い、2代目ジムニー「JA11型」「JA12型」「JA22型」について紹介します。 半世紀の歴史を持つ名車!スズキのジムニーとは 今でも幅広い年代に愛されいているジム二ーですが、歴史をたどると初代ジム二―が発売されたのは1970年。ジムニーは2022年現在からすると、50年以上前から販売されている歴史のあるモデルです。 ジムニーの一番の特徴は、ラダーフレームを採用していること。ラダーフレームとは、梯子上のフレームを持つ構造のことで、居住空間であるボディと分けることで、悪路でもへこたれない高い剛性を実現します。その剛性は本格的で、一般的な車では到底走ることができないような荒れた路面を走行しても、ボディが歪むことはありません。 そんな硬派でオフローダーとして、本格的な走行性能を持ったジムニーですが、最近では街乗りをメインとしたライトユーザーが多くなってきました。その結果、現行型のJB64型では、使い勝手や乗り心地をより乗用に適したものに改良されています。 そんな、日常使いでの扱いやすさを取り入れるきっかけとなったのが、2代目の第3期に当たるJA11型ジムニーなのです。 ATモデルが登場し乗用車志向になったJA11型 1990年に発売されたJA11型ジムニーは、1992年の3型からモデル初の3速AT(オートマチックトランスミッション)を採用。ATモデルが登場したことにより、これまでよりも気軽に乗ることができるようになり、ジムニー愛用者が増加するきっかけになりました。そして、JA11型の特筆すべきポイントは、F6A型エンジンとローギヤードというパワートレイン。 F6Aエンジンは、スズキがモータースポーツでの使用を前提に開発を行ったエンジンで、鋳鉄製シリンダーブロックを採用した高い耐久性が特徴。また、ローギヤードの変速比設定は、極低速での操作性を向上させ、悪路走破性に大きく寄与します。 ただし、鋳鉄製のエンジンとローギヤードの変速比は、オフロードでちからを発揮する一方、オンロードでの日常使いではデメリットになることもあります。 重量が重くなりやすく、走行時のエンジン回転数が高くなってしまうため、どうしても燃費性能は悪くなりがちです。また、3速ATで高速道路を80km/hで走行した場合、回転数は約4,500rpmとなり、それなりの騒音を覚悟しなければなりません。 見た目はそのままに時代に合わせて進化したJA22型 1995年から販売が開始されたJA22型ジムニーは、JA11型の外観的な特徴をしっかりと残しつつ、中身を時代に合わせたモデルです。 JA11型ジムニーとの大きな違いは、エンジンがF6A型からK6A型に変わったことと、コイルスプリングを採用したこと。 低回転での使いやすさを重視し耐久性に優れたF6A型に対し、K6A型はアルミ製シリンダーブロックを採用し、特性もやや高回転よりにシフトしています。また、やや高い変速比を採用したことと合わせて、これまでJA11型が苦手だった高速走行の快適性と燃費が格段に向上しています。 そして、スプリングをリーフからコイルに変更したことでマイルドな乗り味となり、JA11型よりもさらに乗用車としての性能が向上。JA11型までは貨物車の「4ナンバー」しかありませんでしたが、乗用車である「5ナンバー」が採用されました。 より硬派なユーザー向けのJA12型 JA12型はJA22型と同じタイミングで発売された、2代目ジム二ーの最後のモデルです。高回転型のK6Aとハイギヤードの変速比を採用したJA22型に対し、本来のオフロード性能を求めるユーザーに向け、JA12型にはJA11型と同じF6A型エンジンを搭載しています。また、JA22型は動力ロスの少ない電動パワステを初採用していますが、JA12型ではエンジンによってパワステポンプを回す従来通りの油圧式。(※バンと幌は設定なし) これらの違いを見ても分かる通り、時代のトレンドに合わせ乗用車的な方向に進化したJA22型と、熟成した従来パーツを使用し信頼性を確保したJA12型とで大別することができます。 まとめ もともとジムニーは、コンパクトな車体と高い悪路走破性をもったオフローダーとして、林業をはじめとした悪路を走らざるを得ない職業の方たちをメインターゲットとしてきました。 しかし、今回ご紹介したJA11型から、徐々に乗用車としての価値観を取り入れはじめ、3代目となるJB23型、そして現行型であるJB64型へ進化。いまでは、お洒落に使える日々の足として、幅広いユーザーから人気を獲得しています。 そんな今のジムニーに繋がる2代目ですが、やはり本格オフローダーとしての素性は、現行型よりも重視されているため、より本格的な乗り味を求める方は、JA11型、JA22型、JA12型の購入を検討してみてはいかがでしょうか。  

グランツーリスモの意味とは?スポーツカーとの違いも解説!
旧車の魅力と知識 2023.12.29

グランツーリスモの意味とは?スポーツカーとの違いも解説!

「グランツーリスモ」と聞いてレースゲームや世界の名だたるGTカーを思い浮かべる方は多いのではないでしょうか。しかし、「グランツーリスモ」の生い立ちは、まだ移動手段としてまだ馬車が当たり前だった19世紀イギリスのビクトリア朝時代にまでさかのぼります。 ここでは、「グランツーリスモ」の由来や「グランツーリスモ」と「スポーツカー」の違いついて紹介しますので、参考にしてください。 グランツーリスモとは? 車乗りなら誰でも知っている「GT」という言葉ありますが、実は多くの場合で誤った意味が使われており、本来の意味はあまり理解されていないのが実情です。 「GT」は、正式には「グランツーリスモ」というイタリア語になりますが、その「グランツーリスモ」は自動車のカテゴリのひとつであって、一般的に快適に長距離ドライブをこなすことのできる動力性能と操縦安定性が優れた車のことを言います。 日本でも「GT」がグレード名に付いたモデル数多く発売されてきましたが、その中でもトヨタ2000GTと日産スカイライン(ハコスカ・ケンメリ)は特に有名です。 「グランツーリスモ」の由来と起源 「グランツーリスモ」の起源は19世紀のイギリスにおける貴族階級の教育にあります。19世紀の貴族は子弟の教育のために家庭教師を雇って学問や教養を身に着けさせることが一般的でしたが、その最終プロセスとしてヨーロッパで2~3年に及ぶ修学旅行を行うことがありました。 そして、この旅行を「グランドツアー」と呼んだことが「グランツーリスモ」の由来と言われています。修学旅行で使う馬車は長期旅行に耐えうる丈夫さが必要でしたが、その馬車の制作の多くをイタリアのカロッツェリア(イタリア語で馬車や自動車の車体を製造する会社)に依頼したため、イタリア語の「グランツーリスモ」が使われるようになったと言われています。 「グランツーリスモ」と似た意味の言葉 「グランツーリスモ」は大旅行を意味する「グランドツーリング」から派生した言葉であり、元々は長距離走行に適した高性能な自動車を意味する言葉でした。 日本では意味こそ変わらないもの「GT」という呼び名で、独自の文化を歩んできました。 グランドツーリング(グランドツアラー) 日本では昔から高性能車のことを「グランドツーリング」と呼んでいました。そして、「グランドツーリング」を略した「GT」というグレード名が1960年代から1970年のスポーツセダンやクーペに数多く使われました。 つまり、「グランツーリスモ」と似た意味の言葉というよりも、英語の「グランドツーリング」の方が日本人にとって親しみやすかったということなのかもしれません。 「グランツーリスモ」と「スポーツカー」の違い 「グランツーリスモ」と「スポーツカー」の違いは、実はこの2つのカテゴリーには非常に被るところがあり、一概には言えないというのが正直なところです。 ただひとつ言えることは、由来の「グランドツアー」という言葉があるように、人と荷物をしっかり乗せられることが「グランツーリスモ」条件なのかもしれません。 「スポーツカー」の定義 「スポーツカー」の定義は、ざっくりと言うと運転自体を楽しむ車です。したがって、「グランツーリスモ」のように長距離移動は考えておらず、例え快適性が損なわれても走行性能に特化して車が開発されています。具体的には、ミッドシップレイアウトやそれに伴うラゲッジスペースの制限などです。 2019年7月に発表されたコルベットが、フルモデルチェンジを機にエンジンレイアウトがFRからミッドシップに変わりましたが、コルベットの新旧の比較が最もわかりやすい例かもしれません。もちろん、新型コルベットはスポーツカーの部類に入ります。 「GT」という車名は必ずしも「グランツーリスモ」ではない 国際自動車連盟(FIA)や日本自動車連盟(JAF)では、2シーターまたは2+2シーターのクーペのことを「グランドツーリングカー」と定義しています。具体的には、国内モータースポーツのトップカテゴリーであるスーパーGTやル・マン 24時間レースのGTE Proクラスで使用されている競技車両です。 つまり、「GT」という車名は必ずしも「グランツーリスモ」ではないと言えるのです。 まとめ ここまで、「グランツーリスモ」の長い歴史や言葉の意味について解説してきましたが、「グランツーリスモ」の由来や起源に驚いたユーザーも多いのではないでしょうか。 しかし、様々な解釈が存在する今日では、ユーザー自身の価値観で「グランツーリスモ」と呼ぶに相応しいモデルを選択すれば良いのかもしれません。 [ライター/旧車王編集部]

