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普段ガソリンスタンドで何気なく給油している燃料は、実は季節や地域によって違いがあることをご存じですか。
気温の変化によって物性が変わってしまうため、実は一年中まったく同じものが販売されているわけではありません。
最新の車であれば制御技術の進化によって影響はほとんどありませんが、旧車の場合は季節や地域に合った燃料を使うことが重要です。
そこで今回は、燃料の季節ごとの違いや、旧車オーナーが気をつけるべきポイントについて詳しく解説します。
ガソリンや軽油は一年中同じものではない
ガソリンや軽油はJIS規格に基づいて製造されていて、基本的な性能はどのガソリンスタンドで給油しても変わりません。
しかし、JIS規格では変動幅が許容されていて、実は季節や地域に合わせた性質の燃料が製造されています。
まずは、なぜ気温変化に応じて燃料の性質を変更する必要があるかという点を、詳しく解説します。
液体は気温変化の影響を受けやすい
液体であるガソリンや経由の性質(物性)は、気温によって大きく変化します。最も顕著なのが「揮発性(蒸発しやすさ)」と「流動性(サラサラ具合)」です。
たとえば、水が0度で凍り100度で沸騰するように、燃料にも状態変化が起こる温度が存在します。
車のエンジンは、燃料を霧状(気化)にして空気と混ぜたうえ、適切なタイミングで点火、爆発させて動力を得ています。
そのため、外気温が高くて勝手に気化してしまう、もしくは気温の低下で本来よりも流動性(粘度)が下がってしまうと、エンジンの制御に影響しかねません。
そこで、石油元売り各社は、JIS規格の範囲内で季節に合わせて燃料の性質を微調整して出荷しているのです。
ガソリンは夏で軽油は冬の気温を考慮
気温に合わせて調整されている燃料ですが、ガソリンと軽油では、もともとの物性が大きく異なるため調整の方向性が異なります。
大まかにいうと、ガソリンは夏場、軽油は冬場や寒冷地域を意識して調整されています。
常温でも揮発しやすいガソリンは、高温になることで想定以上に気化してしまうことが問題です。
一方の軽油は、気温の低下によって流動性が下がり、温度によっては凍結してしまうおそれがあります。
低温にシビアな軽油は地域差もある
軽油は低温に対してシビアな性質のため、季節だけでなく地域によっても最適な仕様のものが供給されます。
軽油は、日本の冬場の気温でも、凍結するおそれがあるのです。軽油が凍結してしまう理由や、夏場にわざわざ仕様を変更する理由を詳しく紹介します。
軽油が低温下で凍る理由
軽油の主成分である炭化水素(パラフィン分など)は、本来エンジンの着火性などに寄与する重要な要素です。
しかし、低温になると結晶化し、分離する性質を持っています。はちみつが気温低下とともに固まった状態を思ってもらえれば、イメージはしやすいでしょう。
結晶化した成分はシャーベット状になり、インジェクターや燃料フィルターの目を詰まらせてしまいます。
燃料が正しくエンジンに供給されないと、始動性が悪くなるばかりか、走行中のエンストにもつながりかねません。
同じ冬場でも地域によって低温耐性が異なる
軽油の凍結を防ぐため、流動点の違いによってJIS規格(JIS K 2204)上では以下の5種類に細かく区分されています。
・特1号: 夏場や温暖な地域で使用(5℃以下)
・1号: 夏場や温暖な地域で使用(-2.5℃以下)
・2号: 標準的な冬用(流動点 -7.5℃以下)
・3号: 寒冷地の冬用(流動点 -20℃以下)
・特3号: 北海道などの厳寒期用(流動点 -30℃以下)
思っていた以上に流動点が高いことに、驚いた方もいるのではないでしょうか。
流動点特1号に至っては5℃のため、0℃以下で凍る水よりも低温耐性がありません。同じ冬用でも最大で22.5℃の違いがあるため、冬場の関西と東北、北海道などでは異なる軽油が供給されています。
