登場から20年以上経った中古車でありながら、新車価格のおよそ5倍の3,000万円以上で取引される国産スポーツカーがあります。それが、WRC3連覇を記念して1998年3月に400台限定で販売されたスバル インプレッサ22B-STiです。
専用設計のエンジンや、ワイド化が特徴で、メーカーが改造車検を取得した「改」の文字が車検証に記載されるのも特別感を演出します。
今回は、インプレッサ22B-STiの凄さを、スバルの本気度と共にお伝えします。
スバルのWRC挑戦の歴史
スバル、そしてインプレッサを語る上で、世界最高峰のWRCでの活躍の話は避けて通れません。まずはWRCにおけるスバル参戦の歴史を簡単に振り返ってみましょう。
乗用車型4WDをWRCに初めて持ち込んだのがスバル
国内メーカーとしてやや参戦は遅かったものの、スバルはWRCに新たな歴史を刻みました。当時FRが常識だったラリーに、スバルは1980年にレオーネ4WDで乗用車型の4WDを初めて持ち込んだのです。
その後スバルがWRCに本格的に参戦したのは、水平対向エンジンと4WDが成熟し始めた、初代レガシィの登場から。しかし、レガシィは、最終年に念願の初優勝を果たしたものの、全体としてはあまり芳しい成績を残すことができませんでした。
WRCで勝つために開発されたインプレッサ
思ったような成績が残せなかったとはいえ、確かな手ごたえを得たスバルは、WRCで勝つことを念頭に置いた新モデルを開発することになります。それが、初代レガシィよりもコンパクトなボディを持ったインプレッサです。市販車をベースにしていたことには変わりありませんが、インプレッサは開発意図通り目覚ましい成績を残します。
参戦2年目となる1994年には、マニュファクチャラーズ2位を獲得。そして、参戦3年目の1995年から1997年にかけ、マニュファクチャラーズタイトルWRC 3連覇を成し遂げます。(1995年はドライバーズタイトルも獲得しダブルチャンピオン)
WRブルーと呼ばれ、今ではインプレッサの色として定番となった青色のボディ色は、この時の目覚ましい活躍によって、人々の心に焼き付けられました。
この3連覇と、スバルの40周年を記念して、1997年のWRC参戦モデルの再現を目指して開発されたのが、インプレッサ22B-STiです。
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WRカー再現を追求した22B-STi
インプレッサ 22B-STiは、1997年のWRカー再現モデルとして開発され、1998年3月に発売されました。
公道を走れるようにするため、車検に通る仕様なのは大前提ですが、その制約の中で最大限WRカーを再現しようとした結果、車検証に「改」と記載された改造車検を取得。わざわざ手間のかかる登録作業をしてまで、市販化を実現させたスバルの意気込みを表しています。
手作業で取り付けられた専用開発パーツ
22B-STiのために開発された専用のエンジンは、2.2Lにサイズアップがされており、馬力こそ自主規制いっぱいの280馬力に抑えられているものの、低中速トルクを大幅に改善。また、WRカーを再現するため、外装パーツなど多くの専用品が開発されたのも特徴です。ほとんどの専用パーツは、別工場に運び、ほぼ手作業で取り付けを行うほど、スバルは力を入れて開発、生産を行いました。
価格が高くても大人気
新車価格は500万円と、通常のSTiが約300万円だったことを考えると割高感があります。しかし、限定400台を2日間で完売してしまうほどの人気を博しました。この人気は現在でも続いており、中古車価格は数百万円以上と高止まり。走行距離が少なく状態の良い個体なら、3000万円以上で取引されることも珍しくありません。
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通常のWRX-STiとの比較で見えてくる22B-STiの凄さ
スバルが22B-STi 開発時に、いかに力を入れていたのかについて、さらに詳しく見ていきましょう。22B-STiは、何がすごかったのか、通常のWRX-STiモデルと、主な部分を比較しながらご紹介します。
「改」マークを取得のワイド化されたボディ
見た目でまず違うのがボディサイズです。全幅は1690mmから80mmもワイド化し1770mmとなっており、インプレッサワールドラリーカー’97と同じルックスのブリスターフェンダーを再現しています。メーカーが特別車を販売しても、元の車検サイズの範囲内でエアロパーツを装着する程度でお茶を濁すことが通常です。しかし、スバルはWRカーの忠実な再現を目指したため、元のサイズに収まらず、新たに公認車検を取得し、車検証にはオリジナルのGC8ではなく、「GC8改」と記載されています。
弱点を補った新開発エンジン
エンジンは専用設計のEJ22型、排気量2.2Lエンジンを開発。元のEJ20型から200cc大型化し、インプレッサの弱点であった低中速域のトルクを大幅に向上させました。最高出力こそ、自主規制いっぱいの、280馬力と、EJ20型と同様ながら、最高出力の発生回転数が500回転も下の6,000回転になった点からも、EJ20から大幅に扱いやすいエンジンであることがうかがえます。
ドライブフィールはまさにWRカー
ドライブトレインでまず特徴的なのが、ツインプレートクラッチの採用です。ツインプレートクラッチは、シングルプレートと比較して、クラッチの圧着力が高いため、エンジンパワーを逃さず伝達することが可能になります。
一方で、ツインプレートクラッチは、クラッチの踏力がより必要だったり、クラッチミートにコツが必要だったりと、一般車両に搭載するにはデメリットの多く、純正で採用している車両はほとんどありません。22B-STiでは、このデメリットを減らすよう改良を加えているものの、ツインプレートクラッチを採用するスバルの本気度には脱帽です。
また、エンジンのトルクアップに対応して、メインシャフトが強化されていたり、クラッチシステムの軽量化が図られていたりと、エンジンのみならず、トランスミッション周りも専用設計と呼べるほどのリファインが施されています。
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まとめ
中古車価格が約3,000万円と、もう少しで新車のフェラーリでも買えそうな金額にも上ることから見ても、スバル インプレッサ22B-STiの人気が今でもことが分かります。
限定400台という希少性も価格高騰の理由ではありますが、ただの特別使用車ではなく、公道を走れるレースカーをメーカーが本気で作ったと言う、特別感満載の22B-STiには、車としてもそれだけの魅力と価値があると言えるでしょう。
[ライター/増田真吾]
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