イベントレポート

財布のヒモは緩みっぱなしか!?新製品がヤバすぎるクルマホビー製品
イベントレポート 2023.10.23

財布のヒモは緩みっぱなしか!?新製品がヤバすぎるクルマホビー製品

去る2023年9月30日〜10月1日に「第61回全日本模型ホビーショー」が開催された。 以前ご紹介した毎年5月に開催される静岡ホビーショーは、その年に発売される主な新製品が発表される傾向が強い。 一方、毎年秋に東京で開催される全日本模型ホビーショーでは、年末から翌年にかけて発売される新製品が多いという特徴がある。 そこで今回は、これから発売される各社のクルマ系新製品をはじめ、会場に展示されていた面白いアイテムをピックアップしてみた。 ■アラフィフ世代を狙い撃ち?タミヤの新製品 まずはホビー業界の世界的なリーディングメーカーであるタミヤから。 今回はカーモデルに関する新製品がなく、再販アイテムとしては1/24スポーツカーシリーズの「トヨタ ソアラ 3.0GT リミテッド」「トヨタ セルシオ(UCF11)」、1/20スケールの「ポルシェ 935 ヴァイラント」の3点のみというやや寂しい内容だった。 一方、1/10スケールの電動RCカーでは、今年5月の静岡ホビーショーで参考出品された「フォルクスワーゲン ゴルフII GTI 16V ラリー 」が正式発売となり(税込価格:18,480円)、新たに「フィアット131 アバルト ラリー OLIO FIAT」(税込価格:19,580円)が発表された。 どちらもポリカーボネート製ボディは塗装済み。 しかもフィアット131 アバルト ラリーは、ダークブルー/キャメルイエロー/スモークの3色で塗装済みという内容。 裏側から塗装する必要のあるポリカーボネート製ボディは、塗装が面倒なイメージがあった。 しかし、最初から3色で細かく塗装されているこのボディであれば塗装のマスキングは不要。 手軽に完成させることができるのが最大の売りだ。 特に、フィアット131 アバルト ラリーは、当時1/20プラモデル製品として販売されていたこともあったため、昔のタミヤ製品を知るファンにとっても馴染み深い車種。 アラフィフ以上のファンにとっては嬉しい製品化といえるだろう。 ■新金型でZ32フェアレディZが登場!ハセガワの新製品 ハセガワの新作カーモデルとして大々的に展示されていたのが「ニッサン フェアレディZ(Z32) 300ZX ツインターボ 2by2(1989)」(税込価格:3,630円)。 1/24プラモデルのZ32フェアレディZといえば、1989年当時にタミヤから発売された「1/24 ニッサン・フェアレディZ 300ZX ターボ」が有名で、長らく名キットとして親しまれてきた。 そんな状況のなか、ハセガワから新たにリリースされたこの製品。 タミヤの2シーターとは異なり、リアシート付きの「2by2」をモデル化しているのが最大の違い。 徹底した実車取材をもとに完全新金型で再現している。 ヘッドライトとサイドミラーの鏡面はツヤ有りメッキで、ホイールがツヤ消しメッキパーツ。 窓の塗り分けシールも付属する。 写真からも分かるように雰囲気は実車そのもの。 名実ともに決定版となりそうなこの製品は、2023年11月18日ごろの発売だ。 ■RCカーから高級ミニカーまで盛りだくさんの京商 数多くの新製品を展示していたのが、今年創立60周年となる京商。 今回の目玉は、会場発表となる京商オリジナル1/18ダイキャストモデルのフィアット ヌォーヴァ 500(税込価格:26,400円)。 今回製品化されたのはコンバーチブルボディと後ヒンジドアが特徴的な最初期モデル。 ボディカラーは「グリーンクリア」「コーラルレッド」「セレステブルー」の3種類を用意している。 2023年12月の発売予定だ。 京商オリジナル1/18ダイキャストモデルの新製品には、このほかにもモーリス ミニ マイナーとポルシェ 911も展示されていた。 完全新規金型によるダイキャストモデルの1/18 モーリス ミニ マイナー(税込価格:26,400円)は、左右ドアとボンネット、トランクが開閉。 パイピングまで再現されたエンジンルーム、スペアタイヤが収まるトランク内、さらに後席に乗り込むための前席チルト機構なども再現。 ボディカラーは「オールドイングリッシュホワイト」「チェリーレッド」「 クリッパーブルー」の3色を用意。 モーリス ミニ Mk.1のディテールを徹底的に再現した京商らしいハイクオリティモデルだ。 もうひとつ、モーリス ミニ マイナーとともに展示されていたのが、ポルシェ 911(価格未定)。 こちらも最初期のいわゆる901を製品化したもので、エンジンルーム内の造形も見事だった。 ナローの1/18ダイキャストミニカーといえば、CMC製のミニカーが傑作モデルとして知られている。 しかしそのクオリティの高さから現在非常に高価で取引されており、気軽に入手できないという現状がある。 この京商製ミニカーが発売されれば、CMC製ミニカーに匹敵するクオリティのミニカーがおそらく2万円台で購入できるようになると思うので、ファンにとっては朗報だ。 RCカーでは2023年11月発売予定の「1/10 EP 4WD フェーザーMk2 FZ02L レディセット 1971 メルセデス・ベンツ 300 SEL 6.3 ベージュ グレイ」(税込価格:48,400円)が個人的にとても気になった。 この製品は1/10スケールの完成品RCカーで、“走るディスプレイモデル”とも呼べる細部まで徹底的に作り込んだボディが特徴。 クロームメッキのバンパーやグリル、ワイパーなどが再現され、RCカーの常識を超える再現度を見せている。 しかもメルセデス・ベンツ 300 SEL 6.3というシブい車種がRCカーとして楽しめるというギャップも面白い。 今後のラインアップも楽しみだ。 京商ブースにはこのほかにも、現在開発が進んでいる1/12ダイキャストミニカーのフェラーリ F40コンペティツィオーネ(税込価格:143,000円)。 従来品からディテールをさらに追求した内容にグレードアップ。 2023年11月下旬発売予定だ。 輸入品では、TOP MARQUES製の1/12ミニカーが気になった。 手前のランチア ストラトス ゼロ コンセプト(税込価格:110,000円)と奥に見えるフェラーリ 250 GTO 1962 ル・マン GTクラスウィナー(税込価格:107,800円)は、どちらもレジン製の完成品モデル。 思わずため息が出るようなクオリティが印象的だった。 ■1/24スケールのスナップキットを発表したアオシマ 青島文化教材社では、塗装不要・接着剤不要・お手頃価格をコンセプトにした簡単プラモデルとして、1/32スケールの「ザ☆スナップキット」を販売し、多くのラインアップを用意している。 今回のホビーショーでは、このコンセプトを1/24スケールに展開した新シリーズとして「ザ☆スナップカー」を発表。 2024年発売予定のシリーズ第1作として、1/24 KPGC10 スカイライン 2000GT-R '70(価格未定)を発表した。 パーツ数はわずか60点ながら、あらかじめ色分けしたパーツを使用することで無塗装でも見栄えのするモデルに仕上がる予定。 プラモデルを作る楽しさが手軽に味わえて、なおかつクオリティの高さが期待できる製品内容だった。 アオシマではこのほかにも1/24 ニッサン RPS13 180SX TYPE X '96(価格未定)を発表。 こちらのプラモデルは完全新金型によるもので、リトラクタブルヘッドライトは開/閉の2種類から選択可能。 車高もノーマル/ローダウンの2種類が選択できる内容だった。 ■各社が展示した注目の新製品 トミーテックでは1/64ミニカーの「トミカリミテッド ヴィンテージ」の新作が目立った。 2004に発売した「トミカリミテッド ヴィンテージ」は、発売20周年となる2024年に新ロゴマークとなることを発表。 昔のトミカを彷彿とさせるロゴマークとすることで、よりユニークなブランドを目指していく。 そんなトミーテックの注目の新作は、ストラクチャーシリーズの「トミカラマ ヴィンテージ」の大作となる高速道路。 同社が以前から参考出品として展示してきた高速道路がついに製品化された。 これは全長約400mmの大型製品で、直線道路と曲線道路の2種類を展開。 複数購入することで道路の延長と立体的な積層も可能。 リアルな小物も付属しているので、これまでにないミニカーのディスプレイが楽しめる。 高品質なミニカーをリリースするメイクアップの新作のなかで個人的に気になったのは、1/18レジン完成品モデルのNISMO GT-R LM ロードカー 1995とマクラーレン F1 ロードカー 1994。 どちらもサンプルモデルの展示で発売日・価格未定だが、1/18ミニカーとしてはかつてないクオリティの内容になるだろう。 EBBROの新製品で驚いたのがボンネットバスの1/43ダイキャストミニカー。 1/43 ISUZU BX 352 東京都バス(税込価格:26,400円)は、懐かしい都バスのカラーリングを忠実に再現している。 レースカー中心のラインアップが知られるEBBROの新境地となるのか? 今後の展開に注目したい。 このようにクルマ系ホビーの新製品は今後も続々発売される予定。 クオリティの高さに比例して価格もどんどん上昇しているので、価値の高いものを厳選して買いたいものだ。 [ライター・画像 / 北澤 剛司]