冬場のディーゼルエンジン車で注意が必要といわれるのは、この性質の違いです。
たとえば、2号が供給されている地域で給油後、3号や特3号が必要な地域に移動してしまうと燃料が凍結してしまうおそれがあります。
低温対応品を年中使用しない理由
凍結に関する物性を考えると、「一年中凍らない『特3号』を販売すれば良いのでは?」と思われるかもしれません。
しかし、低温流動性を高めた軽油は、燃費や出力に関わる指標が犠牲になってしまうデメリットがあります。
たとえば、夏場に北海道用の特3号軽油などを使用すると、エンジン設計上の最適値から外れてしまいます。
車本来の性能が発揮できなくなってしまうため、基本的には低温流動性を考慮しない軽油を使用するのが最適です。
一方で、凍ってしまうとそもそもエンジンを始動できなくなってしまうため、低温時には凍結対策を最優先にして成分を調整しています。
夏冬の違いがあまり大きくないガソリン
ガソリンも気温に合わせて調整されているものの、軽油ほど大きな差はありません。ガソリンで変更されるのは、おもに「蒸気圧」という数値です。
季節によって最適な数値は異なりますが、軽油ほどシビアではありません。
ガソリンで調整される蒸気圧について、変更内容とエンジンへの影響をみていきましょう。
夏と冬で異なる蒸気圧
「蒸気圧」とは、ガソリンの揮発性を示す数値です。数値が高いほど蒸発しやすくなっていて、気温に合わせて上限値がJIS規格で定められています。
たとえば、気温の高い夏場の上限値は65kPa、気温の下がる冬場には93kPaといった具合に調整されているのです。
気温によって蒸気圧を変更することで、どの季節でも同じ制御で問題なく使用できるようになっています。
ただし、特に案内もなくガソリンの配送タイミングで順次切りかえられるため、ユーザーがガソリンの季節差を意識することはほとんどありません。
蒸気圧がエンジンに与える影響
実際のところ、蒸気圧の変化によってエンジンにはそこまで大きな影響はありません。特に最近の車では蒸気圧への対策がしっかりしているため、夏場に冬用のガソリンを使用してもユーザーが違いを感じることはほぼないでしょう。
しかし、気温によって特性が変わることは間違いないため、メーカー側で最適に蒸気圧を調整してくれています。
強いて蒸気圧によるトラブルを挙げるなら、夏場の「パーコレーション」や「ベーパーロック」と呼ばれる燃料の沸騰現象です。気化したガソリンが配管内で気泡となり、本来の燃料供給を阻害してしまいます。
旧車は燃料の気温差による影響を受けやすい
設計の新しい現代の車では、ガソリンや軽油の気温特性への対策も万全です。しかし、旧車では対策が不十分で、気温による特性変化の影響を大きく受けてしまいます。
また、あまり頻繁に乗らない場合、冬場のガソリンが夏になっても残っているケースも少なくありません。そこで、気温差による影響を、旧車という視点で改めて解説します。
蒸気圧対策のされていない車種が多い
ガソリンの蒸気圧の影響をもっとも受けるのは、キャブレター車です。もともとインジェクションに比べて燃料圧力が低いため、ガソリンが気化しやすくなっています。
冬用の蒸気圧の高いガソリンを夏場に使用すると、パーコレーションが発生して燃料供給が阻害されるおそれがある点に注意が必要です。
渋滞中やエンジン停止後の再始動時に、「セルは回るのにエンジンがかからない」「アイドリングが不安定になる」といった症状が出た場合、燃料の沸騰による供給不良が疑われます。
給油したガソリンは、少なくとも季節ごとに使い切るようにしましょう。
ディーゼル車で冬場に寒冷地域に移動する際は注意
ディーゼル車で冬場の寒冷地に向かう場合は、地域ごとにこまめに給油する計画を立てましょう。
ガソリンタンク内を完全に入れ替えることは困難ですが、現地到着時にタンクの半分以下になるよう調整してください。到着後に「寒冷地仕様の軽油」を入れることで凍結を防止できます。