「2JZ-GTE」こそ最強エンジン!1,000馬力も夢じゃない?魅力と歴史を解説
旧車の魅力と知識 2023.12.28

「2JZ-GTE」こそ最強エンジン!1,000馬力も夢じゃない?魅力と歴史を解説

トヨタの中でも最強エンジンとの呼び声高い、直列6気筒型ツインターボ 2JZ-GTE型エンジン。すでに製造終了となっているエンジンではありますが、今でも根強い人気を誇り、そのハイパワーと類を見ない頑丈さゆえにドリフト車などに積極的に換装されています。 今回はそんなトヨタ史上最強エンジン 2JZ-GTE誕生の歴史と、その強さの秘密についてご紹介しましょう。 M型から受け継がれる名機の系譜 2JZ-GTEの源流は、ヤマハ原動機と共同開発したトヨタ直列6気筒エンジン「M型」から来ています。M型エンジンの歴史は古く、1965年に2.0L直列6気筒SOHCエンジンとして2代目クラウンに搭載されて以降、2000GTに搭載されトヨタ初のDOHCである「3M型」。230psのパワーを叩きだすDOHCターボであり、M型の最終到達点「7M-GTEU型」など、まさにハイパワーの系譜が脈々と受け継がれているのです。 その血脈を受け継いだ「JZ型」エンジンが1990年に登場。「1JZ」が2.5L「2JZ」が3.0Lの排気量で設定され80型 マークIIやS130型 クラウンに搭載されました。そして1991年、「2JZ-GTE型」は3.0L DOHCツインターボとして、最大出力280ps、最大トルク44.0kg.mの強烈なスペックを引っさげ、初代JZS14型 アリストの最上位グレードに設定。その後、2JZ-GTEは1993年にA80型 スープラに搭載され、トヨタ史上最強エンジンの名をほしいままにしていきます。 チューニングベースに最適なエンジンブロック 2JZ-GTEは当時の自主規制上限値である280PSを誇り、ツインターボを採用したことで幅広い回転域で豊かなトルクを実現しターボラグを軽減。まさに市販車向けエンジンとして、最強と言っても過言ではない実力です。 しかし、最強といわれる所以はそれだけではなく、チューニングされてさらにその真価を発揮します。 ブーストアップで450psも可能 2JZ-GTEのエンジンブロックは、アルミよりも熱に強い鋳鉄製を採用。ヘッドガスケットも高圧力に耐えられるメタル製が使われるなど、もともと3.0Lという排気量が大きいということもあり、全開走行のターボ過給の負荷にも十分耐えられるよう余裕を持って作られています。 純正ターボのブーストアップチューンでも450psの発生まで狙えてしまいますが、そこからさらに突き詰め、鋳鉄の厚いブロックを活用したボアアップを施すことで1000psを発生するチューニングカーも業界では珍しくありません。 1000ps級の2JZ-GTEは内部強化必須 ただし、それにはその負荷に耐えられる鍛造品のピストンやコンロッド、クランクシャフトなどの強化品の使用が必須。各メーカーでは鍛造ピストンや削り出し加工のクランクシャフトなどを付属したキットからブロックのボーリング加工を必要とする排気量アップを目的としたキットまで、さまざまなアイテムが発売されています。 もちろん、いくら頑丈な2JZ-GTEでも1000psにパワーアップしたからといって、常時その馬力を出しながら公道を何万キロも走行できるわけではありません。そのため、600ps以上を発生するいわゆるハイチューンドの2JZ-GTEは、ドリフトやゼロヨンなどのモータースポーツ限定で使われることがほとんど。エンジンチューニングは使用部品やアクセルの踏み方においても絶妙な均衡の上に成り立っており、少しでもそのバランスが崩れると即エンジンブローにつながるという危険性があります。 ライバルである日産 RB26DETTとの比較 当時、2JZのライバルと言われた「RB26DETT」との比較もしていきましょう。 市販車に最適な2JZ-GTE 2.6L直列6気筒DOHCツインターボのRB26DETTは、最高出力280ps、最大トルク40.0kg.mというスペックを持ち、R32型~R34型の日産 スカイライン GT-Rに搭載されました。双方のもっと音大きな違いは、RB26の2.6Lに対し2JZは3.0Lと0.4L分差のある排気量。なぜRB26DETTが中途半端な2.6Lを選択したのかというと、R32 GT-Rはレースで勝つことを目的に開発されたから。つまりR32 GT-Rが搭載するRB26DETTは、まさしくレースで勝つためのエンジンなのです。 一方トヨタの2JZ-GTE は、厳密なライフサイクルの元で管理されるレーシングエンジンではなく、市販車に搭載するフラッグシップスポーツエンジン。ターボラグを感じさせない太いトルクや、多少重量は増えても肉厚で頑丈な鋳鉄製のシリンダーブロックなど、一般ユーザーが普通に使える寛容さと耐久性が与えられているのです。 ライバルGT-Rから新型GRヤリスにも搭載される2JZ-GTE そんなライバル関係にある両エンジンですが、本来RB26DETTが搭載されていたGT-Rに、2JZを換装するという特異な事例も。R32 GT-Rの武器であるアテーサ4WDを捨て、FR化するのがもっとも簡単な方法(と言ってもエンジンブラケットやプロペラシャフトはほぼワンオフ)ですが、中にはオイルパンとデフマウントを制作し、アテーサ4WDを生かしたままという強者も存在します。 また、272psを発生する3気筒ターボを搭載し、久しぶりにスポーツカー好きを興奮させたトヨタ GRヤリスに、2JZ-GTEを縦置きに搭載した車両が、複数のチューニングメーカーから登場。さらに、アメリカのカリフォルニア州にあるチューニングメーカーから、現行型であるA90スープラに搭載されたBMW社製 B58型を捨て、2JZ-GTEに載せ替えるキットが販売されるなど、2JZ-GTEは時も国境も超え愛されているのです。 [ライター/増田真吾]