約60台のクラシックカーが4日間/1300kmの完走を目指す!ラ・フェスタ ミッレミリア2023
イベントレポート 2023.10.14

約60台のクラシックカーが4日間/1300kmの完走を目指す!ラ・フェスタ ミッレミリア2023

去る10月6日〜9日の4日にわたり、ラ・フェスタ ミッレミリア2023が開催され、当メディアでもスタートの模様の取材が実現した。 筆者自身、この大会にエントリーした友人や知人の応援でスタート会場である明治神宮に足を運んだことはあるが、取材として会場に向かうのはこれが初めて。 いつもより早起きなので、念のためスマートフォンのアラームを設定しておいたが、きっちり5分前に目が覚めた。普段めったにお目にかかれないクラシックカーを間近で観られることに、自然とテンションが上がっていたのかもしれない。 ■午前8時に会場である明治神宮に到着 混雑を避けるため、会場である明治神宮にはおそくとも午前8時前には到着しておきたい。自宅から会場である明治神宮にクルマで向かうと時間が読めないので、通勤電車に揺られて現地へ。会社員だったころ、ほぼ同じ時間帯の山手線内回りに乗って通勤していたが、今回は身動きが取れないほどの混雑ではなかった。多少なりともリモートワークが浸透しているのだろうか。 原宿駅で降車して明治神宮へ。見事な秋晴れ。朝は少しひんやりするくらいの気候で、明治神宮内に用意された車検会場までの徒歩移動が心地良かった。 プレスの受付を済ませて車検会場へ。午前8時前後になると、参加車輌がぞくぞくと入場してくる。すっかり場馴れした参加者もいれば、緊張した面持ちでクルマから降りてきた人もいる。それぞれが挨拶を交わし、華やかなでありながら、どこか和やかな雰囲気すら感じさせる。 まったくの偶然だが、筆者自身、参加者の方のおひとりが古い付き合いのクルマ仲間で、この日が久しぶりの再会となった。今回、ポルシェ356で初エントリーしたという。以前からラ・フェスタ ミッレミリアに参加してみたいという想いがあり、今回ついにその夢が実現したという(公式ホームページを確認したところ、無事完走したようだ)。 ■ラ・フェスタ ミッレミリアのコースはその年によって異なる ラ・フェスタ ミッレミリアのコースはその年によって異なる。今年は明治神宮をスタートして初日は福島県北塩原村にある裏磐梯レイクリゾートがゴール(全324.9km)。2日目は福島県〜宮城県〜山形県〜福島県を経て、栃木県日光市・日光金谷ホテル&中禅寺金谷ホテル(全417.2km)。3日目は栃木県〜茨城県を経て、千葉県成田市・ANAクラウンプラザホテル成田がゴール(全417.2km)。最終日の4日目は千葉県〜東京都港区・ホテルオークラ東京のゴールを目指す(全255.6km)ルートだ。 4日にわたる全行程は約1300km。しかも、ラ・フェスタ ミッレミリアはただ走ればいいというわけではない。「PC競技」という形式の、れっきとしたレースだ。ルート上にはPC(Prove Cronometrateの略)と呼ばれるチェックポイントが設けられ、それぞれ区間内の基準タイムが定められている。いかにしてこの基準に限りなく近いタイムで走破するか、その総合結果で勝敗が決まる。いずれの区間も正確さが求められるため、上位入賞を目指せば目指すほど気が抜けない。早すぎても遅すぎてもだめなのだ。 これを4日連続、長いときには都内から鈴鹿サーキットまでの片道分くらいの距離をクラシックカーで走破しなければならない。エアコンはもちろんのこと、屋根すらもないクルマだってある。しかも、この時期は天気が周期的に変わる。そうなると、雨のなか雨具を着てもずぶ濡れで目的地を目指さなければならないことも充分にありうる(事実、今年がそうであったように)。 もちろん、シビアに基準タイムを目指すことなく「ラ・フェスタ ミッレミリアへ参加することに意義がある」というスタイルでもいいだろう。事実、毎年このイベントに出られること自体、簡単なことではないからだ。移動時間などを含めると1週間近い時間をこのイベントに費やすことになる。審査や費用面はもちろんのこと、時間の余裕も不可欠。選ばれた人だけがこのイベントに参加できるのだ。 ■午前11時5分のスタートが近づくにつれて高まる緊張感 現地に到着してからおよそ3時間、会場内で取材を続けているうちに、あっという間にスタート時間が近づいてきた。参加者の方たちは自身の愛車に乗り込み、専用のラリーコンピューターに基準タイムを入力するなど、車検会場から正面ゲートまでの移動準備に取り掛かっている。 やがて会場のあちこちで参加車輌のエンジンに火が入りはじめ、少しずつ場の緊張感が高まっていく。 そして午前11時5分、ゼッケン1番の1926年製 ブガッティ T35(竹元 京人/竹元 淳子ペア)を先頭に、独特のエンジン音とオイルの匂いを周囲に発しながら各車が正面ゲートまで移動していく。 そして正面ゲートで各車の紹介が行われ、各車が表参道の路上へと放たれていく。たまたま居合わせたギャラリー、そして外国人の方たちが突如現れたクラシックカーの群れに驚いている。外国人の男性は車道にはみ出さんばかりに身を乗り出し、参加車輌に手を振っていた。こうして多くのギャラリーに見送られながら、全4日間、全行程約1300kmのラ・フェスタ ミッレミリア2023の幕があけたのだ。 ■まとめ:クラシックカーが東京の街を走る光景は実に美しい 参加車輌のなかでもっとも古いブガッティTYPE13の生産年は1913年!なんと110年前のクルマだ。 参加資格を有するクルマにはいくつかの条件が課せられているが、そのなかには生産年も含まれる。公式ホームページにはもっとも新しいクルマであっても「〜1967年12月31日に製造された車輌」と明記されているので、名実ともにクラシックカーであることが絶対条件といえる。 しかも、ただ年式が古いクルマであればよい、というわけではない。レプリカモデルはNGであり、FIVA(Fédération Internationale des Véhicules Anciens)またはFIA Historic Regularity Car Pass(HRCP)の承認を得た個体でなければ、ラ・フェスタ ミッレミリアの参加資格が得られない。参加車輌の素性も重視されるのだ。 オーナーおよび参加車輌のエントリーが受理されると、信頼できる主治医に愛車を託し、万全の体制を整えてその年のラ・フェスタ ミッレミリアに挑むことになる。クラシックカーを投機目的などではなく、大人たちが「超真剣に遊ぶためのツール」として文字どおり「酷使」することになるからだ。錆が心配だから雨の日は乗りたくないなどと悠長なことはいっていられない。人かクルマがリタイヤしない限り、4日、今年であれば約1300km先のゴールを目指して走るしかない。 こうして日常生活では接する機会のない人たちと4日間、ともに戦い、ともにゴールを目指して決められたコースを走る。決してライバルであっても敵ではない。そして、無事にゴールできたときにはお互いの健闘を称え合う。そんな濃密かつ非日常な時間が過ごせるだけでもこの大会にエントリーする価値があるように思う。 余談だが、美しいクラシックカーが東京の道を走るだけで、街が一気に華やぐから不思議なものだ。クルマの心臓部が内燃機関からバッテリーへと移行しつつある現在、いつまでのこの美しきクラシックカーが生き生きと走る姿が観られるのだろうか・・・。表参道を走り去るクラシックカーをファインダー越しに追い掛けているうちに、ふと、そんなことが頭をよぎったのだった。 [ライター・カメラ/松村 透]  

