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トルクコンバーター+ ステップ式ATが復権!一度は見捨てられた方式が今脚光を浴びる理由

目次
1.かつてはATの主流だったトルクコンバーター 2.燃費性能重視の風潮からCVTやDCTに置き換わる 3.より高効率化を目指して開発されたCVTとDCT  4.技術革新で再び脚光を浴びているトルクコンバーター 5.CVTからトルコンATに戻った車種やあえてATを採用した車種 6.まとめ

オートマティックトランスミッション。いわゆるATといえばほとんどがトルクコンバーター+ステップ式ATでした。機構が単純で高出力エンジンでも対応できることから、多くの車種で一気に採用が進みます。しかし、高まる燃費性能への要求から次第に他の方式にシフト。そして、近年になり技術が進歩するとともに、トルクコンバーターが再び注目を浴びています。今後ATの主流に返り咲くかもしれない、トルクコンバーターについて詳しくご紹介します。

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かつてはATの主流だったトルクコンバーター

AT(オートマチックトランスミッション)は、1960年代以降アメリカを中心に急速に普及。

ATの普及を牽引したのがトルクコンバーター+ステップ式AT です。さまざまな形式のATのなかでも、機構が比較的単純で当時の技術でも開発が容易だったことが後押ししました。

トルクコンバーターの仕組み

トルクコンバーターは、エンジンとトランスミッションを直接接続せず、流体(オイル)を介してトルクを伝達。エンジンとトランスミッションを物理的にクラッチ板でつながないため、単純な機構でATを実現しました。

エンジンの回転でトルクコンバーター内のオイルをかき回し、その回転力でトランスミッションにつながるタービンを回して動力を伝えます。エンジンの出力とトランスミッションは直接つながっていないため、停車時にクラッチを切る必要もなく、滑らかに発進することが可能です。

トルクコンバーターのデメリット

トルクコンバーター最大のデメリットは、伝達ロスが大きいことです。流体で動力を伝達するため、エンジン出力によって流体が動いてトランスミッション側のタービンを回すまでに、どうしてもロスが発生します。また、トルクを伝達する際に一部は熱として液体内に放出されることもロスが発生する一因です。

伝達ロスが大きいと、当然エンジンの性能が十分に発揮されません。ロスの分だけエンジン負荷が上がるので燃費的にも不利になります。また、時間的ロスも発生するため、適切なギアにシフトチェンジするのに時間がかかる点も燃費が悪化する要因でした。

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燃費性能重視の風潮からCVTやDCTに置き換わる

環境意識の高まりから、車に求める性能の中でも燃費性能が重要視されるようになると、トルクコンバーターのデメリットを補う新しい技術の投入が模索されるようになりました。そこで開発されたのがCVTとDCTです。

より高効率化を目指して開発されたCVTとDCT 

従来のトルクコンバーター+ステップ式ATのデメリットを解消するため、開発された代表的な方式が、CVTとDCTです。どちらも急速に採用される車種が増え、現在でも多くの車種で採用されています。

トルクコンバーターのまま効率を高めたCVT

CVTはエンジン出力と車軸を、テーパー状(円錐)のプーリーを介してベルトで接続した変速機です。

テーパー状のプーリーがギアの変わりとなり、ベルトのかかる位置によって変速します。ギアのように段がないので無段階変速機とも呼ばれています。

エンジンとの動力伝達には、従来通りトルクコンバーターを使用する車種が大半です。(一部電磁クラッチを使用した車種もあり)しかし、1速、2速というような通常のステップ式ATと違い、CVTはエンジンを適切な回転数で使用することができるため、特に燃費の向上に効果を発揮します。

伝達ロストスムーズな変速を実現するDCT

DCTはデュアルクラッチトランスミッションのことで、奇数段ギアと偶数段ギアそれぞれにクラッチが装備されています。

MTと同じく物理的にクラッチがつながるため、伝達ロスを最小限に抑えることが可能。奇数段ギアのクラッチがつながっている間に偶数段ギアを準備しておき、変速タイミングでクラッチを切り替える仕組みです。

また、マニュアルトランスミッション(以下MT)のペダルを踏んで操作するクラッチと基本的には同じですが、湿式と乾式の2種類の方式が存在します。

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技術革新で再び脚光を浴びているトルクコンバーター

近年の技術革新によって、トルクコンバーター最大のデメリットである伝達ロスが大幅に改善されつつあり、一度は見放されたトルクコンバーターは、再度脚光を浴びるようになってきました。