令和の今こそキャブレターの魅力を伝えたい〜後編〜
旧車の魅力と知識 2023.12.29

令和の今こそキャブレターの魅力を伝えたい〜後編〜

内燃機関である自動車のエンジンには、燃焼を行なうために燃料と空気をミックスして送り込む装置、または構造が不可欠です。 今ではほぼすべてが“インジェクション方式”となっていますが、それ以前では“キャブレター”という気化器がその役を担っていました。 その中でも、元々はレース用として開発された高性能な“スポーツキャブレター”という存在が、旧車の魅力を最大限味わいたいと思っているオーナーにとってはかなり大きいものなのです。 前編では、キャブレターにあまり触れたことが無いという人に向けて、具体的にどんな点に魅力を感じるのかをお伝えしました。 今回の後編では、もう少し具体的にキャブレターについて知ってもらいたいということで、キャブレターの起源から、主なキャブレターの種類、そして今現在入手できる旧車用の“スポーツキャブレター”についてを解説していこうと思います。 ■キャブレターの起源も知っておきたい ▲写真は1960年代のダットサンのキャブレター キャブレターは日本では「気化器」と記されますが、そもそもの「Carburetor」という言葉は炭素の「Carbon」に由来するようです。 直接の語源はフランス語で気化燃料(炭化水素を含む)のことを指す「Carburant」だと言われています。 気化燃料を供給する装置という意味合いで、機能がそのまま命名となっています。 キャブレターの起源を辿っていくと1860年にまで遡り、世界初の実用“火花点火機関(内燃機関)”である「ルノアール・エンジン」という説に行き当たります。 今の内燃機関のルーツといえる「ルノアール・エンジン」には、今のベルヌーイの定理で作動するものとは違った方式の「サーフェス・キャブレター」という気化器が使われていたようです。 作動原理を簡単に説明すると、まず燃料が半分ほど満たされた容器があります。 燃料と空気が細かい穴が空いた網状のプレートで仕切られていて、その穴から蒸発する気化燃料と空気を混合させてエンジンに送るというものです。 ただし、自然蒸発を待っているだけでは気温が低い時期には加速に使えるほどの気化が得られないので、排気ガスを導くパイプが横切らせてあり、その熱を使うような工夫が凝らされていたようです。 まさに“気化器”ですね。 ちなみにこの「サーフェス・キャブレター」の起源はもっと古いという説もあります。 今のインジェクションの技術から見れば極めて牧歌的なキャブですが、これが実用化されていた1860年代は、日本ではまだ江戸時代ですから、相当後れを取っていましたね。 その後、ベンツ社の創始者「カール・ベンツ」によって、今のキャブの原型である“ベンチュリー構造”を持つ“気化器※”が開発され、急速に機能の進化が進みました。 ※“気化器”と言うより“霧化器”と呼んだ方がしっくり来ます。 ■旧車に装着されるほとんどの“スポーツキャブレター”は“ホリゾンタル”&“2バレル”タイプな理由 旧車のエンジンに後付けで装着される高性能な“スポーツキャブレター”は、ほとんどが双眼鏡のような2つの筒が水平にレイアウトされた構造をしています。 これは、旧車に搭載されていたエンジンのほとんどが直立の4サイクルエンジンだったためです。 シリンダーが垂直にレイアウトされた直立エンジンでは、吸排気がシリンダーヘッドの側面で行なわれます。 吸気に使われるキャブレターはシリンダーヘッドの側面に装着されることがほとんどなので、必然的に水平タイプのキャブレターが多くなりました。 また、自動車のエンジンでは特殊な例を除いて4気筒か6気筒が基本のため、整備性や装着のシンプル化を図る目的で2つの筒をひとつのフロート室で繋げた“2バレル”タイプがスタンダードとなりました。 1つ1つ個別になっていると、部品点数が増え、同調作業や脱着の手間がバカにならないためです。 ちなみに「ウェーバー」や「ソレックス」などのメジャーな“2バレル”タイプのキャブレターは、バレル間のピッチ(距離)が90mmに、インテークマニホールド(以下インマニ)との固定ボルトの位置関係も統一されているので、ほとんどのメーカーのキャブは付け替えることができます※。 ※口径が違っても装着はできますが、インマニとの口径の違いで本来の性能が発揮出来ないこともあります。 ■“キャブ・セッティング”とは何をする作業? エンジンが元気にパワーを発揮するためには、適切な“燃調”が欠かせません。  “燃調”というのは、エンジンの燃焼が最も効率よくなる“混合比(空燃比)”になるように、空気と燃料の割合を調整することです。 “理想混合比”という言葉を聞いたことがある人もいるでしょう。 具体的な数値は、燃料が1に対して空気が14の割合になる混合比のことです。 この割合の混合気で燃焼すると、燃え残りが少ない完全な燃焼が行なえるという、理論上の最適値です。 「じゃあ最初からこの混合比になるように工場出荷時に調整すれば良いのでは?」と思った人もいるかもしれません。 しかしクルマのエンジンは、加速するときと巡航するときでは、求められる混合比が変わるんです。 ついでに言うと、始動時に最適な混合比もまたそれらとは異なります。 そして当然ながら、エンジンの吸気の勢いは回転数が低いと弱く、高いと強くなります。 スポーツキャブレターを装着する目的はパワーの向上なので、パワーを出すのに適した、できるだけ大きな口径のキャブが必要です。 しかし口径が大きくなると、低回転域で弱くなる吸気の勢いでは、うまく燃料が吸い出せないという問題が出てきます。 それを解消するために、低回転域と高回転域で燃料の吸い出し経路を分けて、それぞれの守備範囲で最適の仕事をさせるようにと工夫が凝らされているのが、今のスポーツキャブレターです。 そうして今のキャブでは、低回転域=スロー系、中・高回転域=メイン系と分かれた経路それぞれに、エンジンの特性に合わせて混合比の調整が必要になりますし、加速の際にはより濃い混合気が求められるので、専用の系統が用意されていて、それも調整が必要です。 そして、何よりも重要なその混合比調整の基本となる状態を整えるための、“フロート調整”や“同調”などのセッティングも欠かせません。 エンジンの燃焼具合を見ながら、最もアクセル操作に最適な反応が得られる状態に整えるのが「キャブレターのセッティング」というわけです。 ■旧車に使われる主なキャブを紹介 ノーマル車輌に装着されている純正キャブレターに換えて装着されるスポーツキャブレターにも、いろいろな種類があります。 その多くはヨーロッパのメーカーが開発したもので、“ホリゾンタル&ツインバレル”タイプを最初にリリースしたのは、イタリアの「ウェーバー」といわれています。 ここからは、日本で手に入る“ホリゾンタル&ツインバレル”タイプの主なキャブレターを紹介していきましょう。 ●SOLEX(ソレックス) 旧車に最も使用率が高いのがこの「ソレックス」です。 元々は1900年代初頭に設立されたフランスのラジエター製造メーカーで、のちに高級車やスポーツカー用としてヨーロッパのメーカーにキャブレターの供給を始めます。 日本では1960年に「ミクニ」がライセンス生産を始めて、「トヨタ」や「日産」、「いすゞ」などの量産高性能エンジン向けにキャブレターを供給していました。 1970年代には国産車のレースも盛んになり、ミクニによるキャブの販売やサポート体制の充実によって、日本のスポーツキャブレターの代名詞となるほどに復旧しました。 「ソレ・タコ・デュアル」という日産のL型チューニングの定番メニューとしても流行しました。 <SOLEXキャブの特徴> いちばんの特徴は「扱いやすい」という点です。 「ウェーバー」よりも後発ということで、開発のアドバンテージがあったことと、日本では「ミクニ」によってきめ細かくセッティングの調整機構が整えられたことがその要因かと思われます。 あとは外観がスマートでカッコイイという点もユーザーとしては大事なポイントでしょう。 希少な2型と呼ばれる国内の初期モデルは最もフロート室が小さく、この外観が好きだという人も少なくないでしょう。 また、「ミクニ」の2輪用キャブレターとジェット類が共用されているものがあるため、入手しやすいという点もメリットです。 ●WEBER(ウェーバー) 4輪用の“ツイン&ホリゾンタル”タイプのキャブレターを最初にリリースしたのがイタリアの「ウェーバー社」です。 1889年の創立時からキャブレターを製造し、各メーカーに供給。 イタリアメーカーのレース用キャブレターを開発した際は、そのマシン達の活躍もあって一躍有名になりました。 ヨーロッパのレース車輌やスポーツカーのキャブレターのシェアはかなり大きく、評判も定着していたため、後発の「ソレックス」は太刀打ちできなかったようです。 当初はイタリアで製造をしていましたが、経営の問題でスペインに製造拠点を移し、今でも生産が行なわれています。 <WEBERキャブの特徴> 長らくレースで使用され続け、様々なレース・コンストラクターのわがままな要望に応えてきた結果、相当に細かいレベルまでセッティングが追い込めるというのが特色です。 その分、豊富すぎるセッティングパーツから適したものを選ぶのに一定のスキルは要りますが、マニアな人にエンジンルームを見られた際に、「お、ウェーバーですかー」と一目置かれることもある存在です。 良い意味でおおざっぱで扱いやすさが特色の「ソレックス」とは、ある意味対極にあるといえる玄人好みの傾向のキャブレターですね。 ジェットの供給などは「ソレックス」には劣るとはいえ、いろんなインポーターが日本に仕入れているので、パーツの入手で困るということは無いでしょう。 一部の口径を除き、今でも新品が入手できるという点もメリットです。 ●OER(オーイーアール) 国産で唯一の4輪用スポーツキャブレター製造メーカーが「OER」です。 前身の「エスケーエンジニアリング」は1966年に創業し、自動車エンジンの燃焼促進装置などを製造していました。 その後、「ミクニ・ソレックス」をスポーツ車に装着できるキットの販売を始め、「ソレックス」の代理店としても活動します。 アフターマーケット用にボルトオン・ターボを発売してヒットしましたが、組み合わせる「ソレックス・キャブレター」はターボの過給に合わず、独自でキャブレターの開発を進めることになります。 1986年に「OER・キャブレター」を発売開始。 今に至ります。 <OERキャブの特徴> 最後発の“ツインバレル・ホリゾンタル”タイプのキャブレターということで、「ウェーバー」のボディ構造を基本にして、「ソレックス」の扱いやすさを加え、さらに独自の工夫を盛り込んで完成させたものなので、それぞれの良さをひとつにまとめた総合性能の高さが特徴です。 あとは“純・国産”という製造のため、信頼性が高いことも利点のひとつでしょう。 もちろんアフターサービスもレスポンス良く受けてくれます。 定番の安心感がないという点と、「ソレックス」や「ウェーバー」の良さを取り込んだとはいえ、セッティングのクセは共有できないので、セッティングの際に有用なアドバイスがもらえないなどの点で敬遠する人もいるようです。 しかし、ターボ車への装着ではいちばん安心度が高いですし、実際に過酷なレースに使用して不安は無いという声も聞きますので、何割かは食わず嫌いなのではないかという見方もあります。 ●DEROLT(デロルト) ヨーロッパでは最後発の“ツインバレル・ホリゾンタル”タイプのキャブレーターブランドです。 メーカーの「Dell'Orto」自体は1933年創業の老舗自動車部品メーカーですが、自動車用の“ツインバレル・ホリゾンタル”タイプの製造は1960年代からと、「ウェーバー」「ソレックス」よりもだいぶ後のリリースになります。 イタリア内の「フィアット」、「アルファロメオ」の純正キャブとして採用され、さらに「ロータス・エスプリ」にも採用されています。 <DEROLTキャブの特徴> 後発の強みを活かして「ウェーバー」「ソレックス」の良い部分を取り込んでより良い性能、扱いやすさを目指した結果が各部に見られます。 中心となる霧化&ミクスチャー部分は「ウェーバー」に似た構造と形状でまとめられ、全体の構成は「ソレックス」を思わせる部分があります。 日本国内にはあまり入ってきていないようで、国産旧車への後付けのキャブとして装着例もあまり無く、中古市場でも流通量が少ないレアな扱いとなっています。 使ってみれば後発ゆえの扱いやすさは実感できるようなのですが、セッティングパーツや消耗品の入手もカンタンではないので、一般ユーザーには少しハードルが高いようです。 また、上記の「ロータス・エスプリ」では純正でターボとの組み合わせとなっているので、ターボ用としても有用なキャブです。 ●SU(エスユー) 正式名称は「スキャナーズ・ユニオン」で、戦前からバイク用キャブの製造を行なっていました。 日本では日立がライセンス生産し、フェアレディZ(S30型)やスカイライン(GC10&GC110型)など、1970年代の日産車のスポーツモデルなどに採用されています。 <SUキャブの特徴> バレルの真ん中に可動式のピストンバルブがあり、その上下で通路を開け閉めすることで、空気の通過量と燃料の吸い出し調整を行なう方式のキャブです。 その構造から“可変ベンチュリー”タイプと呼ばれます。 そしてそのピストンバルブの上げ下げを、エンジンの吸う力=負圧を利用する“負圧作動式”となっています。 エンジンの吸う力に応じた混合気を自動で調整してくれるので、アクセルワークがイージーなのが特徴です。 国内に流通している個体数は少なく、ほとんどは純正装着品なのでセッティング変更が困難ですが、ハーレー向けの交換キットなどもありますので、それを活用する方法もあるでしょう。 ●FCR(エフシーアール)ほかバイク用キャブ 今現在、旧車に装着できるキャブとしては最も設計が新しく、高性能と言えるのが、バイク用として発売されているキャブレターです。 「ケーヒン」の「FCR」と「ミクニ」の「TMR」&「HSR」が旧車に装着できる主な機種です。 <バイク用キャブの特徴> 「FCR」も「TMR」も「HSR」も基本的な構造は共通で、“フラットバルブ”タイプの“強制開閉式”の“可変ベンチュリー”方式を採用しています。 特に「FCR」と「TMR」の2機種は“レース専用品”としてそれぞれのメーカーの最高の技術が投入されていて、常用9000回転オーバーの超ハイレスポンスエンジンの要求に応える性能を持っています。 スポーツキャブレターの性能は“霧化性能”と“レスポンス”が重要となります。 仕組みを簡単に説明すると、平べったいバルブを用いて急峻な負圧発生を起こすことで、その性能の両立を図っているんです。 現在も販売されているものなので、パーツの入手が容易な点も導入しやすいポイントです。 その一方で、装着するには気筒数だけ個体を用意する必要があり、かつそれらをひとつのアクセルペダルで同時操作できるようにするリンケージを用意しなくてはならないので、その面では導入のハードルが高いといえます。 加えて、口径が41パイまでしか無いため、大きな排気量のハイチューン・エンジンには向きません。 ■あとがき どうでしょう、自身の旧車に「“スポーツキャブレター”を装着してみようかな」と思ってもらえたなら、この記事を書いた甲斐があるというものです。 しかし現状は中古価格も高騰してしまっていて、新品も円安によって入手するコストが上がってしまっていますので、気軽に試してみるのが困難な状況となっています。 ただ、それでも“スポーツキャブレター”を導入すれば、それまでの小口径な純正キャブでの走りとはひと味もふた味も違う爽快な加速と、唯一無二の吸気サウンドを手に入れることができますので、けっして後悔はしないと思います。 注意して欲しいのは、中古の購入で粗悪品をつかまないようにすることと、装着とセッティングを信頼の置ける専門店に依頼することです。 費用に余裕があるなら、購入もお任せしてしまった方が安心でしょう。 自己流ですべてを行なって、結果的にしょっちゅうトラブルシューティングに追われるようなことになってしまうと、キャブに対してマイナスな印象を抱いてしまいかねません。 せっかくキャブレターというチューニングを導入するのですから、気持ちの良い部分だけを味わえるように、面倒な部分はプロに任せるというのがオススメです。 乗って、扱っているうちにキャブに慣れれば、自分自身で整備や調整ができるようになりますので、末長く付き合いができるという部分も推すポイントです。 興味が涌いた人は、思い切って導入してみていただきたいです。 [ライター・カメラ / 往 機人]

