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去る2024年3月20日(水)、横浜赤レンガ倉庫で初開催された【YOKOHAMA CAR SESSION ~若者たちのカーライフ~】の模様を取材した。 横浜赤レンガ倉庫で開催されるクルマのイベントはいくつもあるが「若者たち」というくくりはおそらく初めてではないかと思う。 イベントの主催者であり、地元横浜育ちである後藤氏、本田氏、甲野氏の3人が1年掛かりで実現にこぎつけたという。 ■YOKOHAMA CAR SESSION ~若者たちのカーライフ~とは? ▲左から甲野大輔さん(愛車はホンダS2000)、後藤和樹さん(愛車はいすゞピアッツァ)、本田浩隆さん(愛車はシトロエンBX) (以下、オフィシャルサイトより転載)若者が所有するクルマ達約100台を横浜赤レンガ倉庫に展示! 35歳以下の若者達が、趣味として楽しむ自慢のクルマ達を展示いたします。場所はなんと横浜赤レンガ倉庫!!展示車両のレギュレーションは無く、国籍、年代問わず様々な車種が集まります。皆様ぜひ遊びにお越しください。 このときの印象は一足先に下記記事にまとめたので、ご一読いただければ幸いだ。 ●初開催『YOKOHAMA CAR SESSION ~若者たちのカーライフ~』を取材して思うことhttps://www.qsha-oh.com/historia/article/yokohama-car-session-2024/ 当イベントに参加していたクルマを2回に分けて、1台ずつ紹介していく。2回目となる今回は「輸入車編」だ。 ■ドイツ ドイツ車は16台がエントリー。メルセデス・ベンツ、BMW、ポルシェ、アウディ、オペル、スマートなど…。幅広いモデルが展示されていた。 ポルシェ914は代官山蔦屋に展示されていたこともある個体なので、実車を観たことがあるかもしれない。 バブル世代には懐かしいアウディ90は、以前姉妹サイトである「外車王SOKEN」で取材させていただいた三上諒人氏の愛車であり、初代アウディTTは旧車王ヒストリアの執筆陣のひとりである林 哲也氏の愛車だ。ちなみにおふたりとも20代。 ■21才のオーナーがかつて父親が所有したクルマを愛車に選んだ理由とは?1991年式アウディ90クワトロ 20V(B3型)https://www.gaisha-oh.com/soken/audi-90-mikami/ ■林 哲也氏https://www.qsha-oh.com/historia/article/hayashi-tetsuya/ ■イギリス イギリス車も14台がエントリー。スーパー7をはじめ、ロータスエランやロータスエスプリ、ジャガーXJSなど懐かしいモデルが並ぶ。その他、クラシックミニやヴァンデンプラスプリンセスなど、エンスー度もかなり高め。たまたま現地で会ったクルマ仲間(おじさん世代)も「ほんとに若者の愛車なのか!クルマの方が年上ばかりじゃん!!やるなぁ〜」と目を丸くしていたほど(同感です)。 ■フランス 国別対抗(?)では最大勢力となったフランス車は21台がエントリー!70年代〜2000年代まで幅広く、スポーツ系からヘ○タイ系までバラエティに富んでいて度肝を抜かれた。プジョー405やルノーアヴァンタイムの実車を見たのは筆者も本当に久しぶりだったし、BXが3台もエントリーという時点でかなりヘ○タイ度の高めのイベントといえるだろう(笑)。困ったもんだ(もちろん良い意味で)。 ■イタリア フランスとくればイタリアでしょう!ということで10台がエントリー。フェラーリやマセラティがいなくとも十二分に華があった(360モデナのオーナーさんがエントリー予定だったものの、修理中で断念したとか)。こうして他国のクルマと並べてみると、ボディカラーがどれも艶っぽく映るのは気のせいだろうか。ヌヴォラブルーのアルファ ロメオ166、DTMで活躍した155、フィアットバルケッタ、クーペフィアット、500にパンダ…、アウトビアンキ、極めつけのランチアフルビアクーペ…。それまでは無縁だったイタリア車に乗ろうと決意できたのもこのイベントのおかげかもしれない。 ■スウェーデン スウェーデン車は6台がエントリー。角張った時代のボルボ、バブル時代は伊達男が乗っていたサーブ。いずれも令和の世の日本では見掛ける機会が減ってしまったけれど、こうして若い世代の方が大切に乗ってくださっていることに目頭が熱くなった。ちなみにグリーンのボディカラーが美しいサーブ9-3は、以前外車王SOKENで取材させていただいたしょーへいさんの愛車だ。 ■幼少期の8年間を一緒に過ごして別れたあと、運命の再会。20才のオーナーと1998年式サーブ9-3 クラシック 2.3ihttps://www.gaisha-oh.com/soken/saab-93-classic-shyouhei/ ■アメリカ アメリカ車も2台がエントリー。カマロの方はボディカラーが色褪せていたけれど、かえってこれが味になっていて雰囲気満点だった(3代目カマロも生産終了から30年以上。いつの間にかクラシックの領域に足を踏み入れていたことを実感した)。 ■出展ブース 今回のイベントには、名だたるショップや遠藤イヅル氏といった、クルマ好きであれば誰もが知るであろう豪華な顔ぶれがそろった。これも、主催者である後藤氏、本田氏、甲野氏の熱意と人徳によるものだろう。 ●LE GARAGE ・URL:https://www.legarage.jp・住所:東京都港区六本木5-17-1 AXISビル 1F・Tel:03-3587-2785・営業時間:11:00〜19:00(夏期休業・年末年始休業などは除く)・定休日:毎週水曜日 ●Auto Glanz ・URL:https://a-glanz.com・住所:埼玉県入間市小谷田2-1032-1・Tel:04-2968-7773・営業時間:10:00〜19:00・定休日:毎週月曜、第1、第3火曜日 ●遠藤イヅル ・Facebook:https://www.facebook.com/izuru.endo.9 ●リバイバルカフェ ・URL:https://revivalmiura.com・住所:神奈川県三浦市初声町和田2650-3・Tel:046-845-6224(予約番号もこちら)・営業時間:月火水 11:00~18:30、土日祝 10:00~18:30(L.O:フード 17:30、ドリンク&スイーツ 18:00)・Facebook:https://www.facebook.com/revivalmotorstationcafe/・X:https://twitter.com/revivalmiura・YouTube:https://www.youtube.com/channel/UC-IBrf9Q3OAmMg7mtZoOttw・Instagram:https://www.instagram.com/revivalmiura *貸切利用プランをスタートとのことで要チェック!!・11台/13名以上・時間:3時間・料金:平日/1名:4000円〜、土日祝/1名:4500円〜・ランチ/ドリンク/デザート/コーヒーor紅茶のフリードリンク付き ●Unilopal ・URL:https://unilopal.jp・Facebook:https://www.facebook.com/unilopal・X:https://twitter.com/unilopaljapan ●AUTOREVE ・URL:https://autoreve.jp・住所:146-0093東京都大田区矢口3-3-15・Tel:03-6427-5820・営業時間:10:00〜19:00・定休日:火曜日および第1、第3、第5水曜日・メール:contact@autoreve.jp・Facebook:https://www.facebook.com/autoreve.japan ●CCG ・URL:https://www.carcityguide.info・YouTube:https://www.youtube.com/@carcityguide・Instagram:https://www.instagram.com/car_city_guide/ ■まとめ:若きエンスージアストの皆さんにエールを! 国内外を問わず“ノンジャンル”というくくりで開催された【YOKOHAMA CAR SESSION ~若者たちのカーライフ~】。 参加者の誰もがこの日の主役であり、スポットライトを浴びるに相応しいクルマだった。 オリジナル志向のオーナーがいるいっぽうで、時代考証をしっかりと行いつつ「当時はこんなモディファイをしていたんじゃないか」を追求していた個体もあった。 「自分のクルマなんだからどう煮て焼いて食おうとオーナーの自由」という考え方がある。これはこれで一理あるだろう。その一方で「いじくり倒して飽きたら売る」という行為に対しては個人的に疑問に思うところもある。 その点においては『YOKOHAMA CAR SESSION ~若者たちのカーライフ~とは?』にエントリーしていた方たちは「自身の愛車の価値や出自、そしてセオリー」を理解したうえで自分色に染めているように感じられた。 今回、参加した皆さんも、今後さまざまな理由で現在の愛車を手放すことがあるかもしれない。しかし「コンディション良好な個体」として、大切にしてくれるであろう次のオーナーが見初めてくれるはずだ。 なんだか上から目線で申し訳ないが、若い世代の方たちのカーライフを楽しみ、そしてクルマと誠実に向き合う姿勢は、ベテラン勢も大いに学ぶべきところがあるように感じた。 欲しいクルマが見つからない。昔が懐かしい。最近のクルマはツマラナイ。「現在」という時間の流れを否定して愚痴をこぼしているだけでは何の解決にもならない。 今回のイベントを企画したお三方、そして参加した皆さんのように、クルマという趣味と気の合う仲間たちとともに楽しむことでで初めて見える景色、そしてさらなる次のステップが現れるはずだ。 [ライター・撮影/松村透]