バンコクオートサロンにはJDMが勢ぞろい! メーカー出展以上に熱いユーザー展示を一挙紹介
イベントレポート 2023.09.29

バンコクオートサロンにはJDMが勢ぞろい! メーカー出展以上に熱いユーザー展示を一挙紹介

2023年6月28日〜7月2日の5日間にわたって開催されたバンコクオートサロン。東京オートサロンとの違いはいくつかありますが、ユーザーによる車輌展示がある点が大きな特徴といえるでしょう。それも、単に駐車場に集合しているのではなく、テーマに合わせてそれぞれ集められています。 今回は、オートサロン会場内外で展示されていたユーザー所有のクルマを、90年代JDMを中心に紹介します。 >>バンコクオートサロン2023全体のレポートはこちらhttps://www.qsha-oh.com/historia/article/bangkok-auto-salon-2023/ ユーザー展示という意味ではアジア最大 アジア最大規模のカスタムカーイベントと銘打っているバンコクオートサロンですが、実際の展示スペースは残念ながら東京オートサロンの規模に遠く及びません。しかし、バンコクオートサロンの特徴の1つ、ユーザーによる車輌展示という面では本当にアジア最大規模だと思われます。 会場内の展示スペースはメーカー同等の広さ 個人所有の車輌展示エリアとして用意されたスペースには「インフルエンサー&カークラブゾーン」と名付けられ、広さはホンダやマツダといったメーカーのエリアとほぼ同等でした。カスタムカーや90年代JDMへの関心の高さがうかがえます。 展示されていた車輌からは、日本車に対するオーナー愛を強く感じました。いかにもデモカーらしい派手なエアロやホイールを装備しているものもありましたが、純正形状を活かした品のよいカスタムカーも多数あり、展示のためではなく好きだから所有していることがよくわかります。 オリジナルへのリスペクトを感じる80スープラ 写真の80型スープラのオーナーは、意外にもまだ若いご夫妻でした。ちょうどご来場していたためお話を聞くと、「もったいなくて日常的には乗っていないけど、この型のスープラが大好き。これからも大事に乗っていきたい」とのこと。80スープラの官能的なボディラインを崩すことなく、効果的に装着されたエアロパーツが印象的でした。 屋外展示だけでも見に行く価値あり バンコクオートサロンでは、会場外にもユーザー車輌の展示エリアが設けられています。屋外の展示エリアは、日替わりでテーマが異なる点が最大の特徴です。広大な駐車スペースを利用して、ホンダデー、トヨタデー、車種別ではロータリーデーなどのテーマに合わせてファン垂涎のJDMが集まります。母体は各車種のオーナーズクラブやチューニングショップが中心のようで、展示車輌を持ち込んでいるオーナーもイベントを楽しんでいる様子でした。 また、開催時間中に車輌の入れ替えが行われるため、エンジンをかけて動く様子も間近で見られます。さらに、オーナーが近くにいれば話を聞くことも可能で、和気あいあいとした雰囲気が漂っていました。 日程の都合上、全ての展示を見られませんでしたが、気になったクルマの写真をいくつか紹介します。 タイで人気のA31セフィーロ 日産デーでは、A31セフィーロが多数集まっていました。タイでも生産されていた車種で、現在でも入手しやすく人気が高いようです。カスタマイズとしては、日本でも定番の2JZエンジンへの換装をしている車種が目立ちました。一方で、純正に近い状態のまま大切に乗っているオーナーも多く、写真のクルマのオーナーは「実はもう1台所有しているほどA31セフィーロが好き。タイでは、ドリフトをする人にとってポピュラーな車種ですよ」とタイのセフィーロ事情を教えてくれました。 生粋のVTECファン3人組 EF型シビック3台で来ていた3人組は、VTECが大好きで日本にも来たことがあるそうです。持ち込まれていたのは、シャトル、セダン、そしてEF9ではなくEF3という、いずれも珍しい3台。特にシビックシャトルは、低年式に関わらず綺麗に整備されたエンジンルームが印象的でした。ほかにも、王道のB16Aエンジン搭載のEG型シビックも所有しているそうで、3人とも口をそろえて「I like VTEC and HONDA」と笑顔で話してくださいました。 細部にこだわりをみせるタイのカスタムカー タイのカスタムカーは、オーナーの個性が色濃く反映されています。派手なリバリーから、キャリパーメーカーへのこだわりまでバンコクモーターショーの屋外展示で見かけた車輌を一挙紹介します。 なぜかスバルの「555」リバリーを施したトヨタ MR-S 外観だけではなくタイヤはPOTENZA、キャリパーはSPOONと細部にもこだわりをみせるS2000 本物のゼロファイターエディションかどうかは不明だが綺麗なランエボVI カスタムカーを愛するマインドは日本人以上 バンコクモーターショーで展示されていたJDMを見ながら、各クルマのオーナーと話していると懐かしさを感じました。学生の頃に愛車を前に、友人と取り留めもない会話を延々としていた感覚です。オーナーのみなさんが比較的若かったせいもあるかもしれませんが、「好みに仕上げたクルマをぜひ見てほしい」「もっとかっこよくしたい」といった感覚は、日本とまったく変わりません。 日本車がこれだけ愛されているという事実を日本人として誇らしく感じたと同時に、改めてクルマを楽しむという感覚を思い出させてくれました。展示会場そのものの広さは東京オートサロンに敵いませんが、オーナーの熱量は日本人以上です。屋外展示を見る目的だけでも、カスタムカー好きの方は一度バンコクオートサロンに足を運んでみてはいかがでしょうか。 [執筆・撮影 / 渡邉 篤]

朝霧立ちこめるターンパイクに集った「OZファンミーティング2023」レポート
イベントレポート 2023.09.18

朝霧立ちこめるターンパイクに集った「OZファンミーティング2023」レポート

去る2023年9月3日、箱根ターンパイクにて、OZホイールのファンが集うファン感謝祭『OZファンミーティング』が開催された。 今回で5回目になる同イベントは、OZホイールを取り扱うオーゼットジャパン(株)が主催する。 参加資格はもちろん、同社の取り扱うホーイルであるOZ、MSW、Sparcoホイールを車両に装着しているオーナーとなる。 それ以外はもちろん国産、外車、新車、旧車は問わない。  午前9時を回り始めたころから徐々に、1台また1台と足元をOZホーイルで固めた車輌が会場入りする。 スイフトスポーツからMINI、R35GT-R、フェラーリ テスタロッサに至るまで。 こうして見てみると、改めてOZは多くの車輌に本当によく似合っている。 もちろんそれらは各オーナーのチョイスやセンスもあるのだろうが、そこを除いたとしても各車体にマッチしていると思う。 ■レースで培った技術メーカー そんなOZというメーカーは、1971年にイタリアで産声を上げた。 シルヴァーノ・オゼッラドーレとピエトロ・ゼンの2人によって立ち上げられ、2人の頭文字をとりOZと名付けられ、ベネチア近郊の街で創業。 まだWRCなどという言葉がない時代に、ミニクーパーに合金リムのホイールを装着してレースに出場。 当時のラリーレースにて優勝を飾る。 同時にバイク用のホイールも開発。 それからはさまざまなレースにおいて、多くのメーカーの車種に装着して積極的にレース活動を展開。 今では必ずと言っていいほど、多くの競技にこのロゴが踊っている。 ■こだわりのオーナー車輌 新車旧車問わず、車輌本体もさることながら、やはり履かせるホイールにもこだわりが感じられる。 こちらのZ32もその1台だ。 時代感覚もあるのだろうが、この年代のクルマだとどうしても他社のホイールを入れているイメージがある。 ヤリスやインプレッサのようなラリー等のベース車輌などにも履かせるオーナーが多いが、なかにはホイールが気に入っていて、そのままキャリーオーバーで履いている方もいる。 あるオーナーは、「クルマをワゴンモデルに入れ替えましたが、その際前のクルマに使っていたOZホイールが気に入っていたので、今のワゴンにも履かせています」と話してくれた。 当然なのかもしれないが、OZ以外のホイールが驚くほどにいなかった。 今回筆者が見逃していたのでなければ、唯一Sparcoを履いて参加していたシトロエン C4。 もちろん参加OKであるが、ラリーベース車輌等がこれだけ参加しているのだから、もう少しいても不思議はなかったのだが、他に姿は見られなかった ■スカイラウンジ1分間の攻防 舞台挨拶では1分間アピールタイムとして、協力企業のコメントタイムがあたえられていた。 2人の女性ドライバーがOZの製品をアピール。 国産でもこだわりを持って履いているクルマは少なくないOZホイール。 特に競技用となれば尚更だ。 ガスり気味のターンパイクで一際目を引いたのは、キャラクターラッピングを施されたクスコジュニアレーシングの車輌。 若手ドライバーである、赤城ありささんの駆る個体だ。 ご本人はホイールについて、「デビュー間も無くまだまだ性能もその良さも活かしきれていないので、これから頑張ってその良さをアピールしていきます」と語ってくれた。 こちらを読まれた方々も、ぜひ暖かく見守って応援してもらいたい。 スズキ スイフトで参加されたのは、特徴のある衣装で登場された、ラリードライバーの兼松由奈さん。 全日本ラリーのエントリーにOZホイールを履いて参戦している。 舞台挨拶でも10月の最終戦にも同車輌でエントリーするということで、「応援お願いします」とコメントされていた。 協力会社の持ち込んだ車輌もまたこだわりが強い。 3台のセリカが居並ぶが、こちらはカラーリングショップ=プロトタイプが持ち込んだもの。 WRCでのセリカの活躍を見た世代にはたまらない並びだが、これらすべてのセリカの足元は、やはりOZで固められていた。 コメントでは、165系のセリカに15インチのホイールをはいて来たが、できれば再販をお願いしたいと。 ただし、需要は見込めると思えませんが…と会場の笑いを誘っていた。 朝霧の立ちこめる箱根ターンパイクで始まったOZファンミーティング。 多くのOZホイールを愛するオーナーや、それを支えるショップなどに囲まれ終了した。 気がつけば、あれだけ視界を奪っていた濃霧もすっかり晴れて、芦ノ湖周辺を見渡せるほどの好天になっていた。 また次回も多くのファンとの集いになることを予見するようだ。 OZは誰もが知るホイールメーカーだ。 だが意外なことにスポンンサードしているレースはあまりないという。 多くが供給はしているが、販売なのだ。 それゆえにオフィシャルサプライヤーとして名乗ることがあまりないともいえる。 縁の下の力持ち、サスペンション下の仕事人。 OZとは、そうした姿勢を貫いている企業といえるだろう。 [ライター・画像 / きもだこよし]