一時代を築いた縦目ベンツとは? 実は現代につながるモデルも多数あった1960年代のベンツを振り返る
旧車の魅力と知識 2023.12.27

一時代を築いた縦目ベンツとは? 実は現代につながるモデルも多数あった1960年代のベンツを振り返る

縦型に配置されたヘッドライトと、中央で存在感を放つフロントグリル。1960年代を中心に販売された縦目のベンツ、通称“タテベン”は、今見てもエレガントさを感じさせるクルマです。 特に人気の高いモデルはW111ですが、“タテベン”は1モデルだけではありません。そこで今回は、1960年代を席巻した縦目のベンツの歴史を振り返ってみます。 1960年代ベンツの象徴だった縦目 現在のベンツも個性的なフロントマスクではありますが、ヘッドライトを縦型に配したデザインはひと目でそれとわかる個性を放っていました。 “タテベン”が生まれた時代背景を振り返ってみましょう。 実用品から嗜好品に変わっていった時代 縦目のベンツが登場したのは、1950年代の終わり。第二次世界大戦を乗り越え、人々の暮らしが向上しつつあった時代の流れに呼応するように生まれました。実用性重視だったそれまでとは異なり、車にデザイン性や高級感をより求めるようになっていきます。 実際、縦目のベンツとして1959年に登場したW111/W112は、特徴的な縦に並んだヘッドライト以外にも、フィンテールと呼ばれるアメリカ車キャデラックに影響を受けた華飾が施されていました。機能性や実用性だけでなく、見た目も車の評価軸に加わり始めていたということです。 後に生まれた“タテベン”“ハネベン”というこの時代のベンツを表す愛称が生まれたことからも、見た目のインパクトが強かった車だったということがわかります。 個性的なのにエレガントさを感じさせる 当時の自動車デザインからすると、縦型のヘッドライトはかなり個性的な部類でした。しかし、縦目ベンツは、今の車にはないゆとりと独特のエレガントさを感じさせます。しかも、メルセデス・ベンツは、同様の意匠を複数のモデルで展開しました。つまり、メルセデス・ベンツの「顔」として、個性的な縦目を定着させようといった意図があったのでしょう。 エレガントさを備えた独特の存在感は、現在のベンツのブランドイメージそのものです。デザインこそ全く異なりますが、今のベンツの方向性と地位を確立したモデルが縦目ベンツといっても過言ではありません。 フィンテール以外にも縦目ベンツは魅力のある車種 縦目のベンツというと、代表的なのは優雅なフィンテールをまとった“ハネベン”と呼ばれるW111/W112です。しかし、“タテベン”には、ほかにも多くの名車があります。 1960年代のメルセデス・ベンツを象徴する縦目モデルをみていきましょう。 縦目ベンツを象徴するW111/W112(1959-1971) 独特のフィンテールと一緒に語られることの多い縦目ベンツといえば、やはりW111/W112です。最初に登場したモデルだけあって、“ハネベン”の愛称で呼ばれるほど多くの人から今も愛されています。しかし、実は“ハネベン”は、W111/W112のセダンのみです。 W111には、250SE、280SE 3.5といったクーペモデルも存在していました。クーペモデルのボディラインは1957年にスケッチが起こされ、その後縦目の最終モデルまで踏襲されます。 また、W111が登場した1959年は、自動差産業が隆盛し大量生産される1960年代の突入直前という時期でした。実際、W111は最後のハンドビルドモデルといわれています。 2シーターモデルの方向性を決定づけたW113 W113は、縦目のクーペ、カブリオレモデルとして1963年に登場しました。性能は高いものの扱いにくい初代300SLと、スポーティさにややかける190SLの中間ともいえるバランスのよさが魅力です。中央部がわずかに凹んだ、パゴダルーフと呼ばれるデザイン性の高さにも多くの注目が集まりました。 W113は、230SL、250SL、280SLと進化を続けながら、その後のメルセデス・ベンツの2シーターモデルの方向性を決定づけました。サルーンよりは高い運動性能を備えつつも、上質なインテリアと運転のしやすさは現代の「SL」にも通じます。 Sクラスの前身になったW108/W109 W108/W109は、W111/W112に変わるフラッグシップモデルとして、1965年に登場しました。最大の変更点は、象徴的だったフィンテールが排除されたことです。縦目のフロントマスクは踏襲しつつも、より現代的なデザインに仕上がりました。 フラッグシップモデルにふさわしい、運動性能と乗り心地もW108の特徴です。見切りが良いボディラインと小回りが利くステアリングによって思いのほか運転しやすく、ボディサイズの大きさを感じさせません。また、リアサスペンションは古典的なスイングアクスルだったものの、驚くほど乗り心地は快適でした。 次世代ベンツへの橋渡し役W114/W115 1968年、最後の縦目ベンツであるW114/W115が登場します。W114/W115は排出ガス規制への対応など、市場の特性に合わせて細かく調整されました。結果的に1976年の販売終了までに、実に180万台も生産されました。 最も進化したポイントは、新開発されたシャシーです。縦目デザインを踏襲しつつも、クラッシャブルゾーンやステアリングコラムを設けるなどより現代的な設計に進化しました。 W113は1,000万円近い評価をされることもある メルセデス・ベンツの古き良き時代を象徴しつつ、現代のラインナップの源流にもなった縦目ベンツ。通称“タテベン”とも呼ばれ、現在でも多くのファンから愛されている車種です。 一方で、縦目だからといって、全モデルの評価が極端に高いわけではありません。なかにはリーズナブルな価格で取引されているモデルも存在します。 ただし、W111のクーペモデルやW113のオープンモデルなど、“タテベン”の一部の車種では高値がつく場合があります。特にW113は、1,000万円近い価格で買取されることも少なくありません。 縦目のベンツが販売されていたのは1960年代です。60年以上も前の車種だけに、売却する際は旧車の知識が豊富な専門業者への依頼をおすすめします。