去る2024年3月20日(水)、横浜赤レンガ倉庫で【YOKOHAMA CAR SESSION ~若者たちのカーライフ~】が初めて開催された。 イベントの主催者であり、地元横浜育ちである後藤氏、本田氏、甲野氏の3人が1年掛かりで実現にこぎつけた。 ■YOKOHAMA CAR SESSION ~若者たちのカーライフ~とは? ▲左から甲野大輔さん(ホンダS2000)、後藤和樹さん(いすゞピアッツァ)、本田浩隆さん(シトロエンBX) (以下、オフィシャルサイトより転載)若者が所有するクルマ達約100台を横浜赤レンガ倉庫に展示! 35歳以下の若者達が、趣味として楽しむ自慢のクルマ達を展示いたします。場所はなんと横浜赤レンガ倉庫!!展示車両のレギュレーションは無く、国籍、年代問わず様々な車種が集まります。皆様ぜひ遊びにお越しください。 このときの印象は一足先に下記記事にまとめたので、ご一読いただければ幸いだ。 ●初開催『YOKOHAMA CAR SESSION ~若者たちのカーライフ~』を取材して思うことhttps://www.qsha-oh.com/historia/article/yokohama-car-session-2024/ 当イベントに参加していたクルマを2回に分けて、1台ずつ紹介していく。今回は「日本車編」(輸入車編は次の記事で)。 ■トヨタ&レクサス 今回の展示車輌のなかでは12台と、国産勢で最大勢力を誇ったトヨタ&レクサス。1980年代〜90年代のクルマが多かったのが印象的。ということは、オーナーよりも年上のクルマを所有していることになる。 ハチロクことAE86はもちろんのこと、稀少なMRスパイダーをはじめ、俳優の永瀬正敏がCMに登場していたカレン、JTCCでも活躍したカローラエクシブなど、お父さん世代には懐かしいモデルが並んだ。 ■日産 日産車は5台。ステージア260RSや、180SX、スカイラインGTS-t タイプMなど、根強い人気を誇るモデルが並ぶほか、7代目サニーや3代目ラルゴといった、当時のファミリーカーが展示されていたのも新鮮だった。ノンジャンルらしい、このイベントならではの風景かもしれない。 前車3台は淘汰が進み、すでに保存の域に入っているだろうが、後車2台は実用車ゆえの悲劇で、数が売れても廃車にされてしまい、後世に残りにくい。貴重な生き残りともいえるので、(大変なこともあると思いますが…)末永く乗っていただければと思う。 ■ホンダ ホンダ車は9台。懐かしのCVCCシビックオーナーはなんと新潟県から自走してのエントリーだというから驚きだ。 その他、ホンダS2000やS660といったスポーツ系から、「カッコインテグラ」でおなじみの2代目インテグラをはじめ、リトラクタブルヘッドライトが特徴的な3代目アコードなど、最近ではめったに見掛けなくなった懐かしいモデルもエントリーしていた。失礼ながら「ホンダ地獄」などといわれるほど純正部品の確保が難しいモデルも多い。にも関わらず、素晴らしいコンディションを維持している若きオーナーの皆さんたちの熱量が伝わってきた。 ■マツダ マツダ車は2台ともユーノスロードスターがエントリー。2台ともオリジナル度が高い個体だった。いずれもナンバーを移設しているということは1.6Lモデルだろうか。 元NAオーナーとしてはオーナーさんに声を掛けたかったのだが、タイミングが合わず。今度取材させてください!それにしてもNAロードスターと赤レンガ倉庫の組み合わせは画になる。 ■スバル スバル車では唯一のエントリーとなった4代目レガシィツーリングワゴン。レガシィツーリングワゴンの完成形ともいえるスタイリングは、実はもうデビューしてから20年以上(2003年)経っているとは思えないほど古さを感じさせない。 私事で恐縮だが、恩師が歴代レガシィツーリングワゴンを所有していたり、当時の勤め先の社用車がこのレガシィツーリングワゴンだったこともあり、懐かしさのあまりしばらく眺めてしまった。 ■いすゞ いすゞ車は2台がエントリー。いすゞが国内で乗用車の販売を終了したのが2002年。それから22年。今回、エントリーしたオーナーさんたちは当時小学生くらいだろうか。 おじさん世代が当時を懐かしんで、あるいは新車ワンオーナー車として所有しているならいざ知らず、若い世代の方がこうして大切に所有していることに思わずぐっときてしまった。世代を超えてピアッツァが愛されていることをジウジアーロが知ったら喜ぶに違いない。 ■ダイハツ ダイハツからは唯一のエントリーとなった4代目ミラ。そして懐かしのTR-XXアバンツァート!このモデルも残りにくいモデルのひとつだろう。純正部品はほぼ欠品&製造廃止状態だと思われ、各種トラブルに加えて部品の確保にも苦労されているのではないかと推察する。いちど、オーナーの方にこのクルマへの想いを伺ってみたい。 ■まとめ:クルマに興味がない人も楽しめるホスピタリティあふれるイベント こうして振り買ってみると、昭和の終わりから平成初期に掛けて街中でひんぱんに見掛けた日本車の展示車輌が多かったように思う。 当時を知る世代にとっては懐かしいクルマばかりで、たまたま現地を訪れたであろう人たちのテンションがあがり「おじさんホイホイ状態」になっていた(笑)。また、道行く若いカップルも展示車輌をじっくりと眺めているのも確認できた。 この種のイベントはどうしてもスポーツカーにスポットライトがあたりがちだ。たしかにその方が華やかになるし、同じクルマが何十台も並ぶ光景(しかも横浜赤レンガ倉庫で)は壮観だ。 しかし、他のイベントではなかなか見掛けないモデルやさまざまなメーカーを一同に介するノンジャンルとしたことで、1台1台をじっくりと眺めることができた。その方が結果的にたまたま横浜赤レンガ倉庫を訪れた来場者の人たちも楽しめたに違いない。 自分たちだけでなく、来場者にも(クルマに興味がない人にも)楽しんでもらう。そんなホスピタリティあふれるイベントだったことはたしかだ。 今回のような絶妙な塩梅を創り出すのは、簡単なようで、実はものすごく難しい。 この雰囲気を残しつつ『YOKOHAMA CAR SESSION ~若者たちのカーライフ~とは?』を継続していくには、主催者である後藤氏、本田氏、甲野氏の存在が欠かせないものとなっていくだろう。 主催者が変わると、イベント自体の雰囲気もガラリと変化する。さまざまなご苦労があると思うが、ぜひ来年以降も続けてほしいと思う。 [ライター・撮影/松村透]
筆者の愛車はホンダ S2000(AP1)。 1999年式の「初期型」だ。約16年前に中古で手に入れた。 16年という年月を過ごしているうちに、S2000は「旧車」となったようだ。 S2000を含む80〜90年代に生産されたクルマたちはいつしか「ネオクラシック」と呼ばれ、中古市場も高騰中と聞く。 しかし正直なところ、現在のS2000の立ち位置など個人的にはどうでも良い。 ほぼ毎日乗り、人生の節目はもちろん、苦しい場面も一緒にくぐり抜けてきた存在。 S2000が語られるときは「唯一無二」と表現されるが、自分にとってはこの個体こそが唯一無二だと思っている。 ▲エンジン載せ換え以降25万キロ以上走行している(実走行は31万キロ)筆者のS2000。外内装ともくたびれてきた 筆者のS2000は、2012年に中古エンジン(約8万キロ)に載せ換えている。 それから約10年が経過。 エンジンも25万キロを越え、車体は31万キロを越えた。 2021年の秋頃からはエンジンが掛かりにくくなる症状も。 「本当に良くないことが起こり始めている。早く対処しなければ二度と乗れなくなるかもしれない」 そう危機感を抱いていたところ、友人の紹介でS2000のリフレッシュ&チューニングを数多く手がける広島県福山市の「ComeTec」にご縁があり、エンジンのオーバーホールが決まった。 今回は愛車の修理レポートとともに「S2000との付き合い方」を取材。 “旧車”となったS2000とのこれからの付き合い方について「ComeTec」の代表・熊谷展宏さんにお話を伺った。 ▲AP1に搭載される直列4気筒DOHCエンジン「F20C」の特徴的なカムシャフト。高回転エンジンのため慴動部が多く複雑な構造[写真提供/ComeTec] ■S2000のスペシャリスト「ComeTec」 今回、お世話になった「ComeTec」。 代表の熊谷展宏さんは、ディーラー勤務を経てホンダ系のチューニングショップへ。 2010年に「ComeTec」を設立。 自動車メディアでは「ホンダ車のスペシャリスト」として登場するイメージが強いが、手掛ける車種は幅広い。 熊谷さん自身がMINIのオーナーだったこともあり、MINIやAbarthなどの輸入モデルからGRヤリス、86/BRZといった近年の国産モデルまでさまざま。 ショップを経営する傍らスーパー耐久のメカニックとしても活動するなど、豊かな経験と実績を誇る。 なかでもS2000は特別な存在で、リスペクトしているとのこと。 ◆熊谷さん:20年も前によくぞ出したなと思います。ホンダはこの先、FR車を出すことはないでしょう。S2000は特別な存在だと思いますし、ライフワークとして携わりたいですね。「あと20年以上元気に走る」をモットーに取り組んでいます。 ●デモカーはサーキットマシンとして22万キロの個体をリフレッシュ! ▲塗り替えられたマツダのボディカラー「セラミックメタリック」が、S2000のもつ凛とした美しさを一層引き立てる[写真提供/ComeTec] デモカーは22万キロ走行個体を譲り受け、サーキットマシンに生まれ変わらせている。 リフレッシュとチューニング、耐久性も高められている。 「車体がしっかりしていれば、一級のマシンになります」と熊谷さん。 ◆熊谷さん:デモカーはサーキット専用ですが、最も力を入れているのは、できるだけ新車に近づけるリフレッシュメニューです。お客様が手に入れた当時の気持ちになっていただけるようにベストを尽くします! もちろん、お客様のサーキットと普段乗りの割合によって、リフレッシュ&チューニングメニューも調整可能です。基本のメニュー設定は「エンジン、トランスミッション」「車体、足回り」「外内装」の3パートあり、いずれかを軸にプランを立てていきます。サーキット仕様をご希望の場合は、レストアしながらモディファイできますよ。 ▲ベース車両は22万キロ以上走行したAP1の初期型[写真提供/ComeTec] ▲エンジンはオーバーホールの際に戸田レーシングのキャパシティアップ2350キットを導入[写真提供/ComeTec] ▲骨組みまで分解。ボディや足回りにはAP2補強パーツも加工流用されている[写真提供/ComeTec] ▲車体、足回り、エンジンが完成した後はレースに出場[写真提供/ComeTec] ▲どんなサーキットでも扱いやすく、耐久性も高められている[写真提供/ComeTec] ■あらためて愛車の状態を目の当たりに ▲カーボンが堆積してしまったエンジン内部[写真提供/ComeTec] さて、筆者の愛車。 エンジンの内部を確認して言葉を失ってしまった。 真っ黒に汚れたエンジン。 「愛車は大切な存在」などと、SNSで発言した言葉がみるみる霞んでいった……。 エンジンを分解した直後の状態を熊谷さんに伺った。 ◆熊谷さん:カーボンの堆積が、これまで見た中で最もひどいレベルでした。原因はいくつかの要因がからみ合っていると思われます。8万キロの中古エンジンに載せ換えているそうですが、このエンジンが載せ換えられるまでにどんな乗り方やオイル管理をされていたかも影響していると思います。 