「房走祭」に世界の名車が500台集合!「THE MAGARIGAWA CLUB」がグランドオープン
イベントレポート 2023.09.11

「房走祭」に世界の名車が500台集合!「THE MAGARIGAWA CLUB」がグランドオープン

アジア初の会員制ドライビングクラブとして、コーンズ・アンド・カンパニー・リミテッドが建設を進めていた「THE MAGARIGAWA CLUB」(ザ・マガリガワクラブ)がついに完成。 2023年7月29日と30日には、グランドオープニングイベントとして「房走祭」が開催された。 この「房走祭」のイベント初日に、筆者も車輌展示を兼ねて参加したので、その様子をシェアしてみようと思う。 ■「THE MAGARIGAWA CLUB」とは? コーンズ・アンド・カンパニー・リミテッドが運営する「THE MAGARIGAWA CLUB」は、千葉県南房総市に開業した会員制ドライビングクラブ。 せっかく高性能スポーツカーを買っても、その性能を存分に発揮できない状況にフラストレーションを感じていたユーザーは少なくないはず。 この施設はスポーツカーを存分に走らせたいユーザーにとってはたまらない施設となっている。 全長3.5kmのコースは、800mのストレートに加え、上り20%、下り16%勾配という峠道のような区間もあり、コーナー数は22。 標高差は実に250mというユニークさ。 F1サーキットの設計で知られるTilke Engineers & Architectsによるコースデザインは、地形を最大限に活かしたもの。 世界でも例を見ないプライベートサーキットとなっている。 ■イベントへのご招待 筆者も「一度愛車を走らせてみたい!」と思ったものの、入会費は正会員で3600万円といわれていた。 そのためまったく縁のない話と感じ、それ以来自分のアタマからは完全に抜け落ちていた。 そんなある日、一通のメールが届いた。 それは以前、筆者の愛車であるシトロエン BX 4TCの撮影でご一緒した方からのメールだった。 驚いたのはその内容。 なんと「THE MAGARIGAWA CLUB」のオープニングイベントである「房走祭」で車輌展示をしませんか?というお誘いだった。 訊けば、「ヒルクライムドライブ」としてコースを実際に走行できるとのこと。 しょせん夢物語だと思っていたスポーツ走行が現実になるとはまったく想像していなかったので、まさに思ってもいない朗報だった。 ただ、ひとつだけ問題があった。 うちのクルマは車検切れのため、現地まで自走できないのだ。 せっかく良いオファーをいただいたのに、なんという不甲斐なさ。 「あぁ、なんてことだ!」と、天を仰いだのはいうまでもない。 仕方ないので正直に事情をお話して、お断りすることにした。 すると、なんと積載車についても対応してもらえるとのこと。 敷地内の走行についてはなんら問題はないので、これなら参加できるかもしれない。 そこで「旧車王ヒストリア」のライター仲間でもある、旧知の中込健太郎さんに連絡。 すると、その日は予定が空いているとのこと。 そこで中込さんの積載車でうちのクルマを運搬し、私も同乗して現地入りすることにした。 ■予想を超越した天上界 2023年7月29日のイベント当日、予定通り中込さんの積載車に車輌を積み、現地へ向かった。 中込さんと筆者はクルマの趣味が似ていていることもあり、アクアラインの渋滞がまったく気にならないほどクルマトークが炸裂。 あっという間に到着した。 東京都心から約1時間という触れ込みは、確かにその通りだった。 のどかな田舎道を進んだ先に突然現れた「THE MAGARIGAWA CLUB」は、まさに山を開拓して整備された途方もない施設だった。 入口の先で積載車から車輌を降ろし、シトロエン BX 4TC単体で頂上のクラブハウスを目指す。 コースに沿って走る側道は、途中まではなだらかな上り坂が続くものの、最後の急坂セクションがすごい。 うちのシトロエン BX 4TCは、フラットな燃料タンク形状のため急坂で燃料が途切れがちになる。 そんなクルマにとっては鬼門といえる急勾配だ。 この時点でコース走行に若干不安を感じてしまった。 そんな急勾配をなんとかクリアしてクラブハウスに到着すると、そこには別世界が広がっていた。 クラブハウスの周辺には車輌展示を行うクルマたちが受付のため多数集まっていた。 驚いたのはそのラインアップ。 まず、フェラーリ、ランボルギーニ、マクラーレンは当たり前。 都内でメルセデスやBMWを見るような感覚だ。 もちろんポルシェもRS系しかいないような感覚。 さらにポルシェ 959とかジャガー XJ220のような、レアモデルが普通に集まっている。 日本車もホンダ NSX-R、日産 GT-R NISMO、トヨタ・メガクルーザーといったクセの強い車種ばかり。 あまりにも刺激が強すぎて、朝イチの時点で感覚が麻痺してしまった。 幸いなことに、以前取材させていただいたメルセデス・ベンツ 190E 2.5-16 Evolution IIにお乗りのGさんのグループと一緒になった。 グループBとグループAエボリューションモデルというホモロゲモデルの並びが実現し、ようやくアウェイ感から脱することができた。 心強い仲間の存在は本当に重要である。 レアな車輌と同じくらい驚いたのがスタッフの運転スキル。 受付を済ませたら、参加者はクラブハウス内に移動。 あとは自分のコース走行の順番が来るまでゆったり飲食をしながら待つという趣旨だった。 そのため、車輌はスタッフがコース内の駐車位置まで運ぶという、ホテルのバレーパーキングのようなサービスを行っていた。 車輌を動かすスタッフは、トランスミッションの操作も駐車ブレーキの解除方法も1台1台異なるクルマをスイスイと動かしていく。 ハイドロニューマティック・サスペンションを備えるうちのBX 4TCも、車高が完全に上がってから移動させていた。 1台数億円クラスの車輌も珍しくないなか、ビビったり操作に戸惑ったりするスタッフが皆無だったことに驚いた。 いったい事前にどんなトレーニングを受けてきたのだろうか? 他人に愛車を預けることに抵抗感のある参加者も少なくなかったはずだが、このオペレーションを見たら、大切な車輌を安心して預けられると納得したことだろう。 ■ホテルのようなホスピタリティ あまりにも刺激的な個体が多すぎて完全に麻痺してしまったので、クラブハウス内でゆっくり心を落ち着かせることにした。 しかし、その目論見は見事に裏切られた。 クラブハウス内も見どころ満載だったのだ。 なかでも1階のテラス席は、コースを走るクルマを見ながらソファでゆったりとした時間が過ごせる至福の空間。 エグゾーストノートを聴きながらまったりできるこのエリアは、何時間でもいられそうだ。 そして通常は正会員限定となるエリアも一部が開放され、バーラウンジではシャンパンが振る舞われていた。 しかし、運転を控えているため、シャンパンの優雅な泡立ちを横目に、ウィルキンソンの辛口ジンジャエールでやり過ごさなければならないのは本当に辛い。 このときはさすがにコース上での運転を恨めしく思った。 ■刺激的なサーキットタクシー そうやって施設見学をしているうちに、いよいよコース走行の順番となった。 まずはクラブハウスからコース内にあるトランスポーターのドライバーホスピタリティに移動。 そこでブリーフィングを受けたのちに自分のクルマに乗り込み、コースを1周するというものだった。 ちなみにコースへの移動はBMWとアルファードによるシャトルのみ。 コース内の移動は、タイの3輪タクシーとして知られる「トゥクトゥク」が担っていた。 よく見ると、ドライバーホスピタリティの前ではサーキットタクシーの乗車体験が行われていた。 これはラ・フェラーリ、ランボルギーニ・シアン FKP37、ランボルギーニ・チェンテナリオ・ロードスター、マクラーレン P1といった、超弩級のスポーツカーに同乗してサーキット体験ができるというもの。 乗車できたのは、一部のゲストと来場チケットで入場して当選した方のみだったので、残念ながら体験できず。 見た目にはかなりのハイスピードで周回していたので、機会に恵まれた人は相当に刺激的な体験だったことだろう。 ■愛車でヒルクライム体験 いよいよメインイベントのコース走行のときが来た。 駐車位置からヒルクライムのスタート地点までは、コース内をゆっくり走って周りのクルマたちを確認する。 すると、受付では見かけなかったモデルたちがたくさん並んでいることに気づいた。 「これらのクルマたちの総額は、ちょっとした国の国家予算に匹敵するのではないだろうか」と思いながら、白昼夢のような光景にまたもやアタマが真っ白になる。 そんな刺激的なクルマたちに目を奪われているの束の間、いよいよスタート地点へ。 1台1台間隔を空けてスタートするので、自分のペースでリラックスして走行できるのはありがたい。 コース脇にはギャラリーの方々もたくさんいるので、少し頑張ってスタートしてみた。 最初はほぼ直線が続き、最初の右コーナーを抜けると、そこからヒルクライム区間。 序盤の勾配はキツくないので比較的ハイスピードでクリアできるが、問題は最後の20%勾配。 連続するコーナーを抜けていくと、目の前に絶壁のように現れるのだ。 「燃料供給が途切れませんように!」と願いつつ慎重にアクセル操作をして、急坂をなんとかクリアすることができた。 しかし、ホッとしていたのも束の間、ふと後ろをみると筆者のあとにスタートしたアルファ ロメオ ジュリエッタ・スパイダーがすぐ背後に迫っていた。 再びペースを上げて後半のコーナーをクリアしたが、本当にあっという間の走行体験だった。 走行した印象は、かなり攻略し甲斐のあるコースということ。 特に後半のヒルクライムセクションからクラブハウス前の区間はアップダウンとブラインドコーナーの連続で、走り込むことでタイムアップにつながる印象を受けた。 街中で運動不足気味のスポーツカーはもちろん、サーキット専用車などは持てるパフォーマンスを存分に発揮することができるはず。 「THE MAGARIGAWA CLUB」では車輌保管サービスもおこなっているので、ここにサーキット専用車を置き、好きなタイミングに走らせるような環境を実現できる方にとっては、極上のスポーツドライビングが愉しめるだろう。 ■クルマ好きの聖地に コース走行後に改めて展示車輌を観に行ったところ、アメリカ車を含む世界の名車たちが幅広いカテゴリーで展示されていたことに気づいた。 コース走行をしない展示車輌も少なくなかったので、このイベントのために多くの方々が協力したことは想像に難くない。 これまで貴重なクルマたちの海外流出が止まらない状況を見てきただけに、ここに集まったクルマたちに大いに勇気付けられたのも事実。 これだけの車種が集まるイベントが実現できるということは、日本のクルマ好きパワーはまだまだ健在ということ。 もちろん「THE MAGARIGAWA CLUB」自体は、一部の限られたメンバーのための施設であることはいうまでもない。 しかし、このようなイベントを定期的に開催することで、走る人も観る人も楽しめる「クルマ好きの聖地」となることを願いたいものだ。 [ライター / 北沢 剛司 画像 / 北沢 剛司、中込健太郎]