トヨタ ランドクルーザーシグナスは100系ランクルとは別車種?! 両車の違いを特別感のある魅力とともに紹介
旧車の魅力と知識 2023.12.27

トヨタ ランドクルーザーシグナスは100系ランクルとは別車種?! 両車の違いを特別感のある魅力とともに紹介

高級サルーンを思わせるラグジュアリーな内装と、クロスカントリー車がベースとは思えない洗練された外装を備えたトヨタ ランドクルーザー シグナス。人気の高い100系ランドクルーザーに設定されたグレードの1つでありながら、海外ではレクサスでも販売されるなど、もはや別車種とも思えるほどの存在感を放つモデルです。 今回は、通常モデルの100系ランドクルーザーとの違いも含めて、ランドクルーザー シグナスの魅力を詳しく紹介します。 シグナスは高級感漂う専用装備が満載 ランドクルーザー シグナスと100系ランドクルーザーは、外観の印象から全く異なります。同一車種ながら、開発コンセプトが根本的に違う点が大きな要因です。 数々の専用装備によって高級感溢れる仕様に仕上げられたシグナスの魅力を、100系ランドクルーザーとも比較しながらみていきましょう。 100系ランクルとは一線を画すエクステリア ランドクルーザー シグナスの外観では、フロントセクションの違いが真っ先に目を惹きます。フロントバンパーはシグナス専用にデザインされ、グリル形状も100系オリジナルとは別物です。さらに、ヘッドライトやフォグランプに至るまで、全てがシグナスのために開発されています。 さらに、クロスカントリー車としての象徴でもある背面のタイヤですが、シグナスでは排除されています。「トップ・オブ・SUV」を掲げて開発されただけに、主戦場はオフロードではなく市街地というコンセプトを明確にする意図があったのかもしれません。なお、背面のタイヤをなくすスタイルは、100系ランクルの定番カスタムです。 また、後期モデルではホイールサイズが16インチから18インチへと一気に2インチサイズアップが図られました。また、ATも4速から5速に変更され、スタイルと乗り心地を求めるシティ派のSUVという性格をより強めています。 高級サルーンのようなラグジュアリー感 インテリアでは、標準装備されている本革シートの質感だけでも100系ランドクルーザーとの違いがわかります。ダブルステッチで縫い上げられた柔らかく艶のあるレザーシートは、100系の本革シートとクオリティに圧倒的な差がありました。また、ステアリングやシートノブといった車内の至るところに本木目パネルが配され、さらなる高級感を演出しています。 装備面でも、1990年代のクルマながら専用開発されたメモリー機能付きパワーシートを搭載。後期モデルで追加された先進の盗難防止システムも、より高級車としての性格を強めています。エンジンイモビライザーシステムや、正規のキー以外の解錠で警報を発するオートアラーム機能を追加しました。 海外ではレクサスブランドで販売 ランドクルーザー シグナスは、海外ではレクサス LX470として販売されていました。トヨタの最高級ブランドである、レクサスの名にふさわしいクルマを目指して開発されたということです。 国内では100系ランドクルーザーのグレードの1つですが、実質的にはレクサス車という見方もできます。実際、欧州の高級車にも引けを取らない内外装は、まさにレクサスそのものです。 中古車市場でも異彩を放つランドクルーザー シグナス ランドクルーザー シグナスは、中古車市場でも特別な存在です。100系ランドクルーザーの1グレードでありながら、全く別車種のような評価を受けています。 シグナスがいかに特別な存在かを、改めて確認していきましょう。 100系ランドクルーザーの1グレードとして登場 ランドクルーザー シグナスは100系ランドクルーザーと多くの点で異なりますが、あくまでもグレードの1つです。1998年1月にフルモデルチェンジをした100系ランドクルーザーに、上級グレードとして同年の12月に投入されました。 しかし、「シグナス」という名称からは、グレードの枠を超えたモデルだったことがわかります。ほかのグレード名は「VX」や「VXリミテッド Gセレクション」といった、いわゆるグレード名らしい名称でした。独立した車名にも思える名を与えられたのは、それだけ「シグナス」が特別なクルマだったからということでしょう。また、ほかの100系ランドクルーザーとシグナスは、カタログも分けられていたようです。 ガソリン車でもシグナスは特別 モデル全般が人気の100系ランドクルーザーですが、ガソリンエンジン車よりもディーゼルエンジン車のほうがより多くの支持を集めています。高い走破性が特徴の車種だけに、耐久性やトルクを求めるユーザーが多いためでしょう。しかし、シグナスに関しては例外のようです。 シグナスにはガソリンエンジン車しかありませんが、特別なモデルとして高く評価されています。また、100系ランドクルーザーのなかでは評価の低いガソリンエンジンですが、スペックは決して他車種に劣っているわけではありません。最高出力235ps、最大トルク43.0kgf・mを発揮する4.7LのV8エンジンは、市街地はもちろんのことオフロードでも十分通用します。 500万円もの買取価格がつくこともある 買取価格の高さからも、シグナスの特別感がうかがえます。年式にもよりますが、シグナスの新車価格は高いモデルでも500万円台後半です。しかし、旧車王では、2023年11月に2006年式のシグナスを約500万円もの価格で買取りました。 走行距離が5,500kmと年式からするとかなり短かったこともありますが、新車登録から17年も経過しているにも関わらず、新車価格に近い金額がつくことこそがシグナスの価値の高さを示しています。 特別感のあるシグナスは価値が落ちにくい 海外ではレクサスブランドで販売されるほど、ランドクルーザー シグナスは100系ランドクルーザーのなかでも特別な存在です。世界最高峰のSUVを目指して開発されたシグナスは、ランドクルーザー本来の高い走破性と豪華さを兼ね備えています。 道具としての車は、年数が経過するほど性能の劣化とともに一般的には価値が落ちていきます。しかし、シグナスのように道具以上の魅力のあるクルマは、古くなっても輝きを失いません。中古車相場は複雑な要因で動くため一概にはいえませんが、シグナスは今後も一定の価値を保ち続けることが予想されます。