ーーこのエンジンが載せ換えられるまでに、どんな乗り方がされていたと推測されますか? ◆熊谷さん:近距離移動の「ちょい乗り」が多かったり、渋滞によるストップ&ゴーが頻繁だったりするシビアコンディションが多かったと推測されます。 「ちょい乗り」やストップ&ゴーの繰り返しは、低回転走行により理想的な燃焼がしにくくなり、カーボン発生の原因になります。 さらにエンジンオイルの温度が低いままだと、性能が発揮できずエンジンの消耗が進み、ブローバイガスが増えて、これもカーボン発生の原因になります。 この堆積したカーボンがピストン、シリンダー、バルブシールの間に入り込んでしまうことで燃焼が悪くなり、さらにカーボンが溜まるという悪循環を生みます。 ーーオイル管理は、適切なサイクルで行われていなかったということでしょうか? ◆熊谷さん:交換時期というよりも、S2000に適したオイルを使用していなかったことでエンジンに負担がかかっていた可能性があります。 エンジンオイルにはポリマー(添加剤)が入っていますが、オイルが熱して冷えたり水分を含んだりを繰り返すうちに、ポリマーが分解されて泥状の沈殿物、いわゆるスラッジになります。 質の良くないエンジンオイルだと、スラッジが出やすくなります。さらにスラッジがオイルと一緒に回ってしまうと、仮にその後良いオイルを使ったとしても性能は落ちます。ピストンリングに堆積すると燃焼室にも入り込み、オイル上がりを起こします。 筆者の1基目のエンジンが17万キロを迎えた頃、当時お世話になっていた主治医からオーバーホールの提案があった。が、当時の筆者は予算の事情もあり、結局中古エンジンへの交換を選ぶ。そして主治医に無理を言って探していただいたのが、現在のエンジンだ。 ▲筆者のエンジンはオイル上がりを起こし、ブローバイガスが増えていたはずだ[写真提供/ComeTec] ーー最初に「いくつかの要因」とおっしゃっていましたが、他にはどんなダメージが考えられますか? ◆熊谷さん:S2000が高回転型エンジンであるがゆえのダメージですね。一般的な自動車よりも1000回転以上多いS2000の圧縮比は11.7対1と高いため、シリンダーやピストンに負担が掛かります。元々強くつくられているものの、通常より消耗は早く、劣化にともなって出力も低下していきます。 ▲摩耗したピストン[写真提供/ComeTec] ▲シリンダーも摩耗していた[写真提供/ComeTec] ●あらゆる部品を交換 さらにエンジン周りのあらゆるパーツが、経年劣化によって交換レベルに達していた。 乗り始めてまもなく交換したラジエーターも樹脂部分がボロボロに。 エンジンマウント、ミッションマウント、ノックセンサー、オルタネーター、O2センサー、サーモスタット、オイルポンプ、ウォーターポンプなどが交換となった。 エンジンハーネスは熱で損傷。 始動不良の原因にもなっている可能性があるという。 ありがたいことに、ストック部品を使って新調することになった。 エンジンハーネスは今後、供給が危ういとされる部品のひとつでもある。 「ストックしておくのがおすすめです」と熊谷さん。 ●ヒーターバルブの破損 ▲ヒーターバルブが割れている。いつ水漏れしてオーバーヒートしてもおかしくない状態だった[写真提供/ComeTec] ●アクセルワイヤーの劣化 ▲ケーブルの表面被覆材が剥がれ、要交換レベル。そしてアクセルワイヤーはすでに廃盤。生産はもちろんメーカーも在庫はないため中古品で対応[写真提供/ComeTec] ●エンジンマウントの破損 ▲ちぎれたエンジンマウント。かなりの振動があったはずだが、毎日乗っていると劣化のサインにも気づきにくくなってしまうそう。今後は定期的なメンテナンスを心がけたい[写真提供/ComeTec] ■油膜の厚い高性能なオイルと「適度なドライブ」でエンジンを保護 S2000といえば、エンジンオイルはどんなものを使うかがよく話題になる。熊谷さんに「良いエンジンオイル」について尋ねてみた。 ◆熊谷さん:S2000にとっての良いエンジンオイルとは「エンジンを保護するオイル」です。油膜の厚い高性能なオイルがおすすめです。 エンジンオイルは冷却、潤滑、汚れを取るなど、いくつもの役割をもちます。それがひとつでも欠けると、エンジンにダメージを負わせてしまいます。S2000のエンジンは高回転型で慴動部が多く、オイルに要求するレベルも高いだけに、役割がひとつ欠けたときのダメージも大きくなります。 当社では、24時間耐久レースで使われているものと同じエンジンオイルをおすすめしています。Moty'sのM111(5W-40)は、強力な油膜でピストンの摩耗を防ぎ、気密性も向上するのでブローバイガスの排出量を減少させてくれます。さらに洗浄性能の高さも大きな特徴です。このオイルを使ってレースでトラブルなく完走できているので、安心して使えますよ。 ーーオイル管理とともに心がけるべきことがありますか? ◆熊谷さん:1度のドライブはできるだけ長距離を走り、ときどきエンジンを回してあげてください。また、カーボンを分解してくれるガソリン添加剤での定期的なクリーニングがおすすめです。そして何よりも愛情をもってS2000に接してあげてください。 ●よみがえるF20C 筆者のくたびれたエンジンは新品に近づいた。 バルブシートカットを行い、バルブの気密性を改善。摩耗したピストンは新品に交換。シリンダーヘッドとブロックは面研して修正された。 ▲シリンダーヘッドはダミーヘッドボーリング、ホーニングされている[写真提供/ComeTec] ■この先、S2000を手に入れたい人へ 最後に、この先S2000を購入する際の注意点を熊谷さんに伺った。 ーーS2000の中古車を購入する前にまず、決めておいたほうが良いことはありますか? ◆熊谷さん:AP1とAP2、どちらの型に乗るかを決めておいたほうがいいでしょう。型式にこだわらずS2000というクルマが欲しいなら、AP2をおすすめします。年式が新しいぶん故障が少ないことと、今後最後まで生産され続ける部品は、AP2の最終モデルが中心になると思われるからです。 ーー程度の良い個体の競争率は高く、一刻も早くキープしたいと思われている方がほとんどだと思います。実際に店へ足を運んでの現車確認は大切ですか? ◆熊谷さん:大切だと思います。試乗が可能であれば必ず乗って、変な振動や異音がしないか確認しましょう。 例えば、S2000はもともとリヤのハブベアリングが強くありません。そこが傷んでいる個体は、乗ってみると高音で引きずるような、あるいは唸るような異音がするはずです。しかも一定の速度域でしか症状が出ないこともあるので、できれば速度域ごとの確認もしたほうがいいかもしれません。 ーーもし試乗が難しい場合は、どんなポイントを重点的にチェックしておくと良いのでしょうか? ◆熊谷さん:S2000はサーキットで酷使され、エンジンを消耗している個体が多いです。できるだけ状態の良いエンジンを選びたいですね。最も素早く見分ける方法は、煤の付き方でしょうか。マフラーのテールとバンパーが煤けている個体は避けたほうが良いでしょう。 外観では、色褪せと幌の状態をチェックしてください。レッドやイエローのボディカラーを選ぶ際は色褪せしやすいです。 ちなみに、特に色褪せしやすいレッドやイエローなどは屋内保管推奨ですが、露天駐車がやむを得ない場合は、2〜3年おきにコーティングして、できるだけ塗装を長持ちさせるようにすると良いでしょう。全塗装するのも手ですね。色にこだわりがなければ、色褪せが目立ちにくいシルバーやホワイトを選ぶのもありです。 幌は、10年を越えていれば張り替えがおすすめです。穴やヒビが入っていないかをチェックしましょう。今は社外品でも質の良い幌があります。カラーも豊富なので好みの幌を選んでみるのも楽しいですね。 ▲レッドやイエローは色褪せしやすい。部分的に塗装していると、経年劣化によって色のばらつきが出ることも ーー極端に低走行な個体も見かけますが、そのような個体はどこに注意すれば良いでしょうか? ◆熊谷さん:例えばAP1(初期型)で約8万キロ走行の個体があったとします。年式にしては低走行だからといって、状態が良いとは限りません。サーキットで消耗しているかもしれないですし、「ちょい乗り」によってカーボンの堆積があるかもしれません。 S2000は高回転型エンジンで消耗が早いぶん、8万キロだとコンディションが落ちている個体が多いはずです。走行距離よりも「どんな乗られ方をしてきたか」に注意したほうが良さそうです。 ●「リフレッシュ費用」込みで購入計画を ーーお話を伺っていると、購入してから何らかのトラブルに見舞われる可能性が高い気がしますね。 ◆熊谷さん:そうですね。現在流通している個体は、10万キロ以上のものがほとんどだと思われます。車齢20年以上といえば、通常なら寿命を迎えているはずです。 購入の際はぜひ、リフレッシュ費用込みで予算を組んでいただきたいです。ゴム類、マウント、パッキン、などの消耗品交換からオイル漏れ対策なども必要になります。しかし骨格がしっかりしているなら、新車に近いレストアもできます。メンテナンス次第で良い状態のS2000と長く付き合えると思います。 ーー今回の修理でリフレッシュがどんなに大事かをあらためて実感しました。納車当時の16年前の気持ちを思い出し、愛情をもって乗っていきたいと思います。ありがとうございました! ■取材後記 プロの手に委ねてみて、気づきはもちろん反省点が多すぎた。16年間どれだけボーッと乗ってきたかを痛感した…。 この先はエンジンだけでなく、コンピュータや足回りなど、他の部分の問題も抱えるかもしれない。 できるだけ対応しつつS2000と長く暮らしたい。「人生の相棒」となるように…。 最後に、丁寧な作業とアドバイスをくださった「ComeTec」さんに感謝申し上げます。 [取材協力]ComeTec 広島県福山市神村町2107-2公式HP:https://www.cometecracing.com/Facebook:https://www.facebook.com/profile.php?id=100032848646363 [ライター・撮影/野鶴美和]