北イタリアのヒルクライムイベント、Silver flag 観戦レポート
イベントレポート 2023.08.22

北イタリアのヒルクライムイベント、Silver flag 観戦レポート

毎年、6月に北イタリアで開催されるアンティークカーのためのレース「Silver flag」観戦してきました。 現地から新鮮な現場の様子をお届けできたら幸いです。 レース参加者にもインタビューすることに成功しましたので、最後まで楽しんでいただけたら嬉しいです。 ■Silver flagとはどんなイベント? 私はこのイベントの開催地の近くに住んでいます。 1年間心待ちにしていたのでしょう、イベントが近づくにつれ、街では地元のおじさんたちが「Silver flag」について会話をしているのが頻繁に耳に入ってくるようになりました。 地元民からも溺愛されるイベント「Silver flag」ですが、実際にイベントに行ってみると、北欧やイギリス等の欧州内のさまざまな国から参加者が募っていました。 イベントについて少し紹介をします。 1953年から、同地でピアチェンツァ自動車クラブの主催によって、平原のストレートからアスファルトの勾配が生み出す難易度の高いヘアピンカーブでのルートで競い合うヒルクライムが開催されていました。 しかし1974年には、20年もの間の続いたイベントに終止符を打つことに。 そこから長い歳月を経て1996年、当時のヒルクライムを再誕させようと始まったのが「Silver flag」なのです。 当イベントはタイムアタックを競うイベントではなく、レーシングカーの保存状態と修復度を競う方式がとられています。 北イタリアの街「Castell’Arquato (カステッラルクアート)」を出発し、「Vernasca (ヴェルナスカ)」に到着するという約9kmのコースで、このコースをアンティークカーたちが例の大きなエンジン音とともに颯爽と駆け抜けていきます。 カステッラルクアートもヴェルナスカも都市ではなく、非常に小さい街で、ここに欧州各国からレースカーを引き連れてきたのかと考えると、参加者のイベントへの情熱、クルマに対する熱意がひしひしと感じられます。 イベントは毎年3日間続き、会期中はパーティーなども開催されるため、国を超えた参加者の友好は深まって、同志の友情はきっと一生ものになるのでしょう。 ■1日目と2日目は展示車輌を間近で見るチャンス! さて、イベントの1日目、2日目はカステッラルクアートでクルマの展示が行われます。 入場料等一切なく、誰でも気軽に参加でき、言葉が通じればクルマのオーナーとも気軽に話すことができます。 上述したように、イベントには多国籍の参加者が集うため、英語でのやり取りをしている様子がうかがえました。 余談ですが、カステッラルクアートは中世の町並みがそのまま残された非常に美しい魅力あふれる街ですので、観光も楽しめること間違いなしです。 今は亡きデ・トマソや、フェラーリレインボー、アバルトなど、珍しいクルマがあちらこちらに展示されており、興奮が止まりません。 これらのクルマすべてが、3日目にはレースに参加します。 また、日本ではもしかしたら知名度が低いであろう、ランチアのレースカーも多く参加していました。 ランチアは今となってはあまり盛り上がっているブランドではないですが(イタリアではたまに見かけます)、かつてはカーレース界で多くの功績残した最高のレースカーを製造していたのです。 昨今、ブランドのリニューアルを目指し動き出したようで、イタリアでは再び注目を浴びているブランドです。 イベントには非常に有名なストラトスや、実際にレースで賞を受賞した以下の車輌が参加していました。 当時のキズを修復せずにあえてそのままの状態なのは、輝かしいレースの思い出を消さないようにあえて残しているようにも感じました。 誰もが憧れるマセラティも数多く出場していました。 ▲私は、こちらのマセラティが総合優勝を勝ち取るのではないかと、予想していました! ■いよいよ本番3日目!実際に走るクルマの姿と音を堪能! イベント3日目になると、展示されていた車はまるで長い冬眠から目を覚ましたかのよう。 この瞬間を待ってたよ!と言わんばかりに大きなエンジン音を鳴り響かせ、スタート地点に向かいます。 スタート地点では多くの観客が集まり、イベントはかなりの盛り上がりを見せています。 こちらのクルマは皆さん見たことありますでしょうか。 スタート地点で待機するのは今は亡き、チシタリアのクルマです。 少しイタリアらしいエピソードを・・・。 出発直後、この個体がエンストしてしまうやいなや、即座に観客席から数人立ち上がり、助けにいく姿が見られました。 見て見ぬふりができない、いい意味でおせっかいなイタリア人らしい光景だな、と思いました。 その後、私たちもゴール地点のヴェルナスカへ向かいました。 ヴェルナスカではすでに到着したクルマが陳列されており、レア車が広場に敷き詰められた景色は圧巻としか言いようがありません。 午後の表彰式が行われるまでの間、参加者はお昼ご飯を食べたり、友好を深めたりと、イベントは常に盛り上がりと活気で満ちあふれています。 ▲イベント参加者たちが集まってテントの下で昼食を食べている様子です ここでも余談ですが、ヴェルナスカは丘で囲まれ、緑が豊かな風情で、典型的なイタリアの小さな田舎町といった感じです。 さてさて、表彰式が始まりました。 表彰はブランド別に分かれているようで、なんと、以前お伺いした「Alfa Blue Team」から参加したクルマが、アルファ ロメオ部門で賞を受賞していました。 ・「Alfa Blue Team」についてはこちら●公式クラブ「Alfa Blue Team」訪問記公式クラブ「Alfa Blue Team」訪問記https://www.qsha-oh.com/historia/article/alfa-blue-team/ 何十年も参加してきたけど、受賞は初めてだよ!と感極まった様子でした。 そして総合優勝されたのがこちらのフェラーリ。 確かに古さを一切感じさせない、素晴らしい修復度です。 こうして今年も3日間にわたるイベントに幕を閉じました。 ■レース参加者さんにインタビュー! さて、レースに参加したヴァレリオさんに、レースに対する想いなどお話を聞くことができました。 イタリア人はどんな想いでこのイベントに参加しているのか気になりますね。 ●Silver flagには何度出場したことがありますか? 12回目ですかね、コロナの影響で一度キャンセルされたから11回目か?そのくらいです。 ●このイベントに対する情熱は何?そしてそれはどこから来るのですか? それは恋のように、なぜ好きで、どこらかやってくるかわからないものなんですよ。 ●なぜこちらのジュリアGTAに乗っているのですか? クルマを買おうとしていたとき、他にもアンティークカーアルファ ロメオの選択肢が多くありましたが、このクルマの容姿がとにかく気に入ったんです。特にこのクルマは実際にレースに使われるために開発され、このクルマが持つスポーツヘリテージが非常に魅力的でした。 ●一番好きなアルファロメオの車種は何ですか? ジュリアスーパーですね! ●どのようにアルファロメオに興味を持ち始めたのですか? 僕の記憶があるときから父がアルファ ロメオを乗っていて、アルファ ロメオは当時一番有名で、イケていて、彼女に恋をしたのです。そして今アルファ ロメオを運転していると、父がいつも隣にいてくれている気がするんですよね。私には二人の子供がいるのだけど、二人ともアルファ ロメオに乗っています。息子においては、はじめミニクーパーに興味があったので、彼をアルファ ロメオ色に染め上げるのは大変でした。 ●日本車についてはどう思いますか? 日本は便利な機能を搭載したクルマのみではなく、レースで優勝してしまうクルマまで生み出して素晴らしいと思います。特にトヨタGR Gazoo Racingには感心しますね。もし今からクルマのコレクションを始められるとしたら、オレンジ色のホンダ360が欲しいです。 ●日本に住むAlfisti(アルフィスティ=アルファロメオファン)にメッセージはありますか? Alfistiだからと言って特定の車種を所有する必要はないし、高級なクルマも要らない、それよりも大切なことは好きという気持ちなんです。イタリアと日本は物理的距離があるけれど、そんなことは関係なく、例えば小さなキーホルダーを持つことだっていいし、安い中古車を買うことだっていい。もしその人がアルファ ロメオに対して情熱があればもう立派なAlfistiなんです。 ▲ジュリアGTAでSilver flagに参戦したヴァレリオさん 地元民からも、国境を越え欧州中からも愛されるイベントSilver flagは、この先も同じ情熱を持つ者同士の熱い戦いの場として盛り上がることでしょう。 いつか私も自分のアンティークカーを連れて参加してみたい、そう思いました。 [ライター・画像 / PINO]