また、現在は凍結対策がされている車種もありますが、旧車ではあまり見かけません。
燃料フィルターに後付けのヒーターを取り付けるなど、可能なら凍結対策をしておくと冬場も安心して乗れます。
始動性の低下しやすい冬場はメンテナンスが重要
冬場のガソリンは蒸気圧が高められていますが、旧車では低温になるとエンジン始動性が悪化しがちです。
また、バッテリー能力の低下やオイル粘度による抵抗の増加も、始動性に影響します。
バッテリーの電圧管理や点火プラグのチェック、キャブレターの調整といったメンテナンスを、本格的な冬を迎える前に実施しておきましょう。
冬場の過酷な環境で車にかかるストレスを少しでも軽減することが、旧車の長期維持には欠かせません。
ガソリンの季節差で混同されがちなオクタン価
ガソリンの季節差を考えるうえで、「オクタン価」の話と混同しがちです。しかし、実際には、蒸気圧とオクタン価は関係ありません。
誤解されがちなオクタン価について、簡単に説明しておきます。
オクタン価は異常燃焼(自然着火)に関する指標
オクタン価とは、エンジンの「ノッキング(異常燃焼)」の起こりにくさを示す数値です。数値が高いほど、高圧縮・高温の状態でも自己着火しにくくなります。
燃焼効率の問題ではなく、「意図しないタイミングで勝手に燃えださない(耐ノック性が高い)」ことを意味する指標です。
ちなみにJIS規格では、レギュラーは89.0以上、ハイオクは96.0以上と定められています。
季節による違いは基本的にない
オクタン価に関しては季節による規定の変更はありません。夏でも冬でも、その油種のアンチノック性能は維持されています。
つまり、「冬だからハイオクを入れたほうが始動性が良い」といったことはありません。
「ハイオクを入れたら調子が良くなった」と感じるケースも、車の状態によってはあるかも知れません。
しかし、ハイオクそのものの燃焼特性ではなく、他の原因によるものです。含まれている清浄剤や、カーボン堆積により実質的に圧縮比が高まっていたエンジンに対してハイオクの耐ノック性がマッチした結果だと考えられます。
ハイオクで本来の出力が向上するわけではない
愛車を労る、もしくはさらなる性能向上を目指して、レギュラー仕様車にハイオクを入れている方も少なくありません。
清浄作用やマージンの確保という意味では有効ですが、ハイオクを入れたからといって、レギュラー仕様のエンジンの馬力が向上するわけではありません。
さらに、ハイオク仕様の旧車にレギュラーを入れると、制御やエンジンの仕様によっては不具合が出るおそれもあります。
エンジンチューニングによって圧縮比を上げるなど明確な理由がない場合は、メーカーが指定した燃料を入れることが原則です。
かつて使用されていた有鉛ガソリン
ガソリンのオクタン価を高めるために、かつては鉛を配合していました。そのため、1970年代以前の旧車には、有鉛ガソリンを前提とした車が存在します。
鉛にはバルブシートの摩耗(リセッション)を防止する効果もありましたが、現在のハイオクガソリンには鉛は配合されていません。
車種によっては、専用添加剤の使用や対策品への交換が必要です。季節性の問題ではありませんが、ガソリンのマッチングについても旧車オーナーは意識しておきましょう。
季節や地域にあった燃料を使用する
燃料は単なる「燃える液体」ではなく、その時期の気温や環境に合わせて最適化された精密な製品です。
特に旧車にとっては、ガソリンの蒸気圧の違いや軽油の凍結温度といった「わずかな差」が、愛車のコンディションを左右する大きな要因になり得ます。
あまり乗らない車であっても、季節の変わり目には意識的にタンク内の燃料の入れ替えをおすすめします。せっかく手にした旧車だけに、可能な限りベストコンディションを維持したいものですね。
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