2023年現在、100年に一度の転換期といわれている。 自動運転に関する技術革新が日々行われ、新型車には電気自動車も多くなってきた。 そんな環境のなか、旧車と呼ばれる年代のクルマを、新たな愛車として選ぶ方も多くいる。 今回は“ちょっとした”一言がきっかけで「R32 スカイライン GT-R」が初の愛車となったオーナーにお話をうかがった。 1.出会いは突然 最初の愛車がGT-Rに!?しかし本音は・・・ 前回、新たに日産N15パルサー VZ-Rを愛車にした、お父様の話を紹介した。 ●教えて旧車オーナーさん!今"N15 パルサー VZ-R"を買ったワケhttps://www.qsha-oh.com/historia/article/nissan-family-pulsar-vzr-n15/ 今回の主役は、R32 スカイラインGT-Rにお乗りになられている息子さんだ。 手に入れた経緯は、なかなかに興味深いものだった。 「このGT-Rは元々、父の知人が所有していたクルマだったんです。3年半程、寝かせていたクルマを手放すということで、紹介されました」 最初の愛車がGT-Rとは、とても羨ましい話ではあるが、実は本音は違ったようで・・・ 「実は、当初欲しかったクルマはS15シルビア オーテックバージョンでした。中学生の頃、近所の中古車屋さんに置いてあった売り物を見に行ったりしていました(笑)」 「当時ガラケーに、シルビア オーテックバージョンの中古車情報の程度や金額をメモするほど憧れて、恋枯れていました」 S15シルビア、そのなかでもメーカーがチューニングを施した、NAエンジン(SR20DE)を搭載するオーテックバージョン。 中学生のころに、S15シルビア オーテックバージョンへ憧れを抱くとは、なかなかに通な選択だ。 これも、日産フリークなお父様の影響を受けた結果なのかもしれない(笑)。 2.GT-Rの縁談に乗り気になれない、クルマ好きならではの“理由” その当時を振り返り、お父様から意外な言葉が出てきた。 「息子に最初この話をしたとき、そんなに乗り気ではなかったのは、すぐにわかりました」 「私がすでに同型のGT-Rに乗っているので、同じクルマに乗るのが嫌なのかな?と思っていました」 予想外の反応をされた息子さん。 ではその当時、実際にはどう思っていたのだろうか? 「たしかに、父親がすでに同じGT-Rに乗っていることも意識としてはありました。ただそれよりも、当時はGT-Rって『最終地点』なイメージを持っていたんです」 この『最終地点』が意味することは、クルマ好きならすぐに理解できることだろう。 世界に目をやれば、超ド級なスーパーカーは多くある。 ただ、日産フリークな家庭で育ったオーナーにとって『GT-R』は、日産のスポーツカーのなかでも特別な存在であることはよく分かる。 「GT-Rに乗っている人は、段階を経て到達するイメージがありました。それこそ、シルビアなどに乗って練習して、父親のようにステップアップしていってGT-Rと考えていました」 お父様がDR30スカイラインで腕を磨き、R32スカイラインGT-Rにステップアップされたのを間近で見て育っただけに、その思いが強くなったのだと想像に容易い。 「いきなりGT-Rに乗っていいのか?という思いがあるのと、“シルビアが好きだから”という理由で断りました」 ずっとモータースポーツを観戦していただけに、GT-Rの凄さを理解していたことと、シルビアへの思いからの考えだったようだ。 3.父親からの思いがけないアドバイスがきっかけに 息子さんの思いを聞いたうえで、お父様から現実的なアドバイスがあったそうだ。 「シルビアからステップアップしてGT-Rにいきたくても、いざGT-Rに乗りたくなったときに買える保証はないんだぞ」 それは、なかなかにストレートなアドバイスだった。 お話をうかがっているとき、筆者は思わず笑ってしまった。 ただ、この言葉がきっかけとなり、現実的に自分の状況を踏まえ、改めて考えたそうだ。 当時でもS15シルビアは人気車であり、生産終了から日が浅く、程度の良いものは新車同等、もしくはそれ以上の価格だった。 対するR32スカイラインは、すでに生産終了から年数が経過した“旧車”となっていた。 年式を考えると流通量の減少、流通しているなかから良い程度を求めた場合、状況は厳しくなる一方と考えたそうだ。 そこからGT-Rを初の愛車として迎え入れることを決意したのをきっかけに、一気にモチベーションが上がることとなった。 教習所に通いながらアルバイトに励み、修理代を捻出していったとのこと。 このお話を聞いて、どこかの誰かと同じような境遇だと、思ってしまった。 「以前、初の愛車を手に入れた経緯をお聞きして、うちの息子と境遇が似ていると思いました(笑)」 と、筆者を見るお父様の表情は、満面の笑みであった(笑)。 4.初の愛車は課題が豊富 実際に手に入れたGT-Rはどうだったのだろうか? 「やはり3年半寝かしていたクルマということもあり、最初、エンジンをかける前に燃料系統を確認しました。案の定、ガソリンが腐っていました。さらにその腐り方が想像以上だったため、燃料ポンプを新品に、燃料タンクを中古の物に交換したんです」 ガソリンも食品と同じく、古くなると腐ってしまうのだ。 長期間動かしていない場合、注意が必要な点でもある。 「エンジンをかけられる段階まできて、いざエンジンをかけたものの、アイドリング不調で、まだまともに走れる状態ではありませんでした。そこで、点火系など順を追ってチェックしました。幸いなことに父親のGT-Rと同じ年式だったので、部品を入れ替えてチェックすることで、ダメな部品のトラブルシューティングができました」 修理と併せ、予防整備もおこなったとのこと。 交換した際、元々の部品は、お互いのクルマに使えるストックとなっているそうだ。 外観からも、チューニングを施しているのが見て分かった。 修理をする際に、併せておこなったのだろうか? 「今ついている社外のチューニングパーツは、前オーナー時代に交換されたものがほとんどです。ワンオーナーだったため、弄っている個所も分かっていました。あとからカスタムする必要が無い状態だったのは、結果的に良かった点ですね」 今回購入されたのは、ワンオーナーかつ、ご本人から直接譲り受けたので、詳細が分かっていたのは大きなアドバンテージだ。 5.素性を見極めて選んでもらいたい! これから旧車を手に入れようと思っている方へのアドバイスをうかがった。 「この年代のクルマを手にするなら、可能な限り素性の分かる車輌を選ぶことをお勧めしますね」 それは、お乗りのGT-Rで得た経験も背景にあるのかもしれない。 「私自身もそうだったのですが、やはり若い時って『エアロが付いていてカッコイイな!』『エンジン周りも弄ってあって良いな!!』と思ってしまうんですよね(笑)」 その気持ちは非常によく分かる。 どうしても“ノーマルとは違う”ことに憧れを抱いてしまうものだ。 「わからない弄り方をされていると、何か不具合が起きた時に原因が掴みづらくなってしまうんですよね」 実は筆者にも経験がある。 自身の愛車を手にしたときも、アイドリング不調が出ていた。 原因は、過去のオーナーが取り付けた社外部品の不調であった。 すでにカスタムされていることは魅力的に映るだろう。 しかし、長い目で見た際には、ノーマルの方が心配は減るものだ。 「特にスポーツカーは、ノーマルを探すのが難しいと思います。なので、ある程度詳しい人と一緒に現車を見に行くのが一番かと思いますね」 欲しいクルマを目の前にすると、誰もが正常な判断はできなくなる。 中立な、落ち着いた判断と目利きができる人に同行してもらうのは、大事なことだろう。 6.総括 いつかより今!時には踏み出す勢いが必要! 今回、お話をうかがい感じたことは、踏み出す勢いが大切だということ。 “いつか、あのクルマに乗りたい” そう思うことは、クルマ好きにとっては、日常的なことと思う。 今回お話をうかがっオーナーのように、キャリアアップして乗ることを目標にするクルマもあると思う。 ただ、タイミングが許すならば、一気に目標へ到達してしまうのも、旧車に乗るには必要な判断要素かもしれない。 今しか乗れない、今だから乗れる。 このことを考えて、旧車に乗るのもアリと感じた。 [ライター・画像 / お杉]
運転免許を取得するまで、クルマにまったく興味がなかった筆者。 運転はむしろ苦手で当初はAT限定免許を取得。 そんな自分がS2000を愛車とし、20年近く所有している。 「嫌い」が「好き」に変わった。 これは人生でもベスト3に入るほどの謎だ。 S2000はクルマの愉しさを教えてくれ、今も充実したカーライフを与えてくれている。 ■発売から25年が経過したホンダ S2000 S2000はホンダ創立50周年記念車として1999年4月に発売、2009年まで生産された。 ホンダ伝統のオープンスポーツモデル「Sシリーズ」の系譜を受け継いでいる。 キャッチコピーは「リアルオープンスポーツ」。 オープンカーでありながら「サーキットが本籍」というほどの、高い走行性能を備えている。 ▲駆動方式はFR。50:50の理想的な車体重量配分を実現した 生産終了から15年が経とうとしている今でも多くのファンに愛されているのは、量産車でありながら量産車にはない「車格を超えた存在感」があるからではないだろうか。 日常生活でもサーキットでも、乗る人の心を解き放ってくれるS2000。 これまで過ごしてきた日々とともに、筆者なりに感じた魅力を振り返ってみたい。 ■S2000との出会い 筆者が1999年式の初期型(前期型/AP1)を所有し始めて、18年を迎えた。 ボディカラーはグランプリホワイト。 手に入れた当時4万5000キロだったオドメーターは、33万キロに迫っている。 S2000が発売となった1999年当時、筆者はシビック・クーペに乗っており、クルマに興味を抱き始めたばかり。 同じホンダの最新スポーツカーだったS2000も自然とチェックした。 ホンダの公式サイトにはS2000専用コンテンツが開設され、ドアの開閉音やエンジンサウンドなどの音声サンプルも聴くことができた。 また、オーナーがカーライフを投稿するコンテンツ「愛車自慢」にもS2000の投稿が増えていた。 あるオーナーの投稿の「山頂まで走り、S2000で車中泊をしてご来光を拝んだ」という内容がきっかけで、S2000との暮らしを妄想するようになった。 「いつか手に入れたい」という気持ちが生まれ、S2000に傾いていく。 ■所有して感じたS2000の魅力 【魅力1】官能的なF20C型エンジン 昨年、大規模なリフレッシュを決行した。 経験豊かなショップ「ComeTec」とご縁があり、エンジンを修理していただいた。 心から感謝を伝えたい。 慣らし運転を終え、何の不安もなく高回転まで回せるようになった。 S2000に乗る喜びを噛みしめている。 オーバーホールでは、劣化したエンジンまわりの部品がほぼすべて交換となった。 使われた部品は貴重なストック部品だった。 なかでもエンジンハーネスは、今後供給が危ういとされる部品のひとつと考えられる。 ストックしておくのがおすすめだ。 ●16年目・25万キロ超え。愛車ホンダ S2000のエンジンをリフレッシュhttps://www.qsha-oh.com/historia/article/nozuru-s2000/ ▲2LのNAエンジンながら最高出力250馬力を誇るF20C。