イタリア本場のクラシックカーレース1000 MIGLIA(ミッレミリア)の秘密〜歴史解説編〜
イベントレポート 2023.08.18

イタリア本場のクラシックカーレース1000 MIGLIA(ミッレミリア)の秘密〜歴史解説編〜

日本でクラシックカー好きの方なら、一度は耳にしたことがあるであろう「La Festa Mille Miglia(ラ・フェスタ・ミッレミリア)」。 クラシックカー愛好家のためのカーレースイベントです。 この大会、実は起源はイタリアにあるってご存知でしたか? 今回の記事では、そんな本場のミッレミリアの歴史や背景、そして2023年の大会のレポート、ウィキペディアではわからない深堀情報や、現地の愛好家から聞いた話などをお届けします。 ■クラシックカーの通過を待っている間に古参のミッレミリアファンと仲良くなる 北イタリアでは毎年恒例のこのイベント。 2023年の開催は6月13日〜17日でした。 私が住むモデナ地区には、15日に参加者と参加車が通るということで、各街の通過予定時間をインターネットでチェックし、さっそく見に行くことに。 毎年恒例のイベントで、とりわけクラシックカーが大好きというわけではない一般人も、地元のお祭りのような感覚で見物に行くほどの知名度です。 家の近くの大通りでクルマの群れの通過を待っていたのですが…なかなか来ない…。 時刻は18:00を過ぎていましたが、夏の日照時間の長いイタリアではまだまだ日中のような強い日差しが照りつけており、気温は27度。 直射日光の下、私と同じようにクルマを持っている地元のみなさんと「暑いですね〜」「今年は結構遅れていますね〜」と立ち話をしているうちに、隣で待っていた方と仲良くなりました。 お名前はジャンカルロさん。 聞けば、彼は何十年も毎年ミッレミリアを楽しんでいる古参ファンだそうです。 今年もちょっと良いカメラを片手にクラシックカーの通過を待っており、良いショットを撮るのを楽しみにしているとのこと。 私が「日本語でミッレミリアの記事を書きたいんです」と言うと、「ミッレミリアのことなら俺に何でも聞きな〜。もう長年見てきているからね」と言ってくださいました。 ということで、遠慮なく色々聞くことに。 ▲ジャンカルロさんによると、ここ数年なぜか開催日に毎年雨が降るというジンクスがあり、「オープンカーに乗っている人たちはずぶ濡れになってかわいそうだった。今年はせめて晴れて良かった」とのことでした ■現地の古参ファンによるミッレミリア歴史解説 「もともとのミッレミリアは、スピードを競う本気のカーレースだったんだよ。」と語るジャンカルロさん。 元祖のミッレミリアは1927年から1957年までおこなわれていたのだそうですが、1957年レース中に9人の死者が数名出る惨事が起きてしまいました。 事故原因となったクルマはメンテナンスに問題があり、走行中に突然タイヤがバーストしてしまったのですが、当時は道路と歩道の境界が曖昧で、観客とクルマの距離が非常に近かったため、このような惨事につながってしまったそうです。 この事故以来、民衆の意見を尊重する形で大会は無期限停止に。 しかし20年の時を経て、1977年に「またあのころのミッレミリアを復活させよう」という動きがあり、大会が復活。 ただしそこからは、カーレースという形だけを残し、実際は愛好家たちの楽しみのためのカーラーリーイベントの趣向を強くして、再スタートしたのでした。 最近では、特にイタリアの観光業ともタイアップしたイベントとして進化を遂げています。 2023年の大会では前年までよりコースも日程も長くなっていますが、これも「もっと色々な街と景色を楽しめるように」という観点からの工夫です。 当然ミッレミリアのコース上に該当する街では、大会中ホテルやレストランの景気も良くなるため、クラシックカーの力で観光業界を盛り上げるという意味も入っています。 ■ウィキペディアではわからなかった小話 1957年、大会凍結の原因となる事故を起こしたのはフェラーリ。 以前クラシックカーのバイヤーをしていたジャンカルロさんによると、その年以降数年は、事故を起こしたフェラーリのモデル・335Sが一気にイメージダウンし、イタリア国内で値段が大幅に下落したそうです。 事故当時、フェラーリの創業者であるエンリコ・フェラーリは、その責任を問われて訴訟されるほどだったとのこと。 ただしかなり時間を置いてからは、イギリスなど他の国である種のプレミア価値がついたのだとか。 さて、ここまでのミッレミリアの歴史話を興味深く伺っているうちに、モデナの街は夕焼け色に染まってきました。 そして待機開始から1時間以上経ったころ、ようやくミッレミリアの出場者が通り始めました! よく見ると…とある時点からフェラーリの群れが! モデルや色にバリエーションはあるものの、全部フェラーリです。 これはクラシックカーなのか…?という感じの比較的新しいモデルのフェラーリも数多く通りました。 大会の趣旨としては、参加するクルマは大会が求める基準をクリアしている必要があり、ヴィンテージカーや歴史的に価値のある車輌が重視されているはずなのですが…実際はどうなのでしょう。 フェラーリの創業時の、元々のメインカラーであった黄色のフェラーリも通りましたよ! フェラーリの原産地、モデナの住人はだいたいフェラーリに誇りを持っているので、私も次々にやってくるフェラーリには自然と親近感が湧き、見ていて嬉しくなりました。 ここからどんどん他のタイプのクラシックカーもやってくるわけですが、お話の続きは次回の記事にて! [撮影 / Fabio・ライター / Maya.Y]