いま世界が認める日本の名車10選!Z32からシビックSiまで懐かし名車を紹介
旧車の魅力と知識 2023.12.26

いま世界が認める日本の名車10選!Z32からシビックSiまで懐かし名車を紹介

いま日本の国産車が、北米を中心に大人気であることをご存知ですか?筆者をはじめ、いわゆる旧車と呼ばれる車種が好きという方も多いと思いますが、その人気は日本国内に限った話ではありません。中には、新車販売価格の数倍以上の価格で取引される日本車が存在します。そこで今回は、日本国内ではもちろんのこと、特に北米で価格が上昇している国産車10選をご紹介します。 トヨタ FJ60系ランドクルーザー(1981-90年) トヨタ ランドクルーザーで最初に価格が高騰したのは、1960年代に発売され、特に北米におけるランドクルーザーの地位を不動のものにしたFJ40系。2010年から2015年頃まで一気に価格が上昇しました。 FJ40系の価格が落ち着く頃から人気が高まったのがFJ60系ランドクルーザーです。FJ60系は、当時成長していたSUV市場に対応するため設計を刷新。走破性だけではなく快適性を高め、それまでのクロスカントリーに加えて、SUVとしての快適性も持たせて成功しました。また、FJ60系の基本構造が、その後のランドクルーザーでも大きく改変されることなく踏襲されています。 4.2L直列6気筒2F型エンジンのFJ60と、4.0L直列6気筒3F型エンジンのFJ62も現在の北米市場において非常に高い価格で推移しており、平均的な価格で約400万円以上。ちなみに、1981年に最初に販売されたFJ60型に比べて、1988年発売となる後発のFJ62型の方がやや高い価格となっています。 最後に今後の価格動向についてですが、過去3年間で、FJ60型、FJ62型ランドクルーザーに対する保険要求額は24%増加していて、今後も価格の高騰はまだ続く予想です。 日産 フィガロ(1991年) レトロなデザインで販売当初も抽選販売となるなど、大きな話題を呼んだ日産 フィガロ。今、北米を中心に、改めて多くの人の注目を集めています。 海外で価格が高騰している日産車といえば、ハイパフォーマンスカーであるスカイラインシリーズとフェアレディZですが、車としては決してハイパフォーマンスとは言えない、3速ATでFFという仕様にも関わらず価格が高騰しているのです。 日産 フィガロは、1989年の東京モーターショーで試作車が公開され、白い革張りシート、クロムメッキされたメーター類、細いスポークのハンドルなどレトロなデザインが個性的でした。 アメリカでは、販売から25年を経過すると輸入車の安全基準が緩和されるため、販売から25年となった2016年に輸入が解禁されたものの、新車時は日本国内の販売のみ。しかも2万台の限定生産だったことから、需要に供給が追いつかない状態となり、北米における最新の販売価格は約220万円から約270万円へと跳ね上がっています。 三菱 スタリオン(1983-89年) 三菱 スタリオンは、クライスラーにもOEM供給されていたスポーツカーです。 ポルシェ944の見栄えを良くしたようなスタイリッシュなボディに、ターボエンジンを搭載した本格スポーツカーでありながら、競合他社より安価な価格設定でした。往年の名作映画「キャノンボール2」でジャッキーチェンが乗っていたことで記憶に残っている方も多いのではないでしょうか。 特に北米市場を意識したエンジンは低中速域のトルクを重視したセッティングで、最大出力は175psながら、最大トルクは32.0 kg-mを発生。さらに、サイクロンDash3x2と呼ばれる可変バルブ付きターボエンジンでは、200psを発生するモデルも存在するなど、デザイン性のみならず動力性能も魅力的なスポーツカーでした。 元々が安価な価格設定だったこともあり、長年特段大きな値動きはありませんでしたが、ここに来て北米市場で大幅な値上がりを見せています。既に三菱モデルのスタリオンで約150万円、クライスラーモデルのコンクエストでは約180万円もの値段をつけていて、今後の値上がりも期待されます。 日産 300ZX/Z32型フェアレディZ(1990-96年) Z32型と呼ばれる4代目のフェアレディZ、北米では300ZXという名で販売されていました。Z32型フェアレディZは、廉価版スポーツカーという位置づけだった先代までのフェアレディZの立ち位置を脱却。北米においてスーパースポーツカーとしての地位確立を意識して開発されました。 日産車として初めてCADで設計されたデザインは、これまでと大きく異なるワイド&ローデザインとし、性能面も日本の自動車メーカーで初めて最大出力280PSに達するツインターボVG30DETT型エンジンを搭載。さらに、ターボモデルには、4輪操舵のスーパーHICAS(ハイキャス)を装備するなど、文字通りスーパースポーツカーを体現したモデルです。 ここ最近、北米において過去最大の値上がり幅を記録した日産 300ZXは、ベースモデルでも約170万円、ターボモデルは約330万円以。90年代スポーツカーとして評価の高まっているFD型RX-7や、80型スープラと比較するとやや出遅れ気味だったこともあり、今後値上がり余地があると見られています。 ダットサン 260Z(1974年) ダットサンは日産の北米展開ブランドで、260Zは初代フェアレディZS30系(240Z)の2.6Lエンジン搭載版として、海外でのみ1年間だけ販売されたモデルです。 240Zの生産終了に伴って、元々240Zに搭載されていたL24型直列6気筒SOHCエンジンのストロークを伸ばし、よりトルクの稼げる2.6Lエンジン仕様のモデルを作成しました。日本国内では、オイルショックの影響で残念ながら販売が見送られ、東京モーターショーでの展示のみとなっています。 トルクがわずかに向上したものの、マスキー法に代表される排ガス規制で強化された排ガス浄化装置により240Zと比べてパワーは10psほど下回る260Zは、これまであまり注目を集めていませんでした。しかし、近年、特に北米で240Zに注目が集まり、価格が高騰するにつれ、性能は低いものの、ほぼ同等のデザインの260Zにも注目が集まるようになりました。 現在、人気の高い2シータークーペは日本円で約400万円まで高騰し、人気の低い4シーターモデルでさえ、約260万円まで価格が上昇しています。 ホンダ シビックSi/EK型シビックSi(1999-00年) ホンダ EK型シビックのクーペモデルも、近年北米で価格が高騰しています。 価格が手頃な4気筒自然吸気1.6Lエンジンながら、VTECという強力な可変バルブを搭載したB16Aエンジンはポテンシャルと耐久性が高く、チューニングのベース車として人気を集めました。 北米の90年代日本車スポーツカー人気によって、EK型シビックにも注目が集まっています。しかし、新車販売から20年経った現在は、チューニングカーとしての人気が仇となり、改造されていない低走行車はほとんど残っておらず、中古車価格の高騰に拍車をかけています。 直近ではわずか5ヶ月の間に、日本円で約200万円から約280万円まで価格が上昇しました。 日産 300ZX/Z31型フェアレディZ(1984-88年) 3代目フェアレディZとなるZ31型フェアレディZも、北米で人気が高まっています。 フェアレディZシリーズ唯一のリトラクタブルヘッドライトが特徴で、エンジンもハイパワーのターボエンジンVG30ETを搭載。Z32型で確立するハイパフォーマンススポーツカーという新しいZの方向性を決めたモデルになりました。 近年の日本車スポーツカー人気を牽引するフェアレディZシリーズ。Z31型も例外ではなく、10年前にはわずか70万円ほどだった中古車価格は、直近では日本円で約200万円以上にまで上昇しています。 トヨタ スープラ/A60型セリカXX(1981-1986年) 海外ではスープラという車名でしたが、A60型まで国内ではセリカXXという車名で販売されていました。初代セリカXXとなるA40/50型が、ラグジュアリー志向のスペシャルティカーだったのに対し、スポーティ路線で開発されたのが特徴です。 空力性能を意識してヘッドライトにリトラクタブルライトを採用し、ソアラと同型の2.8Lエンジンを搭載。国産車としては久々となる最高速200km/h超え(208.09km/h)を記録します。LSDに大径ホイール、リアスポイラーまで装備し、スポーツカーとして地位を確立した70型スープラに繋がる原点とも言える車種となりました。 多くのA60型セリカは、改造されたり、レースに使用されたりしたため、状態の良い個体は現在あまり残っていません。そのため、価格は高騰を続けていて、最新の価格データでは、日本円で約155万円から225万円へと上昇しました。 ダットサン 280ZX(1978-83年) 2代目フェアレディZとなる、S130型系Zの海外展開モデルが、ダットサン 280ZXです。 国産車初のTバールーフ車も投入された2代目Zは、初代のフォルムを正統に引き継ぎながらもややワイド化しました。ボディサイズ、エンジン共に大型化したことで、初代のスポーツカーとしてのキレは失われたものの、ツーリングカーとして人気を博します。 また、人気ドラマ西部警察で大門刑事(渡哲也)が乗るスーパーZとして活躍したのを覚えていらっしゃる方も多いのではないでしょうか。 2015年以降に価格の上昇が始まり、直近では日本円で約160万円から約240万円以上まで一気に高騰しています。 日産 R33型スカイラインGT-R(1995-98) 1995年発売のR33型GT-Rは、販売から25年経過となる2020年に、アメリカの輸入規制が緩和され、一気に価格が高騰しました。 R33型スカイラインの大型化したボディは、新車販売当時不評。性能を追求してシャープに研ぎ澄まされたR32からは程遠いイメージで、居住性は改善されたもののただ広くなった車内はまるでセダンのような印象を与え、走りを追求するGT-Rとしては人々の期待を大きく裏切るデザインだったのです。 一方で、走行性能は大きく進化。エンジンの仕様変更によるトルクの向上、ロングホイールベース化によって弱点だったコーナリング性能の向上が図られ、ニュルブルクリンクでR32の記録したタイムを21秒も縮めました。 当時は不評だった大型化ですが、比較的大柄な海外の愛好家には逆に好意的に捉えられていて、現在の人気を支える要因の1つ。また、新車当時不人気だったことで出荷台数が少なかったことも希少性という付加価値を生み、価格が高騰するひとつの要因となっています。 R33型スカイラインGT-Rの現在の価格は、標準仕様でも約680万円にもなっていて、特別な99台のみ販売されたNISMO 400Rともなると、約4,400万円以上。今後はさらなる高騰も予測されています。 まとめ 日本車がこれほどまでに北米で人気となっているのは、日本人として素直にうれしいことです。ただ、それと同時に、今後これらの車種を購入しようとした場合、なかなか手の出し辛い価格帯になってしまっているのは悩ましくもあります。 どの車種も、日本の経済が絶好調なときに開発された、自動車史に残る名車ばかり。これから購入しようと思っているなら、明日にでも探し始めた方が良いかもしれません。 [ライター/増田真吾]