高回転エンジンのため慴動部が多く複雑な構造をしている[写真提供 / ComeTec] S2000の大きな魅力はエンジン。 AP1に搭載される直列4気筒DOHC VTECエンジン「F20C」は、S2000のために専用開発された、9000回転を許容する超高回転型だ。 VTECが作動し、レッドゾーンに向けてドラマティックに盛り上がる様子は音楽を奏でているようで「心に語りかけてくる感覚」を覚える。 全開にした際の加速感も痺れるが、巡航状態からアクセルを踏み込んだときの機敏な反応も「エスとひとつになっている」というしみじみとした感動を与えてくれる。 【魅力2】オープンカーで良かった S2000に乗って魅力を感じた点のひとつがオープンカーであること。 最初はオープンカーに憧れていたわけではなかったが、当時装着していたハードトップを外し、オープンエアを感じた瞬間に世界が変わった。 風に包まれる感覚、ダイレクトに聞こえるエンジンサウンド。 海沿いや林道を走るときはオープンに限る。 景色、匂い、温度、音の変化を感じながら走るのが心地いい。 オープンカーがこんなにも五感を刺激するクルマだったとは。 オープンドライブ後に飲むビールも心満意足なのだ。 ▲ハイXボーンフレーム構造によって、クローズドボディと同等の剛性を実現。電動ソフトトップは6、7秒で開閉する 【魅力3】操る愉しさと難しさが同居する S2000は、誰でもある程度楽しく走らせることができる。 道をトレースするように、イメージ通りに曲がっていく。 ただ、調子に乗っていると途端に牙を剥く。 10年ほど前、ワインディングで事故を起こしたS2000(初期型)の救出に仲間と駆けつけたことがある。 オープンの状態で横転しており、ドライバー本人は道路と座席の隙間にうまく入り込んで無事だった。 運良く小柄な体型だったことと、ハイXボーンフレームが命を救った。 事故を起こしたのは、運転歴が浅く、若いオーナーだった。 彼の仲間がいうには「運転がうまくなったと褒められて有頂天になり、勢いよく走り出してまもなくクラッシュした」とのことだった。 そもそも公道でするべきではないのはもちろんだが、S2000の性能を運転がうまくなったと錯覚していたのだろう。 S2000、とくに初期型といえば「ピーキー」、「乗り手を選ぶ」などの言葉が発売当初からついてまわっているが、実際に乗ってみると普段使いでそれらを感じることはない。 高い速度域での旋回時にコントロールすることが難しいという意味だ。 振り返ってみると、乗り手の自制心やクルマへの向き合い方もS2000に試されているのではないだろうかと感じる。 そういう意味でも「乗り手を選ぶ」はあると思っている。 ■背中を押した2つのこと S2000を購入する前、とても迷った。 スポーツドライビング未経験の筆者が、このクルマを購入してオーナーとしてやっていけるのか。 そんなとき、背中を押してくれた2つの言葉があった。 1.自動車誌の記事 S2000が現行車だったころの自動車誌では、特集が頻繁に組まれていた。 記事の中にこんな一文があった。 「乗りこなすことがすべてではない。S2000に取り組んだ時間そのものに価値がある」 都合の良い解釈かもしれないが、この一文を読んで心が軽くなり、前向きになれたことを覚えている。 2.職場仲間の言葉 当時の職場仲間が、念願だったニュービートルを購入するとうれしそうだった。 そんな彼女の言葉が背中を押してくれた。 「本当に欲しかったクルマとすれ違うたびに、あのクルマに乗りたかったと思うのが耐えられない」 この言葉を聞いてからまもなく、中古車店へ足を運んだ。 ■購入するなら今…かもしれないが、しかし 一時は高騰していた中古車市場も、少し落ち着きを見せているようだ。 乗りたいと思っているなら今がチャンスかもしれない。 ただ、発売から10年、20年が経過している古いクルマでもあるので、購入時はリフレッシュ込みの予算が望ましいだろう。 せっかく手に入れても、次々に故障して入院を繰り返すようではモチベーションも下がってしまう。 そして修理のときにも感じたことだが、S2000の部品供給状態は厳しい。 メーカーにも事情があるにしろ、S2000という車種をもっと大切してはもらえないだろうか。 これは、同メーカーの他車種のオーナーも同じ気持ちだと思う。 S2000よりも高性能なクルマは、あれから数多く登場している。 それでも今なお多くのクルマファンの心を掴むのは、現代のクルマにはない魅力が詰まっているからなのだろう。 1台でも多く元気で走っていてほしいと、いちファンとして願うばかりだ。 ■あのレジェンドコミックの外伝作品に! 最後に、筆者はあのレジェンドコミック「オーバーレブ!」の外伝、「オーバーレブ! 90's -音速の美少女たち-」に出演した。 作者の山口かつみ先生とご縁があり、実現したものだ。 筆者がS2000を購入するまでのエピソードをストーリーにアレンジしていただき、憧れのキャラクターと同じ世界に存在することができた。 山口先生に心から感謝を伝えたい。 ▲©️山口かつみ(秋田書店)2021 「オーバーレブ!」は、続編の本編「クロスオーバーレブ!」が進行中。 最新話は「マンガクロス」にて楽しめる。 ●クロスオーバーレブ!https://mangacross.jp/comics/crossoverrev/1 ▲©️山口かつみ(秋田書店)2019 秋田書店公式HPの「ヤングチャンピオン烈」のページにて、「クロスオーバーレブ!」「音速の美少女たち」を試し読みできる。 ぜひ! ●秋田書店https://www.akitashoten.co.jp/ [取材協力] ・秋田書店 ・ComeTec 広島県福山市神村町2107-2公式HP:https://www.cometecracing.com/Facebook:https://www.facebook.com/profile.php?id=100032848646363 ・山口かつみ [ライター・撮影 / 野鶴 美和]
私が所有するアウディ・初代TTは、2002(平成14)年製。オーナーであるライター・林も2002年生まれ。 すなわち、私と初代TTの関係性は“同い年”であるといえます。 今回のテーマは、「同い年の愛車のすゝめ」。ちょっとだけ愛車語りをしながら、私と初代TTの関係性についてご紹介したいと思います。 セルフ・オーナーインタビューみたいな感じで少し照れ臭さもありますが、お付き合いのほど、よろしくお願いいたします。 ■私と初代TTの年式的な結びつき 私が所有する初代TTは、FF(前輪駆動方式)に5MTを組み合わせた「1.8T」というグレードです。 発売当初の初代TTは、四輪駆動の「1.8Tクワトロ(6MT・225馬力)」のみのグレード展開。 「1.8T(5MT・180馬力)」は2001年1月に追加された、所謂廉価版のモデルでした。 MTを組み合わせた「1.8T」の日本における発売期間は比較的短く、2002年11月には、6速トルコンATモデルの登場に伴いカタログから姿を消しました。 私の初代TT 1.8Tも、先述の2年弱の発売期間の間に生産されました。 記録によれば、初年度登録は2002年7月。シートベルトの生産は2002年4月だったので、4月か5月あたりに生産されたと推測されます。 初夏にかけて、日本に上陸したのでしょう。 シートベルトの付け根にはベルトの生産年月が書いてあります。 クルマが生産された年月を簡単に推測できる手段のひとつです。 初代TTのシートベルトには「MADE IN HUNGARY」との記載も。 そうそう、アウディTTってドイツではなくハンガリーで作られているんですよね。 ハンガリー北西部にあるジュール(Győr)という工場で生産されています。 初代TTを手に入れてからしばらくは、てっきりドイツのインゴルシュタットで生産されたと思い込んでいました。 ハンガリー製と知って衝撃を受けた記憶があります。 …話を戻しましょう。 私の初代TTは2002年の春に生産されたわけですが、オーナーである私は2002年3月に生まれました。 所謂「2001年生まれの代の早生まれ」なので、初代TTとの関係性は、正確には「学年違いの同い年」ということになるでしょう。 私が愛車を手に入れた際の決め手は、年式とボディカラー(ステッペングラス・パールエフェクトというきれいな緑色)の2点でした。 私にとって「愛車が同い年であること」は、愛車との関係性を築くうえで最も大切な要素のひとつであるといっても過言ではありません。 ■ネオ・ネオクラシックとの豊かな暮らし 私の愛車、2002年式初代TTは、昨年度に晴れて(?)20年落ちになりました。 現在は「旧車」のオーナーとして旧車王ヒストリアの記事を執筆しているわけですが、当のオーナーはあまり初代TTのことを「古いクルマ」と認識していない気がします。 旧車王では「新車から10年以上経過したクルマ」を旧車と定義しているようなので、私(と私の周囲の友人たち)の感覚が異常なだけなのかもしれませんが…。 傍から見たら十分古いのでしょう。 初代TTは21世紀のクルマ。 まだまだ元気に走るし、消耗品の交換などの事前整備さえ怠らなければ、道端で三角表示板を広げてレッカーを待つ機会はそう多くないはずです。 ちなみに私の場合、自身が金欠大学生であるが故に、冷却系の消耗品が限界を迎えてしまい、ロードサービスのお世話になったことがあります(2年弱の所有期間の中でたった2回です)。 少し話が脱線してしまいました。 私は、初代TTは“ネオ・ネオクラシック”なクルマであると認識しています。 1990年代後半から2000年代前半にかけて、曲線を効果的に用いた、従来とはまったく異なるデザインを纏ったクルマが急増しました。 国産車ではトヨタ・WiLL Viやホンダ・初代インサイト、輸入車では初代TTやルノー・アヴァンタイムなどをはじめとした、エキセントリックなデザインのクルマたち。 大きくラウンドした面構成は、従来の角ばった(所謂“ネオクラシック”なクルマの)自動車デザインとは大きく異なるものだったといえるでしょう。 21世紀の到来を目前にして数多く誕生した未来感に溢れたクルマは、20年余りが経った現在においても、未だにアヴァンギャルドだと感じます。 この1980年代~1990年代のクルマ(現在のネオクラシックカー)の「定石」からの脱出を図った2000年前後のクルマ、これらを“ネオ・ネオクラシックカー”と私は捉えています。 前置きが長くなりましたが、私と“ネオ・ネオクラシック”との暮らしはとても豊かで、刺激に満ちたものです。 私にとって初代TTの“ネオ・ネオクラシック”なデザインやテクノロジーは決して「懐かしい」と感じるようなものではなく、すべてが新しい発見の連続なのです。 