太陽の名を冠したホンダスポーツが大集結!第24回デルソルミーティング
イベントレポート 2023.08.18

太陽の名を冠したホンダスポーツが大集結!第24回デルソルミーティング

■それは聖地に集いし太陽のスポーツ  読者諸氏は、CR-Xデルソルというクルマをご存じだろうか? 7月15日、雨混じりの初夏に、ツインリンクもてぎのホンダコレクションホール前の駐車場にて「デルソルもてぎミーティング」が開催された。 今年で24回目となる同イベントは、同車輌の有志たちにより運営される単一車種のイベントだ。 CR-Xデルソルは名前の通り、ホンダバラードスポーツCR-Xの末裔のモデルだ。 とはいいながらも、ハイデッキのハッチバッククーペであった歴代モデルとは一線を画し、それまでとは全く違ったスタイリングのオープンカーとして1992年3月にデビューをする。 登場したクルマは、トランストップというタルガトップのような屋根がピラーを飛び越えてトランクに収納される、前代未聞の電動オープンモデルであった。 あまりにもエキセントリックであったがゆえに賛否両論の物議を醸したが、北米を中心にファンが今でも少なくない。  そんなデルソルの、他にはない唯一無二の魅力に惹かれたオーナーたちが集まり、交流を深めていくイベントだ。 また、毎回デルソルに携わった設計者やデザイナー等を招待。 今だから語れる誕生時の知られざる話や、さまざまなこぼれ話を披露する。 この日も、繁氏と川田氏がクルマのデザインそのものに関する、ある意味ぶっちゃけたお話をコレクションホールのHONDA職員の顔色を伺いつつ語られていた。  ▲登壇する川田氏(左)とデザインについて語る繁氏(右)。きわどすぎる話に参加者も思わず笑いがこみ上げる ■二桁ナンバーのデルソル  会場には20台を超える車輌が参加していたが、モデファイドしたクルマやチューンドした車両がいるなか、特出したクルマがいた。 2桁ナンバー(現行のような3桁の数字やアルファベットでなく、品川56とかで始まるナンバーのこと)を持つこれらのクルマは、そのデビュー当時より1人のオーナーが30年近くも付き合い続けた愛車である。 デルソルはそうしたオーナーも少なくないが、長い月日の間にはさまざまなドラマがある。 シルバーの個体のオーナーは、デビューした年に即購入のハンコを付いて手に入れたという。 その当時は、まだEF8ことサイバーCR-Xも新車で買えたということだが、あえて新型であるデルソルにしたという。 それから30年25万kmを超える距離を走り、2度にわたる大規模整備を経験し、途中でナンバーを切ることさえあったが、今も乗り続けることができているという。 素晴らしいのはここに至るまで一度もエンジンを開けることがなかった(ノンオーバーホール)車輌という。  もう1台は、当時のイメージカラーでもあるグリーンメタリックを纏ったボディのSiR。 これこそまったくのどノーマルではあるが、理由を尋ねるとそれも納得。 このクルマ元々はHONDAの広報車輌としてのモデルだった。 オーナーもそれを知っているがゆえに購入。 全くの無改造で維持をおこなっている。 ただし、フロントのリップだけは後から架装したのだそう。 「これがないとどうしてもフロントが上がって見えるので」と。 なるほど、元とはいえ広報車はやはり見映えは大事だということか。  ■屋根を開け放ってこそのデルソル  コレクションホール内ではゲストのトークを中心に、最後はコンクールの表彰で幕を閉じた。 優勝者はこれで最後というゲストのサイン入りデルソルのガレージキット(ホンダから許諾を受けての販売品)を贈呈され、讃えられた。 デルソルは、そのスタイリングからタルガモデルのようにも思われがちだが、強靭なリアピラーを要したれっきとしたオープンカーである。 なぜならリアガラスは電動で降りるからだ。 その証拠にドアにもパワーウィンドウスイッチが3つあるのだ。 コレクションホールより会場へ戻ると、雨模様の空はいつのまにか晴れ始め、真夏の陽気を取り戻し始めていた。 オーナーたちは1台また1台と屋根を開け始め、この陽気などまるで問題ではないかのように真夏の空気を車内に取り入れる。 太陽からの使者は30年の月日を経ても未だ健在である。 ▲デルソルのシンボルを着けた謎の小箱。これは当時の発表会でプレス向けに配られたケースだという。こんなものをひとつとってもクラブではキチンと保管し、活用している [撮影・ライター / きもだこよし]

タイ最大のカスタムカーショー「バンコクオートサロン2023」は日本にいるかのような空間だった
イベントレポート 2023.08.07

タイ最大のカスタムカーショー「バンコクオートサロン2023」は日本にいるかのような空間だった

カスタムカーの祭典として、多くの自動車ファンから注目を集める「東京オートサロン」。実は、東南アジアの人気観光地であるタイにも「オートサロン」という名前を冠したカスタムカーイベントがあるのをご存じでしょうか。2023年も「バンコクオートサロン2023」として、6/28〜7/2の5日間にわたりバンコク近郊のインパクトチャレンジャーホールで開催されていました。 東京オートサロンとのつながりも深い、バンコクオートサロン2023の様子をタイのカスタムカー事情や日本車人気とともに紹介します。 10年以上の歴史を誇るバンコクオートサロン バンコクオートサロンの歴史の始まりは、10年以上も前にさかのぼります。初開催は2012年「バンコク・インターナショナル・オートサロン2012」というイベント名で、「東京オートサロン」と正式にライセンス契約を結び開催されました。 バンコクオートサロンはコロナ禍で中止期間もありましたが、基本的に毎年開催されています。自動車メーカーに加え、ホイールや足回り、エアロなどのチューニングパーツメーカーも数多く出展。半分旅行気分でバンコクを訪れている特別感を抜きにしても、単純に自動車ファンとして楽しめる充実したモーターショーでした。 まずは、5日間にわたって開催された、2023年のバンコクオートサロンの概要を紹介します。 展示車輌の多くが日本車 会場奥の広いスペースを確保していたのは、トヨタ、ホンダ、マツダ、いすゞといずれも日本の自動車メーカーです。さらに、東京オートサロン2023の出展車輌の一部も船便ではるばる海を超え、バンコクオートサロンに展示されていました。 タイでは日本車が人気で、街なかでもトヨタやホンダの車をよく見かけます。アフターパーツメーカーやチューニングショップも、日本車を中心にデモカーを制作していました。また、CUSCOやOGURAクラッチといった日本のアフターパーツメーカーもブースを設けるなど、耳に入ってくる言葉を意識しなければまるで東京オートサロンにいるのかと錯覚してしまいます。 90年代JDMが大人気 日本のオートサロンは、メーカーを中心に現行車種か比較的新しい車輌の展示が多いですが、バンコクオートサロンのメインは、1990年代の日本車。 トヨタ 80型スープラやAE86型トレノ、マツダ FC3S型RX-7、日産 R32型スカイラインGT-R、ホンダ EG型シビックなど旧車ファン垂涎のラインナップが、メイン会場のいたるところに展示されていました。 タイで根付いているカスタムカー文化 タイの自動車ユーザーの多くは、思い思いのカスタマイズを楽しんでいます。ホイールやマフラー交換、追加メーターの装備といったライトチューンからエンジンスワップまでカスタマイズ内容は日本と変わりません。タイ名物のトゥクトゥクまで、カスタムマフラーの低音を響かせて走っていたのには非常に驚きました。 特に日本車ベースのカスタムカーが人気で、各々が個性的なスタイリングを楽しんでいます。車検が厳しいうえ、車離れの進む日本以上にカスタムカーへの熱量を感じました。 日本のオートサロンにはない、一般参加も大いに盛り上がったバンコクオートサロン2023のカスタムカーについて紹介します。 現地のアフターパーツメーカーも力を入れた展示 バンコクオートサロンでも、現地タイのアフターパーツメーカーが数多く出展していました。特にホイールメーカーの出展は、ブースも大きく目立っていた印象です。 また、足回りについてはタイ特有の事情があるようで、オリジナルサスペンションを製造する「TunerConcept」の社長は、「タイの舗装路は、日本のようにきれいではありません。タイで快適に走れるよう、オリジナル設計のサスペンションを開発しました」とブランド立ち上げの目的を明かします。一方で「日本製のアフターパーツは、品質が高くタイ人にとても人気ですよ」と、日本人として嬉しい一言も付け加えてくれました。 ちなみに、サスペンションの販売価格は日本円で8万円前後と、日本のパーツメーカーの価格とほとんど変わりません。東南アジアというと物価の安いイメージがありますが、所得も徐々に上がってきた影響で、一般層の顧客も多いとのことでした。 ユーザー参加の展示イベントも開催 バンコクオートサロンでは、ユーザー参加の展示イベントも開催されています。日替わりでテーマが設定されており、チューニングショップやオーナーズクラブを中心に同じ車種が集合し展示されている様子は圧巻です。 R35 GT-Rといった最新車種もありましたが、展示の中心は旧車。ホンダデーでは、EFからEG、EK型までのシビックやDA、DC型のインテグラなどが展示されていました。AWDがテーマの日にはGD型インプレッサやランサーエボリューションの各世代が勢揃い。他にも日産 A31型セフィーロが集合した日もありました。 タイらしい「マイペンライ」の精神を感じる開催日程 最後に、バンコクオートサロン2023の開催日程が、いかにもタイらしい日程だったことについても紹介します。タイには「マイペンライ」という、「大丈夫」や「問題ない」「気にしない」といった意味の言葉があります。 今回のバンコクオートサロン2023では、会場の広さに対して出展社が少ない点が気になり、出展していたメーカーの方にお話を聞いてみたところ、驚くべき回答が返ってきたのです。 タイ最大のレースイベント「バンセーン・グランプリ2023」が全く同じ日程で開催されており、メーカーやチューナーはそちらにかかりきりで多くの団体が出展できていない、さらに自動車ファンの多くがレースイベントに参加しているため例年より来場者は少ない印象とのこと。 日本であれば、東京オートサロンにスーパーGTの開幕戦や最終戦をぶつけるようなもので、関係者間で日程の調整を図るべき事態です。しかし、タイでは「マイペンライ」。出展者も「こちらに来たい人が来てくれればそれでいい」とあまり気にしている様子はありません。いかにもタイらしい精神を感じた瞬間でした。 [執筆・撮影 / 渡邉 篤]