実際にCVTからステップ式ATに再び戻した車種も増えてきています。

CVTとDCTが抱えていたデメリット

夢のATとされたCVTとDCTですが、同時にデメリットも抱えていました。

エンジンの高出力化やより高い燃費性能が求められるなか、そのデメリットが浮き彫りになり始めます。

CVTはベルトで動力を伝達するという仕組み上、高出力エンジンでは滑りが発生してしまいます。また、油圧でプーリーを動かすため一定のエンジンパワーが変速で消費されてしまうのも出力を追求したエンジンにとっては不利でした。

そして、DCTのデメリットは、機構が複雑なため小型化しにくくコストもかかること、不具合が発生しやすいこと。さらに、よりエンジンを効率よく使うため、8速や10速といった多段化が求められるなか、重量と大きさがネックとなったのです。

電子制御の進化でデメリットを解消

トルクコンバーターのデメリットである伝達ロスを軽減する方法として、エンジンとトランスミッションを直結させるロックアップ機構という方法がかねてからあります。しかし、CVTやDCTなみに伝達ロスを軽減するには精度の高い制御が必要で、デメリットの解消とまではいきませんでした。

制御方法が長年課題だったロックアップ機構ですが、技術の進歩によって近年劇的な進化を遂げます。各種センサーによる的確な車両状況の把握、制御コンピューターの高速化による瞬時の動作によって伝達ロスを大幅に軽減することに成功。トルクコンバーターならではの滑らかな発進と高効率を両立しました。

また、トランスミッションの多段化という要求に対しても、従来のステップ式ATは有利。さらに、トルクコンバーター自体は低コストで比較的コンパクトに設計できることもあり、近年トルクコンバーターを採用したステップ式ATの車種が増えてきています。

CVTからトルコンATに戻った車種やあえてATを採用した車種

トルクコンバーターの進化によって、新車にステップ式ATを採用するメーカーも増えてきています。さらに、CVTに一度変更したもののモデルチェンジでステップ式ATに戻る車種も出てきました。

4代目マツダ デミオ

マツダ デミオもステップ式ATを再度採用した車種の1つ。2007年に発売された3代目デミオでは省燃費化のためにCVTを初めて採用しました。しかし、2014年の4代目へのモデルチェンジでトルクコンバーターATに戻しています。

新開発の「SKYACTIV-DRIVE」というトランスミッションで、トルクコンバーターをベースに「燃費」「なめらかな発進と変速」「ダイレクト感」を緻密な設計と制御で実現しました。

5代目トヨタ スープラ

ドイツBMWとの共同開発で大きな話題となった5代目のトヨタ GRスープラにも、ZF製8速のステップ式ATが採用されています。(姉妹車のBMW Z4も同じ)スポーツカーとして、MTが欲しいというユーザーの要望もあり、2022年4月下旬には6速MTモデルの追加される予定です。

それまでスープラがMTを設定していなかった理由は「速さを追求した」から。つまり、「速さ」という点でMTは非効率で、今やステップ式ATの方が速いのです。

ダイレクト感とレスポンスが重要なスポーツカーにも、トルクコンバーターを用いたステップ式ATが採用されるようになりました。

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まとめ

トルクコンバーターを用いたステップ式ATから、CVTやDCTに置き換わった大きな理由の1つは燃費性能の向上でした。面白いことに、さらなる燃費性能の向上が求められる現在は再びトルクコンバーター+ステップ式ATが見直されています。

小さく軽量で、いかに動力を効率的に伝達するか?単純な機構による高い信頼性と低コスト、流体伝達による滑らかな発進や変速、多段化の要求にも応えられる省スペース設計。トルクコンバーター+ステップ式ATの組み合わせは、現代の車に求められる変速機の要件を高次元で満たす機構として見直されています。

ハイブリッドや電気自動車など、動力の発生方式による違いや技術革新ばかり注目されがちです。しかし、トルクコンバーターやステップ式ATなど、動力伝達の方式も日々進化。「これからどんな優れた方式出てくるか」ということに注目してみるのも、面白いのではないでしょうか。

[ライター/増田真吾]

 

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