それもそのはず、私にとって初代TTとは、まさに産声を上げた瞬間に発売されていたクルマです。 当然、私の幼少期の記憶の中に、当時のアウディ・ディーラーに並ぶ初代TTの姿はありません。 物心がついた幼少期には、今でいう“ネオ・ネオクラシック”なクルマは数年落ちで、新規性に乏しいクルマだと捉えられていたことでしょう。 20歳になって、自身が生まれた時のことをさまざまな資料を通じて辿ってみると、幼少期に当然のように接していた自動車デザイン・自動車テクノロジーが、実は非常に新規性と先進性に富んだ、挑戦的なものであったことに気が付きました。 インターネットで当時のブログ記事を漁ってみたり、古書店で当時のカーグラフィックやTipoを探してしてみたり、オークションアプリで当時の新車カタログを落札して情報収集をしてみたりするうちに、自身の「クルマ好きの原点ともいえる幼少期の記憶」の解像度がどんどん上がってくるのです。 このような知的好奇心が満たされるような「オタ活(=オタク的活動)」に出会ったことは、私の今後のモビリティライフに大きな影響を与えたといえるでしょう。 自身と歳が近いクルマに惹かれ、いざ初代TTを所有してみて2年弱が経過した今でさえも、さまざまな「気付き」の連続です。 1/1のプラモデルを前にして、自身の最古の記憶と、自身が知り得ない古の情報を辿りながら、愛車の隅々に投影された設計思想を紐解くオーナー体験、なんとも贅沢で刺激的なものだなァと思っています。 さまざまな地にドライブに赴き、幾度も洗車を重ね、基礎的な日常整備を繰り返す日々の営みのなかで、愛車のことをより深く知り、愛車と自身が生まれた時代背景をも理解するモビリティライフ。 成人してから再会した幼馴染と接するような、懐かしくてストーリー性のある暮らしは、同い年のクルマと接する醍醐味でしょう。私の“ネオ・ネオクラシック”、最高の相棒です。 ■自身の成長と愛車のエイジングを共に楽しむ生活の在り方 私は21歳の大学生。世間的に見たら(特に自動車メディアの世界においては)、まだまだ「若い」と捉えられて当たり前ともいえる年齢です。 けれども私と同様に、製造されてから21年“しか”経過していない私の初代TTは、すでに「旧車」として扱われ、「古いクルマ乗ってるね!」といわれることも少なくありません。 なんだか不思議ですが、20歳の猫が「長寿」といわれるのと同じような感覚だと思っています。 ちなみに、20歳の猫は人間年齢で96歳らしいです。 クルマが使われる期間の平均年数はたったの13年(!)とのことなので、私の初代TTはご長寿さんということなのでしょう。 いつも酷使してゴメンネ、高齢なのに。 私のはじめての愛車であり、最高の相棒でもある、同い年の初代TT。 これからずっと、私が墓に入るまで所有していたいと願ってやまないのですが、クルマと人間では平均寿命があまりにも違います。 イレギュラーが発生しない限り、私よりも先に初代TTがお釈迦になるということは、誰から見ても明らかでしょう。 けれども、クルマはあくまでも人間が造り出した工業製品です。 すなわち、生殺与奪の権は人間にあるのです。 クルマの寿命は人間がコントロールすることができる、ということですね。 現に、幾度にも及ぶ移植手術を受け、今もなお公道を走り続けるヒストリックカーはこの世に何台も存在しています。 しかしながら、オーナーの財布の中身が尽きた場合や、移植するドナーが見つからない場合、愛車を健康な状態で保つのは非常に困難になるでしょう。 放置車両となって「寝たきり」になってしまうことは、私としては何としても避けたい。 そのためには、現在付いている部品を温存するのが最大の近道だと考えています。 オイル管理をしっかりとして、早め早めに整備工場に足を運び、愛車の弱点を知り、今後の治療(整備)計画をしっかりと立てることが、今の私にできる最大の延命術だと考えています。 そして、財布の中身を温存しておくこともとっても大事。 些細なリフレッシュに気を取られて、突然の大規模故障に対応できなくなってしまったら元も子もありません。 そのためには、意外にも「細かいことは気にしないスキル」が重要だと私は信じています。 私の初代TTも、細かいところを見たら随所に“オンボロ”が垣間見えます。 ドット欠けが著しいデンターディスプレイに、動きが怪しい燃料メーター。 外気温計もおかしな温度を指しています。もちろん、これらはすべて正常に作動するに越したことはありません。 けれども、今の私にとっては、初代TTに末永く乗るために、程々に貯蓄をしながら必要な箇所をリフレッシュしていくことが求められているのです。 私も、20歳を超えてから脂っこい食べ物が苦手になってきました。 今までよりも肺活量も落ちていて、息を切らして電車に駆け込むことが増えました。 人間もクルマも、歳をとったら少しずつ劣化していくものなのですね。 愛車にも完璧を求めることなく、程々に適当に、都合の悪いところは見て見ぬふりをしながら、一緒に老いていきたいなァなんて思っています。 同い年の愛車とともに過ごす毎日、なかなか良いモノですよ。オススメです。 [画像/Adobe Stock、TOYOTA、HONDA、RENAULT・撮影/ライター 林 哲也]
昨今の旧車ブームによって、旧いクルマに対してにわかに興味を持たれた方は多いことだろう。 これまでもお伝えしてきた通り、旧車には現代のクルマにはない魅力があるのは紛れもない事実である。 しかし、相手は最低でも20~30年落ちのクルマだ。 快適装備をこれでもか!と装備した現代のクルマと同じように扱えるとは到底思えない。 同じように感じる方は少なくないだろう。 旧車に憧れはあっても、実際に手に入れようとすると、どうしても購入をためらってしまうことは決して不思議なことではない。 クルマは自身の生活の一部分になるものだ。 初めて旧車を購入しようとする方にとって、旧いクルマを一筋縄に扱えるか、不安なことこの上ないものだろう。 筆者自身、プロ・アマチュアにかかわらず、数多くの旧車愛好家とお付き合いをさせていただいている。 これらの観点および自身の経験も含め、これから旧車を購入予定の方に少しでも参考になるように、愛車を末永く維持して旧車ライフを満喫できるヒケツを紹介したい。 ■旧車の不便な部分とは? ▲エアコンが備わる前の旧いクルマ独特の装備、三角窓 この記事をご覧のあなたは旧車、すなわち旧いクルマは現代のクルマに比べて、何かと不便な部分が多いイメージをお持ちではないだろうか? 当時を知る由もない、とくに20代の若いオーナーにとっては、憧れの旧車とはいえ、自身が生まれる前のクルマの購入を考えたときに悩みがちな部分であろう。 ある程度、歳を重ねたベテランオーナーには当たり前のことかもしれないが、ここで具体的にどのような部分が不便なのか、ここで一例を挙げてみよう。 ●「エアコン・パワステ・パワーウィンドウ」が装備されていない 昭和や平成初期の中古車には、「フル装備」と表示がされていたが、これは「エアコン・パワステ・パワーウィンドウ」の3点を指す。 ある一定の年代より旧いクルマは、これらが備わらない車種が多いため、快適性能からして劣るイメージを持たれる方が多いよう感じるが、まずこの部分から考えてみよう。 なお、エアコンについては後述する。 パワステ(パワーステアリング)については備わらなくとも、カスタムなどで極端に太いタイヤを履かせていたり、小径ステアリングを装着していない限りは、それほど困ることはないだろう。 ステアリング操作の軽い現代車に慣れてしまっていると、やや旧車への抵抗感を感じるかもしれない。 しかし、クルマが停車した状態で無理に据え切りをせずに、少しでもクルマが動いている状態でステアリングを切るなど、当時、誰もが行っていた運転方法に慣れれば、それほど苦にならないはずだ。 思えば、筆者の母も当時細い腕で、ノンパワステのVWゴルフを転がしていたものだ。 次に、パワーウィンドウが備わらないクルマについて述べよう。 よく、パワー(いるんです)ウィンドウなどと揶揄されるが、そんなことはない。 レギュレーター周りのメンテナンスがしっかり行き届いていれば、窓の開閉が重いということはまずないはずだ。 むしろ筆者はクルマを修理する観点から、旧車にパワーウィンドウが装備されていると、逆に身構えてしまう。 まずパワーウィンドウの開閉スイッチは、そもそも旧車でなくとも壊れる可能性が高い部品であるし、経年劣化によりモーターやレギュレーターが傷んでいるクルマが多い割には、部品の供給を心配しないといけない部分でもある。 偏った考えではあるが、パワーウィンドウが備わらないことで、イグニッションスイッチがオフの状態、さらにバッテリーが上がっている状態でも窓の開閉ができるといえば、これは意味メリットではなかろうか? パワステにしても、パワーウィンドウにしても、無くてもなんとかなるものではないだろうか? 最後にエアコンについて述べる。 エアコン(エアーコンディショナー)とは、その名の通り、空気を調整する機能だ。 クーラーとヒーター両方の風を混合(ミックス)し、室内空間をドライバーにとって快適な温度と湿度に調整する機能がエアコンである。 少なくとも70年代前半までのクルマには、エアコンという概念がないクルマが数多く存在する。 ヒーターと三角窓(画像参照)のみ備わるのだ。 旧車であれば、現代のクルマには絶対にない三角窓やクロッチクーラー(外気取り入れ口)といった装備がある。 これらはドライバーの体感温度をそれなりに下げてくれるが、気温40℃を超えることもある昨今の猛暑では完全に役不足だ。 旧車にはクーラーのみ後付けできることが多い。 これは当時からの贅沢な手段ともいえる。 旧車にクーラー装着はエンジンに悪影響があり、NGという意見もあることは確かだ。 しかし、昨今のクーラーキットは旧来のものに比べ、コンパクトかつ性能が良く、とても冷えるものが多い。 高額な装備ではあるが、検討してみても良いと思う。 ●現代のクルマでは当たり前のものが装備されていない その他、旧車にはナビやドライブレコーダーはおろか、ETCも後付けが当たり前、ドリンクホルダーなども当然のごとく備わらない。 リモコンドアロックなど、もっての外だ。 シートについてもフルフラットはおろか、ある年代より旧くなるとリクライニングすらできない車種もある。 ビジュアル面からのイメージが先行して、こういった部分を知らずに旧車を購入してしまい後悔したという話もないわけではない。 ■多少不便な部分があっても、まずは自分をクルマに合わせる ▲エアコンが備わらないクルマの、後付けクーラーの一例 ここまで、ほんの一部分ではあるが、旧車の不便な点を解説した。 今日は空前の旧車ブーム真っただなかであり、業界はとても賑やかだ。 