国産自動車第一号「山羽式蒸気自動車」レプリカ製作プロジェクト最新レポート
イベントレポート 2023.08.03

国産自動車第一号「山羽式蒸気自動車」レプリカ製作プロジェクト最新レポート

岡山県では「国産車第1号・山羽式蒸気自動車」を開発した発明家・山羽(やまば)虎夫の偉業を讃えようと盛り上がりを見せている。 来年2024年で、山羽式蒸気自動車が製作されてちょうど120年を迎える。 旧車王ヒストリアでは、昨年2022年に岡山商科大学附属高等学校 自動車科のみなさんが製作した、山羽式蒸気自動車のレプリカ製作を取材。 今回はその続編として、最新トピックスをお届けする。 ■日本最古の自動車・山羽式蒸気自動車とは 山羽式蒸気自動車は、日本最古の自動車だ。 開発者の山羽虎夫は、1874(明治7)年に岡山県で生まれた。 1895(明治28)年、岡山市天瀬可真町(現在の千日前商店街あたり)に山羽電機工場を開業。 1904(明治37)年、29歳のとき日本で初めて蒸気自動車を開発して実際に走らせた。 その後、1957(昭和32)年に亡くなるまで発明品で数々の特許を取得した。 地元の資産家・森房三と楠健太郎からの依頼で、10人乗りの「乗合バス」を開発することになった。 製作期間は約7ヶ月を要した。 そして試走当日1904(明治37)年5月7日。 試走ルートは表町から京橋を経て、旭川の土手道を走って新岡山港近くまで、約10kmを力走したとされる。 実用化には至らなかったが、この偉業は国産自動車の未来を切り拓いた。 2022年11月、山羽虎夫は日本自動車殿堂(Japan Automotive Hall of Fame)、略称JAHFA(ジャファ)への殿堂入りを果たした。 120年近くの歳月を経て、その功績が認められたのだ。 ▲当時の沿道には試走を一目見ようと大勢のギャラリーが詰めかけたと伝えられている ▲有志団体「山羽虎夫顕彰プロジェクト」により、山羽虎夫像が移設された。人通りが多く試走ルートに近い京橋にたたずんでいる。上の写真は2023年5月2日(火)に行われた除幕式の様子[写真提供:岡山商科大学附属高等学校] ■山羽式蒸気自動車複製プロジェクトが進む 岡山商科大学附属高等学校 自動車科のみなさんによって製作された山羽式蒸気自動車のレプリカが、「国産自動車発祥の地・岡山」のPRに貢献している。 この複製プロジェクトは、地元の放送局・RSK山陽放送が同校にレプリカの製作を依頼し、自動車科設置(2018年)と創立110周年の記念事業として発足したもの。 昨年の2022年5月7日(土)には、レプリカ完成のお披露目を兼ねた記念走行を実施。 旧車王ヒストリアでも試走ルートを走行した様子を取材させていただいた。 ●国産自動車第一号は岡山生まれ!「山羽式蒸気自動車」を後世に伝えるレプリカ製作プロジェクト ▲2023年5月2日(火)の除幕式にもレプリカが展示された[写真提供:岡山商科大学附属高等学校] ■京橋朝市「山羽虎夫とはたらく乗り物」に展示 去る2023年5月7日(日)、「京橋朝市」にて「山羽虎夫とはたらく乗り物」と題した試乗展示会が開催された。 京橋朝市は、毎月第一日曜の早朝から催されている。 5月の開催日が、山羽式蒸気自動車が試走した記念日と重なったことから展示が企画されたという。 ▲当日は生憎の雨天 岡山商科大学附属高等学校 自動車科のレプリカ展示をはじめ、自衛隊や警察、消防車両、高所作業車などの「はたらく車」が並んだ。 高所作業車の試乗も体験できるなど、雨の中でもはたらくクルマたちは、やはり人気だった。 ▲京橋朝市の告知ポスターには山羽虎夫のイラストとレプリカが大きく掲載された ▲イベント限定グッズ「山羽虎夫チョコ」[写真提供:岡山商科大学附属高等学校] ▲旧車王ヒストリアの記事をもとに展示用パネルを作っていただいた。ポスターやグッズ、展示パネルなどのデザインを手掛けたのは、京橋朝市魅力アップ事業実行委員会 この日は生憎の雨天だったが、多くの人が足を止めてレプリカに見入っていた。 レプリカの説明を担当していた自動科3年の新田匡さんは 「地元でも山羽蒸気自動車を知らない人が多く意外でした。このレプリカ製作に関わったことで、岡山の歴史にもふれることができ、発見も多かった。卒業までにレプリカの完成度をできるだけ上げて後輩に受け継いでもらいたい」 と話す。 ▲訪れた人に丁寧に説明する新田さん。ちなみに新田さんの好きなクルマはスバル インプレッサWRX。シリーズ2代目の「鷹目」が気に入っているそうだ ■レプリカのアップデート こちらのレプリカは、2022年のお披露目から少しずつアップデートされている。 このさきも改良を重ねながらできる限り複製を目指しているという。 今回の改良部分を伺った。 ●ブレーキを追加 ブレーキは同年代の外国製の車両を参考に製作し、平ベルトでドラム部分を締め付ける構造に。 ●グリップを追加 ハンドルに縄のグリップを装着。 当初は革、布、と候補が上がったが、時代背景を考えたとき、稲わらを生活用具に使用していたことを思いついたという。 そこで「巻き付けるとしたら、入手しやすい荒縄を巻き付けるのではないか」ということで縄になったそうだ。 実際に、年配の方からは「これがええ!」と評判が良いのだとか。 ●蛇口を追加 2つの蛇口があり、1つはボイラーの水を排出するものと考えられる。 1つは鋳造で複製された。 ●減圧弁を追加 構造上、蒸気が抜けないように減圧弁があったと考えられる。 パイプを溶接して作られている。 ■この先も「山羽式蒸気自動車複製プロジェクト」に注目 山羽式蒸気自動車のレプリカは、今後も多様なイベントに展示されるようだ。 8月3日(木)には、岡山商科大学附属高等学校で開催されるサマーセミナー「岡山の偉人 日本で初めて自動車を作ったひと  山羽虎夫について(近隣の小学生対象)」で展示されるほか、秋には県内のカーイベントでの展示も予定されているそう。 旧車王ヒストリアでは今後も、山羽式蒸気自動車に関する続報をお届けしていく。   [取材協力]・岡山商科大学附属高等学校・京橋朝市実行委員会・京橋朝市魅力アップ事業実行委員会・吉備旧車倶楽部 [ライター・撮影/野鶴美和]

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