ランクル70で後悔しないで!再販で話題のモデルの魅力&欠点
旧車の魅力と知識 2023.12.26

ランクル70で後悔しないで!再販で話題のモデルの魅力&欠点

ランドクルーザーは日本のみならず、世界中から支持されるトヨタを代表する人気車種です。そんなランドクルーザーの中でも特にファンの多いモデルが、1984年から2004年まで製造された通称70系ランドクルーザー。そして、70系誕生30周年を記念して期間限定で再販され話題となりました。 今回は、そんな大人気モデルであるランドクルーザー70の魅力と特徴、そして、注意点についてご紹介していきたいと思います。 歴代ランクルの中でもファンの多い70系 ランドクルーザーがプロアマ問わず幅広いユーザーから支持されている理由は、信頼性、走破性、耐久性に優れているからにほかなりません。もちろん、高級感を加えた80系からの系譜であるワゴン系も魅力的ですが、本来のラフロード性能を求めるという場合は、やはり通称ランドクルーザー70と呼ばれる“70系”への支持が根強い傾向にあります。 本格的な四駆だからこそのメリットとデメリット ランドクルーザー70が人気を集める理由はいくつかありますが、やはり直線基調の角ばったエクステリアデザインという方がもっとも多いと思います。ラフロードでの走破性や信頼性に重きを置くランドクルーザー70は、現代の車のように空気抵抗や燃費性能やオンロードの走行性能を求めていません。 そのため、目線の高い乗車位置や角度の立ったフロントウインドウといった、ややレトロにも感じるデザインになっています。 よじ登る車高には要注意 ほぼ丸みのない形や高い車高によって見切りも良く運転がしやすく、さらに見晴らしが良く運転していても気持ち良いという特徴があり、この特徴はランドクルーザー70だからこそ味わえる大きな利点です。 しかし、ノーマルでも高い車高は利点がある一方、乗り降りし難いという欠点にもなります。背の低い方やお子さんはもちろん、高齢のご両親を乗せる方も、その高い車高は考え物。乗降性の良し悪しは、車にとって重要な要素であることを考慮すると、ランクル70はメインの車として使いづらいという方も居るでしょう。 ゆったり走れる優雅さの反面取り回しには要注意 ランドクルーザー70の魅力2点目は、優雅な運転フィールです。優雅と言っても高級セダンの柔らかいゆったりした乗り心地ではありません。やや高い視界とやや鈍感なステアリングによって、自然と飛ばしたいという気持ちが抑えられるのです。もちろん、もともとローギヤード設定ということもあり、速度を上げた分だけエンジン音もにぎやかになるということもあります。 俊敏な身のこなしと小回りは苦手 そんな四駆らしく、やや鈍感なステアリングフィールの要因は、ボールナット式ステアリングを採用しているため。近年のモデルではラック&ピニオン式を採用しているのに対して、ラフロードを走行することを想定して開発されたランクル70の場合、堅牢性を重視したボールナット式を採用しているのです。 このボールナット式ステアリングは、堅牢で構造がシンプルである一方、反応が鈍く、またハンドルの戻り(セルフステア)も良くありません。また、最小回転半径も大きく、道幅の狭い状況では取り回し性が良いとは言えないのです。 大排気量がもたらす余裕の走行性能とイマイチな燃費 車重があり、低回転の動力性能が求められるランクル70では、オリジナル、復刻モデル、どちらのモデルでも3.4L以上の大排気量エンジンを搭載しています。大排気量がもたらす豊かなトルクによって、さらに余裕を持った力強くたくましい走行性能を実現しているのです。 大排気量四駆は大食い まさに、レトロでやや大柄に見える出で立ちのランドクルーザー70には、ぴったりの大排気量エンジンですが、燃費が良くないという大きなデメリットがあります。もともと車重があり、大型タイヤを履いていることに加え、大排気量のエンジンを搭載するランドクルーザー70の燃費はお世辞にも良いとは言えません。 もちろん個体によってある程度ばらつきはありますが、街中での平均燃費は6~8km程度。さらに、復刻版ランドクルーザー70の使用推奨燃料はハイオクガソリンであるため、燃料代は大きな負担になるでしょう。 ランクル70の魅力は唯一無二!ただし無理は禁物 直線で四角いスタイリングはレトロな雰囲気、ランドクルーザー70には唯一無二の魅力があります。その魅力はほかの車種で補うことは難しいかもしれません。 ですが、現代社会に生きる私たちにとって、車は無くてはならない存在です。今回ご紹介した魅力や特徴と、デメリットを比較し、もしもあなたの生活にランドクルーザー70が合わない、もしくはかなり無理をしなければいけないのであれば、最新のSUVに乗り換えるのも決して間違った選択ではありません。 もちろん、それまで大切に乗ってきたランドクルーザー70を手放すのであれば、価値をしっかり評価してもらい、納得できる価格で買い取ってもらうこともお忘れなく! ランドクルーザーを買い続けて20年以上納得の高価買取ならランド王https://www.qsha-oh.com/landcruiser/ [ライター/増田真吾]

HEMIエンジンの歴史と魅力を追及!これぞ真のV8アメリカンパワー!
旧車の魅力と知識 2023.12.26

HEMIエンジンの歴史と魅力を追及!これぞ真のV8アメリカンパワー!