旧車であっても、自分好みのカスタムを楽しんでいるオーナーは多く存在する。 なかには旧車カスタムの域を超え、旧車の不便な部分をフォローすべく、現代の最新デバイスを装着する例も決して珍しくはない。 極めればそれをレストカスタムとも、魔改造とも呼ぶ。 いかんせん旧車の構造は現代車に比べれば、とてもシンプルである。 例えば、クラシックな鉄板製のダッシュボードを切削加工して、最新の2DINナビを装着することも可能であろう。 リクライニングができないシートの代わりに、現代車のパワーシートをシートレールごと溶接して装着する方法だってある。 筆者も20代の頃は個人的に、このようなカスタムが好みであったが、皆さまはいかがお考えだろうか? 不便だからといってあまり深く考えず、これ見よがしに最新装備を旧車に移植するようでは、何のために旧車に乗っているのか分からない。 一度加工したものを元に戻すことはとても面倒である。 そもそも絶版となった部品はハード・トゥ・ファインドである場合が多く、失ったら最後、2度と手に入らないモノも多い。 決して、現代の装備を旧車に装着することを否定するわけではないが、その最新のデバイスが自身にとって本当に必要なものかを考えることも重要である。 多少不便な部分があっても、その当時の時代背景を考えることも、旧車趣味のひとつではなかろうか? 旧車に乗れば、現代車への進化の過程を身をもって体感できる。 なぜ、現代においてマニアがビートルズを真空管アンプとLPで聴く趣味があるのかを、よく考えてみたい。 旧車趣味も同じベクトルであるのは間違いないのだ。 なお、ベテランかつ通なオーナーは、あたかもそのクルマが新車のころのオプションを装着したかのように巧みにカスタマイズする。 筆者はこういった先輩オーナーの隠れたこだわりをみて、自分もまだまだであると感じるものである。 当時モノのモモやナルディーのステアリング、レカロシートなどが高額で売買される理由はここにある。 旧車と長く付き合いたいのであれば、自身にとって本当に足らないと感じたモノを後付けすれば良いのではなかろうか。 機能がなくなることで、その大切さやありがたみが分かってからでも決して遅くはないはずだ。 クルマを自分に合わせるのではなく、まず自分をクルマに合わせることが、ベテラン旧車オーナーへの道ではなかろうか。 ■洗車をしたら、車庫にしまわずにドライブへ 旧車は磨きがいのあるクルマが多い。 旧いクルマはその佇まいこそが特別なものであり、一切カスタムせずとも存在感のあるクルマが多いものだ。 ボディーにしっかりワックスが乗りかかり、モールに磨きがかかっていれば、多少のキズヘコミがあろうとも、凛として見えるモノだ。 旧車を手に入れれば、クルマを磨くことも趣味の一つになることであろう。 ただ、一つここで注意を促したい。 雨を浴びたり、洗車後のクルマは、ボディ内側の至る部分に水分が溜まっている。 フェンダーやトランクの裏側、足回り、そしてフロアやドアの内側などだ。当然この部分は、手の届かない部分である。 タオルで水分を拭き上げることはまず不可能だ。 では、いったいどうすれば良いのか? それは、クルマが水を浴びたらまずは走行してほしい。 クルマの内部は走行することで、至る部分で負圧が生まれる。 この負圧が、クルマに溜まった水分を吸い上げてくれるのだ。 旧いクルマは錆びるからといって、バケツに水を汲み、軽く絞ったタオルで吹き上げる。 いわゆるバケツ洗車を行うと、塗装に傷が入りやすい。 しっかりと水を使ってホコリを流したうえで、シャンプーで汚れを浮かし、入念に泡を流し、これを吹き上げる。 これこそ洗車の基本だ。 そのうえで、先述の通り、クルマを走らせることでしっかりと水を切りたい。 洗車後のドライブも、洗車の一工程といえるのだ。 ドライブから帰ってきたら、各部をグリスアップすれば完璧だ。 これも旧車維持のための必須事項だ(旧車のグリスアップについては以前の記事をぜひお目通しいただきたい)。 ■目先のカスタムよりも、メカにお金をかける ▲旧車は一筋縄とはいえない。常にメンテナンスは念頭に入れておくべきだ 憧れのクルマを購入した次には、自分好みにカスタムをしたくなったり、アクセサリーを購入したくなる。 これは至極当然のことだ。 ただ少し待ってほしい。 購入したクルマのコンディションはいかがだろうか? 購入したクルマの見た目はキレイであっても、クルマの下回り、すなわちメカの状態が悪かったということは決して珍しい話ではない。 クルマを購入するときに、下回りを見て購入することはほとんどないことであろう。 また旧車の場合、車検切れなどで、試乗をせずに購入することも多いことだろう。 購入元がメンテナンスや修理に力を入れているショップであれば心配はないであろう。 しかし、これが販売専門のショップであったり、個人売買などでクルマを手に入れた場合、まずメンテナンスを引き受けてくれる工場を探すべきである。 購入したばかりの愛車が、次回の車検に問題なく合格できるとは限らない。 大きな費用がかかる場合もあれば、入手困難な部品が必要になる場合もある。 旧車は一筋縄では行かないとよくいわれるが、こういった場合に痛感することが多い。 カスタムは、購入したクルマが本当の意味で絶好調になってからでも遅くはない。 クルマを購入してから、少なくとも最初の車検を通すまでは、しっかりメンテナンスの予算を用意しておくべきだ。 ■とにかくクルマに乗ろう!使用による傷はなんのその ▲さほど使用せずとも、家庭用充電器では完全放電したバッテリーの充電は難しい どうしても愛車を大切にしている気持ちから、なかにはセカンドカーを購入し、クルマをガレージにしまいがちになるオーナーもいることだろう。 そして、それは筆者も同様だ。 色々な要因があると思う。 雨風に愛車をさらしたくないといった、至極単純なことから、燃料の高騰が叫ばれるなか、燃費が悪いため、ガソリン代がかさんだり、絶版部品が多く、できる限り事故に遭いたくなかったり・・・。 しかし、旧車を放置するとロクなことがない。 まず、キャブレター内のガソリンが劣化しエンジンが掛かりづらくなる。 さらに、ガソリンタンク内は結露が発生するため、ガソリンに水分が混じりやすい。 そしてこれがタンク内部の錆の原因となり、これが燃料ポンプの故障の原因ともなる。 タイヤは常に地面に接している部分に力がかかるので、丸いタイヤが四角く潰れる。 これがいわゆるフラットスポットだ。 このまま走ると、バタバタとした振動が不快なこと極まりない。 バッテリーも短命になる。 充電器を繋げれば良いと思われるかもしれないが、一般的な家庭用充電器は劣化して抵抗と化したバッテリーの過充電を避けるため、50%以上容量が消耗したと思われるバッテリーの充電を行わない。 バッテリーを交換するか、ブースターケーブルを繋げない限り、エンジンを始動できなくなってしまうのだ。 とにかく旧車は1週間に一度はエンジンに火を入れて、それなりの距離を走るべきだ。 旧車の日常使いはもったいないという意見を耳にするが、こればかりは肯定も否定もできない。 しかし、愛車のコンディションを隅から隅まで理解しているオーナーは、やはり日常使いをしている方が多い。 筆者もその傾向にあるのだが、どうしてもバッテリーを放電しがちなほどクルマに乗らないと、自身のクルマであっても、完調なのか不調なのか分かりづらくなってくる。 旧いクルマの扱いに長けたベテランの旧車オーナーは「やはりクルマは乗ってなんぼ」であることをよく理解している。 日常的に火が入るエンジンは、隅々までオイルが行き渡り、クランクの回りも軽くとても調子の良いものだ。 とにかく乗ることが、愛車の維持管理の近道であることは間違いない。 多少の傷など、何のその。 とにかくクルマは乗って楽しもうではないか! ※私クマダはYouTubeでポンコツ再生動画を公開しております。ぜひ動画もご覧になってください。チャンネル登録お待ちしております。 ●YouTube:BEARMAN’s チャンネル(ベアマンチャンネル)https://www.youtube.com/channel/UCTSqWZgEnLSfT8Lvl923p1g/ ●Twitter:https://twitter.com/BEARMANs_Ch [ライター・撮影/クマダトシロー]
■S15が恋しくなった原因はGR86? 少し前にGR86をお借りし、丸一日、乗り回してきました。 軽量、高性能、低重心を追求したというGR86。 旧モデルの発展型というより、NDロードスターをクローズドボディ&4座にしたような、カッチリとした乗り心地。 本当によくできていて、高速走行時はもちろん、ゆっくり走っていても楽しい。 久しぶりに「ずっと走っていたいな」と思った一台です。 ■筆者が望むクルマに望む条件 ・MT・後輪駆動・車重が1,3t以下・4座・メーターがアナログ GR86はメーターこそ液晶ですが、それ以外はクリアしています。 今のご時世に、本当にありがたいクルマです。 「これは買い替えの最有力候補か?」 なんて、ひとりごとをつぶやきながら運転していたのですが、帰りの道でどうにも寂しい。 乗り出したときはあんなに気分が高揚していたのに、今はS15が恋しくてしょうがない。 GR86とS15とは設計に20年以上の差があります。 走行性能に快適性能と、すべての要素で一回りも二回りも違い、GR86が劣っているところなんて、ただのひとつもないでしょう。 それなのに、なんでS15が恋しくなるのか? 帰宅してから数日間、ずっとその理由を考え続け、自分なりに納得のできる答えにたどり着きました。 ■寂しさの正体は右足に伝わる情報の違いか? 決してGR86を否定するつもりはないのですが、乗った直後からアクセルの軽さが気になっていました。 踏み込む量ではなく、踏む力に対して加速が鋭すぎる、あるいはレスポンスが良すぎる、といえば伝わるでしょうか。 慣れの問題と思い、実際、すぐに思った通りの加減速ができるようになったのですが、最後までその軽さを気持ちよく感じることはありませんでした。 アクセルに関して、GR86とS15(NA)は機構が別物。 S15(NA)はアクセルペダルからエンジン(スロットルバルブ)まで、物理的に繋がる機械式スロットル。 対してGR86はアクセルを踏んだ量をセンサーで計測し、エンジンで再現される電子制御式スロットル。 思えば電子制御式スロットルのクルマを、(たまに乗ることがあっても)所有したことがありません。 競技車両では機械式スロットルと電子制御式スロットルの優位性が比較されたりしますが、そういった次元の話ではありません。 踏力を押し返すリターンスプリングの感触とかワイヤーの重みとか、右足に伝わるアナログな情報をいつも感じていた。 それがGR86では感じられず、寂しかったんだと思います。 いや、自分でも重箱の隅を突く、難癖のようなことをいってると分かってるんですよ。 でも思いの外、機械式スロットルは私にとって身体に染みこんだ、大切なクルマとの対話装備だったようです。 ■手に入れて23年。改めて愛車の魅力に気づく 購入から23年を経て、あらためてS15(NA)の魅力を見つけることができるなんて、クルマって奥が深ぇなぁ。 電子制御式スロットルを採用することで部品点数を少なくでき、必要なスペースも小さくてすむ。 ATとの相性が良く、踏み間違いの抑制といった安全装備には必須な機能ため、現在の主流になっているそう。 そう遠くない将来、機械式スロットルを採用したクルマは姿を消してしまうのでしょうね。 自分が望むクルマの条件に「機械式スロットル」が入り、ますます選べる幅が狭くなりました。 機会をみて、運転中に機械式スロットルがどう動き、どんな反応が右足に伝わるのかを勉強しておきます。 きっとアクセルを操作するたびに頭の中で作動イメージが再現され、より運転が楽しくなることでしょう! [ライター・撮影/糸井賢一]
一昨年、自宅から「車庫証明が取れなくもない程度」に離れた場所にガレージを借りて、スバル360のDIYレストアを再開したのは、以前、記事に書いた通りです。 そこで、ふとスバル360のレストアっていつから始めたんだっけ?と思い返してみると・・・。 セリカLBがレストアから戻ってくるタイミングと入れかえだったので、2016年末、気が付くと6年も経っていました。 そう考えると、フルレストアをしたばかりだと思っていたセリカLBも、レストアから6年経過していたことになります。 フルレストアしたことで、これまで見落としていた不具合が洗い出されるように発生してはその対処に追われていたので、あっという間でした。 このあたりの話も、いつか触れることができたらと思っています。 ■ボディは想像以上に腐食していた 当初は各部の浮いてきた錆をサンダーで削り落として、錆止め剤を塗布してサフェーサーを吹けばと思っていたのですが・・・。 フロントフェンダーやフロントエプロンを外すと、左のフロントサブフレームがこの有様。 腐食というより、溶けてなくなっているという状態です。 察しの良い方の中にはシャシーブラックがマスキングしたかのように途切れており、違和感を感じる方もいるかもしれません。 実はこのシャシーブラックの途切れている部分には、FRPが貼ってありました。 そのFRPも加水分解をおこし、もはや部材としての用を成してない状態です。 今でも、腐食部分の補修にFRPを紹介する事例も散見します。 FRPは錆びないことをメリットに挙げる例もありますが、10年~20年スパンで見ると加水分解で腐食と同じ結果です。 それどころか、加水分解でボロボロになった箇所や、はみ出たグラスマットが水を含んでしまい、錆を進行させる原因にもなります。 個人的にはFRPでの補修は好ましくないと考えています。 なにより、この状態で何年も走行し、ときには高速道路も走っていたと思うとゾッとする話です。 昔からスバル360はバッテリートレーの部分がバッテリーの液漏れで腐食しやすいことが知られています。 しかし、近年はさらにバッテリートレーだけでなく真下のサブフレームにも腐食が進行する個体も見受けられます。 心当たりのあるスバル360のオーナーは一度確認し、状態によってはレストアを考えた方がいいかもしれません。 ■厚盛りパテの洗礼 あちこちパテが割れていて覚悟はしていたものの、試しに右フロントフェンダーにグラインダーをあててみたところ、ミリ単位どころかセンチメートル単位でパテが盛ってあったのです。 自分のセリカをレストアした整備工場の社長は「鈑金は基本ハンマリングで成形、パテはハンマーの打痕の傷消しに使うだけ」という「パテを使わない鈑金」をする人です。 とはいっても付け焼刃で真似できる物でもなく、せめて数ミリ単位に抑える方向で頑張っています。 しかし、パテを剝がしていくと、過去に事故でひしゃげたフェンダーを鈑金修理したものということが判明します。 事故による全体のゆがみが酷くヘッドライトベゼルとフェンダーの曲面がまったく合いません。 ホイールアーチのアールもくるっていて、このフェンダーの再生は断念。 結局、ひずみのないフェンダーを探すのに1年ほどかかりました。 ■ボディの腐食の進行は思いのほか重症だった 元々、閉まりの悪い右ドアは諦めて(今までと比べれば)状態のいい中古ドアに交換します。 このあたりから、モノコックだけの状態にしてから腐食部分をすべて直さないとだめだと思うようになり、エンジンミッション・サスペンション・ステアリング・電装系ハーネス、すべて取り外すことにしました。 錆びた部品はサンドブラストで処理できれば一番いいのですが、錆取り剤に漬けおきでもかなり効果があります。 そこで、一晩漬けてワイヤブラシでこすれば、おもしろいように錆が取れました。 錆取りといえば、サンポールやクエン酸も有名ですが、母材への影響や安全性もメーカーが確認している専用の錆取り剤を使うようにしています。 もちろん、このあとは錆止め剤を塗布してシャシーブラックで塗装したのですが、結局最近になって、より強固な二液ウレタン塗料で塗りなおそうかと思っています。 下地を塗装し、塗料店を通じて塗料メーカーに純正カラーコードで調合してもらった二液ウレタン塗料まで用意したところで、どうやって塗装するかという難題にぶつかります。 ソリッド色ならパネル1枚1枚を塗装して研いで修正ということもできます。 しかし、このクルマはシャンパンゴールドのメタリック塗装。 クリアコートまで一発勝負ということにここにきてようやく気づいたのでした。 ゴールド+クリアの2コートを一気に仕上げるには簡易的な塗装ブースでもいいのですが、建屋内で作業する必要が出てきてしまいました。 その後、「ガレージを借りる」という大技にたどりつくまでに3年ほど要することになるのです。 [ライター・撮影/鈴木修一郎]
昨日、今日と成人式を開催した自治体も多いと思う(現在は「二十歳のつどい」など名称が異なるケースもあるようだ)。 成人式といえば・・・少なくとも自分の頃は自慢の愛車で"乗りつける"一大イベントだった。 かつてのクラスメートや同級生と数年ぶりに再会するにあたり、先輩や身内などからタダ同然で譲ってもらったクルマでは意味がない。 やはりそれなりのクルマでないとカッコがつかない。 要するに見栄ってやつだ。 ウン十年前、R32GT-RやZ32フェアレディZで成人式に乗りつけたら、それはもう羨望と嫉妬の視線を集めることになっただろう。 二十歳そこそこでこれらのクルマに乗って成人式に現れるとしたら、高校を卒業して、就職して、必死に頭金を貯めて鬼ローンを組んでも手が届かない。 例え中古であってもだ。 両車ともに人気があったので、中古車といえども300万円を優に超える価格で売られていたからだ。 残る手段は親に買ってもらうか、親ローンか、これまでお金をすべてつぎ込み、現金一括しかない。 そこで、実際にはどんなに背伸びしても中古のRX-7(FC3S)や、スカイラインGTS-TタイプMあたりが双璧となるのだが、それでもインパクトは充分だったように思う。 ハチロクで乗りつけるような同級生がいたかもしれないが、現代のように崇められる存在ではなく、どちらかというと地味で、マニア寄りな印象だった気がする。 1月5日に、ソニー損保から年明け恒例の「20歳のカーライフ意識調査」が発表された。 1,000名の有効回答のうち 「自分のクルマを持っている」19.6%「クルマを購入するつもりはない」23.6%「若者のクルマ離れとは自分自身のことだと思う」32.4%「クルマに乗る必要性を感じない」25.3%「クルマを所有する経済的な余裕がない」57.9%「クルマを購入する際の予算の上限額は平均201.3万円 ・・・などなど、興味深いデータがいくつも掲載されている。 リンクを張っておくので、ぜひ目を通してみてほしい。 ●ソニー損保「2023年 20歳のカーライフ意識調査」https://from.sonysonpo.co.jp/topics/pr/2023/01/20230105_01.html 今回、旧車王ヒストリア的にも特に興味深かったのが 「最新装備を搭載した車に乗りたい」79.8%「ネオクラシックカーに乗りたい」33.7%、「クラシックカー、ビンテージカーに乗りたい」30.2% という項目だ。 ソニー損保の記事をそのまま引用すると 男女別にみると、男性では『乗りたいと思う』は≪ネオクラシックカー≫では38.8%、≪クラシックカー、ビンテージカー≫では36.4%と、女性(順に28.6%、24.0%)と比べて10ポイント以上高くなりました。男性には、“旧車ブーム”を背景に、ネオクラシックカーやクラシックカーに対し最新モデルにはない魅力を感じる方が多いのではないでしょうか。 とのことだ。この結果にはかなり驚いた。 今年、二十歳を迎えた多くの人たちが産まれたのは平成14年(2002年)4月2日から平成15年(2003年)4月1日までの期間だ。 それはつまり、日韓ワールドカップが開催された年(!)に産まれたことを意味する。 国産スポーツカーでいうなら、初代NSXやR34GT-R、RX-7がギリギリ発売されていた頃だ。 確かに、取材していて20代のクルマ好きの方はとにかく熱い。 これにはいくつかの要因があるだろうが、ひとつはご両親がバブル期にクルマでデートを楽しみ、チューニングに勤しんだ世代なのではないかという気がしている。 成長過程で親御さんからクルマの楽しさを教わり、幼少期にはグランツーリスモや頭文字D、ワイルドスピードなどの作品に恵まれた結果、次の世代を担うクルマ好きが増えてきたような気がしてならない。 いずれにせよ、20代のときだから楽しめる、乗っておくと幸せになるクルマがあることを知っていただけたらいいなぁと願うばかりだ。 翻って自分は成人式の頃はというと、学生だったということもあり、とても自分のクルマを買える状態ではなかった。 ・・・で、どうしたかというと、親父のクルマを借りて成人式に行ったのだ。 クルマは確かチェイサーツアラーS(JZX90)だったように思う。 それなりにインパクトはあったように思えるが、それでも親父のクルマ(借り物)だけに、今の表現でいうならあまりドヤれなかったあたり、我ながら情けない。 成人式といえば・・・夜の部も忘れてはならない。 今ごろは同窓会も兼ね、居酒屋で飲んだくれている新成人も多いだろう。 自分はというと・・・なぜかその日の夜に高熱を出し、震えながら眠りについた記憶しかない。 それはさておき、今年、めでたく二十歳を迎えた皆さま、本当におめでとうございます。 これからは思う存分、堂々と(?)飲んだくれてください。 [画像/Adobe Stock ライター/松村透]