轟くようなV8サウンドのマッスルカーに誰しも一度は憧れるものです。より大きなパワーを求めて開発競争を行っていた1950年代に登場した、OHV式エンジンのヘミエンジンは、現代の車にも搭載されるほど息の長いエンジンとなりました。 今回は、エンジンの方式の解説とともに、マッスルカーを支えたヘミエンジンの特徴に迫ります。 ヘミ(HEMI)エンジンはアメリカ車の象徴 ヘミ(HEMI)エンジンは、1950年代以降に、アメリカクライスラー社が開発、製造を行った半球型の燃焼室を持つV8ハイパフォーマンスエンジンです。 ヘミとは、半球状を意味する「ヘミスフェリカル(Hemispherical)」の短縮系で、燃焼室の形状がそのままエンジンの呼称になりました。 マッスルカー全盛期のパワー競争を戦った ヘミエンジンは機構上、高出力化が容易だったため、マッスルカー全盛期に巻き起こった自動車メーカー各社のパワー競争において優位性を発揮。特に、1964年に第二世代としてヘミエンジンが復活すると、NASCARレースでも活躍し、1970年代初頭まで人気を博しました。 NASCARレースでヘミエンジンが活躍したことで、アメ車の象徴であるV8ハイパワーエンジンというイメージを作り上げたと言っても過言ではありません。 エンジンの歴史とヘミエンジンの魅力 ヘミエンジン登場の背景には、高出力化を求める時代背景がありました。 1950年代に入ると、いわゆるビッグ3と言われるGM(ゼネラルモーターズ)、フォード、クライスラーで、仁義なきパワー競争が勃発します。 これまでのエンジンの高出力化が困難になっていたことから、各社新型のエンジンの投入を余儀なくされたのです。 高出力化に対応できなかったサイドバルブ式エンジン ヘミエンジンの登場までは、サイドバルブ式のエンジンが主流でした。 サイドバルブ式エンジンとは、給排気バルブがシリンダーヘッドではなく、シリンダーと並んで配置され、バルブの傘も上向きに取り付けられていました。 燃焼室が横に長い構造で、圧縮比を高めづらく、燃焼効率も良くなかったため、高出力化が難しいという構造的な問題を抱えていました。 OHVの登場とOHVの弱点を見事に克服したヘミエンジン OHVのメリットは、バルブを燃焼室上部に取り付けることにより、燃焼室をシンプルでコンパクトな円筒状の形状にできることです。ピストンの運動方向である上下方向に圧縮と給排気ができることで、より圧縮と燃焼の効率を高めることができます。 一方で、通常のOHVの大きなデメリットとして、給排気バルブの直径が限定されているため、エンジンの高出力化に欠かせない、バルブの大口径化ができないという弱点がありました。 燃焼室上部にバルブが配置されるということは、バルブの配置スペースは、シリンダー直径が最大となります。このスペースに、少なくとも給排気2つのバルブを収める必要があり、バルブの直径が制限されてしまうのです。 そこでヘミエンジンは、燃焼室上部が半球状にすることで、シリンダーの直径以上にバルブの取り付け面積を稼ぐことができ、バルブの大口径化が可能にし、OHVの最大の弱点を克服しました。 また、バルブに角度をつけて配置することで、燃焼室内の気流をスムーズに動かすことができるという効果があり、バルブの大口径化と併せて給排気効率を劇的に向上。結果として、それまで以上の高出力化に成功しました。 高回転型DOHCエンジンとの戦い 自動車史において大きな影響を与えたヘミエンジンですが、高回転化しにくいという弱点があります。 これは、OHVエンジン全般に言えるデメリットですが、プッシュロッドでカムシャフトの動きをエンジン上部のバルブに伝えるため、高回転になると、動作の遅延やプッシュロッドそのものの重量が問題になってしまいます。 一方で、バルブを作動させるカムが上部にあり、ピストンの開閉を直接行う(ロッカーアームタイプを除く)DOHCは、慣性によるロスが少なく高回転化しやすくまります。 ヘミエンジンがアメリカで進化したのは、ストップ&ゴーが多く、高回転化することで高出力を得るDOHCエンジンよりも、比較的低中速でのパワフルな走りを要求するアメリカの道路事情もあったのかも知れません。 ヘミエンジン搭載の代表的車種の紹介 ヘミエンジン搭載の車種は、ザ・アメ車といった骨太な車種が多いのが特徴です。 マッスルカーブームを支えた名車など、ヘミエンジン搭載の代表車種を紹介します。 クライスラー・ニューヨーカー 1939年に登場したクライスラーの高級車で、2代目のモデルから、第一世代と呼ばれる、「FirePower Hemi」V8ヘミエンジンを搭載していました。 0-60マイル加速で10秒をマークするなど、パワーアップ競争の先頭に立ち、1950年代末には、350馬力もの出力のエンジンを搭載。名実ともに大型・豪華・ハイパワーを競うアメリカ車全盛期のモデルでした。 ダッジ チャージャー マッスルカーの火付け役となったクライスラーが、GM、フォードのマッスルカーのヒットを横目に、1966年に満を持して発売したのが、第二世代のヘミエンジン搭載のマッスルカーです。 最上位グレードには、400馬力オーバーの426Hemiエンジンが搭載され、0-60マイル加速はわずか6秒弱という俊足ぶりでした。 クライスラー300 SRT-8 最後に紹介するのは、新世代のヘミエンジンを搭載した、クライスラー300 SRT-8です。2005年に登場したクライスラー300 SRT-8は、クライスラー社が誇る高級車で、最上位グレードにヘミエンジンが搭載されています。 ただし、新世代ヘミエンジンのシリンダーヘッドは、ヘミエンジンの代名詞とも言える、半球状のシリンダーヘッドではありません。 しかしながら、1立法インチあたり1馬力と言われる高出力は維持しており、さらに、軽負荷時に4気筒を休止させる可変シリンダーシステムを採用するなど、さらに進化したヘミエンジンとなっています。 まとめ 大型で低中速域からパワーを発揮するV8エンジンは、国土が広大なアメリカだからこそ進化したとも言えます。 サイドバルブの弱点を補うOHVエンジンが登場し、さらにそのデメリットを克服して開発されたヘミエンジンは、1950年代のパワー競争の波にも乗り進化を続けました。 1970年代のオイルショックの影響で、一度姿を消すことになりますが、近年、新たな環境性能を追加。誕生から60年以上経った今でも、最上級モデルに搭載されるヘミエンジンが今後はどう進化していくのか注目したいところです。 [ライター/増田真吾]

ルノー・クリオ・ウィリアムズの魅力とは?最高出力150psのフレンチホットハッチ!
旧車の魅力と知識 2023.12.26

ルノー・クリオ・ウィリアムズの魅力とは?最高出力150psのフレンチホットハッチ!

1t前後の軽量な車重と、150psの最高出力を誇るルノー・クリオ・ウィリアムズは、F1チャンピオンマシンを彷彿とさせるウィリアムズブルーにカラーリングされた美しい1台です。ルノー・クリオの特別限定車として販売されたルノー・クリオ・ウィリアムズは、エンジンだけではなく足回りやエキゾーストマニホールドまで専用設計されました。今回は、今なお評価の高いフレンチホットハッチの魅力に迫ります。 ルノー・クリオ・ウィリアムズ ルノー・クリオ・ウィリアムズはルノー・クリオの限定モデルとして販売されました。ベース車両は多くの受賞歴を持つルノー・クリオです。 ルノー・クリオはBセグメントのハッチバック車で、コンパクトで取り扱いやすいうえ、上位グレードは走行性能も高かったことから人気を集めました。 ベース車両の素性は折り紙付き ベース車両となった初代ルノー・クリオは、シュペール5の後継車として1990年に発表されました。見た目と実用性のトータルバランスに優れていたことから高く評価され、ヨーロッパ・カー・オブ・ザ・イヤー(1991年度)を受賞し、フランス国内でのベストセラーカーとなりました。 エンジンのライナップは、販売当初から5種類と幅広く用意。発表翌年の1991年には、さらに2種類のエンジンが追加されました。なかでも16S(16V)というモデルに搭載された1.8L直列4気筒DOHC16バルブエンジンは、最高出力135psにも達します。この16Sがルノー・クリオ・ウィリアムズのベース車両となりました。 販売限定台数を即完売するほどの人気 ルノー・クリオ・ウィリアムズは、ラリーの販売台数規定を満たすために開発されました。当初3,800台限定という予定でしたが、予定台数はすぐに完売。1,617台も追加生産されています。 さらにルノー・クリオ・ウィリアムズの人気は衰えず、初期シリーズの生産終了後に特別仕様車が販売されることになります。結果的にルノー・クリオ・ウィリアムズ3つの使用で合計12,100台が生産されました。 ルノー最高のホットハッチ ルノー・クリオ・ウィリアムズは、ただの限定カラーモデルではありません。エンジンから足回り、内装に至るまで細部にこだわって作り込まれた車です。とくに走行性能の評価は高く、販売後限定台数がすぐに完売したことからも人気の高さがうかがえます。 0-100km/hわずか7.8秒の加速力 ルノー・クリオ・ウィリアムズ最大の特徴は、ルノーのスポーツエンジン部門が開発した専用エンジンF7Rです。2.0L直列4気筒エンジンは150psを発生し、軽量な車重にハイパワーエンジンは十分な加速力を持ち、0-100km/h加速はわずか7.8秒。最高速度も215km/hに達します。 ベースは16S(16V)に採用されている1.8LエンジンF7Pですが、変更は単なるボアアップに留まりませんでした。バルブサイズ、カムプロフィール、クランクストロークなど多岐に渡って変更。さらにエキゾーストマニホールドを変更するなど、スポーツカー並みのこだわりを持って仕上げられています。 車全体のバランスが取れていて気持ちのよい走りが楽しめる ルノー・クリオ・ウィリアムズの評価が高いのは、高性能エンジンのパワーだけが理由ではありません。トレッド幅や足回りなども含めてバランスよく開発されていることが最大の強みです。 コンパクトカーにハイパワーエンジンというピーキーな特性になりがちな組み合わせにも関わらず、見事なバランス感覚でまとめあげています。トレッドの拡大とホイールのワイドサイズ化に加え、サスペンションの変更によって安定性が向上。路面状況を選ばずハイパワーエンジンをいかした走りが楽しめます。 ウィリアムズブルーが美しい 外装はウィリアムズのネイビーブルーでまとめられていて、特別仕様の金色のホイールともよくマッチしています。 また、内装もウィリアムズカラーでまとめられているのが、特徴的なポイント。フロアカーペット、メーター類、シフトノブからシートベルトまで専用色で統一され、F1ウィリアムズの特別感を存分に味わえます。 まとめ プジョー205GTiやゴルフGTIほど、高い評価をされていなかったルノー・クリオ・ウィリアムズ。しかし、ルノーのスポーツ部門がこだわった高い走行性能は、今でも色あせることはありません。 ルノー・クリオ・ウィリアムズは初期型の完売後、ウィリアムズ2、ウィリアムズ3と呼ばれる合計3種のモデルが販売されました。ルノー・クリオ・ウィリアムズを中古車で手に入れるなら、断然おすすめなのがウィリアムズ1と呼ばれる初期型モデルです。 ただし、初期型モデルは5,000台程度しか製造されていないため手に入りにくいので、根気よく探しましょう。国内のみならず、海外のオークションも含めて常にアンテナを張っておくことが大切です。 [ライター/増田真吾]

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